JP4910535B2 - 磁歪リング式トルクセンサ - Google Patents
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車輌のミッションの出力軸トルクをモニターできるようになると、ATの変速ショックに対し、現在行われているような難しい制御を行わなくともよいようになる。また、車輌の総合制御が可能になり、省燃費な車輌の実現に資するため、廉価で小型なトルクセンサの要望は潜在的にあり、研究開発されてきている。
I.J.Garshelis:IEEE Trans.on Magnetics,vol.28,No.5,2202,September 1992. I.J.Garshelis and C.R.Conto:JAP,vol.79,No.8,4756,1996.
また、コイルに10kHzオーダーの交流電流を流す必要があり、電気的な電力という点では1W弱程度の電力が必要であり、電力的にも問題があった。
また、磁歪リングには引張の周方向応力(Hoop stress)が働いていて、これにより周方向に1軸の磁気異方性が確保されるが、この部分が良好なセンサ特性にとっては本質的な部分となっている。
上記磁歪リング状部材は周方向に着磁されており、この磁歪リング状部材に上記磁気検出部が近接配置されており、上記回動軸にトルクがかかったときに、上記磁歪リング状部材からの磁束漏れの大きさを上記磁気検出部にて検出する非接触方式の磁歪リング式トルクセンサにおいて、
上記磁歪リング状部材がその内部に非磁性部を有し、この非磁性部が空間であり、
上記磁歪リング状部材の中心軸線方向に沿った断面形状がコの字を回転した形状をなし、上記非磁性部空間がほぼ矩形状をなし、
この非磁性部空間に、上記回動軸及びコの字の磁歪リング部材の内面と接触している状態にて、線膨張係数が上記磁歪リング部材よりも大きいリング状非磁性材が挿入されていることを特徴とする。
本発明の磁歪リング式トルクセンサは、鋼製の回動軸を対象とすることができるので、その有用性が飛躍的に向上している。
本発明の内容を明確にすべく、まず、従来技術につき再度説明する。
図13は、特許文献1や非特許文献1に開示されているような交流透磁率差動方式の磁歪式トルクセンサを示す構成図である。
一方、図14は、ガルシェリスの提案している磁歪リング方式のトルク検出装置を示す側面図であり、非特許文献2や非特許文献3に開示されている。
回動軸1にトルクがかかると、45度方向に引張応力(それと直交して圧縮応力)が作用するので、磁歪の逆効果により、磁化は軸方向に倒される。従って、リング端部には磁極が現われ、漏れ磁束が発生する。よって、ホール素子等のセンサ4を配置しておくと、トルクに相関のある信号が検出される。
但し、回動軸1にリング3を締り嵌めするため、両者間にすべりが発生するという難点があり、締め代の大きさをある程度以上確保しないと、良好なセンサ特性が得られず、工法上の容易さに難点がある。
よって、本発明の磁歪リング式トルクセンサは、基本的に図14に示したような構造を有している。
図1は、長さ13mm、厚さ0.76mmのマルエージング鋼製リング20をφ12.64mmの回動軸10に冷やし嵌めにて嵌合して成る磁歪リング式トルクセンサの一例を示す模式的断面図である。
締め代は55μmとした。リング20は日立金属製のマルエージング鋼であるYAG300を機械加工して作製し、820℃にて1時間固溶化し、次いで、490℃にて5時間時効処理する熱処理を行い、しかる後、回動軸10に冷やし嵌めした。回動軸10はSUS303製ものと、S45C高周波焼き入れのものを用いた。
このようにして、本例の磁歪リング式トルクセンサを作製した。
但し、SUS303の場合には15Nmのトルクを印加したときに9Gであるのに対し、S45Cの場合は1.5Gであり、感度が1/6に低下していることが分かる。
このように、リングの構造等の条件が同一であっても、回動軸の材質が異なることにより感度の低下が起こるが、この理由は上述の通りである。
YAG300製の時効リング20(参考例1と同じ仕様のもの)をSUS303製の回動軸10に20μmにて冷やし嵌めし、リング20と回動軸10を図3に示すように電子ビームにて溶接した。図に示すように約0.5mmの溶け込みにて全周溶接し、本例のトルクセンサを得た。
また、50μmにて冷やし嵌めしたものを電子ビームにて溶接した。着磁方法、センサ特性の測定方法は参考例1の場合と同じである。
電子ビーム溶接にて接合しているので、リングと軸とはすべりを起こさない(一方、トルクを印加にともない、軸とリングがすべりを起こす場合には、トルク−センサ出力特性はヒステリシスを描いてしまう。)。従って、この場合のヒステリシスは、冷やし嵌めによる周方向引張応力(Hoop stress)が小さいために、良好なセンサ特性とならないのであると解釈できる。
電子ビームで接合した場合には、図5に示したように良好なセンサ特性、すなわち、特性が直線であり、ヒステリシスを描かない特性となる。
中心軸線方向における断面がコの字を90度回転した形状のリング21を、マルエージング鋼であるYAG300を用いて作製した。具体的な形状を図6に示す。
リング21の長さは13mm、外径は16.7mm、内径は14.7mm、脚部は(軸方向)長さが2mmである。また、コの字リング21の内側の両隅は1Rで加工した。
図7に示すように、15Nmでのセンサ出力は1.7Gであり、図2に示した結果に対してあまり向上していないように見えるが、この場合にはセンサ部の径は16.7mmであるので、実際には2.3倍以上に向上していることになる。
図6では、ほぼ矩形状の空間がリン21グ内に設けられている。また、空間の厚さは1mmより厚くなっている。即ち、リング21の厚さよりも厚くなっている。このような厚さの関係にすることが、感度を確保するうえで好適なのである。
一方、リング21を軸10から離せば離すほど良いように思えるが、トルクに対する応力が径の3乗で減少してしまうから、あまり離すのは得策ではない。かといって近すぎると感度向上が期待できないわけである。
リングと回動軸の接合を電子ビームにて行った以外は、参考例3と同一の構成を採用し、本例のトルクセンサを得た。
上記同様にトルクセンサ特性を調べたところ、±15Nmでの特性は図7に示した結果と同様であった。更に高トルク域まで、ヒステリシスのない直線性に優れた特性が得られた。
参考例3では締め代50μmの冷やし嵌めで嵌合した。また、参考例4では、参考例3の状態にてリングと回動軸を電子ビームにて接合した。本例では、リングと回動軸とをすきま嵌めし、リングを軸方向に圧縮を加えた状態において、リングと回動軸を電子ビーム溶接にて接合し、トルクセンサを得た。リングの軸方向への圧縮代は10μmとした。それ以外は参考例3,4と同様とした。
従って、軸方向に圧縮を加えることは、(センサ)リングにとっては周方向に引張応力を与えることと等価であると判断される。
本例で採用した工法は、冷やし嵌め、焼き嵌めが採用できないときに、センサ特性を確保し得る工法として有用である。
図8(a)は、磁歪リング式トルクセンサの他の例を示す断面図であり、2個のホール素子30とヨーク40を設けた検出部を有するトルクセンサを示している。
磁束の流れは図8(b)に示したようになる。従って、図示右側のホール素子と左側のホール素子とでは、極性が逆のセンサ特性となる。両者の出力を差動させることにより、倍の感度を得ることができる。また、ヨーク40を設けることにより感度が更に倍となる。
また、ヨークを設けると、外からの電磁ノイズに対して耐性を有するようになる。更に、ギャップ(磁歪リング表面と検出センサとの距離)変動に対して鈍感となるという効果がある。
なお、素子パッケージとヨークは接して取り付けられている。ホール素子30はリング20に近接している。感磁部はリング表面から約0.5mm離間した位置としている。
図10は、磁歪リング式トルクセンサの更に他の例を示す断面図であり、回動軸11は、図示したように縮径軸とすることもできる。
回動軸11以外は参考例3と同様の構成を採用したところ、センサ感度が約40%向上していた。トルクに対するリング応力が大きくなることに起因する。
図11は、本発明の磁歪リング式トルクセンサの他の実施例を示す断面図であり、リング20内の空間にSUS製リング50を配置した例を示している。
本例では、内径が回動軸10の軸径、外径がリング20の内径となるリング50をSUS303にて作製した。そして、図12に示すようにリング50を3分割した。隙間は刃物厚さ程度とした。
そして、かかるリング50をコの字リング20の内側に入れて、回動軸10に対し絞め代50μmにて冷やし嵌めし、本例のトルクセンサを得た。
マルエージング鋼の線膨張係数は11.3×10−6/℃である。SUS303は14.7×10−6/℃、S45Cは10.7×10−6/℃である。
SUSの線膨張がマルエージング鋼よりも大きいから、温度が上がった場合にリング20を内側から押圧するので、リング20の周方向応力を増大させる機能があり、感度の温度依存性をフラットに改善してくれるものと推察される。
例えば、トルク検出用の磁気センサとしてはホールセンサのみを例示したが、これに限定されるものではなく、省電力で小型であるところの、ホールIC、及びMIセンサを使用可能であることは言うまでもない。
1L、1R 回動軸
1g 溝
2 コイル
3 リング
10、11 回動軸
20、21 リング
30 ホール素子
40 ヨーク
50 分割リング
Claims (11)
- 回動軸と磁歪を有するリング状部材と磁気検出部とを備え、上記磁歪を有するリング状部材が上記回動軸に嵌合しており、
上記磁歪リング状部材は周方向に着磁されており、この磁歪リング状部材に上記磁気検出部が近接配置されており、上記回動軸にトルクがかかったときに、上記磁歪リング状部材からの磁束漏れの大きさを上記磁気検出部にて検出する非接触方式の磁歪リング式トルクセンサにおいて、
上記磁歪リング状部材がその内部に非磁性部を有し、この非磁性部が空間であり、
上記磁歪リング状部材の中心軸線方向に沿った断面形状がコの字を回転した形状をなし、上記非磁性部空間がほぼ矩形状をなし、
この非磁性部空間に、上記回動軸及びコの字の磁歪リング部材の内面と接触している状態にて、線膨張係数が上記磁歪リング部材よりも大きいリング状非磁性材が挿入されていることを特徴とする磁歪リング式トルクセンサ。 - センサ部中央における上記回動軸に垂直な断面において、上記非磁性空間部の厚さが上記リング状部材の厚さより大きいことを特徴とする請求項1に記載の磁歪リング式トルクセンサ。
- 上記コの字状の磁歪リング部材の脚部と、上記回動軸とが締結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁歪リング式トルクセンサ。
- 上記コの字状の磁歪リング状部材の脚部と上記回動軸との締結が、電子ビーム溶接にてなされていることを特徴とする請求項3に記載の磁歪リング式トルクセンサ。
- 上記リング状非磁性材がオーステナイト系ステンレスから成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の磁歪リング式トルクセンサ。
- 上記回動軸が鋼製であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の磁歪リング式トルクセンサ。
- 上記磁歪リング部材がマルエージング鋼から成ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項にに記載の磁歪リング式トルクセンサ。
- 上記磁気検出部がホールセンサとヨークを備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の磁歪リング式トルクセンサ。
- 回動軸と磁歪を有するリング状部材と磁気検出部とを備え、上記磁歪を有するリング状部材が上記回動軸に嵌合しており、
上記磁歪リング状部材は周方向に着磁されており、この磁歪リング状部材に上記磁気検出部が近接配置されており、上記回動軸にトルクがかかったときに、上記磁歪リング状部材からの磁束漏れの大きさを上記磁気検出部にて検出する非接触方式の磁歪リング式トルクセンサにおいて、
上記磁歪リング状部材がその内部に非磁性部を有し、この非磁性部が空間であり、
上記磁歪リング状部材の中心軸線方向に沿った断面形状がコの字を回転した形状をなし、上記非磁性部空間がほぼ矩形状をなし、
上記コの字状リング部材が、圧縮応力をその中心軸線方向に印加された状態にて上記回動軸と締結されていることを特徴とする磁歪リング式トルクセンサ。 - 上記コの字状の磁歪リング部材の脚部と、上記回動軸とが締結されていることを特徴とする請求項9に記載の磁歪リング式トルクセンサ。
- 上記コの字状の磁歪リング状部材の脚部と上記回動軸との締結が、電子ビーム溶接にてなされていることを特徴とする請求項10に記載の磁歪リング式トルクセンサ。
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