JP4909242B2 - 印刷装置および印刷方法 - Google Patents
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一方、ブランケットに浸透、蓄積したインキ溶剤をブランケットから除去する技術として、特許文献1には、ブランケットと、溶媒吸収体とを回転接触させる溶媒吸収機構が提案されており、特許文献2には、ブランケットに対して吸湿シートを押し付け、ブランケットのインキ溶媒による湿潤状態を調整する機構が提案されている。また、特許文献3には、溶剤吸収体がローラに巻きつけたテープ状に形成され、この溶剤吸収体を順次繰り出し、ブランケットの周面の一部に接触させることで、ブランケット(転写体ローラ)のシリコーンゴム層から溶剤吸収体へとインキ溶剤を移行させる装置が記載されており(図3参照)、特許文献4には、無端ベルト状またはロール状に形成された溶剤吸収体をブランケットの表面に当接させ、ブランケット表面のゴム層からインキ溶剤を吸収する印刷装置が記載されている(図1参照)。
また、特許文献3の図3に記載の装置や、特許文献4の図1に記載の印刷装置では、ブランケットと溶剤吸収体との接触面積が広くなっているものの、ブランケット(特許文献3では転写体ローラ4)と、これに接触する溶剤吸収体とが、いわゆる連れ回りとなっているため、依然として、ブランケットから溶剤を吸い取る効率が低い。
本発明の印刷装置は、前記溶剤除去処理時において、前記溶剤吸収体が、前記ブランケットの外周面のうち少なくともブランケットの印刷領域の全面に接触されることが好適である。この場合、ブランケットに浸透、蓄積されたインキ溶剤の除去効率を、より一層向上させることができる。
また、本発明の印刷装置では、前記一対のクランクと前記一対のアームとの連結を固定した状態で、前記一対のクランクが、前記支点に対して前記ブランケットの側で近づくように互いに逆向きに回転することにより、前記ブランケットの前記外周面が、前記溶剤吸収体に被覆されることが好適である。
本発明の印刷方法は、前記溶剤除去工程において、前記溶剤吸収体を、前記ブランケットの外周面のうち少なくともブランケットの印刷領域の全面に接触させることが好適である。この場合、ブランケットに浸透、蓄積されたインキ溶剤の除去効率を、より一層向上させることができる。こともなく、印刷性の向上を図ることができる。
また、本発明の印刷方法では、前記一対のクランクと前記一対のアームとの連結を固定させた状態で、前記一対のクランクを、前記支点に対して前記ブランケットの側で近づくように互いに逆向きに回転させることにより、前記溶剤吸収体により、前記ブランケットの前記外周面を被覆することが好適である。
図1を参照して、印刷装置1は、ブランケット2と、ブランケット2を表面に固定しているブランケット胴3と、印刷版としての凹版4と、被印刷体としての基板5と、を備えている。
ブランケット2は、支持フィルム層と、その支持フィルム層の外周を被覆する表面印刷層とを備えている。
なお、ブランケット2の表面印刷層と支持フィルム層との総厚みは、例えば、100〜6000μm、好ましくは、200〜2500μmである。
ブランケット胴3には、例えば、金属胴などが用いられる。このブランケット胴3は、回転移動が自在となるように、かつ、ブランケット胴3の軸線方向と直交する方向への平行移動が自在となるように保持される。具体的には、表面に固定されているブランケット2の外周面と、後述する凹版4および基板5とを接触させつつ、凹版4および基板5上で転動可能なように保持される。さらに、ブランケット胴3は、後述する一対のテンションローラ7,8との間の相対移動によりブランケット2の外周面と溶剤吸収シート6とが互いに接触可能となるように、その軸線方向と直交する方向で平行移動が自在である。
また、ブランケットは、例えば、円筒状のスリーブと、円筒状スリーブの外周面に形成された表面印刷層と、を有する円筒形状をなすものであってもよい。この場合、ブランケットは、円筒状のスリーブの内周面をブランケット胴の外周面にはめ込み、固定することにより用いられる。また、この場合において、ブランケットの周方向における印刷領域には、ブランケットの外周面のうち被印刷体のサイズに応じた任意の領域が選択される。
凹版4は、基板5に印刷される印刷パターンに応じた凹部を有している。この凹版4には、例えば、ソーダライムガラスなどのガラス版、例えば、金属(アンバー材)版などが用いられる。また、印刷版は、図示した凹版4に限定されず、例えば、凸版、平版などの各種の印刷版を用いることができる。
インキとしては、特に限定されず、印刷の目的および用途に対応して、各種のインキが用いられる。例えば、液晶カラーフィルタの色フィルタ層やブラックマトリクスの形成には、樹脂、溶剤、顔料、さらに必要に応じて、顔料分散剤、体質顔料、硬化触媒、レベリング剤(表面張力調整剤)などを含有し、溶剤の沸点が70〜200℃であり、ブランケット2の表面印刷層をインキに23℃で24時間浸漬させたときの表面印刷層の膨潤率が5〜100%となるインキが好適に用いられる。
顔料は、液晶カラーフィルタの色フィルタ層を形成する場合には、例えば、アンスラキノン系レッド顔料、ハロゲン化フタロシアニン系グリーン顔料、フタロシアニン系ブルー顔料などが用いられ、さらに、イエロー顔料やバイオレット顔料などが補助顔料として用いられる。また、液晶カラーフィルタのブラックマトリクスを形成する場合には、例えば、カーボンブラック、酸化鉄(鉄黒)、チタンブラック、硫酸鉄、Fe−Co−Moなどの合金、などが用いられる。顔料の平均一次粒子径は、好ましくは、1〜100nmである。
また、上記したインキは、例えば、上記の樹脂、溶剤、顔料などを配合し、各種のミキサ、ニーダ、ミルなどで混合、攪拌することにより調製される。
印刷装置1は、さらに、ブランケット2の外周面との接触によってブランケット2に滲み込んでいるインキの溶剤を吸い取る溶剤吸収体としての溶剤吸収シート6と、後述する溶剤除去処理時(溶剤除去工程)において溶剤吸収シート6を緊張状態に保持する保持部材としての一対のテンションローラ7,8と、溶剤吸収シート6のラッピング動作時に各テンションローラ7,8を所定の位置まで移動させるための一対のクランク9,10および一対のアーム11,12と、を備えている。
溶剤吸収シート6は、少なくともブランケットの外周面と接触する側の表面に、溶剤吸収層を備える長尺の部材である。溶剤吸収シート6の層構成には、例えば、下記のものが挙げられる。
・溶剤吸収層13と、溶剤吸収層13を固定するための基材14とからなる積層体(図2(a)参照)
・溶剤吸収層13と、基材14と、弾性層15とが、この順で積層されている積層体(図2(b)参照)
・溶剤吸収層13と、弾性層15と、基材14とが、この順で積層されている積層体(図2(c)参照)
溶剤吸収シート6の層構成は、特に限定されないが、例えば、図2(a)に示す2層構造の積層体は、構造が簡易であることから好ましい。また、例えば、図2(b)や図2(c)に示すような弾性層15を備える3層構造の積層体は、インキ溶剤の種類、ブランケット2の表面印刷層の形成材料などにあわせて、適宜採用することができる。
各テンションローラ7,8は、各クランク9,10の回転移動やそれに伴うアーム17の移動と、各クランク9,10の支点16,17を軸とした回転移動とによって、所定の位置に移動する。また、これにより、溶剤吸収シート6がブランケット2の外周面を被覆する、ラッピング動作が実行される(図3(a)〜図3(c)参照)。
一方、溶剤除去工程、すなわち、溶剤吸収シート6による溶剤除去処理時においては、まず、各クランク9,10が互いに逆向きに(逆旋的に)回転して、各アーム11,12を鉛直方向下側に移動させる。この一対のアーム11,12の移動により、一対のテンションローラ7,8は鉛直方向下側に移動し、溶剤吸収シート6をブランケット2の外周面に接触させる(図3(b)参照)。
また、溶剤吸収シート6のラッピング動作は、図3(a)〜図3(c)に示す一連の動作に限定されるものではない。例えば、一対のテンションローラ7,8を隣接させ、溶剤吸収シート6を介して、ブランケット2の外周面に接触させた後、各テンションローラ7,8をブランケット2の外周面に沿うように、その周方向で互いに逆方向に移動させてもよい。この場合、溶剤吸収シート6とブランケット2の外周面との密着性をより一層高めることができる。
また、溶剤吸収シート6を、一対のリール20,21に巻き付けられたものとして説明したが、溶剤吸収シート6は、その両端を接続した、無端状のベルトであってもよい。
上記の印刷装置およびそれを用いた印刷方法は、例えば、液晶カラーフィルタにおける色フィルタ層やブラックマトリクスの印刷形成、PDPディスプレイの電極基板における電極パターンの印刷形成などの、高精度印刷に好適である。
印刷試験
印刷試験に使用した材料、部材および装置は、次のとおりである。
インキには、ポリエステル樹脂(商品名「パイロナール(登録商標)」、東洋紡績(株))100重量部と、メラミン樹脂(商品名「スミマール(登録商標)」、住友化学(株))20重量部と、ブチルカルビトールアセテート(溶剤、キシダ化学(株)、沸点248℃)20重量部と、ピグメントレッド177(アンスラキノン系赤色顔料、長瀬産業(株))20重量部とを配合し、脱泡分散機(シンキー製)で混合、分散したものを使用した。
ブランケット2には、厚さ0.35mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持フィルム層上に、厚さ0.55mmのシリコーンゴムからなる表面印刷層が形成された、層厚み0.9mmのシリコーンブランケットを使用した。
印刷試験時の印刷条件は、次のとおりである。
印刷速度は、インキ担持工程(凹版4からブランケット2へのインキの転写工程)と、印刷工程(ブランケット2から基板5へのインキの転写工程)とのいずれにおいても、ブランケット2の周速度で200mm/sとなるように設定した。
印刷試験は、上記の材料、部材および装置を使用した凹版オフセット印刷により、合計200枚の基板5に対し、ストライプパターンを印刷した。また、基板5への印刷を10枚終えるごとに、印刷されたストライプパターンの線幅(μm)を測定した。その結果を図6に示す。
実施例1
上記印刷試験の溶剤除去工程では、図3(c)に示すように、ブランケット2の外周面のうちブランケット2の印刷領域の全面に溶剤吸収シート6を接触させた。
上記印刷試験の溶剤除去工程では、図4に示すように、ブランケット2の外周面の概ね半分の領域に、溶剤吸収シート6を接触させ、ブランケット2と溶剤吸収シート6との接触時間を15秒とした。また、ブランケット2と溶剤吸収シート6とを15秒間接触させた後、ブランケット胴3を回転し、ブランケット2の外周面のうち、残りの半分の領域(溶剤吸収シート6と接触していない領域)が、溶剤吸収シート6と接触するように配置した。こうして、ブランケット2の外周面の概ね半分に、溶剤吸収シート6を再度接触させた。
上記印刷試験の溶剤除去工程では、図5に示すように、ブランケット胴3を、周速度20mm/sで回転させながら、ブランケット2の外周面と溶剤吸収シート6とを接触させた。また、溶剤吸収シート6には、特段の張力を付加せず、ブランケット2の回転に従って溶剤吸収シート6が移動するように、溶剤吸収シート6を一方のリール20から漸次送り出し、かつ、下流側で、他方のリール21で漸次巻き取った。
溶剤除去工程を実行しなかったこと以外は、上記印刷試験と同様にして、ストライプパターンの印刷を繰り返した。
その結果、図6に示すように、実施例1では、ストライプパターンの線幅変化を±3μm以内に抑制でき、しかも、基板5内でのストライプパターンの線幅のバラツキを±3μm以内に抑制できた。また、ブランケット2と溶剤吸収シート6との接触時間は、平均で15秒であった。
これら実施例1および実施例2の結果は、液晶カラーフィルタの色フィルタ層などの精密印刷に要求される印刷精度を十分クリアしており、極めて良好であった。
本発明は、以上の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲において、種々の設計変更を施すことが可能である。
Claims (6)
- 被印刷体へ転写されるインキを表面に担持するためのブランケットと、
前記ブランケットを表面に固定するためのブランケット胴と、
前記ブランケットの外周面との接触によって前記ブランケットに滲み込んでいるインキの溶剤を吸い取るための溶剤吸収体と、
前記溶剤吸収体を保持するための一対のテンションローラと、
各前記テンションローラに固定された一対のアームと、
一端が各前記アームに連結され、他端が支点に接続されていて、当該支点を軸に回転可能に設けられた一対のクランクとを備えており、
前記ブランケットに滲み込んでいるインキの溶剤を吸い取り、除去する溶剤除去処理時において、前記溶剤吸収体は、前記ブランケットの外周面に接触され、かつ、前記一対のテンションローラは、前記一対のクランクの回転に連動して前記一対のアームが前記ブランケットへ向かう方向に移動することにより、その移動に連動して前記ブランケットへ向かう方向に移動させられて前記ブランケットの周方向において互いに間隔をあけて前記ブランケットの外周面に対向配置され、前記溶剤吸収体を前記ブランケットの内側方向に加圧することにより、前記溶剤吸収体を緊張状態に保持することを特徴とする、印刷装置。 - 前記溶剤除去処理時において、前記溶剤吸収体が、前記ブランケットの外周面のうち少なくともブランケットの印刷領域の全面に接触されることを特徴とする、請求項1に記載の印刷装置。
- 前記一対のクランクと前記一対のアームとの連結を固定した状態で、前記一対のクランクが、前記支点に対して前記ブランケットの側で近づくように互いに逆向きに回転することにより、前記ブランケットの前記外周面が、前記溶剤吸収体に被覆されることを特徴とする、請求項2に記載の印刷装置。
- 被印刷体へ転写されるインキを表面に担持するためのブランケットと、
前記ブランケットを表面に固定するためのブランケット胴と、
前記ブランケットの外周面との接触によって前記ブランケットに滲み込んでいるインキの溶剤を吸い取るための溶剤吸収体と、
前記溶剤吸収体を保持するための一対のテンションローラと、
各前記テンションローラに固定された一対のアームと、
一端が各前記アームに連結され、他端が支点に接続されていて、当該支点を軸に回転可能に設けられた一対のクランクとを備える印刷装置を用いる印刷方法であって、
ブランケットの表面にインキを担持するインキ担持工程と、前記ブランケットの表面に担持されたインキを被印刷体に印刷する印刷工程と、前記ブランケットに滲み込んでいるインキの溶剤を吸い取り、除去する溶剤除去工程と、を備え、
前記溶剤除去工程において、前記溶剤吸収体を前記ブランケットの外周面に接触させ、かつ、前記一対のクランクの回転に連動させて前記一対のアームを前記ブランケットへ向かう方向に移動させることにより、その移動に連動させて前記一対のテンションローラを前記ブランケットへ向かう方向に移動させて、前記一対のテンションローラを、前記ブランケットの周方向において互いに間隔をあけて前記ブランケットの外周面に対向配置し、前記一対のテンションローラにより前記溶剤吸収体を前記ブランケットの内側方向に加圧することにより、前記溶剤吸収体を緊張状態に保持することを特徴とする、印刷方法。 - 前記溶剤除去工程において、前記溶剤吸収体を、前記ブランケットの外周面のうち少なくともブランケットの印刷領域の全面に接触させることを特徴とする、請求項4に記載の印刷方法。
- 前記一対のクランクと前記一対のアームとの連結を固定させた状態で、前記一対のクランクを、前記支点に対して前記ブランケットの側で近づくように互いに逆向きに回転させることにより、前記溶剤吸収体により、前記ブランケットの前記外周面を被覆することを特徴とする、請求項5に記載の印刷方法。
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