JP5340589B2 - 印刷装置および印刷方法 - Google Patents
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一方、ブランケットに浸透、蓄積したインキ溶剤をブランケットから除去するために、特許文献1には、真空排気流路を備えるカバーをブランケット胴に巻かれたブランケットに接触しない位置に設置し、このカバーでブランケットの一部を、ブランケットと接触しないように覆い、ブランケットに吸収されたインキ溶剤を真空吸引する印刷装置が提案されている(同文献の図1参照)。
このため、ブランケット表面のゴム層からインキ溶剤を吸引し、除去する効率が低く、処理に時間がかかる。
また、本発明の印刷装置は、被印刷体へ転写されるインキを表面に担持するためのブランケットと、前記ブランケットを表面に固定するためのブランケット胴と、前記ブランケットに滲み込んだインキの溶剤を前記ブランケットから吸引し、除去するための真空チャンバと、を備え、前記真空チャンバが、少なくとも前記ブランケットの印刷領域における外周面と非接触状態で、前記ブランケットを被覆し、密閉する一対のカバーと、前記一対のカバーを互いに接続するヒンジと、一方の前記カバーに連設された真空吸引流路とを備え、前記一対のカバーは、前記ブランケットの前記表面に沿った形状で形成されていて、その軸方向における一対の端部がそれぞれパッキンを介して前記ブランケットの前記表面に当接しており、前記ヒンジが閉じられることによって前記ブランケットを被覆し、密閉している密閉状態と、前記ヒンジが開かれることによって前記ブランケットを開放している開放状態とに制御されることを特徴としている。
さらに、上記印刷装置では、ブランケットの印刷領域において、ブランケットの外周面と真空チャンバとが非接触状態とされている。このため、真空チャンバ内の減圧により、ブランケットの外周面に真空チャンバが強く圧接されたとしても、少なくともブランケットの印刷領域では、ブランケットの外周面と真空チャンバとが接触することがなく、真空チャンバの圧接に起因するブランケット外周面の変形、損傷、劣化などの発生と、それに伴う印刷品質の低下とを防止することができる。
また、前記真空チャンバは、前記一対のカバーの開閉を制御するための一対のエアシリンダをさらに備えていることが好ましい。
さらに、上記の印刷方法では、ブランケットの印刷領域において、ブランケットの外周面と真空チャンバとが非接触状態とされている。このため、溶剤吸引工程時の真空チャンバ内の減圧により、ブランケットの外周面に真空チャンバが強く圧接されたとしても、少なくともブランケットの印刷領域では、ブランケットの外周面と真空チャンバとが接触することがなく、真空チャンバの圧接に起因するブランケット外周面の変形、損傷、劣化などの発生と、それに伴う印刷品質の低下とを防止することができる。
ブランケット2は、支持フィルム層と、その支持フィルム層の外周を被覆する表面印刷層とを備えている。
なお、ブランケット2の表面印刷層と支持フィルム層との総厚みは、例えば、100〜6000μm、好ましくは、200〜2500μmである。
ブランケット胴3には、例えば、金属胴などが用いられる。このブランケット胴3は、回転移動が自在となるように、かつ、ブランケット胴3の軸線方向と直交する方向への平行移動が自在となるように保持される。具体的に、ブランケット胴3は、表面に固定されているブランケット2の外周面と、後述する凹版4または基板5とを接触させつつ、凹版4および基板5上でそれぞれ転動可能なように保持される。
また、ブランケットは、例えば、円筒状のスリーブと、円筒状スリーブの外周面に形成された表面印刷層と、を有する円筒形状をなすものであってもよい。この場合、ブランケットは、円筒状のスリーブの内周面をブランケット胴の外周面にはめ込み、固定することにより用いられる。また、この場合において、ブランケットの周方向における印刷領域には、ブランケットの外周面のうち被印刷体のサイズに応じた任意の領域が選択される。
上記インキ担持工程においては、ブランケット2を凹版4と接触させつつ、凹版4上で転動させることにより、凹版4の図示しない凹部に充填されたインキをブランケット2の外周面に転写する。これにより、ブランケット2の外周面に、基板5に印刷される印刷パターンに対応するインキパターンが形成される。
基板5は、特に限定されず、印刷の目的および用途に応じて、適宜選択される。
顔料は、液晶カラーフィルタの色フィルタ層を形成する場合には、例えば、アンスラキノン系レッド顔料、ハロゲン化フタロシアニン系グリーン顔料、フタロシアニン系ブルー顔料などが用いられ、さらに、イエロー顔料やバイオレット顔料などが補助顔料として用いられる。また、液晶カラーフィルタのブラックマトリクスを形成する場合には、例えば、カーボンブラック、酸化鉄(鉄黒)、チタンブラック、硫酸鉄、Fe−Co−Moなどの合金、などが用いられる。顔料の平均一次粒子径は、好ましくは、1〜100nmである。
また、上記したインキは、例えば、上記の樹脂、溶剤、顔料などを配合し、各種のミキサ、ニーダ、ミルなどで混合、攪拌することにより調製される。
溶剤吸引除去手段としての真空チャンバ6は、ブランケット2を被覆して、密閉状態とするとともに、ブランケット2の外周面近傍に、真空度が高い状態に維持された空間を提供するための部材である。
真空チャンバ6の密閉状態は、真空チャンバ6による真空吸引処理の実行時における状態であって、後述するように、本発明の印刷方法の溶剤吸引除去工程におけるブランケット2と真空チャンバ6との状態を示している。一方、真空チャンバ6の開放状態は、真空吸引処理の休止状態であって、本発明の印刷方法の溶剤吸引除去工程以外(例えば、インキ担持工程、印刷工程)における真空チャンバ6の状態である。
さらに、図4(a)および図4(b)を参照して、上記密閉状態においては、真空チャンバ6の一対のカバー7,8が、ブランケット2(ブランケット胴3)の軸方向yにおける印刷領域16全体を被覆している。また、各カバー7,8の軸方向yにおける一対の端部17,18は、それぞれパッキン14を介して、ブランケット2の軸方向yにおける非印刷領域19に当接している。
上記実施形態では、一対のカバー7,8の軸方向y側における各端部17,18が、いずれもパッキン14を介して、ブランケット2の外周面に当接している。しかしながら、これらの端部17,18は、ブランケット2の外周面と当接することに限定されるものではなく、例えば、ブランケット胴3の外周面と当接してもよい。なお、真空チャンバ6の端部がブランケット2の外周面と当接する場合は、ブランケット2の外周面、すなわち、ブランケット2の表面ゴム層が、ブランケット2と真空チャンバ6との間の密閉性を担保するためのパッキンとしての作用を発揮する。一方、ブランケット胴3の外周面と当接する場合は、各端部17,18の先端にパッキン14を備えることが必須要件となる。
この溶剤吸引除去工程においては、まず、ヒンジ9を閉じて、真空チャンバ6の一対のカバー7,8を上記密閉状態とすることにより、インキ担持工程や印刷工程を経たブランケット2の外周面を真空チャンバ6で被覆する。このとき、各カバー7,8の周方向x側端部12,13と、各カバー7,8の軸方向yにおける一対の端部17,18とは、それぞれ、ブランケット2の周方向xにおける非印刷領域15と、軸方向yにおける非印刷領域19とで、ブランケット2の外周面に当接させる。
また、溶剤吸引除去工程において、真空チャンバ6による溶剤吸引除去処理の時間は、ブランケット2のインキ溶剤による膨潤の程度や、真空吸引によるインキ溶剤の除去されやすさ(具体的には、例えば、沸点などの、インキ溶剤の揮発性を示すファクター)などに合わせて適宜設定されることから、特に限定されないが、通常、例えば、3〜60秒、好ましくは、5〜30秒とする。
図5は、真空チャンバの設計変更例を示す概略断面図である。
一対のカバー31,32は、ヒンジ9を閉じて、ブランケット29の外周面を被覆し、密閉している密閉状態(図5に示す状態)と、ヒンジ9を開いて、ブランケット29を開放している状態との2つの状態に制御される。この2つの状態は、例えば、図1および図2に示す一対のエアシリンダ20,21と同様の機構で制御することにより達成される。
図5を参照して、上記密閉状態においては、真空チャンバ28の一対のカバー31,32が、ブランケット2の周方向x全体を被覆している。一方、各カバー31,32の軸方向(ブランケット胴30の軸方向)における一対の端部は、いずれもブランケット29の非印刷領域における外周面、またはブランケット胴30の外周面と当接し、これにより、真空チャンバ28によるブランケット29の被覆、密閉が達成されている。
上記の印刷装置において上記の印刷方法を実施すれば、ブランケットからのインキ溶剤の吸引・除去が効率的に達成され、高精度印刷における印刷の生産性を向上させることができる。
印刷試験
印刷試験に使用した材料、部材および装置は、次のとおりである。
インキには、ポリエステル樹脂(商品名「バイロナール(登録商標)」、東洋紡績(株))100重量部と、メラミン樹脂(商品名「スミマール(登録商標)」、住友化学(株))20重量部と、ブチルカルビトールアセテート(溶剤、キシダ化学(株)、沸点248℃)20重量部と、ピグメントレッド177(アンスラキノン系赤色顔料、長瀬産業(株))20重量部とを配合し、脱泡分散機(シンキー製)で混合、分散したものを使用した。
ブランケット2には、厚さ0.35mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持フィルム層上に、厚さ0.55mmのシリコーンゴムからなる表面印刷層が形成された、層厚み0.9mmのシリコーンブランケットを使用した。
印刷試験は、実施例1と比較例1とについて行い、それぞれの印刷条件は、次のとおりとした。印刷速度は、インキ担持工程(凹版4からブランケット2へのインキの転写工程)と、印刷工程(ブランケット2から基板5へのインキの転写工程)とのいずれにおいても、ブランケット2の周速度で200mm/sとなるように設定した。印刷圧力は、ブランケット2の押込み量を100μmとなるように設定した。
実施例1における印刷処理では、上記のインキ担持工程と印刷工程とからなる一連の印刷処理を1回経るごとに、上記の溶剤吸引除去工程を実行した。具体的に、実施例1では、一連の印刷処理を1回経るごとにブランケット2を真空チャンバ6で密閉し、真空チャンバ6内の圧力を、ゲージ圧で−5kPa(G)の陰圧とし、この状態を15秒間保持した(図1参照)。
実施例1と比較例1とでの印刷パターンの線幅の経時変化の結果を図8に示す。
図8に示すように、実施例1では、ストライプパターンの線幅変化を±3μm以内に抑制でき、基板5内でのストライプパターンの線幅のバラツキを±3μm以内に抑制できた。また、吸引ノズル14による吸引に要した時間は、平均で20秒間であった。
本発明は、以上の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲において、種々の設計変更を施すことが可能である。
Claims (4)
- 被印刷体へ転写されるインキを表面に担持するためのブランケットと、前記ブランケットを表面に固定するためのブランケット胴と、前記ブランケットに滲み込んだインキの溶剤を前記ブランケットから吸引し、除去するための真空チャンバと、を備え、
前記真空チャンバが、少なくとも前記ブランケットの印刷領域における外周面と非接触状態で、前記ブランケットを被覆し、密閉する一対のカバーと、前記一対のカバーを互いに接続するヒンジと、一方の前記カバーに連設された真空吸引流路とを備え、
前記一対のカバーは、前記ブランケットの前記表面に沿った形状で形成されていて、その周方向側端部がそれぞれパッキンを介して前記ブランケットの前記表面に当接しており、前記ヒンジが閉じられることによって前記ブランケットを被覆し、密閉している密閉状態と、前記ヒンジが開かれることによって前記ブランケットを開放している開放状態とに制御されることを特徴とする、印刷装置。 - 被印刷体へ転写されるインキを表面に担持するためのブランケットと、前記ブランケットを表面に固定するためのブランケット胴と、前記ブランケットに滲み込んだインキの溶剤を前記ブランケットから吸引し、除去するための真空チャンバと、を備え、
前記真空チャンバが、少なくとも前記ブランケットの印刷領域における外周面と非接触状態で、前記ブランケットを被覆し、密閉する一対のカバーと、前記一対のカバーを互いに接続するヒンジと、一方の前記カバーに連設された真空吸引流路とを備え、
前記一対のカバーは、前記ブランケットの前記表面に沿った形状で形成されていて、その軸方向における一対の端部がそれぞれパッキンを介して前記ブランケットの前記表面に当接しており、前記ヒンジが閉じられることによって前記ブランケットを被覆し、密閉している密閉状態と、前記ヒンジが開かれることによって前記ブランケットを開放している開放状態とに制御されることを特徴とする、印刷装置。 - 前記真空チャンバは、前記一対のカバーの開閉を制御するための一対のエアシリンダをさらに備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載の印刷装置。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の印刷装置を用いる印刷方法であって、ブランケットの表面にインキを担持するインキ担持工程と、前記ブランケットの表面に担持されたインキを被印刷体に印刷する印刷工程と、前記ブランケットに滲み込んでいるインキの溶剤を前記真空チャンバにより前記ブランケットから吸引し、除去する溶剤吸引除去工程と、を備えていることを特徴とする、印刷方法。
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