JP4499148B2 - インキ被膜用平坦化ローラ - Google Patents
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Description
しかし、印刷により形成されるインキ被膜は、通常、中央部分が丸く盛り上がった、いわゆるかまぼこ型の断面形状を有しており、その表面の平坦性が乏しい。また、インキ被膜の平坦性が乏しいために、着色フィルタ層を透過する光が拡散され、これにより、着色フィルタ層の光透過性の低下、カラーフィルタの色ムラ、カラーフィルタ上に形成される液晶層の配向性の低下などが生じる。
そこで、本発明の目的は、透明基板上に形成されたインキ被膜の表面を平坦化するための平坦化ローラであって、インキの逆転写を防止しつつ、上記透明基板の透過光に色ムラが発生することを抑制できるインキ被膜用平坦化ローラを提供することにある。
本発明のインキ被膜用平坦化ローラにおいては、前記着色インキ被膜が、カラーフィルタの着色フィルタ層用インキからなる被膜であることが好適である。すなわち、本発明のインキ被膜用平坦化ローラは、液晶カラーフィルタの着色フィルタ層のための平坦化部材として好適である。
基材層2は、離型層4の支持基材である。後述するように、離型層4は、厚さ数μm程度の薄層であることから、離型層4の平滑性は基材層2の平滑性に大きく左右される。そこで、基材層2の表面粗さは、後述するように、離型層4に要求される表面粗さの程度に応じて、適宜の範囲に設定される。
基材層2は、その表面粗さ、機械的強度などの物性値を考慮しつつ、離型層4との親和性が良好で、十分な接着強度が得られる材質から適宜選択すればよく、具体的には、例えば、樹脂、金属などからなるフィルムまたはシートが挙げられる。このうち、樹脂としては、例えば、各種エンジニアプラスチックが挙げられ、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、例えば、イミド系樹脂、アクリル系樹脂、などが挙げられる。また、金属としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、鉄、銅などが挙げられる。基材層2の形成材料は、上記のなかでも特に、PETフィルムが好適である。
離型層4の形成材料としては、例えば、シリコーンゴム、シリコーン系エラストマー、シリコーンレジンなどからなるシリコーン系離型剤、例えば、フッ素ゴム、フッ素系エラストマー、フッ素樹脂などからなるフッ素系離型剤、などが挙げられる。これらは、表面自由エネルギー(臨界表面張力)が小さい素材であるため、インキに対する離型性に優れている。離型層4の形成材料は、上記のなかでも、特に、シリコーン系離型剤が好ましく、シリコーンレジンがさらに好ましい。
弾性層6の厚みは、弾性層6の形成材料、弾性の程度などを考慮し、すなわち、クッション性が十分で、かつ、圧縮による変形の程度が過大とならない範囲で適宜選択される。具体的に、弾性層6の厚みは、100〜5000μmであり、好ましくは、500〜1000μmである。弾性層6の厚みが上記範囲を下回ると、弾性層6の表面に付着した異物による突起を吸収できなくなり、平坦化処理時にインキ被膜の表面に凹凸が生じてしまう。一方、弾性層6の厚みが上記範囲を上回ると、平坦化処理時にインキ被膜に対して加わる圧力が小さくなりすぎて、平坦化処理の効果が十分に発揮されなくなる。
基材層2の表面に離型層4や弾性層6を形成するには、例えば、まず、基材層2の周縁のうち相対する2辺に沿って、一対の土手を形成する。この土手は、例えば、メンディングテープを重ねて貼り付けることにより形成し、その高さを、離型層4や弾性層6に要求される厚みに合わせる。次いで、一対の土手で挟まれた領域内に、離型層形成材料や弾性層形成材料を注入し、さらに、一対の土手の間に磨き棒を架け渡し、この磨き棒を土手の表面で転動させることによって、離型層形成材料や弾性層形成材料の厚みを均等に均す。こうして、離型層形成材料や弾性層形成材料の厚みを土手の高さと同じに調整後、必要に応じて加熱し、離型層形成材料や弾性層形成材料を硬化させる。
上記のインキ被膜用平坦化部材1は、例えば、図3に示すように、シリンダ7の外周面に巻きつけて、インキ被膜用平坦化ローラ8として使用する。
インキ被膜用平坦化ローラ8は、シリンダ7と、上記インキ被膜用平坦化部材1と、を備えるものであって、インキ被膜用平坦化部材1が、その弾性層6側表面を、シリンダ7と向かい合わせて、シリンダ7の終面に固定されている。
また、インキ被膜用平坦化部材1によるインキ被膜の平坦化処理では、例えば、インキ被膜の表面に対し、インキ被膜用平坦化部材1の離型層4側表面を向かい合わせて配置し、インキ被膜用平坦化部材1の弾性層6側から、ローラでインキ被膜用平坦化部材1をインキ被膜に押し当てつつ、ローラを転がすことにより達成される。
以下の実施例および比較例において、離型層および基材層の算術平均粗さRaと、離型層および弾性層の厚みとは、触針型表面形状測定装置(品名「アルファステップ500」、ケーエルエー・テンコール(株)製)で測定した(測定温度25℃)。なお、基材層の厚みは、製品の規格値である。
また、弾性層の弾性率として、弾性層形成材料の圧縮弾性率Ecの値(測定温度25℃)を示した。弾性層が2種以上の弾性層形成材料の混合物からなる場合には、各弾性層形成材料の圧縮弾性率Ecの値と含有割合から、弾性層としての圧縮弾性率Ecの値を算出した。
インキ被膜用平坦化部材の製造
実施例1
インキ被膜用平坦化部材の基材層として、縦(L1)300mm、横(L2)400mmの矩形状にカットされた、厚さ100μm、算術平均粗さRa380nmのPETフィルム(品名「テイジン テトロン(登録商標)フィルム U4」、帝人(株)製)を使用した(図1参照)。
実施例2、3および比較例1
離型剤の注入量を調節することにより、離型層4の硬化後の厚みが、実施例2で1μm、実施例3で0.7μm、比較例1で0.7μmとなるように設定したこと以外は、実施例1と同様にして、シート状のインキ被膜用平坦化部材を得た。
基材層2として、短辺の長さ300mm、長辺の長さ400mmの矩形状にカットされた、厚さ100μm、算術平均粗さRa66.8nmのPETフィルム(品名「テイジン テトロン(登録商標)フィルム S」、帝人(株)製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、シート状のインキ被膜用平坦化部材1を得た。
離型層4を形成するための離型剤として、品名「SEPA−COAT」(シリコーンレジン、臨界表面張力γc16mN/m、算術平均粗さRa8.7nm、信越化学工業(株)製)と、品名「KS−837」(シリコーンレジン、臨界表面張力γc16mN/m、算術平均粗さRa38nm、信越化学工業(株)製)とを、80:20の重量比で混合したものを使用した。また、基材層2として、縦(L1)300mm、横(L2)400mmの矩形状にカットされた、厚さ100μm、算術平均粗さRa11.5nmのPETフィルム(品名「ルミラー(登録商標)T60」、東レ(株)製)を使用した。上記の離型剤と基材層とを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、シート状のインキ被膜用平坦化部材1を得た。
離型層4を形成するための離型剤として、品名「SEPA−COAT」(シリコーンレジン、臨界表面張力γc16mN/m、算術平均粗さRa8.7nm、信越化学工業(株)製)と、品名「KS−830」(シリコーンレジン、臨界表面張力γc38mN/m、算術平均粗さRa10.5nm、信越化学工業(株)製)との混合物を使用し、「SEPA−COAT」と「KS−830」との混合割合(重量比)を、実施例5で40:60とし、比較例3で20:80としたこと以外は、実施例1と同様にして、シート状のインキ被膜用平坦化部材1を得た。
弾性層6を形成するためのウレタン樹脂として、品名「KU−7002」(圧縮弾性率Ec0.07MPa、日立化成工業(株)製)と、品名「KU−7008」(圧縮弾性率Ec0.95MPa、日立化成工業(株)製)との混合物を使用し、「KU−7002」と「KU−7008」との混合割合(重量比)を、実施例6で50:50とし、比較例4で40:60としたこと以外は、実施例1と同様にして、シート状のインキ被膜用平坦化部材1を得た。
弾性層6を形成するためのウレタン樹脂として、品名「KU−5550−9」(圧縮弾性率Ec5.3MPa、日立化成工業(株)製)と、品名「U−801A/B」(圧縮弾性率Ec32MPa、日立化成工業(株)製)との混合物を使用し、「KU−5550−9」と「U−801A/B」との混合割合(重量比)を、実施例7で55:45とし、比較例5で45:55としたこと以外は、実施例1と同様にして、シート状のインキ被膜用平坦化部材1を得た。
弾性層6の形成材料として、ウレタン樹脂に代えて、シリコーンレジン(2液硬化型有機変性シリコーンレジン、品名「SCR−1011A/B」、圧縮弾性率Ec1400MPa、信越化学工業(株)製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、シート状のインキ被膜用平坦化部材1を得た。
ウレタン樹脂の注入量を調節することにより、弾性層6の硬化後の厚みが、比較例7で80μm、実施例8で100μm、実施例9で4800μm、比較例8で5200μmとなるように設定したこと以外は、実施例1と同様にして、シート状のインキ被膜用平坦化部材1を得た。
弾性層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、シート状のインキ被膜用平坦化部材を得た。
すなわち、まず、基材層の一方側表面における各端縁に沿って、厚さ30μm、幅12mmのメンディングテープを貼り付けることにより、基材層の一方側表面の周縁部に厚さ30μmの土手を形成した。次いで、基材層の一方側表面の上記土手で囲まれた領域内に、離型剤(シリコーンレジン、臨界表面張力γc16mN/m、算術平均粗さRa8.7nm、品名「SEPA−COAT」、信越化学工業(株)製)を注入し、直径12mmのステンレス製磨き棒で離型剤を均した後、常温で放置した。離型剤の流動性が失われた後、基材層の一方側表面からメンディングテープを除去し、100℃のクリーンオーブンで10分間加熱することにより、離型剤を完全に硬化、乾燥させて、離型層を形成した。こうして、基材層と、この基材層の一方側表面に重ね合わされた離型層とを備える、シート状のインキ被膜用平坦化部材を得た。
凹版オフセット印刷用に調製された、レッド(R)、グリーン(G)およびブルー(B)の3色の着色フィルタ層形成用インキと、開口幅100μm、深さ7μmのストライプ状の凹部を備えるガラス製の凹版と、精密印刷用のシリコーンブランケット(総厚み0.9mm、SRI研究開発(株)製)と、平型凹版オフセット印刷機(ナカン(株)製)とを用いて、カラーフィルタの透明基板上に、RGBの3色の着色フィルタ層を印刷した。着色フィルタ層は、線幅が約100μm、ピッチが100μmで、R、G、Bのストライプパターンをこの順に並べて形成した。
(1) 逆転写
カラーフィルタ9の着色フィルタ層11に対する平坦化処理後に、インキ被膜用平坦化部材(インキ被膜用平坦化ローラ)の離型層側表面を目視で観察することにより、離型層への着色フィルタ層形成用インキの付着、すなわち逆転写を下記の基準で評価した。
○:逆転写が観察されなかった。インキ被膜用平坦化部材の離型層は、インキの離型性が良好であった。
×:逆転写の発生が観察された。インキ被膜用平坦化部材の離型層は、インキの離型性が不十分であった。
カラーフィルタ9の着色フィルタ層11に対する平坦化処理後、未硬化の着色フィルタ層11について、その算術平均粗さRaを触針型表面形状測定装置(品名「アルファステップ500」、ケーエルエー・テンコール(株)製)で測定した(測定温度25℃)。
◎:表面粗さが極めて小さく、着色フィルタ層の平坦性が極めて良好であった。
○:表面粗さが小さく、着色フィルタ層の平坦性が良好であった。
×:表面粗さが大きく、着色フィルタ層の平坦性が不十分であった。
カラーフィルタ9の着色フィルタ層11に対する平坦化処理後、カラーフィルタ9をクリーンオーブンに投入し、230℃で30分間加熱することにより、着色フィルタ層11を硬化した。次いで、着色フィルタ層11に対し、表面検査用ナトリウムランプ(フナテック(株)製)を照射し、R、GおよびBの3色の着色フィルタ層間での膜厚のばらつきの程度を目視で観察し、色ムラの程度を下記の基準で評価した。
◎:3色の着色フィルタ層間での膜厚のばらつきが観察されず、着色フィルタ層の色ムラは、全く観察されなかった。
○:3色の着色フィルタ層間での膜厚のばらつきが抑制されていた。着色フィルタ層の色ムラは、ごくわずかに観察されたものの、液晶ディスプレイへの実装時において、目視で検知できない程度であった。
×:3色の着色フィルタ層間での膜厚のばらつきが顕著であった。
カラーフィルタ9の着色フィルタ層11に対する平坦化処理後に、着色フィルタ層11の表面を光学顕微鏡で観察し、着色フィルタ層11の異物欠損の有無を観察し、下記の基準で評価した。
◎:異物の付着に伴う着色フィルタ層11の欠陥や凹凸は、全く観察されなかった。
○:異物の付着に伴う着色フィルタ層11の欠陥や凹凸がわずかに観察されたが、透過光による観察で色ムラは確認されなかった。
△:異物の付着に伴う着色フィルタ層11の欠陥や凹凸が一部に観察された。また、透過光による観察で、着色フィルタ層11の一部に色ムラが確認された。
×:異物の付着に伴う着色フィルタ層11の欠陥および凹凸の発生が顕著であった。また、透過光による観察で、着色フィルタ層11の色ムラが顕著に確認された。
上記(1)〜(4)の評価結果に基づき、下記の基準で、総合的な評価をした。
◎:極めて良好
○:良好
×:不良
以上の結果を表1〜3に示す。
Claims (2)
- シリンダと、前記シリンダの外周面に巻きつけられて固定された平坦化シートとを備え、透明基板上に形成された着色インキ被膜の表面に前記平坦化シートが巻きついた前記シリンダを押圧しながら転がすことにより、前記インキ被膜の表面を平坦にするためのインキ被膜用平坦化ローラであって、
前記平坦化シートは、可撓性を有する基材層と、前記基材層の一方側表面に形成された離型層と、前記基材層の他方側表面に形成された弾性層とからなる3層構造シートであり、前記弾性層の表面と前記シリンダの前記外周面とが向かい合うように前記シリンダに巻きつけられていて、
前記離型層は、前記基材層側と反対側の表面において、算術平均粗さ(Ra)が30〜280nmであり、かつ、臨界表面張力(γc)が30mN/m以下であり、
前記弾性層は、厚みが100〜5000μmであり、かつ、圧縮弾性率(Ec)が0.5〜20MPaであることを特徴とする、インキ被膜用平坦化ローラ。 - 前記着色インキ被膜が、カラーフィルタの着色フィルタ層用インキからなる被膜であることを特徴とする、請求項1に記載のインキ被膜用平坦化ローラ。
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