JP4908876B2 - 空気除菌装置 - Google Patents

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本発明は、細菌、ウィルス、真菌等の空中浮遊微生物(以下、ウィルス等という)の除菌が可能な空気除菌装置に関する。
一般に、ウィルス等の除菌を目的として、空気中に電解水ミストを拡散させて、この電解水ミストをウィルス等に直接接触させ、ウィルス等を不活化する空気除菌装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−033070号公報
しかし、従来の空気除菌装置は、微粒子状の電解水ミストが到達しやすい使用環境下、すなわち、比較的小空間では効力を発揮するものの、電解水ミストが到達し難い使用環境下、すなわち、大空間、例えば幼稚園、小学校、中学校及び高等学校や、介護保険施設や、病院等では効力を発揮し難いという問題がある。
これを解消するため、保水性を有し、図8に示すように通風孔83が貫通する二層構造の気液接触部材105を設け、水道水を電気分解して得た電解水を気液接触部材105に浸透させ、シロッコファン等の送風ファンによって、気液接触部材105に大空間の空気を矢印F1に示すように送風し、この空気を通風孔83に送って電解水に接触させることにより、空気中に含まれるウィルス等やアレルギー物質を除菌する空気除菌装置が出願人によって提案されている。
このような空気除菌装置の気液接触部材では、気液接触部材における空気と電解水との接触効率を向上させることにより、より良い除菌効果が得られる。これを実現するために、気液接触部材の奥行を延ばしたり、通風孔を小さくすることによって接触面積を拡大する方法が考えられるが、いずれも気液接触部材が大型化してしまったり、圧力損失が極めて大きくなってしまう等の問題が生じてしまう。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、気液接触部材の奥行を抑えつつ、気液接触部材における空気と電解水との接触効率を向上させることができる空気除菌装置を提供することにある。
本発明は、貫通する孔部が通風方向に横並びに形成された気液接触部材と、この気液接触部材に、水を電気分解して得た活性酸素種を含む電解水を供給し、当該気液接触部材の前記孔部に室内の空気を通風して室内に吹き出す空気除菌機構とを備え、前記気液接触部材は、所定のピッチで波状に屈曲する第1波状部材を横並びに配置した第1接触部材と、前記ピッチよりも大きいピッチで波状に屈曲するとともに第1接触部材よりも通風方向に長い第2波状部材を横並びに配置した第2接触部材とを有し、前記第1接触部材が上流側となるように当該第1接触部材と前記第2接触部材とを前記通風方向に積層して配置したことを特徴とする。
この場合において、前記孔部は、当該孔部の通風方向の上流側から下流側に向けてその大きさがステップ状に大きくなるよう変化して乱流を発生させる孔形状でであってもよい。また、前記波状部材は、保水性を有する素材で形成されていてもよい。
本発明では、気液接触部材の孔部の大きさが、孔部の通風方向のいずれかの位置でその大きさが変化する孔形状であることにより、気液接触部材の奥行を抑えつつ、気液接触部材における空気と電解水との接触効率を向上させることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
床置き式空気除菌装置1を図1に示す。この床置き式空気除菌装置1は、箱形の筐体2を備え、この筐体2は、脚片2Aと、前パネル2Bと、天パネル2Cとを含み、この天パネル2Cの両側には、操作蓋2D、開閉蓋2Eがそれぞれ横並びに配置されている。また、前パネル2Bの左側上部には、各種情報を報知するための複数のLED50を備える報知パネル39が配置されている。
この筐体2の下部には、図2に示すように、吸込口3が配置され、この吸込口3の上方にはプレフィルタ3Aが配置されている。このプレフィルタ3Aの上方には送風ファン7が支持板8を介して筐体2に支持されている。この支持板8の上方には、保水性の高い気液接触部材5が、図3に示すように斜めに配置されている。この気液接触部材5と送風ファン7との間には水受皿9が配置され、気液接触部材5の上方には、横長の吹出口4が配置されている。
気液接触部材5の傾斜角θは、図3に示すように、30°以上であることが望ましい。それ以下の傾斜角θの場合、滴下した電解水が、気液接触部材5の傾斜に沿って流れず、下方に落下する。また、傾斜角θが90°に近づいた場合、気液接触部材5を通過する送風経路が水平に近くなり、その分だけ上方への吹き出しが困難になる。この吹き出し方向を水平に近付けた場合、吹き出し空気を遠くに送風できなくなり、後述するように、大空間の除菌に適した装置とならない。傾斜角θは、80°>θ>30°が好ましく、さらに好ましくは、75°>θ>55°であり、本構成では約57°である。
気液接触部材5の下方には、図2に示すように、水受皿9が配置され、この水受皿9には、給水タンク支持皿10が連接されている。この給水タンク支持皿10には、当該支持皿10内に塩素イオンを含む水道水を供給する給水タンク11と、循環ポンプ13とが配置されている。この循環ポンプ13には電解槽31が接続されている。
電解槽31は、水受皿9及び給水タンク支持皿10より上方に配置され、電解槽31には循環ポンプ13が運転を開始すると、給水タンク支持皿10から吸い上げられた水が貯留され、循環ポンプ13が運転を停止すると、電解槽31内の水は重力により給水タンク支持皿10に自然落下し、電解槽31が空になる。
この電解槽31には、図4に示すように、一方が正、他方が負となる対の電極32、33を交互に備え、電極32、33は、通電された場合、電解槽31に流入した水道水を電気分解して活性酸素種を生成させる。ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、或いは過酸化水素といった、いわゆる狭義の活性酸素に、オゾン、次ハロゲン酸等といった、いわゆる広義の活性酸素を含めたものとする。電解槽31は、気液接触部材5に接近して配置され、水道水を電気分解して生成された活性酸素種を、ただちに気液接触部材5に供給できるように構成される。
電極32、33は、例えばベースがTi(チタン)で皮膜層がIr(イリジウム)、Pt(白金)から構成された電極板であり、この電極32、33に流れる電流値は、電流密度で数mA(ミリアンペア)/cm2(平方センチメートル)〜数十mA/cm2になるように設定され、所定の遊離残留塩素濃度(例えば1mg(ミリグラム)/l(リットル))を発生させる。
詳述すると、上記電極32、33により水道水に通電すると、カソード電極では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-
の反応が起こり、アノード電極では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応が起こると同時に、
水に含まれる塩素イオン(水道水に予め添加されているもの)が、
2Cl-→Cl2+2e-
のように反応し、さらにこのCl2は水と反応し、
Cl2+H2O→HClO+HCl
となる。
従って、電極32、33に通電することにより、殺菌力の大きいHClO(次亜塩素酸)を発生させ、この次亜塩素酸が供給された気液接触部材5に空気を通過させることにより、この気液接触部材5で雑菌が繁殖することを防止でき、空気中に浮遊するウィルスを不活化することができる。また、空気中の臭気も気液接触部材5を通過する際に、次亜塩素酸と反応し、イオン化して溶解するので、空気が脱臭される。
図5に気液接触部材5の分解斜視図を示す。気液接触部材5は、通風する空気の上流側に配置される第1接触部材60と下流側に配置される第2接触部材70とを備え、これら第1接触部材60と第2接触部材70とを縦並びに配置した二層構造を有している。なお、この図では、第1接触部材60と第2接触部材70との間隔を離して図示しているが、実際の気液接触部材5では、第1接触部材60と第2接触部材70との間隔はほとんどない。
第1接触部材60は、ピッチp1で波状に屈曲する波状部材61と仕切部材62とを交互に横並びに積層しており、波状部材61と仕切部材62との間に略三角形状の複数の孔部63を横並びに形成する。
また、第2接触部材70は、第1接触部材60と同様に、ピッチp2で波状に屈曲する波状部材71と仕切部材72とを交互に横並びに積層しており、波状部材71と仕切部材72との間に略三角形状の複数の孔部73を横並びに形成する。
第1接触部材60と第2接触部材70とは、送風ファン7から送風された空気が、第1接触部材60、第2接触部材70の順に通風するように配置される。ここで、波状部材71のピッチp2は、波状部材61のピッチp1よりも大きく、孔部73の大きさは孔部63の大きさよりも大きい。このため、気液接触部材5における空気の通風孔は、孔部63から孔部73に流入する位置でステップ状に大きくなる。
上記波状部材61、71及び仕切部材62、72は、電解水が浸透する繊維素材により形成されている。第1接触部材60及び第2接触部材70の上縁部には、電解水供給管17に形成された多数の散水孔(図示せず)から吐出される電解水が滴下する。この滴下した電解水は波状部材61、71及び仕切部材62、72の隅々に浸透する。
ここで、波状部材61、71及び仕切部材62、72の素材には、電解水による劣化が少ない素材、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、PET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE等)またはセラミックス系材料等の素材が使用され、本構成では、PET樹脂が使用されている。なお、電解水は防かび性を発揮するため、気液接触部材5には防かび剤の塗布が不要である。
次に、図6を参照して、床置き式空気除菌装置1の空気除菌時の動作を説明する。なお、この図においても図5と同様に、第1接触部材60と第2接触部材70との間隔を離して図示している。
ユーザが、操作蓋2D(図1参照)を開くと、図示を省略した操作パネルが内側に設けられており、この操作パネルを操作することで、床置き式空気除菌装置1の運転が開始される。運転が開始されると、循環ポンプ13が駆動され、給水タンク支持皿10に溜まった水道水が、電解槽31に供給される。
この電解槽31では、電極32、33への通電により、水道水が電気分解されて活性酸素種を含む電解水が生成される。この電解水は、電解水供給管17の散水孔(図示せず)を経て、気液接触部材5の上縁部に滴下し、この上縁部から下方に向けて徐々に浸透する。
気液接触部材5の下縁部から滴下した電解水は、水受皿9が受けて、水受皿9の一端側の傾斜面により給水タンク支持皿10内に流入し、そこに貯留される。本構成では、水が循環式となっており、蒸発等により水量が減った場合、給水タンク11(図2参照)内の水道水が、給水タンク支持皿10に適量供給される。この給水タンク11は、開閉蓋2E(図1参照)を開いて取り出し自在に配置され、この給水タンク11を取り出して水道水の補給が可能となる。
電解水が浸透した気液接触部材5には、送風ファン7を経て、矢印Xで示すように、室内の空気が供給される。この室内の空気は、気液接触部材5に浸透した電解水中の活性酸素種に接触して或いは近傍を通過して、再び、室内に吹き出される。この活性酸素種は、ウィルス、花粉及びダニのフンや死骸等のアレルギー物質を抑制する機能を持ち、例えば、空気中にインフルエンザウィルスが浮遊した場合、その感染に必須の当該ウィルスの表面蛋白(スパイク)を破壊、消失(除去)し、これを破壊すると、インフルエンザウィルスと、当該ウィルスが感染するのに必要な受容体(レセプタ)とが結合しなくなり、これによって感染が阻止される。実証試験の結果、インフルエンザウィルスが浮遊した空気を、本構成の気液接触部材5に通した場合、当該ウィルスを99%以上除去できることが判明した。このように、電解槽31、気液接触部材5、循環ポンプ13は、空気除菌機構12を構成している。
図7は、気液接触部材5の縦断面図を示す図である。
気液接触部材5は、第2接触部材70の波状部材71のピッチP2が、第1接触部材60の波状部材61のピッチP1よりも大きく形成されているため、空気が通風する気液接触部材5の通風孔は、上流側の孔部63から下流側の孔部73へとステップ状に大きくなる。これにより、気液接触部材5に送風された空気は、矢印F2に示すように、孔部63を略層流の状態で流れ、孔部63から孔部73に流れるときに通風孔が急激に拡大して渦が発生すると共に、孔部73内を乱流の状態で流れる。従って、空気が気液接触部材5に浸透した電解水に接触あるいは近傍を通過する距離及び時間が長くなる、すなわち、空気と気液接触部材5との接触効率が向上する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、気液接触部材5の通風孔が、上流側の孔部63から下流側の孔部73へとステップ状に大きく形成されるため、通風孔内で乱流を生じさせることができ、空気と気液接触部材5との接触効率を向上させることができる。これにより、本構成では、従来の気液接触部材の通風孔が単に一定のものに比べて、奥行を抑えつつ、十分な空気除菌効果(無害化効果を含む)を得ることが可能である。
言い換えれば、本構成では、気液接触部材の奥行を延ばしたり、通風孔を小さくして接触面積を拡大する方法を採用することなく、十分な空気除菌効果(無害化効果を含む)を得ることが可能である。
しかも、本構成では、上記乱流を生じさせる通風孔を、波状部材のピッチが異なる第1接触部材60と第2接触部材70とを縦並びに配置して形成したので、この通風孔を横並びに配置した気液接触部材5を容易に製作することが可能である。
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、活性酸素種としてオゾン(O3)や過酸化水素(H22)を発生させる構成としても良い。この場合、電極として白金タンタル電極を用いると、イオン種が希薄な水から、電気分解により高効率に安定して活性酸素種を生成できる。
このとき、アノード電極では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応と同時に、
3H2O→O3+6H++6e-
2H2O→O3+4H++4e-
の反応が起こりオゾン(O3)が生成される。またカソード電極では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-
2 -+e-+2H+→H22
のように、電極反応によりO2 -が生成したO2 -と溶液中のH+とが結合して、過酸化水素(H22)が生成される。
この構成では、電極に通電することにより、殺菌力の大きいオゾン(O3)や過酸化水素(H22)が発生し、これらオゾン(O3)や過酸化水素(H22)を含んだ電解水を作ることができる。この電解水中におけるオゾンもしくは過酸化水素の濃度を、対象ウィルス等を不活化させる濃度に調整し、この濃度の電解水が供給された気液接触部材5に空気を通過させることにより、空気中に浮遊する対象ウィルス等を不活化することができる。また、臭気も気液接触部材5を通過する際に、電解水中のオゾンまたは過酸化水素と反応し、イオン化して溶解することで、空気中から除去され、脱臭される。
上記実施形態では、気液接触部材5を第1接触部材60と第2接触部材70とによる二層構造としたが、これに限定されず、例えば、三層構造や四層構造等、その他の層数の構造であってもよい。この場合、例えば、気液接触部材5の孔部の中流を構成する波状部材の屈曲するピッチを、上流側と下流側とを構成する波状部材の屈曲するピッチよりも大きくし、中間層の孔部の大きさのみを大きくする構成であってもよい。また、多層構造に限らず、一層構造でもよく、要は、通風方向のいずれかの位置でその大きさが変化する孔形状を備えた構造にすれば、乱流を発生可能である。
上記実施形態では、波状部材61、71と仕切部材62、72とを交互に横並びに積層したが、これに限定されず、例えば、波状部材のみを横並びに積層してもよい。
本発明の一実施形態を示す斜視図である。 内部構成を示す斜視図である。 筐体の縦断面図である。 電解槽の構成図である。 第1接触部材及び第2接触部材の斜視図である。 空気除菌機構を示す系統図である。 気液接触部材の断面図である。 従来技術による気液接触部材の断面図である。
符号の説明
1 床置き式空気除菌装置(空気除菌装置)
5 気液接触部材
12 空気除菌機構
60 第1接触部材
61、71 波状部材
63、73 孔部
70 第2接触部材

Claims (3)

  1. 貫通する孔部が通風方向に横並びに形成された気液接触部材と、
    この気液接触部材に、水を電気分解して得た活性酸素種を含む電解水を供給し、当該気液接触部材の前記孔部に室内の空気を通風して室内に吹き出す空気除菌機構とを備え、
    前記気液接触部材は、所定のピッチで波状に屈曲する第1波状部材を横並びに配置した第1接触部材と、前記ピッチよりも大きいピッチで波状に屈曲するとともに第1接触部材よりも通風方向に長い第2波状部材を横並びに配置した第2接触部材とを有し、前記第1接触部材が上流側となるように当該第1接触部材と前記第2接触部材とを前記通風方向に積層して配置したことを特徴とする空気除菌装置。
  2. 前記孔部は、当該孔部の通風方向の上流側から下流側に向けてその大きさがステップ状に大きくなるよう変化して乱流を発生させる孔形状であることを特徴とする請求項1に記載の空気除菌装置。
  3. 前記波状部材は、保水性を有する素材で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気除菌装置。
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