しかしながら、このような座席昇降装置にあっては、リフトアームがシートの側面外側に配置されるため、当該座席昇降装置の幅寸法がシートバック幅より大きくなり、車室幅が小さい車両への搭載が困難であった。
また、シートバックを傾倒した際には、傾倒前のシートの側部に前記リフトアームが残ってしまい、車室内を有効利用できず不便であった。
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、室内幅が小さい車両への採用を可能とし、利便性の高い座席昇降装置を提供することを目的とするものである。
前記課題を解決するために本発明の請求項1の座席昇降装置にあっては、車両に設けられたシートを車室内の初期位置と車室外の変位位置との間で昇降する座席昇降装置において、車体フロアに回動可能に支持されたロアレッグと、該ロアレッグにスライド自在に支持されたスライダーと、該スライダーに基端部が支持されたリフトアームと、該リフトアームの上端部に支持されたシートホルダーと、前記スライダーを前進位置と後退位置との間で移動して当該スライダーに支持された前記リフトアームを回動し前記シートホルダに支持された前記シートを変位する駆動手段とを備え、前記シートのシートバックより後方側へ延出した前記シートホルダーの後端部に前記リフトアームを支持して当該リフトアームを前記シートバックより後方に配置する一方、前記リフトアームを、基端部が前記スライダーに回動自在に支持されかつ上端部が前記シートホルダーに回動自在に支持された第1アーム及び第2アームで構成して、前記第1アームと前記第2アームと前記シートホルダーとでリンク機構を構成し、前記スライダーをスライドして前記シートを前記初期位置から前記変位位置へ変位する際に、前記第1及び第2アームの上端部が基端部より後方に配置された後方傾倒状態から前記第1及び第2アームの上端部が基端部より前方に配置された前方傾倒状態まで前記両アームを回動し、両アームの回動に応じて前記シートを昇降する前記リンク機構を構成した。
すなわち、スライダーにシートを支持するリフトアームは、基端部がスライダーに支持された第1アームと第2アームとで構成されており、前記第1アームの上端部及び前記第2アームの上端部は、シートホルダーを介して前記シートの底面部を支持するように構成されている。そして、前記第1及び第2アームは、前記シートを車室内に配置した初期位置において、当該第1及び第2アームの上端部が基端部より後方に配置された後方傾倒状態を形成するように構成されている。
このため、シートを支持するリフトアームがシートの側面外側に配置される従来と比較して、横幅寸法が抑えられる。また、シートバックを傾倒した際に傾倒前のシートの側部にリフトアームが残存する従来と比較して、車室内を有効利用することができる。
また、請求項2の座席昇降装置においては、前記シートの支持機構を、前記第1及び第2アームの上端部に支持されたシートホルダーと、該シートホルダーの前方寄りに設けられた支持軸に軸支され前記シートを保持するシートアッパーレッグと、該シートアッパーレッグの後方寄りに設けられた規制部材とで構成し、該規制部材を案内するガイド部材を前記ロアレッグに延設するとともに、前記シートアッパーレッグを前記両アームの回動に応じて所定位置まで移動した際に前記規制部材が前記ガイド部材から離脱するように該ガイド部材の前端を開放した。
すなわち、シートの支持機構は、第1及び第2アームの上端部に支持されたシートホルダーと、該シートホルダーの前方寄りに設けられた支持軸に軸支されたシートアッパーレッグと、該シートアッパーレッグの後方寄りに設けられた規制部材とで構成されており、前記シートは、前記シートアッパーレッグに保持されている。このため、前記アームの傾動に伴ってシートホルダーを移動する際には、該シートホルダーに軸支されたシートアッパーレッグを介して前記シートを傾動することが可能となる。
このとき、ロアレッグには、前記シートアッパーレッグに設けられた前記規制部材を案内するガイド部材が設けられており、このガイド部材で案内される前記規制部材の移動軌跡に応じて前記シートの傾動を設定することができる。
そして、このガイド部材の前端は開放されている。このため、前記シートアッパーレッグを前記両アームの回動に応じて所定位置まで移動した際には、前記規制部材が前記ガイド部材から離脱することによって、前記ガイド部材による規制が解除される。
さらに、請求項3の座席昇降装置では、前記規制部材を案内する前記ガイド部材を、前記スライダーの前進後退方向と略平行に延設し、前記第1及び第2アームの上端部が基端部より後方に配置された前記初期状態より、前記第1及び第2アームの上端部が基端部の真上を通過する方向に振り出される振り出し動作において、前記シートアッパーレッグの後方寄りに設けられた前記規制部材が前記ガイド部材に沿って略水平に前進することにより、前記シートアッパーレッグが前進しながら前端部を上方へ向けて傾動するように構成した。
すなわち、シートアッパーレッグの規制部材を案内するガイド部材は、スライダーの前進後退方向と略平行に延設されており、前記スライダーの移動に応じて前記規制部材が前記ガイド部材に沿って略水平に前進することにより、前記シートアッパーレッグは、前進しながら前端部を上方へ向けて傾動する。
これにより、前記シートアッパーレッグに保持されたシートのシートクッションは、前記規制部材が前記ガイド部材で上下動が規制されることによって、着座者のヒップポイントの高さ位置を維持しつつ、その前端が上方に変位するように傾斜することができる。
加えて、請求項4の座席昇降装置にあっては、前記シートアッパーレッグの前端部を上方へ向けて回動し当該シートアッパーレッグを前記シートホルダーに対して傾動するとともに、前記シートアッパーレッグの傾動角が規定の角度になった際に、前記シートアッパーレッグを前記シートホルダーに拘束して該シートホルダーに対する前記シートアッパーレッグの傾動を規制するロック機構を設けた。
すなわち、シートアッパーレッグの前端部を上方へ向けて回動し当該シートアッパーレッグをシートホルダーに対して傾動する過程において、前記シートアッパーレッグの傾動角が規定の角度になった場合には、ロック機構によって前記シートアッパーレッグが前記シートホルダーに拘束され、該シートホルダーに対する前記シートアッパーレッグの傾動が規制される。これにより、シートクッションの必要以上の傾斜が防止される。
また、請求項5の座席昇降装置においては、前記ロック機構は、前記規制部材が前記ガイド部材から離脱する前に前記シートアッパーレッグを前記シートホルダーに拘束し、前記規制部材が前記ガイド部材から離脱した離脱中は、前記シートアッパーレッグを前記シートホルダーに拘束した拘束状態を維持する。
すなわち、規制部材がガイド部材から離脱する前に、シートアッパーレッグはシートホルダーに拘束される。また、前記規制部材が前記ガイド部材から離脱した離脱中は、前記シートアッパーレッグを前記シートホルダーに拘束した拘束状態が維持される。
このため、前記ガイド部材による規制解除後におけるシートの不用意な傾動が防止される。
さらに、請求項6の座席昇降装置では、前記第1及び第2アームの前記振り出し動作に伴って前記シートアッパーレッグに保持された前記シートが前進しながら前端部を上方へ向けて傾動する際に、前記シートのシートバックと前記第1及び第2アームとの干渉を回避する凹形状を前記シートバックの背面に設けた。
すなわち、シートバックの背面には凹形状が形成されており、第1及び第2アームの振り出し動作に伴ってシートの前端部を上方へ向けて傾動する場合には、前記シートバックと前記第1及び第2アームとの干渉が防止される。
加えて、請求項7の座席昇降装置にあっては、前記シートバックの背面に、該シートバックが後方にリクライニングされた時に当該シートバックと前記第1及び第2アームとの干渉を回避する為の凹形状を前記シートバックの背面に設けた。
すなわち、シートバックの背面には凹形状が形成されており、シートバックを後方にリクライニングした際には、当該シートバックと前記第1及び第2アームとの干渉が防止される。
また、請求項8の座席昇降装置においては、前記ロアレッグに、中間部に上向きの頂点を持つ略山形形状のカムプレートを設ける一方、前記第1アーム又は第2アームに前記カムプレートの上縁に沿って案内される被案内部材を設け、該被案内部材を、当該被案内部材が設けられたアームの上端部が基端部より後方にある時に主に前記カムプレートに案内される第1被案内部と、前記被案内部材が設けられたアームの上端部が基端部より前方にある時に主に前記カムプレートに案内される第2被案内部とで構成した。
すなわち、ロアレッグに略山形形状のカムプレートを設けるとともに、第1アーム又は第2アームに前記カムプレートの上縁に沿って案内される被案内部材を設けることによって、両アームからなるリフトアームを前記カムプレートのカム面に応じて傾倒することができる。
このとき、前記被案内部材は、当該被案内部材が設けられたアームの上端部が基端部より後方にある時に主に前記カムプレートに案内される第1被案内部と、前記被案内部材が設けられたアームの上端部が基端部より前方にある時に主に前記カムプレートに案内される第2被案内部とで構成されており、アームの傾きに応じて前記カムプレートに案内される被案内部を変更することができる。
以上説明したように本発明の請求項1の座席昇降装置にあっては、スライダーにシートを支持する第1アームの先端部及び前記第2アームの先端部でシートホルダーを介して前記シートの底面部を支持するとともに、前記第1及び第2アームは、前記シートを車室内に配置した初期位置において、当該第1及び第2アームの上端部が基端部より後方に配置された後方傾倒状態を形成するように構成した。
このため、シートを支持するリフトアームがシートの側面外側に配置された従来と比較して、横幅寸法を抑えることができる。これにより、当該座席昇降装置を車室幅が小さい車両にも搭載することができる。
そして、シートバックを傾倒した際に、傾倒前のシートの側部にリフトアームが残存する従来と比較して、車室内を有効利用することができる。これにより、利便性を向上することができる。
また、請求項2の座席昇降装置においては、アームの傾動に伴ってシートホルダーを移動する際に、該シートホルダーに軸支されたシートアッパーレッグを介してシートを傾動することが可能となる。
このとき、ロアレッグには、前記シートアッパーレッグに設けられた規制部材を案内するガイド部材が設けられており、このガイド部材で案内される前記規制部材の移動軌跡に応じて前記シートの傾動を設定することができる。
そして、このガイド部材の前端は開放されており、前記シートアッパーレッグを前記両アームの回動に応じて所定位置まで移動した際には、前記規制部材が前記ガイド部材から離脱する。これにより、前記シートを所定量前方へ移動した際には、前記ガイド部材による規制を解除することができる。
さらに、請求項3の座席昇降装置では、シートアッパーレッグの規制部材を案内するガイド部材は、スライダーの前進後退方向と略平行に延設されており、前記スライダーの移動に応じて前記規制部材が前記ガイド部材に沿って略水平に前進することによって、前記シートアッパーレッグを前進させながら、その前端部を上方へ向けて傾動することができる。
このとき、前記シートアッパーレッグに保持されたシートのシートクッションは、前記規制部材の上下動が前記ガイド部材によって規制されることにより、着座者のヒップポイントの高さ位置を維持しつつ、その前端が上方に変位するように傾斜することができる。このため、着座者は、ヒップポイントの高さ位置を維持しつつ、足位置を上げて、頭位置を下げることができるため、その着座姿勢のまま車両のドア開口部を容易に通過することができる。
加えて、請求項4の座席昇降装置にあっては、シートアッパーレッグの前端部を上方へ向けて回動し当該シートアッパーレッグをシートホルダーに対して傾動する過程において、前記シートアッパーレッグの傾動角が規定の角度になった場合、ロック機構によって前記シートアッパーレッグを前記シートホルダーに拘束し、該シートホルダーに対する前記シートアッパーレッグの傾動を規制することができる。これにより、シートクッションの必要以上の傾斜を防止することができる。
また、請求項5の座席昇降装置においては、規制部材がガイド部材から離脱する前に、シートアッパーレッグをシートホルダーに拘束することができる。また、前記規制部材が前記ガイド部材から離脱した離脱中は、前記シートアッパーレッグが前記シートホルダーに拘束された拘束状態を維持することができる。
このため、前記ガイド部材による規制解除後におけるシートの不用意な傾動を防止することができる。
さらに、請求項6の座席昇降装置では、シートバックの背面には凹形状が形成されており、第1及び第2アームの振り出し動作に伴ってシートの前端部を上方へ向けて傾動する際には、前記シートバックと前記第1及び第2アームとの干渉を防止することができる。
加えて、請求項7の座席昇降装置にあっては、シートバックの背面には凹形状が形成されており、シートバックを後方にリクライニングした際には、当該シートバックと前記第1及び第2アームとの干渉を防止することができる。
また、請求項8の座席昇降装置においては、ロアレッグに略山形形状のカムプレートを設けるとともに、第1アーム又は第2アームに前記カムプレートの上縁に沿って案内される被案内部材を設けることによって、両アームからなるリフトアームを前記カムプレートのカム面に応じて傾倒することができる。
このとき、前記被案内部材は、当該被案内部材が設けられたアームの上端部が基端部より後方にある時に主に前記カムプレートに案内される第1被案内部と、前記被案内部材が設けられたアームの上端部が基端部より前方にある時に主に前記カムプレートに案内される第2被案内部とで構成されている。これにより、アームの傾きに応じて前記カムプレートに案内される被案内部を切り替えることができる。
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1〜図11は、本実施の形態にかかる座席昇降装置1を示す図であり、該座席昇降装置1は、車両に設けられたシート2を図1に示した車室内の初期位置3と図6に示した車室外の変位位置4との間で昇降するように構成されている。
この座席昇降装置1は、図1に示したように、当該車両のドア開口部の近傍に位置する車体フロア11に回動可能に支持されたロアレッグ12を備えており、該ロアレッグ12には、当該ロアレッグ12の前後方向に延在するスライドレール13が設けられている。該スライドレール13には、車輪14を備えたスライダー15がスライド自在に支持されており、該スライダー15は、例えば前記ロアレッグ12に延設されたボールネジ16に噛合するネジ部を備え、該ボールネジ16を駆動手段としての前記パワーユニット17のモーターで回動することによって、図1に示した後退位置18と、図6に示した前進位置19との間で移動できるように構成されている。
なお、前記ロアレッグ12と車体フロア11との間には、図外の回転機構が設けられているが、図1では、この回転機構を省略したものを示す。
前記スライダー15には、図1に示したように、リフトアーム21が設けられており、該リフトアーム21は、前記シート2を支持するように構成されている。該シート2を支持する支持機構22は、前記リフトアーム21に支持されたシートホルダー23を備えており、該シートホルダー23の前方寄りには、支持軸24が設けられている。該支持軸24には、シートアッパーレッグ25の前端部が回動自在に軸支されており、該シートアッパーレッグ25には、前記シート2が保持されている。
前記リフトアーム21は、第1アームとしてのアッパーアーム31と、第2アームとしてのロアアーム32とによって構成されており、前記アッパーアーム31の基端部は、図2に示すように、前記スライダー15の後端側に設定されたアッパーアーム支持点33に回動自在に支持されている。また、前記ロアアーム32は、前記スライダー15の前記アッパーアーム支持点33より前端側に設定されたロアアーム支持点34に回動自在に支持されており、両アーム31,32は、前記シート2の側方に配置されるとともに前記スライダー15において幅方向へずれた位置で支持されている。これにより、両アーム31,32が各支持点33,34を中心に回動した際に、両アーム31,32が干渉しないように構成されている。
前記ロアアーム32の上端部には、斜め前上方向に延出した傾斜部41が形成されており、当該ロアアーム32の下端部には、前方へ向けて延出した前方延出部42が形成されている。該前方延出部42は、その中央部が前記スライダー15に回動自在に支持されており、当該前方延出部42には、被案内部材が設けられている。
なお、この被案内部は、前記アッパーアーム31に設けても良い。
この被案内部材は、前記前方延出部42の前端部に回動自在に軸支された第1被案内部としての前方ロアローラー43と、前記前方延出部42の後端部に回動自在に軸支された第2被案内部としての後方ロアローラー44とによって構成されている。
一方、前記ロアレッグ12には、中間部に上向きの頂点51を持つ略山形形状のカムプレート52が固定されており、該カムプレート52の上縁には、前記頂点51を境とした前方側に前方カム面53が設定されている。また、前記頂点51を境とした後方側には、後方カム面54が設定されており、前記ロアアーム32に設けられた前記後方ロアローラー44は、図1〜図3に示したように、当該ロアアーム32の上端部が基端部より後方にある時に、主に前記カムプレート52の前記後方カム面54に案内されるうように構成されている。また、前記ロアアーム32に設けられた前記前方ロアローラー42は、図4〜図6に示したように、当該ロアアーム32の上端部が基端部より前方にある時に、主に前記カムプレート52の前記前方カム面53に案内されるうように構成されており、当該カムプレート52の長さ寸法を長くすること無く、前記スライダー15の移動に応じて前記ロアアーム32を広範囲に渡って回動できるように構成されている。
前記シートホルダー23は、図2に示したように、中央部より前方部が前記シート2のシートクッション61の下部に配置されるとともに、後方部が前記シート2のシートバック62に沿って上方に延出するように構成されており、当該シートホルダー23は、下方に突出した円弧状に形成されている。該シートホルダー23を構成する側板の後端部には、幅広部63が設定されており、該幅広部63は、前記シート2の前記シートバック62の背面64側に配置されている。
前記シート2の背面64側に配置された前記幅広部63の後縁側には、前記アッパーアーム31の上端部を回動自在に軸支するアッパーアーム軸支点71が設定されており、当該幅広部63の前縁側には、前記ロアアーム32の上端部を回動自在に軸支するロアアーム軸支点72が設定されている。
これにより、このシートホルダー23の前記幅広部63と前記アッパーアーム31と前記ロアアーム32と前記スライダー15とによって四節のリンク機構75が構成されており、このリンク機構75は、前記スライダー15が前記パワーユニット17で前記前進位置19と前記後退位置18との間で移動された際に、前記両アーム31,32を前記アッパーアーム31及びロアアーム32の上端部が基端部より後方に配置された後方傾倒状態81と(図1参照)、前記アッパー及びロアアーム31,32の上端部が基端部より前方に配置された前方傾倒状態82と(図6参照)の間で回動するとともに、両アーム31,32の回動に応じて前記シート2を前記ロアレッグ12に対して前後方向に移動しながら昇降することで、前記シート2を前記初期位置3と前記変位位置4との間で変位できるように構成されている。
前記シートアッパーレッグ25側面の後方寄りには、図1に示したように、規制部材91が設けられており、該規制部材91は、前記側面に回転軸92が固定されたローラーによって構成されている。また、前記ロアレッグ12には、前記規制部材91を案内するガイド部材93が設けられている。該ガイド部材93は、断面コ字状の長尺状の部材からなり、前記規制部材91を上下から挟む上面部94及び下面部95を備えている。このガイド部材93は、前記ロアレッグ12に対して前後方向に延設されており、その前端には、前記規制部材91が出入りする開放された解放部96が設けられている。これにより、前記シートアッパーレッグ25を前記両アーム31,32の回動に応じて所定位置まで移動した際に、前記規制部材91が前記ガイド部材93前端の前記解放部96から離脱するように構成されている。
そして、前記ガイド部材93は、図1〜図2に示したように、前記スライダー15の前進後退方向と略平行に延設されており、前記両アーム31,32の上端部が基端部より後方に配置された前記初期位置3より、図3〜図4に示したように、前記両アーム31,32の上端部が基端部の真上を通過する方向に振り出される振り出し動作において、前記シートアッパーレッグ25の後方寄りに設けられた前記規制部材91が前記ガイド部材93に沿って略水平に前進することで、前記シートアッパーレッグ25が前進しながら、その前端部を上方へ向けて傾動するように構成されている。
前記シートアッパーレッグ25の前端部を上方へ向けて回動し当該シートアッパーレッグ25を前記シートホルダー23に対して傾動する際には、図7〜図9に示すように、前記シートアッパーレッグ25の傾動角が規定の角度になった場合には、前記シートアッパーレッグ25を前記シートホルダー23に拘束して該シートホルダー23に対する前記シートアッパーレッグ25の傾動を規制するロック機構101が設けられている。
このロック機構101は、前記規制部材91と共に基端部が軸支されたロック部材111と、該ロック部材111と係合する前記シートホルダー23に設けられたストライカー112とによって構成されている。
前記ロック部材111の先端部には、前記ストライカー112と係合する係合溝121が開口した鉤状のフック部122が形成されており、該フック部122は、図外のスプリングによって前記係止溝121の開口方向へ向けて回動する方向に付勢されている。前記フック部122の角部には、前記ガイド部材93に案内されるガイドローラー123が回動自在に軸支されており、該ガイドローラー123が前記ガイド部材93の下面部95を転動することによって前記開口方向への回動が阻止されている。
前記パワーユニット17で前記スライダー15を前進させるに従って、図7〜図9に示すように、前記シートアッパーレッグ25に設けられた前記ロック部材111と前記シートホルダー23に設けられた前記ストライカー112が近接するように構成されており、図9に示したように、前記規制部材91が前記ガイド部材93の前記解放部96に達する直前には、前記ストライカー112が前記ロック部材111の係合溝121に係合するように構成されている。また、前記規制部材91が前記ガイド部材93から離れた際には、前記スプリングの付勢力によって前記ロック部材111と前記ストライカー112との係合状態を維持できるように構成されている。
これにより、前記規制部材91が前記ガイド部材93にガイドされ、前記ガイドローラー123が前記ガイド部材93の前記下面部95を転動している間は、図7に示したように、前記シートホルダー23に対する前記シートアッパーレッグ25の傾動を許容したアンロック状態131を形成する一方、前記規制部材91が前記ガイド部材93から離脱する前には、図8〜図9に示したように、前記シートアッパーレッグ25を前記シートホルダー23に拘束したロック状態132を形成するとともに、前記規制部材91が前記ガイド部材93から離脱した離脱中は、前記シートアッパーレッグ25を前記シートホルダー23に拘束したロック状態132を維持できるように構成されている。
そして、前記両アーム31,32の前記振り出し動作に伴って前記シートアッパーレッグ25に保持された前記シート2を前進させながら、その前端部を上方へ向けて傾動する際には、図10に示すように、前記シート2のシートバック62と前記両アーム31,32との干渉を回避する凹形状の凹部141が前記シートバック62の背面64に形成されている。
この凹部141は、図11に示すように、リクライニングデバイス151を介して前記シートクッション61に傾倒可能に支持された前記シートバック62を後方にリクライニングさせた際に、当該シートバック62と前記両アーム31,32との干渉を回避できる大きさに設定されている。
なお、前記振り出し動作時に前記両アーム31,32との干渉を回避する凹形状と、シートバック62リクライニング時に前記両アーム31,32との干渉を回避する凹形状とを共通の凹部141で構成した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものでは無く、別箇所に設けられた凹形状によって、それぞれ構成しても良い。
図1〜図6は、当該座席昇降装置1をドア開口部側へ向けた状態において、車室内の前記初期位置3にあるシート2を前記ドア開口部を介して前記変位位置4まで移動する動作を示す図である。
すなわち、図1に示した状態において、パワーユニット17を作動して、図2に示したように、前記スライダー15の前方への移動を開始する。すると、前記ロアアーム32に設けられた後方ロアローラー44がカムプレート52の後方カム面54上を転動することにより、前記ロアアーム32は、前記スライダー15に設定されたロアアーム支持点34を中心に図中反時計回りへの回動を開始する。これにより、前記両アーム31,32の上端部に支持された前記シートホルダー23を前方へ移動することができる。
このとき、前記シートアッパーレッグ25に設けられた前記規制部材91は、前記ロアレッグ12に設けられたガイド部材93に沿って移動する。すると、前記シートホルダー23の前端側に支持軸24で軸支されたシートアッパーレッグ25は、その前端部が上方へ向けて傾動する。
またこのとき、前記ロアアーム32に設けられた前方ロアローラー43が前記カムプレート52の前方カム面53上を転動することにより、前記ロアアーム32は前記スライダー15に設定されたロアアーム支持点34を中心に図中反時計回りへの回動する。
そして、前記スライダー15を、図3に示したように、さらに前方へ移動し、前記ロアアーム32の後方ロアローラー44が前記カムプレート52上を移動することによって、前記ロアアーム32がほぼ垂直になるまで回動する。すると、前記シートアッパーレッグ25は、さらに前方へ移動すると同時に、その前端部がさらに上方へ傾斜する。
また、前記スライダー15を、図4に示したように、さらに前方へ移動し、前記ロアアーム32の上端部が下端部より前方に配置される状態まで当該ロアアーム32を回動すると、前記シートアッパーレッグ25は、前側下方への移動を開始する。
このとき、前記シートアッパーレッグ25に設けられた前記規制部材91は、前記ロアレッグ12に設けられた前記ガイド部材93から離脱した状態となっており、前記シートアッパーレッグ25に保持された前記シートクッション61の傾きは、図3の場合とほぼ同じ状態が維持される。
さらに、前記スライダー15を、図5に示したように、前方に移動すると、前記ロアアーム32は、その上端部が下端部に対して前方斜め上方45°位置程度まで回動する。すると、前記シートアッパーレッグ25は、さらに前側下方向に移動する。
そして、図6に示したように、前記スライダー15を最も前方まで移動した前進位置19では、前記ロアアーム32は、その上端部が下端部に対して前方水平方向又は前側下方向位置に移動することとなる。これにより、前記シートアッパーレッグ25は、さらに前側左下方向に移動し、本ストローク中で最も低い位置となる。
また、前記ロアアーム32及び前記アッパーアーム31は、互いに平行リンクを形成し、かつ不等長に設定されている。このため、図2〜図5では、図1の前記初期位置3に対して、前上がり状態であったシートアッパーレッグ25の傾斜角を、図6においては、前記初期位置3若しくは前記シートクッション61上面が略水平になる状態まで傾動することができる。
なお、前記シート2を車室外の前記変位位置4から車室内の初期位置3へ移動する際の動作説明は割愛するが、前述した図6から図1の順で行うものとする。
一方、図7〜図9は、前記シートアッパーレッグ25に設けられた前記規制部材91が前記ロアレッグ12に設けられた前記ガイド部材93から離脱した際の動作を示す図であり、前記シートアッパーレッグ25の前端部が上方へ傾動しないようにする為のロック機構101の動作が示されている。
すなわち、図7及び図8には、前記ロック機構101を構成するロック部材111の前記ガイドローラー123が前記ガイド部材93によって案内される状態を示し、この時点において、前記ロック機構101を構成するストライカー112と前記ロック部材111は離れている。
そして、図9に示したように、前記ロック部材111のガイドローラー123が前記ガイド部材93より離脱する際には、前記ロック部材111は、その回転支持点に対して前記スプリングによって図中反時計回り方向に回動され、当該ロック部材111と前記ストライカー112とが係合するように構成されている。
以上の構成にかかる本実施の形態において、スライダー15にシート2を支持するリフトアーム21は、基端部がスライダー15に支持されたアッパーアーム31とロアアーム32とで構成されており、前記アッパーアーム31の先端部及び前記ロアアーム32の先端部は、シートホルダー23及びレッグアッパー25を介して前記シート2の底面部を支持するように構成されている。そして、前記両アーム31,32は、前記シート2を車室内に配置した初期位置3において、当該アッパーアーム31及びロアアーム32の上端部が基端部より後方に配置された後方傾倒状態81を形成するように構成されている。
このため、シート2を支持するリフトアーム21がシート2の側面外側に配置された従来と比較して、座席昇降装置1の横幅寸法を抑えることができる。これにより、当該座席昇降装置1を車室幅が小さい車両にも搭載することができる。
そして、前記シート2のシートバック62を傾倒した際に、傾倒前のシート2の側部にリフトアーム21が残存する従来と比較して、車室内を有効利用することができる。これにより、利便性を向上することができる。
このとき、前記リフトアーム21を構成する前記アッパーアーム31及びロアアーム32は、前記シート2の側方に配置されており、各アーム31,32の先端部がシートホルダー23及びシートアッパーレッグ25を介して前記シート2の底面部を支持するように構成されている。
このため、前記両アーム31,32のシート2後方への突出量を抑えつつ、前記シート2の昇降量を維持することができる。
また、前記リフトアーム21を回動する構造としては、前記ロアレッグ12に設けられた略山形形状のカムプレート52と、前記ロアアーム32に設けられ前記カムプレート52の上縁に沿って案内される被案内部材とで構成されており、これにより前記両アーム31,32からなるリフトアーム21を前記カムプレート52のカム面に応じて傾倒することができる。
このとき、前記被案内部材は、前記ロアアーム32の上端部が基端部より後方にある時に主に前記カムプレート52の後方カム面54に案内される後方ロアローラー44と、前記ロアアーム32の上端部が基端部より前方にある時に主に前記カムプレート52の前方カム面53に案内される前方ロアローラー43とで構成されている。このため、前記ロアアーム32の傾きに応じて前記カムプレート52に案内されるロアローラー43,44を切り替えることができる。
また、前記シート2の支持機構は、前記アッパアームー31及びロアアーム32の先端部に支持されたシートホルダー23と、該シートホルダー23の前方寄りに設けられた支持軸24に軸支されたシートアッパーレッグ25と、該シートアッパーレッグ25の後方寄りに設けられた規制部材91とで構成されており、前記シート2は、前記シートアッパーレッグ25に保持されている。このため、前記各アーム31,32の傾動に伴ってシートホルダー23を移動する際には、該シートホルダー23に軸支された前記シートアッパーレッグ25を介して前記シート2を傾動することが可能となる。
このとき、前記ロアレッグ12には、前記シートアッパーレッグ25に設けられた前記規制部材91を案内するガイド部材93が設けられており、このガイド部材93で案内される前記規制部材91の移動軌跡に応じて前記シート2の傾動を設定することができる。
そして、このガイド部材93の前端は開放されており、前記シートアッパーレッグ25を前記両アーム31,32の回動に応じて所定位置まで移動した際には、前記規制部材91が前記ガイド部材93から離脱する。これにより、前記シート2を所定量前方へ移動した際には、前記ガイド部材93による規制を解除することができる。
また、前記シートアッパーレッグ25の前記規制部材91を案内する前記ガイド部材93は、前記スライダー15の前進後退方向と略平行に延設されており、前記スライダー15の移動に応じて前記規制部材91が前記ガイド部材93に沿って略水平に前進することによって、前記シートアッパーレッグ25を前進させながら、その前端部を上方へ向けて傾動することができる。
このとき、前記シートアッパーレッグ25に保持された前記シート2のシートクッション61は、前記規制部材91の上下動が前記ガイド部材93によって規制されることにより、着座者のヒップポイントの高さ位置を維持しつつ、その前端が上方に変位するように傾斜することで、足置部を上昇し頭部を下降することができる。
このため、着座者は、その着座姿勢のまま前記ドア開口部を通過することができ、着座者の頭部とドア開口部の上縁との干渉を防止する効果を得ることができる。
また、前記シートアッパーレッグ25の前端部を上方へ向けて回動し当該シートアッパーレッグ25を前記シートホルダー23に対して傾動する過程において、前記シートアッパーレッグ25の傾動角が規定の角度になった場合、ロック機構101によって前記シートアッパーレッグ25を前記シートホルダー23に拘束し、該シートホルダー23に対する前記シートアッパーレッグ25の傾動を規制することができる。これにより、シートクッション61の必要以上の傾斜を防止することができる。
そして、前記規制部材91が前記ガイド部材93から離脱する前に、前記シートアッパーレッグ25を前記シートホルダー23に拘束することができる。また、前記規制部材91が前記ガイド部材93から離脱した離脱中は、前記シートアッパーレッグ25が前記シートホルダー23に拘束されたロック状態132を維持することができる。
このため、前記ガイド部材93による規制解除後における前記シート2の不用意な傾動を防止することができ、シートクッション61の角度を保持した状態で、当該シート2を変位位置4まで移動することができる。
さらに、前記シートバック62の背面64には凹形状の凹部141が形成されており、前記両アーム31,32の振り出し動作に伴って前記シート2の前端部を上方へ向けて傾動する際には、前記シートバック62と前記両アーム31,32との干渉を防止することができる。
加えて、この凹部141は、前記シートバック62を後方にリクライニングした際においても、前記シートバック62と前記両アーム31,32との干渉を防止することができる。