JP4905220B2 - 転がり軸受装置 - Google Patents

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Description

この発明は、円錐コロ軸受、アンギュラ玉軸受などの予圧をかけて使用する転がり軸受を組み込んだ転がり軸受装置に関する。
円錐ころ軸受やアンギュラ玉軸受は、軸方向の予圧をかけた状態で使用される。例えば、トランスミッションユニット等の自動車用のギア式駆動伝達ユニットには、その要所(例えばトランスミッションユニットでは終減速装置部分)に円錐ころ軸受が採用されており、図3(a)に示すように、円錐ころ軸受111の内輪133に回転軸115を圧入するとともに、トランスミッションケースの軸受ハウジング125に外輪132を圧入し、その後に軸方向一方側(矢印a)へ向けて予圧を付与するようになっている。予圧を与えると、外輪132は円錐ころ134の傾斜した転動面上での分力を受けて軸方向及び径方向に変位し、その右端面132cと外周面132bとが軸受ハウジング125の内端面125cと内周面125aとに押しつけられて予圧が支持される。
一方、近年は軽量化の一環として、トランスミッションケース(軸受ハウジング)をAl合金などの軽金属で構成することが行なわれている。Alは構造材料中でも線膨張係数が最も高く(室温で約23.5×10−6/℃:以下、線膨張係数の単位はppm/℃と略記する))、回転軸や円錐ころ軸受を構成する鋼(Fe系材料)の線膨張係数(室温で約12ppm/℃)とは相当の差がある。
回転軸と軸受ハウジングとが同じ材料である場合、温度による寸法変化も同じであるので、円錐ころ軸受にかかる予圧に大きな変化はない。しかし、軸受ハウジングを軽金属で構成すると、温度上昇によって軸受ハウジングが回転軸よりも大きく寸法変化し、予圧が抜けてしまうおそれがある。
具体的には、図3(b)に示すように、トランスミッションが昇温すると、軸受ハウジング125及び回転軸115が膨張するが、その膨張による寸法変化の差によって、外輪132の内周軌道面132aが円錐ころ134の転動面から矢印b方向に離反する。つまり、円錐ころ軸受111のアキシャル隙間及びラジアル隙間が温度により大きく変化し、予圧不足となる。このような予圧不足は、ギヤのガタツキを招き、騒音発生の原因となる。
かかる問題を解消し得るものとして、下記特許文献1には、油圧やバネによって外輪に予圧を付与するようにした転がり軸受装置が開示されている。具体的には、軸受ハウジングに有底筒形のシリンダを形成し、このシリンダ内に、外輪を軸方向摺動可能に嵌合するとともに、外輪の軸方向外端部に当接する円盤状の予圧部材(ピストン)を設け、シリンダ内面と予圧部材とに囲まれた油圧室に油圧ポンプによってオイルを供給するようになっている。さらに、油圧室内には、予圧部材を軸方向内方に付勢する圧縮コイルバネを設けている。
この構成では、油圧及び圧縮コイルバネによって予圧部材に予圧を付与する一方、昇温によって軸受ハウジングが回転軸及び外輪よりも大きく寸法変化したときには、圧縮コイルバネと油圧の作用によって、予圧部材を介して外輪を軸方向内方に移動させ、円錐ころ軸受のアキシャル隙間及びラジアル隙間の変化を抑えて予圧不足を解消することが可能である。
特開2006−153090号公報
特許文献1の技術では、シリンダが軸受全体に対応するように大きく(大径に)形成されている。そのため、シリンダの熱膨張による寸法変化量が大きくなり、予圧部材との間の隙間も大きくなる。一方、予圧部材の外周面とシリンダの内周面との間には、1つのOリングが介在しているだけである。そのため、シリンダが熱膨張によって拡径すると予圧部材が傾きやすく、軸受ハウジングとの隙間からオイルが漏れやすくなり、十分に予圧を付与できなくなる可能性がある。
また、予圧部材の外周面とシリンダの内周面との間に介在するOリングは、軸受ハウジングが昇温状態から冷却された際の油圧室内の圧力上昇を防止するために、オイルが通過することを許容しており、オイル漏れを完全には防止できるものではない。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、外輪に予圧を付与するピストンのシリンダ内での傾きを防止し、シリンダの液体圧室からの液体漏れを防止することができる転がり軸受装置を提供することを目的とする。
本発明に係る転がり軸受は、転動体と、この転動体が転動する軌道面を外周に有する内輪と、前記転動体が転動するとともに前記転動体からの径方向荷重と軸方向一方側へ向く荷重とを受ける軌道面を内周に有し且つ第1の線膨張係数を有する外輪と、を備えた転がり軸受と、前記外輪の外周面が軸方向移動可能に嵌合する内周面を有し且つ第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する軸受ハウジングと、前記内輪の内周面に嵌合し、且つ、前記第2の線膨張係数よりも小さい第3の線膨張係数を有する回転軸と、液体圧によって前記外輪に軸方向他方側へ向く予圧を付与する予圧付与機構と、を備えており、前記予圧付与機構が、前記外輪よりも前記軸方向一方側に配置されたシリンダと、このシリンダと前記外輪との間に介在し、前記シリンダの前記外輪側の開口を塞ぐ隔壁と、前記シリンダと前記軸受ハウジングとを連通するように前記隔壁に形成される貫通孔と、前記シリンダの内周面に軸方向摺動可能に嵌合される受圧部と、前記貫通孔に軸方向摺動可能に嵌合され前記外輪の前記軸方向一方側端面に当接する押圧部とを有するピストンと、前記シリンダ内に、前記受圧部に作用する液体圧を供給する圧力供給手段と、前記シリンダの内周面と前記受圧部の外周面との間に設けられる第1シール部材と、前記貫通孔の内周面と前記押圧部の外周面との間に設けられる第2シール部材と、を備えていることを特徴とする。
これによれば、予圧付与機構のピストンは、シリンダ内周面と貫通孔内周面との少なくとも2カ所で第1,第2シール部材を介して支持されることになるので、シリンダや隔壁が熱膨張したとしても、ピストンの傾きを防止することができる。したがって、ピストンに作用する液体がシール部材を通過して外輪側に漏れてしまうことを防止することができる。
前記シリンダは、3つ以上設けられるとともに、前記転がり軸受の軸心回りに等間隔に配置されていることが好ましい。この場合、各シリンダに嵌合するピストンによって外輪に均等に予圧を付与することができる。また、個々のシリンダを従来よりも小さく(小径に)形成することが可能となるので、シリンダの熱膨張による寸法変化量を小さくし、ピストンとの隙間の変化も小さくすることができ、ピストンの傾きを防止するとともに、第1,第2シール部材によるシール機能を好適に維持することができる。
前記シリンダ内において前記ピストンと前記隔壁との間に空気室が形成され、前記空気室と前記シリンダ外部とを連通する通孔が前記シリンダに形成されていることが好ましい。これによれば、ピストンが軸方向に摺動することにより空気室が拡縮しても、当該空気室内の圧力を略一定に維持することができる。そのため、ピストンの摺動に伴って、シリンダ内の液体(作動油)や、軸受ハウジング内の液体(潤滑油等)や摩耗粉等が、第1,第2シール部材を通過して空気室内に吸引されたり、逆に、空気室内の塵等がシリンダの液体圧室や軸受ハウジングへ排出されたりすることを防止することができる。
本発明によれば、外輪に予圧を付与するピストンのシリンダ内での傾きを防止し、シリンダの液体圧室からの液体漏れを防止することができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る転がり軸受装置を示す側面断面図である。この転がり軸受装置は、トランスミッション10に転がり軸受11を組み込むことにより構成されている。トランスミッション10は、ケース12と、ケース12の内部に組み込まれたギヤボックス13と、ギヤボックス13を貫通するように互いに平行に設けられた入力軸14及び出力軸(回転軸)15とを備えている。入力軸14及び出力軸15は、ギヤボックス13内の変速ギヤ16により連動して回転する。
変速ギヤ16は、例えば、マニュアルタイプとされており、入力軸14に互いに歯数の異なる複数枚の入力ギヤ18を設けるとともに、出力軸15に互いに歯数の異なる出力ギヤ19を設け、得るべき変速比又は前進/後退の区別に応じて、入力軸14上のギヤ18と出力軸15上のギヤ19との噛み合いの組み合わせを切り替えることによって変速可能となっている。これら入力ギヤ18及び出力ギヤ19にはスパーギヤやヘリカルギヤが用いられる。また、変速ギヤ16は、遊星ギヤ機構等を用いたオートマチックタイプであってもよい。
入力軸14の両端は、ケース12内の内側に固定された円筒ころ軸受21及び玉軸受22によりそれぞれ回転可能に支持されている。出力軸15の両端部は、円錐ころ軸受11,23によりそれぞれ支持されている。軸方向一方側(左側)の円錐ころ軸受(第1円錐ころ軸受)11は、ケース12と一体の軸受ハウジング25に嵌合され、軸方向他方側(右側)の円錐ころ軸受(第2円錐ころ軸受)23は、ケース12と一体の軸受ハウジング26に嵌合固定されている。また、左側の円錐ころ軸受11は、予圧付与機構30から軸方向内方(右方向)へ向く予圧が付与されている。この予圧付与機構30については後に詳述する。
図2は、本発明の要部を拡大して示す断面図である。左側の円錐ころ軸受11は、外輪32と、内輪33と、外輪32及び内輪33の間に配置された複数の円錐ころ(転動体)34とを備えている。外輪32の外周面は、軸受ハウジング25の内周面に嵌合され、外輪32の内周面には、円錐ころ34が斜接して転動する内周軌道面32aが形成されている。内輪33の外周面には、円錐ころ34が斜接して転動する外周軌道面33aが形成され、内輪33の内周面には出力軸15が嵌合されている。内輪33と円錐ころ34との接触角および円錐ころ34と外輪32との接触角は、軸方向内側(右側)から軸方向外側(左側)に向けて拡径するように設定されている。なお、ここで接触角は、JISB0104−1991に規定された呼び接触角に準じる。
これらの構成は、右側の円錐ころ軸受23(図1)についても、軸方向内側が左側に、軸方向外側が右側になる点以外は、同様である。
左側の円錐ころ軸受11の外輪32は、軸受ハウジング25の内周面に軸方向摺動可能に嵌合されている。この外輪32の外周面には、当該摺動をスムーズにするために固体潤滑剤がコーティングされている。固体潤滑剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂や二硫化モリブデン、グラファイト、モリブデンやこれらを樹脂に分散させたものを使用することができる。
円錐ころ軸受11の外輪32は、第1の線膨張係数を有している。これに対して、軸受ハウジング25は、第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有している。また、出力軸15は、第2の線膨張係数よりも小さい第3の線膨張係数を有している。
例えば、円錐ころ軸受11は、外輪32、内輪33及び転動体34が、いずれも鋼製(例えば、軸受鋼、はだ焼鋼、浸炭鋼)にて形成され、軸受ハウジング25は、軽金属製(Al又はMgのいずれかを主成分(50質量%以上の含有率)とする金属製)にて形成され、出力軸15は、鋼製(例えば、機械構造用低合金鋼製)にて形成されている。好ましくは、軸受ハウジング25は、加工性及び耐食性の観点からAlまたはAl合金が使用され、Al合金としては、例えばダイキャスト用Al合金が使用される。本実施形態では、ケース12(図1)もAl合金製であり、軸受ハウジング25はケース12の内面に一体化されている。
軸受ハウジング25の構成主成分であるAlの線膨張係数(第2の線膨張係数)は23〜24ppm/℃、出力軸15及び円錐ころ軸受11の構成主成分であるFeの線膨張係数(第1,第3の線膨張係数)は、約12〜13ppm/℃である。また、一般に、自動車のトランスミッションにおける軸受使用環境温度は−40℃以上150℃以下の範囲(寒冷地及び高速連続運転等を除いた通常到達温度は、50℃以上80℃以下)である。
図1に示すように、予圧付与機構30は、円錐ころ軸受11の外輪32に軸方向内方への予圧を付与するものであり、外輪32よりも軸方向外側に設けられたシリンダ36と、シリンダ36に設けられたピストン37と、シリンダ36に接続され、シリンダ36内に油圧(液体圧)を供給する圧力供給手段Aとを備えている。シリンダ36及びピストン37は複数組、具体的には3組以上設けられ、これらは円錐ころ軸受11の軸心回り(周方向)に等間隔に配置されている。なお、図1には、上下に配置された2組のシリンダ36及びピストン37が示されている。
軸受ハウジング25の軸方向外端部にはシリンダブロック38が連設され、このシリンダブロック38に複数の穴を形成することによって複数のシリンダ36が構成されている。シリンダブロック38は、軸受ハウジング25と同一材料又は略同一の線膨張係数(第2の線膨張係数)を有する材料によって形成されている。シリンダブロック38は、軸受ハウジング25とは別体に形成され、当該軸受ハウジング25にボルト等によって連結されている。ただし、シリンダブロック38は、軸受ハウジング25と一体形成してもよいし、シリンダブロック38を複数に分割形成し、その一部を軸受ハウジング25と一体形成してもよい。
図2に示すように、シリンダ36と外輪32との間には隔壁40が介在し、この隔壁40はシリンダ36の軸方向内側(外輪32側)の開口を塞いでいる。また、隔壁40にはシリンダ36と軸受ハウジング25とを連通する貫通孔41が形成されている。貫通孔41の内径はシリンダ36の内径よりも小径とされている。図2の例では、隔壁40は、軸受ハウジング25と一体に形成されているが、シリンダブロック38と一体に形成されていてもよく、また、軸受ハウジング25及びシリンダブロック38とは別体とし、ボルト等によって連結してもよい。
ピストン37は、シリンダ36内に軸方向に摺動可能に嵌合される受圧部37aと、この受圧部37aから軸方向内方(右方)に突出し、貫通孔41に軸方向摺動可能に嵌合される押圧部37bとを有している。押圧部37bの先端は外輪32の軸方向外端面に当接されている。受圧部37aの外周面とシリンダ36の内周面との間にはOリング(第1シール部材)43が設けられている。押圧部37bの外周面と貫通孔41の内周面との間にもOリング(第2シール部材)44が設けられている。Oリング43,44は強化ゴム製であり、そのゴムの材質は、予圧付与機構30等のオイル(作動油)との接触を考慮して、機械的強度と耐油性とを両立できるゴム、例えば、ニトリルゴム(特に、水素化ニトリルゴム)、アクリルゴム、シリコンゴム及びフッ素ゴム等が好適である。
受圧部37aの軸方向外端面と、シリンダ36内面との間に形成される空間は、油圧室(液体圧室)45とされている。また、受圧部37aの軸方向内端面と、シリンダ36内面及び隔壁40の軸方向外端面の間に形成される空間は、空気室54とされている。この空気室54は、通孔55を介してシリンダ36外部に連通している。
圧力供給手段Aは、オイルを供給する油圧ポンプ49と、この油圧ポンプ49と各シリンダ36とを接続する供給油路48と、供給油路48に設けられた逆止弁50とを備えている。この供給油路48の下流側はシリンダブロック38に形成され、各シリンダ36に連通している。逆止弁50は、シリンダブロック38に設けられ、チェックボール及び付勢部材等を有しており、油圧ポンプ49から油圧室45内への設定圧以上のオイルの流れを許容し、その逆方向のオイルの流れを阻止している。
油圧ポンプ49の作動により供給油路48を介して各油圧室45にオイルを供給すると、ピストン37が軸方向内方(右方)へ移動し、ピストン37の押圧部37bが外輪32を押し、外輪32に予圧を付与する。外輪32は、円錐ころ34の傾斜した転動面から分力を受けて軸方向及び径方向に変位し、径方向の予圧は、外輪32の外周面が軸受ハウジング25の内周面に押し付けられることによって支持される。
また、予圧付与機構30は、油圧室45内の圧力が高まることによって円錐ころ軸受11に過予圧が付与されようとした場合に、油圧室45内のオイルを排出して予圧を抜くための圧力排出手段Bをも備えている。この圧力排出手段Bは、各シリンダ36の油圧室45と、油タンク52とを接続する排出油路51と、この排出油路51に設けられたリリーフ弁53とを備えている。排出油路51の上流側は、シリンダブロック38に形成された供給油路48の下流側と共通の油路により各シリンダ36に接続されている。リリーフ弁53は、シリンダブロック38に設けられ、チェックボール及び付勢部材等を有しており、設定圧以上のオイルが油圧室45から油タンク52へ流れるのを許容し、その逆方向のオイルの流れを阻止している。リリーフ弁53の設定圧は、逆止弁50の設定圧よりも高くなっている。
油圧ポンプ49は制御装置60により動作制御されている。各シリンダ36の油圧室45の圧力は圧力センサ61により検出され、当該圧力が、逆止弁50の設定圧以上でリリーフ弁53の設定圧未満の範囲にある所定の圧力(以下、基準圧力という)であるとき、油圧ポンプ49は制御装置60により停止され、当該圧力が逆止弁50の設定圧力以下であるとき、油圧ポンプ49は制御装置60により駆動される。
以下、本実施形態にかかる転がり軸受装置の作用について説明する。
前述のように、円錐ころ軸受11の外輪32には、油圧ポンプ49から油圧室45にオイルを供給することによって軸方向の予圧が付与され、外輪32の外周面が軸受ハウジング25の内周面に押し付けられて支持される。この際、複数のシリンダ36及びピストン37が周方向等間隔に配置されているので、各ピストン37によって外輪32に均等に予圧を付与することができる。
トランスミッション10の温度が比較的低温で一定に保たれている場合、軸受ハウジング25、外輪32、出力軸15の熱膨張による寸法変化の差はさほど生じず、予圧も一定に保たれる。
トランスミッション10が昇温すると、出力軸15よりもトランスミッション10及び軸受ハウジング25,26の方が線膨張係数が大きいため、トランスミッション10及び軸受ハウジング25,26が軸方向に大きく膨張し、外輪32が円錐ころ34から離反しようとする。
また、円錐ころ軸受11よりも軸受ハウジング25の方が線膨張係数が大きいため、軸受ハウジング25の内周面が拡径し、外輪32の外周面から離反しようとする。つまり、軸受ハウジング25の内周面による外輪32の外周面の支持位置が径方向外方に変化し、軸受ハウジング25による外輪32への反力が減少する。
この際、外輪32は、油圧室45内の油圧によって軸方向内方へ押圧され、外輪32に付与される予圧と、軸受ハウジング25からの反力とがバランスする位置まで移動する。その結果、温度上昇によって外輪32の外周面の支持位置が移動しても、外輪32に対する予圧はほぼ一定に保たれる。この外輪32の移動に伴って油圧室45の油圧が逆止弁50の設定圧よりも低下すると油圧ポンプ49が作動し、基準圧力になるまで油圧室45にオイルを供給し、その後停止する。
ピストン37は、シリンダ36の内周面と、貫通孔41の内周面との2カ所でOリング43,44を介して支持されているので、温度上昇によりシリンダ36が熱膨張したとしてもシリンダ36内で傾くことはほとんどない。そのため、ピストン37が傾くことに伴い、Oリング43,44を通過して油圧室45のオイルが空気室54側に漏れたり、軸受ハウジング側の潤滑油や摩耗粉等が空気室54側に侵入したりすることを防止することができる。
ピストン37が移動することによって、受圧部37aと隔壁40との間の空気室54の容積が変化すると、通孔55を介して空気室54内の空気が出入りし、空気圧が一定に維持される。そのため、油圧室45のオイルや軸受ハウジング25内の潤滑油や摩耗粉等が空気室54に吸引されたり、逆に、空気室54内の塵等が油圧室45や軸受ハウジング25内に排出されたりするようなことが防止される。
また、油圧室45のオイルや軸受ハウジング25内の潤滑油が液体であることから、万が一、Oリング43,44を通じてこれらの液体が空気室54内に入り込んでも、通孔55がシリンダ56外部に連通していることから、ピストン37が軸方向内側に移動した際に、これらの液体を通孔55を介してシリンダ36外部に押し出すことができ、浸入した液体によって、ピストン37が軸方向内側へ移動できなくなることを防止できる。
複数のシリンダ36は、それぞれ円錐ころ軸受11の外輪32の一部に対応するように形成されており、従来のように軸受全体に対応するように形成されたシリンダと比べて、非常に小さく(小径に)形成されている。そのため、昇温時の熱膨張によるシリンダ36の寸法変化量は小さく、ピストン37との隙間の変化も小さくなるので、Oリング43,44によるシール機能が好適に維持され、油圧室45からのオイル漏れを確実に防止することができる。また、全てのシリンダ36に供給される油量も従来に比べて少なくすることができる。
油圧ポンプ49は、油圧室45内の圧力が低下したときのみ駆動して、油圧室45内の圧力を所定の範囲に維持するものであるので、常に油圧ポンプ49を駆動させる場合に比べて油圧ポンプ49の駆動に要するエネルギーを低減することができる。
トランスミッション10の温度が低下すると、軸受ハウジング25及びシリンダブロック38が軸方向及び径方向に熱収縮し、各シリンダ36の油圧室45も縮小する。これにより、油圧室45内のオイルが加圧され、円錐ころ軸受11には過予圧が付与されようとする。しかし、油圧室45の圧力がリリーフ弁53の設定圧よりも大きくなると、当該リリーフ弁53が開いて油圧室45内のオイルが排出されるので、油圧室45内の圧力が適切に保たれ、円錐ころ軸受11に過予圧が付与されることが防止される。また、この場合には、逆止弁50によって油圧ポンプ49側にオイルが逆流することが防止されている。
また、トランスミッション10の変速やクラッチ(図示略)の断接等によって、出力軸15に予圧付与方向とは逆方向(軸方向外方)への衝撃荷重等が加わった場合も、内輪33、円錐ころ34を介して外輪32が油圧ポンプ49による油圧に抗して軸方向外方に移動し、円錐ころ軸受11に過予圧が付与されようとするが、この場合も圧力排出手段Bが機能して油圧室45内のオイルが排出されるので、油圧室45の圧力が適切に保たれ、円錐ころ軸受11に過予圧が付与されることを防止することができる。
本発明は、上記実施形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。
上記実施形態では、複数のシリンダ36及びピストン37を円錐ころ軸受11の軸心回りに配置していたが、当該軸心を中心とする環状のシリンダ36を形成し、このシリンダ36に環状の受圧部37aを軸方向摺動可能に設け、受圧部37aに周方向に複数の押圧部37bを突出させてもよい。また、円錐ころ軸受11の軸心上に円錐ころ軸受11全体に対応する大きさの1つのシリンダ36を設け、このシリンダ36に嵌合するピストン37の受圧部37a及び押圧部37bをそれぞれOリング43,44で支持することもできる。
上記実施形態では、予圧付与機構30の圧力排出手段Bとしてリリーフ弁53を用いていたが、圧力センサ61の検出値に応じて開閉する電磁弁等を用いてもよい。
また、通孔55からの塵等の侵入を防止するために、通孔55にフィルター部材を取り付けてもよい。
また、上記実施形態では、トランスミッションに用いられる転がり軸受装置を示しているが、四輪駆動車の駆動分配軸用のギヤユニット等、他の装置にも適用することができる。また、転がり軸受としては、円錐ころ軸受に限らずアンギュラ玉軸受、深みぞ玉軸受等の予圧を使用する他の転がり軸受であってもよい。
本発明の実施形態に係る転がり軸受装置であるトランスミッションを示す断面図である。 転がり軸受装置の要部の拡大断面図である。 従来の転がり軸受装置の要部の拡大断面図である。
符号の説明
10 トランスミッション(転がり軸受装置)
11 円錐ころ軸受(転がり軸受)
15 出力軸(回転軸)
25 軸受ハウジング
30 予圧付与機構
32 外輪
33 内輪
34 円錐ころ(転動体)
36 シリンダ
37 ピストン
37a 受圧部
37b 押圧部
40 隔壁
41 貫通孔
43 Oリング(第1シール部材)
44 Oリング(第2シール部材)
45 油圧室
54 空気室
55 通孔

Claims (3)

  1. 転動体と、この転動体が転動する軌道面を外周に有する内輪と、前記転動体が転動するとともに前記転動体からの径方向荷重と軸方向一方側へ向く荷重とを受ける軌道面を内周に有し且つ第1の線膨張係数を有する外輪と、を備えた転がり軸受と、
    前記外輪の外周面が軸方向移動可能に嵌合する内周面を有し且つ第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する軸受ハウジングと、
    前記内輪の内周面に嵌合し、且つ、前記第2の線膨張係数よりも小さい第3の線膨張係数を有する回転軸と、
    液体圧によって前記外輪に軸方向他方側へ向く予圧を付与する予圧付与機構と、を備えており、
    前記予圧付与機構が、
    前記外輪よりも前記軸方向一方側に配置されたシリンダと、
    このシリンダと前記外輪との間に介在し、前記シリンダの前記外輪側の開口を塞ぐ隔壁と、
    前記シリンダと前記軸受ハウジングとを連通するように前記隔壁に形成される貫通孔と、
    前記シリンダの内周面に軸方向摺動可能に嵌合される受圧部と、前記貫通孔に軸方向摺動可能に嵌合され、前記外輪の前記軸方向一方側端面に当接する押圧部とを有するピストンと、
    前記シリンダ内に、前記受圧部に作用する液体圧を供給する圧力供給手段と、
    前記シリンダの内周面と前記受圧部の外周面との間に設けられる第1シール部材と、
    前記貫通孔の内周面と前記押圧部の外周面との間に設けられる第2シール部材と、を備えていることを特徴とする転がり軸受装置。
  2. 前記シリンダが、3つ以上設けられるとともに前記転がり軸受の軸心回りに等間隔に配置されている請求項1記載の転がり軸受装置。
  3. 前記シリンダ内において前記受圧部と前記隔壁との間に空気室が形成され、この空気室と前記シリンダ外部とを連通する通孔が前記シリンダに形成されている請求項1記載の転がり軸受装置。
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