JP2008121788A - 転がり軸受及び転がり軸受装置 - Google Patents

転がり軸受及び転がり軸受装置 Download PDF

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寛一 耕田
Tadashi Fukao
正 深尾
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Abstract

【課題】油圧等の液体圧が作用する閉塞部材(予圧部材)と外輪との相対的な位置ずれに伴う摩耗の発生を防止する。
【解決手段】転動体34と、転動体34が転動する軌道面を外周に備えた内輪33と、転動体34が転動するとともに転動体34から軸方向一方側へ向く荷重を負荷可能な軌道面を内周に備えた外輪32と、を備え、外輪32の軸方向一方側の端部に、外輪32の内周側開口部を塞ぐ閉塞部材36を一体に設ける。
【選択図】 図1

Description

この発明は、円錐コロ軸受、アンギュラ玉軸受などの予圧をかけて使用する転がり軸受、及び、この転がり軸受を組み込んだ転がり軸受装置に関する。
円錐ころ軸受やアンギュラ玉軸受は、軸方向の予圧をかけた状態で使用される。例えば、トランスミッションユニット等の自動車用のギア式駆動伝達ユニットには、その要所(例えばトランスミッションユニットでは終減速装置部分)に円錐ころ軸受が採用されており、図3(a)に示すように、円錐ころ軸受111の内輪133に回転軸115を圧入するとともに、トランスミッションケースの軸受ハウジング125に外輪132を圧入し、その後に軸方向一方側(矢印a)へ向けて予圧を付与するようになっている。予圧を与えると、外輪132は円錐ころ134の傾斜した転動面上での分力を受けて軸方向及び径方向に変位し、その右端面132cと外周面132bとが軸受ハウジング125の内端面125cと内周面125aとに押しつけられて予圧が支持される。
一方、近年は軽量化の一環として、トランスミッションケース(軸受ハウジング)をAl合金などの軽金属で構成することが行なわれている。Alは構造材料中でも線膨張係数が最も高く(室温で約23.5×10−6/℃:以下、線膨張係数の単位はppm/℃と略記する))、回転軸や円錐ころ軸受を構成する鋼(Fe系材料)の線膨張係数(室温で約12ppm/℃)とは相当の差がある。
回転軸と軸受ハウジングとが同じ材料である場合、温度による寸法変化も同じであるので、円錐ころ軸受にかかる予圧に大きな変化はない。しかし、軸受ハウジングを軽金属で構成すると、温度上昇によって軸受ハウジングが回転軸よりも大きく寸法変化し、予圧が抜けてしまうおそれがある。
具体的には、図3(b)に示すように、トランスミッションが昇温すると、軸受ハウジング125及び回転軸115が膨張するが、その膨張による寸法変化の差によって、外輪132の内周軌道面132aが円錐ころ134の転動面から矢印b方向に離間する。つまり、円錐ころ軸受111のアキシャル隙間及びラジアル隙間が温度により大きく変化し、予圧不足となる。このような予圧不足は、ギヤのガタツキを招き、騒音発生の原因となる。
かかる問題を解消し得るものとして、下記特許文献1には、油圧やバネによって外輪に予圧を付与するようにした転がり軸受装置が開示されている。具体的には、軸受ハウジングに有底筒形のシリンダを形成し、このシリンダ内に、外輪を軸方向摺動可能に嵌合するとともに、外輪の軸方向外端部に当接する円盤状の予圧部材を設け、シリンダ内面と予圧部材とに囲まれた油圧室に油圧ポンプによってオイルを供給するようになっている。さらに、油圧室内には、予圧部材を軸方向内方に付勢する圧縮コイルバネを設けている。
この構成では、油圧及び圧縮コイルバネによって予圧部材に予圧を付与する一方、昇温によって軸受ハウジングが回転軸及び外輪よりも大きく寸法変化したときには、圧縮コイルバネと油圧の作用によって、予圧部材を介して外輪を軸方向内方に移動させ、円錐ころ軸受のアキシャル隙間及びラジアル隙間の変化を抑えて予圧不足を解消することが可能である。
特開2006−153090号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、外輪と予圧部材とが別体であるので、軸受ハウジングの内周面が熱膨張により拡径したときに外輪と予圧部材とがそれぞれ個別に傾き、両者の相対位置がずれてしまう可能性がある。この位置ずれによって外輪と予圧部材とが擦れ合うと摩耗を生じ、耐久性低下の原因になったり、摩耗粉が転動体と内輪及び外輪との間の転がり接触部分に噛み込む原因になったりする。
また、軸受ハウジングが昇温によって径方向に膨張し、予圧部材や外輪との間に径方向の寸法変化の差が生じたとき、両者の隙間からオイルが漏れ出し、十分に予圧を付与できない可能性がある。特に、特許文献1の技術では、予圧部材の外周面と軸受ハウジング(シリンダ)の内周面との間に1つのOリングを介在させているが、軸受ハウジングが昇温状態から冷却された際の油圧室内の圧力上昇を防止するため、オイルがOリングを通過することを許容しており、オイル漏れを完全には防止できない。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、油圧等の液体圧が作用する閉塞部材(予圧部材)と外輪との相対的な位置ずれに伴う摩耗の発生を防止することができる転がり軸受及び転がり軸受装置を提供することを目的とする。
本発明に係る転がり軸受は、転動体と、この転動体が転動する軌道面を外周に備えた内輪と、前記転動体が転動するとともに前記転動体からの径方向荷重と軸方向一方側へ向く荷重とを受ける軌道面を内周に備えた外輪と、を備え、
前記外輪の前記軸方向一方側の端部に、前記外輪の内周側開口部を塞ぐ閉塞部材が一体形成されていることを特徴とするものである。
この転がり軸受をトランスミッション等に組み込んで用いる場合、軸受ハウジングの内周面に外輪を組み込み、回転軸を内輪の内周面に嵌合し、予圧として、油圧等の液体圧を閉塞部材に対して軸方向他方側から付与する。これにより、軸受ハウジングの内周面が昇温により拡径し、外輪や閉塞部材の外周面との間に隙間を生じても、外輪及び閉塞部材が個別に傾くことがなく、外輪と閉塞部材との相対的な位置ずれも、この位置ずれに伴う摩耗も生じなくなる。
前記外輪の外周面には、Oリング装着用の円周溝が軸方向に離間して複数形成されていることが好ましい。この場合、円周溝にOリングを装着するとともに、Oリングを軸受ハウジングの内周面に圧接することによって、液体圧の漏れをより防止することができるともに、液体圧の補給を少なくすることができる。また、外輪はOリングにより軸方向複数カ所で支持されるので、外輪の傾きを防止することができる。
本発明に係る転がり軸受装置は、転動体と、この転動体が転動する軌道面を外周に備えた内輪と、前記転動体が転動するとともに前記転動体からの径方向荷重と軸方向一方側へ向く荷重とを受ける軌道面を内周に備え、且つ、第1の線膨張係数を有する外輪と、を備えた転がり軸受と、
前記外輪の外周面が嵌合する内周面を備え、且つ、第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する軸受ハウジングと、
前記内輪の内周面に嵌合し、且つ、第2の線膨張係数よりも小さい第3の線膨張係数を有する回転軸と、
液体圧によって前記外輪に軸方向他方側へ向く予圧を付与する予圧付与機構と、を備え、
前記外輪の前記軸方向一方側の端部に、前記外輪の内周側開口部を塞ぐとともに前記予圧付与機構による液体圧が作用する閉塞部材が一体形成されていることを特徴とするものである。
これによれば、軸受ハウジングの内周面が昇温により拡径し、外輪や閉塞部材の外周面との間に隙間を生じても、外輪と閉塞部材とが個別に傾くことがなく、外輪と閉塞部材との相対的な位置ずれも、この位置ずれに伴う摩耗も生じなくなる。
前記外輪の外周面には、Oリング装着用の円周溝が軸方向に離間して複数形成され、この円周溝に装着したOリングが軸受ハウジングの内周面に圧接されていることが好ましい。この場合、閉塞部材に圧力を付与する液体の漏れをOリングによってより防止することができるとともに、液体圧の補給を少なくすることができる。また、外輪はOリングにより軸方向複数カ所で支持されるので、外輪の傾きを防止することができる。
本発明によれば、油圧等の液体圧が作用する閉塞部材と外輪との相対的な位置ずれに伴う摩耗の発生を防止することができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る転がり軸受装置を示す側面断面図である。この転がり軸受装置は、トランスミッション10に転がり軸受11を組み込むことにより構成されている。トランスミッション10は、ケース12と、ケース12の内部に組み込まれたギヤボックス13と、ギヤボックス13を貫通するように互いに平行に設けられた入力軸14及び出力軸(回転軸)15とを備えている。入力軸14及び出力軸15は、ギヤボックス13内の変速ギヤ16により連動して回転するようになっている。
変速ギヤ16は、例えば、マニュアルタイプとされており、入力軸14に互いに歯数の異なる複数枚の入力ギヤ18を設けるとともに、出力軸15に互いに歯数の異なる出力ギヤ19を設け、得るべき変速比又は前進/後退の区別に応じて、入力軸14上のギヤ18と出力軸15上のギヤ19との噛み合いの組み合わせを切り替えることによって変速可能となっている。これら入力ギヤ18及び出力ギヤ19にはスパーギヤやヘリカルギヤが用いられる。また、変速ギヤ16は、遊星ギヤ機構等を用いたオートマチックタイプであってもよい。
入力軸14の両端は、ケース12内の内側に固定された円筒ころ軸受21及び玉軸受22によりそれぞれ回転可能に支持されている。出力軸15の両端は、円錐ころ軸受11,23によりそれぞれ支持されている。軸方向一方側(左側)の円錐ころ軸受11は、ケース12と一体の軸受ハウジング25に嵌合され、軸方向他方側(右側)の円錐ころ軸受(第2円錐ころ軸受)23は、ケース12と一体の軸受ハウジング26に当て止め固定されている。また、左側の円錐ころ軸受11は、予圧付与機構30から軸方向内方(右方向)へ向く予圧が付与されている。この予圧付与機構30については後に詳述する。
図2は、本発明の要部を拡大して示す断面図である。左側の円錐ころ軸受11は、外輪32と、内輪33と、外輪32及び内輪33の間に配置された複数の円錐ころ(転動体)34とを備えている。外輪32の外周面は、軸受ハウジング25の内周面に嵌合され、外輪32の内周面には、円錐ころ34が斜接して転動する内周軌道面32aが形成されている。内輪33の外周面には、円錐ころ34が斜接して転動する外周軌道面33aが形成され、内輪33の内周面には出力軸15が嵌合されている。内輪33と円錐ころ34との接触角および円錐ころ34と外輪32との接触角は、軸方向内側(右側)から軸方向外側(左側)に向けて拡径するように設定されている。なお、ここで接触角は、JISB0104−1991に規定された呼び接触角に準じる。
これらの構成は、右側の円錐ころ軸受23(図1)についても、軸方向内側が左側に、軸方向外側が右側になる点以外は、同様である。
左側の円錐ころ軸受11の外輪32には、更に、閉塞部材(予圧部材)36が設けられている。この閉塞部材36は、外輪32の軸方向外端部(左端部)において、外輪32の内周側開口部を塞ぐように外輪32と一体形成されている。したがって、外輪32は、軸方向外端部が中実構造となり、軸方向内端部のみが開口した形状となっている。
また、外輪32の外周面には、軸方向に間隔をあけて複数(図例では2つ)の円周溝52が形成されている。各円周溝52には、強化ゴム製のOリング53が嵌合され、Oリング53は、軸受ハウジング25の内周面に圧接され、弾性変形している。Oリング53に使用するゴムの材質は、予圧付与機構30のオイルとの接触を考慮して、機械的強度と耐油性とを両立できるゴム、例えば、ニトリルゴム(特に、水素化ニトリルゴム)、アクリルゴム、シリコンゴム及びフッ素ゴム等が好適である。
円錐ころ軸受11の外輪32は、第1の線膨張係数を有している。これに対して、軸受ハウジング25は、第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有している。また、出力軸15は、第2の線膨張係数よりも小さい第3の線膨張係数を有している。
例えば、円錐ころ軸受11は、外輪32、内輪33及び転動体34が、いずれも鋼製(例えば、軸受鋼、はだ焼鋼、浸炭鋼)にて形成され、軸受ハウジング25は、軽金属製(Al又はMgのいずれかを主成分(50質量%以上の含有率)とする金属製)にて形成され、出力軸15は、鋼製(例えば、機械構造用低合金鋼製)にて形成されている。好ましくは、軸受ハウジング25は、加工性及び耐食性の観点からAlまたはAl合金が使用され、Al合金としては、例えばダイキャスト用Al合金が使用される。本実施形態では、ケース12(図1)もAl合金製であり、軸受ハウジング25はケース12の内面に一体化されている。
軸受ハウジング25の構成主成分であるAlの線膨張係数(第2の線膨張係数)は23〜24ppm/℃、出力軸15及び円錐ころ軸受11の構成主成分であるFeの線膨張係数(第1,第3の線膨張係数)は、約12〜13ppm/℃である。また、一般に、自動車のトランスミッションにおける軸受使用環境温度は−40℃以上150℃以下の範囲(寒冷地及び高速連続運転等を除いた通常到達温度は、50℃以上80℃以下)である。
図1に示すように、予圧付与機構30は、円錐ころ軸受11に軸方向内方への予圧を付与するものであり、軸受ハウジング25に設けられた有底円筒状のシリンダ43と、このシリンダ43に接続され、シリンダ43内に油圧(液体圧)を供給する圧力供給手段44とを備えている。シリンダ43内には、外輪32が軸方向に摺動可能に嵌合されており、シリンダ43内面と外輪32の閉塞部材36との間に形成される空間が油圧室45(液体圧室)とされている。外輪32の外周面には、摺動をスムーズにするために固体潤滑剤がコーティングされている。固体潤滑剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂や二硫化モリブデン、グラファイト、モリブデンやこれらを樹脂に分散させたものが使用することができる。圧力供給手段44は、シリンダ43の底壁に形成した貫通孔46を介して油圧室45内に接続された油路(流路)47と、この油路47にオイルを流す油圧ポンプ48とを備えている。
油圧ポンプ48の作動により油路47及び貫通孔46を介して油圧室45にオイルを供給すると、外輪32には軸方向内方(右方)への予圧が付与される。外輪32は、円錐ころ34の傾斜した転動面から分力を受けて軸方向及び径方向に変位し、径方向の予圧は、外輪32の外周面がシリンダ43の内周面に押しつけられることによって支持される。外輪32に加わる予圧は、油圧ポンプ48の圧送圧力に応じて調整可能となっている。
また、予圧付与機構30は、圧力排出手段50をも備えている。この圧力排出手段50は、油圧室45内の圧力が高まることによって円錐ころ軸受11に過予圧が生じた場合に、油圧室45内のオイルを排出して予圧を抜くためのものである。排出されたオイルは、油圧ポンプ用の油圧タンクや排出容器に流すように構成されている。なお、オイルがトランスミッション10の潤滑油と同じである場合には、圧力排出手段50によりトランスミッション10内にオイルを排出してもよい。
この圧力排出手段50としては、例えば、電磁弁やリリーフ弁等の開閉弁や、オリフィスやニードル等の差圧を保持する手段が用いられる。電磁弁の場合、圧力供給手段44の内圧(油圧室45や貫通孔46の内圧、油圧ポンプ48の圧送圧力)を監視する圧力センサを備えておき、内圧が過剰に上昇した際に、圧力センサの検出値により油路47に設けた電磁弁を開くことで、オイルを排出し、内圧を適正なものとする。リリーフ弁の場合、油圧室45の内圧が一定圧力を超えると開いてオイルを排出するように、前もって圧力を設定する。オリフィスやニードルの場合には、適正な内圧が得られるように設定する。
油路47や貫通孔46に逆止弁を設け、油圧室45から油圧ポンプ48側へのオイルの逆流を防止している場合には、油圧室45に他の油路を接続するとともに前述の電磁弁やリリーフ弁を設け、油圧室45内の圧力が所定の圧力を超えたときに、電磁弁又はリリーフ弁を開いて当該他の油路からオイルを排出するようにしてもよい。
以下の実施形態にかかる転がり軸受装置の動作について説明する。
前述のように、円錐ころ軸受11の外輪32には、油圧ポンプ48から油圧室45に油圧を供給することによって軸方向の予圧が付与され、外輪32の外周面が軸受ハウジング25(シリンダ43)の内周面に押しつけられて支持される。
外輪32には閉塞部材36が設けられ、この閉塞部材36によって広い面積で油圧を受けているので、小さい油圧でも外輪32に大きな力を作用することができる。従って、油圧ポンプ48として容量の小さいものを用いることができ、予圧付与機構30の小型化及びコストダウンを図ることができる。
トランスミッション10の温度が比較的低温で一定に保たれている場合、軸受ハウジング25、外輪32、出力軸15の熱膨張による寸法変化の差はさほど生じず、予圧も一定に保たれる。
トランスミッション10が昇温すると、出力軸15よりもトランスミッション10及び軸受ハウジング25,26の方が線膨張係数が大きいため、トランスミッション10及び軸受ハウジング25,26が軸方向に大きく膨張し、外輪32が円錐ころ34から離間しようとする。
また、円錐ころ軸受11よりも軸受ハウジング25の方が線膨張係数が大きいため、軸受ハウジング25(シリンダ43)の内周面が拡径し、外輪32の外周面から離間しようとする。つまり、軸受ハウジング25の内周面による外輪32の外周面の支持位置が径方向外方に変化し、軸受ハウジング25による外輪32への反力が減少する。
この際、外輪32は、油圧ポンプ48からの油圧により軸方向内方(右方)へ押圧され、外輪32に付与される予圧と、軸受ハウジング25からの反力とがバランスする位置まで移動する。その結果、温度上昇によって外輪32の外周面の支持位置が移動しても、外輪32に対する予圧はほぼ一定に保たれる。
また、図2に示すように、軸受ハウジング25の内周面が拡径し、外輪32の外周面から離間すると、外輪32に設けたOリング53が軸受ハウジング25の内周面に追従して弾性復元し、圧接(密着)した状態を維持する。また、Oリングは、ゴム製であり、軸受ハウジング25よりも大きな線膨張係数(第4の線膨張係数)を有しているので、昇温により軸受ハウジング25よりも大きく膨張して軸受ハウジング25の内周面により密着する。したがって、軸受ハウジング25の内周面と外輪32の外周面との隙間からオイルが漏れることを防止し、予圧を維持することができる。さらに、Oリング53は、軸方向に離間して複数設けられているので、オイル漏れをより確実に防止することができるとともに、油圧ポンプ48の作動を抑制でき、省エネルギーを図ることができる。
また、外輪32は、閉塞部材36が一体に設けられていることによって剛性が高められており、トランスミッション10の昇温に伴って、軸受ハウジング25の内周面と外輪32の外周面との間に隙間が生じた場合でも、軌道真円度の悪化を抑制し、軸受性能を維持することができる。
従来技術のように外輪32と閉塞部材36とが別体であると、軸受ハウジング25の内周面が拡径したときに外輪32と閉塞部材36とが個別に傾き易くなり、外輪32と閉塞部材36とが相互に位置ずれして擦れによる摩耗を生じる恐れがあるが、外輪32と閉塞部材36とを一体に形成することによって、このような不都合も生じなくなる。また、Oリング53を軸方向に間隔をあけて複数設けているので、外輪32の傾き自体を抑制することもできる。
トランスミッション10の温度が低下すると、軸受ハウジング25が軸方向及び径方向に熱収縮し、油圧室45が縮小する。これにより、油圧室45内のオイルが加圧され、円錐ころ軸受11に過予圧が働く。この場合、図1に示すように、圧力排出手段50が機能し、油圧室45からオイルを排出することにより、油圧室45の圧力が適正に保たれる。
また、トランスミッション10の変速やクラッチ(図示略)の断接等によって、出力軸15に予圧付与方向とは逆方向(軸方向外方)への衝撃荷重等が加わった場合も、内輪33、円錐ころ34を介して外輪32が油圧ポンプ48による油圧に抗して軸方向に移動し、円錐ころ軸受11に過予圧が働くが、この場合も圧力排出手段50が機能して油圧室45内のオイルを排出し、油圧室45の圧力が適切に保たれる。
また、この衝撃荷重が加わることによって瞬間的に油圧室45内が昇圧したとしても、外輪32には複数のOリング53が設けられているので、軸受ハウジング25の内周面と外輪32の外周面との間の隙間からのオイル漏れを防止することができる。
本発明は、上記実施形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。例えば、上記実施形態では、トランスミッションに用いられる転がり軸受装置を示しているが、四輪駆動車の駆動分配軸用のギヤユニット等、他の装置にも適用することができる。
また、転がり軸受としては、円錐ころ軸受に限らずアンギュラ玉軸受、深みぞ玉軸受等の予圧を使用する他の転がり軸受であってもよい。
本発明の実施形態に係る転がり軸受装置であるトランスミッションを示す断面図である。 転がり軸受装置の要部の拡大断面図である。 従来の転がり軸受装置の要部の拡大断面図である。
符号の説明
10 トランスミッション(転がり軸受装置)
11 円錐ころ軸受(転がり軸受)
15 出力軸(回転軸)
25 軸受ハウジング
30 予圧付与機構
32 外輪
33 内輪
34 円錐ころ(転動体)
36 閉塞部材
52 円周溝
53 Oリング

Claims (4)

  1. 転動体と、この転動体が転動する軌道面を外周に備えた内輪と、前記転動体が転動するとともに前記転動体からの径方向荷重と軸方向一方側へ向く荷重とを受ける軌道面を内周に備えた外輪と、を備え、
    前記外輪の前記軸方向一方側の端部に、前記外輪の内周側開口部を塞ぐ閉塞部材が一体形成されていることを特徴とする転がり軸受。
  2. 前記外輪の外周面に、Oリング装着用の円周溝が軸方向に離間して複数形成されている請求項1記載の転がり軸受。
  3. 転動体と、この転動体が転動する軌道面を外周に備えた内輪と、前記転動体が転動するとともに前記転動体からの径方向荷重と軸方向一方側へ向く荷重とを受ける軌道面を内周に備え、且つ、第1の線膨張係数を有する外輪と、を備えた転がり軸受と、
    前記外輪の外周面が嵌合する内周面を備え、且つ、第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する軸受ハウジングと、
    前記内輪の内周面に嵌合し、且つ、前記第2の線膨張係数よりも小さい第3の線膨張係数を有する回転軸と、
    液体圧によって前記外輪に軸方向他方側へ向く予圧を付与する予圧付与機構とを備え、
    前記外輪の前記軸方向一方側の端部に、前記外輪の内周側開口部を塞ぐとともに予圧付与機構による液体圧が作用する閉塞部材が一体形成されていることを特徴とする転がり軸受装置。
  4. 前記外輪の外周面に、Oリング装着用の円周溝が軸方向に離間して複数形成され、この円周溝に装着したOリングが軸受ハウジングの内周面に圧接されている請求項3記載の転がり軸受装置。
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