JP4903125B2 - 熱転写シート - Google Patents

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Description

本発明は、熱転写シートに関する。
熱転写を利用した画像形成における熱転写シートとして、ポリエステルフィルム等の基材シートの一方の面に昇華性染料とバインダーとからなる昇華転写型インク層を設けた昇華型熱転写シートや、該昇華転写型インク層の代わりに顔料とワックスとからなる溶融転写型インク層を設けた熱溶融型の熱転写シートが知られている。
これらの熱転写シートは、基材シートの一方の面にインク層を、他方の面に耐熱滑性層を有することが求められており、基材シートと耐熱滑性層との間にプライマー層を設けることも一般的である。
ところが、近年のプリンターの高速化に伴い、サーマルヘッドから発せられる熱エネルギーが益々増加しており、耐熱滑性層とサーマルヘッドの融着によるスティッキングや印画シワ、原反破断等の問題が生じてきた。
プリンターの高速印画化を達成するため、耐熱滑性層の更なる高耐熱化が取り組まれているが、高耐熱化された耐熱滑性層においても、従来のプライマー層を使用するとプライマー層が熱エネルギーにて軟化することにより耐熱滑性層が流動して印画欠陥が生じる等、性能を充分に発現できないことが分かってきた。
高耐熱化されたプライマー層が設けられた熱転写シートとして、例えば、特許文献1に、プライマー層に硬化性樹脂を含有する熱転写シートが開示されている。
しかしながら、この特許文献1に開示された熱転写シートは、耐熱性の向上を図ることはできるものの、プライマー層を形成するための塗工液のポットライフが短いことによる製造安定性の問題、充分に耐熱性を向上させるために架橋反応を進行させるため、製造の高速化ができないという問題があった。
また、例えば、特許文献2には、プライマー組成物の粘弾性値を所定の範囲に制御した熱転写シートが開示されている。この熱転写シートは、基材シートとサーマルヘッドとが熱融着してしまう所謂スティッキングを防止できる。
しかしながら、この特許文献2に開示された熱転写シートは、近年のプリンターの高速化に伴うサーマルヘッドの熱エネルギーの増加に充分耐え得るとはいい難く、より耐熱性に優れる熱転写シートが求められている。
更に、例えば、特許文献3には、共重合ポリエステル樹脂にラジカル重合性単量体がグラフト重合せしめられたグラフト重合体を含有する共重合ポリエステル樹脂系水分散体が開示されている。
この特許文献3に開示のグラフト重合体は、耐熱性に優れる樹脂であるが、特許文献3には、熱転写シート及びプライマー層に関する記載はなされていない。
また、例えば、特許文献4には、疎水性共重合ポリエステル樹脂にラジカル重合性単量体をグラフト重合させた反応物を、プラスチック用プライマー処理材として用いることが開示されている。
しかし、特許文献4に開示のグラフト重合体は、プライマーとして必要な接着性、耐水性、耐ブロッキング性は有しているものの、特に熱転写用途に重要となる耐熱性を考慮しての検討はなされていない。
特開2000−272254号公報 特開2002−187371号公報 特開平06−256437号公報 特開平10−231335号公報
本発明の目的は、上記現状に鑑み、高い耐熱性を有するとともに、プライマー層を製造するためのプライマー層形成用塗工液のポットライフが長く、安定的に製造することができる熱転写シートを提供することにある。
本発明は、基材シートの一方の面に熱転写性色材層が形成され、他方の面にプライマー層を介して耐熱滑性層が形成された熱転写シートであって、上記プライマー層は、共重合ポリエステル樹脂にラジカル重合性単量体成分がグラフト重合されたグラフト重合体を含有するものであり、上記グラフト重合体は、上記共重合ポリエステル樹脂に対する上記ラジカル重合性単量体成分のグラフト効率が60〜100%であり、更に、上記共重合ポリエステル樹脂は、重合性不飽和基含有ジカルボン酸成分が全酸成分に対して0.5〜10モル%共重合されており、かつ、上記ラジカル重合性単量体成分は、親水性基含有ラジカル重合性単量体と、Q−e値におけるe値が−0.4以下である単量体とを含むことを特徴とする熱転写シートである。
上記共重合ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が0〜50℃、かつ、比重が1.25〜1.33であり、グラフト重合体は、比重が1.24〜1.29であることが好ましい。
また、上記共重合ポリエステル樹脂の酸成分のうち60モル%以上が芳香族ジカルボン酸であり、かつ、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールからなる群より選択される1種類以上のグリコール成分を60モル%以上含むことが好ましい。
また、上記プライマー層は、更に帯電防止剤を含有することが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明ではオリゴマー、プレポリマー、ポリマー等を総称して、“樹脂”と記載する。
本発明者らは、熱転写シートの基材シートと耐熱滑性層との間に設けられ、これらを接着せしめるプライマー層を、特定の樹脂を含有するプライマー層用塗工液を用いて形成されてなるものとすることで、熱転写シートを、耐熱性に優れたものとすることができるとともに、プライマー層用塗工液のポットライフに優れることから安定的に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
図1は、本発明の熱転写シートの一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本発明の熱転写シート1は、基材シート2の一方の面に熱転写性色材層3が形成され、他方の面にプライマー層4を介して耐熱滑性層5が形成されている。
本発明の熱転写シート1において、基材シート2としては、従来公知のある程度の耐熱性と強度とを有するものであれば特に限定されず、いずれのものであってもよい。
基材シート2としては、各種紙類、フィルム等が挙げられる。
具体的には、例えば、グラシン紙、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム等の耐熱性の高いポリエステルフィルムや、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等が挙げられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又は、その混合物からなるポリエステルフィルムが好ましい。上記ポリエステルフィルムは、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよいが、延伸フィルム、特に2軸延伸フィルムが好ましく用いられる。
基材シート2は、上述の紙類、プラスチックフィルム等を積層したものであってもよい。
基材シート2の形態としては特に限定されず、例えば、枚葉状でもあってよいし、連続フィルム状であってもよい。
基材シート2の厚さとしては、強度、耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は0.5〜50μm程度が好ましい。より好ましい下限は1μm、より好ましい上限は20μmであり、更に好ましくは、上限が10μmである。
基材シート2は、隣接する層との接着性を向上させるため、表面処理が施されていてもよい。上記表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、グラフト化処理等、公知の樹脂表面改質技術を適用することができる。上記表面処理は、1種のみ施されていてもよいし、2種以上が施されていてもよい。
本発明では上記表面処理の中でも、製造適性に優れ、かつコストが低い点で、コロナ処理又はプラズマ処理が好ましい。
本発明の熱転写シート1において、プライマー層4は、基材シート2の後述する熱転写性色材層3の反対の面であって、基材シート2と耐熱滑性層5との間に形成されており、基材シート2と耐熱滑性層5とを良好に接着せしめる役割を果たしている。
プライマー層4は、共重合ポリエステル樹脂にラジカル重合性単量体成分がグラフト重合されたグラフト重合体を含有するものである。
上記グラフト重合体は、共重合ポリエステル樹脂がラジカル重合性単量体成分によりグラフト重合された構造であり、これは、共重合ポリエステル樹脂同士が、後述するラジカル重合性単量体成分の親水性基含有ラジカル重合性単量体とQ−e値におけるe値が−0.4以下であるラジカル重合性単量体成分とを介して一部反応し、分子延長した半架橋構造である。
上記グラフト重合体が上記構造を構成することで、プライマー層4は、耐熱性に優れたものとなる。更に、グラフト重合体は、その共重合体成分である共重合ポリエステル樹脂が、後述するプライマー層用塗工液中で反応することがないため、ポットライフに優れたものとなる。よって、このようなプライマー層を有する本発明の熱転写シートは、耐熱性に優れるとともに製造安定性に優れたものとなる。
上記共重合ポリエステル樹脂は、重合性不飽和基含有ジカルボン酸成分を全酸成分に対して0.5〜10モル%共重合されている。上記重合性不飽和基含有ジカルボン酸成分が0.5モル%未満であると、共重合ポリエステル樹脂に対する上記ラジカル重合性単量体成分の効率的なグラフト化が行われず、プライマー層を形成するための後述するプライマー層用塗工液に水系媒体を用いた場合、該水系媒体中での分散粒子径が大きくなり分散安定性が低下する。一方、上記重合性不飽和基含有ジカルボン酸成分が10モル%を超えると、上記ラジカル重合性単量体成分によるグラフト化反応の後期に粘度が上昇し、反応の均一性が妨げられる。上記重合性不飽和基含有ジカルボン酸成分の共重合比のより好ましい下限は2モル%、上限は7モル%である。
上記重合性不飽和基含有ジカルボン酸としては、例えば、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のα、β−不飽和ジカルボン酸類;2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等の不飽和二重結合を含有する脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。なかでも、フマール酸、マレイン酸及び2,5−ノルボルネンジカルボン酸(エンド−ビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸)が好適に用いられる。
本発明においては、上記共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が0〜50℃、かつ、比重が1.25〜1.33であり、上記グラフト重合体の比重が1.24〜1.29であることが好ましい。上記グラフト重合体の比重のより好ましい下限は1.26である。
上記グラフト重合体の比重は凝集力の指標となり、比重が1.24以上のグラフト重合体は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)からなる基材シートとの優れた接着性を有する。一方、比重が1.24未満の場合は、凝集力が低下し、例えば、PETからなる基材シートとの接着力が弱くなることがある。また、上記グラフト重合体の比重が1.24以上であっても、上記共重合ポリエステルのガラス転移温度が50℃を超えると、例えば、PETからなる基材シートとの接着性が不足することがあり、上記共重合ポリエステルのガラス転移温度が0℃未満であると、プライマー層4の耐熱性が不足することがある。
上記グラフト重合体の比重が1.29を超える場合は、グラフト重合体を用いた塗工液の保存安定性が不良となるため、熱転写シートの連続生産の際、長時間安定した品質の製品を得ることが難しくなる場合がある。
また、上記共重合ポリエステルの比重が1.25未満の場合、得られるグラフト重合体が比重の小さいものとなり、例えば、PETからなる基材シートとの接着力が弱くなることがある。上記共重合ポリエステルの比重が1.33を超える場合、溶剤への溶解性が悪くなり、グラフト重合反応を行なうことが困難になることがある。
また、上記重合性不飽和基含有ジカルボン酸以外の共重合ポリエステル樹脂の共重合組成としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
上記芳香族ジカルボン酸としては特に限定されず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。また、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、少量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸も用いることができる。
上記脂肪族ジカルボン酸としては特に限定されず、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等が挙げられる。
上記脂環族ジカルボン酸としては特に限定されず、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、及び、これらの酸無水物等が挙げられる。
なかでも、上記共重合ポリエステル樹脂の比重を1.25〜1.33の範囲内にするには、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が上記共重合ポリエステル樹脂の全酸成分に対して60モル%以上共重合されていることが最も好ましい。
また、上記共重合ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、例えば、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数が6〜12の脂環族グリコール及び/又はエーテル結合含有グリコール等が挙げられる。
上記炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等が挙げられる。
上記炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては特に限定されず、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
上記エーテル結合含有グリコールとしては特に限定されず、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、更にビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコ−ル類、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要により使用しうる。
なかでも、上記共重合ポリエステル樹脂の比重を1.25〜1.33の範囲内にするには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールからなる群より選択される1種以上のグリコールが上記共重合ポリエステル樹脂の全グリコール成分に対して60モル%以上共重合されていることが最も好ましい。
上記共重合ポリエステル樹脂は、例えば、3官能以上のポリカルボン酸及び/又はポリオールが共重合されていてもよい。
上記3官能以上のポリカルボン酸としては特に限定されず、例えば、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等が挙げられる。
上記3官能以上のポリオールとしては特に限定されず、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリト−ル等が使用される。
上記3官能以上のポリカルボン酸及び/又はポリオ−ルは、全酸成分又は全グリコール成分に対し、好ましくは0〜5モル%の範囲で共重合されることが好ましい。5モル%を超えると充分な加工性が付与できにくくなる。より好ましくは0〜3モル%の範囲で共重合されることである。
上記共重合ポリエステル樹脂は、数平均分子量が5000〜4万であることが好ましい。5000未満であると、乾燥塗膜の後加工性等の樹脂物性が低下する傾向がある。また、4万を超えると、共重合ポリエステル樹脂が水分散化しにくくなる傾向がある。
なお、本明細書において、数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算にて得られた値である。
上記共重合ポリエステル樹脂にグラフト重合せしめられるラジカル重合性単量体は、親水性基含有ラジカル重合性単量体と、Q−e値におけるe値が−0.4以下である単量体とを含む。
上記グラフト重合体が上記親水性基含有ラジカル重合性単量体を含有することで、該グラフト重合体が水系媒体に分散可能となる。また、上記Q−e値は、グラフト化する際の反応のしやすさの指標となり、上記グラフト重合体がQ−e値におけるe値が−0.4以下である単量体を含有することで、上記共重合ポリエステル樹脂との間で好適なグラフト重合(架橋構造)を構成する。好ましくは−0.6以下であり、上記Q−e値におけるe値の下限は特に限定されないが、−2.2以上であることが好ましい。
また、水系媒体に分散する場合の上記グラフト重合体の体積平均粒径は、50〜300nmの範囲であることが好ましい。体積平均粒径が50nm未満であると、グラフト重合体粒子が凝集し、分散安定性が低下するおそれがある。体積平均粒径が300nmを超える場合は、長期保存安定性が悪くなり、グラフト重合体が水系媒体中に沈降するおそれがある。
上記親水性基含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、親水性基を有するか、後で親水性基に変化させることができる基を有するラジカル重合性単量体が挙げられる。
上記親水性基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。また、上記親水性基に変化させることのできる基としては、例えば、酸無水物基、グリシジル基、クロル基等が挙げられる。水性分散体として用いる場合は、酸価を変化させて水分散性をコントロールしやすいことから、カルボキシル基が好ましく、カルボキシル基を有するかカルボキシル基を発生する基を有するラジカル重合性単量体が好ましい。
上記共重合ポリエステル樹脂にグラフト重合することができるカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられ、更に水性アルカリ媒体に接して容易にカルボン酸を発生するマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、メタクリル酸無水物等も挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸無水物が好適に用いられる。
上記ラジカル重合性単量体成分において、上記Q−e値におけるe値が−0.4以下である単量体としては、例えば、イソブチルビニルエーテル(−1.27)、α−メチルスチレン(−0.81)、p−メチルスチレン(−0.63)、スチレン(−0.80)、p−クロロスチレン(−0.64)、酢酸ビニル(−0.88)、アリルアセタート(−1.07)等のビニル化合物等が挙げられる。なお、上記例示中、括弧内は、Q−e値におけるe値を示す。
なお、上記「Q−e値におけるe値」とは、例えば、「Polymer Handbook, 4th. ed. John Wiley and Sons」に記載されている値である。
また、上記ラジカル重合性単量体成分として、上記親水性基含有ラジカル重合性単量体と、Q−e値におけるe値が−0.4以下である単量体の他に、広範囲なラジカル重合性単量体を併せて使用することができる。即ち、アクリル酸、メタクリル酸のエステル類としてアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシルプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシルプロピルなど、更には良く知られた単量体としてはアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N−メチロールアクリルアミドなどを例示することができ、これらの中から一種類又は複数種を選んで用いることができる。
本発明の目的に適合する望ましい共重合ポリエステル樹脂とラジカル重合性単量体の重量比率は、共重合ポリエステル/ラジカル重合性単量体=40/60〜95/5の範囲が望ましく、更に望ましくは55/45〜93/7、最も望ましくは60/40〜90/10の範囲である。共重合ポリエステル樹脂の重量比率が40%未満であるとき、共重合ポリエステル樹脂の優れた接着性を発揮することができない。一方、共重合ポリエステルの重量比率が95%より大きいときは、充分な架橋構造を得ることができないためにプライマー層は耐熱性に劣ったものとなる。
上記ラジカル重合性単量体成分において、親水性基含有ラジカル重合性単量体の割合としては、例えば、上記ラジカル重合性単量体100質量部に対して、親水性基含有ラジカル重合性単量体が30〜65質量部であることが好ましい。また、Q−e値におけるe値が−0.4以下である単量体との割合としては、例えば、上記ラジカル重合性単量体100質量部に対して、上記Q−e値におけるe値が−0.4以下である単量体が25〜45質量部であることが好ましい。このような範囲で上記単量体を含有するラジカル重合性単量体成分は、上記グラフト重合体の水系媒体に対する分散性と、共重合ポリエステル樹脂に対するグラフト化性能とのバランスが極めて良好なものとなる。
また、上記グラフト重合体における上記ラジカル重合性単量体成分の重合体の重量平均分子量としては、500〜5万であることが好ましい。ラジカル重合性単量体成分の重量平均分子量を500以下にコントロールすることは一般に困難であり、グラフト重合効率が低下し、共重合ポリエステル樹脂への親水性基の付与が充分に行なわれない傾向がある。また、ラジカル重合性単量体成分のグラフト重合物は、分散粒子の水和層を形成するが、充分な厚みの水和層をもたせ、安定な分散体を得るためにはラジカル重合性単量体成分のグラフト重合物の重量平均分子量は500以上であることが好ましい。また、上記ラジカル重合性単量体成分のグラフト重合体の重量平均分子量の上限は、溶液重合における重合性の点で5万が好ましい。この範囲内での分子量のコントロールは開始剤量、モノマー滴下時間、重合時間、反応溶媒、モノマー組成或いは必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行なうことができる。
上記グラフト重合体は、上述した共重合ポリエステル樹脂中の重合性不飽和結合に、上記ラジカル重合性単量体成分をグラフト重合させることで効率的に得られる。
本発明では、一般には共重合ポリエステル樹脂を、有機溶剤中に溶解させた状態において、ラジカル開始剤及び上記ラジカル重合性単量体成分の混合物を反応せしめることにより実施される。ここで、グラフト重合終了後の反応生成物は、所望のグラフト重合体の他に、グラフトを受けなかった共重合ポリエステル樹脂、及び、共重合ポリエステル樹脂にグラフト重合しなかったラジカル重合性単量体成分(以下、これらをまとめて非グラフト化物ともいう)をも含有している場合がある。上記グラフト重合体とは、本発明の効果を低下させない程度にこれらの非グラフト化物を含むものをも意味する。ただし、上記グラフト重合により生成された生成物中のグラフト重合体比率が低く、非グラフト化物の比率が高い場合は、本発明の効果を充分に享有することができないことがある。
上記共重合ポリエステル樹脂に対するラジカル重合性単量体成分のグラフト重合の実施に際しては、例えば、溶媒に加温下溶解されている共重合ポリエステル樹脂に対し、上記ラジカル重合性単量体成分とラジカル開始剤とを一時に添加して行ってもよいし、別々に一定時間を要して滴下した後、更に一定時間撹拌下に加温を継続して反応を進行せしめてもよい。
また、ある種のモノマーを先に一時に添加しておいてから別種のモノマー、開始剤とを別々に一定時間を要して滴下した後、更に一定時間撹拌下に加温を継続して反応を進行させることも必要に応じて行なわれる。
反応に先立って、共重合ポリエステル樹脂と溶剤を反応機に投入し、撹拌下に昇温して樹脂を溶解させることが好ましい。このとき、共重合ポリエステル樹脂と溶剤との質量比率は70/30〜30/70の範囲であることが好ましい。この場合、質量比率は、共重合ポリエステル樹脂とラジカル重合性単量体成分との反応性や、溶剤溶解性を考慮して、グラフト重合工程中均一に反応が行なえる質量比率に適宜調節される。
上記グラフト重合時の反応温度としては、例えば、50〜120℃の範囲で行なわれることが好ましい。
本発明の熱転写シートにおいて、上記グラフト重合体は、共重合ポリエステル樹脂に対するラジカル重合性単量体成分のグラフト効率が60〜100%である。60%未満であると、本発明の熱転写シートの耐熱性が不充分となる。好ましい下限は80%である。
また、上記グラフト重合体を得る際には、ラジカル重合開始剤が使用される。上記ラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、有機過酸化物類や有機アゾ化合物類等が挙げられる。具体的には、上記有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパ−オキサイド、t−ブチルパ−オキシピバレ−ト等が挙げられる。また、上記有機アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
上記ラジカル重合開始剤の選定については、その化合物の反応実施温度におけるラジカル生成速度、すなわち、半減期(Half−life)を考慮して行なわれることが好ましい。一般に、その温度における半減期の値が1分ないし2時間の範囲にあるようなラジカル重合開始剤を選定することが好ましい。
上記グラフト重合を行なうためのラジカル重合開始剤の使用量としては、ラジカル重合性単量体成分に対して少なくとも0.2重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上である。
また、連鎖移動剤、例えば、オクチルメルカプタン、メルカプトエタノールの添加もグラフト鎖長調節のため必要に応じて使用される。この場合、ラジカル重合性単量体成分に対して0〜12重量%の範囲で添加されることが好ましい。
上記グラフト重合時に用いられる溶媒としては、例えば、沸点が50〜250℃の水溶性有機溶媒から構成されることが好ましい。ここで、水溶性有機溶媒とは、20℃における水に対する溶解性が少なくとも10g/L以上、好ましくは20g/L以上であるものをいう。沸点が250℃を超えるものは、余りに蒸発速度が遅く、塗膜の高温焼付によっても充分に取り除くことができないので不適当である。また、沸点が50℃未満であると、それを溶媒としてグラフト化反応を実施する場合、50℃以下の温度でラジカルに解裂する開始剤を用いねばならないので取扱上の危険が増大し、好ましくない。
上記共重合ポリエステル樹脂をよく溶解し、かつ、ラジカル重合性単量体成分を含む重合性単量体の重合体を比較的良く溶解する第一群の水溶性有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエ−テル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール類若しくはグリコールエーテルの低級エステル類、ダイアセトンアルコール等のケトンアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のN−置換アミド類等が挙げられる。
また、上記ラジカル重合性単量体成分は、上記親水性基含有ラジカル重合性単量体を含有するため、上記共重合ポリエステル樹脂をほとんど溶解しないがラジカル重合性単量体成分を含む重合性単量体を比較的よく溶解する第二群の水溶性有機溶媒であってもよい。上記第二群の水溶性溶媒としては、例えば、水、アルコール類、カルボン酸類、アミン類等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜8のアルコール類及び多価アルコール類が好適である。
グラフト重合を単一溶媒で行なう場合は、第一群の水溶性有機溶媒からただ一種を選んで行なうことができる。一方、混合溶媒で行なう場合は、第一群の水溶性有機溶媒からのみ複数種選ぶ場合と、第一群の水溶性有機溶媒から少なくとも一種を選びそれに第二群の水溶性有機溶媒から少なくとも一種を加える場合がある。
上記溶媒を第一群の水溶性有機溶媒からの単一溶媒とした場合と、第一群及び第二群の水溶性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒とした場合のいずれにおいてもグラフト重合反応を行なうことができる。しかし、グラフト重合の進行挙動、グラフト化反応生成物及びそれから導かれる分散体の外観、性状等に差異がみられ、第一群及び第二群の水溶性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒を使用する方が好ましい。
すなわち、第一群の水溶性有機溶媒に属し、共重合ポリエステル樹脂、ラジカル重合性単量体成分を含む単量体混合物及びそれから導かれる重合体に対して最も強力な溶解力を示すテトラヒドロフランを単一溶媒とする場合には、グラフト重合は、終始透明な外観をもって進行する。系の粘度は次第に上昇し、グラフト重合の後期には著しく増粘し、反応を継続しえない場合もある。そのような場合反応生成物は溶媒を取り込んだまま透明なゴム状であり、強力な溶剤に対しても溶解しないゲルの生成を示す。それを回避するには大幅な樹脂濃度の低下等が必要となり、製造上合理的な方法とはいえない。
これに対して、第一群の水溶性有機溶媒からメチルエチルケトンを選定し、第二群の水溶性有機溶媒からイソプロピルアルコールを選定して両者を75/25の重量比で混合して得た混合溶媒系を使用し共重合ポリエステルの溶解性を調節した場合には、テトラヒドロフランの場合と全く同一の共重合ポリエステル樹脂、同一のラジカル重合性単量体組成比、同一の共重合ポリエステル/ラジカル重合性単量体比、同一の樹脂固形分で反応を行なってもグラフト重合の進行にともなう系の増粘もゲル化も観察されない。このことから混合溶媒系の使用は、製造時の樹脂固形分濃度を高めることができ、製造時に使用する有機溶媒量を低減できる合理的なプロセスであることがわかる。
第一群の溶媒中では共重合ポリエステル樹脂分子鎖は広がりの大きい鎖ののびた状態にあり、一方第一群/第二群の混合溶媒中では広がりの小さい糸まり状に絡まった状態にあることがこれら溶液中の共重合ポリエステル樹脂の粘度測定により確認された。共重合ポリエステル樹脂の溶解状態を調節し分子間架橋を起こりにくくすることがゲル化防止に有効である。効率の高いグラフト化とゲル化抑制の両立は後者の混合溶媒系において達成される。
第一群/第二群の混合溶媒の重量比率は、より好ましくは95/5〜10/90、更に好ましくは90/10〜20/80、最も好ましくは85/15〜30/70の範囲である。最適の混合比率は使用する共重合ポリエステル樹脂の溶解性等に応じて決定される。
上記グラフト重合により得られる処理液は、溶剤系の処理液であっても、水性化した処理液であってもよい。この場合、通常の方法で上記処理液を水性化できる。上記処理液を水性化した場合は、処理液使用時における有機溶剤の揮散量を低減することができる。
上記プライマー層4は、更に帯電防止剤を含有することが好ましい。上記帯電防止剤を含有することで、本発明の熱転写シート1に帯電防止性能を付与できる。上記帯電防止剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキサイド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビットおよびソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン界面活性剤等の非イオン界面活性剤;高級脂肪酸のアルカリ金属塩等のカルボン酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩類、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩類等のカチオン界面活性剤;高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等の両性界面活性剤等が挙げられる。これらの帯電防止剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、π電子共役系構造を有する導電性材料を用いることもでき、中でもスルホン化ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールが好ましい。
更に、金属の酸化物微粉末を使用することもでき、例えば、酸化スズ等を用いることができる。
上記グラフト重合体を含有するプライマー層4は、例えば、上記グラフト重合体、溶剤、及び、その他必要に応じて添加される帯電防止剤や添加剤を含有するプライマー層形成用塗工液を、上述した基材シート2の一方の面に塗工し、乾燥させることで形成することができる。
上記溶剤としては、水性化したものであってもよく、例えば、水や、水を含む溶媒、例えば、水と、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル等の水溶性有機溶剤との混合物等が挙げられる。
上記溶剤として水性化した溶媒を用いる場合、公知の乳化剤を用いて上記グラフト重合体を分散させてもよいが、塩基性化合物を添加し、上記グラフト重合体を分散させることが好ましい。上記塩基性化合物としては、プライマー層形成時に揮散する化合物が好ましく、例えば、アンモニア、有機アミン類等が好適である。具体的な化合物の例としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。上記塩基性化合物は、グラフト重合生成物中に含まれるカルボキシル基含有量に応じて、少なくとも部分中和、若しくは、完全中和によって水分散体のpH値が5.0〜9.0の範囲であるように使用することが好ましい。
上記溶剤として水性化した溶媒を用いる場合、上述したグラフト重合生成物中に含有される溶媒を予め減圧下のエクストルダー等により除去してメルト状、若しくは固体状(ペレット、粉末等)のグラフト重合生成物を、上記塩基性化合物を含有する水中へ投じて加熱下撹拌して水分散体を作製することができる。より好ましくは、グラフト重合を終了した時点で直ちに塩基性化合物を含有する水を投入し、更に加熱撹拌を継続して水分散体を得る方法(ワン・ポット法)が好ましい。更に溶媒の沸点が100℃以下の場合、グラフト重合に用いた溶媒を蒸留によって一部又は全部を容易に取り除くことができる。
上記添加剤としては特に限定されず、例えば、消泡剤、レベリング(濡れ)剤、増粘剤、分散剤、耐水化剤、ブロッキング防止剤、蛍光増白剤等熱転写シートのプライマー層に用いられる従来公知の物質が挙げられる。
上記プライマー層用塗工液を塗工する方法としては、例えば、上記基材シートの一方の面に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ロールコーター、ワイヤーバー等の従来公知の塗工方法か挙げられる。
上記プライマー層用塗工液の塗工量としては、固形分で、0.01〜5.0g/mであることが好ましい。0.01g/m未満であると、形成するプライマー層が、基材シートと耐熱滑性層との接着機能発現が不充分となり、5.0g/mを超えると、形成するプライマー層の厚みに比例してプライマー層の耐熱性が向上する訳ではないため、経済的に不利であるばかりでなく、サーマルヘッドから熱転写色材層への熱伝導性が低下し、印画濃度が低下するため好ましくない。より好ましい上限は1.0g/mである。
本発明の熱転写シート1において、耐熱滑性層5は、上述したプライマー層4上に形成されている。耐熱滑性層5としては、耐熱性のある熱可塑性樹脂バインダーと、熱離型剤又は滑剤の働きをする物質とを、基本的な構成成分とするものが挙げられる。
上記耐熱性のある熱可塑性樹脂バインダーとしては特に限定されず、広い範囲から選ぶことができるが、好適な例を挙げれば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、フッ化ビニリデン樹脂、ナイロン、ポリビニルカルバゾール、塩化ゴム、環化ゴム及びポリビニルアルコール等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂バインダーに配合する、熱離型剤又は滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、金属石鹸、高級脂肪酸のアミド、高級脂肪酸エステル又は塩類などや、リン酸エステル、シリコーンオイル、シリコーン変性ポリマー、フッ素含有樹脂、二硫化モリブデンなど従来公知のものを一種類又は併用して使用することができる。なかでも、ポリエチレンワックス、金属石鹸、リン酸エステル、シリコーン変性ポリマーが、その滑性の点から好ましい。
耐熱滑性層4を形成する組成物は、上記熱可塑性樹脂バインダー100質量部に対し、上記滑剤又は熱離型剤の作用をする物質を5〜100質量部の割合で配合して形成することが好ましい。
耐熱滑性層4を形成する方法としては、適宜の溶剤で練ってインキとし、一般のコーティング剤の塗布方法と同様に、例えば、ロールコーティング法、グラビアコーティング法,スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法等のコーティング法により、固形分0.1〜4g/m程度により上述したプライマー層4に塗布し、乾燥する方法が挙げられる。
本発明の熱転写シート1において、基材シート2の上述したプライマー層4を介して耐熱滑性層5が形成された面の反対側の面に熱転写性色材層3が形成されている。
熱転写性色材層3は、昇華型熱転写シートの場合には、昇華性の染料を含む層を形成し、一方、熱溶融型の熱転写シートの場合には顔料で着色したワックスインキ層を形成する。以下、昇華型熱転写シートの場合を例として説明するが、本発明の熱転写シートは、昇華型のみに限定されるものではない。
熱転写性色材層3に使用する染料としては、従来公知の熱転写シートに使用されている染料が使用できる。例えば、好ましく使用される染料としては、赤色染料としては、例えば、MS Red G、Macrolex Red、Violet R、CeresRed7B、Samaron Red F3BS等が挙げられる。
また、黄色の染料としては、例えば、ホロンブリリアントイエロー6GL 、PTY−52、マクロレックスイエロー6G等が挙げられる。
また、青色染料としては、例えば、カヤセットブルー714 、ワクソリンブルーAP−FW 、ホロンブリリアントブルーS−R 、MSブルー100等が挙げられる。
上記染料を担持するためのバインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、シドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。なかでも、セルロース系、ビニル系、アクリル系、ポリウレタン系及びポリエステル系等の樹脂が耐熱性、染料の移行性等の点から好ましい。
熱転写性色材層3は、基材シート2の一方の面に、以上の如き染料及びバインダーに必要に応じて添加剤、例えば、離型剤等を加えたものを、適当な有機溶媒に溶解したり、或いは、有機溶媒や水に分散した分散体を、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗布及び乾燥して形成することができる。
熱転写性色材層3は、厚みが0.2〜5.0μm、好ましくは0.3〜2.0μm程度の厚さであり、また、染料層中の昇華性染料は、染料層の重量の5〜90重量%、好ましくは5〜70重量%の量で存在するのが好適である。
熱転写性色材層3は、所望の画像がモノカラーである場合は、上記染料のうちから1色を選んで形成し、また、所望の画像がフルカラーである場合は、例えば、適当なシアン、マゼンタ及びイエロー(更に必要に応じてブラック)を選択して、イエロー、マゼンタ及びシアン(更に必要に応じてブラック)の染料層を形成する。
熱転写性色材層3の表面に、受像シートとの粘着防止を目的として、離型層を設けてもよい(特に図示しない)。
上記離型層としては、粘着防止性の無機粉末を付着させたもの、或いは、シリコーンポリマー、アクリルポリマー、フッ素化ポリマーのような離型性に優れた樹脂層等が挙げられる。その厚みとしては、乾燥状態で0.01〜5μm、好ましくは0.05〜2μm程度である。なお、このような離型性に優れた効果を有する材料は、熱転写性色材層中に含有させても良好な効果が得られる。
また、熱転写製色材層3と同一面側に面順次で保護層を設けることもできる。熱転写受像シートに色材を転写した後、この保護層を転写することによって画像を被覆し、画像を光・ガス・液体・擦過などから保護することが可能となる。
本発明の熱転写シートは、基材シートと耐熱滑性層との間に上述した組成のプライマー層が形成されているため、耐熱性に優れたものとなる。また、上記プライマー層を形成するためのプライマー層形成用塗工液は、含有する硬化性樹脂が反応等し難くポットライフが長いため、本発明の熱転写シートを安定的に製造することが可能となる。
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳述する。なお、文中、部又は%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。また単に部とあるのは重量部を示す。また、各測定項目は以下の方法に従った。
1.数平均分子量
共重合ポリエステル樹脂0.03gをテトラヒドロフラン10mLに溶かし、(株)島津製作所製ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、カラム温度30℃、流量1mL/分にてGPC測定を行なった。この結果から計算して、ポリスチレン換算の測定値を得た。ただし、カラムは昭和電工(株)shodex KF−802、804L、806Lを用いた。
2.ガラス転移温度(℃)
共重合体ポリエステル5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量分析計(DSC)DSC−220を用いて、200℃まで、昇温速度20℃/分にて測定した。ガラス転移温度は、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
3.比重
1000mLメスシリンダーに水を1000mL加え、温度を30℃に調節し、共重合ポリエステル樹脂2gを中に沈めた。この溶液をかき混ぜながら塩化カルシウムを加え、溶液中に共重合ポリエステル樹脂が留まる濃度に調整した。比重計を用いてこの溶液の比重を測定し、得られた値を共重合ポリエステル樹脂の比重とした。
グラフト重合体、ポリエステル分散体の場合は、ポリプロピレンフィルム上にアプリケーターを用いて塗布を行い、120℃30分乾燥させて得られた樹脂乾燥フィルム2gを使用し、同様の測定を行った。なお、測定に際しては予め熱風乾燥機を用いて200℃にて10分予備乾燥させた共重合ポリエステル樹脂、あるいは樹脂乾燥フィルムを測定に用いた。
4.体積平均粒径
コールターカウンターLS13 320(ベックマン社製)を用いて測定した。
5.グラフト効率
グラフト重合により得られた生成物を、220MHz H NMR(バリアン社製、測定溶媒CDCl/DMSO−d6)により測定を行い、ポリエステルに共重合した二重結合含有成分の二重結合由来のシグナルの強度変化調べ、下記の式により算出した。
ポリエステルグラフト効率={1−(グラフト重合生成物における、反応前に確認できた共重合ポリエステル樹脂の二重結合含有成分由来のシグナルの相対強度/グラフト重合前の原料共重合ポリエステル樹脂の二重結合含有成分の二重結合由来のシグナルの相対強度)}×100(%)
6.酸価
共重合ポリエステル樹脂の酸価測定法
試料0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解した。ついで、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬には、フェノールフタレインを用いた。
なお、酸価に関してはポリエステル分散体の作製に使用した共重合ポリエステル樹脂(a−12、a−13)のみ値を本文中に記載した。
共重合ポリエステル樹脂(a−1〜a−4、a−6、a−7、a−9〜a−11、a−14、a−15)の合成
撹拌機、温度計、加熱ヒーター、冷却装置、溜出用冷却器を装備した反応容器内に、ジメチルテレフタレート37部、ジメチルイソフタレート37部、フマール酸2部、エチレングリコール25部、ジエチレングリコール42部及びテトラ−n−ブチルチタネート0.04部を仕込み、230℃まで昇温しつつ4時間かけてエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、系内を1torr以下の真空下まで減圧して245℃で40分間重縮合反応を行った。反応終了後、ポリエステル樹脂を取り出し、冷却することにより共重合ポリエステル樹脂(a−1)を得た。
得られた共重合ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が30℃、比重が1.32であった。また、NMR分析の結果、カルボン酸成分がモル比でテレフタル酸/イソフタル酸/フマール酸=48/47/5であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/ジエチレングリコール=34/66であった。同様の方法により表1に示した組成で種々の共重合ポリエステル樹脂(a−2〜a−4、a−6、a−7、a−9〜a−11、a−14、a−15)を製造した。各共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量、ガラス転移温度及び比重の測定を行った。結果を表1に示す。なお、表1中各成分はモル%を示す。
共重合ポリエステル樹脂(a−5、a−8)の合成
撹拌機、温度計、加熱ヒーター、冷却装置、溜出用冷却器を装備した反応容器内に、ジメチルテレフタレート116部、ジメチルイソフタレート105部、エチレングリコール199部、2,2−ジメチルー1,3−プロパンジオール83部及びテトラ−n−ブチルチタネート0.2部を仕込み、230℃まで昇温しつつ4時間かけてエステル交換反応を行った。
エステル交換反応終了後、系内を190℃まで冷却し、アジピン酸111部、フマール酸12部を加え、更に230℃まで昇温しつつ2時間かけてエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、系内を1torr以下の真空下まで減圧して245℃で40分間重縮合反応を行った。反応終了後、ポリエステル樹脂を取り出し、冷却することにより共重合ポリエステル樹脂(a−5)を得た。
得られた共重合ポリエステル樹脂(a−5)のガラス転移温度は3℃、比重は1.24であった。NMR分析の結果、カルボン酸成分がモル比でテレフタル酸/イソフタル酸/フマール酸/アジピン酸=30/27/5/38であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/2,2−ジメチルー1,3−プロパンジオール=61/39であった。
同様の方法により表1に示した組成で共重合ポリエステル樹脂(a−8)を製造した。なお、共重合ポリエステル樹脂(a−8)は、アジピン酸の代わりにセバシン酸を用いた。各共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量、ガラス転移温度及び比重の測定を行った。結果を表1に示す。なお、表1中各成分はモル%を示す。
共重合ポリエステル樹脂(a−12)の合成
撹拌機、温度計、加熱ヒーター、冷却装置、溜出用冷却器を装備した反応缶内に、テレフタル酸980部、アジピン酸590部、エチレングリコール770部、1,4−ブタンジオール680部、イルガノックス1330(Ciba−Geigy社製)3部及びテトラブチルチタネート1部を仕込み、230℃まで昇温しつつ4時間かけてエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、反応缶内にポリテトラメチレングリコール(三菱化学社製、PTMG1000)100部を加え、その後、系内を240℃まで昇温しながら60分かけて10torrまで減圧し、更に1torr以下の真空下まで減圧して240℃で60分間重縮合反応を行った。その後、系内に窒素を流し、真空破壊することで重縮合反応を終了させた。その後、系内に窒素を充填したまま内温が220℃になるまで冷却した。冷却後、窒素を抜き、常圧に戻してから、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)90部を投入し、再度窒素を充填して220℃で30分間酸付加反応を行った。反応終了後、ポリエステル樹脂を取り出し、冷却することにより共重合ポリエステル樹脂(a−12)を得た。
得られた共重合ポリエステル樹脂(a−12)は、NMR分析の結果、カルボン酸成分がモル比でテレフタル酸/アジピン酸/エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)=58/42/2であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ポリテトラメチレングリコール=42/57/1であった。この共重合ポリエステル樹脂(a−12)の数平均分子量、ガラス転移温度及び比重の測定を行った。結果を表1に示す。なお、表1中各成分はモル%を示す。また、この共重合ポリエステル樹脂(a−12)の酸価を測定したところ、221(eq/ton)であった。
共重合ポリエステル樹脂(a−13)の合成
共重合ポリエステル樹脂(a−12)の合成例と同様にして組成が表1に示される共重合ポリエステル樹脂(a−13)を合成した。共重合ポリエステル樹脂(a−13)は、アジピン酸の代わりにイソフタル酸を使用し、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)の代わりに無水トリメリット酸を使用した。共重合ポリエステル樹脂(a−1)と同様に数平均分子量、ガラス転移温度及び比重の測定を行った。結果を表1に示す。なお、表1中各成分はモル%を示す。また、この共重合ポリエステル樹脂(a−13)の酸価を測定したところ、321(eq/ton)であった。
Figure 0004903125
グラフト重合体(b−1〜b−13)の合成
攪拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応容器に共重合ポリエステル樹脂(a−1)75部、メチルエチルケトン90部、イソプロピルアルコール23部を入れ、70℃で加熱、攪拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、無水マレイン酸8部、フマール酸ジブチル7部を加えた。その後、スチレン10部、メチルエチルケトン30部、イソプロピルアルコール7.5部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.5部、β−メルカプトプロピオン酸n−オクチルエステル2.5部の混合溶液を0.5部/minでポリエステル溶液中に滴下し、更に2時間攪拌を続けた。エタノールを25部加え、20分攪拌後、トリエチルアミン12.5部を反応溶液に加え、更に水200部を加えた。その後、反応溶液の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のエタノール及びトリエチルアミンを蒸留により溜去してグラフト重合体(b−1)を合成した。
同様の方法により表2に示した組成で種々のグラフト重合体(b−2〜b−13)を合成した。得られた各グラフト重合体の体積平均粒径、グラフト効率及び比重を表2に示す。なお、表2中各成分は質量%を示す。
グラフト重合体(b−14)の合成
攪拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応容器に共重合ポリエステル樹脂(a−1)75部、メチルエチルケトン90部、イソプロピルアルコール23部を入れ、70℃で加熱、攪拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、無水マレイン酸8部、フマール酸ジブチル7部を加えた。その後、スチレン10部、メチルエチルケトン30部、イソプロピルアルコール7.5部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.5部、β−メルカプトプロピオン酸n−オクチルエステル2.5部の混合溶液を0.5部/minでポリエステル溶液中に滴下し、更に20分攪拌を続けた。エタノールを25部加え、20分攪拌後、トリエチルアミン12.5部を反応溶液に加え、更に水200部を加えた。その後、反応溶液の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のエタノール及びトリエチルアミンを蒸留により溜去してグラフト重合体(b−1)を合成した。得られたグラフト重合体(b−14)の体積平均粒径、グラフト効率及び比重を表2に示す。なお、表2中各成分は質量%を示す。
グラフト重合体(c−1、c―2)の合成
ラジカル重合性モノマーとして、(c−1)ではアクリル酸とアクリル酸エチル、(c−2)ではメタクリル酸とメタクリル酸エチルを使用した以外は、グラフト重合体(b−1)と同様の方法により(c−1)及び(c−2)を合成した。得られたグラフト重合体の体積平均粒径、グラフト効率及び比重を表2に示す。なお、表2中各成分は質量%を示す。
ポリエステル分散体(c−3)の合成
温度計、コンデンサー、攪拌羽根を備えた三つ口のセパラブルフラスコに共重合ポリエステル樹脂(a−12)270部、メチルエチルケトン180部、イソプロピルアルコール60部を仕込み70℃にて溶解した。次いで塩基としてアンモニアを5部加えた後、70℃のイオン交換水630部を加え、水分散化した。その後、蒸留用フラスコにて留分温度が100℃に達するまで蒸留し、冷却後に水を加えて固形分濃度を30%のポリエステル分散体(c−3)とした。得られたポリエステル分散体(c−3)の体積平均粒径、比重を表2に示す。なお、表2中各成分は質量%を示す。
ポリエステル分散体(c−4)の合成
共重合ポリエステル樹脂(a−12)に代えて、共重合ポリエステル樹脂(a−13)を用いた以外は、ポリエステル分散体(c−3)と同様にして、ポリエステル分散体(c−4)を合成した。得られたポリエステル分散体(c−4)の体積平均粒径、比重を表2に示す。なお、表2中各成分は質量%を示す。
グラフト重合体(c−5)の合成
攪拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応容器に共重合ポリエステル樹脂(a−14)75部、メチルエチ6ルケトン90部、イソプロピルアルコール23部を入れ、70℃で加熱、攪拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、無水マレイン酸8部、フマール酸ジブチル7部を加えた。その後、スチレン10部、メチルエチルケトン30部、イソプロピルアルコール7.5部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.5部、β−メルカプトプロピオン酸n−オクチルエステル2.5部の混合溶液を0.5部/minでポリエステル溶液中に滴下し、更に2時間攪拌を続けた。エタノールを25部加え、20分攪拌後、トリエチルアミン12.5部を反応溶液に加えた後、水200部を加えた。その後、反応溶液の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のエタノール及びトリエチルアミンを蒸留により溜去してグラフト重合体(c−5)を合成した。なお、樹脂が溶液から分離して沈殿物が析出し、水分散化したグラフト重合体を得ることはできなかった。
グラフト重合体(c−6)の合成
攪拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応容器に共重合ポリエステル樹脂(a−15)75部、メチルエチルケトン90部、イソプロピルアルコール23部を入れ、70℃で加熱、攪拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、無水マレイン酸8部、フマール酸ジブチル7部を加えた。その後、スチレン10部、メチルエチルケトン30部、イソプロピルアルコール7.5部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.5部、β−メルカプトプロピオン酸n−オクチルエステル2.5部の混合溶液を0.5部/minでポリエステル溶液中に滴下した。更に2時間攪拌を続けたところ、溶液がゲル状物質に変化し、反応を続けることができなくなった。
グラフト重合体(c−7)の合成
攪拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応容器に共重合ポリエステル樹脂(a−1)75部、メチルエチルケトン90部、イソプロピルアルコール23部を入れ、70℃で加熱、攪拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、無水マレイン酸8部、フマール酸ジブチル7部を加えた。その後、スチレン10部、メチルエチルケトン30部、イソプロピルアルコール7.5部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.5部、β−メルカプトプロピオン酸n−オクチルエステル2.5部の混合溶液を0.5部/minでポリエステル溶液中に滴下した。滴下終了後、すぐにエタノールを25部加え、20分攪拌後、トリエチルアミン12.5部を反応溶液に加え、更に水200部を加えた。その後、反応溶液の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のエタノール及びトリエチルアミンを蒸留により溜去してグラフト重合体(c−7)を合成した。
得られたグラフト重合体(c−7)の体積平均粒径、グラフト効率及び比重を表2に示す。なお、表2中各成分は質量%を示す。
グラフト重合体(c−8)の合成
攪拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応容器に共重合ポリエステル樹脂(a−1)85部、メチルエチルケトン90部、イソプロピルアルコール23部を入れ、70℃で加熱、攪拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、フマール酸ジブチル5部を加えた。その後、スチレン10部、メチルエチルケトン30部、イソプロピルアルコール7.5部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.5部、β−メルカプトプロピオン酸n−オクチルエステル2.5部の混合溶液を0.5部/minでポリエステル溶液中に滴下し、更に2時間攪拌を続けた。その後エタノールを25部加え、20分攪拌後、トリエチルアミン12.5部を反応溶液に加え、更に水200部を加えた。その後、反応溶液の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のエタノール及びトリエチルアミンを蒸留により溜去してグラフト重合体(c−8)を合成した。なお、樹脂が溶液から分離して沈殿物が析出し、水分散化したグラフト重合体を得ることはできなかった。
Figure 0004903125
プライマー層塗工液A
グラフト重合体(b−1)(固形分30%) 100部
帯電防止剤A(aquaPASS、固形分5wt%、三菱レイヨン社製) 50部
水 250部
イソプロピルアルコール 250部
プライマー層塗工液B
グラフト重合体(b−1)(固形分30%) 100部
帯電防止剤B(ケミスタット6120、固形分30.4wt%、三洋化成工業社製) 20部
水 300部
イソプロピルアルコール 300部
耐熱滑性層用塗工液A
ポリアミドイミド樹脂(HR−15ET、東洋紡績社製、固形分25%) 13部
ポリアミドイミドシリコーン樹脂(HR−14ET、東洋紡績社製、固形分25%) 13部
シリコーンオイル(KF965−100、信越化学工業社製、固形分100%)0.7部
ステアリル燐酸亜鉛(LBT−1830精製、堺化学工業社製、固形分100%)
2.6部
ステアリン酸亜鉛(GF−200、日本油脂社製、固形分100%) 2.6部
タルク(ミクロエースP−3、日本タルク社製、固形分100%) 2.6部
エタノール 32.8部
トルエン 32.7部
耐熱滑性層用塗工液B
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBX−1、積水化学工業社製、固形分100%) 4部
ポリイソシアネート(バーノックD750、大日本インキ化学工業社製、固形分45%) 9部
リン酸エステル(プライサーフA−208S、第一工業製薬社製、固形分100%)
1.1部
水酸化マグネシウム(キスマ5A、協和化学工業社製、固形分100%) 0.4部
タルク(ミクロエースP−3、日本タルク社製、固形分100%) 0.5部
トルエン 42.5部
メチルエチルケトン 42.5部
色材層用塗工液
C.I.ソルベントブルー63 3部
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBX−1、積水化学工業社製、固形分100%)
3部
メチルエチルケトン 47部
トルエン 47部
(実施例1)
基材シートとして、厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)上に、上記組成のプライマー層塗工液Aをグラビアコーティングにより塗布し、100℃で2分間乾燥処理して、乾燥塗布量が0.2g/mのプライマー層を形成した。
そのプライマー層の上に、上記組成の耐熱滑性層用塗工液Aをグラビアコーティングにより塗布し、100℃で2分間乾燥処理して、乾燥塗布量が0.5g/mの耐熱滑性層Aを形成した。
更に、基材シートの耐熱滑性層と反対の面に、上記組成の色材層用塗工液をグラビアコーティングにより塗布し、80℃で2分間乾燥処理して、乾燥塗布量が1.0g/mの熱転写性色材層を形成し、実施例1の熱転写シートを作製した。
(実施例2)
プライマー層塗工液Aの乾燥塗布量を0.05g/mとした以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例3)
プライマー層塗工液Aの乾燥塗布量を0.8g/mとした以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例4)
耐熱滑性層用塗工液Aに代えて、耐熱滑性層用塗工液Bを用いて耐熱滑性層Bを形成し、乾燥塗布量を1.0g/m、乾燥処理を60℃48時間にした以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例5)
プライマー層用塗工液Aに代えて、プライマー層用塗工液Bを用いてプライマー層を形成した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例6)
プライマー層用塗工液Aに帯電防止剤Aを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例7)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(b−2)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例8)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(b−3)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例9)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(b−4)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例10)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(b−5)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例11)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(b−6)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例12)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(b−7)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例13)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(b−8)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例14)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(b−9)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例15)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(b−10)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例16)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(b−11)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例17)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(b−12)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例18)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(b−13)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(実施例19)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(b−14)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(比較例1)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(c−1)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(比較例2)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(c−2)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(比較例3)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、ポリエステル分散体(c−3)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(比較例4)
プライマー層用塗工液Bにグラフト重合体(b−1)に代えて、ポリエステル分散体(c−3)を添加した以外は、実施例5と同様にして熱転写シートを作製した。
(比較例5)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、ポリエステル分散体(c−4)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(比較例6)
プライマー層用塗工液Bにグラフト重合体(b−1)に代えて、ポリエステル分散体(c−4)を添加した以外は、実施例5と同様にして熱転写シートを作製した。
(比較例7)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(c−5)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(比較例8)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(c−6)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(比較例9)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(c−7)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
(比較例10)
プライマー層用塗工液Aにグラフト重合体(b−1)に代えて、グラフト重合体(c−8)を添加した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
<評価>
下記手順にて、各実施例及び比較例に使用した各プライマー層用塗工液、及び、熱転写シートについて以下の評価を行った。結果を表3に示した。なお、評価できなかった項目については「−」と記載した。
<インキ化適性>
グラフト重合体の合成、水分散体の作製、プライマー層用塗工液の調製における状態を観察し、以下の基準にて評価した。
(評価基準)
○:グラフト重合体の合成、水分散体の作製、プライマー層用塗工液の調製に問題がみられない。
×1:グラフト重合体が合成できない
×2:プライマー層用塗工液調製後24時間以内に沈降・凝集・増粘などの状態変化がみられる
<テープ接着性>
実施例及び比較例で作製した熱転写シートを25℃・50%、40℃・20%、40℃・90%の環境下に100時間保存した後すぐに、25℃・50%環境下にて耐熱滑性層上にニチバン株式会社製メンディングテープ、エルパック(登録商標)MDLP−12を貼り、塗工面に対して45°の角度で剥離試験を行い、以下の基準にて評価した。
(評価基準)
○:塗膜のハガレが認められない。
×:耐熱滑性層のハガレ若しくは耐熱滑性層とプライマー層とのハガレが認められる。
<熱時接着性>
アルテック社製デジタルフォトプリンターメガピクセルIIを用い、実施例及び比較例で作製した熱転写シートを、メガピクセルII純正インクリボンのイエロー部、マゼンタ部及びシアン部に全て貼り込んだインクリボンと、メガピクセルII純正印画紙(ポストカードサイズ)とを組み合わせて、階調値0/255の画像(印加エネルギー0:白画像)、階調値128/255の画像、階調値192/255の画像、及び、階調値255/255(印加エネルギー最大)の画像を印画し、各印画後のサーマルヘッドの状態を観察し、以下の基準にて評価した。
(評価基準)
◎:全ての画像において、印画後のサーマルヘッドに樹脂付着がみられない。
○:印画後のサーマルヘッドへの樹脂付着が一部の画像でしかみられず、付着量はわずかである。
×:印画後のサーマルヘッドに樹脂付着がみられる。
<耐熱性>
アルテック社製デジタルフォトプリンターメガピクセルIIを用い、実施例及び比較例で作製した熱転写シートを、メガピクセルII純正インクリボンのイエロー部、マゼンタ部及びシアン部に全て貼り込み、メガピクセルII純正印画紙(ポストカードサイズ)と組み合わせてベタ画像(階調値255/255:濃度MAX)を印画し、各印画後のインクリボンと得られた印画物の状態を観察し、以下の基準にて評価した。
(評価基準)
◎:印画後のインクリボンに破断がみられず、印画物に印画シワやスティック痕もみられない。
○:印画物にごくわずかにスティック痕がみられるものの、印画後のインクリボンが破断せず、印画シワも見られない。
△:印画後のインクリボンに破断はみられないものの、印画物に印画シワもしくはスティック痕がみられる。
×:印画後のインクリボンに破断がみられる。
Figure 0004903125
各実施例の熱転写シートは、耐熱性、耐熱滑性層、プライマー層等の接着性及び高温時の接着性に優れたものであった。また、プライマー層塗工液のポットライフが長く、各実施例の熱転写シートは、安定的に製造することができた。
本発明の熱転写シートは、基材シートと耐熱滑性層との間に上述した組成のプライマー層が形成されているため、耐熱性に優れたものとなる。また、上記プライマー層を形成するためのプライマー層形成用塗工液は、含有する硬化性樹脂が反応等し難くポットライフが長いため、本発明の熱転写シートを安定的に製造することができる。
本発明の熱転写シートの一例を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1:本発明の熱転写シート
2:基材シート
3:熱転写性色材層
4:プライマー層
5:耐熱滑性層

Claims (4)

  1. 基材シートの一方の面に熱転写性色材層が形成され、他方の面にプライマー層を介して耐熱滑性層が形成された熱転写シートであって、
    前記プライマー層は、共重合ポリエステル樹脂にラジカル重合性単量体成分がグラフト重合されたグラフト重合体を含有するものであり、
    前記グラフト重合体は、前記共重合ポリエステル樹脂に対する前記ラジカル重合性単量体成分のグラフト効率が60〜100%であり、
    更に、前記共重合ポリエステル樹脂は、重合性不飽和基含有ジカルボン酸成分が全酸成分に対して0.5〜10モル%共重合されており、かつ、
    前記ラジカル重合性単量体成分は、親水性基含有ラジカル重合性単量体と、Q−e値におけるe値が−0.4以下である単量体とを含む
    ことを特徴とする熱転写シート。
  2. 共重合ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が0〜50℃、かつ、比重が1.25〜1.33であり、グラフト重合体は、比重が1.24〜1.29である請求項1記載の熱転写シート。
  3. 共重合ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸が全酸成分に対して60モル%以上共重合されており、かつ、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールからなる群より選択される1種以上のグリコール成分が全グリコール成分に対して60モル%以上共重合されている請求項1又は2記載の熱転写シート。
  4. プライマー層は、更に帯電防止剤を含有する請求項1、2又は3記載の熱転写シート。
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