図1は、本発明の実施例に係る可変動弁制御装置が適用されたエンジンを示す概略構成図、図2は、本発明の実施例に係る可変動弁制御装置の概略断面図、図3は、本発明の実施例に係る可変動弁制御装置における可変動弁機構を表す概略図、図4は、本発明の実施例に係る可変動弁制御装置における初期位相突き当てデューティを説明する線図、図5−1は、本発明の実施例に係る可変動弁制御装置における突き当てデューティ量と作動油油温との関係を表す線図、図5−2は、本発明の実施例に係る可変動弁制御装置における突き当てデューティ量と作動油油圧との関係を表す線図、図6は、本発明の実施例に係る可変動弁制御装置の初期位相突き当て制御を説明するフローチャートである。
本実施例に係る可変動弁制御装置100は、内燃機関において、クランクシャフト14に対するカムシャフトとしての吸気カムシャフト21又は排気カムシャフト22の回転位相を変更することで、吸気弁19又は排気弁20の開閉時期(バルブタイミング)を可変とするものであり、ここでは、図1に示すように、内燃機関としてのエンジン1に適用した場合で説明する。このエンジン1は、乗用車、トラックなどの車両に搭載されるエンジンであり、シリンダボア12内に往復運動可能に設けられるピストン13が2往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4サイクルエンジンであるが、可変動弁制御装置100は、この形式の内燃機関に限らず、種々の内燃機関に適用することができる。
本実施例に係る可変動弁制御装置100が適用される内燃機関としてのエンジン1は、図1に示すように、シリンダブロック10上にシリンダヘッド11が締結されており、このシリンダブロック10に形成された複数のシリンダボア12にピストン13がそれぞれ上下移動自在に嵌合している。そして、シリンダブロック10の下部にクランクシャフト14が回転自在に支持されており、各ピストン13はコネクティングロッド15を介してこのクランクシャフト14にそれぞれ連結されている。
燃焼室16は、シリンダブロック10におけるシリンダボア12の壁面とシリンダヘッド11の下面とピストン13の頂面により構成されており、この燃焼室16は、上部(シリンダヘッド11の下面)の中央部が高くなるように傾斜したペントルーフ形状をなしている。そして、この燃焼室16の上部、つまり、シリンダヘッド11の下面に吸気ポート17及び排気ポート18が対向して形成されており、この吸気ポート17及び排気ポート18に対して吸気弁19及び排気弁20の下端部がそれぞれ位置している。この吸気弁19及び排気弁20は、シリンダヘッド11に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、吸気ポート17及び排気ポート18を閉止する方向(図1にて上方)に付勢支持されている。また、シリンダヘッド11には、吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22が回転自在に支持されており、図示しない吸気カム及び排気カムが吸気弁19及び排気弁20の上端部に接触している。
また、クランクシャフト14に固結されたクランクシャフトスプロケット14aと、吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22にそれぞれ装着された各カムシャフトスプロケット23,24とに、無端のタイミングチェーン25が掛け回されており、クランクシャフト14と吸気カムシャフト21、排気カムシャフト22が連動可能となっている。
従って、クランクシャフト14の駆動力がタイミングチェーン25を介して吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22に伝達されると、この吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22が同期して回転し、吸気カム及び排気カムが吸気弁19及び排気弁20を所定のタイミングで上下移動することで、吸気ポート17及び排気ポート18を開閉し、吸気ポート17と燃焼室16、燃焼室16と排気ポート18とをそれぞれ連通することができる。この場合、この吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22は、クランクシャフト14が2回転(720度)する間に1回転(360度)するように設定されている。そのため、エンジン1は、クランクシャフト14が2回転する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の4行程を実行することとなり、このとき、吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22が1回転することとなる。
また、このエンジン1の動弁機構は、運転状態に応じて吸気弁19及び排気弁20を最適な開閉タイミング(開閉時期)に制御する吸気可変動弁機構(VVT:Variable Valve Timing-intelligent)26A及び排気可変動弁機構26Bとなっている。可変動弁手段としての吸気可変動弁機構26A、排気可変動弁機構26Bは、可変動弁制御装置100をなし、後述する進角室56(図3参照)及び遅角室57(図3参照)に導入される作動油の油圧に応じてクランクシャフト14と吸気カムシャフト21、排気カムシャフト22との回転位相をそれぞれ変更することで吸気弁19、排気弁20の開閉時期(バルブタイミング)を可変とするものである。
なお、以下の説明では、吸気可変動弁機構26Aと排気可変動弁機構26Bとはほぼ同様な構成であることから、主として吸気可変動弁機構26Aを説明し、排気可変動弁機構26Bの説明はできるだけ省略する。また、吸気可変動弁機構26Aと排気可変動弁機構26Bとを特に区別する必要がない場合、単に「可変動弁機構26」と略記する。さらに、以下の説明では特に断りのない限り、吸気カムシャフト21は、単に「カムシャフト21」と略記し、吸気カムシャフトスプロケット23は、単に「カムシャフトスプロケット23」と略記する。
この可変動弁機構26は、カムシャフト21の軸端部にVVTコントローラ27が設けられて構成され、作動油の油圧(作動流体)をこのVVTコントローラ27の後述する進角室56及び遅角室57に作用させることによりカムシャフトスプロケット23に対するカムシャフト21の位相を変更し、吸気弁19の開閉時期を進角または遅角することができるものである。この場合、可変動弁機構26は、吸気弁19の作用角(開放期間)を一定としてその開閉時期を進角または遅角する。また、カムシャフト21には、その回転位相を検出するカムポジションセンサ28が設けられている。
吸気ポート17には、吸気マニホールド29を介してサージタンク30が連結され、このサージタンク30に吸気管31が連結されており、この吸気管31の空気取入口にはエアクリーナ32が取付けられている。そして、このエアクリーナ32の下流側にスロットル弁33を有する電子スロットル装置34が設けられている。また、シリンダヘッド11には、吸気ポート17に燃料を噴射するインジェクタ35が装着されており、このインジェクタ35は、吸気ポート17側に位置して上下方向に所定角度傾斜して配置されている。各気筒に装着されるインジェクタ35は、図示しないが、燃料供給管を介して燃料ポンプ及び燃料タンクが連結されている。更に、シリンダヘッド11には、燃焼室16の上方に位置して混合気に着火する点火プラグ36が装着されている。
一方、排気ポート18には、排気マニホールド37を介して排気管38が連結されており、この排気管38には排気ガス中に含まれるHC、CO、NOxなどの有害物質を浄化処理する三元触媒39,40が装着されている。
ところで、車両にはマイクロコンピュータを中心として構成されエンジン1の各部を制御可能な電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit、以下、特に断りのない限り「ECU110」と略記する。)110が搭載されている。このECU110は、インジェクタ35の燃料噴射タイミングや点火プラグ36の点火時期などを制御可能となっており、吸入空気量、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量、噴射時期、点火時期などを決定している。
すなわち、吸気管31の上流側にはエアフローセンサ41が装着され、計測した吸入空気量をECU110に出力している。また、電子スロットル装置34にはスロットルポジションセンサ42が設けられ、現在のスロットル開度をECU110に出力している。また、シリンダブロック10には水温センサ43が設けられており、検出したエンジン冷却水温をECU110に出力している。また、アクセルペダルにはアクセルポジションセンサ44が設けられており、現在のアクセル開度をECU110に出力している。なお、水温センサ43に限らず、外気温センサなどを設けてもよい。
また、排気管38における三元触媒39,40よりも上流側には、O2(酸素)センサ45が設けられている。このO2センサ45は、排気空燃比に対して理論空燃比を基準にしてリッチ側とリーン側とで出力が急変する出力特性を有する酸素センサであって、燃焼室16から排気管38に排出された排気ガスのストイキ空燃比を検出し、ストイキ検出信号をECU110に出力している。ECU110は、このO2センサ45が検出したストイキ検出信号に基づいて空燃比フィードバック制御を実行している。
更に、クランクシャフト14にはクランク角センサ46が設けられ、検出した各気筒のクランク角度をECU110に出力し、ECU110はクランク角度に基づいてエンジン回転数を算出すると共に、各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別する。なおここで、エンジン回転数は、言い換えれば、クランクシャフト14の回転速度に対応し、このクランクシャフト14の回転速度が高くなれば、クランクシャフト14の回転数、すなわち、エンジン1のエンジン回転数も高くなる。
さらに、このエンジン1は、油温センサ47と、油圧センサ48とを備える。油温センサ47は、後述する可変動弁機構26の進角室56(図3参照)及び遅角室57(図3参照)などのエンジン1の各部に供給される作動油の温度を検出し、油圧センサ48は、当該作動油の油圧を検出する。油温センサ47と、油圧センサ48は、ECU110に電気的に接続されており、それぞれ、検出した作動油油温、作動油油圧をECU110に出力している。
従って、ECU110は、検出した吸入空気量、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、エンジン冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量(燃料噴射期間)、噴射時期、点火時期などを決定し、インジェクタ35及び点火プラグ36を駆動して燃料噴射及び点火を実行する。
また、ECU110は、エンジン運転状態に基づいて可変動弁機構26を制御可能となっている。即ち、低温時、エンジン始動時、アイドル運転時や軽負荷時には、排気弁20の開放時期と吸気弁19の開放時期のオーバーラップとをなくすことで、排気ガスが吸気ポート17または燃焼室16に吹き返す量を少なくし、燃焼安定及び燃費向上を可能とする。また、中負荷時には、このオーバーラップを大きくすることで、内部EGR率を高めて排ガス浄化効率を向上させると共に、ポンピングロスを低減して燃費向上を可能とする。更に、高負荷低中回転時には、吸気弁19の閉止時期を進角することで、吸気が吸気ポート17に吹き返す量を少なくして体積効率を向上させる。そして、高負荷高回転時には、吸気弁19の閉止時期を回転数にあわせて遅角することで、吸入空気の慣性力に合わせたタイミングとして体積効率を向上させる。
ここで、可変動弁機構26について詳細に説明する。この可変動弁機構26において、図2及び図3に示すように、カムシャフト21は、そのジャーナル部21aがシリンダヘッド11の軸受部11aにより回転可能に支持されている。そして、このカムシャフト21の端部には、ロータ51が密着し、締結ボルト52により固定されており、カムシャフト21とロータ51は、一体に回転可能となっている。このカムシャフト21の端部外周には、カムシャフトスプロケット23が相対回転自在に嵌合し、このカムシャフトスプロケット23の端面に接し、かつ、ロータ51の外周部を囲うようにハウジング部としてのリングカバー53が設けられ、このリングカバー53の先端開口部がリング形状をなす閉塞板54によって塞がれ、カムシャフトスプロケット23、リングカバー53、閉塞板54は、締結ボルト55によって固定され、一体回転可能となっている。
したがって、カムシャフト21とロータ51とは、このカムシャフト21の軸線Lを中心に一体回転可能となっており、このカムシャフト21及びロータ51に対して、カムシャフトスプロケット23とリングカバー53と閉塞板54は、同じ軸線Lを中心に相対回転可能となっている。
リングカバー53は、その内周面53aにカムシャフト21の軸線L側へ向かって突出する四つの張出部71a,71b,71c,71dが、このリングカバー53の周方向について所定間隔毎に形成されている。この各張出部71a,71b,71c,71d間には、それぞれ溝部72a,72a,72c,72dがリングカバー53の周方向において所定間隔毎に形成されている。
また、ロータ51は、その外周面から各溝部72a,72a,72c,72dに挿入されるように外側方へ突出する四つのベーン部としてのベーン部材73a,73b,73c,73dが形成されている。そして、各ベーン部材73a,73b,73c,73dが挿入された各溝部72a,72a,72c,72d内に、このベーン部材73a,73b,73c,73dにより進角室56及び遅角室57が区画されている。すなわち、進角室56及び遅角室57は、リングカバー53とベーン部材73a,73b,73c,73dとにより区画されている。これら進角室56及び遅角室57は、ベーン部材73a,73b,73c,73dをロータ51の周方向両側から挟むように位置している。
そして、VVTコントローラ27は、カムシャフト21及びロータ51とリングカバー53との間に、進角室56及び遅角室57が区画されると共に、カムシャフト21に、この進角室56及び遅角室57に選択的に油圧を供給する進角側油路58及び遅角側油路59が設けられている。したがって、進角側油路58及び遅角側油路59から進角室56及び遅角室57に作動油が供給され油圧が供給されることで、進角室56と遅角室57との差圧に応じて各ベーン部材73a,73b,73c,73dがリングカバー53に対して図3の矢印A側又は矢印B側に相対回転することにより、ロータ51も相対回動する。これにより、カムシャフトスプロケット23、言い換えれば、クランクシャフト14に対するカムシャフト21の回転位相が変更されることとなり、カムシャフトスプロケット23とカムシャフト21との回転位相が変更され、この結果、クランクシャフト14に対するカムシャフト21の回転位相が進角側または遅角側に変更され、吸気弁19又は排気弁20の開閉時期を変更することができる。
進角側油路58及び遅角側油路59は、油圧制御手段としてのオイルコントロールバルブ(OCV)60に接続されている。また、OCV60には、供給通路61及び排出通路62が接続されている。供給通路61は、クランクシャフト14の回転に伴って駆動するオイルポンプ63を介してエンジン1の下部に設けられたオイルパン64に連結されている。排出通路62は、直接このオイルパン64に連結されている。オイルパン64は、エンジン1の各部に供給する作動油を貯留している。オイルポンプ63は、クランクシャフト14の回転に連動して作動し、オイルパン64に貯留されている作動油を吸引、加圧し、吐出するものである。
OCV60は、進角側油路58、遅角側油路59を介して進角室56、遅角室57に作動油を供給、あるいは、進角室56、遅角室57から作動油を排出するものである。このOCV60は、油路構成本体部65と、スプール弁子66と、付勢手段としてのコイルバネ67と、変位手段としての電磁ソレノイド68とを有し、ECU110から電磁ソレノイド68に入力される制御指令値としてのOCV駆動デューティに応じてスプール弁子66を変位させることで進角室56、遅角室57の油圧を制御する。
具体的には、油路構成本体部65は、油路を構成するものであり、構成された油路と連通する作動油供給ポート65aと、作動油排出ポート65b、65cと、進角室連通ポート65dと、遅角室連通ポート65eとが形成される。油路構成本体部65に構成される油路には、スプール弁子66が挿入されている。
作動油供給ポート65aは、供給通路61を介してオイルポンプ63と接続されており、この作動油供給ポート65aにはオイルポンプ63により所定のライン圧に加圧された作動油が供給される。作動油排出ポート65b、65cは、排出通路62を介してオイルパン64と接続されている。進角室連通ポート65dは、進角側油路58を介して進角室56と接続される。遅角室連通ポート65eは、遅角側油路59を介して遅角室57と接続される。
スプール弁子66は、四つの弁部66a,66b,66c,66dが設けられており、その位置が変位されることでこれら四つの弁部66a,66b,66c,66dにより作動油供給ポート65a、作動油排出ポート65b、65c、進角室連通ポート65d、遅角室連通ポート65eの連通状態を切り替えるものである。さらに言えば、スプール弁子66は、四つの弁部66a,66b,66c,66dにより作動油供給ポート65a、作動油排出ポート65b、65c、進角室連通ポート65d、遅角室連通ポート65eの連通状態を切り替えることで、進角室56、遅角室57にそれぞれ連通する進角室連通ポート65d、遅角室連通ポート65eから流出入する作動油の流量を変更可能である。
そして、コイルバネ67は、スプール弁子66の一端側に設けられる一方、電磁ソレノイド68は、スプール弁子66の他端側に設けられる。コイルバネ67は、スプール弁子66を電磁ソレノイド68側(図2中右側)に移動させる付勢力をスプール弁子66に作用させる。一方、電磁ソレノイド68は、入力される制御指令値としてのOCV駆動デューティに基づいて供給される駆動電流に応じて発生する電磁力により、コイルバネ67による付勢力に抵抗してスプール弁子66をコイルバネ67側(図2中左側)に移動させる押圧力を作用させる。
つまり、電磁ソレノイド68は、入力される制御指令値としてのOCV駆動デューティに応じてスプール弁子66を変位させるものである。電磁ソレノイド68は、ECU110と電気的に接続されており、このECU110により駆動制御されている。ECU110は、電磁ソレノイド68をデューティ制御している。
したがって、OCV60は、ECU110から電磁ソレノイド68に制御指令値としてのOCV駆動デューティが入力されることで、電磁ソレノイド68がOCV駆動デューティに応じた押圧力をスプール弁子66に作用させることができる。これにより、OCV60は、ECU110が電磁ソレノイド68に供給する駆動電流のデューティ(OCV駆動デューティ)によってスプール弁子66の位置を制御することができる。
そして、このOCV60は、スプール弁子66の位置に応じて作動油供給ポート65a、作動油排出ポート65b、65c、進角室連通ポート65d、遅角室連通ポート65eの連通状態を切り替えることで、各ポートの開度を調節することができる。この結果、OCV60は、スプール弁子66の位置に応じて作動油供給ポート65a、作動油排出ポート65b、65c、進角室連通ポート65d、遅角室連通ポート65eの開度を調節することで、進角室連通ポート65d、遅角室連通ポート65eから流出入する作動油の流量を調節し、進角室56、遅角室57内の作動油の圧力を調節することができる。そして、このOCV60は、進角室連通ポート65d、遅角室連通ポート65eから流出入する作動油の流量を調節し、進角室56、遅角室57内の作動油の圧力を調節することで、進角室56と遅角室57とに差圧を生じさせることができる。この結果、可変動弁機構26は、この進角室56と遅角室57とに生じる圧力差によって、リングカバー53に対してベーン部材73a,73b,73c,73dが相対的に回転することで、クランクシャフト14とカムシャフト21との回転位相を進角側または遅角側に変更し、吸気弁19又は排気弁20の開閉時期(バルブタイミング)を可変とすることができる。
さらに具体的には、OCV60は、ECU110から入力されるOCV駆動デューティに基づいて電磁ソレノイド68がスプール弁子66を変位させることで、このスプール弁子66の位置を中立域(保持位置)、進角域及び遅角域に変位させることができる。
図4は、本実施例のOCV60の電磁ソレノイド68に入力されるOCV駆動デューティ[%]と、可変動弁機構26の進角室56と遅角室57との差圧との関係及びOCV駆動デューティ[%]とスプール弁子66の位置との関係の一例を示す特性図である。ここで、可変動弁機構26の進角室56と遅角室57との差圧は、可変動弁機構26の変位速度[CA/sec]、すなわち、クランクシャフト14に対するカムシャフト21の変位角の変化速度に相当する。
まず、スプール弁子66の中立域とは、作動油供給ポート65a、作動油排出ポート65b、65cと進角室連通ポート65d、遅角室連通ポート65eとの連通がほぼ遮断され、進角室56、遅角室57への作動油供給量、進角室56、遅角室57からの作動油排出量がほぼ0となるようなスプール弁子66の動作域である。言い換えれば、可変動弁機構26は、スプール弁子66が中立域にある状態では、進角室56と遅角室57との差圧がほぼ0となり可変動弁機構26の変位速度[CA/sec]、すなわち、クランクシャフト14に対するカムシャフト21の変位角の変化速度がほぼ0となる。このため、可変動弁機構26は、スプール弁子66が中立域にある状態では、クランクシャフト14に対するカムシャフト21の変位角をその時点での変位角に保持することができ、その時点の遅角量又は進角量、言い換えれば、その時点での吸気弁19又は排気弁20の開閉時期(バルブタイミング)を保持することができる。
また、可変動弁機構26は、スプール弁子66が中立域にある状態では、可変動弁機構26の変位速度[CA/sec]がほぼ0となることから、電磁ソレノイド68に入力されるOCV駆動デューティの変動に対する応答性が低くなる。つまり、OCV60には、電磁ソレノイド68に入力されるOCV駆動デューティの変動に対する可変動弁機構26の応答が無い、又は、応答性が低いOCV駆動デューティの領域として、いわゆる、不感帯が存在する。すなわち、スプール弁子66が中立域にある状態でのOCV駆動デューティの領域がこのOCV60の不感帯に相当する。
スプール弁子66の進角域とは、作動油供給ポート65aと進角室連通ポート65dとが連通され進角室56へ作動油が供給される一方、作動油排出ポート65cと遅角室連通ポート65eとが連通され遅角室57から作動油が排出されるようなスプール弁子66の動作域である。
すなわち、電磁ソレノイド68に入力するOCV駆動デューティが不感帯の上限を超えて増加されると、スプール弁子66は、電磁ソレノイド68の押圧力により中立域からコイルバネ67側の進角域に変位し始める。OCV60は、スプール弁子66がコイルバネ67側に近接し始めると、作動油供給ポート65aと進角室連通ポート65dとの連通面積及び作動油排出ポート65cと遅角室連通ポート65eとの連通面積が徐々に増加する。そして、OCV60は、作動油供給ポート65aと進角室連通ポート65dとの連通面積及び作動油排出ポート65cと遅角室連通ポート65eとの連通面積が増加すると、進角室56への作動油供給量が増加すると共に遅角室57からの作動油排出量も増加し、進角室56内の作動油による押圧力が遅角室57内の作動油による押圧力より大きくなり、進角室56と遅角室57とに差圧が生じる。この結果、可変動弁機構26は、この進角室56と遅角室57とに生じる圧力差が大きくなるにしたがって、リングカバー53に対するベーン部材73a,73b,73c,73dの進角側(図3の矢印A側)への相対的な回転の速度が増大し始め、可変動弁機構26の変位速度は、進角側に増大しOCV駆動デューティの変化に対して線形に変化する。
つまり、可変動弁機構26は、電磁ソレノイド68に入力するOCV駆動デューティを不感帯の上限を超えて増加し、スプール弁子66の位置を進角域に変位させることで、進角室56内の圧力が遅角室57内の圧力より大きくなり可変動弁機構26の変位速度[CA/sec]、すなわち、クランクシャフト14に対するカムシャフト21の変位角の変化速度が進角側に増大する。このため、可変動弁機構26は、スプール弁子66が進角域にある状態では、クランクシャフト14に対するカムシャフト21の変位角を進角側に変更することができ、吸気弁19又は排気弁20の開閉時期(バルブタイミング)を進角側に変更することができる。そして、OCV駆動デューティがある程度(例えば、OCV駆動デューティ=100[%])まで増加した時点で可変動弁機構26の変位速度は最大進角速度に達し、それ以上OCV駆動デューティを増加させても変位速度は一定に保持される。このとき、スプール弁子66は進角域の限界位置まで移動し、作動油供給ポート65aと進角室連通ポート65dとが、作動油排出ポート65cと遅角室連通ポート65eとが完全に連通した状態となる。
一方、スプール弁子66の遅角域とは、作動油供給ポート65aと遅角室連通ポート65eとが連通され遅角室57へ作動油が供給される一方、作動油排出ポート65bと進角室連通ポート65dとが連通され進角室56から作動油が排出されるようなスプール弁子66の動作域である。
すなわち、電磁ソレノイド68に入力するOCV駆動デューティが不感帯の下限を超えて低減されると、スプール弁子66は、コイルバネ67の付勢力により中立域から電磁ソレノイド68側の遅角域に変位し始める。OCV60は、スプール弁子66が電磁ソレノイド68側に近接し始めると、作動油供給ポート65aと遅角室連通ポート65eとの連通面積及び作動油排出ポート65bと進角室連通ポート65dとの連通面積が徐々に増加する。そして、OCV60は、作動油供給ポート65aと遅角室連通ポート65eとの連通面積及び作動油排出ポート65bと進角室連通ポート65dとの連通面積が増加すると、遅角室57への作動油供給量が増加すると共に進角室56からの作動油排出量も増加し、遅角室57内の作動油による押圧力が進角室56内の作動油による押圧力より大きくなり、進角室56と遅角室57とに差圧が生じる。この結果、可変動弁機構26は、この進角室56と遅角室57とに生じる圧力差が大きくなるにしたがって、リングカバー53に対するベーン部材73a,73b,73c,73dの遅角側(図3の矢印B側)への相対的な回転の速度が増大し始め、可変動弁機構26の変位速度は、遅角側に増大しOCV駆動デューティの変化に対して線形に変化する。
つまり、可変動弁機構26は、電磁ソレノイド68に入力するOCV駆動デューティを不感帯の下限を超えて低減し、スプール弁子66の位置を遅角域に変位させることで、遅角室57内の圧力が進角室56内の圧力より大きくなり可変動弁機構26の変位速度[CA/sec]、すなわち、クランクシャフト14に対するカムシャフト21の変位角の変化速度が遅角側に増大する。このため、可変動弁機構26は、スプール弁子66が遅角域にある状態では、クランクシャフト14に対するカムシャフト21の変位角を遅角側に変更することができ、吸気弁19又は排気弁20の開閉時期(バルブタイミング)を遅角側に変更することができる。そして、OCV駆動デューティがある程度(例えば、OCV駆動デューティ=0[%])まで減少した時点で可変動弁機構26の変位速度は最大遅角速度に達し、それ以上OCV駆動デューティを減少させても変位速度は一定に保持される。このとき、スプール弁子66は遅角域の限界位置まで移動し、作動油供給ポート65aと遅角室連通ポート65eとが、作動油排出ポート65bと進角室連通ポート65dとが完全に連通した状態となる。
そして、ECU110は、上記各種センサからエンジン1の運転条件に関する種々のパラメータを取得し、機関運転条件に最適な吸気弁19又は排気弁20の開閉時期(バルブタイミング)を設定するための可変動弁機構26の目標変位角を設定し、この可変動弁機構26の目標変位角と、クランク角センサ46及びカムポジションセンサ28によって検出される現時点での実際の変位角である制御変位角との偏差に基づいてフィードバック制御を実行する。すなわち、ECU110は、目標変位角と制御変位角との偏差に基づいて、制御変位角が目標変位角となるようにOCV駆動デューティを算出し、算出したOCV駆動デューティを制御信号としてOCV60の電磁ソレノイド68に出力して電磁ソレノイド68をデューティ制御することで、可変動弁機構26のフィードバック制御を実行する。
上記のように構成されるエンジン1では、インジェクタ35から噴射される燃料と吸気ポート17を介して吸入される空気とが混合して混合気を形成し、ピストン13がシリンダボア12内を下降することで、燃焼室16内にこの混合気が吸入される(吸気行程)。そして、このピストン13が吸気行程下死点を経てシリンダボア12内を上昇することで混合気が圧縮され(圧縮行程)、ピストン13が圧縮行程上死点付近に近づくと点火プラグ36により混合気に点火され、該混合気が燃焼し、その燃焼圧力によりピストン13を下降させる(膨張行程)。燃焼後の混合気は、ピストン13が膨張行程下死点を経て吸気行程上死点に向かって再び上昇することで排気ポート18を介して排気ガスとして放出される(排気行程)。このピストン13のシリンダボア12内での往復運動は、コネクティングロッド15を介してクランクシャフト14に伝えられ、ここで回転運動に変換され、出力として取り出されると共に、このピストン13は、カウンタウェイトと共にクランクシャフト14が慣性力によりさらに回転することで、このクランクシャフト14の回転に伴ってシリンダボア12内を往復する。このクランクシャフト14が2回転することで、ピストン13はシリンダボア12を2往復し、この間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行い、燃焼室16内で1回の爆発が行われる。
このとき、可変動弁制御装置100は、ECU110が運転状態に応じて可変動弁機構26を制御し、吸気弁19及び排気弁20の開閉時期(バルブタイミング)を運転状態に応じた最適な開閉時期に適宜に変更することで、エンジン1の出力の向上やエミッションの改善等を図ることができる。
ところで、上述した可変動弁制御装置100では、例えば、上述のリングカバー53とベーン部材73a,73b,73c,73dとの衝突を規制し打音などの騒音の発生を抑制するべく可変動弁機構26による吸気弁19及び排気弁20の開閉時期制御の基準となる位相としての初期位相に可変動弁機構26を突き当てる場合に、例えば、当該初期位相に応じたOCV駆動デューティを非常に小さなデューティに設定し、ベーン部材73a,73b,73c,73dに対して遅角側(図3の矢印B側)への十分な油圧押圧力を作用させると、可変動弁機構26の作動時におけるOCV60のスプール弁子66の移動距離が長くなるおそれがある。この結果、例えば、可変動弁機構26の作動時に応答遅れが発生し可変動弁機構26の応答性が低下するおそれがある。
すなわち、可変動弁機構26は、例えば、吸気系において、カムシャフト21の端部に吸気カムが設けられており、この吸気カムが吸気弁19に接触すると共にカムシャフト21と共に回転することで、吸気弁19を所定のタイミングで上下移動させている。したがって、カムシャフト21には吸気カムを介してフリクションが作用している。このため、可変動弁機構26の初期位相において、当該フリクションによりリングカバー53とベーン部材73a,73b,73c,73dとが衝突することで打音などの騒音が発生しないようにするためには、カムシャフト21に連結されるベーン部材73a,73b,73c,73dに遅角側(図3の矢印B側)への油圧押圧力を作用させ、リングカバー53に対するベーン部材73a,73b,73c,73dの進角側(図3の矢印A側)への回転変位を抑制し、当該ベーン部材73a,73b,73c,73dを押さえつけておく必要がある。
このとき、可変動弁機構26を初期位相に突き当てるために、例えば、図7に示す従来の可変動弁制御装置のように、当該初期位相に応じたOCV駆動デューティを0[%]近傍の非常に小さなデューティに設定し、ベーン部材73a,73b,73c,73dに対して遅角側への十分な油圧押圧力を作用させると、リングカバー53とベーン部材73a,73b,73c,73dとの衝突による打音などの騒音の発生を防止することができる。しかしながら、この場合、初期位相に応じたOCV駆動デューティを0[%]近傍の非常に小さなデューティに設定することで、可変動弁機構26の初期位相におけるスプール弁子66の位置が電磁ソレノイド68側(遅角側)に近接した位置に設定される。そして、この状態から電磁ソレノイド68に入力するOCV駆動デューティを増大し、スプール弁子66をコイルバネ67側(進角側)に移動させ、可変動弁機構26を作動させ制御変位角を目標変位角に追従させる場合、可変動弁機構26の初期位相におけるスプール弁子66の位置が電磁ソレノイド68側(遅角側)に近接した位置であるために、スプール弁子66の移動距離が長くなるおそれがある。この結果、可変動弁機構26の作動時に応答遅れが発生し可変動弁機構26の応答性が低下するおそれがある。
そこで、本実施例の可変動弁制御装置100は、図1、図2に示すように、上述の可変動弁機構26と、OCV60とを備えると共に、ECU110に初期位相制御指令値設定手段としての初期位相突き当てデューティ設定部111が設けられている。そして、可変動弁制御装置100は、この初期位相突き当てデューティ設定部111が可変動弁機構26のリングカバー53とベーン部材73a,73b,73c,73dとの衝突を規制可能な初期位相突き当てデューティ(初期位相制御指令値)を不感帯下限デューティ(不感帯下限制御指令値)から所定の突き当てデューティ量(所定の突き当て制御指令量)を減じた値に設定することで、可変動弁機構26の初期位相を騒音が発生しない適正な位相に設定した上で可変動弁機構26の作動時の応答遅れを低減している。
具体的には、本実施例のECU110は、初期位相突き当てデューティ設定部111が設けられると共に、さらに、突当制御指令量設定手段としての突き当てデューティ量設定部112が設けられる。
ここで、このECU110は、マイクロコンピュータを中心として構成され処理部、記憶部及び入出力部を有し、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。入出力部にはエンジン1の可変動弁制御装置100を含む各部を駆動する不図示の駆動回路、上述した各種センサが接続されており、この入出力部は、これらのセンサ等との間で信号の入出力を行なう。また、記憶部には、エンジン1の可変動弁制御装置100を含む各部を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。処理部は、不図示のメモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、上述の初期位相突き当てデューティ設定部111、突き当てデューティ量設定部112を有している。図6で説明するエンジン1の可変動弁制御装置100の初期位相突き当て制御は、各部に設けられたセンサによる検出結果に基づいて、処理部が前記コンピュータプログラムを当該処理部に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて制御信号を送ることにより実行される。その際に処理部は、適宜記憶部へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このエンジン1、可変動弁制御装置100を制御する場合には、前記コンピュータプログラムの代わりに、ECU110とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
そして、初期位相突き当てデューティ設定部111は、可変動弁機構26の初期位相に応じたOCV駆動デューティであってリングカバー53とベーン部材73a,73b,73c,73dとの衝突を規制可能なOCV駆動デューティである初期位相制御指令値としての初期位相突き当てデューティを設定可能である。初期位相突き当てデューティ設定部111は、この初期位相突き当てデューティを不感帯下限制御指令値としての不感帯下限デューティから所定の突き当て制御指令量としての所定の突き当てデューティ量を減じた値に設定する。ここで、不感帯下限デューティは、上述のOCV60の不感帯の下限に応じたOCV駆動デューティである。
すなわち、初期位相突き当てデューティ設定部111は、不感帯下限デューティから所定の突き当てデューティ量を減じた値を初期位相突き当てデューティに設定することで、リングカバー53に対するベーン部材73a,73b,73c,73dの回転変位を抑制し、当該ベーン部材73a,73b,73c,73dを押さえつけておくために必要最低限の油圧押圧力をベーン部材73a,73b,73c,73dに作用させる。このとき、初期位相突き当てデューティ設定部111は、必要以上の油圧押圧力がベーン部材73a,73b,73c,73dに作用しないように初期位相突き当てデューティを設定することで、可変動弁機構26の初期位相におけるスプール弁子66の位置を遅角域内の中立域側の位置に設定することができる。この結果、次に可変動弁機構26を作動させる際のスプール弁子66の移動距離を短くすることができる。
言い換えれば、例えば、初期位相突き当てデューティを不感帯下限デューティから所定の突き当てデューティ量を減じた値より大きな値に設定すると、ベーン部材73a,73b,73c,73dを押さえつけておくために必要最低限の油圧押圧力をベーン部材73a,73b,73c,73dに作用させることができない。一方、初期位相突き当てデューティを不感帯下限デューティから所定の突き当てデューティ量を減じた値より小さな値に設定すると、可変動弁機構26を作動させる際のスプール弁子66の移動距離が長くなる。しかしながら、本実施例の可変動弁制御装置100は、初期位相突き当てデューティを不感帯下限デューティから所定の突き当てデューティ量を減じた値に設定することで、可変動弁機構26の初期位相を騒音が発生しない適正な位相に設定した上で、次に可変動弁機構26を作動させる際のスプール弁子66の移動距離を短くすることができる。
ここで、OCV60の不感帯は、電磁ソレノイド68に入力されるOCV駆動デューティの変動に対する可変動弁機構26の応答が無い、又は、応答性が低いOCV駆動デューティの領域を予め実験等により学習するなどして仕様等に応じて予めECU110の記憶部に記憶させておいてもよいし、ECU110に不感帯学習手段を設け、OCV60のデューティ制御により可変動弁機構26の動作を制御する中でこの不感帯学習手段により学習するようにしてもよい。不感帯の学習方法は、種々の公知の方法を用いればよく、例えば、可変動弁機構26の変位速度の絶対値を計算し、その前回値は所定の基準値より小さいが、今回値は所定の基準値より大きくなったとき、その時点でのOCV駆動デューティを不感帯の上限値或いは下限値として学習する、などの種々の方法を用いることができる。また、不感帯の学習方法としては、可変動弁機構26の変位速度の絶対値が所定の基準値以下の範囲でOCV駆動デューティの最大値を不感帯の上限値として学習し、同範囲でのOCV駆動デューティの最小値を不感帯の下限値として学習する方法もある。
突き当てデューティ量設定部112は、進角室56、遅角室57に供給される作動油の粘度又は油圧に基づいて所定の突き当てデューティ量を設定する。作動油の粘度は、例えば、油温センサ47が検出する作動油油温に基づいて検出することができる。すなわち、作動油油温が相対的に高ければ作動油の粘度は相対的に低くなる一方、作動油油温が相対的に低ければ作動油の粘度は相対的に高くなる。作動油油圧は、油圧センサ48により検出することができる。
この突き当てデューティ量設定部112によって設定される突き当てデューティ量は、作動油供給ポート65aと遅角室連通ポート65eとの連通面積及び作動油排出ポート65bと進角室連通ポート65dとの連通面積に応じた量である。突き当てデューティ量が大きくなれば、これに応じて作動油供給ポート65aと遅角室連通ポート65eとの連通面積及び作動油排出ポート65bと進角室連通ポート65dとの連通面積も増加する。一方、進角室56、遅角室57内の油圧、言い換えれば、進角室56と遅角室57との差圧は、OCV60の各ポートの連通面積がそれぞれ一定でであっても、作動油の粘度及び油圧の変動に応じて変化する。つまり、作動油供給ポート65aと遅角室連通ポート65eとの連通面積及び作動油排出ポート65bと進角室連通ポート65dとの連通面積が一定であっても、作動油の粘度及び油圧が変動すると、進角室56と遅角室57との差圧も変動する。しかしながら、本実施例の初期位相突き当てデューティ設定部111は、突き当てデューティ量設定部112により作動油の粘度及び油圧に基づいて設定される突き当てデューティ量を用いて初期位相突き当てデューティを設定することで、作動油の粘度及び油圧が変動してもこの作動油の粘度及び油圧の変動に応じた適正な初期位相突き当てデューティを設定することができる。
具体的には、突き当てデューティ量設定部112は、図5−1の突き当てデューティ量と作動油油温との関係を表す線図に示すように、作動油油温(作動油粘度)が高温(低粘度)側での突き当てデューティ量を低温(高粘度)側での突き当てデューティ量より大きく設定する。すなわち、作動油油温が相対的に高温となり作動油粘度が低くなると作動油油圧が相対的に減少する。しかしながら、突き当てデューティ量設定部112は、作動油油温(作動油粘度)が高温(低粘度)側での突き当てデューティ量を低温(高粘度)側での突き当てデューティ量より大きく設定することで、作動油油温が相対的に高温となり作動油粘度が低くなっても、高温(低粘度)側での作動油供給ポート65aと遅角室連通ポート65eとの連通面積及び作動油排出ポート65bと進角室連通ポート65dとの連通面積を低温(高粘度)側での連通面積より増加させ、遅角室57への作動油供給量、進角室56からの作動油排出量を相対的に増加させることができる。したがって、作動油油温(作動油粘度)に応じた適正な油圧押圧力をベーン部材73a,73b,73c,73dに作用させ、打音などの騒音が発生しないように押さえつけておくことができる。
また、突き当てデューティ量設定部112は、図5−2の突き当てデューティ量と作動油油圧との関係を表す線図に示すように、作動油油圧が低圧側での突き当てデューティ量を高圧側での突き当てデューティ量より大きく設定するようにしてもよい。すなわち、突き当てデューティ量設定部112は、作動油油圧が低圧側での突き当てデューティ量を高圧側での突き当てデューティ量より大きく設定することで、作動油油圧が相対的に低油圧となっても、低油圧側での作動油供給ポート65aと遅角室連通ポート65eとの連通面積及び作動油排出ポート65bと進角室連通ポート65dとの連通面積を高油圧側での連通面積より増加させ、遅角室57への作動油供給量、進角室56からの作動油排出量を相対的に増加させることができる。したがって、作動油油圧に応じた適正な油圧押圧力をベーン部材73a,73b,73c,73dに作用させ、打音などの騒音が発生しないように押さえつけておくことができる。
次に、図6のフローチャートを参照して、本実施例に係るエンジン1の可変動弁制御装置100の初期位相突き当て制御を説明する。
まず、ECU110は、上記各種センサからエンジン1の運転条件に関する種々のパラメータを取得し、このエンジン1の運転条件に関する種々のパラメータに基づいて設定される可変動弁機構26の目標変位角が0°CA付近であるか否かを判定する(S100)。ECU110は、例えば、可変動弁機構26の目標変位角が0.3°CAより小さいか否かを判定することで、可変動弁機構26の目標変位角が0°CA付近であるか否かを判定することができる。可変動弁機構26の目標変位角が0°CA付近でないと判定された場合(S100:No)、ECU110は、エンジン1の運転状態で定まる目標変位角と現時点での実際の変位角である制御変位角との偏差に基づくフィードバック制御(例えば、PD制御)によって電磁ソレノイド68のデューティ制御を行い(S102)、次の制御周期に移行する。
可変動弁機構26の目標変位角が0°CA付近であると判定された場合(S100:Yes)、ECU110の突き当てデューティ量設定部112は、進角室56、遅角室57に供給される作動油の粘度又は油圧に基づいて、図5−1に示した突き当てデューティ量と作動油油温とのマップや図5−2で示した突き当てデューティ量と作動油油圧とのマップを用いて所定の突き当てデューティ量を設定する。図5−1に示した突き当てデューティ量と作動油油温とのマップや図5−2で示した突き当てデューティ量と作動油油圧とのマップは、予め実験等により作成しECU110の記憶部に記憶しておけばよい。そして、初期位相突き当てデューティ設定部111は、[初期位相突き当てデューティ=不感帯下限デューティ−突き当てデューティ量]を算出して初期位相突き当てデューティを設定し、この初期位相突き当てデューティを電磁ソレノイド68に入力し、可変動弁機構26を初期位相に突き当てて(S104)、次の制御周期に移行する。
以上で説明した本発明の実施例に係るエンジン1の可変動弁制御装置100によれば、リングカバー53とベーン部材73a,73b,73c,73dとにより形成される進角室56及び遅角室57に導入される作動油の油圧に応じてエンジン1のクランクシャフト14と吸気カムシャフト21、排気カムシャフト22との回転位相を変更することでエンジン1の吸気弁19又は排気弁20の開閉時期を可変とする吸気可変動弁機構26A、排気可変動弁機構26Bと、進角室56又は遅角室57にそれぞれ連通する進角室連通ポート65d、遅角室連通ポート65eから流出入する作動油の流量を変更可能なスプール弁子66と、入力されるOCV駆動デューティに応じてスプール弁子66を変位させる電磁ソレノイド68とを有し、スプール弁子66を変位させることで進角室56及び遅角室57の油圧を制御すると共に、電磁ソレノイド68に入力されるOCV駆動デューティの変動に対する吸気可変動弁機構26A、排気可変動弁機構26Bの応答性が低いOCV駆動デューティの領域である不感帯を有するOCV60と、吸気可変動弁機構26A、排気可変動弁機構26Bの初期位相に応じたOCV駆動デューティであってリングカバー53とベーン部材73a,73b,73c,73dとの衝突を規制可能なOCV駆動デューティである初期位相突き当てデューティを設定可能であると共に、この初期位相突き当てデューティを不感帯の下限に応じたOCV駆動デューティである不感帯下限デューティから所定の突き当てデューティ量を減じた値に設定する初期位相突き当てデューティ設定部111とを備える。
したがって、初期位相突き当てデューティ設定部111が吸気可変動弁機構26A、排気可変動弁機構26Bのリングカバー53とベーン部材73a,73b,73c,73dとの衝突を規制可能な初期位相突き当てデューティを不感帯下限デューティから所定の突き当てデューティ量を減じた値に設定することから、吸気可変動弁機構26A、排気可変動弁機構26Bの作動時におけるスプール弁子66の移動距離を相対的に短くすることができるので、吸気可変動弁機構26A、排気可変動弁機構26Bの初期位相を騒音が発生しない適正な位相に設定した上で作動時の応答遅れを低減することできる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るエンジン1の可変動弁制御装置100によれば、作動油の粘度又は油圧に基づいて所定の突き当てデューティ量を設定する突き当てデューティ量設定部112を備える。したがって、初期位相突き当てデューティ設定部111は、突き当てデューティ量設定部112により作動油の粘度及び油圧に基づいて設定される突き当てデューティ量を用いて初期位相突き当てデューティを設定することで、作動油の粘度及び油圧が変動してもこの作動油の粘度及び油圧の変動に応じた適正な初期位相突き当てデューティを設定することができる。この結果、作動油の粘度及び油圧が変動しても、吸気可変動弁機構26A、排気可変動弁機構26Bの初期位相を騒音が発生しない適正な位相に設定した上で、次に吸気可変動弁機構26A、排気可変動弁機構26Bを作動させる際のスプール弁子66の移動距離を短くすることができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るエンジン1の可変動弁制御装置100によれば、突き当てデューティ量設定部112は、作動油の粘度が低粘度側での突き当てデューティ量を高粘度側での突き当てデューティ量より大きく設定し、作動油の油圧が低油圧側での突き当てデューティ量を高油圧側での突き当てデューティ量より大きく設定する。したがって、作動油粘度又は作動油油圧に応じた適正な油圧押圧力をベーン部材73a,73b,73c,73dに作用させ、打音などの騒音が発生しないように押さえつけておくことができる。
なお、上述した本発明の実施例に係る可変動弁制御装置は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、可変動弁制御装置が適用される内燃機関としてのエンジン1は、いわゆる、ポート噴射式の内燃機関であるものとして説明したが、これに限らず、例えば、燃焼室16に直接燃料を噴射する、いわゆる、筒内直接噴射式の内燃機関であってもよい。