JP4899275B2 - 蛍光体および蛍光体ペースト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペースト体での処理、加工、運搬乃至は貯蔵に際しての取扱性が改善された蛍光体および蛍光体ペーストに関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光体はプラズマディスプレイ、電界放出素子を用いたディスプレイ(フィールドエミッションディスプレイ)、無機ELなどのディスプレイに使用される。
【0003】
プラズマディスプレイは、放電のための複数の電極を形成した部材と蛍光体層を形成した部材との間に設けられた内部空間内で、放電のための電極間にプラズマ放電を生じさせ、放電空間内に封入されたガスから発生した紫外線を、放電空間内隔壁間に設けた蛍光体に照射させることにより蛍光が発せられ表示が行われる。
【0004】
プラズマディスプレイ用蛍光体は主に酸化物系材料が用いられている。蛍光体は炭酸塩、水酸化物、酸化物などの原料を所定量秤量・混合し、大気中または還元性雰囲気中などで焼成した後、ビーズミル、洗浄、分級、乾燥などの工程を経て作製される。蛍光体粒子の平均粒径は、一般的には0.5〜5μm程度のものが使用されている。
【0005】
プラズマディスプレイの蛍光体層は、上記のように作製された蛍光体粉末と有機バインダーを混合した蛍光体ペーストを、スクリーン印刷法、ノズル塗布法、さらに感光成分を添加した感光性ペースト法などにより所定のセル位置に塗布後、乾燥、400〜550℃程度の焼成を行い形成される。
【0006】
これらの蛍光体形成法では、塗布厚み・形状の制御が発光特性という観点から重要である。塗布厚みや形状が変化すると、生産されるプラズマディスプレイ毎に輝度や色度の差異が大きく異なったり、1つのプラズマディスプレイで面内における輝度や色度にムラが生じるといった問題が発生する。蛍光体の塗布厚み・形状は上記形成法のプロセス条件だけでなく、蛍光体ペーストの粘度、チキソトロピー性に大きく依存しており、いかに蛍光体粉末を有機バインダー中に均一に分散させるかがポイントとなる。
【0007】
また、蛍光体の分散性不良が過度の場合には上記問題点の他に、スクリーン版の目詰まりやノズル孔の詰りなどにより蛍光体ペーストが部分的に塗布されないといったことも起こり、欠陥が多くなり歩留まりを低下させてしまうといった問題も発生しやすい。
【0008】
従来、蛍光体ペーストの製造方法としては、蛍光体粉末とあらかじめ溶媒で溶解させたポリマー(有機バインダー)を、3本ロールミル、ビーズミル、サンドミルなどで混練する方法などがある。さらに、原料中に混入している異物や混練過程で混入する繊維くず、金属粉などを取り除く目的で、例えばステンレス製のメッシュフィルターなどで濾過する場合もある。濾過フィルターは、使用するスクリーン版のオープニングやノズル孔径に応じて適宜決定される。
【0009】
このように製造された蛍光体ペーストにおいては、蛍光体の分散が不十分で、粘度やチキソトロピー性などの蛍光体ペーストの特性の経時変化が大きく、安定に生産し難いので、生産効率を低下させていた。
【0010】
このような課題に対しては、例えば特開平11−61112号公報においては、蛍光体とバインダー樹脂と有機溶媒とを密閉容器に収納し、この原料組成物にホモジナイザーの攪拌部を浸漬させて高速回転させることによる蛍光体ペーストを作製するといった方法が開示されている。さらに、特開2000−273449号公報には、ホモジナイザーの攪拌部にセラミックス膜を被覆することで、回転数や攪拌時間のプロセスマージンを拡大し、より分散性を向上させるといった手法も示されている。また、特開2000−345091号公報には、蛍光体ペーストにイオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤などの分散剤を添加する手法も開示されている。
【0011】
しかしこれら手段によっても、まだ蛍光体ペーストの特性安定性は不十分であった。特に、青色蛍光体に2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体を用いた場合には、ホモジナイザー等によるせん断を加える分散方法では、蛍光体粉末自身が破壊されたり、分散剤添加により焼成による輝度劣化が大きくなる傾向が生じやすい。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来の製造方法で得られた蛍光体および蛍光体ペーストでは、蛍光体ペーストにおいて高粘度な領域が部分的に生じ、このため、蛍光体ペースト特性が経時変化しやすかったり、フィルターのろ過性が低下したり、スクリーン版の目詰まりやノズル孔詰りが生じやすかったと考えられる。
【0013】
そこで本発明は、従来の技術における上述した課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、スクリーン版の目詰まりやノズル孔詰りなどが発生しにくく安定に生産できる蛍光体および蛍光体ペーストを提供し、欠陥や発光特性のばらつきの少ないディスプレイを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基本的には以下の通りの構成を有する。
【0015】
即ち、本発明は、2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩を有する蛍光体であって、最表面から深さ5nmの位置で分析される表層のAl組成が38at%以下、前記アルミン酸塩の化学量論組成式がMMgAl 10 O 17 であり、かつ該化学量論組成式中の元素Mが少なくともBa、Sr、およびCaからなる群から選ばれる少なくとも1種からなるものである蛍光体である。
【0016】
また、この蛍光体と有機バインダーを必須成分とする蛍光体ペーストであり、該有機バインダーはセルロース系樹脂からなるものであることを特徴とする蛍光体ペーストである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0018】
本発明の蛍光体は2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体であり、表層のAl組成が38at%以下であることが必要である。好ましくは33at%以下、より好ましくは29at%以下である。なお、at%とは、原子%の意、即ちモル%と同義である。あるいは、内部のAl組成比率(即ち、モル分率)を1とした場合、表層のAl組成比率が1.1以下であることが重要である。より好ましくは0.96以下、さらに好ましくは0.84以下である。
【0020】
蛍光体表層のAl組成を38at%以下とすることで、スクリーン版やノズル孔の目詰まりの発生を抑制することが可能となる。したがって、安定かつ連続で塗布工程を実施できるので、生産効率が改善され、欠陥の発生頻度が減少するので、欠陥が少ないディスプレイが作製できる。さらには、蛍光体ペースト中において部分的に蛍光体と有機バインダーの組成が異なる領域(混合不良による濃度の不均一)が発生しにくく、粘度のばらつきが抑制できるので、ディスプレイ面内での蛍光体層の厚み・形状の均一性も改善され、高品質なディスプレイを提供できる。
【0021】
また、ペースト中の繊維くずなどの異物を除去するためのフィルターのろ過特性(ろ過時間、フィルター交換頻度、フィルターの再利用性、フィルターケーシングの洗浄など)も良好となる。蛍光体ペーストの作製や塗布工程における蛍光体ペーストが接する部位(例えば、ペースト作製時のミル等の配管、バルブや、塗布工程でのペースト供給配管やろ過フィルターなど)での異物(例えば、繊維くずを中心に高粘度なペースト組成物、蛍光体粉末が蛍光体ペーストの平均組成よりも多くなったペースト組成物など)が付着しにくくもなる。したがって、こういった点からも、安定に蛍光体ペーストを供給し、連続的に塗布工程を行うことが可能となるので、生産効率が一層向上できる。
【0022】
前記の通り蛍光体表層Al組成を設計することによりかかる効果が得られる詳細な機構は全て解明されたわけではないが、以下の検討結果より次の通り推定される。即ち、従来技術におけるスクリーン版に目詰まりした高粘度の付着物は、蛍光体ペーストの平均組成から異なっていることが判明した。これを詳細に検討した結果、蛍光体表面のAlと有機バインダーであるエチルセルロース系樹脂が相互作用することで結合しネットワークを形成してしまうことで生じることが明らかとなった。具体的には、このような付着物を赤外吸収分光法で調べたところ、この付着物には、特有に850cm-1付近に赤外線吸収ピークを有することが判明し、これはAlとエチルセルロース系樹脂が結合しているものと考えられた。つまり、蛍光体表面のAl組成が、前記目詰まり等のトラブルの一因であることが解明された。その上、以下の通りの驚くべき事実が判明した。即ち、従来の2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体を透過電子顕微鏡(TEM)で観察し、表層および蛍光体内部の局所組成分析を5nmに絞った電子ビームによるエネルギー分散型分光法(ナノEDS、例えばVacuum Genarator社製HB501)で行ったところ、本来、均一組成であるはずの蛍光体は、内部に比べて表層付近はAl組成が多かったという意外な事実が判明した。具体的には、蛍光体全体でAl組成を35at%となるように調製し(作成後の蛍光体粉末のBa、Mg、Al、Euの平均組成をICP法で、酸素分析を不活性ガス融解−赤外線吸収法で分析しAl組成が35at%であることを確認)たにもかかわらず、表層では41at%であった。ここで、ICP分析は0.1%の精度で分析可能であるが、ナノEDSでは、軽元素である酸素の分析が難しいために、分析精度がICPに比べて劣るので、蛍光体内部におけるナノEDSの測定値(inAlEDS)が蛍光体全体(表層は僅かなので、その影響は無視して、内部組成値と近似できる)のICPによる分析値(AlICP)に合するように補正を行い、この補正値(AlICP/inAlEDS)を元に蛍光体表層におけるナノEDSの測定値(exAlEDS)を補正して表層のAl組成((AlICP/inAlEDS)*exAlEDS)を算出した。内部は蛍光体粉末の重心から半径0.5μmの円の内側を、そして、表層は蛍光体粉末の最表面から深さ5nmのところを分析した。分析に用いた電子ビームは直径5nmとした。
【0023】
また、蛍光体粉末の作製条件によっては蛍光体表面に明瞭な格子縞が見られずアモルファスである場合も多く観察され(即ち、前記表層の少なくとも一部がアモルファス化している状態)、この場合、蛍光体内部に比べて表面のアモルファス層のAl組成が結晶質の場合よりも一層多く、具体的には、44at%であったという予想外の結果が得られた。このように本来、表層内部ともに均一組成・結晶構造であるはずの蛍光体について、前記の通り表層と内部において斯くの如き不均一となった原因を究明したところ、後述の通り、蛍光体の加工工程に起因することが判明した。
【0024】
以上のことから、加工工程を後述の通り調整することにより、蛍光体表層のAl組成を38at%以下とすることが可能となり、セルロース系樹脂とAlのネットワーク形成による部分的な高粘度領域が存在しにくくなり、前記の通りの効果が得られるものと推定される。
【0025】
なお、本発明において、蛍光体表層のAl組成の下限値は、好ましくは10at%以上(より好ましくは20at%以上)である。通常、表層と内部は出発組成が共通していて、表層組成の調製は外部からの変性作用等によるものであるから、内部組成と独立して表層組成だけを大きく変えること困難である。従って、前記下限値を下回ると表層だけでなく蛍光体内部までAl組成が化学量論組成から大きく外れやすくなる、すなわち、発光強度が低下しやすくなり、好ましくないからである。
【0026】
本発明の蛍光体においては、蛍光体内部と組成が異なるアモルファス層の厚みは、プラズマディスプレイの表示に用いる励起紫外線(波長147nm、172nmなどが一般に使用される)がこのアモルファス層で吸収されないことが望ましいので、実質的に存在しないか、または厚みが出来るだけ薄い方が好ましいが、具体的には、平均厚み15nm以下、より好ましくは10nm以下である。
【0027】
また、蛍光体表層のユーロピウム組成は、0.01at%よりも多く、5at%よりも少ない方が好ましい。より好ましくは0.1at%よりも多く4at%よりも少ないことがよい。これは、ユーロピウムがこの範囲にある場合、2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩の青色発光以外の、すなわち3価のユーロピウムからの赤色発光が蛍光体表層のアモルファス層から実質上見られない為である。
【0028】
本発明の蛍光体は上記の2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体である。ここで、賦活とは、一般に、特定の機能(蛍光など)を発現させたりするために賦活剤(2価のユーロピウム等)を母材マトリクス(アルミン酸塩等)にドーピングすることである。賦活された形態としては、賦活剤が母材マトリクスの特定乃至は不特定の原子と置換されている形態も有れば、母材マトリクスの結晶格子間に侵入している形態もある。本発明における2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体の場合は、前記置換された形態が一般的であると考えられる。2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体としては、例えば、BaMgAl14O23:Eu、BaMgAl10O17:Eu、BaMg2Al14O24:Euなどが挙げられるが、化学量論組成式がMMgAl10O17であり、かつMが少なくともBa、SrおよびCaの少なくとも1種からなる2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体であることがより好ましい。ここで、MMgAl10O17と表記した場合、酸素濃度は便宜上前記の通りの化学量論組成で表してあるが、前記化学量論組成よりも少ない蛍光体も含んでいても良い。また、元素M、Mg、Alについても必ずしも前記化学量論通りである必要はなく、多少組成が増加または減少させてあっても構わない。例えば、MがBaの場合、化学量論組成がBaMgAl10O17:Eu(ユーロピウム)において、Eu:Ba=0.05:0.95〜0.2:0.8、Mgが0.85〜1.00、Alが9.5〜11.0程度である(即ち、Ba(1-z)MgXAlYO17:EuZ(X=0.85〜1,Y=9.5〜11,Z=0.05〜0.2)ならば、問題ない。即ち、本発明において、前記の通りの組成範囲内であるならば、化学量論組成式MMgAl10O17を満たしているものと見なすことができる。
【0029】
本発明の蛍光体において、蛍光特性等に問題がない限り、アルミン酸塩以外の成分を有しても良いが、通常は実質上アルミン酸塩のみよりなることが好ましい。又、表層についてもほぼ同様であるが、表面に、蛍光体の耐熱性や耐紫外線性能を向上させるの目的でMgOなどがコーティングされる等の場合があり得る。
【0030】
なお、赤色蛍光体については、例えば、Y2O3:Eu、YVO4:Eu、(Y、Gd)BO3:Eu、Y2O3S:Eu、γ−Zn3(PO4)2:Mnがある。緑色蛍光体では、Zn2GeO2:Mn、BaAl12O19:Mn、Zn2SiO4:Mn、LaPO4:Tb、ZnS:Cu,Al、Zn2SiO4:Mn,As、(Zn、 Cd)S:Cu,Al、ZnO:Zn、YBO3:Tbなどがあげられる。
【0031】
蛍光体の粒径(例えばレーザー回折散乱法で測定される50%累積粒子径D50)は特に限定されるものではないが、好ましくは0.5〜10μm(より好ましくは1〜6μm、更に好ましくは2〜4μm)である。前記数値範囲の下限値を下回ると良好な結晶性を有した蛍光体となりにくいので発光強度が低かったり、焼成による輝度の低下が大きくなり、一方、上限値を上回ると作製されるプラズマディスプレイの画素内の輝度ムラが大きくなり好ましくない場合がある。又、形状については特に限定されるものではなく、好ましくは板状あるいは球状である。
【0032】
蛍光体ペーストに用いる有機バインダーはセルロース系樹脂であることが必要である。何故ならばスクリーン印刷法やノズル塗布法において、塗布後の形状を保持しやすいからである。セルロース系樹脂とは、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、ヒドロキシルエチルプロピルセルロース等である。例えば、エチルセルロースであれば、ハーキュレス製“N10ファーム”や、ダウ・ケミカルズ製“エトセル”などが使用できる。前記有機バインダーは溶媒を含有していることが好ましく、このようなセルロース系樹脂を溶解するための溶媒は、特に限定されないが、できるだけ相溶性が良好なものが好ましく、例えば、ベンジルアルコールやターピネオールなどである。又、前記有機バインダーにはセルロース系樹脂以外の樹脂等(例えばポリメチルメタクリレート(PMMA))が含まれていても良い。但し、その場合、セルロース系樹脂100重量部に対して、好ましくは40重量部以下(より好ましくは30重量部以下)である。前記数値範囲の上限値を上回ると蛍光体ペーストのチキソ性が低下しやすく蛍光体ペースト塗布後の形状維持が難しくなりやすく好ましくない場合がある。前記有機バインダーにおいては、セルロース系樹脂(場合によってはその他の樹脂も含む)100重量部に対して、溶媒は好ましくは200〜1000重量部(より好ましくは300〜800重量部、更に好ましくは350〜700重量部)の割合で配合されるものである。前記数値範囲の下限値を下回ると溶媒不足となり蛍光体ペーストの粘度が高くなり過ぎ、塗布が困難となり、一方、上限値を上回ると粘度が低くなり過ぎ塗布後の形状が安定しにくくなり好ましくない場合がある。
【0033】
蛍光体と溶解前のセルロース系樹脂(固形分、場合によってはその他の樹脂も含む)の比率は、スクリーン印刷法や、ノズル塗布法などを使用する場合、蛍光体が70〜95重量%とセルロース系樹脂が5〜30重量%であることが好ましい。より好ましくは蛍光体が80〜90重量%とセルロース系樹脂が10〜20重量%である。前記数値範囲の蛍光体重量比率の下限値を下回るとセルロース系樹脂の比率が高くなるので、焼成残さが残りやすくなり、一方、上限値を上回ると樹脂成分が不足となりスクリーン印刷法やノズル塗布法において塗布が難しくなり好ましくない場合がある。
【0034】
ペーストの糸引きや蛍光体層塗布形状の点から、必要に応じチキソトロピー性付与剤を添加してもよい。例えば、シリカ微粒子(例えば、日本アエロジル製“380”、“R974”)である。
【0035】
また、さらに蛍光体の更なる分散性向上や長時間経過後の蛍光体粉末の沈降抑制を目的として、蛍光体ペースト中にはアニオン性や非イオン性の界面活性剤等の有機化合物系分散剤や、高級脂肪族系アルコール、可塑剤(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセル等)を含有してもよいが、本発明の蛍光体ペーストは従来の蛍光体ペーストに比べて分散性が良好であるので、このような分散剤の添加量は少なくて良い。したがって、蛍光体層焼成後の分散剤の残さや、青色蛍光体において顕著である焼成による輝度・色度劣化が少ない。これらは、蛍光体粉末に対して、好ましくは3重量%以下(より好ましくは1重量%以下)の配合割合である。
【0036】
以下に、本発明の蛍光体ペーストに用いる蛍光体の作製方法を説明する。本発明は2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩を有する蛍光体であり、青色発光を示す。蛍光体原料として、バリウム化合物(酸化バリウム、水酸化バリウム、炭酸バリウム等)、ストロンチウム化合物(酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム等)、カルシウム化合物(酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等)、ユーロピウム化合物(酸化ユーロピウム、フッ化ユーロピウム等)、マグネシウム化合物(酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等)、アルミニウム化合物(酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等)等を組成合わせて所定量秤量し、フラックス(フッ化バリウム、フッ化アルミニウム、フッ化マグネシウム等)を配合し、原料混合物を十分にボールミル等で混合する。得られた混合物を坩堝に充填し、窒素あるいは水素等の還元雰囲気にて、好ましくは、1400℃〜1650℃の温度で2〜40時間かけて1回以上焼成する。好ましくは2回以上焼成する。還元雰囲気で焼成することによりユーロピウムを3価から2価に還元する。この焼成物に分散、洗浄、乾燥、分級を行い、2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体を得ることができる。
【0037】
蛍光体の焼成後に粉末粒子同士が融着しているものを各々の粒子に単分散させるために従来技術においてビーズミル等の分散工程を行う場合が多い。
【0038】
しかしながら、分散工程後の蛍光体表層がアモルファス化する場合が多く、これは硬質セラミックスとの機械的接触において、表層の結晶層がアモルファス化していると考えられる。事実、ビーズミルの分散時間を少なくすると、蛍光体表層がアモルファス化しにくい傾向がある。アモルファス化する際に、選択的に原子が削られ比較的硬いアルミナ成分が残りやすい。すなわち、相対的に表層の方が内部の結晶質層の方よりも、Al組成が高くなりやすい。
よって、表層のAl組成を38at%以下にするためには、蛍光体粉末焼成後のビーズミルなどでせん断をできるだけかけないようにすればよい。
【0039】
したがって、できるだけ蛍光体粉末同士が融着しないように蛍光体粉末を焼成して、可能な限り分散工程を省くことにするか、分散工程の後に、せん断により組成や状態が変化した表層を、酸やアルカリ溶液などで除去することがよい。前者は、蛍光体粉末作製時の結晶成長促進剤(フラックス、例えばフッ化アルミニウムなど)の量を発光特性に影響を与えない範囲で少なくすることで達成できる。例えば、BaMgAl10O17:Eu蛍光体では、フッ化アルミニウム量を焼成後の蛍光体に対して0.1〜15重量%にすることがよい。より好ましくは1〜10重量%である。更に好ましくは2〜6重量%である。また、同様に発光特性に影響を及ぼさない範囲で、蛍光体粉末作製時の焼成温度は低く、焼成時間は短い方がよい。例えば、前述の蛍光体では、1400℃〜1650℃、より好ましくは1450℃〜1550℃、最高温度保持時間は2〜50時間程度、より好ましくは5〜15時間程度である。
【0040】
後者では、分散工程後の表層が変化してしまった蛍光体を、塩酸や硝酸などの酸性溶液、または水酸化ナトリウムなどのアルカリ性溶液で化学的にエッチングしてもよい。溶液のpHや時間などのエッチング条件はビーズミル工程で変化した表層を除去するように適宜調整できるが、ビーズミル工程で変質していないところまでエッチングしないようにする。
【0041】
前記の通り調製された蛍光体は、有機バインダーと合わせて、蛍光体ペーストが得られる。蛍光体ペーストの作製方法は特に限定されず、蛍光体粉末が樹脂中に十分分散できればよく、例えば3本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等の分散機を用いて蛍光体粉末と有機バインダーを混練することができる。有機バインダー中のポリマーや溶媒は最終的な組成が上記の通りであれば、問題なく蛍光体ペーストが作成できる。すなわち、あらかじめ所定量に調整しておいた有機バインダーと蛍光体を混合するだけでなく、所定量より溶媒またはポリマーを少な目にした有機バインダーと蛍光体を混合し、しかる後残りの溶媒またはポリマーを追加・混合したりすることができる。なかでも、所定量よりもポリマーを少な目にした有機バインダーと蛍光体を混合し、あらかじめスラリーを作成しておき、所定量になるように最後に残りのポリマーと溶媒を追加・混合することが好ましい。
【0042】
本発明の蛍光体又は蛍光体ペーストを用いることにより、発光特性に優れたプラズマディスプレイ乃至はその部材を完成させることができるものであり、かつ、それらの製造も効率よく欠陥発生を少なくことが可能となるものである。これらの物品は、先に詳述した蛍光体の組成的乃至は構造的特質を実質上具備(焼成工程等による多少の変化有り)するものである。以下に、プラズマディスプレイ及びその部材及びその作製方法を順に沿って説明するが、これら以外にもフィールドエミッションディスプレイや無機ELなどのディスプレイやその製造方法にも適用できる。
【0043】
以下に図1に示した構造のAC型プラズマディスプレイの製造方法について説明するが、必ずしもこの構造には限定されない。すなわち、前面板には、表示面側の基板であり表示用放電のための電極(サスティン電極、スキャン電極)が形成されており、AC型プラズマディスプレイの場合、電極の透明誘電体層およびその保護膜としてMgO薄膜が形成される場合が多い。背面板には、表示させるセルをアドレス選択するための電極(アドレス電極)が形成されるている。セルを仕切るための隔壁や蛍光体層は前面板、背面板のどちらかまたは両方に形成してもよいが、背面板のみに形成される場合が多い。
【0044】
(部材作製工程)
まず、部材作製工程に関し、前面板の作製方法について述べる。
【0045】
前面板に用いるガラス基板については、特に限定しないが、一般的にはソーダライムガラスやソーダライムガラスをアニール処理したガラス、または、高歪み点ガラス(例えば、旭硝子社製“PD−200”)等を用いることができる。ガラス基板のサイズは特に限定はなく、厚みは1〜5mmのものを用いることができる。
【0046】
まず、ガラス基板上に、放電のための複数の電極を形成する。電極形成法としては、例えば、酸化錫、ITOなどの透明電極をリフトオフ法、フォトエッチング法などによって、銀やアルミ、銅、金、ニッケル等をスクリーン印刷や感光性導電ペーストを用いたフォトリソグラフィー法によってパターン形成してもよい。また、より低抵抗な電極を形成する目的で透明電極の上にバス電極を形成してもよい。ここで、放電のための複数の電極を形成したガラス基板上に、透明誘電体層をスクリーン印刷法などにより形成することもできる。その場合の透明誘電体材料は特に限定されないが、PbO、B2O3、SiO2を含有する誘電体材料が適用される。
【0047】
放電のための複数の電極を形成したガラス基板上に、放電によるイオン衝撃からの保護を目的としてMgO膜を形成することも好ましい。形成手法は、電子ビーム蒸着法、プラズマ蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、Mgターゲットの反応性スパッタ法、イオンビームスパッタ法、CVD法などが適用できる。
【0048】
次に背面板の作製方法について述べる。
背面板に用いるガラス基板は、前面板の説明において述べたものと同様のものを用いることができる。
【0049】
ガラス基板上に、スクリーン印刷や感光性導電ペーストを用いたフォトリソグラフィー法によって、銀やアルミ、銅、金、ニッケル、酸化錫、ITO等を含むアドレス電極層をパターン形成する。さらに、放電の安定化のためにアドレス電極層の上に誘電体層を設けても良い。
【0050】
アドレス電極層を形成したガラス基板上に、セルを仕切るための隔壁をサンドブラスト法、型転写法、フォトリソグラフィー法等によって形成する。本発明に使用する隔壁の材料や隔壁の形状としては特に限定されない。
【0051】
さらに、電極層および隔壁を形成したガラス基板上に、蛍光体と有機バインダーを必須成分とする蛍光体ペーストを用いて所定のセル位置に蛍光体層を形成する工程について説明する。
【0052】
蛍光体ペーストの塗布は、スクリーン印刷法、ノズル法、インクジェット法だけでなく、さらに感光成分を添加したペーストを用いた感光性ペースト法によって行うことが望ましい。これらの手法では、大面積に均一に蛍光体層を形成しやすいからである。
【0053】
最後に、有機バイダーであるセルロース系樹脂が十分脱バインダーする温度で焼成する。この工程により、溶媒とともにセルロース系樹脂は失われるので、その後、完成されるプラズマディスプレイ乃至はその部材はセルロース系樹脂を有しないものである。なお、蛍光体は、分解、変質(但し、焼成により若干酸素組成の変化有り)、溶融などが殆どなく、ほぼ、蛍光体ペーストに含まれていた時と同様の特性(蛍光体表層のAl組成、アモルファス平均厚み、Eu組成、アルミン酸塩化学量論組成式など)を有するものである。青色蛍光体として、BaMgAl10O17:Euを用いた場合では、焼成による輝度劣化が生じやすいので、500℃以下程度が好ましい。
【0054】
このようにして、背面板を作製することができる。
【0055】
(封着工程)
前面板と背面板を封着用のガラスフリットを用いて封着する工程(封着工程)について述べる。
【0056】
本発明に使用する封着用のガラスフリット材料は特に限定されないが、例えば、PbO、B2O3等を含有する低融点ガラスとセラミックスフィラーからなる複合系フリットや、PbO、ZnO、B2O3等からなる結晶性フリットを好ましく用いることができる。各組成については、使用するガラス基板の熱膨張係数や封着後の工程での最高処理温度などによって適宜選択することができる。
【0057】
前面板と背面板の間の所定の位置に封着用ペーストを塗布する方法としては、封着用ガラスフリットをペースト化し、背面板と前面板のどちらか一方、または双方に塗布することができる。封着用ペーストに用いるポリマーおよび溶媒は特に限定されない。例えば、ポリマーとしてはポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂、溶媒としてα−ターピネオール等である。塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷法、ディスペンサー法などを用いることができる。
【0058】
次に、塗布した封着ペースト中の樹脂や溶媒などを除去する目的で、封着ペーストを塗布した部材を焼成する。焼成温度、保持時間は使用する樹脂や溶媒により適宜選択できるが、樹脂が脱バインダーする温度で一定時間保持し、その後封着用ペーストが流動性を示さない範囲でさらに温度を上げるのがよい。
【0059】
さらに、封着ペーストが塗布・焼成された部材とそれと対になる部材を貼り合わせ、ガラスフリットの軟化点以上の温度で一定時間保持することで前面板と背面板を封着する。封着温度や保持時間は、ガラスフリットの材料により適宜設定することができる。塗布した封着フリットペーストの脱バインダーと前面板と背面板の封着をそれぞれ行う場合について記したが、封着フリットの脱バインダー後、室温まで冷却せずにあらかじめ前面板と背面板を所定の位置に配しておき、ガラスフリットの軟化点以上まで加熱・保持することで封着を行い、後述する真空排気工程を行ってもよい。
【0060】
(真空排気・放電ガス封入工程)
封着した前面板と背面板内部を真空排気し、放電ガスを封入する工程について説明する。封着した前面板と背面板内部を真空排気し、10-2Pa程度まで到達したら、封着された前面板と背面板の加熱を始める。加熱温度は、封着フリットが流動性を示さない範囲であれば特に限定されず、前面板上にMgO膜を形成した場合では通常200〜380℃程度がよい。また、保持時間も特に限定されず、大型のプラズマディスプレイになれば保持時間は長くなるが、42インチ程度のプラズマディスプレイでも10時間以下程度である。
【0061】
排気しながら所定の加熱を行った後、排気を続けながら室温付近まで封着した前面板と背面板を冷却し、しかる後、放電ガスを67kPa程度まで導入し、封止を行う。放電ガスは特に限定されず、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンからなる混合ガスが使用できる。
【0062】
最後に、駆動回路を実装してプラズマディスプレイを完成する。
【0063】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を用いて具体的に説明する。但し、本発明はこれに限定されない。
(測定方法)
(1)組成分析
Ba、Mg、Al、Euの組成分析は、蛍光体粉末約0.1gを炭酸ナトリウムとホウ酸で融解し、純水で加熱溶解した後、硝酸で酸性として純水で定容とし、この溶液を希硝酸で希釈した後、セイコーインスツルメンツ株式会社製シーケンシャル型ICP発光分析装置(SPS4000)を用いて、各元素について含有量を求め相対値を算出した。この分析で得られる組成は蛍光体粉末の平均組成である。酸素の分析は不活性ガス融解−赤外線吸収法で行った。
(2)表層の組成分析
透過電子顕微鏡(TEM)用のサンプルをフォーカスイオンビーム(FIB)で作製し、エネルギー分散型分光法を用いて微小領域におけるAl、Euなどの組成分析を行った(ナノEDS、Vacuum Generator社製HB501)。測定に用いた電子ビーム径は、5nmである。測定は内部と表層についてそれぞれ5ヶ所について行った。内部は蛍光体粉末の重心から半径0.5μmの円の内側を、そして、表層は蛍光体粉末の最表面から深さ5nmのところを分析した。この手法は軽元素である酸素を精度よく分析することは容易ではないので、ナノEDS分析による内部の5ヶ所平均Al組成(inAlEDS)が上記のICP分析値および酸素分析の値から算出したAl組成(AlICP)に合致するように補正を行い、その補正値と、ナノEDS分析による表層のAl組成の平均値(exAlEDS)より、補正された表層Al組成((AlICP/inAlEDS)*exAlEDS)を算出した。(ナノEDSで求めたAl組成はICPで求めた値よりも1〜3%程度小さめになりやすい)
(3)アモルファス層の厚み測定
上記、TEM用サンプルを200kVの高分解能透過電子顕微鏡で蛍光体の表層付近の格子像を観察した。明瞭な格子縞が観察されない場合は、アモルファス層であるとした。
(4)フィルターろ過特性
ステンレス製のメッシュ(#500、10mmφ)を用いて、蛍光体ペーストをろ過し、メッシュからペーストが吐出しなくなるまでろ過し、その時の積算ろかペースト量を測定した。後述の比較例1の場合のろ過量を100とした。
(5)ペーストの連続塗布特性
(5a)印刷法
蛍光体ペーストをスクリーン印刷法により150回ガラス基板に塗布し、印刷後のスクリーン版を300倍のデジタルマイクロスコープで観察し、スクリーン版のメッシュ部分に蛍光体ペーストとは異なる高粘度な異物が付着しているかを調べた。
(5b)ノズル塗布法
150μmφの孔を20個設けたノズルから蛍光体ペーストを連続で1kg吐出した後のノズル孔内部およびその付近に異物が付着しているかを調べた。
【0064】
ペーストの連続塗布特性における前述の評価方法(5a)、(5b)の判定基準はともに、それぞれ以下の通りである。即ち、(5a)または(5b)の評価方法を実施後、高粘度な異物(繊維くずなどは除く)がスクリーン版開口部またはノズル孔部の1個所以上に付着し、完全に塞いでいる場合を“×”、
各開口部や各孔において50%程度付着している場合を“△”、
ほとんど付着していない場合を“○”
と判定した。
【0065】
以下の実施例1〜10と比較例1〜7では、蛍光体ペーストの加工・処理に際しての取扱性(フィルター濾過性や連続塗布特性)を評価した。
【0066】
(実施例1)
炭酸バリウム、酸化ユーロピウム、塩基性炭酸マグネシウム水和物、γ−アルミナの原料を組成にあわせて計量し、フラックスのフッ化アルミニウムを焼成後の蛍光体に対して3%重量添加しボールミルにて十分混合した。その後、窒素/水素(95%/5%)混合の還元雰囲気中で最高温度1430℃で昇温降下時間を含めて12時間掛けて1次焼成を行った。次に、焼成分を粉砕、分級し再度上記と同一条件で2次焼成を行った。次に、ジルコニアセラミックスによるビーズミルを1時間行い、焼成後の蛍光体粒子を分散させた。そして分級、洗浄、乾燥の、各処理を行い、Ba0.9MgAl10O17:Eu0.1組成の青色蛍光体を作製した。表層および内部のAl組成、アモルファス層の厚みは、表1に示す通りであった。
【0067】
次に、上記蛍光体粉末を80重量%、バインダー樹脂としてエチルセルロース樹脂(固形分)を20重量%とした。溶媒としてはベンジルアルコールをエチルセルロース樹脂の5倍量とした。溶媒はあらかじめエチルセルロースを溶解した溶液を作製しておき、最後に蛍光体を添加した後、プロペラ攪拌および3本ローラーにて混練・分散し蛍光体ペーストを得た。
【0068】
この蛍光体ペーストの評価結果は、表1の通りとなった。実際に、電極、誘電体層、隔壁が形成された42インチ背面板にスクリーン印刷法で蛍光体ペーストを塗布したが、繊維くず以外のスクリーン版の詰り、蛍光体ペーストの供給ポートの詰りなどは発生せず、安定して連続的に製造することができた。ノズル塗布法でも同様に安定した製造ができた。
【0069】
(実施例2〜4、実施例7、8、10)
蛍光体粉末作製時の焼成温度、フラックス量、ビーズミル時間、蛍光体平均組成を表1の通りとした以外は、実施例1と同様に蛍光体粉末および蛍光体ペーストを作製した。
【0070】
(実施例5、6)
蛍光体粉末作製時の条件を表1の通りとし、蛍光体作成後に実施例5では、希薄硝酸溶液により、そして実施例6では、希薄水酸化ナトリウムにより蛍光体表面をエッチング処理した以外は、実施例1と同様に蛍光体および蛍光体ペーストを作製した。
【0071】
(実施例9)
蛍光体粉末作製時の条件を表1の通りとし、蛍光体ペースト作製時に分散剤として非イオン性の有機化合物の分散剤を1%添加した以外は、実施例1と同様に蛍光体および蛍光体ペーストを作製した。
【0072】
(比較例1〜6)
蛍光体粉末作製時の条件を表1の通りとした以外は、実施例1と同様に蛍光体および蛍光体ペーストを作製した。
【0073】
(比較例7)
蛍光体粉末作製時の条件を表1の通りとした以外は、実施例9と同様に蛍光体および蛍光体ペーストを作製した。
【0074】
実施例1〜10、比較例1〜7の表層及び内部のAl組成、フィルターろ過特性評価結果、連続塗布特性結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1の結果をみると、実施例1〜10では、比較例1〜7に比べてフィルターろ過性が良好で印刷法やノズル塗布法において安定に生産できることがわかる。特に、実施例1や実施例9、10が好適である。一方、比較例では、フィルターろ過性が悪く、安定にペーストの生産し難く、また印刷法やノズル法においても詰りが観察されており、安定に生産し難い。
【0077】
以下の実施例11と比較例8では、実際にプラズマディスプレイまで作製して評価した。
【0078】
(実施例11)
まず前面板を作製した。
旭硝子社製”PD200”42インチのガラス基板上に、ITOを用いて、ピッチ1290μm、線幅470μmのスキャン電極を形成した。また、その基板上に感光性銀ペースト法で電極幅120μm、厚み3μmのバス電極を形成した。次に、透明誘電体ガラスペーストをスクリーン印刷により、表示部分のバス電極が覆われるように30μmの厚みで前面誘電体を形成した。
誘電体を形成した基板上に電子ビーム蒸着により保護膜として、厚み0.5μmの酸化マグネシウム層を形成して前面板を作製した。
【0079】
次に、背面板を作製した。
“PD200”42インチガラス基板上に感光性銀ペースト用いて、幅200μm、厚み3μm、ピッチ430μmのアドレス電極を形成した。
次いで誘電体層をスクリーン印刷法により20μm形成した。次いで感光性隔壁ペーストを用いたフォトリソグラフィー法により幅60μm、高さ120μm隔壁を形成した。次いでスクリーン印刷法を用いて実施例4で作製したものと同様の蛍光体ペーストを用いて蛍光体層を隔壁上に隔壁底部と側部とも約20μmとなるように形成した。赤色、緑色蛍光体ペーストは蛍光体粉末に赤:(Y,Gd,Eu)BO3、緑:(Zn,Mn)2SiO4組成のものを用い、実施例1の蛍光体ペーストと同様な方法で作製したものを用いた。かくして背面板を作製した。同様に背面板を連続的に300枚作製を行ったが、問題なく安定に実施できた。
【0080】
前面板と背面板をマトリクス表示駆動が可能になるように合わせて、封着用ガラスフリットで封着し350℃に加熱しながら真空排気した後、Xe5%−Neガスを67kPa封入して、プラズマディスプレイを作製した。
【0081】
このパネルの発光特性は、初期が輝度500cd/m2で、また面内の輝度ばらつきも5%以内で良好であった。
【0082】
(比較例8)
青色蛍光体ペーストを比較例4のものを用いた以外は実施例11と背面板を作成した。実施例11同様に背面板を連続的に生産したが、120枚生産した頃に蛍光体の厚みむらが発生した。原因はスクリーン版の一部に高粘度な異物が付着していることで、蛍光体塗布量が変化したためであった。
【0083】
さらに実施例11と同様に前面板およびパネルを作製した。このパネルの発光特性は、初期輝度が505cd/m2であったが、部分的に輝度のムラがあることがわかった。
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば、スクリーン版やノズル孔詰りなどが発生を抑制できるので、欠陥や発光特性のばらつきの少ないディスプレイを安定に生産できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を説明するためのプラズマディスプレイの断面概略図。
Claims (5)
- 2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩を有する蛍光体であって、最表面から深さ5nmの位置で分析される表層のAl組成が38at%以下、前記アルミン酸塩の化学量論組成式がMMgAl 10 O 17 であり、かつ該化学量論組成式中の元素Mが少なくともBa、Sr、およびCaからなる群から選ばれる少なくとも1種からなるものである蛍光体。
- 表面におけるアモルファスの平均厚みが15nm以下である請求項1に記載の蛍光体。
- 前記アルミン酸塩の前記2価のユーロピウムの賦活量が前記元素Mに対して5〜20at%である請求項1または2に記載の蛍光体。
- 蛍光体と有機バインダーを必須成分とする蛍光体ペーストであって、該蛍光体が請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光体であり、かつ該有機バインダーはセルロース系樹脂よりなるものであることを特徴とする蛍光体ペースト。
- 該蛍光体を70〜95重量%、該セルロース系樹脂を5〜30重量%の重量割合にて配合してなるものである請求項4に記載の蛍光体ペースト。
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