JP4659118B2 - プラズマディスプレイパネルとその製造方法 - Google Patents
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Description
図10は、一般的なAC型PDPにおける放電単位である放電セル構造の模式的組図である。当図10に示すPDP1xはフロントパネル2及びバックパネル9を貼り合わせてなる。フロントパネル2は、フロントパネルガラス3の片面に、走査電極5及び維持電極4を一対とする表示電極対6が複数対にわたり配設され、当該表示電極対6を覆うように、誘電体層7および保護層8が順次積層されてなる。走査電極5、維持電極4は、それぞれ透明電極51、41及びバスライン52、42を積層して構成される。
表面層8は、上記誘電体層7及び表示電極対6をプラズマ放電のイオン衝突より保護すると共に、二次電子を効率よく放出し、放電開始電圧を低下させる役目をなす。通常、当該表面層8は二次電子放出特性、耐スパッタ性、光学透明性に優れる酸化マグネシウム(MgO)を用いて、真空蒸着法(特許文献1、2)や印刷法(特許文献3)で厚み0.5μm〜1μm程度で成膜される。なお表面層8と同様の構成は、誘電体層7及び表示電極対6を保護する他に、二次電子放出特性の確保を目的とした保護層として設けられることもある。
ところで、PDPで画像表示するためには、1フィールドの映像を複数のサブフィールド(S.F.)に分割する階調表現方式(例えばフィールド内時分割表示方式)が用いられる。
「放電遅れ」とは駆動パルスの幅を狭くして高速駆動を行う際に、パルスの立ち上がりから遅れて放電が行われる現象を指す。「放電遅れ」が顕著になると、印加されたパルス幅内で放電が終了する確率が低くなり、本来点灯すべきセルに書き込み等ができずに点灯不良を生じる。高精細なセル構造において、放電遅れの問題は高速駆動を行う場合に特に顕在化するおそれがあり、早急な対策が望まれている。
例えば特許文献3には、気相酸化法で作製されたMgO微粒子(粉体)が用いられているが、気相酸化法で作成された粒子は粒径に比較的バラツキがあり、粒径の大きい粒子に対し、多数の微細粒子が含まれている。このような多数の微細粒子には、実質的に放電遅れの防止・抑制に貢献しない微粒子が含まれている。従って、PDPにおいては、比較的多くのMgO微粒子を分散させて用いないと、実用的な放電遅れの抑制効果が得られない。
これらの問題を解決するために、分級によって粒径の小さいMgO微粒子を取り除く方法が提案されている(特許文献4)。しかしながら、その場合は分級工程という新たな工程を行う必要が生じ、工程数が増えて製造効率を低下させるほか、大がかりな分級装置を要する問題がある。さらに、分級工程後に使用できない無駄なMgO材料が発生するなど、実際上、製造コスト面での各種問題が発生する。
本発明は以上の課題に鑑みなされたものであって、保護層における放電特性を改善することにより放電遅れの発生を抑制し、高精細セル構造でも優れた画像表示性能を発揮することが可能なPDPとその製造方法を提供することを目的とする。
ここで前記誘電体層の放電空間側には、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)の群より選ばれた少なくとも一つの金属酸化物を含む表面層が設けられ、前記酸化マグネシウム微粒子群は、前記表面層の放電空間側に配設された構成とすることもできる。
ここで前記「表面近傍の領域」とは、酸化マグネシウム微粒子の表面から内部に向かって、少なくとも4nm以内の領域を指す。
さらに前記ハロゲン原子には、具体的にはフッ素原子或いは塩素原子を用いることができる。
さらに本発明は、電極と誘電体層とが配設された第1基板に対し、前記誘電体層の表面に酸化マグネシウム微粒子を配設する酸化マグネシウム微粒子配設工程と、第1基板と第2基板とを対向配置させて封着する工程とを有するラズマディスプレイパネルの製造方法であって、酸化マグネシウム微粒子配設工程では、酸化マグネシウム前駆体に対して、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、塩化ナトリウムの中の1種以上を焼結助剤として添加してなる材料を、焼成することで得た酸化マグネシウム微粒子を用いるものとした。
また、本発明では、表面層或いは誘電体層に対するMgO微粒子層の被覆率をそれほど高めなくても、上記効果が純分に得られる。従って、MgO微粒子層の厚みを十分に薄くでき、その分、フロントパネルの適度な可視透過率が確保される。これにより、放電遅れの抑制効果と相まって、優れた画像表示性能が発揮されるようになっている。
<実施の形態1>
(PDPの構成例)
図1は、本発明の実施の形態1に係るPDP1のxz平面に沿った模式的な断面図である。当該PDP1は保護層周辺の構成を除き、全体的には従来構成(前述の図10)と同様である。なお、図1では説明のため、表面層8の表面に配設されるMgO微粒子層16を実際よりも大きく、模式的に表している。
フロントパネル2の基板となるフロントパネルガラス3には、その一方の主面に所定の放電ギャップ(75μm)をおいて配設された一対の表示電極対6(走査電極5、維持電極4)がx軸方向を長手方向としてy軸方向に複数対にわたり形成されている。各表示電極対6は、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極51、41(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン52、42(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン52、42によって透明電極51、41のシート抵抗が下げられる。
表示電極対6を配設したフロントパネルガラス3には、その主面全体にわたり、酸化鉛(PbO)または酸化ビスマス(Bi2O3)または酸化燐(PO4)を主成分とする低融点ガラス(厚み約30μm)の誘電体層7が、スクリーン印刷法等によって形成されている。
誘電体層7の放電空間側の面には、膜厚約1μmの表面層8と、当該表面層8の表面にMgO微粒子層16が配設されている。この表面層8及びMgO微粒子層16の組み合わせにより、誘電体層7に対する保護層17が構成されている。
隣接する2つの隔壁13の側面とその間の誘電体層12の面上には、カラー表示のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各々に対応する蛍光体層14が形成されている。各種組成として、青色蛍光体(B)には、既知のBAM:Eu、赤色蛍光体(R)には(Y,Gd)BO3:EuやY2O3:Eu等、緑色蛍光体(G)にはZn2SiO4:Mn、YBO3:Tbおよび(Y,Gd)BO3:Tb等が利用できる。
フロントパネル2とバックパネル9は、データ電極11と表示電極対6の互いの長手方向が直交するように対向配置され、両パネル2、9の外周縁部がガラスフリットで封着されている。この両パネル2、9間にはHe、Xe、Ne等を含む不活性ガス成分からなる放電ガスが所定圧力で封入される。
PDP1は、各ドライバ111〜113を含む公知の駆動回路(不図示)によって、駆動時には各表示電極対6の間隙に数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加される。これにより任意の放電セル内で放電が発生し、励起Xe原子による波長147nm主体の共鳴線と励起Xe分子による波長172nm主体の分子線を含む紫外線(図1の点線及び矢印)が蛍光体層14に照射される。蛍光体層14は励起されて可視光発光する。そして当該可視光はフロントパネル2を透過して前面に発光される。
ここで図3は、フィールド中の第m番目のサブフィールドにおける駆動波形例である。図3が示すように、各サブフィールドには、初期化期間、アドレス期間、維持期間、消去期間がそれぞれ割り当てられる。
(保護層17の構成)
PDP1における保護層17は、誘電体層7に積層された表面層8と、その上に配設されたMgO微粒子層16で構成されている。
MgO微粒子層16は、比較的に均一な粒径分布を持ち、MgO微粒子16aを平面的に分散・凝結させて構成される。MgO微粒子16aは、ハロゲン原子(フッ素原子)を表面近傍において一定範囲で含む構成を有している。その態様は、例えば一部のハロゲン原子が酸素原子と置換し、これによりMgOの結晶構造中において部分的にMgF2の結晶構造が混在しているものと考えられる。このようなハロゲン原子は、各々のMgO微粒子16aにおいて、少なくとも表面から表面近傍の領域、具体的には表面から粒子内部に向けて深さ4nm以内の範囲を主として含まれている。
なお、ここではハロゲン原子としてフッ素原子を用いる例を示したが、この他に塩素原子など、ハロゲン属の各種原子を用いることも可能である。
本発明の実施の形態2のPDP1aについて、実施の形態1との差異を中心に説明する。
図4は、実施の形態2に係るPDPの構成を示す断面図である。
PDP1aの特徴は、表面層8を用いず、誘電体層7の上に直接MgO微粒子層16を配設し、これを保護層とした点にある。MgO微粒子層16をなすMgO微粒子16aは、実施の形態1と同様である。
<PDPの製造方法>
次に、各実施の形態におけるPDP1、1aの製造方法例について説明する。PDP1、1aとの違いは、主として保護層付近の構成にあり、その他の製造工程については共通する。
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるバックパネルガラス10の表面上に、スクリーン印刷法によりAgを主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ数μm(例えば約5μm)のデータ電極11を形成する。データ電極11の電極材料としては、Ag、Al、Ni、Pt、Cr、Cu、Pd等の金属や、各種金属の炭化物や窒化物等の導電性セラミックスなどの材料やこれらの組み合わせ、あるいはそれらを積層して形成される積層電極も必要に応じて使用できる。
続いて、データ電極11を形成したバックパネルガラス10の面全体にわたって鉛系あるいは非鉛系の低融点ガラスやSiO2材料からなるガラスペーストを厚さ約20〜30μmで塗布して焼成し、誘電体層12を形成する。
隔壁13が形成できたら、隔壁13の壁面と、隔壁13間で露出している誘電体層12の表面に、AC型PDPで通常使用される赤色(R)蛍光体、緑色(G)蛍光体、青色(B)蛍光体のいずれかを含む蛍光インクを塗布する。これを乾燥・焼成し、それぞれ蛍光体層14とする。
赤色蛍光体;(Y、Gd)BO3:Eu、Y2O3:Eu
緑色蛍光体;Zn2SiO4:Mn、YBO3:Tbおよび(Y,Gd)BO3:Tb
青色蛍光体;BaMgAl10O17:Eu
各蛍光体材料は、平均粒径2.0μmのものが好適である。
(フロントパネル2の作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるフロントパネルガラス3の面上に、表示電極対6を作製する。ここでは印刷法によって表示電極対6を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法、ブレードコート法等で形成することができる。
一方、Ag粉末と有機ビヒクルに感光性樹脂(光分解性樹脂)を混合してなる感光性ペーストを調整し、これを前記透明電極41、51の上に重ねて塗布し、形成するバスラインのパターンに合わせた開口部を有するマスクで覆う。そして、当該マスク上から露光し、現像工程を経て、590〜600℃程度の焼成温度で焼成する。これにより透明電極41、51上に最終厚みが数μmのバスライン42、52が形成される。このフォトマスク法によれば、従来は100μmの線幅が限界とされていたスクリーン印刷法に比べ、30μm程度の線幅までバスライン42、52を細線化することが可能である。バスライン42、52の金属材料としては、Agの他にPt、Au、Al、Ni、Cr、また酸化錫、酸化インジウム等を用いることができる。バスライン42、52は上記方法以外にも、蒸着法、スパッタリング法などで電極材料を成膜したのち、エッチング処理して形成することも可能である。
(ハロゲン原子を含むMgO微粒子16aの製造方法)
MgO微粒子層16に用いられるハロゲン原子を含むMgO微粒子16aは、酸化マグネシウムの前駆体と、焼結助剤を混合してなる材料を、焼成することによって得る。
焼結助剤としては、フッ化マグネシウム(MgF2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化リチウム(LiF)、塩化ナトリウム(NaCl)等のハロゲン化合物の内の1種以上を用いることができる。なお、焼成後の残留元素としてマグネシウム以外の元素が含まれる場合、元素種によっては放電特性に好ましくない影響を及ぼす恐れがある。従って、良好な放電特性の確保のためにはマグネシウムハロゲン化物が好適である。このように焼結助剤は適宜使い分けることができる。
湿式混合を行う場合は、溶媒として、水以外に、エチルアルコール、メチルアルコール、iso―プロピルアルコール、n―プロピルアルコール、n―ブトキシアルコール、sec―ブトキシアルコール、tert―ブトキシアルコール等のアルコールや、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、2―メトキシ酢酸エチル等の酢酸エステルや、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトンを用いることができ、特に限定されるものではない。
MgO前駆体と焼結助剤の混合粉体は、600℃〜1800℃、好ましくは900℃〜1500℃で15分〜10時間焼成することによりMgO微粒子16aが得られる。
ここで、一般に気相酸化法で作製されるMgO微粒子は、粒径に比較的バラツキがあるため、良好かつ均一な放電特性を得るためには一定の粒径範囲の粒子を選別する分級工程が必要である。
なお、本焼成及び仮焼成を含め、焼成工程において焼成炉中の雰囲気において過度のガスの流通があると、焼結助剤として添加されているハロゲン成分が流通ガスとともに焼去されてしまい、最終生成物である酸化マグネシウム微粒子中のハロゲン濃度が低下する場合がある。このようなハロゲン濃度の低下は、MgO微粒子表面のハロゲン濃度の調整の妨げとなる。従って、このようなハロゲン成分の焼去を防止する対策を行うことが望ましい。例えば材料成分を高純度のアルミナ製るつぼの中に入れ、蓋をする等の適度な密閉対策を施した上で、焼成炉中で焼成工程を施すことが好適である。
MgO微粒子の表面近傍におけるハロゲン元素の定量性については、X線光電子分光法(XPS)により測定が可能である。XPSは、試料表面に波長既知のX線(例えば、Al Kα線、エネルギー値1487eV)を照射し、試料から飛び出す光電子のエネルギーを測定する表面分析手法であり、試料表面約4nm程度の情報を選択的に得ることができる。各元素それぞれに相対感度因子が明らかになっており、XPSによる試料表面の金属元素組成比の測定は確立した技術と言える。
ここで前述したように、本発明のMgO微粒子が持つ二次電子放出特性は、主として粒子表面から深さ数百pmにわたる非常に浅い領域の特性によって実現されるため、XPSを用いて当該粒子の特性を分析する手法は最適であると言える。
(保護層形成工程)
次に、バックパネル上に保護層を形成する。ここで実施の形態1の保護層17を形成する場合には、誘電体層7上に、MgO材料を用いて真空蒸着法やイオンプレーティング法等の公知の薄膜形成法により、最終厚み約1μmになるように表面層8を形成する。
次に、形成した表面層8の表面上に、上記作製したハロゲン原子を含むMgO微粒子16aを、スプレー法や静電塗布法、スリットコート法、ドクターブレード法、ダイコート法で平面的に凝結させるように塗布する。当該塗布用法は限定するものではなく、前記いずれかの方法またはこれ以外の方法でもよい。製造コストを考慮すると、厚膜形成技術として工業的に広く用いられているスクリーン印刷法を用いるのが一般的である。当該印刷法は、使用するインクの固形分比率やスクリーンメッシュの仕様により、容易に塗着量を制御できる点でも優れている。
この被覆率は、具体的に以下の式で表すことができる。
被覆率(%)=(MgO微粒子層16の成膜前のフロントパネル直線透過光量)/(MgO微粒子層16の成膜後のフロントパネル直線透過光量)×100
MgO微粒子16aを表面層8に塗布した後は、溶媒を乾燥・除去して各粒子を定着させる。これによりMgO微粒子層16が配設され、実施の形態1の保護層17が完成する。
以上の手順で保護層を形成すると、フロントパネル2が完成する。
(PDPの完成)
作製したフロントパネル2とバックパネル9を、データ電極11と表示電極対6とが直交するように配置し、フロントパネル2とバックパネル9の外周縁部を封着領域として、封着部材(フリットガラス)を用いて貼り合わせる。その後、放電空間15の内部を高真空(1.0×10−4Pa)程度に排気し、大気や不純物ガスを取り除く。そして当該内部に所定の圧力(通常6.7×104〜1.0×105Pa程度)でNe−Xe系やHe−Ne−Xe系、Ne−Xe−Ar系等のXe混合ガスを放電ガスとして封入する。混合ガス中のXe濃度は15%〜100%とする。
なお、上記方法例ではフロントパネルガラス3およびバックパネルガラス10をソーダライムガラスからなるものとしたが、これは材料の一例として挙げたものであって、これ以外の材料で構成してもよい。
(測定評価試験)
次に、本発明の実施例を比較例とともに作製して、本発明の性能評価試験を行った。なお、当然ながら実施例の構成及び性能評価試験の方法は、本発明を何ら限定するものではない。
比較例1〜4、実施例1〜14の作成方法としては、MgO前駆体として純度99.99%、平均粒子径3μmの水酸化マグネシウムを用いた。実施例1〜14には、さらに焼結助剤として純度99.9%のフッ化マグネシウムを用いた。これらを所望の組成に秤量し、遊星型ボールミル及びジルコニアビーズを用い、純水中で湿式混合した。この混合物を乾燥した後、乳鉢で解砕し、高純度のアルミナるつぼ中で焼成した。
以上の合成条件の一覧表として表1を示す。
次に、予めフロントパネルガラスに形成された表面層の上に、スクリーン印刷法を用いてMgO微粒子層を成膜した。その際、前記被覆率が4.5%になるようにMgO微粒子と溶剤、樹脂の混合比を調整し、三本ロールミルを用いて、スクリーン印刷用インクとした。成膜後は、100℃で1時間乾燥した後、500℃で3時間焼成して有機成分を焼去した。
完成したPDPに対して、放電遅れ時間を評価した。具体的方法として、各PDPにおける任意の1画素に対して、データパルスおよび走査パルスを繰り返し印加するごとに、パルスを印加してから放電が発生するまでの時間(放電遅れ時間)を100回測定し、測定した放電遅れ時間の最大値と最小値の平均を算出した。遅れ時間は、放電に伴う蛍光体の発光を光センサーモジュールにより受光し、印加したパルス波形と受光信号波形をデジタルオシロスコープで観察した。
測定値は、比較例1の放電遅れ時間を100とした場合の値で規格化した。その際、各PDPの放電遅れ時間を相対値Aとした。この相対値Aが小さいほど、放電遅れ時間が短いことが示される。この評価に関し、ここでは放電遅れ時間の相対値Aが40%以下に収まった場合に、放電遅れの有効な低減効果があると判断した。さらに放電遅れ時間の相対値Aが20%以下であれば、極めて有効な低減効果があると判断した。
<表2>
表2から明らかなように、比較例1に対して、本発明の実施例1〜14では、放電遅れ時間の相対値が40%以下にまで低減されている。さらにこの中で、実施例1〜12では前記相対値が20.3%以下にまで低減されており、より顕著な効果が発揮されているのが確認できる。
従って、表2に示された結果によれば、放電遅れの低減効果は、Mg量に対するF量が6.12atm%以上21.99atm%以下の範囲が好適であると言える。また、より好ましく範囲は、6.12atm%以上19.30atm%以下の範囲であるといえる。
一方、比較例1〜4では、いずれもMg量に対するF量が1.00atm%未満の構成であり、このうち比較例2、4においてはある程度の放電遅れの改善が見られる。しかしながら、比較例3においては、このような放電遅れの改善効果は見られない。この結果から、Mg量に対するF量が1.00atm%未満であれば、多少の放電遅れの改善を得られることもあるが、安定した放電特性は得られないことが伺える。
被覆率は約0.1%〜30%の範囲で変化させ、上記放電特性の評価を行うものとした。また、比較例5としてMgO微粒子層を具備しないPDPを作製し、評価に供した。さらに、比較例6、7、8として、気相合成により作製された市販のMgO微粒子で構成されるMgO微粒子層を具備するPDP(被覆率約17%〜75%)を作製し、評価に供した。
その結果を表3に示す。
<表3>
一方、気相酸化法で作成されたMgOを用いた比較例6〜8では、例えば比較例6において被覆率が5.8%の場合に放電遅れの相対値が83.33%となり、放電遅れの改善効果が十分に得られない。なお、比較例8のように、被覆率が75%に至ると放電遅れ時間は十分に短縮されるが、このような構成は以下の別の問題が生じるので好ましくない。
ここで本発明では、ハロゲン原子を含む酸化マグネシウム微粒子で形成した酸化マグネシウム微粒子層を利用することにより、比較的小さい被覆率でありながら放電遅れの良好な防止効果が得られる。従って、本発明の構成では、放電遅れ時間が比較例と同様か、若干低めではあっても、被覆率が低く抑えられることにより良好な可視光発光量が確保され、結果として放電遅れ時間の低減と良好な輝度の両立により、優れた画像表示性能が発揮できる点で、大きな優位性があると言える。
2 フロントパネル
3 フロントパネルガラス
4 サステイン電極
5 スキャン電極
6 表示電極対
7、12 誘電体層
8 表面層
9 バックパネル
10 バックパネルガラス
11 データ(アドレス)電極
13 隔壁
14 蛍光体層
15 放電空間
16a MgO微粒子
16 ハロゲン原子を含むMgO微粒子からなるMgO微粒子層
17 保護層
Claims (9)
- 電極と誘電体層とが配設された第1基板が、放電空間を介して第2基板と対向配置され、当該第1及び第2両基板の周囲が封着されたプラズマディスプレイパネルであって、
前記第1基板の表面には、前記放電空間に臨むように、ハロゲン原子を含む酸化マグネシウム微粒子からなる酸化マグネシウム微粒子群が配設され、
前記酸化マグネシウム微粒子中において、前記ハロゲン原子は前記マグネシウム原子に対し、6.12atm%以上21.99atm%以下の割合で含まれている
プラズマディスプレイパネル。 - 前記ハロゲン原子のマグネシウム原子に対する割合が、6.12atm%以上19.30atm%以下の範囲である
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記誘電体層の放電空間側には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウムの群より選ばれた少なくとも一つの金属酸化物を含む表面層が設けられ、前記酸化マグネシウム微粒子群は、前記表面層の放電空間側に配設されている
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記ハロゲン原子は、少なくとも前記酸化マグネシウム微粒子の表面から当該表面近傍の深さ領域に含まれている
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記表面近傍は、酸化マグネシウム微粒子の表面から内部に向かって、4nm以内の領域である
請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記ハロゲン原子は、フッ素原子或いは塩素原子である
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 酸化マグネシウム微粒子群は、誘電体層に対して1.0%以上31.5%以下の投影面積比で被覆されている
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 電極と誘電体層とが配設された第1基板に対し、前記誘電体層の表面に酸化マグネシウム微粒子を配設する酸化マグネシウム微粒子配設工程と、第1基板と第2基板とを対向配置させて封着する工程とを有するラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
酸化マグネシウム微粒子配設工程で用いる酸化マグネシウム微粒子は、
酸化マグネシウム前駆体に対して、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、塩化ナトリウムの中の1種以上を焼結助剤として添加してなる材料を焼成して得られるものであり、且つ、
前記酸化マグネシウム微粒子中において、前記ハロゲン原子は、前記マグネシウム原子に対し、6.12atm%以上21.99atm%以下の割合で含まれている
プラズマディスプレイパネルの製造方法。 - 電極と誘電体層とが配設された第1基板に対し、前記誘電体層の表面に表面層を形成する表面層形成工程と、第1基板と第2基板とを対向配置させて封着する工程とを有するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
表面層形成工程と封着工程との間において、表面層の表面に酸化マグネシウム微粒子を配設する酸化マグネシウム微粒子配設工程を有し、
表面層形成工程では、誘電体層の表面に対し、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウムの群より選ばれた少なくとも一つの金属酸化物を含む材料で表面層を形成し、
酸化マグネシウム微粒子配設工程で用いる酸化マグネシウム微粒子は、
酸化マグネシウム前駆体に対して、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、塩化ナトリウムの中の1種以上を焼結助剤として添加してなる材料を、焼成して得られるものであり、且つ、
前記酸化マグネシウム微粒子中において、前記ハロゲン原子は、前記マグネシウム原子に対し、6.12atm%以上21.99atm%以下の割合で含まれている
プラズマディスプレイパネルの製造方法。
Applications Claiming Priority (5)
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