JP2009187942A - プラズマディスプレイパネルとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】大気や不純物ガスによる保護膜の変質に対する良好な耐久性を有し、これにより優れた二次電子放出特性を長期的に発揮させることにより、良好に消費電力の低減を図ることが可能なPDPとその製造方法を提供する。
【解決手段】フロントパネルにおいて、保護膜8をSr及びZrを含む酸化物の組成で且つアモルファス構造体の部分を有するように構成し、さらに、当該酸化物中のSr量が、当該酸化物中のZr量よりも多く設定する。この保護膜8が持つ良好な二次電子放出特性により放電開始電圧Vfを低減させ、PDP1の消費電力の低減を図る。また、PDP1の製造工程の搬送時や封着工程の焼成中において、保護膜が大気や排気ガスに触れて炭酸化物に変質するのを防止し、PDP1のライフ特性を改善する。
【選択図】図1
【解決手段】フロントパネルにおいて、保護膜8をSr及びZrを含む酸化物の組成で且つアモルファス構造体の部分を有するように構成し、さらに、当該酸化物中のSr量が、当該酸化物中のZr量よりも多く設定する。この保護膜8が持つ良好な二次電子放出特性により放電開始電圧Vfを低減させ、PDP1の消費電力の低減を図る。また、PDP1の製造工程の搬送時や封着工程の焼成中において、保護膜が大気や排気ガスに触れて炭酸化物に変質するのを防止し、PDP1のライフ特性を改善する。
【選択図】図1
Description
本発明は、気体放電からの放射を利用したプラズマディスプレイパネル(以下『PDP』と呼ぶ)とその製造方法に関し、特に保護膜の特性の改良技術に関する。
近年、ハイビジョンやHD−TVをはじめとする高精細、高品位で大画面のテレビに期待が高まっている中で、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel、以下、「PDP」という。)表示装置は、放電発光現象を利用したディスプレイであり、大型で薄型軽量を実現できるカラー表示デバイスとして注目されている。
PDPは、その電極構造から、放電空間に表示電極が露出している直流型(DC型)と、表示電極が誘電体層で覆われた交流型(AC型)とに大別される。
PDPは、その電極構造から、放電空間に表示電極が露出している直流型(DC型)と、表示電極が誘電体層で覆われた交流型(AC型)とに大別される。
図13は、一般的なAC型PDPの放電単位である放電セル(3電極構造)の模式的組図である。当図13に示すPDP1xは、フロントパネル2及びバックパネル9を貼り合わせてなる。フロントパネル2は、フロントパネルガラス3の片面に、ストライプ状の走査電極5及び維持電極4を一対とする表示電極対6が複数対にわたり配設され、当該表示電極対6を覆うように、誘電体層7および保護膜8が順次積層されてなる。走査電極5、維持電極4は、それぞれ幅広の透明電極51、41及び幅狭のバスライン52、42を積層して構成される。
誘電体層7は、ガラス軟化点が550℃〜600℃程度の範囲の低融点ガラスから形成され、AC型PDP特有の電流制限機能を有する。
保護膜8は、上記誘電体層7及び表示電極対6をプラズマ放電のイオン衝突より保護する機能と共に、駆動時に2次電子を効率よく放出する機能(2次電子放出特性)を持つ。さらに、壁電荷を蓄積することにより、保護膜を設けない場合に比べてより放電開始電圧を低下させる機能を発揮する。保護膜は通常、2次電子放出特性、耐スパッタ性、光学透明性等に優れる酸化マグネシウム(MgO)を用いて、真空蒸着法や印刷法で厚み0.5μm〜1μm程度で成膜される。
保護膜8は、上記誘電体層7及び表示電極対6をプラズマ放電のイオン衝突より保護する機能と共に、駆動時に2次電子を効率よく放出する機能(2次電子放出特性)を持つ。さらに、壁電荷を蓄積することにより、保護膜を設けない場合に比べてより放電開始電圧を低下させる機能を発揮する。保護膜は通常、2次電子放出特性、耐スパッタ性、光学透明性等に優れる酸化マグネシウム(MgO)を用いて、真空蒸着法や印刷法で厚み0.5μm〜1μm程度で成膜される。
他方、バックパネル9は、バックパネルガラス10上に画像データを書き込むための複数のデータ(アドレス)電極11が前記フロントパネル2の表示電極対6と直交方向で交差するように併設される。バックパネルガラス10には、データ電極11を覆うように低融点ガラスからなる誘電体層12が配設される。誘電体層12において隣接する放電セル(図示省略)との境界上には、低融点ガラスからなる所定の高さの隔壁(リブ)13が放電空間15を区画するように、井桁状等のパターン部1231、1232を組み合わせて形成される。誘電体層12表面と隔壁13の側面には、R、G、B各色の蛍光体インクが塗布及び焼成されてなる蛍光体層14(蛍光体層14R、14G、14B)が形成されている。
フロントパネル2とバックパネル9は、表示電極対6とデータ電極11とが放電空間15をおいて互いに直交するようにマトリクス状に配置され、その各周囲を低融点ガラスで封着される。この際に内部封止された放電空間15には、大気や不純物ガスを排気した後、放電ガスとしてXe−Ne系あるいはXe−He系等の希ガスが約数十kPaの圧力で封入される。以上でPDP1xが構成される。PDP1xには、さらに駆動回路及び制御回路が周辺に接続され、PDP表示装置が完成する。
PDPで画像表示するためには、1フィールドの映像を複数のサブフィールド(S.F.)に分割する階調表現方式(例えばフィールド内時分割表示方式)が用いられる。
ところで、近年の電化製品には消費電力の低減が望まれており、PDPについても同様の要求がある。特に高精細なPDPにおいては、放電セルが微細化されて放電セル数も増大し、書込放電の確実性を上げるために動作電圧が高くなるので、この問題の解決が望まれている。
ところで、近年の電化製品には消費電力の低減が望まれており、PDPについても同様の要求がある。特に高精細なPDPにおいては、放電セルが微細化されて放電セル数も増大し、書込放電の確実性を上げるために動作電圧が高くなるので、この問題の解決が望まれている。
この問題に対し、従来では保護膜の構成について色々な試みがなされている。
例えば特許文献1には、MgOよりも二次電子放出係数の高い材料として、MgOよりもエネルギー準位におけるバンドギャップの比較的小さいCaOやSrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物、或いはこれらの複合材料を保護膜に用いたPDPが開示されている。
例えば特許文献1には、MgOよりも二次電子放出係数の高い材料として、MgOよりもエネルギー準位におけるバンドギャップの比較的小さいCaOやSrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物、或いはこれらの複合材料を保護膜に用いたPDPが開示されている。
また、特許文献2には、MgOにCeO2を添加させることにより、アモルファス構造のMgOで保護膜を構成する技術が開示されている。これによれば、添加剤であるCeO2により形成されたアモルファス状のMgO保護膜の表面が不純物ガスと反応して炭酸化するのを防止できるとされている。
特開2005−19391号公報
特開2000−164143号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、保護膜に用いた材料が大気中の炭素物質に触れると速やかに反応し、炭酸化物に変質してしまう不安定性を有している。具体的にはPDPの製造工程において、搬送時や封着工程の大気焼成時にパネルが大気や排気ガスに触れると、大気中のCO成分と炭酸化反応を生じ、CaCO3、SrCO3、BaCO3等の炭酸化物が生成し、保護膜がその表面領域を中心に変質しうる。このような炭酸化物を含む保護膜では、正常な二次電子放出特性を発揮することができないため、PDPの消費電力の有効な低減が望めないという問題がある。
また、特許文献2記載の技術においても、CeO2の添加によりアモルファス化されたMgO層は、本願発明者らの確認実験により、実際には十分な低電圧駆動は図れないことが分かっている。このため、より有効な低電圧化への対策が要求されている。
以上のように、PDPの保護膜については、未だ解決すべき余地が存在する。
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、大気や不純物ガスによる保護膜の変質に対する良好な耐久性を有し、これにより優れた二次電子放出特性を長期的に発揮させることにより、良好に消費電力の低減を図ることが可能なPDPとその製造方法を提供することにある。
以上のように、PDPの保護膜については、未だ解決すべき余地が存在する。
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、大気や不純物ガスによる保護膜の変質に対する良好な耐久性を有し、これにより優れた二次電子放出特性を長期的に発揮させることにより、良好に消費電力の低減を図ることが可能なPDPとその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は、電極と誘電体層とが形成された第1基板が、放電空間を介して第2基板と対向配置され、第1基板及び第2基板の周囲が封着されたプラズマディスプレイパネルであって、前記誘電体層の表面には保護膜が配設され、当該保護膜は、Sr及びZrを含む酸化物のアモルファス構造体を有するように構成され、且つ、前記酸化物中のSrとZrの元素組成比Sr/Zrが1より大きい構成とした。
ここで、前記保護膜の全体を前記酸化物のアモルファス構造体で構成することもできる。
また、前記保護膜は、前記アモルファス構造体に加え、さらに前記酸化物の微結晶体を含んで構成することもできる。
また、Sr及びZrを含む酸化物は、組成式がSrxZr1−xOで表され、0.016≦1−x<0.487の関係が成立する構成とすることもできる。
また、前記保護膜は、前記アモルファス構造体に加え、さらに前記酸化物の微結晶体を含んで構成することもできる。
また、Sr及びZrを含む酸化物は、組成式がSrxZr1−xOで表され、0.016≦1−x<0.487の関係が成立する構成とすることもできる。
或いはSr及びZrを含む酸化物は、組成式がSrxZr1−xOで表され、0.026≦1−x<0.487の関係が成立する構成とすることも可能である。
また本発明は、電極が配設された前記基板の表面に誘電体層を形成する誘電体形成工程と、前記誘電体層の表面に保護膜を形成する保護膜形成工程とを経るプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、保護膜形成工程では、SrZrO3、又は、SrOとZrO2を含むターゲット材料を加熱してスパッタリングさせることで、誘電体表面に、Sr及びZrを含む酸化物のアモルファス構造体を有して構成され、且つ、前記酸化物中のSrとZrの元素組成比Sr/Zrが1より大きい保護膜を形成するものとした。
また本発明は、電極が配設された前記基板の表面に誘電体層を形成する誘電体形成工程と、前記誘電体層の表面に保護膜を形成する保護膜形成工程とを経るプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、保護膜形成工程では、SrZrO3、又は、SrOとZrO2を含むターゲット材料を加熱してスパッタリングさせることで、誘電体表面に、Sr及びZrを含む酸化物のアモルファス構造体を有して構成され、且つ、前記酸化物中のSrとZrの元素組成比Sr/Zrが1より大きい保護膜を形成するものとした。
ここで、前記ターゲット材料として、粉末状のターゲット材料を用いることもできる。
また、前記スパッタリングは、前記ターゲット材料を断熱性容器に入れて行うこともできる。
さらに、前記保護膜形成工程では、基板を非加熱状態で実施することもできる。
また、前記スパッタリングは、前記ターゲット材料を断熱性容器に入れて行うこともできる。
さらに、前記保護膜形成工程では、基板を非加熱状態で実施することもできる。
以上の構成を有する本発明では、PDPの保護膜が、Sr及びZrを含む酸化物のアモルファス構造体を有するように構成されるとともに、前記酸化物中のSrとZrの元素組成比(Sr/Zr)が1より大きくなるように調整されている。この組成の保護膜は、従来の結晶構造またはアモルファス構造のいずれのMgOからなる保護膜に比べても良好な二次電子放出係数を有する特徴を持つ。また、この本発明の保護膜は上記構成によって、CaO,BaO,SrO等のアルカリ土類金属酸化物に比べ、炭酸化反応に対して十分な耐久性を有する構成となっている。
従って本発明のPDPでは、その製造工程において、たとえ保護膜が大気や排気ガスに触れたとしても、保護膜の表面が炭酸化物に変質するのを防止できる。よって、製造工程の歩留まりを改善し、PDPのライフ特性の向上を図ることができる。
また、上記のように本発明では保護膜が豊富な二次電子放出特性を発揮できるので、駆動時にはPDPの放電開始電圧を効果的に低下させ、その消費電力を良好に低減できる効果も期待できる。しかも、その効果は優れた耐久性を有する保護膜を備えることにより、使用開始後も長期的に発揮されることとなる。
また、上記のように本発明では保護膜が豊富な二次電子放出特性を発揮できるので、駆動時にはPDPの放電開始電圧を効果的に低下させ、その消費電力を良好に低減できる効果も期待できる。しかも、その効果は優れた耐久性を有する保護膜を備えることにより、使用開始後も長期的に発揮されることとなる。
このように本発明では、保護膜の変質を防止してPDPのライフ特性を向上させる効果とともに、PDPの消費電力の低減効果を高度に両立させたものである。
なお、本発明において言及する「アモルファス」とは、TEM写真において微細結晶とは区別できる程度の非結晶状態を指す。また、X線回折の測定図において、特定の結晶面を示す明確なピークが一つも検出されない場合の膜の状態を指す。
なお、本発明において言及する「アモルファス」とは、TEM写真において微細結晶とは区別できる程度の非結晶状態を指す。また、X線回折の測定図において、特定の結晶面を示す明確なピークが一つも検出されない場合の膜の状態を指す。
以下に本発明の実施の形態を説明するが、当然ながら本発明はこれらの実施形式に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(PDPの構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係るPDP1のxz平面に沿った模式的な断面図である。当該PDP1は保護膜周辺の構成を除き、全体的には従来構成(前述の図13)のPDPと同様である。
(PDPの構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係るPDP1のxz平面に沿った模式的な断面図である。当該PDP1は保護膜周辺の構成を除き、全体的には従来構成(前述の図13)のPDPと同様である。
PDP1は、ここでは42インチクラスのNTSC仕様例のAC型としているが、本発明は当然ながらXGAやSXGA等、この他の仕様例に適用してもよい。HD(High Definition)以上の解像度を有する高精細なPDPとしては、例えば、次の規格を例示できる。 パネルサイズが37、42、50インチの各サイズの場合、同順に1024×720(画素数)、1024×768(画素数)、1366×768(画素数)に設定できる。そのほか、当該HDパネルよりもさらに高解像度のパネルを含めることができる。HD以上の解像度を有するパネルとしては、1920×1080(画素数)を備えるフルHDパネル、4000×2000(画素数)のSHDパネルを含めることができる。
図1に示すように、PDP1の構成は互いに主面を対向させて配設された第一基板(バックパネル9)および第二基板(フロントパネル2)に大別される。
フロントパネル2の基板となるフロントパネルガラス3には、その一方の主面に所定の放電ギャップ(75μm)をおいて配設された一対の表示電極対6(走査電極5、維持電極4)が複数対にわたり形成されている。各表示電極対6は、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極51、41(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン52、42(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン52、42によって透明電極51、41のシート抵抗が下げられる。
フロントパネル2の基板となるフロントパネルガラス3には、その一方の主面に所定の放電ギャップ(75μm)をおいて配設された一対の表示電極対6(走査電極5、維持電極4)が複数対にわたり形成されている。各表示電極対6は、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極51、41(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン52、42(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン52、42によって透明電極51、41のシート抵抗が下げられる。
ここで「厚膜」とは、導電性材料を含むペースト等を塗布した後に焼成して形成する各種厚膜法により形成される膜をいう。また、「薄膜」とは、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子線蒸着法等を含む、真空プロセスを用いた各種薄膜法により形成される膜をいう。
表示電極対6を配設したフロントパネルガラス3には、その主面全体にわたり、酸化鉛(PbO)または酸化ビスマス(Bi2O3)または酸化燐(PO4)を主成分とする低融点ガラス(厚み35μm)の誘電体層7が、スクリーン印刷法等によって形成されている。
表示電極対6を配設したフロントパネルガラス3には、その主面全体にわたり、酸化鉛(PbO)または酸化ビスマス(Bi2O3)または酸化燐(PO4)を主成分とする低融点ガラス(厚み35μm)の誘電体層7が、スクリーン印刷法等によって形成されている。
誘電体層7は、AC型PDP特有の電流制限機能を有し、DC型PDPに比べて長寿命化を実現する要素になっている。
誘電体層7の表面には、放電空間15に望むように保護膜8が配設される。保護膜8は放電時のイオン衝撃から誘電体層7を保護し、放電開始電圧を低減させる目的で配される薄膜である。耐スパッタ性及び2次電子放出係数γに優れる材料からなり、誘電体層7上に公知の薄膜形成法を用いて厚さ約1μmの範囲で成膜される。
誘電体層7の表面には、放電空間15に望むように保護膜8が配設される。保護膜8は放電時のイオン衝撃から誘電体層7を保護し、放電開始電圧を低減させる目的で配される薄膜である。耐スパッタ性及び2次電子放出係数γに優れる材料からなり、誘電体層7上に公知の薄膜形成法を用いて厚さ約1μmの範囲で成膜される。
ここで、本実施の形態1の主たる特徴は、保護膜8が、Sr及びZrを含む酸化物のアモルファス構造体を有するように構成され、さらに当該酸化物中のSr量が、当該酸化物中のZr量よりも多くなるように設定された(すなわち、前記酸化物中のSrとZrの元素組成比Sr/Zrが1より大きい)点にある。
具体的には、保護膜8は組成式がSrxZr1−xOで表される酸化物で構成され、前記酸化物のアモルファス構造体又はこれ加えて前記酸化物の微結晶体を含む構造を有し、且つ、0.016≦1−x<0.487の関係が成立する構成である。なお、この数値範囲については、さらに0.026≦1−x<0.487の範囲とするのが一層好適である。一例として、組成式はSr0.9Zr0.1Oとすることができる。
具体的には、保護膜8は組成式がSrxZr1−xOで表される酸化物で構成され、前記酸化物のアモルファス構造体又はこれ加えて前記酸化物の微結晶体を含む構造を有し、且つ、0.016≦1−x<0.487の関係が成立する構成である。なお、この数値範囲については、さらに0.026≦1−x<0.487の範囲とするのが一層好適である。一例として、組成式はSr0.9Zr0.1Oとすることができる。
保護膜8は、理想的には誘電体層7の全面にわたり、前記アモルファス構造体で構成されていることが、パネル全体にわたり均一な保護膜8の特性を発揮させる上で好適である。ここで「全面にわたり」および「全体にわたり」とは、それぞれ保護膜8の全体の構成を必ずしも指すものではなく、PDP1の製造上において生じうる多少の公差をも含む、実質的な構成を指すものと定義する。
また、保護膜8は上記の通り、前記アモルファス構造体と、前記酸化物の微結晶体で構成することも可能である。この場合は前記アモルファス構造体のみで構成する場合と、比較的同等の特性を得ることができる。
PDP1では、このような保護膜8を備えることで、MgOに比べて二次電子放出特性が改善され、効果的に放電開始電圧Vfを低減させ、PDP1の消費電力の低減を図れるようになっている。また、上記構造を持つ保護膜8は、PDP1の製造工程の搬送時や封着工程の焼成中において、パネルが大気や排気ガスに触れて、炭酸化物に変質するのが防止され、良好な耐久性が付与されている。このため、保護膜の変質を効果的に解決し、PDP1のライフ特性を改善できるようになっている。
なお、このような効果が得られる理由としては、アモルファス構造を持つ保護膜表面は、結晶構造を持つ保護膜表面よりも平滑性に優れることから、表面積を低減でき、これによって大気や排気ガスに曝される表面積を低減できることが一因であると考えられる。
PDP1では、このような保護膜8を備えることで、MgOに比べて二次電子放出特性が改善され、効果的に放電開始電圧Vfを低減させ、PDP1の消費電力の低減を図れるようになっている。また、上記構造を持つ保護膜8は、PDP1の製造工程の搬送時や封着工程の焼成中において、パネルが大気や排気ガスに触れて、炭酸化物に変質するのが防止され、良好な耐久性が付与されている。このため、保護膜の変質を効果的に解決し、PDP1のライフ特性を改善できるようになっている。
なお、このような効果が得られる理由としては、アモルファス構造を持つ保護膜表面は、結晶構造を持つ保護膜表面よりも平滑性に優れることから、表面積を低減でき、これによって大気や排気ガスに曝される表面積を低減できることが一因であると考えられる。
ここで図4は、当該保護膜8の構成を示すTEM写真(拡大率164万倍)である。図4に示されるように、保護膜8には格子縞は見えず、結晶構造が存在していないのが確認できる。このように保護膜8は非晶質構造であるため、全体がアモルファス構造体で構成されていると考えられる。
次に示す図5は、このような前記酸化物の微結晶体が、アモルファス構造体とともに存在する保護膜8の別の構成を示すTEM写真(拡大率164万倍)である。当図では、アモルファス構造体に混じって、一定方向に配列された微結晶体が複数の領域にわたり存在するのが確認できる。この微結晶体は、例えば10nmから50nm程度のサイズを持つ微細な結晶粒子である。
次に示す図5は、このような前記酸化物の微結晶体が、アモルファス構造体とともに存在する保護膜8の別の構成を示すTEM写真(拡大率164万倍)である。当図では、アモルファス構造体に混じって、一定方向に配列された微結晶体が複数の領域にわたり存在するのが確認できる。この微結晶体は、例えば10nmから50nm程度のサイズを持つ微細な結晶粒子である。
なお、Sr及びZrを含む酸化物からなる保護膜がアモルファス構造を取り得る理由は、十分には解明されていない。しかし、保護膜の成膜中にSr元素とは結晶構造や価数の異なるZr元素がSrOの結晶中に入り込むことにより、SrOの結晶成長を阻害するため、結果的に非結晶(アモルファス)構造が形成されるものと考えられる。
バックパネル9の基板となるバックパネルガラス10には、その一方の主面に、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等のいずれかからなるデータ電極11が、幅100μmで、x方向を長手方向としてy方向に一定間隔毎(360μm)でストライプ状に並設される。そして、各々のデータ電極11を内包するように、バックパネルガラス9の全面にわたって、厚さ30μmの誘電体層12が配設されている。
バックパネル9の基板となるバックパネルガラス10には、その一方の主面に、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等のいずれかからなるデータ電極11が、幅100μmで、x方向を長手方向としてy方向に一定間隔毎(360μm)でストライプ状に並設される。そして、各々のデータ電極11を内包するように、バックパネルガラス9の全面にわたって、厚さ30μmの誘電体層12が配設されている。
誘電体層12の上には、さらに隣接するデータ電極11の間隙に合わせて井桁状の隔壁13(高さ約110μm、幅40μm)が配設され、放電セルが区画されることで誤放電や光学的クロストークの発生を防ぐ役割をしている。
隣接する2つの隔壁13の側面とその間の誘電体層12の面上には、カラー表示のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれかの色に対応する蛍光体層14が形成されている。各種蛍光体の組成は、青色蛍光体(B)には、既知のBAM:Eu、赤色蛍光体(R)には(Y,Gd)BO3:EuやY2O3:Eu等、緑色蛍光体(G)にはZn2SiO4:Mn、YBO3:Tbおよび(Y,Gd)BO3:Tb等が利用できる。
隣接する2つの隔壁13の側面とその間の誘電体層12の面上には、カラー表示のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれかの色に対応する蛍光体層14が形成されている。各種蛍光体の組成は、青色蛍光体(B)には、既知のBAM:Eu、赤色蛍光体(R)には(Y,Gd)BO3:EuやY2O3:Eu等、緑色蛍光体(G)にはZn2SiO4:Mn、YBO3:Tbおよび(Y,Gd)BO3:Tb等が利用できる。
なお、誘電体層12は必須ではなく、データ電極11を直接蛍光体層14で内包するようにしてもよい。
フロントパネル2とバックパネル9は、データ電極11と表示電極対6の互いの長手方向が直交するように対向配置され、両パネル2、9の外周縁部がガラスフリットで封着されている。この両パネル2、9間にはHe、Xe、Ne等を含む不活性ガス成分からなる放電ガスが所定圧力で封入される。
フロントパネル2とバックパネル9は、データ電極11と表示電極対6の互いの長手方向が直交するように対向配置され、両パネル2、9の外周縁部がガラスフリットで封着されている。この両パネル2、9間にはHe、Xe、Ne等を含む不活性ガス成分からなる放電ガスが所定圧力で封入される。
隔壁13の間は放電空間15であり、隣り合う一対の表示電極対6と1本のデータ電極11が放電空間15を挟んで交叉する領域が、画像表示にかかる放電セル(「サブピクセル」とも言う)に対応する。放電セルピッチはx方向が675μm、y方向が300μmである。隣り合うRGBの各色に対応する3つの放電セルで1画素(675μm×900μm)が構成される。
走査電極5、維持電極4及びデータ電極11の各々には、図2に示すようにパネルxy方向端部付近において、駆動回路として走査電極ドライバ111、維持電極ドライバ112、データ電極ドライバ113が電気的に接続される。ここで、維持電極4は一括して維持電極ドライバ112に接続され、各走査電極5と各データ電極11は、それぞれ独立して走査電極ドライバ111或いはデータ電極ドライバ113に接続される。
(PDPの駆動例)
上記構成のPDP1は、駆動時には各ドライバ111〜113を含む公知の駆動回路(不図示)によって、各表示電極対6の間隙に数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加される。これにより任意の放電セル内で放電が発生し、励起Xe原子による波長147nm主体の共鳴線と励起Xe分子による波長172nm主体の分子線を含む紫外線(図1の点線及び矢印)が蛍光体層14に照射される。蛍光体層14は励起されて可視光発光する。そして当該可視光はフロントパネル2を透過して前面に発光される。
上記構成のPDP1は、駆動時には各ドライバ111〜113を含む公知の駆動回路(不図示)によって、各表示電極対6の間隙に数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加される。これにより任意の放電セル内で放電が発生し、励起Xe原子による波長147nm主体の共鳴線と励起Xe分子による波長172nm主体の分子線を含む紫外線(図1の点線及び矢印)が蛍光体層14に照射される。蛍光体層14は励起されて可視光発光する。そして当該可視光はフロントパネル2を透過して前面に発光される。
この駆動方法の一例としては、フィールド内時分割階調表示方式が採られる。当該方式は、表示するフィールドを複数のサブフィールド(S.F.)に分け、各サブフィールドをさらに複数の期間に分ける。1サブフィールドは更に、(1)全放電セルを初期化状態にする初期化期間、(2)各放電セルをアドレスし、各放電セルへ入力データに対応した表示状態を選択・入力していく書込期間、(3)表示状態にある放電セルを表示発光させる維持期間、(4)維持放電により形成された壁電荷を消去する消去期間という4つの期間に分割されてなる。
各サブフィールドでは、初期化期間で画面全体の壁電荷を初期化パルスでリセットした後、書込期間で点灯すべき放電セルのみに壁電荷を蓄積させる書込放電を行い、その後の放電維持期間ですべての放電セルに対して一斉に交流電圧(維持電圧)を印加することによって一定時間放電維持することで発光表示する。
ここで図3は、フィールド中の第m番目のサブフィールドにおける駆動波形例である。図3が示すように、各サブフィールドには、初期化期間、アドレス期間、維持期間、消去期間がそれぞれ割り当てられる。
ここで図3は、フィールド中の第m番目のサブフィールドにおける駆動波形例である。図3が示すように、各サブフィールドには、初期化期間、アドレス期間、維持期間、消去期間がそれぞれ割り当てられる。
初期化期間とは、それ以前の放電セルの点灯による影響(蓄積された壁電荷による影響)を防ぐため、画面全体の壁電荷の消去(初期化放電)を行う期間である。図3に示す駆動波形例では、走査電極5にデータ電極11および維持電極4に比べて高い電圧(初期化パルス)を印加し放電セル内の気体を放電させる。それによって発生した電荷はデータ電極11、走査電極5および維持電極4間の電位差を打ち消すように放電セルの壁面に蓄積されるので、走査電極5付近の保護膜8及びMgO微粒子群16の表面には、負の電荷が壁電荷として蓄積される。またデータ電極11付近の蛍光体層14表面および維持電極4付近の保護膜8及びMgO微粒子群16の表面には、正の電荷が壁電荷として蓄積される。この壁電荷により、走査電極5―データ電極11間、走査電極5―維持電極4間に所定の値の壁電位が生じる。
アドレス期間(書込期間)は、サブフィールドに分割された画像信号に基づいて選択された放電セルのアドレッシング(点灯/不点灯の設定)を行う期間である。当該期間では、放電セルを点灯させる場合には走査電極5にデータ電極11および維持電極4に比べ低い電圧(走査パルス)を印加させる。すなわち、走査電極5―データ電極11には前記壁電位と同方向に電圧を印加させると共に走査電極5―維持電極4間に壁電位と同方向にデータパルスを印加させ、アドレス放電(書込放電))を生じさせる。これにより蛍光体層14表面、維持電極4付近の保護膜8及びMgO微粒子群16の表面には、負の電荷が蓄積され、走査電極5付近の保護膜8及びMgO微粒子群16の表面には、正の電荷が壁電荷として蓄積される。以上で維持電極4―走査電極5間には所定の値の壁電位が生じる。
維持期間は、階調に応じた輝度を確保するために、書込放電により設定された点灯状態を拡大して放電を維持する期間である。ここでは、上記壁電荷が存在する放電セルで、一対の走査電極5および維持電極4の各々に維持放電のための電圧パルス(例えば約200Vの矩形波電圧)を互いに異なる位相で印加する。これにより表示状態が書き込まれた放電セルに対し電圧極性の変化毎にパルス放電を発生せしめる。
この維持放電により、放電空間15における励起Xe原子からは147nmの共鳴線が放射され、励起Xe分子からは173nm主体の分子線が放射される。この共鳴線・分子線が蛍光体層14表面に照射され、可視光発光による表示発光がなされる。そして、RGB各色ごとのサブフィールド単位の組み合わせにより、多色・多階調表示がなされる。なお、保護膜8に壁電荷が書き込まれていない非放電セルでは、維持放電が発生せず表示状態は黒表示となる。
消去期間では、走査電極5に漸減型の消去パルスを印加し、これによって壁電荷を消去させる。
<PDPの製造方法>
次に、実施の形態におけるPDP1の製造方法について例示する。
(フロントパネル2の作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるフロントパネルガラス3の面上に、表示電極対6を作製する。ここでは印刷法によって表示電極対6を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法、ブレードコート法等で形成することができる。
<PDPの製造方法>
次に、実施の形態におけるPDP1の製造方法について例示する。
(フロントパネル2の作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるフロントパネルガラス3の面上に、表示電極対6を作製する。ここでは印刷法によって表示電極対6を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法、ブレードコート法等で形成することができる。
まず、ITO、SnO2、ZnO等の透明電極材料を最終厚み約100nmで、ストライプ等所定のパターンでフロントパネルガラス上に塗布し、乾燥させる。これにより透明電極41、51が作製される。
一方、Ag粉末と有機ビヒクルに感光性樹脂(光分解性樹脂)を混合してなる感光性ペーストを調整し、これを前記透明電極41、51の上に重ねて塗布し、形成するバスラインのパターンに合わせた開口部を有するマスクで覆う。そして、当該マスク上から露光し、現像工程を経て、590〜600℃程度の焼成温度で焼成する。これにより透明電極41、51上に最終厚みが数μmのバスライン42、52が形成される。このフォトマスク法によれば、従来は100μmの線幅が限界とされていたスクリーン印刷法に比べ、30μm程度の線幅までバスライン42、52を細線化することが可能である。バスライン42、52の金属材料としては、Agの他にPt、Au、Al、Ni、Cr、また酸化錫、酸化インジウム等を用いることができる。バスライン42、52は上記方法以外にも、蒸着法、スパッタリング法などで電極材料を成膜したのち、エッチング処理して形成することも可能である。
一方、Ag粉末と有機ビヒクルに感光性樹脂(光分解性樹脂)を混合してなる感光性ペーストを調整し、これを前記透明電極41、51の上に重ねて塗布し、形成するバスラインのパターンに合わせた開口部を有するマスクで覆う。そして、当該マスク上から露光し、現像工程を経て、590〜600℃程度の焼成温度で焼成する。これにより透明電極41、51上に最終厚みが数μmのバスライン42、52が形成される。このフォトマスク法によれば、従来は100μmの線幅が限界とされていたスクリーン印刷法に比べ、30μm程度の線幅までバスライン42、52を細線化することが可能である。バスライン42、52の金属材料としては、Agの他にPt、Au、Al、Ni、Cr、また酸化錫、酸化インジウム等を用いることができる。バスライン42、52は上記方法以外にも、蒸着法、スパッタリング法などで電極材料を成膜したのち、エッチング処理して形成することも可能である。
次に、表示電極対6の上から、軟化点が550℃〜600℃の鉛系あるいは非鉛系の低融点ガラスやSiO2材料粉末とブチルカルビトールアセテート等からなる有機バインダーを混合したペーストを塗布する。そして550℃〜650℃程度で焼成し、最終厚みが膜厚数μm〜数十μmの誘電体層7を形成する。
次に、誘電体層7の表面に保護膜8を形成する。その成膜方法として真空成膜法の一つであるスパッタリング法を実施する。ここで本発明では、以下に示す「ホットカソードスパッタリング法」を実施する。
次に、誘電体層7の表面に保護膜8を形成する。その成膜方法として真空成膜法の一つであるスパッタリング法を実施する。ここで本発明では、以下に示す「ホットカソードスパッタリング法」を実施する。
ターゲット材には、SrZrO3粉末、或いは所定の比率に調整したSrOとZrO2の混合粉末を用意する。SrZrO3粉末を用いると、アモルファス構造体からなる保護膜8が形成され(図4を参照)、SrOとZrO2の混合粉末を用いるとアモルファス構造体と微結晶体からなる保護膜8が形成される(図5を参照)。ここで前記混合粉末を用いる場合には、成膜された保護膜中の酸化物中のSrとZrの元素組成比Sr/Zrが1より大きくなるように、SrOとZrO2の各粉末の混合比率を設定する。この設定としては、例えば前記混合粉末において、ZrO2を4.8mol%の割合で含有させることができる。
なおSrZrO3粉末は、大気や排気ガス等の不純物ガスの吸収量が比較的少ない性質を持つ。従って、SrZrO3粉末をターゲット材料に用いると、炭酸化物等の不純物の少ない保護膜を効果的に成膜できるメリットがある(図9を参照)。
また、粉末状のターゲット材料を用いると、当該材料の加熱を均一に行うことができるので好適である。これらのいずれかのターゲット材料を、スパッタリング装置内の断熱性容器(例えば石英皿)上に敷き詰め、カソード電極上に配置する。そしてスパッタリング装置内を4.0×10−3Pa程度まで減圧して排気し、Arガスを15sccmの流量で装置内にフローし、内圧を8Paに保つ。この状態で、高周波電源の出力を600Wに設定して出力を開始する。放電が立ち上がった後に内圧を8Paから0.3Paまで下げて成膜する(3hr)。この成膜中、ターゲット材料は、減圧下で赤熱するのが目視で確認できる程度(1000度程度の温度)に加熱する。一方、基板側は非加熱状態とする。この加熱を維持しつつ、スパッタリングを行う。
また、粉末状のターゲット材料を用いると、当該材料の加熱を均一に行うことができるので好適である。これらのいずれかのターゲット材料を、スパッタリング装置内の断熱性容器(例えば石英皿)上に敷き詰め、カソード電極上に配置する。そしてスパッタリング装置内を4.0×10−3Pa程度まで減圧して排気し、Arガスを15sccmの流量で装置内にフローし、内圧を8Paに保つ。この状態で、高周波電源の出力を600Wに設定して出力を開始する。放電が立ち上がった後に内圧を8Paから0.3Paまで下げて成膜する(3hr)。この成膜中、ターゲット材料は、減圧下で赤熱するのが目視で確認できる程度(1000度程度の温度)に加熱する。一方、基板側は非加熱状態とする。この加熱を維持しつつ、スパッタリングを行う。
基板側を非加熱とすることで、成膜構造をアモルファス化することができる。アモルファス化させるためには、非加熱でスパッタリングを行う必要がある。なお、ここで言う「非加熱」とは、スパッタリングのために、スパッタリング装置の内部で基板を別途加熱しないことを指す。なお、基板側を加熱すると結晶構造の成膜構造が促進される。
上記設定によって、ターゲット粉末はArのイオン衝突と、断熱性容器中での加熱により相当に高温状態となり、基板の誘電体層表面に昇華して付着する。これにより、アモルファス構造体を含んだ保護膜8が成膜される。
上記設定によって、ターゲット粉末はArのイオン衝突と、断熱性容器中での加熱により相当に高温状態となり、基板の誘電体層表面に昇華して付着する。これにより、アモルファス構造体を含んだ保護膜8が成膜される。
このように保護膜8の成膜にスパッタリング法を用いることで、大画面でも緻密かつ均一な組成の保護膜を形成できる。その結果、使用時における放電中の耐スパッタ性が向上され、ライフ特性の改善を期待できる。
以上でフロントパネル2が作製される。
(バックパネルの作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるバックパネルガラス10の表面上に、スクリーン印刷法によりAgを主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ数μm(例えば約5μm)のデータ電極11を形成する。データ電極11の電極材料としては、Ag、Al、Ni、Pt、Cr、Cu、Pd等の金属や、各種金属の炭化物や窒化物等の導電性セラミックスなどの材料やこれらの組み合わせ、あるいはそれらを積層して形成される積層電極も必要に応じて使用できる。
以上でフロントパネル2が作製される。
(バックパネルの作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるバックパネルガラス10の表面上に、スクリーン印刷法によりAgを主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ数μm(例えば約5μm)のデータ電極11を形成する。データ電極11の電極材料としては、Ag、Al、Ni、Pt、Cr、Cu、Pd等の金属や、各種金属の炭化物や窒化物等の導電性セラミックスなどの材料やこれらの組み合わせ、あるいはそれらを積層して形成される積層電極も必要に応じて使用できる。
ここで、作製予定のPDP1を40インチクラスのNTSC規格もしくはVGA規格とするためには、隣り合う2つのデータ電極11の間隔を0.4mm程℃以下に設定する。
続いて、データ電極11を形成したバックパネルガラス10の面全体にわたって鉛系あるいは非鉛系の低融点ガラスやSiO2材料からなるガラスペーストを厚さ約20〜30μmで塗布して焼成し、誘電体層12を形成する。
次に、誘電体層12面上に所定のパターンで隔壁13を形成する。この隔壁13は、低融点ガラス材料ペーストを塗布し、サンドブラスト法やフォトリソグラフィ法を用い、隣接放電セル(図示省略)との境界周囲を仕切るように、放電セルの複数個の配列を行および列を仕切る井桁形状のパターンで形成する。
続いて、データ電極11を形成したバックパネルガラス10の面全体にわたって鉛系あるいは非鉛系の低融点ガラスやSiO2材料からなるガラスペーストを厚さ約20〜30μmで塗布して焼成し、誘電体層12を形成する。
次に、誘電体層12面上に所定のパターンで隔壁13を形成する。この隔壁13は、低融点ガラス材料ペーストを塗布し、サンドブラスト法やフォトリソグラフィ法を用い、隣接放電セル(図示省略)との境界周囲を仕切るように、放電セルの複数個の配列を行および列を仕切る井桁形状のパターンで形成する。
隔壁13が形成できたら、隔壁13の壁面と、隔壁13間で露出している誘電体層12の表面に赤色(R)蛍光体、緑色(G)蛍光体、青色(B)蛍光体のいずれかの蛍光体層14を作製する。
なお、PDP1cを作製する場合は、MgO微粒子を溶媒に分散させてなる分散液を誘電体層12の表面に塗布し、これを乾燥させてMgO微粒子群16Yを形成しておく。
なお、PDP1cを作製する場合は、MgO微粒子を溶媒に分散させてなる分散液を誘電体層12の表面に塗布し、これを乾燥させてMgO微粒子群16Yを形成しておく。
RGB各色蛍光体には次の組成のものが利用できる。
赤色蛍光体;Y2O3;Eu3+
緑色蛍光体;Zn2SiO4:Mn
青色蛍光体;BaMgAl10O17:Eu2+
蛍光体層の形成方法としては、静電塗布法、スプレー法、スクリーン印刷法等、いずれかの公知の方法が採用できる。
赤色蛍光体;Y2O3;Eu3+
緑色蛍光体;Zn2SiO4:Mn
青色蛍光体;BaMgAl10O17:Eu2+
蛍光体層の形成方法としては、静電塗布法、スプレー法、スクリーン印刷法等、いずれかの公知の方法が採用できる。
このうち静電塗布法を用いる場合は、エチルセルロース、α-ターピネオールをそれぞれ溶媒、溶剤として用い、これに平均粒径2.0μmの蛍光体粉体と粉体とを添加し、サンドミルで混合する。これにより15×10−3Pa・s程度の粘度の蛍光体インクを作製する。この蛍光体インクはサーバー内に投入し、ポンプにて径60μmのノズルから噴射させ、隣接する隔壁間に塗布する。このとき、パネルを隔壁13の長手方向に移動させ、ストライプ状に蛍光体インクを塗布する。塗布終了後は蛍光体インクを500℃で10分間焼成し、溶媒・溶剤を除去する。これによりMgO微粒子群16Xが層中に分散された蛍光体層14が形成される。
また、蛍光体層の表面140にMgO微粒子を配設する場合には、MgO微粒子を溶媒に分散させてなる分散液を作製し、これを静電塗布法、スプレー法、スクリーン印刷法等で散布させた後、乾燥させて定着させることにより形成できる。
(PDPの完成)
作製したフロントパネル2とバックパネル9を、封着用ガラスを用いて貼り合わせる。その後、放電空間15の内部を高真空(1.0×10−4Pa)程度に排気し、大気や不純物ガスを取り除く。そして当該内部に所定の圧力(ここでは66.5kPa〜101kPa)でNe−Xe系やHe−Ne−Xe系、Ne−Xe−Ar系等のXe混合ガスを放電ガスとして封入する。混合ガス中のXe濃度は15%〜100%とする。
(PDPの完成)
作製したフロントパネル2とバックパネル9を、封着用ガラスを用いて貼り合わせる。その後、放電空間15の内部を高真空(1.0×10−4Pa)程度に排気し、大気や不純物ガスを取り除く。そして当該内部に所定の圧力(ここでは66.5kPa〜101kPa)でNe−Xe系やHe−Ne−Xe系、Ne−Xe−Ar系等のXe混合ガスを放電ガスとして封入する。混合ガス中のXe濃度は15%〜100%とする。
以上の工程を経ることにより、PDP1が完成する。
なお、上記方法例ではフロントパネルガラス3およびバックパネルガラス10をソーダライムガラスからなるものとしたが、これは材料の一例として挙げたものであって、これ以外の材料で構成してもよい。
<性能評価実験>
以下、本発明における保護膜の性能について調べるため、各種実験と結果考察を行った。
なお、上記方法例ではフロントパネルガラス3およびバックパネルガラス10をソーダライムガラスからなるものとしたが、これは材料の一例として挙げたものであって、これ以外の材料で構成してもよい。
<性能評価実験>
以下、本発明における保護膜の性能について調べるため、各種実験と結果考察を行った。
(保護膜の構造確認)
ターゲット粉体にSrO粉体を用いてガラス基板上に成膜した比較例の保護膜と、SrZrO3粉体を用いてガラス基板上に成膜した実施例の保護膜(XPSによる表面のZr濃度が2.6%の膜)の各構造をX線回折法(XRD)及び走査型電子顕微鏡(SEM)により確認した。成膜条件は、上記実施の形態中の製造方法における成膜方法と同様にした。
ターゲット粉体にSrO粉体を用いてガラス基板上に成膜した比較例の保護膜と、SrZrO3粉体を用いてガラス基板上に成膜した実施例の保護膜(XPSによる表面のZr濃度が2.6%の膜)の各構造をX線回折法(XRD)及び走査型電子顕微鏡(SEM)により確認した。成膜条件は、上記実施の形態中の製造方法における成膜方法と同様にした。
表1に、本実験での比較例及び実施例の各成膜条件について示す。
比較例の保護膜の結晶性をXRDで調べた結果を図6に示す。
図6に示すグラフでは、横軸の29.96°において生じたピークが(111)面、34.73°において生じたピークが(100)面にそれぞれ対応する。当図に示すように、比較例におけるSrOからなる保護膜では、いくつかの回折ピークが観察され、保護膜が形成されたガラス基板の表面と平行に結晶面(111)及び結晶面(100)が配向していることがわかる。
さらに、比較例の保護膜の構造をSEMを用いて断面観察した。このときの写真(拡大率3万倍)を図11に示す。当図に示すように、比較例のSrO膜の断面にはガラス基板の表面に沿う方向(図面の左右方向)に対して垂直方向に微細な筋が入っており、当該SrO膜はこの垂直方向を長手として結晶成長した柱状結晶の集合体であることが分かる。各々の柱状結晶の大きさは10nm程度とかなり小さいものであり、保護膜中でこれらの結晶が密に集合していることが分かる。
なお、本願発明者らは比較例のSrOだけでなく、CaO、SrO、BaOおよびこれらの混合酸化物においても同様の実験を行った。この場合も膜中組成が結晶化し、柱状構造となることを確認した。また、本願発明者らはスパッタリング法による成膜を実施したが、これらの化合物の特性上、EB蒸着法、イオンプレーティング法での成膜でも同様の結晶構造が得られると推測される。
一方、実施例の保護膜の結晶性をX線解析法で調べた結果を図7に示す。実施の形態に係る保護膜のX線回折の測定結果を示す。当図では、比較例のようにSrOの結晶面(111)あるいは結晶面(100)を示すピークは全く検出されなかった。しかも、図7においてはその他の結晶面を示すピークも全く検出されなかった。
また、実施例についても、比較例と同様にSEMによる断面形状観察も行った。このときの写真(拡大率3万倍)を図12に示す。当図に示すように、実施例の保護膜の断面には、比較例で見られたような垂直方向に延びる微細な筋は存在せず、非常に平滑な表面と断面構造を有していることが分かる。このことから、実施例の保護膜は、比較例のように柱状に成長した結晶の集合体と異なる構造を有し、且つ、その構造がアモルファス構造体であることが確認できる。
また、実施例についても、比較例と同様にSEMによる断面形状観察も行った。このときの写真(拡大率3万倍)を図12に示す。当図に示すように、実施例の保護膜の断面には、比較例で見られたような垂直方向に延びる微細な筋は存在せず、非常に平滑な表面と断面構造を有していることが分かる。このことから、実施例の保護膜は、比較例のように柱状に成長した結晶の集合体と異なる構造を有し、且つ、その構造がアモルファス構造体であることが確認できる。
なお、本発明の保護膜8は、前述したようにアモルファス構造体のみ、又は、これに加えて微結晶体を含むいずれかの構成を取ることができる。これらの各保護膜は、SEMレベルの観察ではいずれも平滑な膜として観察される。しかし、TEMレベルで観察すると、図5に示したように、微結晶体の存在が確認できるようになる。
(保護膜表面及びターゲット粉体の安定性について)
次に、上記した比較例と実施例の保護膜表面の安定性を調べるため、膜表面に含まれる炭酸化量をX線光電子分光法(XPS)に基づいて測定した。比較例及び実施例の各保護膜は、成膜後一定期間、大気中に曝露処理した後、測定用のプレートに配置させ、XPS測定チャンバーに投入した。大気中に曝している間は常に膜表面の炭酸化反応が進行していると予想されるので、サンプル間の条件を揃えるため、上記セッティングに要する大気曝露時間を5分に設定した。
(保護膜表面及びターゲット粉体の安定性について)
次に、上記した比較例と実施例の保護膜表面の安定性を調べるため、膜表面に含まれる炭酸化量をX線光電子分光法(XPS)に基づいて測定した。比較例及び実施例の各保護膜は、成膜後一定期間、大気中に曝露処理した後、測定用のプレートに配置させ、XPS測定チャンバーに投入した。大気中に曝している間は常に膜表面の炭酸化反応が進行していると予想されるので、サンプル間の条件を揃えるため、上記セッティングに要する大気曝露時間を5分に設定した。
XPS測定装置には、ULBAC−PHI社製の「QUANTERA」を使用した。X線源はAl−Kαを用い、モノクロメーターを使用した。中和銃およびイオン銃により絶縁体である実験用試料の中和を行った。測定はSr3d、C1s、O1sに対応するエネルギー領域を30サイクル積算して測定し、得られたスペクトルのピーク面積と感度係数から膜表面における各元素の組成比を求めた。C1sスペクトルピークを290eV付近で検出されるスペクトルピークと285eV付近で検出されるC、CHのスペクトルピークに波形分離してそれぞれの割合を求め、Cの組成比とその中におけるCOの割合の積から膜表面におけるCO量を求めた。このXPSにより求められたCO量によって、膜表面の安定性、すなわち炭酸化の程度を比較した。
比較例及び実施例の測定結果を図8に示す。図中、Zr組成比が“0.0”で示された方が比較例であり、Zr組成比が“2.6”で示された方が実施例である。
当図に示すように、比較例の保護膜のSrO膜表面には、その表面の約16%をCOが占めていることがわかった。このことから、比較例のSrOからなる保護膜は、成膜後のわずかな時間に大気中に曝しただけで、表面が酸化物から炭酸化物に変質し、保護膜として安定性が比較的低い材料であると考えられる。
当図に示すように、比較例の保護膜のSrO膜表面には、その表面の約16%をCOが占めていることがわかった。このことから、比較例のSrOからなる保護膜は、成膜後のわずかな時間に大気中に曝しただけで、表面が酸化物から炭酸化物に変質し、保護膜として安定性が比較的低い材料であると考えられる。
一方、実施例の保護膜では、表面炭酸化の割合は約3%であり、従来のSrOと比較すると、約20%程度しか表面が炭酸化しないことが分かった。
この結果より、実施例は比較例に比べて飛躍的に炭酸化反応を生じにくく、この反応抑制効果により、保護膜として十分な耐久性を有していることが分かった。
このように、実施例の保護膜が比較例の保護膜よりも、炭酸化に対する耐久性が高い原因として、使用したターゲット材料自体の安定性が考えられる。
この結果より、実施例は比較例に比べて飛躍的に炭酸化反応を生じにくく、この反応抑制効果により、保護膜として十分な耐久性を有していることが分かった。
このように、実施例の保護膜が比較例の保護膜よりも、炭酸化に対する耐久性が高い原因として、使用したターゲット材料自体の安定性が考えられる。
次に示す図9は、実施例の成膜に使用したターゲット粉体(SrZrO3)と、比較例として用意したターゲット粉体(SrO粉末)の各表面炭酸化量をXPSにより測定した結果である。
当図に示すように、比較例のSrO粉末は、大気成分に対する安定性が低いため、当該試験実施時点において既に表面の約12.8%が炭酸化していることが分かる。すなわち、スパッタリング装置での成膜はArガス雰囲気中で行うため、成膜開始前にターゲット粉体がすでに炭酸化していると考えられる。従来は、この炭酸化されたターゲット粉末をスパッタすることによって、粉体中のCOやCO2、H2Oなどの不純物ガスが、保護膜中にも含まれるものと推定される。
当図に示すように、比較例のSrO粉末は、大気成分に対する安定性が低いため、当該試験実施時点において既に表面の約12.8%が炭酸化していることが分かる。すなわち、スパッタリング装置での成膜はArガス雰囲気中で行うため、成膜開始前にターゲット粉体がすでに炭酸化していると考えられる。従来は、この炭酸化されたターゲット粉末をスパッタすることによって、粉体中のCOやCO2、H2Oなどの不純物ガスが、保護膜中にも含まれるものと推定される。
なお、当該実験では比較例としてSrO粉末を用いたが、本願発明者らの検討により、CaO粉末、BaO粉末についても同様に相当量の不純物ガスが保護膜中に吸着される結果になることが分かっている。CaO粉末も大気中における安定性が低く、上記と同様の実験で粉末の表面が約13.5%炭酸化するという結果が得られた。
一方、実施例のSrZrO3粉末については、2.8%とSrO粉末に対して低い表面炭酸化量を示した。したがって、このような実施例の当該粉末をスパッタリングすることで、成膜後の保護膜中に当該粉末に起因するCOやCO2、H2Oなどの不純物ガスの混入を飛躍的に低減させることができ、炭酸化が極力排除された保護膜が形成される。
(保護膜表面のZr量等について)
次に、本発明の保護膜において添加するZr元素の膜中濃度の最適条件を調べた。具具体的には、Zr元素の膜表面における濃度が異なる保護膜を持つPDPのサンプルをテストピースとして作製し、各々のサンプルについて、表面の炭酸化量(CO量%)、XRDによる回折格子の有無、放電開始電圧Vf、放電遅れ時間等を調べた。
一方、実施例のSrZrO3粉末については、2.8%とSrO粉末に対して低い表面炭酸化量を示した。したがって、このような実施例の当該粉末をスパッタリングすることで、成膜後の保護膜中に当該粉末に起因するCOやCO2、H2Oなどの不純物ガスの混入を飛躍的に低減させることができ、炭酸化が極力排除された保護膜が形成される。
(保護膜表面のZr量等について)
次に、本発明の保護膜において添加するZr元素の膜中濃度の最適条件を調べた。具具体的には、Zr元素の膜表面における濃度が異なる保護膜を持つPDPのサンプルをテストピースとして作製し、各々のサンプルについて、表面の炭酸化量(CO量%)、XRDによる回折格子の有無、放電開始電圧Vf、放電遅れ時間等を調べた。
各サンプルの成膜は、サンプル毎のターゲット粉末について、上記表1に示す条件に基づいて実施し、誘電体層を形成したガラス基板上に約450nmの膜厚でスパッタ成膜した。
比較例としては、通常のMgO膜(サンプルNo.1)と、ターゲットにMgOとCeO2(30mol%添加)を用いて成膜したアモルファス構造体のMgO膜(サンプルNo.2)を用意した。さらに、上記各実験で用いたSrO膜(サンプルNo.3)も用意した。
比較例としては、通常のMgO膜(サンプルNo.1)と、ターゲットにMgOとCeO2(30mol%添加)を用いて成膜したアモルファス構造体のMgO膜(サンプルNo.2)を用意した。さらに、上記各実験で用いたSrO膜(サンプルNo.3)も用意した。
一方、実施例としては、ターゲット材料にSrZrO3粉末を用い、スパッタ時のターゲットの加熱温度を調節することで、膜表面のZr組成比(Zr/(Sr+Zr))(%)を0.4から61.8の間で変化させた各サンプルを得た(サンプルNo.4〜13)。
各サンプルのセルサイズは42インチSD相当とした。
放電開始電圧Vfの測定は、放電ガス組成をXe15%とし、放電ガスのパネルの内圧を60.0kPaに設定した条件で行った。
各サンプルのセルサイズは42インチSD相当とした。
放電開始電圧Vfの測定は、放電ガス組成をXe15%とし、放電ガスのパネルの内圧を60.0kPaに設定した条件で行った。
評価基準の目標ラインとしては、Vfが250V以下になると駆動回路周りの部材に要求される耐圧性が下がり、コストを大幅に削減できるようになるため、この値を目標値(Vf<250V)に設定した。
これらの各調査結果を表2に示す。
さらに、図10に保護膜の膜表面のZr組成とCO量、並びに放電開始電圧の関係について調べた結果を示す。
これらの各調査結果を表2に示す。
さらに、図10に保護膜の膜表面のZr組成とCO量、並びに放電開始電圧の関係について調べた結果を示す。
まず、表2中の実施例サンプルNo.4〜13に示すように、ターゲット材料として同じSrZrO3粉体を用いても、ターゲット粉末を所定の温度まで十分に加熱したスパッタリング(ホットカソードスパッタリング法)を実施することで、膜表面におけるZr組成比が0.4〜61.8%の範囲で異なる保護膜を形成できる。このホットカソードスパッタリング法は通常のスパッタリング法と異なり、Arのイオン衝突とともにターゲットが加熱され、昇華して基板表面に堆積する。この方法で複数元素を含むターゲット材料を用いれば、各元素は固有の飽和蒸気圧に応じた固有の蒸発速度で基板に到達する。通常のスパッタリング法では、ターゲット粉末をそれほど加熱しないので、ターゲット粉末の組成と略同一の組成を持つ膜が成膜される。これに対してホットカソードスパッタリング法では、上記のようにイオン衝突ともにターゲットの温度(赤熱領域)を変化させることによって、意図的にターゲット粉末とは異なる組成の成膜を可能とするものである。
炭酸化の程度を評価すると、表2に示すように、サンプルNo.3では、保護膜表面の炭酸化の割合が16.48%と最も大きい結果となった。これは、No.3のSrO膜が柱状結晶の集合体と結晶粒界を有する構造であるため、大気中の炭酸ガス等の炭素物質と接触する表面積も比較的大きいことによるものと考えられる。
これに対して、Zr元素を含有するサンプルNo.4〜13では、サンプルNo.3に比べて保護膜表面の炭酸化が効果的に抑制されている。なおサンプルNo.4,5の保護膜表面の炭酸化は、サンプルNo.3の半分程度に低減されているが、これは組成中のZr量が少ないためと考えられる。サンプルNo.4,5の各保護膜は、XRDでは明確な回折ピークが検出されないが、サンプルNo.6〜13に対してアモルファス化の度合いが小さい。このため、これらのサンプルNo.4,5でも炭酸化に対して一定の耐久性は得られるが、アモルファス構造体の部分が小さいので表面積が比較的大きく、その分、サンプルNo6〜13に比べると炭酸化物の量に差が生じたものと考えられる。
これに対して、Zr元素を含有するサンプルNo.4〜13では、サンプルNo.3に比べて保護膜表面の炭酸化が効果的に抑制されている。なおサンプルNo.4,5の保護膜表面の炭酸化は、サンプルNo.3の半分程度に低減されているが、これは組成中のZr量が少ないためと考えられる。サンプルNo.4,5の各保護膜は、XRDでは明確な回折ピークが検出されないが、サンプルNo.6〜13に対してアモルファス化の度合いが小さい。このため、これらのサンプルNo.4,5でも炭酸化に対して一定の耐久性は得られるが、アモルファス構造体の部分が小さいので表面積が比較的大きく、その分、サンプルNo6〜13に比べると炭酸化物の量に差が生じたものと考えられる。
このことから、Sr及びZrを含む酸化物の組成を利用すれば、保護膜中のSrに対するZr組成比が0.4%程度でもCO吸着量を低減させる一定の効果は得られるが、この効果を十分に得るためには、Zr組成比が1.6%以上、より好ましくは2.6%以上であることがより望ましいと言える。
これを言い換えると、本発明の保護膜としては、組成式がSrxZr1−xOで表される酸化物で構成され、前記酸化物のアモルファス構造体又はこれ加えて微結晶体を含む構造を有しており、且つ、0.016≦1−x<0.487の関係が成立する構成であることが好適と言える。さらに、0.026≦1−x<0.487の範囲とするのが一層好適である。
これを言い換えると、本発明の保護膜としては、組成式がSrxZr1−xOで表される酸化物で構成され、前記酸化物のアモルファス構造体又はこれ加えて微結晶体を含む構造を有しており、且つ、0.016≦1−x<0.487の関係が成立する構成であることが好適と言える。さらに、0.026≦1−x<0.487の範囲とするのが一層好適である。
次に、放電開始電圧Vfの低減効果について検討する。
表2において、サンプルNo.1のMgO膜は、サンプルNo.2及び3の膜に比べると膜、表面のCO量が少なく、この点では高い安定性を有していると言える。しかしながら、一方でサンプルNo.1のVfは259V、サンプルNo.2でも269Vであり、目標数値の250Vを超えてしまっている。さらに、MgOからなる保護膜に対して一定のVf低減効果があるとされるサンプルNo.3においても、現実的には339Vであり、そのような効果が有効に得られないことが分かった。
表2において、サンプルNo.1のMgO膜は、サンプルNo.2及び3の膜に比べると膜、表面のCO量が少なく、この点では高い安定性を有していると言える。しかしながら、一方でサンプルNo.1のVfは259V、サンプルNo.2でも269Vであり、目標数値の250Vを超えてしまっている。さらに、MgOからなる保護膜に対して一定のVf低減効果があるとされるサンプルNo.3においても、現実的には339Vであり、そのような効果が有効に得られないことが分かった。
一方、ターゲット材料にSrZrO3粉体を用いたサンプルNo.4〜11では、いずれも放電開始電圧が250V以下に収まっており、好適な保護膜であることが分かった。
なお、サンプルNo.4,12及び13は、Vfについては250Vを上回っているため、この点において評価目標の250Vを達成していない。しかしながら、特にサンプルNo.12,13炭酸化に対する耐久性は、全てのサンプル中で相当に優秀である。従って、Vfの低減がそれほど必要とされない場合においては、これらのサンプルNo.4、12,13も本発明の保護膜として有効に採用できるものである。
なお、サンプルNo.4,12及び13は、Vfについては250Vを上回っているため、この点において評価目標の250Vを達成していない。しかしながら、特にサンプルNo.12,13炭酸化に対する耐久性は、全てのサンプル中で相当に優秀である。従って、Vfの低減がそれほど必要とされない場合においては、これらのサンプルNo.4、12,13も本発明の保護膜として有効に採用できるものである。
また、放電遅れtsについては、一般的に保護膜の組成に添加剤を加えるとtsの値が小さくなりすぎ、電荷抜けという別の問題が生じうる。しかしながら今回の実験では、サンプルNo.2や実施例サンプルNo.4〜13のいずれでも、tsの値がサンプルNo.1よりも大きいことが分かった。これにより、サンプルNo.2、4〜13では、いずれも電荷抜けの問題はないことが確認できた。
今回の実験では、実施例サンプルNo.4〜13のいずれも、比較例サンプルNo.3に対して表面のCO量が十分に低いことが分かった。また、実施例の保護膜において、Zrの含有量を変化させても、SrOのアモルファスの度合いは変化しにくいと考えられる。従って、COの吸着量を低減させるためにはサンプルNo.4のように一定のZr量は必要であるが、大まかにはZr量よりもアモルファス構造を存在させることが有効であると考えられる。勿論、COの吸着量を有効に抑えるためには、表2に示すように膜表面のZr組成を2.6%以上にすることが有効である。
次に、図10に示される結果を検討すると、Zr及びSrを含む酸化物からなる保護膜の表面におけるZr組成が一定以上大きくなるにつれて、放電開始電圧Vfの値は上昇している。この理由としては、保護膜表面のZr組成が増大すると、保護膜表面におけるSr組成比が相対的に小さくなり、放電ガスのイオン衝突に対する二次電子放出係数が小さくなるため、結果的に放電開始電圧Vfが上昇するのが原因と考えられる。
当図に示される結果からは、放電開始電圧Vfを250V未満に収めるためには、Zrの組成比を50%程度未満とするのが有効と考えられる。この考察結果は、表2に示された結果と一致している。
なお、PDPの保護膜に不純物を添加してアモルファス状態の膜を形成し、不純ガスの吸着を抑制する従来技術として、MgOにCeO2を添加して作製したアモルファス構造の保護膜が存在する(例えば特許文献2を参照)。しかしながらサンプルNo2に示すように、アモルファス構造のMgOからなる保護膜は、Vfが330Vと各サンプル中でも格段に高い。これに対し、実施例サンプルNo.4〜13は、Vfが最も低いもので205Vを示している。従って本願発明は、先行技術の保護膜とは放電特性の点において大きく異なるものである。
<その他の事項>
上記実施の形態及び実施例では、Zr及びSrを含む酸化物からなる保護膜を構成したが、Zr以外の元素(例えばAl、Si、Ti、Zn、Hf)の少なくともいずれかを添加することによっても、保護膜の構造をアモルファス化させ、同様の効果を期待できると考えられる。
なお、PDPの保護膜に不純物を添加してアモルファス状態の膜を形成し、不純ガスの吸着を抑制する従来技術として、MgOにCeO2を添加して作製したアモルファス構造の保護膜が存在する(例えば特許文献2を参照)。しかしながらサンプルNo2に示すように、アモルファス構造のMgOからなる保護膜は、Vfが330Vと各サンプル中でも格段に高い。これに対し、実施例サンプルNo.4〜13は、Vfが最も低いもので205Vを示している。従って本願発明は、先行技術の保護膜とは放電特性の点において大きく異なるものである。
<その他の事項>
上記実施の形態及び実施例では、Zr及びSrを含む酸化物からなる保護膜を構成したが、Zr以外の元素(例えばAl、Si、Ti、Zn、Hf)の少なくともいずれかを添加することによっても、保護膜の構造をアモルファス化させ、同様の効果を期待できると考えられる。
また、本発明の保護膜として、Zr等不純物を含まないSrOのアモルファス構造体を含む保護膜を形成することもできる。この場合も、従来の柱状結晶からなる保護膜に比べて表面の炭酸化反応を抑制することが望めるので、その分、当該保護膜の優れた二次電子放出特性の発揮及び維持効果と、良好な耐久性が期待できる。
本発明のPDPは、特に高精細画像表示を低電圧で駆動できるがガス放電パネル技術として、交通機関及び公共施設、家庭などにおけるテレビジョン装置及びコンピュータ用の表示装置等に利用することが可能である。
1、1x PDP
2 フロントパネル
3 フロントパネルガラス
4 サステイン電極
5 スキャン電極
6 表示電極対
7、12 誘電体層
8 保護膜
9 バックパネル
10 バックパネルガラス
11 データ(アドレス)電極
13 隔壁
14(14R、14G、14B) 蛍光体層
15 放電空間
2 フロントパネル
3 フロントパネルガラス
4 サステイン電極
5 スキャン電極
6 表示電極対
7、12 誘電体層
8 保護膜
9 バックパネル
10 バックパネルガラス
11 データ(アドレス)電極
13 隔壁
14(14R、14G、14B) 蛍光体層
15 放電空間
Claims (9)
- 電極と誘電体層とが形成された第1基板が、放電空間を介して第2基板と対向配置され、第1基板及び第2基板の周囲が封着されたプラズマディスプレイパネルであって、
前記誘電体層の表面には保護膜が配設され、
当該保護膜は、Sr及びZrを含む酸化物のアモルファス構造体を有するように構成され、且つ、前記酸化物中のSrとZrの元素組成比Sr/Zrが1より大きい
プラズマディスプレイパネル。 - 前記保護膜の全体が前記酸化物のアモルファス構造体で構成されている
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記保護膜は、さらに前記酸化物の微結晶体を含んで構成されている
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - Sr及びZrを含む酸化物は、組成式がSrxZr1-xOで表され、
0.016≦1−x<0.487の関係が成立する
請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。 - Sr及びZrを含む酸化物は、組成式がSrxZr1-xOで表され、
0.026≦1−x<0.487の関係が成立する
請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。 - 電極が配設された前記基板の表面に誘電体層を形成する誘電体形成工程と、前記誘電体層の表面に保護膜を形成する保護膜形成工程とを経るプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
保護膜形成工程では、
SrZrO3、又は、SrOとZrO2を含むターゲット材料を加熱してスパッタリングさせることで、誘電体表面に、Sr及びZrを含む酸化物のアモルファス構造体を有して構成され、且つ、前記酸化物中のSrとZrの元素組成比Sr/Zrが1より大きい保護膜を形成する
プラズマディスプレイパネルの製造方法。 - 前記ターゲット材料として、粉末状のターゲット材料を用いる
請求項6に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。 - 前記スパッタリングは、前記ターゲット材料を断熱性容器に入れて行う
請求項6又は7に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。 - 前記保護膜形成工程は、基板を非加熱状態で実施する
請求項6〜8のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US2699308P | 2008-02-07 | 2008-02-07 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2009187942A true JP2009187942A (ja) | 2009-08-20 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009008121A Withdrawn JP2009187942A (ja) | 2008-02-07 | 2009-01-16 | プラズマディスプレイパネルとその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2009187942A (ja) |
-
2009
- 2009-01-16 JP JP2009008121A patent/JP2009187942A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20120403 |