JP4899178B2 - 微粒子蛍光体の製造方法、並びに微粒子蛍光体の製造装置 - Google Patents

微粒子蛍光体の製造方法、並びに微粒子蛍光体の製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、長時間安定して高輝度に発光し得る微粒子蛍光体およびその製造方法、並びに微粒子蛍光体の製造装置に関するものである。
情報化産業時代の到来と共に、平面薄型の大型フラットディスプレイの需要が高まり、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel;PDP)が注目されている。PDPは、例えば、壁掛けテレビや、マルチメディアディスプレイなどとして、デジタルデータの画像表示に特に適している。このため、PDPに関する研究は、世界中で精力的に行われている。日本では世界に先行してPDP開発が行われ、PDPの世界シェアの8割以上を日本が占めている。
一般に、PDPは、2枚のガラス基板が互いに平行かつ対向して配設されており、2枚のガラス基板の間には、隔壁により区切られNeやXeなどの希ガスが封入された放電空間が多数配設されている。2枚のガラス基板のうち、PDPの観察者側のガラス板が前面板であり、もう一方のガラス板が背面板である。
そして、前面板の背面板側に電極が形成され、これを覆って誘電体層が形成されており、さらにその上に保護膜(MgO層)が形成されている。背面板となるガラス基板の前面板側には前面板に形成された電極と交差するようにアドレス電極が形成されており、さらに背面板上(セルの底面に該当する。)と隔壁の壁面を覆うようにして蛍光体層が設けられている。電極間に交流電圧を印加し放電により生じる真空紫外線により蛍光体を発光させ、前面板を透過する可視光を観察者が視認するようになっている。
一般に、PDPは、CRTに比べ発光効率が低く、消費電力が大きい。このため、PDPは高輝度と低消費電力化のための高い発光効率が要求される。従って、PDPに用いられる微粒子蛍光体の発光特性を向上させるため、従来から種々の提案がなされていた。
例えば、特許文献1に記載の蛍光体の製造方法においては、蛍光体の構成金属元素を含有する溶液をガス雰囲気中に噴霧して微細な液滴となし、乾燥して固体粒子となし、さらに固体粒子に随伴する気体の水蒸気濃度を1体積%以下に低減した後、この固体粒子を加熱し熱分解合成して蛍光体を製造する。
また、特許文献2に記載の蛍光体製造方法においては、土類硼酸塩蛍光体(珪酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体)の前駆体含有懸濁液を連続核発生装置を用いて作製し、キャリアガスと共に熱分解炉に導入し、加熱する。
さらに、特許文献3に記載の蛍光体は、一次粒子のメディアン径D50が0.05μm〜1μmの範囲にあり、二次粒子のメディアン径D50が0.1μm〜2μmの範囲にあって実質的に球状の外形を有し、全二次粒子の50体積%以上がアスペクト比0.8以上であり、かつ、内部量子効率が0.7〜1の範囲に設定されている。
特開2001−152144号公報(2001年6月5日公開) 特開2004−043633号公報(2004年2月12日公開) 特開2004−162057号公報(2004年6月10日公開)
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載されているように発光活性化処理を行うと、蛍光体粒子の表面が凸凹になってしまう。また、従来の固相反応法を用いて作成された市販されている青色蛍光体粒子は、図9のSEM像に示すように、六角柱状の形状をしており、平均粒子径が3μmである。このように蛍光体粒子の表面が凸凹になったり、形状が球状ではなく粒子径が大きくなると、蛍光体粒子の発光強度にばらつきが生じたり、長時間安定して発光しなかったりするという問題が生じる。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、長時間安定して高輝度に発光し得る微粒子蛍光体およびその製造方法、並びに微粒子蛍光体の製造装置を提供することを目的とする。
本発明の微粒子蛍光体は、上記の課題を解決するために、平均粒子径が0.2〜0.6μmであり、かつ、粒子径が1μm以上の粒子の割合が5%以下であることを特徴としている。
この微粒子蛍光体は、平均粒子径のばらつきが少なく、粒子径の大きい粒子の含有量も少ない。従って、長時間安定して高輝度に発光する微粒子蛍光体を提供することができる。
上記微粒子蛍光体は、微粒子蛍光体表面の凹凸の高さが、平均粒子径の5%以下であることが好ましい。この構成では、微粒子蛍光体の表面が、平均粒子径の5%以下にまで改質されている。従って、より長時間安定して高輝度に発光する微粒子蛍光体を提供することができる。
上記微粒子蛍光体は、微粒子蛍光体の組成が、BaMgAl1017:Eu(BAM)であることが好ましい。これにより、例えば、PDP等に用いられる汎用性の高い青色蛍光体を提供できる。
本発明の微粒子蛍光体の製造方法は、上記の課題を解決するために、微粒子蛍光体の原料溶液のマイクロミストを分級し、分級されたマイクロミストの熱分解により微粒子を得る熱分解工程を含むことを特徴としている。
上記の方法によれば、熱分解工程にて、分級した微粒子蛍光体の原料溶液のマイクロミストを熱分解して微粒子を得ている。このため、この分級された微粒子を焼成することによって、平均粒子径のばらつきが少なく、粒子径の大きい粒子の含有量も少ない微粒子蛍光体を製造できる。従って、長時間安定して高輝度に発光する微粒子蛍光体を提供することができる。
上記微粒子蛍光体の製造方法では、熱分解工程によって得られた微粒子を、水、酸、塩基、塩、またはフラックス剤により洗浄する溶液処理工程を含むことが好ましい。
上記の方法によれば、溶液処理工程にて、水、酸、塩基、塩、またはフラックス剤により、熱分解工程で得られた微粒子を洗浄する。これにより、微粒子蛍光体の表面の凸凹を改善し、略球状の微粒子蛍光体を得ることができる。
なお、上記溶液処理工程に用いる酸は、種々の無機酸(硝酸,塩酸,硫酸など),有機酸(カルボン酸,スルホン酸,スルフィン酸,フェノールなど)を挙げることができ、強酸であることが好ましい。また、上記塩基はアンモニア水,水酸化バリウムなどを用いることができ、フラックス剤は硝酸アンモニウム,塩化アンモニウム,硫酸アンモニウムなどを用いることができる。さらに、塩としては、硝酸バリウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、酢酸バリウムなどのバリウムを含む塩を用いることができる。
また、上記水、酸、塩基、塩、またはフラックス剤は、それぞれ、単独(1種類)で用いてもよいし、多剤を併用して用いてもよい。言い換えれば、溶液処理工程では、水、酸、塩基、塩、およびフラックス剤からなる群から1つ以上を選択して用いることができる。
上記微粒子蛍光体の製造方法では、上記溶液処理工程を行う前に、上記熱分解工程によって得られた微粒子を、焼成により結晶化する前焼成処理工程を行うことが好ましい。
上記の方法によれば、溶液処理工程の前に前焼成処理工程を行う。これにより、略真球状で、粒子径のばらつきが極めて少ない、微粒子蛍光体を得ることができる。このような、ばらつきの少ない微粒子蛍光体は、より一層長時間安定して高輝度に発光することが可能となる。
上記微粒子蛍光体の製造方法では、上記前焼成処理工程は、1300℃〜1500℃で行うことが好ましい。これにより、結晶化の温度が高すぎるため微粒子蛍光体が硬くなってしまい、溶液処理をしても微粒子蛍光体の表面を滑らかにすることができないこと、および、結晶化の温度が低すぎるため、溶液処理において微粒子蛍光体が溶けてしまうおそれがあることを防ぐことができる。
上記微粒子蛍光体の製造方法では、微粒子蛍光体の組成が、BaMgAl1017:Eu(BAM)であることが好ましい。これにより、例えば、PDP等に用いられる汎用性の高い青色蛍光体を製造することができる。
上記微粒子蛍光体の製造方法では、上記熱分解工程は、噴霧法によりマイクロミストとした原料溶液(より詳細には原料溶液の液滴)を分級し、分級したマイクロミストを熱分解することが好ましい。
一般に、原料溶液を噴霧することにより得られる原料溶液のマイクロミストは、液滴径の分布が大きい。このような、液滴径のばらついた原料溶液を、そのまま熱分解すると、得られる微粒子の粒径もばらついたり、中空になった粒子が得られたりする。その結果、微粒子蛍光体の発光強度の低下を招き、長時間安定した発光を示すことができない。このように、粒径のばらつきも、微粒子蛍光体の発光強度に関与する。
上記の方法によれば、原料溶液をマイクロミストとした後、生成したマイクロミストを分級している。これにより、液滴径の大きなマイクロミストと、液滴径の小さなマイクロミストとを分けることができる。そして、分級により液滴径の揃った、液滴径の小さいマイクロミストのみを熱分解することによって、粒径の均一な微粒子を得ることができる。すなわち、液滴径を分級したマイクロミストを熱分解するため、熱分解により得られる微粒子の粒径も均一となる。従って、粒径の均一な微粒子蛍光体となる。それゆえ、長時間安定した発光が可能な微粒子蛍光体を製造することができる。
また、上記の方法によれば、発光輝度の低下につながる粒子径の大きな中空粒子を除去することができ、均一な微粒子を熱分解炉に供給できる。従って、より長時間安定して高輝度に発光する微粒子蛍光体を製造することが可能となる。
上記微粒子蛍光体の製造方法では、上記熱分解工程は、上記熱分解工程は、原料溶液をマイクロミストとする噴霧器からマイクロミストを熱分解する熱分解炉までの高さ、および、噴霧器に供給するキャリアガスの流量の調節によって、マイクロミストを分級することが好ましい。
上記の方法によれば、噴霧器から熱分解炉までの高さ調節、および、キャリアガスの流量調節によって、マイクロミストの分級を行うことができる。すなわち、液滴径の揃ったマイクロミストを得ることができる。このため、その液滴径の揃ったマイクロミストを後続の熱分解炉において、乾燥および熱分解を行うことにより、粒子径が略均一な微粒子蛍光体が得られる。さらに、発光輝度の低下につながる粒子径の大きな中空粒子を除去することができ、均一な微粒子を熱分解炉に供給できる。従って、より長時間安定して高輝度に発光する微粒子蛍光体を製造することが可能となる。
上記微粒子蛍光体の製造方法では、上記熱分解工程は、マイクロミストが、噴霧器内を螺旋状に流れるように、キャリアガスを供給することが好ましい。
上記の方法によれば、マイクロミストは、噴霧器内を螺旋状に流れる。これにより、遠心力の作用により、液滴径の大きなマイクロミストは噴霧器内の外壁に衝突して熱分解炉まで到達することができず、液滴径の小さなマイクロミストのみが噴霧器から熱分解炉に到達するようにすることができる。さらに、噴霧器内を流れるマイクロミストの移動距離を、長くすることができる。従って、マイクロミストの分級を、確実に行うことができる。
本発明の微粒子蛍光体の製造装置は、上記の課題を解決するために、微粒子蛍光体の原料溶液を分級されたマイクロミストとする噴霧器と、噴霧器から供給されたマイクロミストを熱分解する熱分解炉とを備えた噴霧熱分解装置を備えている。
上記の構成によれば、噴霧器にて分級した微粒子蛍光体の原料溶液を、熱分解炉にて熱分解して微粒子を得ている。このため、この分級された微粒子を焼成することによって、平均粒子径のばらつきが少なく、粒子径の大きい粒子の含有量も少ない微粒子蛍光体を製造できる。従って、長時間安定して高輝度に発光する微粒子蛍光体を提供することができる。
上記微粒子蛍光体の製造装置では、さらに、上記マイクロミストの熱分解により得られた微粒子を、水、酸、塩基、塩、またはフラックス剤により洗浄する溶液処理部を備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、溶液処理部にて、噴霧熱分解装置で得られたマイクロミストの熱分解により形成された微粒子を、水、酸、塩基、塩、またはフラックス剤により洗浄する。これにより、微粒子蛍光体の表面の凸凹を改善し、略球状の微粒子蛍光体を得ることができる。
上記微粒子蛍光体の製造装置では、上記噴霧器から熱分解炉までの高さ、および、噴霧器に供給するキャリアガスの流量の調節によって、マイクロミストを分級するようになっていることが好ましい。
上記の構成によれば、噴霧器から熱分解炉までの高さ調節、および、キャリアガスの流量調節によって、マイクロミストの分級を行うことができる。すなわち、液滴径の揃ったマイクロミストを得ることができる。このため、その液滴径の揃ったマイクロミストを後続の熱分解炉において、乾燥および熱分解を行うことにより、粒子径が略均一な微粒子蛍光体が得られる。さらに、発光輝度の低下につながる粒子径の大きな中空粒子を除去することができ、均一な微粒子を熱分解炉に供給できる。従って、より長時間安定して高輝度に発光する微粒子蛍光体を製造することが可能となる。
上記微粒子蛍光体の製造装置では、上記噴霧器は、マイクロミストが噴霧器内を螺旋状に流れるようにキャリアガスを供給するキャリアガス供給口を備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、マイクロミストが噴霧器内を螺旋状に流れるように、キャリアガス供給口からキャリアガスが噴霧器内に供給される。これにより、遠心力の作用により、液滴径の大きな液滴は外壁に衝突して熱分解炉まで到達することができず、液滴径の小さなマイクロミストのみが噴霧器から熱分解炉に到達するようにすることができる。さらに、噴霧器内を流れるマイクロミストの移動距離を、長くすることができる。従って、マイクロミストの分級を、重力および遠心力の作用により、確実に行うことができる。
以上のように、本発明の微粒子蛍光体は、平均粒子径が0.2〜0.6μmであり、かつ、粒子径が1μm以上の粒子の割合が5%以下である。
また、本発明の微粒子蛍光体の製造方法は、微粒子蛍光体の原料溶液のマイクロミストを分級し、分級されたマイクロミストの熱分解により微粒子を得る熱分解工程を含んでいる。
それゆえ、長時間安定して高輝度に発光し得る微粒子蛍光体を提供できるという効果を奏する。
本発明の実施の一形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明は、これに限定されるものではない。
本発明の微粒子蛍光体は、長時間安定して高輝度の発光を示すために、平均粒子径が0.2〜0.6μmであり、かつ、粒子径が1μm以上の粒子の割合が5%以下となっている。また、より長時間安定して高輝度の発光を示すためには、微粒子蛍光体表面の凹凸の高さが、平均粒子径の5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、0%(つまり表面に凹凸がない)であることが特に好ましい。
本発明の微粒子蛍光体の製造方法は、水、酸、塩基、塩、またはフラックス剤による粒子の洗浄により、粒子の溶液処理を行う溶液処理工程によって、長時間安定して高輝度の発光を示す微粒子蛍光体を製造する方法である。
本発明において、「微粒子」とは、主として、平均粒子径が0.1μm〜1μm程度のものを示す。
また、「平均粒子径」は、微粒子蛍光体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像解析により、約1000個の微粒子蛍光体の粒子径を計測して粒度分布を取得したときの、メディアン径(50%頻度径)を示している。また、「平均粒子径」は、微粒子蛍光体が球状または略球状である場合には粒子の直径を、それ以外の形状である場合には、画像上の長径を計測したものとする。
また、「微粒子蛍光体表面の凹凸の高さ」とは、微粒子蛍光体の表面において、最も突出した部分(凸部の先端)から、最も窪んだ部分(凹部)までの高さを示す。
上記微粒子蛍光体は、不純物を含まない単一相であって、母体物質と、発光中心となる付活剤とのみからなるものである。母体物質は、例えば、アルミン酸等の金属酸化物が用いられる。一方、上記付活剤は、少なくとも1種類の希土類金属または遷移金属から形成される。これらの母体物質および付活剤は、目的とする微粒子蛍光体の特性(例えば、発光色など)に応じて選択すればよく、特に限定されるものではない。
本発明の微粒子蛍光体の製造方法の一実施形態について、以下に説明する。
本実施形態の微粒子蛍光体の製造方法は、図2に示すように、溶液の調整ステップ(ステップ1、以下ステップをSと記載する)と、噴霧熱分解ステップ(S2)と、表面処理ステップ(S3)と、発光活性化処理ステップ(S4)とを含んでいる。
溶液の調整ステップにおいては、微粒子蛍光体の原料となる溶液を調整する。微粒子蛍光体の原料は、噴霧熱分解ステップによる熱分解(焼成)により、酸化物となるものであれば特に限定されるものではない。
上記微粒子蛍光体の原料となる溶液(原料溶液)は、微粒子蛍光体の金属イオン溶液である。上記金属イオン溶液は、微粒子蛍光体の母体物質と付活剤との金属化合物の可溶化溶液である。具体的には、例えば、微粒子蛍光体に含まれる金属の無機金属化合物(例えば硝酸塩、硫酸塩、または塩化物など)の溶液、あるいは、有機金属化合物(酢酸塩などの有機酸塩、金属−エチレンジアミン四酢酸(EDTA)錯体などのキレート錯体、または金属イソプロポキシドなどのアルコラートなど)の溶液である。
これら無機化合物や有機化合物の量は、微粒子蛍光体の金属成分、すなわち、母体物質および付活剤中の各金属成分の構成原子比に相当する割合で混合すればよい。この際の全体の金属イオン濃度としては、通常0.0001〜1.0mol/Lの範囲内で選ばれる。
金属イオン溶液の溶媒としては、水または水と水和性溶媒、例えばエチルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒との混合物が用いられる。
例えば、微粒子蛍光体として、母体物質がBaMgAl1017であり、付活剤がEuであるBAM系蛍光体を製造する場合、硝酸アルミニウム0.25mol、硝酸バリウム0.0225mol、硝酸ユウロピウム0.0025mol、硝酸マグネシウム0.025molを、1Lの純水に溶かし、原料溶液とすることができる。なお、BAM系微粒子蛍光体は、例えば、PDP等に用いられるため、有用性が高い。また、BAM系微粒子蛍光体は、青色蛍光体としても汎用されている。
噴霧熱分解ステップ(熱分解工程)においては、微粒子蛍光体の原料溶液を噴霧器に導入して、原料溶液のマイクロミストを発生させる。そして、そのマイクロミストを乾燥空気と共に熱分解炉に導入することで、マイクロミストの径が揃えられる。その後、熱分解炉においてマイクロミストを乾燥および熱分解することで、球状の微粒子を得ることができる。つまり、噴霧熱分解ステップは、微粒子蛍光体の原料溶液のマイクロミストを分級し、分級されたマイクロミストの熱分解により微粒子を得る工程である。
このように、噴霧熱分解ステップは、上記原料溶液(金属イオン溶液)を霧化して加熱雰囲気下で球状微粒子を形成する工程ともいえる。
噴霧熱分解ステップに用いる噴霧器は、熱分解炉までの高さを調整できるものであることが好ましい。
表面処理ステップでは、少なくとも、溶液処理工程を行う。溶液処理工程においては、噴霧熱分解ステップで得られた球状微粒子を、液体で洗浄することにより、微粒子蛍光体の表面の凹凸を改善し、微粒子蛍光体の表面を一層滑らかにすることができる。このため、本実施形態における微粒子蛍光体の製造方法では、この溶液処理を行うことが好ましい。
洗浄に用いる液体としては、水、酸、塩基、塩、またはフラックス剤等の溶液を用いることができる。洗浄に用いる液体を変更した場合の溶液処理の効果については、発明者らにより検討された実施例を用いて後述する。
表面処理ステップの後、発光活性化処理ステップにおいて、溶液処理された微粒子蛍光体の活性化処理が行われる。すなわち、発光活性化処理では、溶液処理された微粒子蛍光体を、還元雰囲気の下で焼成する。焼成は、例えば1400℃で3時間継続することで行われる。発光活性化処理の加熱温度は、噴霧熱分解ステップにおける熱分解の温度よりも100℃程度高い温度で行えばよい。
以上の溶液の調整ステップから発光活性化処理ステップまでを踏むことにより、所望の微粒子蛍光体を得ることができる。なお、発光活性化処理ステップは、真球状で、粒子径のばらつきが極めて少ない、微粒子蛍光体を得るために行うことが好ましい。ただし、噴霧熱分解工程により、原料溶液のマイクロミストを均一化している。このため、発光活性化処理を行わなくても、長時間安定して高輝度に発光する微粒子蛍光体を製造できる。
以下、本実施形態の表面処理ステップを、より具体的に説明する。前述のように、表面処理ステップでは、少なくとも溶液処理工程を行う。
(a)水を用いた溶液処理
上述のように、表面処理ステップは、水を用いて球状微粒子を洗浄することにより実現可能である。しかしながら、噴霧熱分解ステップにおいて噴霧された直後の球状微粒子を水で洗浄すると、図11に示すように、微粒子が溶けて組成が変わってしまう場合がある。
そこで、特に水を用いて溶液処理を行う場合、溶液処理を行う前に、微粒子蛍光体を結晶化する前焼成処理工程を行うことが好ましい。すなわち、表面処理ステップは、前焼成処理工程と溶液処理工程からなることが好ましい。これにより、略真球状で、粒子径のばらつきが極めて少ない、微粒子蛍光体を得ることができる。例えば、大気中1300℃で1時間焼成して微粒子蛍光体を結晶化した後に、水でろ過洗浄することで表面処理を行うことが可能である。このように微粒子蛍光体を結晶化した後に、1分間水でろ過洗浄すると、図5に示すように、真球状で粒子径がほぼ0.6μmの微粒子蛍光体を得ることができた。しかも、得られた微粒子蛍光体の粒子径のばらつきは、極めて少ない。このような、ばらつきの少ない1μm以下の粒子径の微粒子蛍光体は、長時間安定して高輝度に発光する。
なお、結晶化の温度があまりに高くなってしまうと、微粒子蛍光体が硬くなってしまい、溶液処理をしても微粒子蛍光体の表面を滑らかにすることができない場合がある。一方で、結晶化の温度があまりに低いと、溶液処理において微粒子蛍光体の一部が溶けてしまうおそれがある。このため、結晶化する際の焼成温度は、1300℃〜1500℃に設定することが好ましい。
また、溶液処理における洗浄時間があまりに長くなってしまうと、微粒子蛍光体の形状が崩れてしまう場合がある。また、洗浄時間があまりに短いと、微粒子蛍光体の表面を充分に滑らかにできない。このため、水を用いて微粒子蛍光体を洗浄する場合、洗浄時間は数秒〜数分に設定することが好ましい。これにより、微粒子蛍光体の形状の崩壊を確実に防止できるとともに、微粒子蛍光体の表面を確実に滑らかにすることができる。
(b)水以外の溶液を用いた溶液処理
表面処理ステップは、酸、塩基、塩、またはフラックス剤を用いて、球状微粒子を洗浄することによっても実現可能である。溶液処理は、塩酸、硫酸、硝酸等の強酸を用いて行うことが好ましい。なお、水を用いる溶液処理を行う場合だけでなく、酸(強酸),塩基,およびフラックス剤を用いる溶液処理を行う場合にも、前焼成処理工程を行うことが好ましい。
例えば、後述の実施例に示すように、0.01mol/L(0.01M)の硝酸で微粒子蛍光体を洗浄することで、微粒子蛍光体の溶液処理とすることが可能である。参考のため、大気中1300℃で1時間焼成して微粒子蛍光体を結晶化(前焼成処理)した後に、0.01M硝酸を用いて1分間微粒子蛍光体をろ過洗浄した際の、微粒子蛍光体の形状を図6に示す。図6に示すように、硝酸で微粒子蛍光体を洗浄することにより、微粒子蛍光体の表面が滑らかになっていることがわかる。
このように、表面処理ステップを行うことにより、微粒子蛍光体を、真球状に近づけることができるため、長時間安定して高輝度に発光する微粒子蛍光体を得ることができる。
なお、溶液処理工程では、溶液処理溶液の使用量,処理時間,および強酸の濃度が、特に微粒子の表面状態(ひいては微粒子蛍光体の表面状態)に影響を及ぼす。溶液処理溶液が高濃度であり、処理時間が長くなるほど、微粒子の内部に溶液処理溶液が侵食してしまう。
このため、溶液処理工程において、水、酸、塩基、塩、またはフラックス剤の使用量は、微粒子蛍光体全体を洗浄できる程度であればよいが、微粒子の重量の10倍〜1000倍であることが好ましく、50倍〜500倍であることがより好ましい。また、処理時間は、短時間で行うことが好ましい。処理時間は、例えば、1秒〜10分であることが好ましく、1分以内で行うことがより好ましい。さらに、強酸の濃度は、低濃度であることが好ましい。強酸の濃度は、例えば、0.001M〜1Mであることが好ましく、0.005〜0.5Mであることがより好ましい。
これにより、より均一な粒子径の微粒子蛍光体を効率よく得ることができ、発光強度にばらつきの少ない微粒子蛍光体を得ることができる。
このように、本発明の微粒子蛍光体の製造方法は、水、酸、塩基、塩、またはフラックス剤により微粒子を洗浄する溶液処理工程を有しているため、略球状(真球状)の微粒子蛍光体を製造することができる。従って、より均一な粒子径の微粒子蛍光体を効率よく得ることができ、発光強度にばらつきの少ない微粒子蛍光体を得ることができる。それゆえ、得られた微粒子蛍光体は、長時間安定して高輝度に発光することが可能となる。
なお、溶液処理工程は、水、酸、塩基、塩、またはフラックス剤を、組み合せて用いることもできる。
次に、噴霧熱分解ステップについて、詳細に説明する。
噴霧熱分解ステップは、上記原料溶液(金属イオン溶液)を霧化して加熱雰囲気下で球状微粒子を形成する工程である。噴霧熱分解ステップは、図7に概略図として示すような、噴霧熱分解装置10によって実施できる。図7の噴霧熱分解装置10は、原料溶液が導入され、原料溶液のマイクロミストを発生させる噴霧器(噴霧装置)1と、そのマイクロミストが乾燥空気等のキャリアガスと共に導入される熱分解炉3と、製造された微粒子蛍光体を収集する収集室4とを備えている。炉心管2の中央部は、熱分解炉3の中に保持されており、噴霧器1と収集室4とは、接続管(図示せず)を介して炉心管2に接続されている。
この噴霧熱分解装置10では、噴霧器1によって原料溶液がマイクロミストとされ、さらにマイクロミストの液滴径が揃えられ、その後、熱分解炉3の中に保持された炉心管2に導入されたマイクロミストを乾燥および熱分解することで生じた微粒子の中には、粒子径の大きな中空粒子も混在している。これらの結果、得られた微粒子蛍光体の発光強度の低下を招く。
そこで、本実施形態の噴霧器1は、できる限り、液滴径の均一なマイクロミストを、熱分解炉3に供給できるようになっている。すなわち、本実施形態では、マイクロミストとした原料溶液を分級し、分級したマイクロミストを熱分解する。
具体的には、図8に示すように、マイクロミストと共に熱分解炉3に供給するキャリアガスの流量、および、噴霧器1から熱分解炉3までの高さが調整できるような構成となっている。
図8の噴霧器1は、超音波により原料溶液をマイクロミストとする超音波方式の噴霧器1である。この噴霧器1は、原料溶液を振動によりマイクロミストとする超音波振動子11,噴霧器1内に原料溶液を供給する原料溶液供給口12,噴霧器1内にキャリアガスを供給する複数のキャリアガス供給口13,および,異なる高さに設けられ、重ね合わせる事の出来る胴体14を複数備えている。なお、図8の破線は、胴体14の境界を示している。
噴霧器1内には、図示したように、キャリアガスが複数のキャリアガス供給口13からそれぞれ導入される。超音波振動子11は、噴霧器1の底部に設けられており、原料溶液供給口12は、超音波振動子11に近接して、噴霧器1の側面に設けられている。
この噴霧器1は、超音波振動子11を振動させることにより、原料溶液をマイクロミストとする簡便な装置である。具体的には、原料溶液供給口12から噴霧器1内に原料溶液が供給されると、超音波振動子11の振動により、原料溶液がマイクロミストとなる。
ここで、図8のように、キャリアガス供給口13は、胴体14間に設けられており、しかも、左右交互に設けられている。しかも、キャリアガス供給口13は、マイクロミストが、噴霧器1内を螺旋状に流れるように、キャリアガスを供給するようになっている。また、ここでは、胴体14間は15cmであり、計4段の噴霧気流部が形成されている。これにより、キャリアガス供給口13からキャリアガスを噴霧器1に供給すると、マイクロミストは、図の矢印で示すように、噴霧器1内を螺旋状(渦巻状)上昇する。その結果、マイクロミストを分級することができ、粒径を均一化したマイクロミストを得ることができる。分級されたマイクロミストおよびキャリアガスは、噴霧器1の上方から矢印のように、熱分解炉3に供給される。そして、熱分解炉3にて、分級されたマイクロミストを熱分解することにより、粒径の均一な微粒子を得ることができ、その微粒子から粒径の均一な微粒子蛍光体を製造することができる。これにより、長時間安定して発光する微粒子蛍光体を製造することができる。
このように、本実施形態では、マイクロミストの分級により、発光輝度の低下につながる粒子径の大きな中空粒子を噴霧器1の底部に留め、均一な微粒子をキャリアガスと共に、噴霧器1の上部から熱分解炉3に供給することができる。
なお、キャリアガス供給口13は、キャリアガスの流量を、それぞれマスフローメーターで調整できるようになっている。すなわち、キャリアガスの流量は、図8のキャリアガス供給口13の数と、それに接続するガスマスフローメータによって調整する。
また、噴霧器1から熱分解炉3までの高さも調整できるようになっている。噴霧器1と炉心管2の高さ(噴霧器1と熱分解炉3との高さ)の調整は、図8に示すような噴霧器1の段数(胴体14の数)を調整する事によって行う。
キャリアガスの流量および噴霧器1と炉心管2の高さ設定値は、以下のバランスによって選定する。
すなわち、噴霧器1で生成したマイクロミストには、径の分布(ばらつき)があり、サイズの大きいマイクロミストも含まれる。このため、ばらつきのあるマイクロミストを、そのまま全て微粒子合成の熱分解炉3に導入すると、熱分解によって得られる微粒子の粒径の分布も広くなる。
そこで、本実施形態では、噴霧器1で生成したマイクロミストの中から、サイズの大きいものを除去するために、キャリアガスの流量および噴霧器1から熱分解炉3までの高さを調整する。
キャリアガスの流量(供給量)が多すぎると、中空粒子が出来やすいだけでなく、熱分解による微粒子の合成反応が未完成のものになる。一方、キャリアガスの流量(供給量)が少なすぎると、熱分解炉3に導入するマイクロミストの量が低下するだけでなく、熱分解炉3における時間単位の微粒子の収量が減少する。
また、噴霧器1から熱分解炉3までの高さが高すぎると、熱分解炉3に導入するマイクロミストの量が減少し、微粒子の合成効率(収量)は低下する。一方、噴霧器1から熱分解炉3までの高さが低すぎると、サイズの大きいマイクロミストまで熱分解炉に運ばれるようになる。その結果、熱分解炉3で合成された微粒子にはサイズの大きい粒子も混在し、サイズ分布(粒径の分布)が大きくなる。このように、噴霧器1から熱分解炉3までの高さは、マイクロミストの分級効果を左右する。
噴霧器1と炉心管2との高さの最適値は、噴霧器1の容量などに依存するため、適宜変更すればよい。本実施形態では、噴霧器1から熱分解炉3までの高さの最適値は、例えば、40cm〜100cmとすることが好ましい。
なお、超音波振動子11の共振周波数を選択することによっても、原料溶液のマイクロミストを100nm〜10μmまで制御することができる。例えば、共振周波数を2.4MHzとしたときのマイクロミスト(水溶液の場合)の平均サイズは、約3μmであった。超音波方式の噴霧器1によって生成したマイクロミストは、原料溶液との組成ずれや偏析はない。
しかも、噴霧器1は、胴体14の個数によって熱分解炉3までの高さが調整可能になっている。
後述の実施例のように、噴霧器1から熱分解炉3までの高さを調整することによって、高い発光効率を示す微粒子蛍光体を製造することができる。
このように、本実施形態の噴霧熱分解装置10は、噴霧器1におけるキャリアガスの流量、および、噴霧器1から熱分解炉3までの高さを調整可能である。これにより、発光輝度の低下につながる粒子径の大きな中空粒子を除去することができ、均一な微粒子を熱分解炉3に供給できる。従って、長時間安定して高輝度に発光し得る微粒子蛍光体を製造することが可能となる。
なお、本実施形態の噴霧熱分解装置10において、前述した表面処理ステップを行う場合、図示しない溶液処理部にて、熱分解炉3にて製造された微粒子を、水,酸,塩基,塩,またはフラックス剤により洗浄することが好ましい。これにより、さらに、微粒子蛍光体の表面の凸凹を改善し、略球状の微粒子蛍光体を得ることができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。表1は、下記の実施例および比較例の微粒子蛍光体の発光特性を評価した結果をまとめたものである。表1において、「処理溶液」は溶液処理に用いた溶液、「高さ」は噴霧器1から熱分解炉3までの高さ(図7のH参照)、「時間」は溶液処理の時間、「濃度」は溶液処理に用いた溶液の濃度である。
なお、発光特性の評価は、得られた微粒子蛍光体に、波長147nmの真空紫外(VUV)光を照射したときの発光強度、および、そのばらつきについて行った。その結果、表1に示すように、特に、強酸である硫酸、硝酸、塩酸を用いた実施例3〜5において、市販品である比較例6と比べて発光強度が高かった。
また、参考例1、および実施例2〜10は、市販品である比較例6と比べて、発光強度のばらつきが小さかった。実施例の微粒子蛍光体における測定ごとの発光強度のばらつきは、3回の測定結果の標準偏差を計算することにより求めた。この度合いσは、以下の式により求めた。
ここで、xは発光強度の測定値、μは発光強度の平均値、Nは測定回数(3回)である。この度合いσが小さいと、その微粒子蛍光体は、測定ごとの発光強度のばらつきが少なく、長時間安定して発光できることを示している。
(1)噴霧器の改良効果
参考例1
硝酸アルミニウム0.25mol、硝酸バリウム0.0225mol、硝酸ユウロピウム0.0025mol、硝酸マグネシウム0.025molを1Lの純水に溶かして原料溶液とした。この原料溶液を図8の噴霧器を用い、原料溶液を流量が毎分0.5Lの乾燥空気(キャリアガス)と共に導入した。このとき、噴霧器と炉心菅の高さHを70cmにして熱分解炉へ送った。これにより、微細な液滴径の揃ったマイクロミストを得ることができた。1300℃に設定した熱分解炉において、乾燥および熱分解により球状微粒子を得た後、その球状微粒子を収集室で静電気を用いて捕集した。
得られた粒子の電子顕微鏡観察の結果、形状は真球状であり、比較例1にみられる中空粒子とその壊れたものは存在していなかった(図1)。また、電子顕微鏡像による粒度分布解析の結果、平均粒子径は0.6μmであり,1μm以上の粒子の割合は5%以下であった(図13)。
さらに、この球状微粒子を還元雰囲気下、1400℃で3時間焼成することで発光活性化処理を行い、所望の微粒子蛍光体を得た。
〔比較例1〕
参考例1において、噴霧条件として噴霧器と炉心菅の高さHを25cm、流量を毎分2.0Lにした以外は参考例1と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。電子顕微鏡観察および粒度分布解析の結果、得られた粒子は真球状のものおよび中空粒子とその壊れたものが存在し(図10)、平均粒子径は1.0μmであり、発光強度も低かった。
(2)水による溶液処理の効果
〔実施例2〕
参考例1において、発光活性化処理の前に大気中1300℃で1時間前焼成処理した後、水でろ過洗浄することで溶液処理を行った以外は参考例1と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。電子顕微鏡観察および粒度分布解析の結果、参考例1と同様の結果が得られた(図5)。
〔比較例2〕
発光活性化処理の前に、前焼成処理を行わず水で洗浄した以外は実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。電子顕微鏡観察の結果、球状の崩れたものが数多く存在していた(図11)。
〔比較例3〕
水で一昼夜撹拌して溶液処理を行った以外は、実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。電子顕微鏡観察の結果、球状の崩れたものが数多く存在していた。
(3)水以外の溶液による溶液処理の効果
〔実施例3〕
0.01mol/L(0.01M)硝酸で洗浄することで溶液処理を行った以外は、実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。溶液処理の前後における電子顕微鏡観察の結果、若干表面が滑らかになっていることを確認した(図6)。
〔比較例4〕
0.01M硝酸で10分撹拌して溶液処理を行った以外は実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。電子顕微鏡観察の結果、球状の崩れたものが数多く存在していた。
〔比較例5〕
1M硝酸で一昼夜撹拌して溶液処理を行った以外は実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。電子顕微鏡観察の結果、原形を留めてない数μmの柱状の粗い粒子であった(図12)。
〔実施例4〕
0.005M硫酸で洗浄することで溶液処理を行った以外は実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。溶液処理の前後における電子顕微鏡観察の結果、若干表面が滑らかになっていることを確認した(図3および4)。
〔実施例5〕
0.01M塩酸で洗浄することで溶液処理を行った以外は実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。溶液処理の前後における電子顕微鏡観察の結果、若干表面が滑らかになっていることを確認した。
〔実施例6〕
0.005M硫酸アンモニウムで洗浄することで溶液処理を行った以外は実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。溶液処理の前後における電子顕微鏡観察の結果、若干表面が滑らかになっていることを確認した。
〔実施例7〕
0.01M硝酸アンモニウムで洗浄することで溶液処理を行った以外は実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。溶液処理の前後における電子顕微鏡観察の結果、若干表面が滑らかになっていることを確認した。
〔実施例8〕
0.01M塩化アンモニウムで洗浄することで溶液処理を行った以外は実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。溶液処理の前後における電子顕微鏡観察の結果、若干表面が滑らかになっていることを確認した。
〔実施例9〕
0.01Mホウ酸で洗浄することで溶液処理を行った以外は実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。溶液処理の前後における電子顕微鏡観察の結果、若干表面が滑らかになっていることを確認した。
〔実施例10〕
0.01Mアンモニア水で洗浄することで溶液処理を行った以外は実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。溶液処理の前後における電子顕微鏡観察の結果、若干表面が滑らかになっていることを確認した。
〔実施例11〕
0.01M酢酸で洗浄することで溶液処理を行った以外は実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。溶液処理の前後における電子顕微鏡観察の結果、若干表面が滑らかになっていることを確認した。
〔実施例12〕
フッ化アルミニウムの飽和水溶液で洗浄することで溶液処理を行った以外は実施例2と全く同じ条件により微粒子蛍光体を得た。溶液処理の前後における電子顕微鏡観察の結果、若干表面が滑らかになっていることを確認した。
〔比較例6〕
現在、固相反応法で作成された市販の青色蛍光体粒子(BaMgAl1017:Eu)を、電子顕微鏡観察および粒度分布解析した結果、粒子の形状は六角柱状であり、平均粒子径は3μmであった(図9)。
(4)微粒子蛍光体表面の凹凸の定量化
溶液処理による表面凹凸の減少を定量化するために、原子間力顕微鏡による高さ測定を行った。これは溶液処理を行っていない参考例1および塩酸で溶液処理を行った実施例5について、直径0.5〜1.0μmの粒子における表面の凹凸の段差を測定したものである。
表2にこの測定を6回行った結果を示す。実施例5の粒子は参考例1より平均高さが半分以下となっており、表面の凹凸の程度は平均粒径の8.2%から3.4%に減少している。そして、このように表面の凹凸が減少したことにより、発光強度が8%上昇し(101→109)、発光のばらつきも大きく減少した(2→0.6)。
本発明の微粒子蛍光体は、長時間安定して高輝度に発光するため、PDPなどの蛍光体として好適に利用することができる。
参考例1の微粒子蛍光体の電子顕微鏡写真を示す図である。 本発明の実施の一形態にかかる微粒子蛍光体の製造方法の工程図である。 実施例4において、硫酸で溶液処理を行う前の微粒子蛍光体の電子顕微鏡写真を示す図である。 実施例4において、硫酸で溶液処理を行った後の微粒子蛍光体の電子顕微鏡写真を示す図である。 実施例2の微粒子蛍光体の電子顕微鏡写真を示す図である。 実施例3の微粒子蛍光体の電子顕微鏡写真を示す図である。 本発明の実施の一形態にかかる噴霧熱分解装置の概略図である。 図7の噴霧熱分解装置における噴霧器の概略図である。 比較例6の微粒子蛍光体の電子顕微鏡写真を示す図である。 比較例1の微粒子蛍光体の電子顕微鏡写真を示す図である。 比較例2の微粒子蛍光体の電子顕微鏡写真を示す図である。 比較例5の微粒子蛍光体の電子顕微鏡写真を示す図である。 参考例1および比較例1の微粒子蛍光体の粒度分布を示す図である。
1 噴霧器
3 熱分解炉
10 噴霧熱分解装置

Claims (12)

  1. 微粒子蛍光体の原料溶液のマイクロミストを分級し、分級されたマイクロミストの熱分解により微粒子を得る熱分解工程、
    上記熱分解工程によって得られた微粒子を、焼成により結晶化する前焼成処理工程、
    上記前焼成工程によって得られた微粒子を、水、または、酸、塩基、塩、もしくはフラックス剤を含む溶液により洗浄する溶液処理工程、
    を含むことを特徴とする微粒子蛍光体の製造方法
  2. 上記前焼成処理工程は、1300℃〜1500℃で行うことを特徴とする請求項1に記載の微粒子蛍光体の製造方法
  3. 微粒子蛍光体の組成が、BaMgAl 10 17 :Euであることを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子蛍光体の製造方法
  4. 上記熱分解工程は、マイクロミストとした原料溶液を分級し、分級したマイクロミストを熱分解することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒子蛍光体の製造方法。
  5. 上記熱分解工程は、原料溶液をマイクロミストとする噴霧器からマイクロミストを熱分解する熱分解炉までの高さ、および、噴霧器に供給するキャリアガスの流量の調節によって、マイクロミストを分級することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子蛍光体の製造方法。
  6. 上記熱分解工程は、マイクロミストが、噴霧器内を螺旋状に流れるように、キャリアガスを供給することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微粒子蛍光体の製造方法。
  7. 微粒子蛍光体の原料溶液を分級されたマイクロミストとする噴霧器と、噴霧器から供給されたマイクロミストを熱分解により微粒子を得る熱分解炉とを備えた噴霧熱分解装置、および、
    上記マイクロミストの熱分解により得られた微粒子を、水、または、酸、塩基、塩、もしくはフラックス剤を含む溶液により洗浄する溶液処理部を備え、
    上記噴霧器から熱分解炉までの高さ、および、噴霧器に供給するキャリアガスの流量の調節によって、マイクロミストを分級するようになっていることを特徴とする微粒子蛍光体の製造装置
  8. 上記噴霧器は、マイクロミストが噴霧器内を螺旋状に流れるようにキャリアガスを供給するキャリアガス供給口を備えていることを特徴とする請求項7に記載の微粒子蛍光体の製造装置
  9. 上記溶液処理工程は、前焼成工程によって得られた微粒子を、水、アンモニア水、または、硝酸、硫酸、塩酸、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、もしくはホウ酸を含む溶液中で撹拌することなく洗浄する工程である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の微粒子蛍光体の製造方法
  10. 上記溶液処理工程は、前焼成工程によって得られた微粒子を、水、または、強酸を含む溶液中で撹拌することなく洗浄する工程である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の微粒子蛍光体の製造方法
  11. 上記溶液処理工程は、前焼成工程によって得られた微粒子を、水、または、酸、塩基、塩、もしくはフラックス剤を含む溶液中で撹拌することなく洗浄する工程である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の微粒子蛍光体の製造方法
  12. 上記溶液処理工程後の微粒子を還元雰囲気下で焼成する光活性化処理工程を含む、請求項1〜6および9〜11のいずれか1項に記載の微粒子蛍光体の製造方法
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