JP4898471B2 - 運転実績データ解析システム、プログラム、記録媒体 - Google Patents
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Description
運転実績データを描画したランカーブをカーソルキーによって画面上で伸縮させたりしながら管理者が目視により解析を行うため、その解析に時間を要していた。例えば、東京〜新大阪間の515.4kmの運転実績データを解析するのに、1列車当たり20分程度を要しており、一人の管理者が一日の労働時間内で解析できる運転実績データは20個程度であった。
上述の問題点(1)にて指摘したように、運転実績データに時間を要するため、実際の運用時では、サンプルとする列車や区間を決めて解析を行っていた。例えばある運輸所の担当列車は回送も含め1日約150本あるが、走行距離に換算してもその数%程度を解析しているに過ぎない。
上述の問題点(2)にて指摘したように、乗務員ひとりあたり年間で3本程度の列車について解析を行っているに過ぎない。よって、乗務員の運転特性を把握するためには、十分な量ではない。
上述の問題点(3)にて指摘したように全列車の解析を行っていないため、まれにしか発生しない意識低下が見られる運転や停止位置不良の危険がある運転などを発見することができない。また、実運用上では、事故が発生してから、その運転操縦データを解析しているに過ぎず、事故の未然防止には役立っていない。
ブレーキ距離やブレーキ時間、指定距離手前速度など、データから計算を必要とするものは目視ではその作業に時間がかかりすぎ、定量的なデータを得ることは困難である。よって、事故発生者のデータと、他の乗務員のデータを比べて、同じ傾向のデータを示す乗務員を発見し、要注意者として管理を強化することができない。
また、上述のように運転状況評価手段が、運転状況情報に基づき、評価基準を参照して、所定の走行区間における車両の運転状況を評価するので、管理者の主観的な評価とは異なり、客観的に評価することができる。
(イ)事故の未然防止
事故の前兆となる現象を発見し、事故として発生する前に乗務員に注意指導を行うことが可能となる。なお、事故の前兆となる現象としては、例えば、意識レベルの低下がみられる運転であれば、ATC頭打ちを繰り返したり遅れているのに低速で駅を通過したりすることなどが挙げられる。また、停止位置不良であれば、強いブレーキ扱いや、停止直前の速度が高いなどが挙げられる。
定時運転や丁寧なブレーキ扱い、乗り心地を考えた運転など、管理者による添乗指導時でなくても、意識の高い運転を行っている運転士のよい面を発見し、評価をすることによって運転士のモチベーション向上が期待でき、意欲を向上させることが期待できる。
事故発生時に、事故発生者のデータを解析することにより、事故原因を究明することが期待できる。例えば、停止位置不良であれば、普段からのブレーキ扱いに問題がないかどうかや突発の異常なブレーキ扱いだったのかを検証し、事故原因を解析した上で、同種のデータの傾向を示す他の乗務員が同種の事故を起こす可能性を秘めていることを勘案して注意指導することで事故発生を未然に防止することが期待できる。
新人運転士が操縦技量の未熟な状態から技能講習を経て運転操縦技量を向上させていく技量向上過程のデータを解析することにより、新人運転士の操縦技量の習熟度を判断し、未熟な点について指導を強化することが期待できる。
本発明のような運転実績データの解析により、列車別に遅れの時間や通過速度等の減少の発生実績を集約して解析することにより、ダイヤ構成上、遅れがちになる箇所が細かく把握することが期待できる。また、ダイヤ作成部署にデータを提供することにより、次期ダイヤ改正時の参考データとすることも期待できる。さらに、ダイヤ構成に無理が無い状態である場合でも、本発明のような運転実績データの解析により、乗務員の作業や駅係員の作業に無理な点がなくなることが期待でき、事故防止の観点から有用である。
また、運転実績データに含まれる個別データの具体例としては、基準点からの距離(位置)や、各位置における時刻、速度、信号、カ行ノッチ数、ブレーキノッチ数、ATCブレーキ動作の有無、などが挙げられる。
なお、請求項6に示すように、請求項1〜請求項5の何れかに記載の運転実績データ解析システムにおける運転状況算出手段、運転状況評価手段および提示制御手段評価手段は、コンピュータを機能させるプログラムとして実現できる。したがって、本発明は、プログラムの発明として実現できる。また、このようなプログラムの場合、例えば、FD、MO、DVD−ROM、CD−ROM、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、必要に応じてコンピュータにロードして起動することにより用いることができる。この他、請求項7に示すように、ROMやバックアップRAMをコンピュータ読み取り可能な記録媒体として本プログラムを記録しておき、ROMあるいはバックアップRAMをコンピュータに組み込んで用いても良い。
[第一実施形態]
図1は、運転実績データ解析システム100の概略構成図である。
図1に示すように、運転実績データ解析システム100は、車両が走行区間を走行した際の運転実績データに基づいて算出した運転状況を示す運転状況情報を評価し、その評価結果を提示するシステムである。
キーボード2は、メカニカルなキースイッチから構成され、各種情報を利用者によって入力可能である。
ICカードリーダ5は、列車の運転者各個人が所有するICカードが挿入された際に、ICカードに対する情報の書き込みまたは読み出しを行う機能を有する。
上述の評価基準は、運転状況が適切であるか否かを評価するための基準であり、この評価基準を構成する評価基準項目としては、(1)通過採時、(2)停車採時、(3)ブレーキ距離、(4)ブレーキ時間、(5)10m手前の速度、(6)ノッチ変化量、(7)不要なATCを当てない運転、(8)セクション通過時のノッチ扱い、などが挙げられる。以下に、各評価基準項目について順に説明する。
通過採時については、通過駅の採時誤差が±1秒以内の割合によって評価する。一例を挙げると、通過駅の採時誤差が±1秒以内の割合が50%以上である場合には、評価結果「AAA」(運転状況が極めて優れている)と評価し、同割合が30%以上、50%未満である場合には、評価結果「AA」(運転状況が優れている)と評価し、同割合が10%以上、30%未満である場合には、評価結果「A」(運転状況が普通である)と評価し、同割合が5%以上、10%未満である場合には、評価結果「B」(運転状況が劣る)と評価し、同割合が5%未満である場合には、評価結果「C」(運転状況が極めて劣る)と評価するといった具合である。
停車採時については、停車駅の採時誤差が±5秒以内の割合によって評価する。一例を挙げると、停車駅の採時誤差が±5秒以内の割合が50%以上である場合には、評価結果「AAA」(運転状況が極めて優れている)と評価し、同割合が30%以上、50%未満である場合には、評価結果「AA」(運転状況が優れている)と評価し、同割合が15%以上、30%未満である場合には、評価結果「A」(運転状況が普通である)と評価し、同割合が10%以上、15%未満である場合には、評価結果「B」(運転状況が劣る)と評価し、同割合が10%未満である場合には、評価結果「C」(運転状況が極めて劣る)と評価するといった具合である。
ブレーキ距離については、ブレーキ距離が車両の2.5両分以下である割合によって評価する。この評価基準は次の理由から設定されている。すなわち、新幹線においては30km/hまでATCの自動作用によりその速度が低下するようになっているために、運転士のマニュアル操作によるブレーキ扱いについては30km/h以下のみで実行され、30km/hから停止させるまでの適切なブレーキ距離は3両となっているからである。
ブレーキ時間については、ブレーキ時のブレーキ時間が18秒以下である割合によって評価する。一例を挙げると、ブレーキ時のブレーキ時間が18秒以下である割合が1%以下である場合には、評価結果「AAA」(運転状況が極めて優れている)と評価し、同割合が1%超、2%以下である場合には、評価結果「AA」(運転状況が優れている)と評価し、同割合が2%超、10%以下である場合には、評価結果「A」(運転状況が普通である)と評価し、同割合が10%超、20%以下である場合には、評価結果「B」(運転状況が劣る)と評価し、同割合が20%超である場合には、評価結果「C」(運転状況が極めて劣る)と評価するといった具合である。
停止位置の10m手前の速度が高いと停止位置を行き過ぎる危険性が高まることから、10m手前の速度については、停止位置から10m手前の区間における列車の速度が11km/h以上である割合によって評価する。一例を挙げると、上述の区間における列車の速度が11km/h以上である割合が1%以下である場合には、評価結果「AAA」(運転状況が極めて優れている)と評価し、同割合が1%超、2%以下である場合には、評価結果「AA」(運転状況が優れている)と評価し、同割合が2%超、10%以下である場合には、評価結果「A」(運転状況が普通である)と評価し、同割合が10%超、20%以下である場合には、評価結果「B」(運転状況が劣る)と評価し、同割合が20%超である場合には、評価結果「C」(運転状況が極めて劣る)と評価するといった具合である。
新幹線のカ行ノッチについては1から12(または13)ノッチまでとなっており、急激なノッチ扱いを行うと乗り心地が悪化することから、ノッチ変化量については、ノッチ扱い時のノッチ変化量が2ノッチ以下である割合によって評価する。一例を挙げると、ノッチ扱い時のノッチ変化量が2ノッチ以下である割合が70%以上である場合には、評価結果「AAA」(運転状況が極めて優れている)と評価し、同割合が60%以上、70%未満である場合には、評価結果「AA」(運転状況が優れている)と評価し、同割合が40%以上、60%未満である場合には、評価結果「A」(運転状況が普通である)と評価し、同割合が30%以上、40%未満である場合には、評価結果「B」(運転状況が劣る)と評価し、同割合が30%未満である場合には、評価結果「C」(運転状況が極めて劣る)と評価するといった具合である。
不要なATCを当てない運転については、通過時の信号が230km/m以下となる上下10駅を通過する際にATCブレーキを当てなかった割合によって評価する。一例を挙げると、通過時の信号が230km/m以下となる上下10駅を通過する際にATCブレーキを当てなかった割合が80%以上である場合には、評価結果「AAA」(運転状況が極めて優れている)と評価し、同割合が70%以上、80%未満である場合には、評価結果「AA」(運転状況が優れている)と評価し、同割合が40%以上、70%未満である場合には、評価結果「A」(運転状況が普通である)と評価し、同割合が30%以上、40%未満である場合には、評価結果「B」(運転状況が劣る)と評価し、同割合が30%未満である場合には、評価結果「C」(運転状況が極めて劣る)と評価するといった具合である。
セクション通過時のノッチ扱いについては、通過時に高ノッチであると衝撃が大きい上下10箇所のセクションを通過する際のノッチが6ノッチ以下の割合によって評価する。一例を挙げると、通過時の衝撃が大きい上下10箇所のセクションを通過する際のノッチが6ノッチ以下の割合が90%以上である場合には、評価結果「AAA」(運転状況が極めて優れている)と評価し、同割合が80%以上、90%未満である場合には、評価結果「AA」(運転状況が優れている)と評価し、同割合が30%以上、80%未満である場合には、評価結果「A」(運転状況が普通である)と評価し、同割合が20%以上、30%未満である場合には、評価結果「B」(運転状況が劣る)と評価し、同割合が20%未満である場合には、評価結果「C」(運転状況が極めて劣る)と評価するといった具合である。
次に、運転実績データ解析システム100の制御部3が実行する運転実績データ取得処理を、図3(a)のフローチャートを参照して説明する。この処理は、運転実績データ解析システム100の電源が投入され、列車の運転者各個人が所有するICカードがICカードリーダ5に挿入された際に実行される。
次に、運転実績データ解析システム100の制御部3が実行する運転状況評価処理を、図3(b)のフローチャートおよび図4を参照して説明する。なお、図4は、運転状況評価処理を説明する説明図である。
まず、ユーザによるキーボード2を介して受け付けた入力内容に基づき、評価項目ごとに運転状況情報を算出するための算出条件を設定する(S210)。一例を挙げると、特定の運転者による運転実績データを対象とすることや、所定期間中の運転実績データを対象とすることなどである。
(1)このように第一実施形態の運転実績データ解析システム100によれば、次のような作用効果を奏する。すなわち、運転状況評価処理において、制御部3が、算出条件に基づき、情報記憶部4から運転実績データを読み出し(S220)、その読み出した運転実績データに基づき、所定の走行区間における列車の運転状況を示す運転状況情報を算出し(S230、図4参照)、その算出された運転状況情報に基づき、情報記憶部4が記憶する評価基準を参照して、所定の走行区間における車両の運転状況が適切であるか否かを評価し(S240)、その評価結果を運転状況情報とともに表示部1に表示させる(S250、図4参照)。したがって、新幹線などの鉄道車両の運転実績データを短時間で定量的に解析して提示することができる。
・従来の手法:解析時間20分/1列車 × 150本/1日 =50時間/1日
・本実施形態の手法:運転実績データの取得5分+解析時間5分=10分/1日
そして、全列車のデータを解析することにより下記の(イ)〜(ホ)のような効果が得られる。
事故の前兆となる現象を発見し、事故として発生する前に乗務員に注意指導を行うことが可能となる。なお、事故の前兆となる現象としては、例えば、意識レベルの低下がみられる運転であれば、ATC頭打ちを繰り返したり遅れているのに低速で駅を通過したりすることなどが挙げられる。また、停止位置不良であれば、強いブレーキ扱いや、停止直前の速度が高いなどが挙げられる。
定時運転や丁寧なブレーキ扱い、乗り心地を考えた運転など、管理者による添乗指導時でなくても、意識の高い運転を行っている運転士のよい面を発見し、評価をすることによって運転士のモチベーション向上が期待でき、意欲を向上させることが期待できる。
事故発生時に、事故発生者のデータを解析することにより、事故原因を究明することが期待できる。例えば、停止位置不良であれば、普段からのブレーキ扱いに問題がないかどうかや突発の異常なブレーキ扱いだったのかを検証し、事故原因を解析した上で、同種のデータの傾向を示す他の乗務員が同種の事故を起こす可能性を秘めていることを勘案して注意指導することで事故発生を未然に防止することが期待できる。
新人運転士が操縦技量の未熟な状態から技能講習を経て運転操縦技量を向上させていく技量向上過程のデータを解析することにより、新人運転士の操縦技量の習熟度を判断し、未熟な点について指導を強化することが期待できる。
本発明のような運転実績データの解析により、列車別に遅れの時間や通過速度等の減少の発生実績を集約して解析することにより、ダイヤ構成上、遅れがちになる箇所が細かく把握することが期待できる。また、ダイヤ作成部署にデータを提供することにより、次期ダイヤ改正時の参考データとすることも期待できる。さらに、ダイヤ構成に無理が無い状態である場合でも、本発明のような運転実績データの解析により、乗務員の作業や駅係員の作業に無理な点がなくなることが期待でき、事故防止の観点から有用である。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
(4)また、上記実施形態の運転実績データ解析システム100が、ICカードリーダ5に限らず、外部のデータ読み取り手段から運転実績データを取得するようにしてもよい。
Claims (7)
- 鉄道車両が所定の走行区間を走行した際の運転実績を示す運転実績データとして、基準点からの距離、各位置における時刻、速度、信号、カ行ノッチ数、ブレーキノッチ数、ATCブレーキ動作の有無の各データを取得可能な運転実績データ取得手段と、
前記運転実績データ取得手段によって取得された一つ以上の運転実績データに基づき、前記所定の走行区間における前記車両の運転状況を示す運転状況情報として、通過駅の採時誤差が±1秒以内の割合、停車駅の採時誤差が±5秒以内の割合、ブレーキ距離が前記鉄道車両の2.5両分以下である割合、ブレーキ時のブレーキ時間が18秒以内である割合、停車位置から10m手前の区間における鉄道車両の速度が11km/h以上である割合、ノッチ扱い時のノッチ変化量が2ノッチ以下である割合、通過時の信号が230km/h以下となる上下10駅を通過する際にATCブレーキを動作させなかった割合、および通過時に高ノッチであると衝撃が大きい上下10箇所のセクションを通過する際のノッチが6ノッチ以下の割合を算出する運転状況算出手段と、
前記運転状況算出手段によって算出された運転状況情報の各項目について、項目ごとに予め設定された、前記運転状況を評価するための評価基準に合致するか否かを判定することにより、前記運転状況を評価する運転状況評価手段と、
前記運転状況評価手段による評価結果を提示可能な提示手段と、
前記運転状況評価手段による評価結果を前記提示手段に提示させる提示制御手段と、
を備えることを特徴とする運転実績データ解析システム。 - 請求項1に記載の運転実績データ解析システムにおいて、
前記運転実績データには、前記車両を運転した運転者を特定する運転者情報が含まれており、
前記運転状況算出手段は、前記運転者情報を参照して、前記運転状況情報を運転者ごとに算出することを特徴とする運転実績データ解析システム。 - 請求項1または請求項2に記載の運転実績データ解析システムにおいて、
前記運転実績データには、前記車両の列車名または便名を特定する列車名情報が含まれており、
前記運転状況算出手段は、前記列車名情報を参照して、前記運転状況情報を列車名または便名ごとに算出することを特徴とする運転実績データ解析システム。 - 請求項1〜請求項3の何れかに記載の運転実績データ解析システムにおいて、
前記運転状況算出手段は、複数の前記運転実績データに基づき、前記運転状況情報を算出することを特徴とする運転実績データ解析システム。 - 請求項4に記載の運転実績データ解析システムにおいて、
前記運転状況算出手段は、複数の前記運転実績データに基づき、連続する複数の所定期間に含まれる運転実績データごとに前記運転状況情報を算出し、
前記運転状況評価手段は、前記運転状況算出手段によって算出された前記複数の運転状況情報に基づき、前記評価基準を参照して、前記運転状況を前記複数の運転状況情報ごとに評価し、
前記提示制御手段は、前記運転状況評価手段による前記複数の評価結果を同時に前記提示手段に提示させること
を特徴とする運転実績データ解析システム。 - 請求項1〜請求項5の何れかに記載の運転実績データ解析システムにおける運転状況算出手段、運転状況評価手段および提示制御手段評価手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
- 請求項1〜請求項5の何れかに記載の運転実績データ解析システムにおける運転状況算出手段、運転状況評価手段および提示制御手段評価手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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