JP4895413B2 - 耐候性及び耐汚染性に優れたプレコート塗装鋼板用塗料とプレコート塗装鋼板及びその製造方法とその用途 - Google Patents
耐候性及び耐汚染性に優れたプレコート塗装鋼板用塗料とプレコート塗装鋼板及びその製造方法とその用途 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は家電、建材、自動車等に用いられる耐候性及び耐汚染性に優れたプレコ−ト塗装鋼板用塗料及びプレコート塗装鋼板とその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄板鋼板製品は塗装して使用するのが一般的である。この塗装の目的は素地の鋼板を保護すると同時に耐久性を増加し、これを美化するものである。塗装した鋼板は、建築物、船舶、橋梁等の大きなものから各種機械、自動車、家具、電気製品の小物や生活用品にまで使用されるが、一般にこれらの鋼板の塗装はポストコートと呼ばれるように加工・組立後に行われている。しかしながら、建材・家電分野では予め塗装された、いわゆるプレコ−ト塗装鋼板を加工・組立する方式に移行しつつある。このプレコ−ト塗装鋼板には、加工する際に塗膜が剥離しないように加工性のある高分子化した樹脂が被覆層に使用されている。中でもポリアクリル樹脂を被覆層に使用した場合、美麗な外観を得ることが可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ポリアクリル樹脂塗料を用いたプレコ−ト塗装鋼板を屋外等で使用する場合、雨風や埃による汚染に起因する外観不良を問題視する場合がある。
さらには、ポリアクリル樹脂の場合は十分な耐候性を得ることができない。なお耐候性とは、屋外にてプレコ−ト塗装鋼板を使用する際に、太陽光線の照射や風雨による樹脂の劣化や変質に基づく外観の変化に対する耐久性能のことを指す。
【0004】
これに対して化学的に安定なフッ素樹脂を被覆層に用いた場合、被覆層は十分な耐候性を持つがコストが大変に高い。特に最も化学的に安定であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)を被覆層に使用する場合、融点が約330℃と非常に高く、且つ樹脂自身に展性が低くフィルム等への成形が困難である点などから、この様な被覆層への適用は極めてコスト高になる傾向にある。
【0005】
そこで一般的には被覆層へPTFEを適用する場合、バインダ−として展性に富む樹脂を選定し、その樹脂中に粉体のPTFEを混合・溶解することにより被覆層に利用することが必要である。その際のバインダ−としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂など、PTFEに対してある程度の相溶性を有する樹脂であればいずれも使用可能である。
【0006】
但し、バインダ−の耐候性が低い場合は、PTFE以外の被覆構成部分の欠落による被覆層の汚損が生じ、PTFEの持つ化学的安定性を発揮することができない。
本発明は、前述の課題を解決するために、耐候性に優れた共重合アクリルポリオ−ル樹脂をバインダ−とし、且つPTFEを必須に含むフッ素樹脂粉末を混合してなるプレコ−ト塗装鋼板用塗料、及び被覆層に用いたプレコ−ト塗装鋼板と、そのプレコ−ト塗装鋼板を使用した用途を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述の目的を達成する本発明のプレコ−ト塗装鋼板用塗料及びプレコ−ト塗装鋼板は、重合性紫外線安定性単量体、シクロアルキル基含有重合性単量体、水酸基含有重合性単量体を必須に含む重合性単量体成分を共重合して得られる共重合アクリルポリオール樹脂と、PTFEを必須に含むフッ素樹脂含有粉末を塗料組成及び被覆層に有することを特徴とする。
【0008】
本発明のプレコ−ト塗装鋼板を屋根壁用、屋外広告用、照明反射用、トンネル内装用、自動車外装用、間仕切り、エレベ−タ−内装用等のパネルに使用することにより、耐候性及び耐汚染性に優れた薄板鋼板製品を得ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプレコ−ト塗装鋼板用塗料についてさらに詳細に説明する。
本発明のプレコ−ト塗装鋼板用塗料は、耐候性を向上させる重合体成分を含む共重合アクリルポリオ−ル樹脂とフッ素樹脂含有粉末から構成される。
共重合アクリルポリオ−ル樹脂には、紫外線安定化能力を有するヒンダードアミン等の官能基を含む重合性紫外線安定性単量体と、樹脂の耐候性を低下させずに塗膜の肉持ち性を持続させるシクロアルキル基含有重合性単量体、基材密着性の向上、及び架橋剤存在下での架橋点となりうる水酸基含有重合性単量体を含ませることを必須とする。
【0010】
重合性紫外線安定性単量体は、共重合体に優れた耐候性を与える上で必須な化合物であり、特に立体障害を受けたピペリジニル基と重合性不飽和基を分子内に少なくとも一個有するものが賞用されるが、中でも式(1)で示される物質が最も代表的に使用される。
【0011】
【化3】
【0012】
ここで、R1 は水素原子またはシアノ基、R2 ,R3 はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、Xはイミノ基または酸素原子、Yは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基または−CO−CR2 =CHR3 を示す。
具体的な化合物名を挙げて例示的に説明するならば、例えば4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6 −ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6 −ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、1−クロトノイルオキシ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジンなどを挙げることができ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0013】
また、シクロアルキル基含有重合性単量体は、樹脂の耐候性を低下させずに塗膜の肉持ち性を持続させる上で必須の化合物であり、式(2)で示される物質が最も代表的に使用される。
【0014】
【化4】
【0015】
ここで、式(2)中のR4 は水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、Zは置換基を有してもよいシクロアルキル基を示す。
具体的な化合物名を挙げて例示的に説明するならば、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、第三級ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−トなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0016】
次に水酸基含有重合性単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレ−トなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
さらに、その他の重合性単量体として、例えば、メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、プロピル(メタ)アクリレ−ト、イソプロピル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチル(メタ)アクリレ−ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ−トなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレ−トなどのエポキシ基含有不飽和単量体、(メタ)アクリルイミド、N,N’−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、ビニルピリジン、ビニルイミダゾ−ルなどの窒素含有不飽和単量体、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族不飽和単量体、酢酸ビニルなどのビニルエステル、ビニルエ−テル、(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和シアン化合物などを挙げることができ、必要に応じてこれらの中から1種または2種以上を使用することができる。
【0017】
上記の重合性単量体成分の共重合については、特に規定するものではないが、各単量体成分の含有比率は、紫外線安定性重合性単量体0.1〜10.0重量%、シクロアルキル基含有重合性単量体5.0〜97.9重量%、水酸基含有重合性単量体2.0〜35.0重量%、その他の重合性単量体0〜92.9重量%の範囲内において、共重合アクリルポリオ−ル樹脂100重量%を構成することが好ましい。
【0018】
次にフッ素樹脂含有粉末としては、PTFEを必須に含む常温で固体の微粒粉末を使用する。なおフッ素樹脂含有粉末中のPTFEの組成比は特に規定はしないが、15重量%以上含むことが好適である。PTFEが15重量%以下の場合、被覆層に十分な耐汚染性を付与することができない場合がある。フッ素樹脂含有粉末はPTFEなどのフッ素樹脂100%で構成してもよい。
【0019】
PTFE以外の構成要素としては、ポリオレフィンワックスやポリスチレンワックス等のワックス成分、塩基性官能基を有するアクリル樹脂やエポキシ樹脂などの顔料分散助剤、タルクや表面処理を施したチタン白顔料やシリカなどの骨材成分、金属修飾したマイカ粉やアルミ、鉄、亜鉛などから構成されるメタリック粉等の意匠性添加剤等を必要に応じて適宜使用できる。その組み合わせ及び組成比は必要に応じて選択すればよい。
【0020】
フッ素樹脂含有粉末の粒径については特に指定しないが、塗料の取り扱いの問題から数平均粒径で0.02〜150μmであることが望ましい。平均粒径が150μmより大きい場合は、バインダ−との混合が極めて困難になる。また平均粒径が0.02μmよりも小さい場合、塗料保管時の遊離や分離が顕著となり、実用に耐え得ない。なお、フッ素樹脂含有粉末が真球状である必要はなく、鱗片状や針状、異形状であっても差し支えはない。この場合は体積換算による平均粒径が前記の範囲にあることが望ましい。
【0021】
共重合アクリルポリオ−ル樹脂とフッ素樹脂含有粉末の組成比については特に規定はしないが、塗装時の容易性からフッ素樹脂含有粉末の添加量をフッ素樹脂含有粉末を除く乾燥塗膜全体100重量部に対する外割比で0.02〜70.0重量部とすることが望ましい。添加量が0.02重量部よりも小さな場合は、被覆層に十分な耐汚染性を付与することができない。また、70.0重量部よりも多い場合は、得られる塗料のチクソ性が大きくなり、塗装作業性が大きく低下することとなる。
【0022】
さらには、共重合アクリルポリオ−ル樹脂とフッ素樹脂含有粉末の混合方法は特に規定はしない。塗料配合時に用いられる一般的な手法により、分散、相溶もしくは混濁状態まで混合すればよい。
また、塗料中には必要に応じて架橋剤を添加することができる。架橋剤としてはアミノプラスト樹脂やポリイソシアネ−ト化合物を単独もしくは複合して配合できる。
【0023】
アミノプラスト樹脂としては、例えば、メチルエ−テル化メラミン樹脂、ブチルエ−テル化メラミン樹脂、ブチルエ−テル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチルエ−テル化シクロヘキシルベンゾグアナミン樹脂などを挙げることができる。アミノプラスト樹脂の前記共重合アクリルポリオ−ル樹脂との配合比は、共重合アクリルポリオ−ル樹脂100重量部に対し10〜100重量部とすることが良い。
【0024】
またポリイソシアネ−ト化合物としては、分子内に2個以上のイソシアネ−ト基を含んでいればよく、例えば、トリメチレンジイソシアネ−ト、1,6 −ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、およびこれらジイソシアネ−トの誘導体であるトリメチロ−ルプロパンアダクト体、ビュ−レット体、イソシアヌレ−ト体等のアダクトポリイソシアネ−ト化合物を挙げることができ、さらに、イソシアネ−ト化合物のイソシアネ−ト基をε−カプロラクタム、フェノ−ル、クレゾ−ル、オキシム、アルコ−ル等の化合物でブロックしたブロックポリイソシアネ−ト化合物等を挙げることができる。ポリイソシアネ−ト化合物と前記アクリルポリオ−ル樹脂との配合比は、共重合アクリルポリオ−ル樹脂のOH基1モルに対して、イソシアネ−ト基が0.3〜2.0モルとすることが好適である。
【0025】
また、硬化剤の使用に際しては、必要に応じてドデシルベンゼンスルホン酸などの硬化触媒を添加してもよい。その配合量は期待する焼成条件や塗膜性能バランスに応じて適宜判断すればよい。
さらには、チタン白顔料やチタンイエロ−、カ−ボンブラックなどの色顔料、シリカなどの体質顔料、両性界面活性剤やレベリング効果剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤など、一般に塗料中に使用される添加剤であれば、適宜それらを必要量混合させて用いてよい。
【0026】
特に耐候性能を向上させるため、特定波長に吸収能を有する添加剤の使用は効果的である。一例として、ベンゾトリアゾ−ル系もしくは蓚酸アニリド系の紫外線吸収剤を塗料中に用いることにより、波長200〜220nm領域に強線のある、殺菌灯などを光源として用いた促進耐候性試験における耐候性能を向上させることができる。
【0027】
また、希釈溶剤の配合についても特に規定を設けない。一般にプレコ−ト塗装鋼板用塗料に使用される希釈溶剤であれば、いずれの使用も差し支えない。
次いで、本発明のプレコ−ト塗装鋼板について詳細に説明する。なお、プレコ−ト塗装鋼板は、鋼板と被覆層から構成される。
基材となる鋼板としては、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛めっき鋼板、亜鉛−鉄合金めっき鋼板、亜鉛−アルミ合金めっき鋼板、アルミめっき鋼板、クロムめっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板、錫めっき鋼板、及びステンレス鋼板、アルミめっきステンレス鋼板、鉛めっきステンレス鋼板、亜鉛めっきステンレス鋼板等が挙げられる。
【0028】
なお必要に応じて鋼板には前処理を施すことができる。前処理の一例としては、水洗、湯洗、酸洗、アルカリ脱脂、研削、研磨、クロメート処理、リン酸亜鉛処理、複合酸化皮膜処理等があり、これらを単独もしくは組み合わせて塗装前処理を行うとよい。各前処理の条件は適宜選択すればよい。
次に、上記鋼板の少なくとも片面に施す被覆層としては、前述の共重合アクリルポリオ−ル樹脂とフッ素樹脂粉末を必須に含む混合体から構成される。
【0029】
共重合アクリルポリオ−ル樹脂には、前述の重合性紫外線安定性単量体、シクロアルキル基含有重合性単量体、水酸基含有重合性単量体を含ませることを必須とする。各重合性単量体の内容及び配合比は、前述の記載と同等である。
またフッ素樹脂含有粉末としては、前述のPTFEを15重量%以上含んだ常温で固形の微粒粉末を使用する。PTFE以外の構成物やその組成比、及びフッ素樹脂含有粉末の粒径や形状については前述の記載と同等である。
【0030】
共重合アクリルポリオ−ル樹脂とフッ素樹脂含有粉末の組成比については特に規定はしないが、塗装時の容易性からフッ素樹脂含有粉末の添加量をアクリルポリオ−ル樹脂100重量部に対し0.02〜70.0重量部とすることが望ましい。添加量が0.02重量部よりも小さな場合は、被覆層に十分な耐汚染性を付与することができない。また、70.0重量部よりも多い場合は、得られる塗料のチクソ性が大きくなり、塗装作業性が大きく低下することとなる。
【0031】
また、被覆層には必要に応じて架橋剤を使用することができる。架橋剤としてはアミノプラスト樹脂やポリイソシアネ−ト化合物を単独もしくは複合して使用できる。なお各架橋剤の種類、組成及び配合方法、及び硬化触媒の有無については前述の記載と同等である。
さらには、チタン白顔料やチタンイエロ−、カ−ボンブラックなどの色顔料、シリカなどの体質顔料、両性界面活性剤やレベリング効果剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤など、一般のプレコ−ト塗装鋼板に使用される添加剤であれば、適宜それらを必要量混合させて用いてよい。
【0032】
特に耐候性能を向上させるため、特定波長に吸収能を有する添加剤の使用は効果的である。一例として、ベンゾトリアゾ−ル系もしくは蓚酸アニリド系の紫外線吸収剤を塗料中に用いることにより、波長200〜220nm領域に強線のある、殺菌灯などを光源として用いた促進耐候性試験における耐候性能を向上させることができる。
【0033】
被覆層の膜厚については、加工性の確保及び塗装作業性の観点から、乾燥膜厚を1〜25μmとすることが望ましい。1μmより薄い場合は抜け等の塗装時の外観異常が発生しやすく、膜厚が25μmよりも厚い場合は基材に対する加工密着性が劣り、加工部塗膜の剥離を起こすおそれがある。
なお、鋼板と被覆層との間には、必要に応じて有機被覆層を単層または複数層形成させても差し支えない。設けた有機被覆層について、一般にプレコ−ト塗装鋼板に用いられる添加成分の使用についてはその制限を設けない。その一例としては、色顔料や体質顔料、防錆顔料や染料、レベリング成分やメタリック、マイカ、骨材などの意匠性成分などが挙げられる。
【0034】
また、各有機被覆層の膜厚については特に規定はしないが、製造工程上の乾燥限界及び被覆層の加工性より、25μm以下とすることが望ましい。25μmより大きい膜厚の場合、加工する際に塗膜が剥離脱落するおそれがある。
次いで、本発明のプレコ−ト塗装鋼板の製造方法について詳細に説明する。
まず、本発明における被覆層としては、前述の共重合アクリルポリオ−ル樹脂とフッ素樹脂粉末を必須に含む塗料から構成される。
【0035】
共重合アクリルポリオ−ル樹脂には、前述の重合性紫外線安定性単量体、シクロアルキル基含有重合性単量体、水酸基含有重合性単量体を含ませることを必須とする。各重合性単量体の内容及び配合比は、前述の記載と同等である。
またフッ素樹脂含有粉末は、前述のPTFEを15重量%以上含んだ常温で固形の微粒粉末を使用する。PTFE以外の構成物やその組成比、及びフッ素樹脂含有粉末の粒径や形状については前述の記載と同等である。
【0036】
共重合アクリルポリオ−ル樹脂とフッ素樹脂含有粉末の組成比については特に規定はしないが、塗装の容易性からフッ素樹脂含有粉末の添加量をアクリルポリオ−ル樹脂100重量部に対し0.02〜70.0重量部とすることが望ましい。添加量が0.02重量部よりも小さな場合は、被覆層に十分な耐汚染性を付与することができない。また70.0重量部よりも多い場合は塗料のチクソ性が大きくなり、塗装作業性が大きく低下することとなる。
【0037】
また、塗料中には必要に応じて架橋剤を使用することができる。架橋剤としてはアミノプラスト樹脂やポリイソシアネ−ト化合物を単独もしくは複合して使用できる。なお各架橋剤の種類、組成及び配合方法、及び硬化触媒の有無については前述の記載と同等である。
さらには、チタン白顔料やチタンイエロ−、カ−ボンブラックなどの色顔料、シリカなどの体質顔料、両性界面活性剤やレベリング効果剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤など、一般のプレコ−ト塗装鋼板に使用される添加剤であれば、適宜それらを必要量混合させて用いてよい。
【0038】
特に耐候性能を向上させるため、特定波長に吸収能を有する添加剤の使用は効果的である。一例として、ベンゾトリアゾ−ル系もしくは蓚酸アニリド系の紫外線吸収剤を塗料中に用いることにより、波長200〜220nm領域に強線のある、殺菌灯などを光源として用いた促進耐候性試験における耐候性能を向上させることができる。
【0039】
塗料は、鋼板の少なくとも片面に乾燥膜厚で1〜25μmとなるように塗布する。塗装膜厚が1μm未満では色抜け等の外観不良や耐候性の不足を起こす。一方、25μmを越えると加工性が不足する。
塗布した後は、150℃以上320℃未満で焼き付け、硬化乾燥させる。焼き付け温度は150℃未満では塗料中に使用した溶剤が十分に揮発せず、塗膜として硬化不足となり、320℃以上では樹脂成分の熱劣化が起こり加工性の低下などから製品として適さない。
【0040】
塗料の塗布方法としては、ロ−ルコ−タ−、カーテンフローコーター、ローラーカーテンコーター、静電塗装機、ハケ、ブレードコーター、ダイコーター等で必要な膜厚になるように塗装し、その後の硬化乾燥方法は、常温放置であるいは熱風炉、誘導加熱炉、近赤外線炉、遠赤外線炉、エネルギー線硬化炉等で硬化乾燥すると良い。
【0041】
なお、鋼板としては、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛めっき鋼板、亜鉛−鉄合金めっき鋼板、亜鉛−アルミ合金めっき鋼板、アルミめっき鋼板、クロムめっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板、錫めっき鋼板、及びステンレス鋼板、アルミめっきステンレス鋼板、鉛めっきステンレス鋼板、亜鉛めっきステンレス鋼板等が挙げられる。
【0042】
さらには、必要に応じて鋼板には前処理を施すことができる。前処理の一例としては、水洗、湯洗、酸洗、アルカリ脱脂、研削、研磨、クロメート処理、リン酸亜鉛処理、複合酸化皮膜処理等があり、これらを単独もしくは組み合わせて塗装前処理を行うとよい。各前処理の条件は適宜選択すればよい。
また、鋼板と被覆層との間には、必要に応じて有機被覆層を単層または複数層形成させても差し支えない。なお、設けた有機被覆層について、一般にプレコ−ト塗装鋼板に用いられる添加成分の使用についてはその制限を設けない。その一例としては、色顔料や体質顔料、防錆顔料や染料、レベリング成分やメタリック、マイカ、骨材などの意匠性成分などが挙げられる。
【0043】
また、各有機被覆層の膜厚については特に規定はしないが、製造工程上の乾燥限界及び被覆層の加工性より、25.0μm以下とすることが望ましい。それ以上の膜厚とした場合、製品を加工する際に加工部の塗膜が剥離脱落するおそれがある。
上記した本発明のプレコ−ト塗装鋼板は、例えば、屋根壁用パネル、屋外広告用パネル、照明反射用パネル、トンネル内装用パネル、自動車外装用パネル、間仕切りパネル、エレベ−タ−内装用パネルなど、屋外雰囲気にさらされる部品に適用することにより、従来よりもより安価で且つ耐候性能に優れた薄板鋼板製品を得ることが出来る。
【0044】
【実施例】
本発明のプレコ−ト塗装鋼板用塗料及びプレコ−ト塗装鋼板及びその製造方法の実施例について説明する。
アルカリ脱脂・クロメート処理した溶融亜鉛めっき鋼板上に、表1に示す塗料をバ−コ−タ−を用いて塗布し、その後高周波誘導加熱法によって焼き付けた。
【0045】
得られたプレコ−ト塗装鋼板について、下記の条件で耐候性と耐汚染性を評価した。
耐候性:促進耐候性試験としてはサンシャインウエザーメーター(SWOM)を行い、3000時間の試験前後の色度差(ΔE)、光沢保持率(GR)を測定し評価した。
耐汚染性:促進耐汚染性試験としては、5%カ−ボンブラック溶液中に供試材を200時間浸漬し、取り出し水洗後と試験開始前の色度差(ΔE)を測定し評価した。
【0046】
各々の試験結果を表2に示す。なお色度差(ΔE)は、色度測定器を用いて測定し、ΔEが1.0以下を良好と判断した。光沢保持率(GR)は、60度反射度測定器により測定し、60%以上を良好と判断した。
表2から明らかなように、本発明によるプレコ−ト塗装鋼板用塗料及びプレコ−ト塗装鋼板は、重合体組成及び配合比や、膜厚や焼き付け温度を適正範囲にした場合、優れた耐候性と耐汚染性を示すことがわかる。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
さらに表1に示す本発明のプレコ−ト塗装鋼板を、屋根壁用パネル、屋外広告用パネル、照明反射用パネル、トンネル内装用パネル、自動車外装用パネル、間仕切りパネル、エレベ−タ−内装用パネルに適用して、耐候性や耐汚染性を検討した結果、表2の結果と同様に良好な耐候性及び耐汚染性を示した。
【0050】
【発明の効果】
本発明の、重合性紫外線安定性単量体、シクロアルキル基含有重合性単量体、水酸基含有重合性単量体を共重合して得られるアクリルポリオール樹脂及びフッ素樹脂粉末を必須に含むプレコ−ト塗装鋼板用塗料及びプレコ−ト塗装鋼板及びその製造方法を用いることにより、耐候性と耐汚染性に優れた薄板鋼板製品の製造、並びに製品コストの削減をはかることができる。
Claims (20)
- 重合性紫外線安定性単量体、シクロアルキル基含有重合性単量体、水酸基含有重合性単量体を必須に含む重合性単量体成分を共重合して得られる共重合アクリルポリオール樹脂と、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)を含むフッ素樹脂含有粉末、及び、架橋剤成分としてアミノプラスト樹脂または/及びポリイソシアネート化合物を必須として含む、成膜後の耐候性と耐汚染性に優れたプレコ−ト塗装鋼板用塗料。
- 鋼板の少なくとも片面に、重合性紫外線安定性単量体、シクロアルキル基含有重合性単量体、水酸基含有重合性単量体を必須に含む重合性単量体成分を共重合して得られる共重合アクリルポリオール樹脂と、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)を含むフッ素樹脂含有粉末、及び、架橋剤成分としてアミノプラスト樹脂または/及びポリイソシアネート化合物を必須に含み、膜厚が1〜25μmである被覆層を有することを特徴とする、耐候性及び耐汚染性に優れたプレコ−ト塗装鋼板。
- 重合性紫外線安定性単量体、シクロアルキル基含有重合性単量体、水酸基含有重合性単量体を必須に含む重合性単量体成分を共重合して得られる共重合アクリルポリオール樹脂と、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)を含むフッ素樹脂含有粉末、及び、架橋剤成分としてアミノプラスト樹脂または/及びポリイソシアネート化合物を必須に含む塗料を、鋼板の少なくとも片面に乾燥膜厚で1〜25μm塗布した後、150℃以上320℃未満の板温度で加熱焼成を行うことにより被覆層を形成させることを特徴とする、耐候性及び耐汚染性に優れたプレコ−ト塗装鋼板の製造方法。
- 被覆層と鋼板の間に、化成処理層を有することを特徴とする、請求項2,6,7のいずれか1項に記載の耐候性及び耐汚染性に優れたプレコ−ト塗装鋼板。
- 被覆層と鋼板の間、または/及び被覆層の上に、有機被覆層を有することを特徴とする請求項2,6,7または8のいずれか1項に記載の耐候性及び耐汚染性に優れたプレコ−ト塗装鋼板。
- 被覆層と鋼板の間に、化成処理層を設けることを特徴とする、請求項3,10または11のいずれか1項に記載の耐候性及び耐汚染性に優れたプレコ−ト塗装鋼板の製造方法。
- 被覆層と鋼板の間、または/及び被覆層の上に、有機被覆層を施すことを特徴とする請求項3,10,11または12のいずれか1項に記載の耐候性及び耐汚染性に優れたプレコ−ト塗装鋼板の製造方法。
- 請求項2、6〜9のいずれか1項に記載のプレコ−ト塗装鋼板を使用した屋根壁用パネル。
- 請求項2、6〜9のいずれか1項に記載のプレコ−ト塗装鋼板を使用した屋外広告用パネル。
- 請求項2、6〜9のいずれか1項に記載のプレコ−ト塗装鋼板を使用した照明反射用パネル。
- 請求項2、6〜9のいずれか1項に記載のプレコ−ト塗装鋼板を使用したトンネル内装用パネル。
- 請求項2、6〜9のいずれか1項に記載のプレコ−ト塗装鋼板を使用した自動車外装用パネル。
- 請求項2、6〜9のいずれか1項に記載のプレコ−ト塗装鋼板を使用した間仕切り用パネル。
- 請求項2、6〜9のいずれか1項に記載のプレコ−ト塗装鋼板を使用したエレベーター内装用パネル。
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