JP4894631B2 - 帯電防止積層フィルム - Google Patents

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Description

本発明は帯電防止性積層フィルムに関するものであり、詳しくは低湿度下での帯電防止性と耐ブロッキング性に優れる帯電防止性積層フィルムに関する。
従来から、ポリエステル、ナイロン等からなる熱可塑性フィルムは、寸法安定性、機械的強度等に優れるため、包装用フィルム、工業用フィルムとして、多量かつ広い範囲に使用されている。特に、ICチップキャリアー用カバーフィルムに使われる熱可塑性樹脂は一般的に疎水性であるため、熱可塑性樹脂からなるフィルムの表面に静電気が発生しやすく、ほこり等が上記フィルムの表面に付着しやすいという問題がある。さらに、ICチップが静電気により破損する場合や、静電気によるICチップがキャリアーから取り出せない場合もある。また、着色フィルムや透明性の悪いフィルムは、内容物を目視検品する際に、検査の妨げになるなど様々なトラブルを引き起こしている。
これらのフィルムの帯電防止性を改善するために、帯電防止剤として界面活性剤を用いた帯電防止層を有するフィルムが知られている。しかしながら、界面活性剤では、塵、ほこり等の付着を抑制するのに充分な表面抵抗(1×1012Ω/□以下)が得難いのみならず、フィルム巻き取り時に帯電防止層とは反対側の表面に界面活性剤が移行する(裏移り)という問題、あるいは密着性が不良するという問題があり、フィルム製造工程においてロールの表面が汚染される場合がある。
また、高分子型帯電防止剤を用いて帯電防止層を形成する際に、帯電防止フィルムを加工する際に、この加工工程での熱によりフィルムの色目(b値)が変化する場合がある。さらに、帯電防止層が設けられた帯電防止積層フィルムを、インラインコート法を用いて製造する際に、帯電防止層は少なくとも一軸以上延伸されるために、帯電防止層の延展性が不十分であると帯電防止層に亀裂(クラック)が発生して、表面抵抗値が低下する場合や、透明性(ヘーズ)が悪化する場合がある。
このような問題を解消させ、易接着性、透明性、低湿下における帯電防止性に優れるプラスチックフィルム積層物に関する発明が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
特開平5−169593号公報
特許文献1には、未延伸もしくは1軸延伸された熱可塑性樹脂フィルム上に、少なくとも導電性能を有する極性ポリマー及びポリグリセリンを含有する層を少なくとも1層設けた後少なくとも1軸延伸されたプラスチックフィルム積層物に関する発明が記載されている(請求項1)。極性ポリマーは、導電性を有し、スルホン酸基を含むことが好ましいこと(段落0011)、その分子量が500以上であることが好ましいこと(段落0012)、ポリグリセリンは下記化学式のnが2以上20以下の整数である点(段落0024)、極性ポリマーとポリグリセリンの割合が質量比で30:70〜95:5であること(段落0027)が記載されている。
H−(OCHCH(OH)−CH−OH
また、特許文献1の実施例には、極性基を有する特定のコポリマー、ポリグリセリン(n=4〜10)、及びメチルセルロース、PVAまたはその誘導体などの水溶性ポリマーを含有し、最終の厚みが0.3〜1.0μmの帯電防止層をインラインコーティング法でPETフィルムに設けた積層フィルムが記載されている。そして、特許文献1の実施例に記載の積層フィルムは、ゼラチン膜、UVインキ層、PVA膜、磁性層との接着性に優れ、帯電防止層に亀裂が無く、透明性に優れ(ヘーズが1.0〜4.0%)、23℃、35%RHの低湿度下での表面比抵抗が低い(1×1011Ω〜4×1011Ω)ことが表1に示されている。
特許文献1の表1の試料1〜4から、塗布層の膜厚を厚くなるほど、表面比抵抗が高く、透明性(ヘーズ)が低下することがわかる。また、ポリグリセリンを帯電防止層に有しない試料6または7では、バインダー樹脂を有していても、膜厚が厚くなると塗膜に亀裂が入り、表面比抵抗と透明性が悪化することが分かる(試料2と試料6,7との対比より)。
すなわち、特許文献1に記載の発明では、接着性と延点性の点から帯電防止層に水溶性ポリマーを用いている。そのため、帯電防止効果を有する極性ポリマーが希釈され、帯電防止効果が低減する。そこで、帯電防止効果を改善するために、帯電防止層の膜厚を厚くすると、延展性が不十分になり、塗膜に亀裂が入り、帯電防止効果と透明性が悪化する。そのために、特許文献1では、帯電防止層にポリグリセリンを併用する。
しかしながら、この方法を用いても、帯電防止性の点から帯電防止層の膜厚を厚くする必要があるため、低湿度下での表面固有抵抗値、透明性の改善効果に限界がある。さらに、塗膜の厚みが厚くなることにより、耐ブロッキング性の低下や、色調(b値)が大きくなる、という問題がある。
一方、ポリアニリン又はその誘導体、ポリピロール又はその誘導体、ポリイソチアナフテン又はその誘導体、ポリアセチレン又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体、のような電子伝導型のπ電子共役系導電性高分子を帯電防止剤として使用した場合、良好な帯電防止性は得られるものの、その樹脂の特性上、無色透明な外観が得られず、b値が高いという問題が避けられない。
特に、ICチップキャリアー用カバーフィルムなどの先端分野では、低湿度環境下で静電気障害のないフィルムが求められており、そのためには低湿度下での表面固有抵抗値が1.0×1012Ω/□以下で、着色が少なく、透明性の良い帯電防止フィルムが望まれている。したがって、このような用途では導電性高分子を帯電防止剤として使用することができなかった。
また、フィルムヘの塗布を、フィルム製造時の製膜工程内で同時に行なうインラインコート法を用いて行う場合、塗布乾燥後の熱処理工程、あるいは塗布後の後加工工程等で200℃以上の高温の熱処理がフィルムにされる場合がある。特に、帯電防止剤として、カチオン系帯電防止剤を用いる場合、上記の熱処理がなされる工程において、帯電防止層中の帯電防止剤が熱分解して、帯電防止性が消失し、制電性が大幅に低下することがある。
また、ノニオン系帯電防止剤は、熱的に安定的であるが、低分子量の界面活性剤タイプであるため、フィルムの反対面への帯電防止剤が移行しやすく、かつ帯電防止層の表面がべとつきやすくなるためブロッキングが発生しやすくなる。また、そのイオン構造から、アニオン系高分子型帯電防止剤に比べ、低湿度下での帯電防止性に劣る。
本発明の目的は、前記の従来技術の課題を解決することにあり、具体的には、低湿度下での帯電防止性、耐ブロッキング、透明性に優れ、着色の少ない帯電防止績層フィルムを提供することにある。
前記の課題を解決することができる本願発明の帯電防止積層フィルムとは、熱可塑性フィルムの少なくとも片面に帯電防止層を積層し、次いで少なくとも一軸方向に延伸されてなる帯電防止積層フィルムであって、帯電防止層が、アニオン系高分子型帯電防止剤(a)、および下記一般式(I)で示されるグリセリン多量体(b)を含み、グリセリン多量体(b)は、平均繰り返し単位(n)が2〜10であり、かつグリセリンの含有量が10質量%以下である組成物からなり、塗布量が0.01〜0.29g/mであり、表面固有抵抗値(25℃、15%RH雰囲気下)が1.0×10Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下であることを特徴とする帯電防止積層フィルムである。
Figure 0004894631
また、第2の発明は、グリセリン多量体(b)が、精製率が90質量%以上のジグリセリンであることを特徴とする第1の発明に記載の帯電防止積層フィルムである。
第3の発明は、アニオン系高分子型帯電防止剤(a)に対するグリセリン多量体(b)の質量比(b/a)が5〜80質量%であることを特徴とする第1の発明または第2の発明に記載の帯電防止積層フィルムである。
第4の発明は、アニオン系高分子型帯電防止剤の数平均分子量が、5,000〜500,000であることを特徴とする第1〜3の発明のいずれかに記載の帯電防止積層フィルムである。
第5の発明は、アニオン系高分子型帯電防止剤がスチレンスルホン酸またはその塩を繰り返し単位として含むことを特徴とする第1〜4の発明のいずれかに記載の帯電防止積層フィルムである。
本発明の帯電防止積層フィルムは、帯電防止層に延伸助剤として、平均繰り返し単位(n)が2〜10であり、かつグリセリンの含有量が10質量%以下であるグリセリン多量体を用いているため、(a)バインダー樹脂を用いなくても、帯電防止層の延展性に優れる、(b)耐ブロッキング性に優れる、(c)基材フィルムである熱可塑性樹脂フィルムとの密着性に優れる、という従来技術からは予期できない、顕著な作用効果が得られる。さらに、帯電防止層の塗布量が薄くても、バインダー樹脂を必要としないため、アニオン系高分子型帯電防止剤による低湿度下での帯電防止性がいかんなく発揮され、透明性、着色が少ないという効果が得られる。
本発明の帯電防止積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムを基材フィルムとし、該基材フィルムの少なくとも片面に特定の帯電防止層が積層された層構成からなり、この帯電防止層が少なくとも1軸方向に延伸されている。
帯電防止層は、アニオン系高分子型帯電防止剤(a)、および平均繰り返し単位(n)が2〜10であり、かつグリセリンの含有量が10質量%以下のグリセリン多量体(b)を含む組成物からなり、最終の塗布量が0.01〜0.29g/mであり、表面固有抵抗値(25℃、15%RH雰囲気下)が1.0×10Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下である。
以下、本発明に用いる材料、各層の構成、導電性積層フィルムの製造方法、得られた導電性積層フィルムの物性を、詳細に説明する。
(基材フィルム)
本発明の帯電防止積層フィルムの基材として用いる熱可塑性フィルムとしては、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の単一ポリマーによるフィルム、あるいはそれらのポリマーの混合物からなるフィルム、同一又は異なる熱可塑性樹脂層を積層したフィルムでもよい。これらの熱可塑性樹脂フィルムのなかでも、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なポリエステルフィルムがより好ましく、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムである。
ポリエステルフィルムとは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどをエステル化反応又はエステル交換反応を行い、次いで重縮合反応させて得たポリエステルチップを乾燥後、押出機で溶融し、Tダイからシート状に押し出して得た未延伸シートを少なくとも1軸方向に延伸し、次いで熱固定処理、緩和処理を行うことにより製造されるフィルムである。
前記フィルムは、強度等の点から、二軸延伸フィルムが特に好ましい。延伸方法としては、チューブラ延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等から逐次二軸延伸法が好ましい。
フィルムには、ハンドリング性(例えば、積層後の巻取り性)を付与するために、粒子を含有させてフィルム表面に突起を形成させることが好ましい。フィルムに含有させる粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の耐熱性高分子粒子が挙げられる。
基材の熱可塑性樹脂フィルムに粒子を含有させる場合には、透明性の点からは、使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂がポリエステルの場合には、シリカ、シリカ−アルミナ複合酸化物が好ましく、特にシリカが好適である。シリカは、非晶性、結晶性のいずれでもよい。
また、透明性の点から、フィルム中の粒子の含有量は少ないことが好ましく、例えば1ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。さらに、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。また、フィルムには必要に応じて各種機能を付与するために、耐光剤(紫外線防止剤)、色素、帯電防止剤などを含有させてもよい。
本発明で用いる透明基材は、単層フィルムであっても、表層と中心層を積層した2層以上の複合フィルムであっても構わない。複合フィルムの場合、表層と中心層の機能を独立して設計することができる利点がある。例えば、厚みの薄い表層にのみ粒子を含有させて表面に凹凸を形成することでハンドリング性を維持しながら、厚みの厚い中心層には粒子を実質上含有させないことで、複合フィルム全体として透明性をさらに向上させることができる。前記複合フィルムの製造方法は特に限定されるものではないが、生産性を考慮すると、表層と中心層の原料を別々の押出機から押出し、1つのダイスに導き未延伸シートを得た後、少なくとも1軸方向に配向させる、いわゆる共押出法による積層が特に好ましい。
また、透明性をさらに向上させる方法として、基材の熱可塑性樹脂フィルム中には粒子を実質上含有させず、帯電防止層に粒子を含有させる層構成が好適である。粒子を実質的に含有させないとは、粒子が無機粒子の場合、蛍光X線分析法で定量する際に、検出限界以下の含有量を意味する。これは、樹脂の製造工程、樹脂の取り扱い工程、フィルムの製造工程でコンタミ成分として混入する場合があるためである。
基材の熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、素材、用途により異なるが、ポリエステルフィルムを用いる場合には、下限を5μmとすることが好ましく、より好ましくは10μmである。一方、厚みの上限は500μmが好ましく、より好ましくは200μm以下である。厚みが薄すぎる場合は、ハンドリング性が不良となるばかりか、帯電防止層の乾燥時や熱固定処理時に、フィルムに熱シワが発生して平面性が不良となりやすい。一方、厚みが厚すぎる場合は、コスト面で問題があるだけでなく、ロール状に巻き取って保存した場合に巻き癖による平面性不良が発生しやすくなる。
(帯電防止層)
本発明において、帯電防止層は、アニオン系高分子型帯電防止剤(a)、および平均繰り返し単位(n)が2〜10であり、かつグリセリンの含有量が10質量%以下のグリセリン多量体(b)、溶媒(c)、任意成分(d)、からなる塗布液を、インラインコーティング法を用いて、基材の熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に塗布、乾燥後、少なくとも1軸方向に延伸し、次いで熱固定処理を行って形成される。
本発明において、帯電防止層の最終の塗布量は0.01〜0.29g/mである。
帯電防止層の塗布量の下限は、帯電防止性の点から、0.01g/mであり、好ましくは0.02g/mであり、特に好ましくは0.03g/mである。一方、帯電防止層の塗布量の上限は、透明性、耐ブロッキング性の点から0.29g/mであり、好ましくは0.28g/mである。
また、帯電防止層側から測定した表面固有抵抗値(25℃、15%RHの雰囲気下)が1.0×10Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下である。上記の表面固有抵抗値は、1.0×10Ω/□以上1.0×1011Ω/□以下が好ましく、特に好ましくは1.0×10Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下である。
上記フィルムの表面固有抵抗値(25℃、15%RHの雰囲気下)を前記の範囲内に調整するためには、アニオン系高分子型帯電防止剤(a)とジグリセリン(b)との質量比(b/a)を5〜80質量%とすることが好ましい。また、バインダー樹脂を併用する場合には、帯電防止層を構成する固形分に対し、バインダー樹脂を20質量%以下とすることが好ましい。
(a)アニオン系高分子型帯電防止剤
本発明において、帯電防止層に含有させる帯電防止剤として、アニオン系高分子型帯電防止剤を用いる。カチオン系帯電防止剤では、25℃、15%RHの雰囲気下において帯電防止性が発現しない。また、本発明の帯電防止積層フィルムを製造する際には、帯電防止層を形成後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱固定処理を行う。
しかしながら、カチオン系帯電防止剤を用いる場合、該カチオン系帯電防止剤は耐熱性に乏しいため、熱処理工程において、該帯電防止剤が熱分解する。その結果、帯電防止性が低下する。さらに、巻き取ったフィルムを巻き出す際に、フィルム同士がブロッキングする。
本発明で用いるアニオン系高分子型帯電防止剤の数平均分子量は、耐ブロッキング性の点から、5,000以上が好ましく、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは50,000以上である。一方、帯電防止層の延伸時の割れ(クラック)を防止する点から、その数平均分子量を500,000以下が好ましく、さらに好ましくは200,000以下であり、特に好ましくは100,000以下である。帯電防止層の延伸時の割れ(クラック)を防止することにより、低湿度下での帯電防止性と透明性を維持することができる。
また、本発明で用いるアニオン系高分子型帯電防止剤は、スルホン酸基、カルボキシル基、硫酸エステル基から選ばれる少なくとも1つの極性基またはそれらの塩を有する極性ポリマーが好ましい。極性基はポリマー1分子当たり5モル%以上を必要とする。該導電性能を有する極性ポリマー中には、極性基としてヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アジリジン基、活性メチレン基、スルフィン酸基、アルデヒド基、ビニルスルホン基を含んでもよい。
本発明においては、これらの中でも、スチレンスルホン酸またはその塩を繰り返し単位として含む帯電防止剤が好適である。このような帯電防止剤としては、ポリスチレンスルホン酸またはその塩が挙げられる。塩としては、例えば、アンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩が挙げられる。ポリスチレンスルホン酸またはその塩は、例えば、日本エヌエスシーから、VERSA−TLという商品名で、分子量の異なる、未中和、各種の塩が市販されている。
また、スチレンスルホン酸またはその塩を繰り返し単位として含む帯電防止剤としては、スチレンスルホン酸−マレイン酸コポリマーも使用可能であり、日本エヌエスシーから市販されている。
(b)グリセリン多量体
本発明では、帯電防止層の延伸助剤として、下記一般式(I)で表される、平均繰り返し単位(n)が2〜10であり、かつグリセリンの含有量が10質量%以下のグリセリン多量体を用いることが重要である。
Figure 0004894631
グリセリン多量体を製造する際に、未反応モノマーとしてグリセリンが必ず含有する。このグリセリンが帯電防止層中に含まれていると、帯電防止性の補助効果と延展性の効果はあるが、その分子構造から造膜性に乏しい。そのため、タック性(ベトツキ感)が悪く、工程汚染、フィルム巻取り後の耐ブロッキング性が著しく低下する。グリセリン多量体中のグリセリンの含有量が多くなるにしたがって、耐ブロッキング性は悪化する。そのために、本発明においては、グリセリン多量体を精製し、グリセリンの量を低減させておくことが、耐ブロッキング性の点から重要である。
本発明で用いるグリセリン多量体は、平均繰り返し単位(n)が2〜10であるグリセリン多量体を用いる。本発明では、これらのグリセリン多量体の中でも、分子量分布の狭いジグリセリン(n=2)またはトリグリセリン(n=3)が好ましく、特に好ましくは、下記一般式(II)で示されるジグリセリンである。
Figure 0004894631
通常、市販されているグリセリン多量体は、一般にグリセリンが10質量%以上含有されていることが多い。そのため、本発明では、グリセリンの含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下になるように精製されたグリセリン多量体を用いることが好ましい。例えば、グリセリンの含有量が少ない精製率の高いジグリセリンは、例えば、阪本薬品からジグリセリンS(ジグリセリン量:95.9質量%、グリセリン量:0.2質量%)の商品名で市販されている。
グリセリンの量は、NMR、LC(液体クロマトグラフィ)、GC(ガスクロマトグラフィ)、あるいはGC−マススペクトル法を用いて、算出することができる。帯電防止積層フィルムから定量する場合には、帯電防止層を溶媒で溶解した後、溶解液を濃縮し、次いで、前記の方法を用いてグリセリンの含有量を求める。
前記の平均繰り返し単位(n)が2〜10であり、かつグリセリンの含有量が10質量%以下のグリセリン多量体は、アニオン系高分子型帯電防止剤100質量部に対し、5〜80質量部となるように含有させることが好ましく、より好ましくは10〜70質量部である。
アニオン系高分子型帯電防止剤100質量部に対し、前記のグリセリン多量体を5質量部以上、より好ましくは10質量部以上含有させることにより、延伸助剤の効果が発揮でき、帯電防止層へのクラックの発生を防止し、帯電防止性と透明性を維持するのに有効である。一方、アニオン系高分子型帯電防止剤100質量部に対し、前記のグリセリン多量体を80質量部以下、より好ましくは70質量部以下含有させることにより、塗布液の粘度の増加による外観欠点を防止するのに有効である。また、経時的なタック性の発生による、巻き取り後のフィルムのブロッキングを防止することもできる。
(c)溶媒
帯電防止層を形成させるために用いる溶媒は、基材の熱可塑性フィルムを溶解又は膨潤しないならばいかなる溶媒も使用可能であるが、水、又は水とアルコール等の有機溶媒との水系混合溶媒を用いることが環境面で好ましい。また、水または水系溶媒を用いる場合、有機溶媒による引火の危険性もないので、インラインコーティング法への適用が可能である。さらに、これらの水系溶媒を用いることにより、基材の熱可塑性フィルムへの塗布性及び帯電防止層の帯電防止性が向上する場合もある。
有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、メチルプロピレングリコール、エチルプロピレングリコール等のプロピレングリコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類等が好ましく用いられる。これらは、水と任意の割合で混合して用いられる。この例として、具体的には、水/メタノール、水/エタノール、水/プロパノール、水/イソプロパノール、水/メチルプロピレングリコール、水/エチルプロピレングリコール等を挙げることができる。用いられる割合は水/有機溶媒=10/90〜90/10(質量比)が好ましい。
(d)任意成分
さらに、本発明においては、帯電防止層を構成する組成物には、前記のアニオン系高分子型帯電防止剤、前記のグリセリン多量体以外に、他の機能を付与するために、例えばバインダー樹脂、脂肪酸エステル類、ワックス、界面活性剤、粒子等の任意成分を併用することができる。
(i)バインダー樹脂
バインダー樹脂は、本願発明の帯電防止積層フィルムを用いる際に、帯電防止層に他の材料(例えば、インキ層)を積層する際に、密着性を改善するために好適である。バインダー樹脂としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のホモポリエステルないし水酸基又はカルボン酸基を含んだ水溶性又は水分散性の共重合ポリエステルであるエステル樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のアクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステルポリメタクリル酸エステル等のアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリクロロメチルスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルフェノール等のスチレン樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル等のビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール類、ノボラック、レゾール等のフェノール樹脂等が挙げられ、積層する材料に応じて適宜選択する。
アニオン系高分子型帯電防止剤としてポリスチレンスルホン酸塩を用い、基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合、帯電防止剤との相溶性及び基材フィルムとの接着性の点から、バインダー樹脂として、共重合ポリエステルを用いるのが好適である。特に、スルホン酸基又はそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基が結合した共重合ポリエステル(以下、スルホン酸基含有共重合ポリエステルという)を用いるのが好ましい。
ここでスルホン酸基含有共重合ポリエステルとは、ジカルボン酸成分又はグリコール成分の一部にスルホン酸基又はそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基が結合したポリエステルをいい、なかでも、スルホン酸基又はそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有した芳香族ジカルボン酸成分を全酸成分に対して4〜10モル%の割合で用いて調整した共重合ポリエステルが好ましい。
このようなジカルボン酸の例としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が好適である。この場合、他のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸等が挙げられる。
なお、帯電防止層の表面硬度を高くし、良好な耐ブロッキング性を維持するためには、全酸性分中の96〜90モル%をテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とすることが好ましく、これらの芳香族ジカルボン酸の4〜10モル%を前記のスルホン酸基又はそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有させることがさらに好ましい。
スルホン酸基含有共重合ポリエステルを製造するためのグリコール成分としては、エチレングリコールが主として用いられ、この他に、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を用いることができる。中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等を共重合成分として用いると、ポリスチレンスルホン酸塩との相溶性が向上するという点で好ましい。
この他、共重合ポリエステルの共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有するジカルボン酸成分、グリコール成分を含んでも良い。さらに、得られる塗膜の表面硬度を向上させるために、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多カルボキシル基含有モノマーを5モル%以下の割合で上記ポリエステルの共重合成分として用いることも可能である。これらの多カルボキシル基含有モノマーが5モル%を越える場合には、得られるスルホン酸基含有共重合ポリエステルが熱的に不安定となり、ゲル化しやすく、本発明の帯電防止層の成分として好ましくない。
スルホン酸基含有共重合ポリエステルは、例えば、前記ジカルボン酸成分、グリコール成分、及び必要に応じて、多カルボキシル基含有モノマーを用いて、常法により、エステル化、エステル交換、重縮合反応等により得ることができる。得られたスルホン酸基含有共重合ポリエステルは、例えば、n−ブチルセロソルブのような溶媒とともに加熱攪拌され、さらに攪拌しながら徐々に水を加えることにより、水溶液又は水分散液として用いることができる。
上記のバインダー樹脂を併用する場合、バインダー樹脂の量は、アニオン系高分子型帯電防止剤100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましく、さらに好ましくは10質量部以下とする。バインダー樹脂の量をアニオン系高分子型帯電防止剤に対し20質量%以下とすることで、帯電防止性、透明性の低下を抑制することができる。
(ii)界面活性剤
本発明における帯電防止層を形成するための塗布液に、前記溶剤に可溶な界面活性剤をさらに併用することにより、濡れ性の悪い熱可塑性フィルムヘの塗布性が向上する。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤及びフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキル4級アンモニウム、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素系界面活性剤が好適である。
界面活性剤を用いる場合、その量は、帯電防止材料100質量部に対して通常0.001質量部〜10質量部である。界面活性剤の量が10質量部を越えると非コート面にコート層中の界面活性剤が裏移りすることがあり、2次加工等で問題を生じることがある。
(iii)粒子
本発明において、耐削れ性、耐ブロッキング性の点から、透明性を大きく阻害しない範囲で、帯電防止層中に粒子を含有させることができる。また、基材の熱可塑性フィルム中に粒子を含有させない場合、透明性とハンドリング性の点から、帯電防止層中に粒子を含有させることが好ましい。このような粒子としては、TiO、SiO、カオリン、CaCO、Al、BaSO、ZnO、タルク、マイカ、複合粒子等の無機粒子;ポリスチレン、ポリアクリレート、又はそれらの架橋体で構成される有機粒子等が挙げられる。透明性の点から、シリカが好ましい。
(iv)ワックス
本発明において、フィルムの滑り性、耐削れ性を向上させるために、透明性の阻害、製膜工程での飛散、圧着時のブロッキングの発生などがない範囲で、帯電防止層中にワックスを含有させることが好ましい。ワックスの具体例としては、植物系ワックス(カルナバワックス 、キャンデリラワックス 、ライスワックス 、木ロウ、ホホバ油、パームワックス 、ロジン変性ワックス 、オウリキュリーワックス 、サトウキビワックス 、エスパルトワックス 、バークワックスなど)、動物系ワックス(ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックスなど)、鉱物系ワックス(モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックスなど)、石油系ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス 、ペトロラクタムなど)、合成炭化水素系ワックス(フィッシャートロプッシュワックス 、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス 、ポリプロピレンワックス 、酸化ポリプロピレンワックスなど)が挙げられる。
これらの中でも、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが特に好ましい。これらは環境負荷の低減が可能であることおよび取扱のし易さから水分散体として用いることが好ましい。すなわち、帯電防止層にワックスを含有させるためには、ワックスを含有する水分散体を塗布液に混合するとよい。
また、ポリエチレンワックスは、数平均分子量が1,000〜10,000の範囲が好ましく、より好ましくは1,500〜6,000の範囲である。数平均分子量が1,000以上のポリエチレンワックスを用いることで、帯電防止層の耐ブロッキング性を維持することができ、またポリエチレンワックスがフィルムの反対面に移行することを抑制することができる。一方、数平均分子量が10,000以下のポリエチレンワックスを用いることで、滑り性の改善効果が発揮できる。
これらのワックスは、帯電防止層の組成物に対し、0.5〜30質量%含有させることが好ましく、さらに好ましくは、1質量%〜10質量%である。ワックスの含有量が0.5質量%未満ではフィルム表面の滑り性が向上しない場合がある。一方、ワックスの含有量が30質量%を超えると、基材の熱可塑性樹脂フィルムとの密着性が低下する場合がある。
(v)他の導電材料
帯電防止性のさらなる向上を目的として、SnO、ZnOの粉末、それらを被覆した無機粒子(TiO、BaSO等)、カーボンブラック、黒鉛、カーボン繊維等のカーボン系導電性フィラー等を添加することもできる。上記の導電性材料の含有量は、透明性の点から、帯電防止材料100質量部に対して4質量部以下とすることが好ましい。
また、上記の他に、本発明の目的を逸脱しない範囲で、種々の添加剤を含有することができる。
(帯電防止積層フィルムの製造方法)
本発明の帯電防止積層フィルムの代表的な製造方法を下記に示す。
未延伸ポリエステルフィルムを長手方向にポリエステルのガラス転移温度(Tg)〜(Tg+30℃)で、2.0〜5.0倍に長手方向にロール延伸する。この縦一軸延伸ポリエステルフィルムの片面に、アニオン性高分子型帯電防止剤(a)、平均繰り返し単位(n)が2〜10であり、かつグリセリンの含有量が10質量%以下のグリセリン多量体(b)、水系溶媒(c)を含む塗布液を塗布する。塗布液中で、アニオン性高分子型帯電防止剤(a)は、水系溶媒に溶解又は分散した状態で存在する。
また、熱可塑性フィルムの表面に帯電防止層を積層する方法としては、例えば、グラビアロールコーティング法、リバースロールコーティング法、ナイフコート法、ディップコート法、スピンコート法等を用いることができる。また、本発明において、フィルムヘの塗布を製膜工程内で同時に行うインラインコート法を用いると、本発明の効果を最大限に発揮できる。
次いで、テンターの予熱工程で塗布層を乾燥し、120〜150℃で1.2〜5.0倍に幅方向に延伸する。塗布層の乾燥はテンターの予熱工程で行う前に、プレヒーターを設置し、このプレヒーターで乾燥させてもよい。さらに、二軸延伸後に、220℃以上(融点−10℃)以下の温度で熱固定処理を行う。次いで、幅方向に3〜8%緩和させ、ロール状に巻き取ることによって、本発明の帯電防止積層フィルムを連続的に製造することができる。また、フィルムの長手方向の寸法安定性をさらに改善するために、縦弛緩処理を併用してもよい。
(帯電防止積層フィルムの物性)
このようにして得られた本発明の帯電防止性積層フィルムは、以下の特徴を有する。
(1)フィルムの表面固有抵抗値(25℃、15%RH雰囲気下)が1.0×10Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下である。すなわち、低湿度下での帯電防止性に優れているので、使用環境の影響を受けにくい。
(2)フィルムのb値が0〜3の範囲であり、黄色味が少ない色調を有する。
b値は、高分子型帯電防止剤の選択と塗布量の調整により、更に好ましくは0.1〜2.9、最も好ましくは0.2〜2.8の範囲に制御することができる。π電子共役系の導電性ポリマー(電子伝導)を帯電防止剤として使用する場合、この範囲を満足することができない。また、イオン伝導型帯電防止剤の中でも、アニオン系高分子型帯電防止を使用すること、塗布量の範囲を0.01〜0.29g/mに調整することにより、b値を前記の範囲に調整することができる。また、b値を0以下にするには蛍光増白剤を併用することが有効であるが、工業生産上好ましくない。一方、b値が3を超えると、フィルムの目視検査の妨げとなる。
(3)フィルムのヘーズ値が0.1〜10%以下であり、透明性に優れる。
フィルムのヘーズは、アニオン系高分子型帯電防止剤を使用し、アニオン系高分子型帯電防止剤とジグリセリンの質量比の調整と、基材フィルムまたは帯電防止層中に含有させる粒子の種類と量、基材フィルムの厚みと帯電防止層の塗布量の調整により、更に好ましくは0.2〜9%、最も好ましくは0.3〜8%の範囲に調整することができる。
次に、本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明はこれに限定されない。また本発明に用いる評価法を以下に示す。なお、分子量は特に記載の無い限り、数平均分子量(Mn)を表す。
(1)表面抵抗値
表面抵抗測定器(三菱油化製、Hiresta HT−210)を用い、印加電圧500V、25℃、15%RHの条件下で測定した。表面固有抵抗値の単位はΩ/□である(Ω/sqとも表す)。
(2)カラーb値
カラーメーター(日本電飾製、ZE2000)を用い、JIS Z8722に準拠した透過によるb値を測定した。
(3)ヘーズ値
ヘーズメーター(日本電飾製、NDH2000)を用い、JIS K7136に準拠したヘーズ値を測定した。
(4)耐溶剤性試験
学振式摩擦堅牢度試験機(山口科学産業製)を用い、エタノール2mgを二重にしたベンコットンにしみこませ、このベンコットンを塗布層の表面に接触させ、荷重500gfで10往復した後のヘーズの変化を求め、下記の基準で評価した。
○: ヘーズの変化率(試験後/試験前)が2倍以下
×: ヘーズの変化率(試験後/試験前)が2倍を超える
(5)耐ブロッキング性
2枚の積層フィルムの塗布面が対向するように重ね合わせ、5kg/cmの荷重を掛け、これを50℃の雰囲気中で24時間放置した。重ね合わせたフィルムを剥離し、その剥離状態を下記の基準で判定した。
○:軽く剥離できる
△:剥離音が発生し、部分的に塗布層が相手面に転移している
×:2枚のフィルムが固着し剥離できないもの、あるいは剥離できても基材フィルムが劈開している
(実施例1)
平均粒径2.7μm(レーザー光散乱法)のシリカ粒子(富士シリシア化学製、サイリシア310)を600ppm含有するポリエチレンテレフタレートを、290℃で溶融押し出しし、30℃の冷却ロールで冷却して、厚さが323μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを85℃に加熱された周速の異なる一対のロール間で縦方向に3.4倍延伸して、厚さが95μmの縦一軸延伸PETフィルムを得た。
次いで、この縦一軸延伸PETフィルムの片面に、下記の塗布液Aをウエット塗布量が7g/mになるように塗布した。この塗布フィルムをテンター内に導き、横方向に110℃の温度で3.8倍に延伸し、次いで230℃で熱固定処理を行った。さらに、同温度で幅方向にフィルムを3%緩和させた後、ワインダーでロール状に巻き上げ、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.04g/mであった。
塗布液Aの固形分濃度は1.5質量%であり、溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。また、帯電防止剤(a)とジグリセリン(b)の質量比(b/a)は50質量%である。塗布液Aの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Aの固形分の組成)
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 60.6 質量部
(日本エヌエスシー製、VERSA−TL125(商品名);Mn150,000)
・ジグリセリン 30.3 質量部
(阪本薬品製、ジグリセリンS(商品名);ジグリセリン量:95.9質量%、グリセリン量:0.2質量%)
・ポリエチレンワックス 9.1 質量部
(東邦化学製、ハイテックE9015(商品名);分子量4,000)
(実施例2)
実施例1において、塗布液Aの固形分の組成を下記に変更した塗布液Bを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.04g/mであった。
塗布液Bの固形分濃度は1.5質量%であり、溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。また、帯電防止剤(a)とジグリセリン(b)の質量比(b/a)は5質量%である。塗布液Bの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Bの固形分の組成)
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 83.3 質量部
(日本エヌエスシー製、VERSA−TL125(商品名);Mn150,000)
・ジグリセリン 4.2 質量部
(阪本薬品製、ジグリセリンS(商品名);ジグリセリン量:95.9質量%、グリセリン量:0.2質量%)
・ポリエチレンワックス 12.5 質量部
(東邦化学製、E9015(商品名))
(実施例3)
実施例1において、塗布液Aの固形分の組成を下記に変更した塗布液Cを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.04g/mであった。
塗布液Cの固形分濃度は1.5質量%であり、溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。また、帯電防止剤(a)とジグリセリン(b)の質量比(b/a)は80質量%である。塗布液Cの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Cの固形分の組成)
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 51.3 質量部
(日本エヌエスシー製、VERSA−TL125(商品名);Mn150,000)
・ジグリセリン 41.0 質量部
(阪本薬品製、ジグリセリンS(商品名);ジグリセリン量:95.9質量%、グリセリン量:0.2質量%)
・ポリエチレンワックス 7.7 質量部
(東邦化学製、E9015(商品名))
(実施例4)
実施例1において、塗布液Aの固形分の組成を下記に変更した塗布液Dを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.04g/mであった。
塗布液Dの固形分濃度は1.5質量%であり、溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。また、帯電防止剤(a)とジグリセリン(b)の質量比(b/a)は50質量%である。塗布液Dの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Dの固形分の組成)
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 54.1 質量部
(日本エヌエスシー製、VERSA−TL125(商品名);Mn150,000)
・ジグリセリン 27.0 質量部
(阪本薬品製、ジグリセリンS(商品名);ジグリセリン量:95.9質量%、グリセリン量:0.2質量%)
・ポリエチレンワックス 8.1 質量部
(東邦化学製、E9015(商品名))
・水系共重合ポリエステル 10.8 質量部
(東洋紡製、バイロナール MD1200(商品名))
(実施例5)
実施例1において、塗布液Aの固形分濃度が11.25質量%となるように、溶媒の比率を調整した塗布液Eを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.29g/mであった。
溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。また、帯電防止剤(a)とジグリセリン(b)の質量比(b/a)は50質量%である。塗布液Eの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Eの固形分の組成)
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 60.6 質量部
(日本エヌエスシー製、VERSA−TL125(商品名);Mn150,000)
・ジグリセリン 30.3 質量部
(阪本薬品製、ジグリセリンS(商品名);ジグリセリン量:95.9質量%、グリセリン量:0.2質量%)
・ポリエチレンワックス 9.1 質量部
(東邦化学製、E9015(商品名))
(実施例6)
実施例1において、塗布液Aの固形分濃度が0.4質量%となるように、溶媒の比率を調整した塗布液Fを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.01g/mであった。
溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。また、帯電防止剤(a)とジグリセリン(b)の質量比(b/a)は50質量%である。塗布液Fの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Fの固形分の組成)
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 60.6 質量部
(日本エヌエスシー製、VERSA−TL125(商品名);Mn150,000)
・ジグリセリン 30.3 質量部
(阪本薬品製、ジグリセリンS(商品名);ジグリセリン量:95.9質量%、グリセリン量:0.2質量%)
・ポリエチレンワックス 9.1 質量部
(東邦化学製、E9015(商品名))
(比較例1)
実施例1において、帯電防止剤を、π電子共役系導電性高分子(ポリアニリンスルホン酸)に変更した塗布液Gを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.04g/mであった。
塗布液Gの固形分濃度は1.5質量%であり、溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。また、帯電防止剤(a)とジグリセリン(b)の質量比(b/a)は50質量%である。塗布液Gの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Gの固形分の組成)
・ポリアニリンスルホン酸 60.6 質量部
(三菱レイヨン製、PAS)
・ジグリセリン 30.3 質量部
(阪本薬品製、ジグリセリンS(商品名);ジグリセリン量:95.9質量%、グリセリン量:0.2質量%)
・ポリエチレンワックス 9.1 質量部
(東邦化学製、E9015(商品名))
(比較例2)
実施例1において、帯電防止剤を、カチオン系帯電防止剤(第4級アンモニウム塩)に変更した塗布液Hを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.04g/mであった。
塗布液Hの固形分濃度は1.5質量%であり、溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。また、帯電防止剤(a)とジグリセリン(b)の質量比(b/a)は50質量%である。塗布液Hの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Hの固形分の組成)
・第4級アンモニウム塩 60.6 質量部
(綜研化学製、PQ−10(商品名))

・ジグリセリン 30.3 質量部
(阪本薬品製、ジグリセリンS(商品名);ジグリセリン量:95.9質量%、グリセリン量:0.2質量%)
・ポリエチレンワックス 9.1 質量部
(東邦化学製、ハイテックE9015(商品名))
(比較例3)
実施例1において、帯電防止剤を、ノニオン系帯電防止剤(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)に変更した塗布液Iを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.04g/mであった。
塗布液Iの固形分濃度は1.5質量%であり、溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。また、帯電防止剤(a)とジグリセリン(b)の質量比(b/a)は50質量%である。塗布液Iの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Iの固形分の組成)
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル 35 質量部
(花王製、エマルゲン404(商品名))
・ジグリセリン 50 質量部
(阪本薬品製、ジグリセリンS(商品名);ジグリセリン量:95.9質量%、グリセリン量:0.2質量%)
・ポリエチレンワックス 15 質量部
(東邦化学製、E9015(商品名))
(比較例4)
実施例1において、塗布液Aにジグリセリンを配合せずに調製した塗布液Jを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.04g/mであった。
塗布液Jの固形分濃度は1.5質量%であり、溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。
(塗布液Jの固形分の組成)
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 87 質量部
(日本エヌエスシー製、VERSA−TL125(商品名);Mn150,000)
・ポリエチレンワックス 13 質量部
(東邦化学製、E9015(商品名))
(比較例5)
実施例1において、塗布液Aの固形分の組成を下記に変更した塗布液Kを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.06g/mであった。
なお、ポリグリセリンのnの数は、使用した一般式(II)で表わされるポリグリセリンの平均値を示している。したがって、n=4のみの純品を用いたわけではない。
H−(O−CH−CH(OH)−CH)n−OH …(II)
塗布液Kの固形分濃度は1.5質量%であり、溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。塗布液Kの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Kの固形分の組成)
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 50 質量部
(日本エヌエスシー製、VERSA TL125(商品名))
・ポリグリセリン(n=4) 30 質量部
(ダイセル化学製、PGL04(商品名))
・メチルセルロース 20 質量部
(信越化学製、SM−15(商品名))
(比較例6)
実施例1において、塗布液Aの固形分の組成を下記に変更した塗布液Lを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.05g/mであった。
なお、ポリグリセリンのnの数は、使用した一般式(II)で表わされるポリグリセリンの平均値を示している。したがって、n=10のみの純品を用いたわけではない。
塗布液Lの固形分濃度は1.5質量%であり、溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。塗布液Lの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Lの固形分の組成)
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 45 質量部
(日本エヌエスシー製、VERSA TL125(商品名))
・ポリグリセリン(n=10) 30 質量部
(ダイセル化学製、PGL10(商品名))
・PVA 20 質量部
(日本合成化学製、ゴーセノールAH−17(商品名))
・架橋剤(グリセロールポリグリシジルエーテル) 5 質量部
(ナガセ化成工業製、デナコールEX−314、エポキシ当量145WPE)
(比較例7)
実施例1において、塗布液Aの固形分の組成を下記に変更した塗布液Mを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.04g/mであった。
塗布液Mの固形分濃度は1.5質量%であり、溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。塗布液Mの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Mの固形分の組成)
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 35 質量部
(日本エヌエスシー製、VERSA−TL125(商品名);Mn150,000)
・グリセリン 25 質量部
(阪本薬品製、精製グリセリン)
・トリグリセリン 25 質量部
(阪本薬品製、精製グリセリン)
・ポリエチレンワックス 15 質量部
(東邦化学製、E9015(商品名))
(比較例8)
実施例1において、塗布液Aの固形分の組成を下記に変更した塗布液Kを用い、塗布液の固形分濃度が塗布液Kの10倍になるように溶媒の比率を調整した塗布液Nを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.5g/mであった。
なお、ポリグリセリンのnの数は、使用した一般式(II)で表わされるポリグリセリンの平均値を示している。したがって、n=4のみの純品を用いたわけではない。
H−(O−CH−CH(OH)−CH)n−OH …(II)
塗布液Nの固形分濃度は15質量%であり、溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。塗布液Nの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Nの固形分)
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 50質量部
(日本エヌエスシー製、VERSA TL125(商品名))
・ポリグリセリン(n=4) 30質量部
(ダイセル化学製、PGL04(商品名))
・メチルセルロース 20質量部
(信越化学製、SM−15(商品名))
(比較例9)
実施例1において、精製率が98質量%のジグリセリンを、精製率が93%のジグリセリンに変更した塗布液Oを用いること以外は実施例1と同様にして、厚さが25μmの帯電防止積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの帯電防止層の塗布量は、0.04g/mであった。
塗布液Oの固形分濃度は1.5質量%であり、溶媒にはイソプロピルアルコール/水の混合液(=50/50;質量比)を用いた。また、帯電防止剤(a)とジグリセリン(b)の質量比(b/a)は50質量%である。塗布液Oの固形分の組成は下記の通りである。
(塗布液Oの固形分の組成)
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 35 質量部
(日本エヌエスシー製、VERSA TL125(商品名))
・ジグリセリン 50 質量部
(東京化成工業製; ジグリセリン量:80質量%、グリセリン量:≧10質量%)
・ポリエチレンワックス 15 質量部
(東邦化学製、E9015(商品名))
以上の積層フィルムの評価結果を表1に示した。
表1に示すように、実施例で得られた積層フィルムはいずれも、低湿度の雰囲気下での表面抵抗値が低く、充分な帯電防止性を有していた。さらに、色目に優れ(b値が小さい)、透明性にも優れていた。
一方、比較例1〜3は、帯電防止剤として、本発明のアニオン系高分子型帯電防止剤を用いずに、導電性高分子(比較例1)、カチオン系帯電防止剤(比較例2)、ノニオン系帯電防止剤(比較例3)を使用した例である。
比較例1で得られた積層フィルムは、帯電防止性(低湿下での表面固有抵抗値)が良好であったが、黄色味のある外観を呈していた。また、比較例2で得られた積層フィルムは、帯電防止性と透明性(ヘーズ)が著しく劣っていた。
さらに、比較例3で得られた積層フィルムは、色目、透明性は良好であるが、耐ブロッキング性に劣っていた。これは、比較例3で用いたノニオン系帯電防止剤(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)が低分子量であったため、フィルム製造時の熱処理により帯電防止層の表面にノニオン系帯電防止剤が移動し、表面がべとつきやすくなったためと推定される。また、帯電防止剤の種類が異なる以外は、同一の条件で製造した実施例1に記載の積層フィルムと比べると、低湿度下での帯電防止性に劣っていた。
比較例4は、帯電防止層に延伸助剤であるグリセリン多量体を含有させなかった例である。そのため、比較例4で得られた積層フィルムは、帯電防止性と透明性が著しく悪化した。これは、帯電防止層に延展性がないため、インラインコーティングで塗布乾燥を行った後の延伸工程で、帯電防止層に割れが発生したためと推察される。
比較例5、6は、特許文献1の実施例に相当する材料を用い、帯電防止層の厚みを薄くした実験例である。比較例5、6の帯電防止層には、ポリグリセリン(n=4,10)を用い、さらに水溶性樹脂が多く含まれている。そのため、帯電防止剤の効果が十分発揮できず、比較例5、6で得られた積層フィルムは、帯電防止性に著しく劣っていた。
比較例7は、精製したグリセリン(単量体)と精製したトリグリセリン(三量体)を等量混合し、平均分子量をジグリセリン(二量体)の分子量に合わせた実験例である。実施例1のジグリセリンと平均分子量は同じでも、グリセリンが多量に含まれているため、耐ブロッキング性に劣っていた。
比較例8は、比較例5の積層フィルムの帯電防止層の厚みを厚くした例である。本比較例8で得られた積層フィルムは、比較例5で得られた積層フィルムと比べ、低湿度下での帯電防止性は向上するが、一方、耐ブロッキング性が劣る結果となった。
比較例9は、グリセリンを10質量%以上含むジグリセリンを用いた例である。本比較例9で得られた積層フィルムは、グリセリン量の少ないジグリセリンを用いた実施例1と比べ、耐ブロッキング性に劣っていた。
Figure 0004894631
本発明の帯電防止積層フィルムは、帯電防止層にバインダー樹脂が含まれなくても、グリセリン量の少ないグリセリン多量体を延展助剤として用いているため、帯電防止層を形成した後に延伸しても、帯電防止層に亀裂が入りにくい。そのため、帯電防止層の厚みが薄くしても、低湿度下での帯電防止性が維持できる。したがって、透明性、低湿度下での帯電防止性を両立させることができる。さらに、帯電防止層は、基材フィルムとの密着性に優れる、という予期せぬ効果も得られる。
そのため、本発明の帯電防止積層フィルムは、磁気テープ、OHP、シールド材、LCD、感熱紙、受像紙、写真フィルム、刷版等に用いる、導電層を積層した工業用フィルム、キャリアテープ、偏光板プロテクトセパレートフィルム、トレー、マガジン、ICチップキャリアーカーバーフィルム・LSIパッケージ等に用いる導電層を積層した帯電防止フィルムとして好適である。

Claims (5)

  1. 熱可塑性フィルムの少なくとも片面に帯電防止層を積層し、次いで少なくとも一軸方向に延伸されてなる帯電防止積層フィルムであって、
    帯電防止層が、アニオン系高分子型帯電防止剤(a)、および下記一般式(I)で示されるグリセリン多量体(b)を含み、グリセリン多量体(b)は、平均繰り返し単位(n)が2〜10であり、かつグリセリンの含有量が10質量%以下である組成物からなり、塗布量が0.01〜0.29g/mであり、表面固有抵抗値(25℃、15%RH雰囲気下)が1.0×10Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下であることを特徴とする帯電防止積層フィルム。
    Figure 0004894631
  2. グリセリン多量体(b)が、精製率が90質量%以上のジグリセリンであることを特徴とする請求項1記載の帯電防止積層フィルム。
  3. アニオン系高分子型帯電防止剤(a)に対するグリセリン多量体(b)の質量比(b/a)が5〜80質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の帯電防止積層フィルム。
  4. アニオン系高分子型帯電防止剤の数平均分子量が、5,000〜500,000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止積層フィルム。
  5. アニオン系高分子型帯電防止剤がスチレンスルホン酸またはその塩を繰り返し単位として含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止積層フィルム。
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