JP4894093B2 - 活性エネルギー線硬化型樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、活性エネルギー線硬化性樹脂の製造方法に関し、より詳しくは、エポキシアクリレートの製造方法に関する。特に各種コーティング材料や接着剤、インキ、あるいはアルカリ水溶液での現像が可能なカラーフィルターや電子デバイスの保護膜、印刷配線基板用ソルダーレジスト等の永久保護マスク、配線基板の絶縁層、ビルドアップ材料等の用途に最適な活性エネルギー線硬化型樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種エポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸との開環エステル化反応により得られる不飽和エポキシエステル樹脂は、エポキシアクリレートまたはビニルエステルと呼ばれ、耐熱性、耐薬品性、耐水性、密着性、機械特性が他のアクリルオリゴマー類に比べ優れるため、各種コーティング材料、接着剤、インキ、構造材料に用いられ、特にプリント配線基板のソルダーレジストやその層間絶縁材料、ビルドアップ材料用としてとして広く用いられている。
【0003】
エポキシアクリレートの反応は、原料に用いる(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸が、非常に重合し易い化合物であるため、重合による系内のゲル化やゲル粒子の発生、粘度上昇等を防止するために、重合禁止剤を添加等して反応を行ことが一般的である。
【0004】
重合禁止剤としては、酸素を使用することが有効であるが、反応温度が80℃以上の反応系内に酸素を導入することは、反応に使用する溶媒や、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸の爆発を誘発するという問題がある。
【0005】
また、エポキシアクリレートの主要な応用分野であるソルダーレジスト等に関しては、基板情報量の増加につれてパターンの細密化が嘱望されているため、写真製版法によるソルダーレジストが用いられている。主な手法としては、未露光部インキを溶剤や希アルカリ液で現像する方法等があるが、コストや作業環境や環境保護の面で、希アルカリ液現像型が主流となっている。
【0006】
希アルカリ現像型ソルダーレジストは、エポキシアクリレート樹脂の水酸基に酸無水物を反応させてカルボキシル基をペンダン卜化させた、いわゆる酸ペンダン卜型エポキシアクリレー卜樹脂が主成分であり、この樹脂の製法やそれを利用した塗装方法は、特開昭61−243869や特開昭63−258975号公報等に記載されている。
【0007】
該公報には、ソルダーレジス卜硬化皮膜の耐水性や電気的特性を向上させるために、樹脂中のカルボキシル基を封鎖している。このカルボキシル基の封鎖のためにエポキシ樹脂を使用し、紫外線照射時の幅射熱を利用するか又は120〜130℃で後加熱することで架橋密度を向上させ強靭な皮膜を形成する方法が開示されている。しかしながら、酸ペンダン卜型エポキシアクリレー卜樹脂にエポキシ樹脂を配合してソルダーレジストや塗料に用いる場合、エポキシ基とカルボキシル基との反応により、経時的に増粘したりゲル化に至るといった組成物ライフ上の問題点があった。
【0008】
さらに通常は、作業性の面から、ソルダーレジストに溶剤又は必要に応じ少量のアクリルモノマーが配合されている。塗布したソルダーレジストは、ネガフィルムによるパターン化前に、70〜80℃雰囲気下で加熱して溶剤を揮散、除去した後、露光によるパターン化の工程がとられる。この工程で上記したカルボキシル基とエポキシ基の反応が進行すると、露光後の現像が不充分になる場合が多くなる。従って、カルボキシル基とエポキシ基の反応が進行しないような、配合温度や溶剤除去温度及び配合時間等の制約が生じ、組成物ライフとともに現像ライフが制限されるという難点があった。そこで組成物としてのライフあるいは、仮乾燥時の現像ライフが長い組成物が望まれている。
【0009】
こうしたライフの向上に関する問題点を解決する手段としては、エポキシアクリレート合成時の新規触媒の検討やエポキシアクリレート樹脂構造の改良、さらに合成触媒の失活方法等が挙げられ、種々の検討がなされている。例えば特公平6−23233号公報には、酸ペンダント型エポキシアクリレートの製造におけるエステル化触媒として有機酸の金属塩を使用することが提案されているが、現像ライフの向上に於いては効果的ではなかった。
【0010】
また、特開平3−100009号公報においては、特殊な構造を有するエポキシ化合物を用いた酸ペンダント型エポキシアクリレートのソルダーレジストインキ組成物が提案されているが、現像ライフの向上に於いては効果的ではなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明が解決しようとする課題は、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸の重合を防止した、活性エネルギー線硬化型樹脂の安定な製造方法を提供し、さらにソルダーレジストインキ用途として優れた活性エネルギー線硬化型樹脂の製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、エポキシ樹脂と、不飽和カルボン酸等の分子内にエチレン性不飽和二重結合およびカルボキシル基を有する化合物とを反応させて得られる、エポキシアクリレートである活性エネルギー線硬化型樹脂の製造において、特定の酸素濃度を有する気体の雰囲気下で反応をすることにより、上述の課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、 エポキシ樹脂(a1)と、不飽和モノカルボン酸および/またはそのオリゴマー(以下、不飽和カルボン酸、と称す)(a2)とを、3価の有機リン化合物触媒の存在下に、酸素濃度が2〜12重量%の気体(D)の雰囲気下で反応させる活性エネルギー線硬化型樹脂の製造方法であり、酸素濃度が2〜12%の気体(D)の雰囲気下が、酸素を含有する気体(d1)を反応系内の液面より下部から導入し、かつ不活性ガス(d2)を液面より上部から導入することにより得られるものであることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂の製造方法を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるエポキシ樹脂(a1)としては、分子内にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;これらのビスフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、キシレノールノボラック等各種ノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性のエポキシ樹脂;ナフタレン骨格を有するナフトール、ビナフトールやこれらナフトール類やこれらのノボラック体をエポキシ化して得られるナフタレン骨格のエポキシ樹脂;多価カルボン酸のグリシジルエステル型樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;脂肪族エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;アルキレンオキサイド変性エポキ樹脂;ザイロック型エポキキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレートやその誘導体;ポリグリシジル(メタ)アクリレートやグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有不飽和モノマーと他の不飽和モノマーとの共重合体等を挙げることができ、所望する要求性能により、これらエポキシ樹脂を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用しても良い。
【0015】
このうち、耐熱性、硬度、仮乾燥後のタック性等が良好である点からノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、なかでも数平均分子量が700〜3000であり、かつ軟化点が30〜120℃であるノボラック型エポキシ樹脂を1種以上用いることが特に好ましい。
【0016】
不飽和カルボン酸(a2)としては、(メタ)アクリル酸、これらのダイマー酸、トリマー酸等が挙げられ、このうち(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0017】
さらに、無水(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸の無水物を併用することができる。無水(メタ)アクリル酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸のアシルハライドと(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩との反応、あるいは塩化チオニル、塩化ホスホリル等の脱水剤存在下により(メタ)アクリル酸から調製することができる。また、(メタ)アクリル酸のダイマー酸、トリマー酸、不飽和一塩基酸、飽和一塩基酸等を併用して調製してもよい。
【0018】
また、無水(メタ)アクリル酸として、エチレン性不飽和二重結合と水酸基とを有する化合物と酸無水物との反応により得られたものも使用することができる。
【0019】
エチレン性不飽和二重結合と水酸基と有する化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、等のポリオールと(メタ)アクリル酸とエステル化して得られる化合物で水酸基を分子中に持っている化合物;分子内にエポキシ基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、上記水酸基と(メタ)アクリレート基を有する化合物にεカプロラクトン等の環状ラクトンを反応させたもの、上記水酸基と(メタ)アクリレート基を有する化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等環状エーテル化合物を反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0020】
酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、4−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水メチルナジック酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0021】
エポキシ樹脂(a1)と不飽和カルボン酸(a2)との反応では、反応系内に不飽和カルボン酸(a2)が残存することによる臭気や皮膚刺激性を防止し、またエポキシ基が過剰になることによる粘度上昇や安定性の低下等の不具合を防止するため、エポキシ樹脂(a1)中の全エポキシ基のモル数n1と不飽和カルボン酸(a2)中の全カルボキシル基のモル数n2との比である(n1/n2)が0.8〜1.2さらに好ましくは、0.9〜1.1の範囲であることが好ましい。
【0022】
本発明で用いる3価の有機リン化合物触媒としては、トリエチルフォスフィン、トリ−n−プロピルフォスフィン、トリ−n−ブチルフォスフィン等のトリアルキルフォスフィン類;トリフェニルホスフィン、トリ−m−トリルフォスフィン、トリス(2,6−メトキシフェニル)フォスフィン等のフォスフィン化合物が好ましい。なかでも、触媒能力が高いこと、および触媒失活が容易にできることからトリフェニルフォスフィンが特に好ましい。
【0023】
3価の有機リン化合物触媒の使用量としては、反応の進行を早めるとともに、未反応のまま残存する不飽和化合物が重合することを抑え、さらにエポキシ基が関与する副反応を抑えるとともに、反応熱を制御して安定性を保つため、仕込み量に対して500ppm〜10000ppmの範囲内で使用することが好ましい。
【0024】
また、3価の有機リン化合物触媒は、その他の触媒を併用することができる。その他の触媒としては、非ハロゲン系触媒が好ましく、例えば、トリエチルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の第4級アンモニウム塩類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;ジアザビスシクロウンデセン等の窒素化合物類;エチルトリフェニルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムハイドロオキサイド等のホスホニウム塩類;ナフテン酸クロムなどの金属塩等の各種触媒が使用できる。こうした触媒を併用する場合の使用量としては、仕込み量に対して10〜10000ppmが適性な量である。
【0025】
更に、10〜3000ppmの範囲でハロゲン系触媒を併用することもでき、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の無機触媒;ジエチルアミン塩酸塩;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類が挙げられる。
【0026】
本発明の製造方法においては、反応時の攪拌効率を向上し、またハンドリング性、塗工性や印刷性等のアプリケーション適性を改良するために、有機溶媒(C)を使用して反応することが好ましい。有機溶媒(C)としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトールなどのブチルカルビトールなどのカルビトール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどの酢酸エステル類、さらにその他アルキレンオキサイドから製造されるアルキレンアルコールやアルキレングリコール、アルキレンポリオール(例えばプロピレングルコール)やこれらアルキレンポリオールのアルキルエステルやアルキルエーテルのエーテル、エステル類等が挙げられる。
【0027】
本発明の製造方法において、2官能以上のエポキシ樹脂(a1)と、不飽和カルボン酸(a2)とを3価の有機リン化合物触媒存在下にて反応させる時、酸素濃度が2〜12%の気体(D)の雰囲気下において、反応系内を攪拌しながら反応を行うことにより、反応溶媒等の爆発の危険を回避しながら不飽和カルボン酸(a2)の重合を抑制することが可能であり、さらに樹脂の酸化にともなう副反応やゲル化の防止、色目の改良の点で良好である。酸素濃度が2〜12%の気体(D)は、酸素濃度が4〜10%の気体であることがさらに好ましい。また、反応を行う際には、攪拌装置の存在下で行うことが好ましく、攪拌効率が優れている装置で行うことが安定した製造にとって好ましい。
【0028】
反応装置内を、酸素濃度が2〜12%の気体(D)の雰囲気とするためには、例えば、酸素を含有する気体(d1)と不活性ガス(d2)とを併用することによって得られるものを用いることができる。
【0029】
酸素を含有する気体(d1)としては、酸素ガスを用いても、空気用いてもよく、コストの面から空気を用いることがより好ましい。
【0030】
不活性ガス(d2)としては、例えば、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等反応系において不活性であるものであれば良く、一般的には、窒素が好ましい。
【0031】
酸素濃度が2〜12%の気体(D)の導入量は、不飽和カルボン酸(a2)の重合等を防止して分子量の増大やゲル化等の発生を抑え、また酸化反応が促進されすぎることによる樹脂の色目の悪化を防止し、さらに反応成分等の揮発や飛散による物質収支の崩れ等を防止するため、エポキシ樹脂(a1)と不飽和カルボン酸(a2)と有機溶媒(C)との総量1kgあたり、1×10-3〜1×10-1l/minであることが好ましい。気体(D)は、連続的に導入しても、間歇して導入してもよく、導入量の平均がこの範囲内であればよい。
【0032】
酸素濃度が2〜12%の気体(D)の雰囲気とする方法としては、反応装置内の酸素濃度を2〜12%にできる方法であれば特に制限はないが、例えば、反応系の液面より上部から吹き込む方法や、気体導入ノズルを液面下に設定してバブリングする方法がある。気体導入ノズルを液面より下部に設定してバブリングした場合の方が、混合気のバブルが樹脂中に均一に分散し、安定した製造の面でより好ましい。
【0033】
さらに、反応装置内を、酸素濃度が2〜12%の気体(D)の雰囲気とするためには、酸素を含有する気体(d1)と不活性ガス(d2)とを、予め混合ガスとして調整されたものを反応装置内に導入しても、あるいは酸素を含有する気体(d1)と不活性ガス(d2)とを別々に反応装置内に導入し、反応系内で混合してもよい。
【0034】
酸素を含有する気体(d1)と不活性ガス(d2)とを別々に反応装置内に導入する場合は、酸素を含有する気体(d1)と不活性ガス(d2)の導入口ノズルは、別々になっていても1つになっていても良く、そのノズルは反応装置内に存在していることが必要である。このときのノズルの位置としては、酸素を含有する気体(d1)を反応系の液面下部より導入し、不活性ガス(d2)を反応系の液面上部より導入する位置にノズルがあることが安定した製造の面で好ましい。
【0035】
エポキシ樹脂(a1)と不飽和カルボン酸(a2)とを、3価の有機リン化合物の存在下、酸素濃度が2〜12%の気体(D)の雰囲気下で反応する際の、反応温度および反応時間としては、反応率を上げ、また触媒を不活性化して活性種として反応系内に残存しないようにすることによって保存安定性や現像型レジスト組成物の現像安定性等を良好に保ち、さらに生成した樹脂や反応溶媒が酸化等の副反応によって、着色や分子量分布の異常をもたらすことを防止するために、反応温度は100〜160℃で反応の進行状況を考慮しながら行う事が好ましい。この時の反応時間は、同様な理由から1〜15時間の範囲であることが好ましい。また、反応速度は、反応温度が高くなると速まることから、反応速度を適当に保つにために、反応温度を調整することが必要である。
【0036】
本発明の製造方法で得られる活性エネルギー線硬化型樹脂は、ソルダーレジスト等の用途に用いる場合には、現像ライフの向上のため、エポキシ樹脂(a1)と不飽和カルボン酸(a2)との反応終了後に、触媒である3価のリン化合物が不活性化していることが好ましい
【0037】
触媒の不活性化方法としては、特に制限されず、例えば、特開平5−320312号公報、特開平9−136942号公報においては、現像ライフの向上を目的として、有機リン化合物触媒を有機過酸化物により酸化させて失活させる、触媒の失活方法が開示されている。しかし、有機過酸化物は酸化剤としての効果を発揮するとともにパーオキシラジカルを発生し、重合開始剤ともなるため、触媒の失活工程において樹脂化合物の増粘やゲル化を引き起こし、樹脂の安定性に問題を与えるという問題点があった。
【0038】
そこで、3価のリン化合物触媒の不活性化方法としては、エポキシ樹脂(a1)と、不飽和モノカルボン酸(a2)との反応の終了後にさらに、酸素を含有する気体(d)を系内に導入することによって、不活性化を行うことが好ましい。
【0039】
酸素を含有する気体(d)としては、例えば、酸素ガス、空気等が挙げられ、コストの面から空気を使用することが好ましい。
【0040】
エポキシ樹脂(a1)と、不飽和カルボン酸(a2)との反応終了の判定は、系内の酸価、エポキシ当量の測定、赤外スペクトル等の分析によって行うことができる。
【0041】
酸価の値としては、固形分換算で5KOH-mg/g以下が安定性や臭気、安全性の面から好ましく、なかでも3KOH-mg/g以下がより好ましい。またエポキシ当量は、生成した樹脂安定性を良好に保つため、固形分換算で6000g/eq.以上、好ましくは10000g/eq.以上である。
【0042】
エポキシ樹脂(a1)と、不飽和カルボン酸(a2)との反応終了後、または触媒の不活性化反応後に、3価の有機リン化合物触媒の80重量%以上が不活性な5価の有機リン化合物に酸化されていることが好ましく、樹脂の安定性やレジストの現像安定性を向上させることが可能となる。
【0043】
3価の有機リン化合物触媒の不活性化における反応で、系内に導入する気体の量は、過剰な酸化反応によって樹脂の色目が悪化したり、または反応溶媒やその他の反応成分が揮発したり、あるいは飛散することによる物質収支のくずれを防止するため、反応系の総量1kgあたり1×10-3〜1×10-1l/min、さらに好ましくは、5×10-3〜5×10-2l/min量である。気体は連続的に吹き込んでも、間歇して吹き込んでも良く、導入量の平均がこの範囲内であることがより好ましい。
【0044】
気体の導入方法は、エポキシ樹脂(a1)と不飽和カルボン酸(a2)との反応と同様に、酸素を含有する気体(d)を、反応系の上部から吹き込んでも気体導入ノズルを液面下に設定してバブリングしても良い。
【0045】
さらに、酸素を含有する気体(d1)と不活性ガス(d2)とを別々に反応装置内に導入することによって、反応装置内を酸素濃度が2〜12%濃度の気体(D)の雰囲気として、触媒の不活性化を行ってもよい。このとき酸素を含有する気体(d1)と不活性ガス(d2)の導入口ノズルは、別々になっていても1つになっていても良く、そのノズルは反応装置内に存在していることが必要である。このときのノズルの位置としては、酸素を含有する気体(d1)を反応液面下部より導入し、不活性ガス(d2)を反応液面上部より導入する位置にノズルがあることが安定した製造と再現性のある触媒の不活性化を行える等の面から好ましい。
【0046】
有機リン化合物触媒の失活を行う反応温度は、触媒の失活反応速度を早め、さらに樹脂や反応溶剤が酸化する等の副反応を抑えるため、60℃〜160℃の範囲で行うことが好ましい。
【0047】
本発明の製造方法によって得られた活性エネルギー線硬化型樹脂は、ソルダーレジスト用途としてアルカリ水溶液で現像可能な樹脂とするために、エポキシ樹脂(a1)と不飽和カルボン酸(a2)とを反応させ、有機リン化合物触媒の失活をした後、さらに酸無水物(a3)を反応させることができる。
【0048】
エポキシ樹脂(a1)と、不飽和カルボン酸(a2)との反応において水酸基が生成するが、この水酸基に対して酸無水物(a3)の開環エステル化反応が起こり、カルボキシル基を樹脂中に導入ができる。
【0049】
開環エステル化反応は、反応系内の酸素濃度が2〜12%に保たれていることが好ましく、上記エポキシ樹脂(a1)と不飽和カルボン酸(a2)との反応時の気体導入量、または3価の有機リン化合物触媒失活反応の気体導入量と同一で行うことができる。また、反応温度は、50〜140℃の範囲で行うことが可能である。
【0050】
酸無水物(a3)としては、多塩基酸無水物が好ましく、その代表例としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、4−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水へキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ヘット酸、無水メチルナジック酸、無水イタコン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0051】
水酸基と酸無水物(a3)のと反応終点は、赤外分光スペク卜ル1770cm-1及び1850cm-1の酸無水物ピークが消失することで確認することが可能である。
【0052】
得られた樹脂の酸価は、アルカリ水溶液にて現像できうる酸価として、30〜150KOH-mg/g(固形分)、好ましくは、55〜130KOH-mg/g(固形分)であることが好ましい。
【0053】
本発明の製造方法においては、さらに酸化防止剤(E)の存在下で行うことにより、より安定した製造を行うことができる。酸化防止剤(E)としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ターシャリブチルハイドロキノン、2,6−ジターシャリブチル−4−メトキシフェノール、銅塩、フェノチアジン;トリエチレングリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,2−チオ−ジエチレンビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,Nヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−イソシアヌレート、等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;クレゾール、フェノール系酸化防止剤;ヒンダードアミン系安定剤;亜リン酸、亜リン酸エステル類、亜リン酸ジエステル類等が挙げられる。このうち、フェノール性水酸基を含有する酸化防止剤が好ましい。
【0054】
酸化防止剤(E)の使用量は、重合防止効果が十分に得られ、また活性エネルギー線硬化における硬化障害を防止するため、反応系の仕込み重量に対し50ppm〜2%までの範囲であることが好ましい。
【0055】
本発明の製造方法により得られた活性エネルギー線硬化型樹脂は、該樹脂の水酸基に対して、イソシアネート基含有のアクリレート化合物(F)を反応させてウレタン結合を導入し、多官能化された活性エネルギー線硬化型樹脂として光硬化の感度、物性等を改質することも可能である。
【0056】
イソシアネート基含有のアクリレート化合物(F)と、活性エネルギー線硬化型樹脂の水酸基との反応には、各種のウレタン化触媒を使用することができる。水酸基とイソシアネート基との比率は、感度の向上と反応性、アプリケーション適性、現像溶解性の面から水酸基1モルに対してイソシアネート基が0.05〜0.9モルであることが好ましく、なかでも0.05〜0.5モルであることが特に好ましい。
【0057】
かかるイソシアネート基含有のアクリレート化合物(F)としては、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネートアルキル(メタ)アクリレート等が使用できる。
【0058】
また、イソシアネート基含有のアクリレート化合物(F)は、末端にアクリレート基と水酸基とを有する重合性不飽和基と水酸基を有する化合物(f1)と分子中に2個以上イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(f2)とを反応することによっても得ることができる。
【0059】
末端に重合性不飽和基と水酸基とを有する化合物(f1)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
また、ポリイソシアネート化合物(f2)としては、イソシアネート化合物、あるいは、それをイソシアヌレート化せしめた形のポリイソシアネート、ビュレット化したポリイソシアネート、ポリオールとアダクトしたポリイソシアネート等が使用でき、かかるイソシアネート化合物としては、例えば、トルレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの如き、各種の脂環式ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートの如き、各種の脂肪族ジイソシアネート化合物;水添キシリレンジイソシアネート、4、4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート)の如き、各種の化合物等が挙げられる。
【0061】
本発明の製造方法で得られた活性エネルギー線硬化型樹脂を用いた、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、有機溶媒を添加することができる。有機溶媒としては、活性エネルギー線硬化型樹脂の製造で用いた反応溶媒(C)が使用できる。
【0062】
さらに、硬化膜の物性の改質、硬化性の改良、塗装適性の改質等の目的で光重合性モノマーを添加する事が出来る。光重合性モノマーとしては、特に制限はなく、各種の光重合性ビニルモノマーを用いることができるが、代表的な例としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレート、β−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート;
エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、もしくは、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、または、上記アクリレートに対する各メタクリレート類;
【0063】
多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−またはそれ以上のポリエステル;ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ノボラック型エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートのごとき、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー類、オリゴマー類等が挙げられる。
【0064】
上記のような光重合性ビニルモノマー及び/又は有機溶剤は単独又は2種以上の混合物として用いられ、使用量の好ましい範囲は、活性化エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対して30〜300重量部、更に好ましくは50〜200重量部である。
【0065】
更に、紫外線露光、現像後に酸ペンダント型エポキシアクリレートのカルボキシル基と反応しうる2官能以上のエポキシ樹脂(B)を添加することができる。かかるエポキシ樹脂(B)は1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が好ましく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール型エポキシ樹脂;これらのビスフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、キシレノールノボラック等各種ノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性のエポキシ樹脂;ナフタレン骨格を有するナフトール、ビナフトールやこれらナフトール類やこれらのノボラック体をエポキシ化して得られるナフタレン骨格のエポキシ樹脂;多価カルボン酸のグリシジルエステル型樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレートやその誘導体;ポリグリシジル(メタ)アクリレートやグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有不飽和モノマーと他の不飽和モノマーとの共重合体等を挙げることができ、所望する要求性能により、これらエポキシ樹脂を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用しても良い。その好ましい使用範囲は、酸ペンダント型エポキシアクリレート樹脂100重量部に対して、30〜300重量部、好ましくは30〜300重量部、更に好ましくは50〜200重量部である。
【0066】
更に、効果を損ねない範囲で、反応促進のためのアミン化合物類、イミダゾール化合物類、ジアルキル尿素類、カルボン酸類、フェノール類、メチロール基含有化合物類など各種のエポキシ硬化促進剤を少量併用し、塗膜を後加熱することにより、光硬化成分の重合促進ならびに、エポキシ化合物と酸ペンダント型エポキシアクリレートのカルボキシル基の反応及び、エポキシ化合物同士の反応を通して得られるレジスト被膜の諸物性を向上せしめることもできる。
【0067】
かくして得られる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、更に必要に応じて、硫酸バリウム、酸化ケイ素、タルク、クレー、炭酸カルシウムなどの公知慣用の充填剤、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなど各種の着色用顏料、消泡剤、密着性付与剤類を加えてもよい。
【0068】
本発明の製造方法で得られた活性エネルギー線硬化型樹脂を用いた、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、紫外線照射により硬化を行う際、光重合性開始剤、光増感剤を添加することができる。重合性光開始剤としては、特に制限はなく、各種の重合性光開始剤を用いることができ、例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステル、アルコキシアセトフェノン、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジルおよびベンジル誘導体、ベンゾインおよびベンゾイン誘導体、ベンゾインアルキルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェノイルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンのごときアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリブチルアントラキンノン、1−クロロアントラキノン、2−アルミアントラキノンのごときアントラキノン類、;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンのごときチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールのごときケタール類、またはキサントン類等が挙げられる。
【0069】
光重合開始剤の使用量は、通常、樹脂固形分100重量部に対して0.2〜30重量部、好ましくは2〜20重量部の範囲であり、一種あるいは二種以上と組み合わせて用いることもできる。
【0070】
本発明の製造方法で得られた活性エネルギー線硬化型樹脂を用いた、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、例えば、プリント配線基板上にスクリーン印刷法、ロールコーター法、カーテンコーター法、スプレーコーター法などにより全面に塗布し、活性エネルギー線を照射して必要部分を硬化後、希アルカリ水溶液で未露光部を溶かし去り、更に熱による後硬化を加えることにより、目的とする被膜を形成せしめることができる。
【0071】
活性エネルギー線とは、電子線、α線、γ線、X線、中性子線、紫外線のごとき、電離放射線や光などを総称するものである。
【0072】
活性エネルギー線樹脂組成物を硬化させるための照射光源として紫外線を使用する場合は、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が適当であり、その他レーザー光線なども硬化用の活性エネルギー線として利用できる。
【0073】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び応用例により、一層具体的に説明するが、以下において、部、および%は特に断わりのない限り、全て重量基準であるものとする。
【0076】
実施例3
温度計、撹拌器、及び還流冷却器を備えた50リットル反応容器に、エチルカルビトールアセテート6kgを入れ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂エピクロンN−680(大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ当量216)17.28kg(80mol)を溶解し、酸化防止剤としてBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)60g加えた後、アクリル酸5.76kg(80mol)、トリフェニルフォスフィン50gを添加し、空気を内径0.5mmのステンレス管用いて0.3l/min液面下より吹き込み、かつ窒素を液面上から0.5l/min吹き込みながら130℃で10時間エステル化反応を行なった。尚還流冷却器より排気ガス中の酸素濃度を反応中1時間毎に測定したところ酸素濃度は、7〜8%であった。さらにTHPA(テトラヒドロ無水フタル酸)の6.69kg(44mol)とエチルカルビトールアセテート10kgを仕込んで100℃で7時間反応を行った。酸価54KOH-mg/gで、エポキシ当量が54400g/eq(g/当量)の活性エネルギー線硬化型樹脂(X−3)を得た。
【0077】
実施例4
温度計、撹拌器、及び還流冷却器を備えた50リットル反応容器に、エチルカルビトールアセテート6kgを入れ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂エピクロンN−680(大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ当量216)17.28kg(80mol)を溶解し、酸化防止剤としてBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)60g加えた後、アクリル酸5.76kg(80mol)、トリフェニルフォスフィン70gを添加し、空気を内径0.5mmのステンレス管用いて0.3l/min液面下より吹き込み、かつ窒素を液面上から0.4l/min吹き込みながら120℃で5時間エステル化反応を行なった。尚還流冷却器より排気ガス中の酸素濃度を反応中1時間毎に測定したところ酸素濃度は、8〜9%であった。このときの酸価は、0.15KOH-mg/gでエポキシ当量が14900g/eqで反応は、終了していた。このときの樹脂を31P−NMRにてリン化合物の定量を行った結果、全リン量に対して40mol%がトリフェニルフォスフィンオキサイドに酸化されていた。さらに触媒失活工程として120℃でさらに5時間、空気と窒素を同様なる条件で吹き込んで処理を行った。この処理後同様にリン化合物の定量を行った結果95mol%がトリフェニルフォスフィンオキサイドに酸化されていた。さらに、THPA(テトラヒドロ無水フタル酸)6.69kg(44mol)とエチルカルビトールアセテート10kgを仕込んで100℃で7時間反応を行った。酸価が54KOH-mg/gで、エポキシ当量が70200g/eq(g/当量)の活性エネルギー線硬化型樹脂(X−4)を得た。
【0078】
実施例5
温度計、撹拌器、及び還流冷却器を備えた50リットル反応容器に、エチルカルビトールアセテート4.5kgを入れ、フェノールノボラック型エポキシ樹脂エピクロンN−770(大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ当量=190)15.2kg(80mol)を溶解し、酸化防止剤としてBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)30gとイルガノックス245を50g加えた後、アクリル酸5.69kg(79mol)、トリフェニルフォスフィン65gを添加し、空気を内径0.5mmのステンレス管用いて0.2l/min液面下より吹き込み、かつ窒素を液面上から0.4l/min吹き込みながら120℃で5時間エステル化反応を行なった。尚還流冷却器より排気ガス中の酸素濃度を反応中1時間毎に測定したところ酸素濃度は、6〜8%であった。このときの酸価は、0.10KOH-mg/gでエポキシ当量が15900g/eqで反応は、終了していた。このときの樹脂を31P−NMRにてリン化合物の定量を行った結果、全リン量に対して35mol%がトリフェニルフォスフィンオキサイドに酸化されていた。さらに触媒失活工程として120℃でさらに5時間、空気と窒素を同様なる条件で吹き込んで処理を行ったこの処理後同様にリン化合物の定量を行った結果94mol%がトリフェニルフォスフィンオキサイドに酸化されていた。さらに、THPA(テトラヒドロ無水フタル酸)の6.08kg(40mol)とエチルカルビトールアセテート10kgを仕込んで100℃で7時間反応を行った。酸価が54KOH-mg/gで、エポキシ当量が59100g/eq(g/当量)の活性エネルギー線硬化型樹脂(X−5)を得た。
【0079】
比較例1
温度計、撹拌器、及び還流冷却器を備えた50リットル反応容器に、エチルカルビトールアセテート5.1kgを入れ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂エピクロンN−695(大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ当量216)15.35kg(71.4mol)を溶解し、アクリル酸5kg(69mol)、トリフェニルフォスフィン50gを添加し、窒素を0.6l/min吹き込みながら120℃で反応を行なったが約3時間でゲル化した。
【0080】
比較例2
温度計、撹拌器、及び還流冷却器を備えた50リットル反応容器に、エチルカルビトールアセテート5.1kgを入れ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂エピクロンN−695(大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ当量216)15.35kg(71.4mol)を溶解し、アクリル酸5kg(69mol)、トリフェニルフォスフィン20gを添加し、130℃で反応を行なったが5時間後ゲル化した。
【0081】
比較例3
温度計、撹拌器、及び還流冷却器を備えた50リットル反応容器に、エチルカルビトールアセテート6kgを入れ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂エピクロンN−680(大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ当量216)17.28kg(80mol)を溶解し、酸化防止剤としてBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)60g加えた後、アクリル酸5.76kg(80mol)、触媒としてN,N−ジメチルベンジルアミン80gを添加し、空気中で120℃で4時間エステル化反応を行なった。さらに、THPA(テトラヒドロ無水フタル酸)の6.69kg(44mol)とエチルカルビトールアセテート10kgを仕込んで100℃で7時間反応を行った。酸価が54KOH-mg/gで、エポキシ当量が51200g/eq(g/当量)の活性エネルギー線硬化型樹脂(RX−3)を得た。
【0082】
比較例4
温度計、撹拌器、及び還流冷却器を備えた50リットル反応容器に、セロソルブアセテート18.5kgを入れ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂YDCN−638P(東都化成社製、エポキシ当量206)10.3kg(50mol)を溶解し、酸化防止剤としてp−メトキシフェノール10gを加えた後、アクリル酸3.6kg(50mol)、触媒としてトリフェニルフォスフィン140gを添加し、空気中で110℃で3時間反応を行なった。さらに、HHPA(ヘキサヒドロ無水フタル酸)の4.62kg(30mol)を仕込んで80℃で3時間反応を行った。 この溶液を冷却後ターシャリイブチルハイドロパーオキサイドを45g(0.5mol)を添加して50℃で1時間反応させた。酸価が44KOH-mg/gで、エポキシ当量が31200g/eq(g/当量)の活性エネルギー線硬化型樹脂(RX−4)を得た。
【0083】
応用例1〜3、比較応用例1、2
実施例及び比較例から得られた活性エネルギー線硬化型樹脂を用いて下記配合によりロールミルにより混練してレジストインキ組成物を調製した。
【0084】
<インキ樹脂>
樹脂固形成分(実施例3〜5および比較例3、4の樹脂) 50.0部
エチルカルビトールアセテート 5.0部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 4.0部
イルガキュア907(チバ・ガイギー社製 光重合開始剤) 2.5部
ジシアンジアミド 1.0部
トリグリシジルイソシアヌレート 14.0部
硫酸バリウム 23.0部
フタロシアニングリーン 0.5部
合計 100.0部
【0085】
<評価方法>
調製したレジストインキ組成物を、銅箔35μmのガラスエポキシ基材の銅張積層板の全面に150メッシュのスクリーンを用いて塗布し、テストピースを作成した。ついで作成されたテストピースを用いてレジストインキの感度と溶剤乾燥時の安定性について以下の方法で評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0086】
(1)感度測定
テストピースを80℃の乾燥器中に30分放置して溶剤を揮散させ、塗膜上にステップタブレットNo.2(コダック株式会社製)をのせ、高圧水銀ランプを用い500mJ/cm2、800mJ/cm2の紫外線を照射し後、1%炭酸ソーダ水溶液に120秒浸積し、ステップタブレット法で評価を行なった。評価数値は最大残存段数を示し、数値が大きいほど硬化性(感度)が優れていることを示す。500mJ/cm2の照射条件では6段以上、800mJ/cm2の条件では9段以上を合格とした。
【0087】
(2)溶剤乾燥時の現像安定性
テストピースを90℃の乾燥器中に20分〜80分放置して溶剤を揮散させ、1%炭酸ソーダ水溶液に180秒浸積して現像し、溶剤乾燥時の安定性を目視にて判定した。なお性能評価は下記の基準で行ない、50分以上安定なものを合格とした。
◎:積層板上に塗膜が全く残っていない。
○:積層板上に塗膜がほとんど残っていない。
△:積層板上に塗膜が若干残る。
×:積層板上に塗膜が残る。
【0088】
【表1】
【0089】
【発明の効果】
以上の実施例、比較例から、本発明の製造方法により安定した活性エネルギー線硬化型樹脂を提供することが理解される。また、第1表より本発明の製造方法によって得られた樹脂を用いた組成物は、特に従来から用いている酸ペンダント型エポキシアクリレートに比較して現像安定性に優れているといえる。
Claims (5)
- エポキシ樹脂(a1)と、不飽和モノカルボン酸および/またはそのオリゴマー(以下、不飽和カルボン酸、と称す)(a2)とを、3価の有機リン化合物触媒の存在下に、酸素濃度が2〜12重量%の気体(D)の雰囲気下で反応させる活性エネルギー線硬化型樹脂の製造方法であり、酸素濃度が2〜12重量%の気体(D)の雰囲気下が、酸素を含有する気体(d1)を反応系内の液面より下部から導入し、かつ不活性ガス(d2)を液面より上部から導入することにより得られるものであることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂の製造方法。
- 有機溶媒(C)の存在下で反応させる請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂の製造方法。
- 酸素を含有する気体(d1)が空気である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂の製造方法。
- エポキシ樹脂(a1)と、不飽和カルボン酸(a2)とを反応させた後、さらに酸無水物(a3)を反応させる請求項1〜3のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型樹脂の製造方法。
- 酸化防止剤(E)の存在下で反応させる請求項1〜4のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型樹脂の製造方法。
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