JP4893133B2 - リターンチューブ、及びボールねじ - Google Patents
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Description
ところで、このようなボールねじにあっては、鋼球がタング部に繰返衝突することで、タング部の根元部分に応力集中が発生してタング部が破損する恐れがあった。
そのため、通常、鋼球が衝突する際の衝撃力によってタング部が破損することを防ぐために、タング部の根元の隅はR形状に形成して強度を向上するようになっている。
また、上記特許文献1記載の従来の技術にあっては、ボールねじのロット数量が少ない場合には、リターンチューブの金型代がかさむため、コスト高となる恐れがあった。
本発明は、上記従来の技術の未解決の課題を解決することを目的とするものであって、タング部の強度を容易に向上可能なリターンチューブ、及び前記リターンチューブを備えたボールねじを提供することを課題とする。
このような構成によれば、ボールナットの移動速度が速くなり、タング部へのボールの衝突速度が増した場合に、タング部の根元の隅における応力集中を抑制することができ、その結果、例えば、材質を変えたり肉厚を増したりすることで、タング部の強度を向上する方法に比べ、タング部の強度を容易に向上することができる。
さらに、前記タング部は、前記R形状とされた部分及び側面部分の表面粗さを算術平均粗さで0.2μmより大きく且つ10μmより小さいものとしてもよい。
また、ボールねじ内に形成された螺旋状通路からボールをすくい上げるタング部を備えたリターンチューブであって、前記タング部は、根元の隅がR形状に形成され、そのR形状とされた部分及び側面部分の表面粗さを示す最大高さが1μmより大きく且つ20μmより小さいものとしてもよい。
<第1実施形態>
<ボールねじの構成>
図1は、本実施形態のボールねじの概略構成を破断して示す側面図である。この図1に示すように、ボールねじ1は、断面半円状のねじ溝2aを有して軸方向に伸びているねじ軸2と、そのねじ軸2のねじ溝2aに対向する断面半円状のねじ溝3aを有し、ねじ軸2に嵌合されたボールナット3と、それら両ねじ溝間に挿入された複数の鋼球4と、を含んで構成される。そして、ボールねじ1は、複数の鋼球4を介してボールナット3がねじ軸2の軸方向に相対移動可能となっている。
また、内径側縁部8aをR面取りする例を示したが、これに限られるものではない。例えば、図3に示すように、C面取りするようにしてもよい。
また、本実施形態のボールねじ1を搬送や精密位置決め等に用いることで、早送り速度向上及び加工サイクルタイムの低減を図ることができる。
次に、面取りを行っていない従来のタング部8と、面取りを行った上記実施形態のタング部8とにFEM応力解析を行った解析結果を、図面に基づいて説明する。
図4は、リターンチューブ7のタング部8に一定の加重を加えたときに生じた応力分布の解析結果であって、(a)は面取りを行っていない従来のタング部8の応力分布図であり、(b)は面取りを行った上記実施形態のタング部8の応力分布図である。
この応力分布図によれば、面取を行っていない従来のタング部8は内径側縁部8aに応力が集中しているのに比べ、面取を行った本実施形態のタング部8にあっては内径側縁部8aの周囲に応力が分散しており、応力集中が抑制されていることがわかる。
このグラフによれば、面取り量が大きくなるにつれて応力比は減少し、0.2t以上で期待する効果が得られているが、ある程度以上になると応力低下率が減少し、応力低下がサチレートしていることから、0.2t〜0.5tが好ましいことがわかる。
次に、本発明のリターンチューブの第2実施形態を図面に基づいて説明する。
この第2実施形態は、タング部8の根元の隅の内径縁部に面取りを行うことに代え、当該部分及びタング部8の側面部の表面粗さを示す算術平均粗さを小さくすることで、タング8の強度を向上するようにした点が前記第1実施形態と異なる。
具体的には、第2実施形態では、タング部8は、根元の隅がR形状に形成され、そのR形状とされた部分及び側面部分の表面粗さを示す算術平均粗さが0.2μmより大きく且つ10μmより小さく形成されている。
また、例えば、タング部8全体の表面粗さを小さくすることで、タング部8の強度を向上する方法や表面粗さを算術平均粗さで0.2以下とすることで、タング部8の強度を向上する方法に比べ、タング部8の強度をより容易に向上することができる。
次に、R形状とされた根元の隅及び側面部分の表面粗さを示す算術平均粗さを小さくした上記実施形態のタング部8に繰返荷重をかけた試験結果、図面に基づいて説明する。
図6は、タング部8のR形状とされた根元の隅及び側面部分の算術平均粗さが異なる9種類のタング部8(算術平均表面粗さRaが20、10、5、2、1、0.5、0.2、0.1、0.005μmのタング部8、評価数n=5)に繰返荷重をかける試験を行い、タング部8が107回以内に疲労破壊したときの荷重の平均を示すグラフである。
なお、図6では、前記疲労破壊したときの荷重の平均(耐荷重)を、最大粗さRa=20における耐荷重で除してなる耐荷重比で表す。
次に、本発明のリターンチューブの第3実施形態を図面に基づいて説明する。
この第3実施形態は、タング部8の根元の隅の内径縁部に面取りを行うことに代え、当該部分及びタング部8の側面部の表面粗さを示す最大高さを小さくすることで、タング8の強度を向上するようにした点が前記第1実施形態と異なる。
具体的には、第3実施形態では、タング部8は、前記R形状とされた部分及び側面部分の表面粗さを示す最大高さが1μmより大きく且つ20μmより小さく形成されている。
また、例えば、タング部8全体の表面粗さを小さくすることで、タング部8の強度を向上する方法や最大高さで1μm以下とすることで、タング部8の強度を向上する方法に比べ、タング部8の強度をより容易に向上することができる。
次に、R形状とされた根元の隅及び側面部分の表面粗さを示す最大高さを小さくした上記実施形態のタング部8に繰返荷重をかけた試験結果、図面に基づいて説明する。
図7は、タング部8のR形状とされた根元の隅及び側面部分の最大高さが異なる9種類のタング部8(最大高さRzが100、50、20、10、5、2、1、0.5、0.2μmのタング部8、評価数n=5)に繰返荷重をかける試験を行い、タング部8が107回以内に疲労破壊したときの荷重の平均を示すグラフである。
このグラフによれば、最大高さRzが小さくなるにつれて耐荷重比は大きくなり、20μmよりも小さい範囲で大きな効果が得られているが、ある程度以下(1.0μm以下)となると耐荷重比の増加率が減少し、耐荷重比の増加がサチレートしていることから、1.0μm〜20μmが好ましいことがわかる。
なお、本発明のリターンチューブは、上記実施の形態の内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
Claims (4)
- ボールねじ内に形成された螺旋状通路からボールをすくい上げるタング部を備えたリターンチューブであって、
前記タング部は、根元の隅がR形状に形成され、そのR形状とされた部分の内径側縁部が面取りされ、
前記タング部は、前記R形状とされた部分の内径側縁部がチューブ肉厚の20〜50%で面取りされていることを特徴とするリターンチューブ。 - 前記タング部は、前記R形状とされた部分及び側面部分の表面粗さを示す算術平均粗さが0.2μmより大きく且つ10μmより小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載のリターンチューブ。
- 前記タング部は、前記R形状とされた部分及び側面部分の表面粗さを示す最大高さが1μmより大きく且つ20μmより小さくなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリターンチューブ。
- 前記請求項1から3のいずれか1項に記載のリターンチューブを備えたボールねじ。
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