JP3728886B2 - ボールねじ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ボールを導いて循環させる循環チューブの端部にボール掬い用のタングを有したチューブ循環式のボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、マシニングセンターの高速送りねじ等の高速回転条件で使用されるチューブ循環式のボールねじは、図5及び図6に示すように構成されている。すなわち、ねじ軸1の外周面には断面円弧状の螺旋溝2が設けられている。また、ボールナット3は、ねじ軸1の螺旋溝2に対応する螺旋溝4を内面に有する円筒状の部材で、外周の一部に形成された平面部5に螺旋溝4に開口する二つの孔6が形成されている。このボールナット3の孔6には、ボール循環路としてのU字形の循環チューブ7の端部がそれぞれ嵌挿されている。この循環チューブ7は、ボールナット3の平面部5に固定ねじ8によって固定された取付板9により固定されている。
【0003】
ボールナット3の内孔に挿通されたねじ軸1は、その螺旋溝2がボールナット3の螺旋溝4と対向するように形成され、ボールナット3に設けた循環チューブ7からなるボール循環路とこの循環路端の間の螺旋溝4には、多数のボール10が転動自在に配されている。このボール10は、ボールナット3の螺旋溝4とねじ軸1の螺旋溝2に隙間なく嵌合し、ボールナット3とねじ軸1とは半径方向の相対移動を不能とされているが、軸方向にはボール10の転動を介して相対螺旋運動可能とされている。
【0004】
ボールナット3とねじ軸1の相対螺旋運動により、ボール10は螺旋溝2,4に沿って転動し、循環チューブ7の端部に形成されたタング11により掬い上げられて循環チューブ7内に入り、そのチューブ内を通って反対側端より螺旋溝2,4の間に入るという循環を繰り返す。
【0005】
循環チューブ7は、図7に示す分割型タイプと、図8に示す一体型タイプとがあり、分割型タイプは、図7に示すような管軸方向の対称軸で2分割された分割管部材12,12を接合して形成されている。この分割管部材12の一端部にはタング11が一体に設けられている。また、一体型タイプは、図8に示すように、チューブ7の端部にタング11が一体に設けられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のように構成されたボールねじ構造は、ボールナット3とねじ軸1の相対螺旋運動により、ボール10は螺旋溝2,4に沿って転動し、タング11により掬い上げられて循環チューブ7内に入るようになっているが、螺旋溝2,4の内部においてはボール10が円周方向に沿って走行するが、タング11により掬い上げられてボール10が直線方向に方向変換される。
【0007】
したがって、走行中のボール10の掬い上げ時に循環チューブ7のタング11の根元部にボール10による繰り返し衝撃力による応力が加わる。所定のd・N(d:軸径、N:回転数)を超えて連続走行すると、タング11の根元部の最大応力が作用している部分に繰り返し疲労によるクラックが発生して破断に至り、走行不能となることがある。
【0008】
すなわち、掬い上げられるボール10によって、循環チューブ7のタング11に繰り返しの衝撃力が作用し、所定のd・N値を超えて走行させた場合にはタング11の根元の最大応力が作用した部分から繰り返し疲労によるクラックが発生し、これがタング11の破損に至り、ボールねじの耐久性に大きく影響することになる。
【0009】
そこで、従来においては、高d・Nに対応するべく、(1) タング11の部分について有限要素法解析を行いその最適形状を決め、タング11の根元部に生じる応力集中を低減させる手段あるいは(2) 材料の変更、熱処理技術により材料強度を上げて、タング11の根元部の機械強度を向上させている。
【0010】
しかしながら、今後、ボールねじの使用条件のさらなる高速化要求に対応するため、さらに強度をアップした循環チューブの必要性が生じてきた。
この発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、循環チューブのタングの根元部に、繰り返し疲労性に効果的な残留圧縮応力を予め付与し、応力状態を最適にして、生産性を損なわない、つまり既存の循環チューブに追加工するだけで、材料変更、寸法変更の必要なく、高d・N用途のボールねじを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記目的を達成するために、請求項1は、ボールを導いて循環させる循環チューブの端部にボール掬い用のタングを有したチューブ循環式のボールねじにおいて、前記循環チューブと前記タングとの接合部で、該タングの根元部に予め残留圧縮応力を最表面部から20〜100μmの深さで20〜150kgf/mm2 付与したことを特徴とする。
【0012】
請求項2は、請求項1の残留圧縮応力は、最表面部から40〜80μmの深さで、30kgf/mm2 以上で100kgf/mm2 以下であることを特徴とする。
【0013】
この発明によると、循環チューブのタングの根元部の最大応力が作用する部位及びその周辺部分に予め残留圧縮応力を付与することにより循環チューブのタングの根元部の疲れ強さが向上する。残留圧縮応力を前記の値にするためには例えば、公知のショットピーニング法を採用する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は循環チューブを示し、図2はタング部分におけるFEMによる解析結果とショットピーニング処理部を示し、図3は直圧式ノズル型ショットピーニング装置を示す。
【0015】
まず、図3に基づいて循環チューブ7のタング11の根元部11a及び周辺部分に予め残留圧縮応力を付与する手段に用いる直圧式ノズル型ショットピーニング装置の構成について説明する。本装置は、ショット粒21が充填された加圧タンク22と、この加圧タンク22に加圧空気を供給する加圧空気供給管23と、加圧タンク22内に供給された空気を排気する排気管24と、前記加圧タンク22の下部に配設され、前記加圧空気供給管23の分岐管25からの圧縮空気とショット粒21とを混合するとミキサ26と、ショット27を先端のノズル28から被処理物表面に投射するホース29と、前記加圧タンク22内にシャッタ30を介してショット粒21を供給するホッパ31と、前記分岐管25の途中に設けられ、ショット粒21の投射速度を調整するために空気圧を調整可能なバブル32とから構成されている。
【0016】
本実施形態では、ショット粒21として、平均粒径0.3mmの平均硬さHRC61のスチールビーズを使用し、図1に示す循環チューブ7のタング11にショットピーニング処理を行った。すなわち、投射する部分はボール10の掬い上げ時にボール10の衝撃により生じるタング11の根元部11aの最大応力発生部であり、これは図2に示すように、FEM(finite element method)解析により求め、その周辺部分にもショット粒21を投射した。このショットピーニングの際、バルブ32の開度を調整して空気圧を変更することによりタング11の根元部11aの残留圧縮応力値を変化させた。
【0017】
そして、このような各試験用循環チューブを用いてボールねじの高速耐久試験(ボールねじ仕様:軸径d=55mm、試験条件:回転数N=4000rpm [d・N=22万])を行った。使用した試料チューブ:ステンレス材、t=1.4mmであり、表1は、各試験用循環チューブのタング根元部の最表面部からの各深さにおける残留圧縮応力値を示し、表1の未処理品はショットピーニング処理を施さない従来の循環チューブ、試料▲1▼ 〜▲7▼ は処理品であり、左端の0〜200はタング根元部の最表面部からの深さを表す。
【0018】
【表1】
【0019】
また、図4は表1をグラフ化したものであり、横軸がタング根元部の最表面部からの深さ(μm)、縦軸が残留圧縮応力値(kgf/mm2 )である。さらに、表2は耐久試験結果を示す。
【0020】
【表2】
【0021】
図4及び表2に示すように、ショットピーニング処理を施さない従来の循環チューブ(未処理品)は、本来持っている残留圧縮応力が10kgf/mm2 であり、タング11が破損するまで(破損寿命)の応力繰返し数比を1とし、処理品は未処理品に対する比率で示した。
【0022】
処理品▲1▼ は表面から深さ20〜100μmまでの残留圧縮応力が22〜26kgf/mm2 で、タング11の破損寿命は未処理品に対して1.5倍となった。逆に残留圧縮応力が大きい処理品(深さ60μmで120kgf/mm2 ) ▲6▼ や処理品(深さ60μmで150kgf/mm2 )▲7▼ については耐久性が未処理品に対して3〜4倍となった。
【0023】
これに対して、最表面部から40〜80μmの深さで30kgf/mm2 以上100kgf/mm2 以下の処理品▲2▼ ▲3▼ ▲4▼ ▲5▼ では、未処理品に対して80〜85倍の耐久性が向上し、上述の未処理のチューブよりも一桁以上走行させても破損せず、耐久性が特に大きく向上することが確認できた。
【0024】
したがって、この発明によれば、循環チューブ7のタング11の根元部及びその周辺部分に予め残留圧縮応力を最表面部から20〜100μmの深さで20〜150kgf/mm2 付与すること、望ましくは、残留圧縮応力を、最表面部から40〜80μmの深さで、30kgf/mm2 以上で100kgf/mm2 以下にすることにより、タング11の強度をアップさせることができ、ボールねじの使用条件のさらなる高速化要求に対応できる。
【0025】
なお、循環チューブの材質が圧延鋼材やステンレス材その他の合金鋼からなる管材やそれに熱処理を施したものでもショットピーニング処理が可能である。また、チューブの種類としては、分割型タイプ(図7)や一体型タイプ(図8)でもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、循環チューブのタングの根元部に予め残留圧縮応力(最表面部から20〜100μmの深さで20〜150kgf/mm2 )を付与することにより、タングの根元部の強度をアップさせることができ、ボールねじの使用条件のさらなる高速化要求に対応できる。また、特にその残留圧縮応力が最表面部から40〜80μmの深さで30kgf/mm2 以上で100kgf/mm2 以下である循環チューブは、さらなる高速用途でのボールねじの耐久性を特に大きく向上することができる。また、タングの根元部の最大応力発生部だけの狭い範囲にショットピーニング処理すればよく、処理が簡単である。
さらに、既存の循環チューブに追加工するだけで、材料変更、寸法変更の必要がなく、廉価に提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態のボールねじの循環チューブを示す側面図。
【図2】同実施形態のタング部分におけるFEMによる解析結果とショットピーニング処理部を示す図。
【図3】同実施形態の直圧式ノズル型ショットピーニング装置の構成図。
【図4】同実施形態の各試料の残留圧縮応力値を示すグラフ。
【図5】従来のチューブ循環式のボールねじ平面図。
【図6】従来のチューブ循環式のボールねじ横断面図。
【図7】従来の分割型タイプの循環チューブの側面図。
【図8】従来の一体型タイプの循環チューブの側面図。
【符号の説明】
7…循環チューブ
11…タング
Claims (2)
- ボールを導いて循環させる循環チューブの端部にボール掬い用のタングを有したチューブ循環式のボールねじにおいて、
前記循環チューブと前記タングとの接合部で、該タングの根元部に予め残留圧縮応力を最表面部から20〜100μmの深さで20〜150kgf/mm2 付与したことを特徴とするボールねじ。 - 前記残留圧縮応力は、最表面部から40〜80μmの深さで、30kgf/mm2 以上で100kgf/mm2 以下であることを特徴とする請求項1記載のボールねじ。
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JP21946897A JP3728886B2 (ja) | 1997-08-14 | 1997-08-14 | ボールねじ |
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JP21946897A JP3728886B2 (ja) | 1997-08-14 | 1997-08-14 | ボールねじ |
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JP21946897A Expired - Lifetime JP3728886B2 (ja) | 1997-08-14 | 1997-08-14 | ボールねじ |
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-
1997
- 1997-08-14 JP JP21946897A patent/JP3728886B2/ja not_active Expired - Lifetime
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