JP4891134B2 - ラッシュアジャスタ - Google Patents

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この発明は、エンジンの動弁装置に組み込まれるラッシュアジャスタに関する。
エンジンの吸気ポートまたは排気ポートに設けたバルブを動作させる動弁装置として、バルブに接続したバルブステムを、カムの回転に応じて揺動するアームで押し動かすようにした動弁装置が多く用いられる。
このような動弁装置において、エンジン作動中の温度上昇によって動弁装置が熱膨張すると、動弁装置の構成部材間に生じる熱膨張差によって、動弁装置の構成部材間(たとえば、アームとバルブステムの間)に隙間が発生し、その隙間によって、異音や、バルブの開閉タイミングのずれが生じることがある。また、動弁装置の摺動部の摩耗によっても、動弁装置の構成部材間(たとえば、バルブとバルブシートの間)に隙間が生じ、その隙間によって、異音等が生じることがある。
そこで、動弁装置の構成部材間の隙間を吸収するため、アームの揺動支点をラッシュアジャスタで支持し、そのラッシュアジャスタで、アームの揺動支点の位置を自動調整することが多い。
このようなラッシュアジャスタとして、上端が開放し、下端が閉塞した筒状のハウジングと、そのハウジングの内周に形成された雌ねじにねじ係合する雄ねじを外周に有するスクリュロッドと、そのスクリュロッドを前記ハウジングから突出する方向(以下、「突出方向」という)に付勢するリターンスプリングとを有し、スクリュロッドのハウジングからの突出端でアームの揺動支点を支持するようにしたものが知られている(特許文献1)。
このラッシュアジャスタのスクリュロッド外周の雄ねじと、ハウジング内周の雌ねじは、スクリュロッドをハウジング内に押し込む方向(以下、「押し込み方向」という)の力が作用したときに圧力を受ける圧力側フランクのフランク角が、遊び側フランクのフランク角よりも大きく形成されている。
また、このラッシュアジャスタは、カムの回転によりスクリュロッドに押し込み方向の力が作用したときは、スクリュロッド外周の雄ねじの圧力側フランクが、ハウジング内周の雌ねじの圧力側フランクで受け止められ、スクリュロッドの軸方向位置が固定される。また、動弁装置の熱膨張などによって、アームとバルブステムの相対位置が変化したときは、その位置変化に応じて、スクリュロッドがハウジング内を回転しながら軸方向に移動し、動弁装置の構成部材間の隙間を吸収する。
特開2005−248912号公報
しかし、このラッシュアジャスタは、ハウジングの下端が閉塞しているので、ハウジング内に潤滑油が滞留しやすい。そのため、雌ねじと雄ねじの接触による摩耗粉が、雌ねじと雄ねじの接触面間に滞留し、その摩耗粉によって、雌ねじと雄ねじの摩耗が促進され、ラッシュアジャスタの寿命が低下するという問題があった。
この発明が解決しようとする課題は、雌ねじと雄ねじの接触面間に摩耗粉が滞留しにくく、耐久性に優れたラッシュアジャスタを提供することである。
上記課題を解決するため、前記ハウジングの下端に、ハウジングの内外を連通する潤滑油排出孔を形成した。
このラッシュアジャスタは、前記ハウジングの外周から内周に至る潤滑油導入孔を形成し、その潤滑油導入孔を前記雌ねじに開口させると好ましく、さらに、次の構成を加えると好ましい。
1)前記ハウジングの外周に、前記潤滑油導入孔と連通する円周溝を形成する。
2)潤滑油導入孔からハウジング内に供給される潤滑油の流路面積を、ハウジングの上端の雌ねじと雄ねじの隙間から排出される潤滑油の流路面積と、潤滑油排出孔から排出される潤滑油の流路面積の合計よりも小さくする。
この発明のラッシュアジャスタは、ハウジングの下端の潤滑油排出孔から、ハウジング内の潤滑油が排出され、その潤滑油とともに、雌ねじと雄ねじの接触による摩耗粉が排出されるので、雌ねじと雄ねじの接触面間に摩耗粉が滞留しにくく、摩耗粉による摩耗の促進が生じにくい。
また、前記ハウジングの外周から内周に至る潤滑油導入孔を形成し、その潤滑油導入孔を前記雌ねじに開口させたものは、その潤滑油導入孔からハウジング内に潤滑油を供給することによって、雌ねじと雄ねじの接触面間の摩耗粉を、より効果的に排出することができる。
また、前記ハウジングの外周に、前記潤滑油導入孔と連通する円周溝を形成したものは、潤滑油導入孔に潤滑油を供給する潤滑油供給孔の位置と、潤滑油導入孔の位置とを一致させる必要がなく、ラッシュアジャスタの設置作業が簡単である。
また、潤滑油導入孔からハウジング内に供給される潤滑油の流路面積を、ハウジングの上端の雌ねじと雄ねじの隙間から排出される潤滑油の流路面積と、潤滑油排出孔から排出される潤滑油の流路面積の合計よりも小さくしたものは、雌ねじと雄ねじの隙間の潤滑油の圧力が上昇しにくいので、スクリュロッドに作用する軸方向の力をハウジングで速やかに受け止めることができる。
図1に、この発明の実施形態のラッシュアジャスタ1を組み込んだ動弁装置を示す。この動弁装置は、エンジンのシリンダヘッド2の吸気ポート3に設けられたバルブ4と、そのバルブ4に接続されたバルブステム5と、ラッシュアジャスタ1で揺動可能に支持されたアーム6とを有する。
バルブステム5は、バルブ4から上方に延び、シリンダヘッド2を摺動可能に貫通している。バルブステム5の上部外周には、環状のスプリングリテーナ7が固定され、スプリングリテーナ7の下面とシリンダヘッド2の上面の間にバルブスプリング8が組み込まれている。バルブスプリング8は、スプリングリテーナ7を介してバルブステム5を上方に付勢し、その付勢力によってバルブ4をバルブシート9に着座させている。
アーム6は、一方の端部がラッシュアジャスタ1で支持され、他方の端部がバルブステム5の上端に接触している。また、アーム6の中央部にはローラ10が取り付けられ、ローラ10は、アーム6の上方に設けられたカム11に接触している。カム11は、カムシャフト12の外周に固定されており、カムシャフト12が回転すると、ベースサークル11aに対して隆起したカム山部11bが、ローラ10を介してアーム6を押し下げる。
ラッシュアジャスタ1は、シリンダヘッド2の上面に形成された収容穴13に収容されている。ラッシュアジャスタ1は、上端が開放した筒状のハウジング14と、ハウジング14に挿入されたスクリュロッド15と、リターンスプリング16とを有する。
図2に示すように、スクリュロッド15の下部外周には雄ねじ17が形成され、雄ねじ17は、ハウジング14の内周に形成された雌ねじ18にねじ係合している。雌ねじ18と雄ねじ17は、軸線に沿った断面形状が非対称形状の鋸歯状に形成されており、スクリュロッド15をハウジング14内に押し込む方向の力が作用したときに圧力を受ける圧力側フランク19のフランク角が、遊び側フランク20のフランク角よりも大きくなっている。
ハウジング14の外周には、収容孔13の内周に開口した潤滑油供給孔21と連通する円周溝22が形成されおり、円周溝22は、ハウジング14の外周から内周に至る潤滑油導入孔23と連通している。潤滑油導入孔23は、ハウジング14の内周の雌ねじ18に開口しており、潤滑油供給孔21から供給される潤滑油が、円周溝22と潤滑油導入孔23を順に介して、雌ねじ18と雄ねじ17の隙間に供給されるようになっている。
ハウジング14の下端には、底24が設けられている。底24には、ハウジング14の内外を連通する潤滑油排出孔25が形成されており、潤滑油導入孔23からハウジング14内に供給された潤滑油が、潤滑油排出孔25と、収容孔13の底面に形成された貫通孔26とを順に介して排出されるようになっている。また、潤滑油導入孔23からハウジング14内に供給された潤滑油は、ハウジング14の上端の雌ねじ18と雄ねじ17の隙間からも排出される。
潤滑油導入孔23は、雌ねじ18と雄ねじ17の隙間の流路面積と、潤滑油排出孔25の流路面積との合計よりも、流路面積が小さくなるように形成されている。
リターンスプリング16は、スクリュロッド15と、ハウジング14の底24との間に組み込まれており、スクリュロッド15をハウジング14から突出する方向に付勢している。スクリュロッド15は、ハウジング14からの突出端27が半球状に形成されており、突出端27は、図1に示すように、アーム6の下面に形成された凹部28に嵌合し、その凹部28を支点としてアーム6を揺動可能に支持している。
この動弁装置は、カムシャフト12が回転して、カム11のカム山部11bがアーム6を押し下げると、バルブ4がバルブシート9から離れて、吸気ポート3を開く。このとき、スクリュロッド15に押し込み方向の力が作用するが、雄ねじ17の圧力側フランク19が雌ねじ18の圧力側フランク19で受け止められるので、スクリュロッド15は軸方向位置が固定される。
さらに、カムシャフト12が回転して、カム山部11bがローラ10の位置を過ぎると、バルブスプリング8の付勢力によってバルブステム5が上昇し、バルブ4がバルブシート9に着座して、吸気ポート3を閉じる。
また、エンジン作動中に、シリンダヘッド2、バルブステム5、アーム6など、動弁装置の構成部材間に熱膨張差が生じ、カム11とアーム6の間の距離が大きくなったときは、スクリュロッド15が、リターンスプリング16の付勢力によって回転しながら突出方向に移動するので、カム11のベースサークル11aとローラ10の間に隙間が生じず、バルブ4がバルブシート9に衝撃的に着座する事態が防止される。
また、バルブ4とバルブシート9の接触面が摩耗したときは、スクリュロッド15が、バルブスプリング8の付勢力によって回転しながら押し込み方向に移動し、バルブステム5が上昇するので、バルブ4とバルブシート9の接触面間に隙間が生じない。
また、エンジン作動中は、オイルポンプ(図示せず)の作動により、潤滑油供給孔21から潤滑油が供給され、その潤滑油が、円周溝22と潤滑油導入孔23を順に介してハウジング14内に供給されて、雌ねじ18と雄ねじ17の間を潤滑する。
このラッシュアジャスタ1は、ハウジング14内の潤滑油が潤滑油排出孔25から排出され、その潤滑油とともに、雌ねじ18と雄ねじ17の接触による摩耗粉が排出される。そのため、雌ねじ18と雄ねじ17の接触による摩耗粉が、雌ねじ18と雄ねじ17の接触面間に滞留しにくく、摩耗粉による摩耗の促進が生じにくい。
また、このラッシュアジャスタ1は、ハウジング14の外周に円周溝22が形成されているので、ハウジング14を収容孔13に挿入するときに、潤滑油供給孔21の位置と潤滑油導入孔23の位置とを一致させる必要がなく、ラッシュアジャスタ1の設置作業が簡単である。
また、このラッシュアジャスタ1は、潤滑油導入孔23からハウジング14内に供給される潤滑油の流路面積が、ハウジング14の上端の雌ねじ18と雄ねじ17の隙間から排出される潤滑油の流路面積と、潤滑油排出孔25から排出される潤滑油の流路面積の合計よりも小さいので、雌ねじ18と雄ねじ17の隙間の潤滑油の圧力が上昇しにくい。そのため、カム11が回転したときに、スクリュロッド15に作用する軸方向の力をハウジング14で速やかに受け止めることができ、潤滑油の粘度が大きい低温時においても、スクリュロッド15が押し込み方向に移動するのを防止することができる。
上記実施形態では、潤滑油導入孔23からハウジング14内に潤滑油を供給することによって、雌ねじ18と雄ねじ17の接触面間の摩耗粉を、より効果的に排出することができるようにしている
この発明の実施形態のラッシュアジャスタを組み込んだ動弁装置を示す正面図 図1に示すラッシュアジャスタの拡大断面図
符号の説明
1 ラッシュアジャスタ
6 アーム
14 ハウジング
15 スクリュロッド
16 リターンスプリング
17 雄ねじ
18 雌ねじ
19 圧力側フランク
20 遊び側フランク
22 円周溝
23 潤滑油導入孔
25 潤滑油排出孔
27 突出端

Claims (3)

  1. 上端が開放した筒状のハウジング(14)と、そのハウジング(14)の内周に形成された雌ねじ(18)にねじ係合する雄ねじ(17)を外周に有するスクリュロッド(15)と、そのスクリュロッド(15)を前記ハウジング(14)から突出する方向に付勢するリターンスプリング(16)とを有し、前記雌ねじ(18)と前記雄ねじ(17)は、前記スクリュロッド(15)をハウジング(14)内に押し込む方向の力が作用したときに圧力を受ける圧力側フランク(19)のフランク角が、遊び側フランク(20)のフランク角よりも大きくなるように形成され、前記スクリュロッド(15)の前記ハウジング(14)からの突出端(27)で動弁装置のアーム(6)の揺動支点を支持するようにしたラッシュアジャスタ(1)において、前記ハウジング(14)の下端に、ハウジング(14)の内外を連通する潤滑油排出孔(25)を形成し、前記ハウジング(14)の外周から内周に至る潤滑油導入孔(23)を形成し、その潤滑油導入孔(23)のハウジング(14)の内周側の端部を前記雌ねじ(18)の途中部分に開口させたことを特徴とするラッシュアジャスタ。
  2. 前記ハウジング(14)の外周に、前記潤滑油導入孔(23)と連通する円周溝(22)を形成した請求項に記載のラッシュアジャスタ。
  3. 潤滑油導入孔(23)からハウジング(14)内に供給される潤滑油の流路面積を、ハウジング(14)の上端の雌ねじ(18)と雄ねじ(17)の隙間から排出される潤滑油の流路面積と、潤滑油排出孔(25)から排出される潤滑油の流路面積の合計よりも小さくした請求項に記載のラッシュアジャスタ。
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