JP4889896B2 - 多孔質シリカの脱ヒドロキシル化およびアルキル化のための真空/気相反応器 - Google Patents

多孔質シリカの脱ヒドロキシル化およびアルキル化のための真空/気相反応器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、ウエハ上または基板上のメソ多孔性シリカ膜(mesoporous silica film)のような多孔質ケイ酸塩膜の、脱ヒドロキシル化およびアルキル化のための反応器に関する。さらに詳しくは、低誘電率(low-K)および高弾性率(high-E)を示す膜を、半導体の相互配線製造と両立できる比較的低い温度で形成することができる真空/気相反応器に関する。
【0002】
【従来の技術】
前記反応は、多孔質ケイ酸塩の表面上の極性ヒドロキシル基のキャッピングを伴い、結果的に非極性の疎水性表面となる。多孔質ケイ酸塩としては、シリカおよびアルキル基またはアルキルシラン基を有する有機ケイ酸塩を含む。液体/液相処理は、純粋なシランまたはシラン溶液への基板(一般的にシリコンウエハ上に支持されている)の浸漬を伴い、溶液洗浄がこれに続く。気相処理は一般的にさらに効率が良く、高温および/または減圧下で、気相でのシランまたは他の脱ヒドロキシル化のための有機化学物質を用いた基板の処理を伴う。基板はシラン処理の前後に真空中に晒される。そのような気相処理は、1999年10月4日に出願された「界面活性剤を含む溶液からのメソ多孔質シリカ膜およびその製造方法」という名称の現在係属中の米国特許出願第09/413,062号に記載されている。この出願は、本出願と同様にワシントン州リッチランド市のバッテル記念研究所(Battelle Memorial Institute, Inc.)へ譲渡されている。この出願の開示内容は、同出願の番号を引用することにより、本明細書に組み込まれる。真空/気相シランまたは脱ヒドロキシル化のための化学物質による処理(以下、「シリル化」と呼ぶ)の効率向上は、特に10ないし20オングストローム(10−20Å)の範囲の細孔径を有する細孔の真空化後の、シランまたは脱ヒドロキシル化のための化学物質のヒドロキシル基の一部分への接近しやすさの向上に起因すると考えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
低誘電率および高弾性率を示す膜を比較的低い温度で形成することができる多孔質ケイ酸塩膜の脱ヒドロキシル化およびアルキル化のための真空/気相反応器を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
気相シリル化反応に使用される反応器は、その反応器中で基板を高真空にさらし、目標温度まで加熱し、できるだけ迅速かつ効率的にシランを用いて処理することができるものであることが理想的である。
【0005】
種々の反応器設計により、膜に対してこのような処理を行うことができる。しかしながら、本発明の特殊な設計は、最終製品の品質に影響を与えることができる。シリル化をさらに促進し、処理効率を向上させるために、反応器は化学種を高エネルギー状態または活性の高い状態にする「活性化体(activator)」および、シリル化反応で発生する触媒破壊の可能性(possible poisons)や反応性の副産物を除去する「スクラバ(scrubber)」の両方として作用する準触媒表面(quasi-catalytic surfaces)を含むよう設計される。ここで説明する実施形態のひとつは、メソ多孔質膜を有する複数のウエハを配置する反応器のチャンバ内に、望ましくは金属製の加熱固体表面(hot, preferably metallic−solid surface)を有するホットフィラメント反応器(hot filament reactor)である。別の実施形態は、アルミニウム製リングの上下の周囲を封止して被加熱チャンバを形成する上部石英窓および下部石英窓を有する赤外線反応器(IR reactor)である。最後に、ウエハ用に内部に極小のチャンバを形成するフランジ基部と蓋を有し、加熱した砂浴からの伝導により加熱されるフランジ反応器(flange reactor)について記載されている。メソ多孔質膜をシリル化処理することにより、低誘電率(K)および高弾性率(E)を示す処理膜を形成する。
【0006】
本発明の主題は、本明細書の最終部で詳細に指摘して明確にクレームされている。しかしながら、構成、操作方法およびそれらの利点や目的は、添付の図面と共に以下の説明を参照することにより最もよく理解されるであろう。なお、これらの図面では、同様の参照符号は同様の構成要素を示している
【0007】
【発明の実施形態】
最近、様々な方式の気相反応器が設計されている。それらの反応器は、高温の高真空状態やシランガス(例えば、トリメチルヨードシラン(TMIS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、またはその他の適切なシラン)のような気相の脱ヒドロキシル化のための化学物質や薬剤(脱ヒドロキシル化剤)や非シランガス中での基板の容易な処理を考慮に入れている。しかしながら、これらには製品の品質が異なる原因となる多数の設計上の相違点がある。本発明の3つの具体的な実施形態である、「ホットフィラメント(hot filament)」反応器、「赤外線(IR)」反応器、「フランジ(flange)」反応器を、図1ないし図6をそれぞれ参照して説明する。なお、すべての部品が図2、図4および図6に示される3つの反応器の各斜視図で明白に示されているわけではないことを理解されたい。
【0008】
まず、図1および2を参照すると、ホットフィラメント反応器10は、ステンレス鋼製の基部14に支持されたアルミニウム製容器(または真空容器)12を備えていることがわかる。機械溝の切ってあるO−リングで封止された反応器の内部チャンバ16は、好ましくは裸ニクロム線がらせん状またはコイル状に巻かれた加熱体(heating element)20を支持する等間隔に配置された複数の薄い熱絶縁性のプレート18からなる。絶縁体膜で被覆された複数のウエハ22は、加熱体20の間に配置され、チャンバを真空にした後、その加熱体はウエハの温度(例えば、350℃ないし475℃、好ましくは約375℃から425℃の間)よりもかなり高い温度(例えば、約500℃よりも高い)に達する。高温での真空処理に続いて、シランが給気弁24aを介してチャンバ16に導入される。シランの除去およびチャンバの真空化は、排気弁24bを介して行われる。このように、シランは(a)加熱コイルとの直接接触、(b)対流、および(c)輻射により加熱される。また、ガス状の副産物が生じると、それらも加熱コイルに接触する。容器のアルミニウムおよびステンレス鋼製の多孔質内表面およびコイル状の加熱体を含む反応チャンバの金属表面は、真空/シラン処理の間に熱くなるとともに、スクラバや活性化体として作用して脱ヒドロキシル化およびアルキル化処理を増進させる。
【0009】
反応器10の実施形態において、チャンバ16は約21リットルの容積を有する。フィラメントは、処理の間を通して目標温度またはその付近の温度に維持されるように、制御装置により周期的に電流が流される。オン/オフのデューティサイクルは、シラン気相の処理工程と真空相の処理工程との間で変化する。ホットフィラメント反応器10は電力の消費が比較的少なく、例えば、わずか約1キロワット(kW)である。基部14は、その平らな上部面に機械切削され等間隔に配置された複数の溝を有し、図示のように、5枚の加熱コイルプレート18と4枚の直径4インチのウエハ22を、各ウエハの両側に加熱コイルプレートがくるような交互の配置で収容する。本発明の趣旨および範囲の中で、チャンバ16は、単に反応器の容器12の直径を変えるだけで、直径8インチまたは12インチのウエハを1枚または複数枚収容するように構成できることを当業者は理解するであろう。反応器10は、数分で好ましくは約425℃の目標ウエハ温度まで熱くなり、約1時間ないし2時間で冷める。本発明のこの実施形態により、約50ミリトル未満(より好ましくは1ミリトル以下)の真空度が達成される。
【0010】
メソ多孔質の薄膜をホットフィラメント反応器10中でシリル化することにより、低誘電率(約2.1以下の誘電率)および高弾性率(約3.5ギガパスカル(GPa)以上の弾性率)を示すメソ多孔質膜が形成される。重要なことは、これらの特性は、半導体の相互配線製造と両立できる比較的低い温度(約350℃ないし475℃)で達成されるということである。
【0011】
図3および4では、赤外線反応器26は、複数の石英管赤外線ランプ32の上部配列28および下部配列30(例えば、各配列につき15個)を有し、該配列は、それらの配列間にある封止されたチャンバ34の真上および真下に位置する。チャンバ34は、水冷式のアルミニウム製リング40によって隔てられた2つの石英窓36および38を有する。石英窓36および38により、赤外線ランプ配列28および30からの赤外線照射は、チャンバ内へ直接通ってウエハ22の配列により吸収されることが可能になり、その結果ウエハは急速に目標温度(例えば、350℃ないし475℃、好ましくは約375℃から425℃の間)まで加熱される。(ウエハだけが高温になることを当業者は理解するであろう。)アルミニウム製リング40は、石英窓36および38のO−リング真空封止材42および44を保護するために周囲温度以下に維持されたが、本発明の趣旨および範囲の中で、アルミニウム製リング40を加熱してもよいことを当業者は理解するであろう。高温真空処理に続いて、一種類(または複数の種類)の気相シランが2つの小さな給気弁46aおよび46bを介して導入され、2つの大きな排気弁46cおよび46dを介して排気される。シランの気体がチャンバ34に入ると、冷たいアルミニウム上で凝結し始め、その結果シリル化処理中に還流状態が生じる。シランは決められた還流温度および圧力に維持され、例えば、処理の間を通して上部石英窓を介して還流状態が観察される条件は、概ね約100℃から400℃の間であり、おそらく約200℃から300℃の間である。シリコンウエハの表面以外に、反応チャンバ34内に高温な表面は存在しない。
【0012】
反応器26の実施形態において、円柱状のチャンバ34の直径は約34cm、深さは好ましくは約6.5cm、容積は約5リットルであり、直径4インチのウエハを7枚まで、または直径8インチのウエハを1枚収容することができる。これらのウエハは、チャンバ34内で6点の先が尖っている星型の薄い石英製ロッド状構造物(図示せず)によって支持され、これにより赤外線照射との干渉が最小限となる。赤外線反応器26は約11kWと比較的多くの電力を消費し、約10-5Torr未満の望ましい高真空を数分で達成する。また、赤外線反応器26の脱ヒドロキシル化のための化学物質の消費量は少なく、廃棄物の発生量も少ない。ウエハは数分で目標温度(例えば、350℃ないし475℃、好ましくは約425℃)まで加熱され、ほぼ六角形状に配置された7枚の4インチウエハは均一に加熱される。冷却時間は比較的短く、例えば約0.5時間未満である。本発明の趣旨および範囲の中で、赤外線反応器26のチャンバ内に、加熱された裸ニクロム線および/または加熱されたステンレス鋼片をウエハにきわめて近接して配置して、上述した活性化および洗浄を行ってもよく、それにより低誘電率かつ高弾性率のメソ多孔質膜が形成される。
【0013】
図5および6では、フランジ反応器48は、ステンレス鋼製の一体にボルト止めされたフランジ基部50およびフランジ蓋52を含み、1枚の4インチウエハ22を支持するために金属性ガスケット54(例えば、いわゆる可鍛性の銅(Cu)による「ナイフエッジ」ガスケット)がそれらの間に固定されている。フランジ反応器48は、加熱された砂浴中に埋設された底板50を介した直接伝導等の適切な方法により、同じ目標ウエハ温度(例えば、350℃ないし475℃、好ましくは約425℃)を達成する。(砂浴は熱源として大きな半球状の加熱炉を使用し、反応器を取り囲む砂は熱源から熱を吸収することを当業者は理解するであろう。)O−リング54の内側で、基部50と蓋52との間に形成された極めて小さいチャンバ56へは、給気弁58aを介してシランガスの導入と真空化が交互に行われる。排気は排気弁58bを介して行われる。ステンレス鋼製の基部50および蓋52の多孔質性内側表面、またおそらく銅製のO−リング54もウエハ22に物理的に極めて近接する加熱固体表面(望ましくは金属製)であることを当業者は理解するであろう。このように、このフランジ反応器の実施形態においては、ホットフィラメント反応器の実施形態と同様に、これらの加熱固体表面がシリル化処理を促進するスクラバおよび/または活性化体として作用できるということは理解されるであろう。
【0014】
フランジ反応器48の深さは約0.8cmであり、チャンバ56の容積はわずか約0.08ないし0.125リットルである。反応器48内の1枚のウエハは、処理工程を通して均一に絶え間なく加熱される。高真空は容易かつ迅速に達成され、脱ヒドロキシル化のための化学物質(脱ヒドロキシル化剤)の消費量または消耗量は極わずかである。加熱時間および冷却時間はそれぞれ約1時間ないし2時間であり、各ウエハに対するサイクルタイムは比較的長くなる。チャンバ56の容量が比較的小さいため、1当量(計算されたヒドロキシル基の量を基準として)のシランを導入するためには、多数回のシラン処理サイクルが必要である。メソ多孔質膜に関する低誘電率k(kは約2.0以下)かつ適度に高い弾性率E(Eは約3ないし約4GPa)という結果は、フランジ反応器48を用いてメソ多孔質シリカ膜で得られた。ホットフィラメント反応器10とは対照的に、この設計では、チャンバ56内のウエハに上部および下部ステンレス鋼フランジ(例えば、加熱固体金属表面)が近接していることが、その上のメソ多孔質膜の望ましい脱ヒドロキシル化およびアルキル化の一因となっている。
【0015】
従来の制御装置は、(a)脱ヒドロキシル化のための化学物質の流入および除去、ならびに真空化、(b)制御された微量濃度の酸素ガス(O2)または窒素ガス(N2)の流入、(c)容器内部の圧力、(d)チャンバ内部の温度またはウエハ表面の温度、および/または(e)加熱体および反応器内部の加熱表面の温度を制御するために、反応器10、26および48と接続して設けられていることを、当業者は理解するであろう。
【0016】
本明細書中で、シランガス等の脱ヒドロキシル化のための化学物質に取り囲まれたホットフィラメントまたは加熱固体(好ましくは金属)表面と呼ばれるものの重要性を説明する。
【0017】
シランガス(R3SiX または R3SiNH2)を基板(ウエハ)へ導入すると、表面のヒドロキシル基はシランガスでの置換反応を受ける。
【0018】
R3SiX(g) + SiOH(s) → SiOSiR3(s) + HX(g)
【0019】
表面のアルキルシロキサン基およびHX(ここで、Xは臭素、ヨー素、または塩素等の適当なハロゲン族元素であるものと理解される)の濃度が増加すると、一般的に、表面のシロキシル基と近接する表面のシラノールとの間で第2の競合反応がおき、それはHXによる触媒作用を受ける。
【0020】
SiOSiR3(s) + SiOH(s) → SiOSi(s) + R3SiOH(g)
【0021】
この競合反応は、最終的には、シリカ表面を所望どおりアルキル化することなく、極性のヒドロキシル基を除去する結果となる。この処理が続くことを許容すると、アルキルシロキサンキャップがほとんどあるいは全くない高度に脱ヒドロキシル化されたシリカとなる。この多孔質シリカは、通常の湿度の空気に晒したとたん水蒸気と反応し、極性の表面ヒドロキシル基を再形成する。
【0022】
以下に説明する低誘電率かつ高弾性率という結果から分かるように、本発明はいかなる特定の操作原理にも限定されない。反応チャンバ内にホットフィラメント表面および加熱固体金属表面が存在することにより、HX(最初の脱ヒドロキシル化反応で形成された)は迅速かつ効率的に除去され、2個の原子からなるヨー素および水素を形成する。これにより二次的な競合反応が起こる率が減少し、アルキルシロキサンキャップを有する所望の高度に脱ヒドロキシル化された状態の膜が残る。
【0023】
加熱体との直接接触は、シランの平均運動エネルギーを増加させるため、初期の置換反応の速度が増加する可能性がある。ホットフィラメントまたは加熱固体金属表面はシレニウムカチオンのような活性の高い中間種の形成に触媒作用を及ぼし、それにより実質的にシリル化処理が促進される。加熱触媒表面としては、金属製、セラミック製、グラファイト製、またはポリテトラフルオロエチレン製のもの等が挙げられる。本発明の趣旨および範囲の中で、他の加熱触媒表面の使用が考えられる。
【0024】
従来の解析手法では、反応器内の過渡的な気相種を正確に特定することは不可能である。上記仮説を裏付けるために、模擬反応器中で膜を製造、処理し、主要な特性を測定した。ホットフィラメント反応器10および赤外線反応器26中で製造した製品に対して誘電率、屈折率、およびX線電子分光法(XPS)の測定を行った。比較の目的で、脱ヒドロキシル化工程に先立ち、各反応器で処理された基板が同一であるか確認するために非常に厳密な測定を行った。XPS測定はメソ多孔質膜の炭素含有量の分析を可能にし、屈折率の測定は膜の多孔率の測定を可能にし、それは実証された低誘電率の結果を達成するためには、望ましくは約50%ないし60%以上なければならないことを当業者は理解するであろう。
【0025】
細孔をテンプレートするために界面活性剤を使用する所与の多孔質シリカ膜に対して、ホットフィラメント反応器は、誘電率(dielectric constant)(K)が2.0以下かつ弾性率(E)が4.0GPa以上のサンプルを多数形成したが、一方、赤外線反応器は、弾性率(E)が4.0GPaを超えかつ誘電率(K)が2.0未満の膜は形成しなかった。しかしながら、赤外線反応器は、誘電率(K)が2.0以下かつ弾性率(E)が3.0GPa程度と高いサンプルを形成した。また、フランジ反応器も、誘電率(K)が2.0以下かつ弾性率(E)が3.4GPa程度と高いサンプルを形成した。
【0026】
本発明の趣旨および範囲の中で、赤外線反応器はホットフィラメント反応器内で起こる反応機構をよりよく模擬するように変形することができる。第1の変形は、処理中にシラン化チャンバ内に加熱ニクロム線を配置することである。熱線は、本来、基板を加熱するために使用されるのではない。それよりむしろシラン活性体および酸スクラバとして使用される。それに加えるかそれに代えて、酸スクラバとして作用するように、固体の炭酸カルシウム(またはそれに代わるアルカリ(塩基)物質)を入れた小さな貯留槽を反応容器の内部に配置してもよい。さらに、先に提案したように、アルミニウムリングまたは内部に浮遊したステンレス鋼片を加熱するように、本明細書中で開示した赤外線反応器を変更することによりホットフィラメント反応器同様のスクラバ機能を提供することが可能である。
【0027】
一般的に、これらのどの反応器チャンバによる脱ヒドロキシル化処理も、真空中と脱ヒドロキシル化物質の環境中との交互の処理を伴う。1気圧未満であればいかなる圧力でも真空とされるため、真空度をより適切に定義する必要があることを当業者は理解するであろう。本発明に係る望ましい反応器真空圧力は、1トル以下程度である。かかる真空度は、一般的に高真空(10-5ないし10-7トル)と考えられているものではなく、もちろん超真空(10-8ないし10-12トル以上)と考えられているものでもない。上述したような比較的低い真空度により、例えばシランのような脱ヒドロキシル化のための化学物質または薬剤をより対流加熱することが可能になる。真空度の制御により、チャンバ内では極微量の酸素しか保持されない。反応器チャンバに対して気体のヒドロキシル化のための化学物質の供給と真空化を交互に行う代わりに、ある一定の条件下では、気体のヒドロキシル化のための化学物質と、例えば窒素等の不活性ガスとを交互に反応器チャンバに流すことが好ましい。シリル化処理においてこのような真空相に変わるものは、本発明の趣旨および範囲の中に含まれる。
【0028】
下記の表1は、脱ヒドロキシル化およびアルキル化のための上記各種反応器を用いて処理したメソ多孔質シリカ膜の測定結果を示す。本発明の脱ヒドロキシル化およびアルキル化(例えば、シリル化)処理は、望ましくは上記引用した特許の教示またはその他任意の適切な技術により、膜の準備および焼成に続いて行われることを当業者は理解するであろう。
【0029】
【表1】
Figure 0004889896
【0030】
表1は当業者には容易に理解できるものと考える。膜は150℃で2分間および425℃で2分間(ここでは2+2と記載する)、または425℃で5分間(ここでは5+0と記載する)のどちらかで焼成される。ここで、フランジ反応器は、誘電率が2.17と低くかつ弾性率が3.2GPaと高い処理膜を形成し、赤外線反応器は、誘電率が2.31と低くかつ弾性率が3.0GPaと高い処理膜を形成し、ホットフィラメント反応器は、誘電率が2.05と低くかつ弾性率が4.4GPaと高い処理膜を形成したことに留意されたい。弾性率(E)は、表面下に様々な深さまで膜を押込む従来の装置を使用して測定した。表1の右列を参照すると、KairとKN2 との差が小さいほど、膜の疎水性が高いことを当業者は理解するであろう。また、この好ましい結果はシリル化温度がより高い場合に起こることに留意されたい。
【0031】
0+5の焼成工程および反応器中での脱ヒドロキシル化/シリル化処理により作製されたメソ多孔質膜は、シリル化温度の範囲全体にわたって得られた誘電率が約2.0と低いことを当業者は理解するであろう。
【0032】
シリル化サイクルが2回以上であると(各サイクルはシランガス相または他の脱ヒドロキシル化のための化学物質相を含み、真空相がそれに続く)、サイクルが1回の場合より、誘電率が著しく低くなる。したがって、シリル化サイクルは多数回が望ましが、膜の細孔中に炭素に富む有機性の基が過度に密集することなく誘電率が適切に低いのであれば、サイクル数に上限がある場合がある。
【0033】
したがって、本明細書で述べた本発明の脱ヒドロキシル化およびアルキル化反応器および処理により、半導体相互配線製造分野および基板上に構造的に耐久性のある低誘電率膜を必要とするその他関連する用途に使用するための、誘電率が低くかつ弾性率が高いメソ多孔質シリカ膜を形成することができる。
【0034】
本発明の原理をその好ましい実施形態で例示し説明してきたが、本発明はそのような原理から逸脱することなく構成および詳細を変更することができることは当業者には容易に理解されるはずである。出願人は特許請求範囲の趣旨および範囲の中に入るすべての変更について権利を請求する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施形態に係るホットフィラメント反応器装置のシステムブロック図である。
【図2】本発明の好適な実施形態に係るホットフィラメント反応器装置の斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る赤外線反応器装置のシステムブロック図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る赤外線反応器装置の斜視図である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態に係るフランジ反応器のシステムブロック図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態に係るフランジ反応器の斜視図である。

Claims (6)

  1. 複数の半導体ウェハ上のメソ多孔質膜を低温で脱ヒドロキシル化する方法であって、
    気相の脱ヒドロキシル化のための化学物質を封じ込めるための、あるいは真空化するためのまたは不活性ガスを封じ込めるための容器と、当該容器をほぼ封止された状態で上部面上で支持する基部とを備え、当該基部の上部面上に加熱体を有する複数のプレートが間隔を隔てて設けられた反応器を用意するステップと、
    前記各半導体ウェハが隣接する前記プレート間に物理的に近接して前記基部の上部面上に立設した状態で支持かつ配置されるように、前記複数の半導体ウェハを前記反応器内に配置するステップと、
    前記反応器に前記気相の脱ヒドロキシル化のための化学物質を1Torrの圧力より高い圧力で供給することと、該反応器を1Torrの圧力より低い真空にすることを交互に行うステップと、
    前記脱ヒドロキシル化のための化学物質を活性化させるために前記半導体ウェハの表面で測定される温度が少なくとも350℃より高く、かつ前記半導体ウェハを損傷しないようにするために475℃より低い温度になるように前記複数のプレートの加熱体を加熱し、前記容器内の前記気相の脱ヒドロキシル化のための化学物質を加熱するステップと、
    前記活性化された気相の脱ヒドロキシル化のための化学物質と前記複数の半導体ウェハ上の前記メソ多孔質膜との反応を誘導するステップと、を含むことを特徴とする前記方法。
  2. 前記気相の脱ヒドロキシル化のための化学物質は、反応性のシランを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記加熱体は、電源により加熱されるフィラメントを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 前記交互に行われる脱ヒドロキシル化のための化学物質の供給および真空化は、少なくとも1回繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  5. 前記基部の上部面には、等間隔で複数の溝が形成されており、前記プレートおよびウェハは、前記溝に立設されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 前記複数の半導体ウェハは、各ウェハの両側に前記プレートがくるように交互の配置で前記反応容器内に収容されていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
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