JP4889891B2 - 樹脂組成物および多層容器 - Google Patents

樹脂組成物および多層容器 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は酸素掃去機能を有する樹脂組成物に関する。本発明はまた、上記酸素掃去機能に加え、優れたガスバリア性、防湿性、保香性、およびフレーバーバリア性を有する樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた多層容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスバリア性樹脂、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下EVOHと略することがある)等は、溶融成形が可能で、酸素または炭酸ガスバリア性に優れている。そのため、例えばEVOHでなる層と、耐湿性、機械的特性等に優れた熱可塑性樹脂(例えば、熱可塑性ポリエステル;以下、熱可塑性ポリエステルをPESと略することがある)の層とを含む多層構造体が、ガスバリア性を必要とする各種成形体(例えば、フィルム、シート、ボトル、容器等)に利用されている。例えば、このような多層構造体は、多層容器として、とりわけバッグ、ボトル、カップ、パウチ等の形態で種々の分野で使用されている。例えば、食品、化粧品、医化学薬品、トイレタリー等の分野で広く使用されている。
【0003】
前記の多層容器は、酸素、炭酸ガス等のバリア性に優れるものの、缶詰等に使用される金属素材や、瓶詰め等に使用されるガラスのように、酸素等のガスの透過性はゼロに限りなく近いというわけではなく、無視し得ない量のガスを透過する。特に、食品等の容器においては、長期間保存した場合の内容物の酸化による品質の低下が懸念されるため、酸素バリア性の改良が強く望まれている。
【0004】
一方、内容物を充填する時に、内容物とともに酸素が容器内に混入することがある。内容物が酸化されやすいものである場合、この微量の酸素によっても、内容物の品質が低下するおそれがあり、これを防ぐために、容器の材料に酸素掃去機能を付与することが提案されている。この場合、容器外部から内部に侵入しようとする酸素も掃去されるので、包装材料のガスバリア性も向上するという利点がある。
【0005】
例えば、容器の材料を構成するガスバリア性樹脂に酸素掃去機能を付与する方法としては、▲1▼EVOHに遷移金属等の酸化触媒を加えることにより、EVOHを酸化され易い状態にして酸素掃去機能を付与する方法(特開平4−211444号公報);▲2▼ポリ塩化ビニルに金属触媒を加えることにより、ポリ塩化ビニルを酸化され易い状態にして酸素掃去機能を付与する方法(特開平4−45144号公報);▲3▼ポリオレフィンと酸化触媒からなる樹脂組成物、すなわち酸化され易い状態のポリオレフィンをEVOH中に分散させて、EVOHに酸素掃去機能を付与する方法(特開平5−156095号公報);▲4▼EVOH、ポリオレフィンおよび酸化触媒を配合し、EVOHおよびポリオレフィンを酸化され易い状態にして酸素掃去機能を付与する方法(特開平5−170980号公報)等が知られている。しかしながら、上記した▲1▼および▲2▼の方法は酸素バリア性の向上効果が十分でなく、また▲3▼および▲4▼の方法は、ガスバリア性樹脂の透明性が著しく損なわれるという問題を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、酸素掃去機能を有する組成物を提供することである。本発明の他の目的は上記酸素掃去機能に加え、優れたガスバリア性、透明性、防湿性、保香性、およびフレーバーバリア性を有する樹脂組成物を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、上記樹脂組成物からなる層を含む、外観、特に透明性の良好な多層容器を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の樹脂組成物は、酸素透過速度が500ml・20μm/m・day・atm(20℃、65%RH)以下のガスバリア性樹脂(A)、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(B)、およびカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂(C)を含有する樹脂組成物であって、該樹脂組成物の酸素吸収速度は0.01ml/m・day以上である。
【0008】
好適な実施態様においては、上記第1の樹脂組成物は、さらに遷移金属塩(D)を含有する。
【0009】
本発明の第2の樹脂組成物は、酸素透過速度が500ml・20μm/m・day・atm(20℃、65%RH)以下のガスバリア性樹脂(A)、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(B)、カルボキシル基を有する熱可塑性樹脂(C)、および遷移金属塩(D)を含有する
【0010】
好適な実施態様においては、上記第1の樹脂組成物が遷移金属塩(D)を含有する場合の該遷移金属塩の組成物中の含有量、および第2の樹脂組成物に含有される遷移金属塩(D)の組成物中の含有量は、上記ガスバリア性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)の合計重量を基準として、金属元素換算で1〜5000ppmである。
【0011】
好適な実施態様においては、上記遷移金属塩(D)は、鉄、ニッケル、銅、マンガンおよびコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属を有する。
【0012】
好適な実施態様においては、上記カルボキシル基を有する熱可塑性樹脂(C)は、エチレン−メタクリル酸共重合体である
【0013】
好適な実施態様においては、上記熱可塑性樹脂(B)は、炭素−炭素二重結合を0.0001eq/g以上の割合で含有する。
【0014】
好適な実施態様においては、上記熱可塑性樹脂(B)が、下記構造式(I)
【0015】
【化2】
Figure 0004889891
【0016】
(式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアルコキシ基であり、RおよびRは各々独立して、水素原子、アルキル基、置換されていてもよいアリール基、−COOR、−OCOR、シアノ基、またはハロゲン原子であり、RおよびRは各々独立してアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアルコキシ基である)で示される単位を有する。
【0017】
好適な実施態様においては、上記熱可塑性樹脂(B)の数平均分子量は1000〜500000である。
【0018】
好適な実施態様においては、上記熱可塑性樹脂(B)は芳香族ビニル化合物単位およびジエン化合物単位を有する。より好適な実施態様においては、上記ジエン化合物単位はイソプレン単位およびブタジエン単位からなる群より選ばれる少なくとも1種である。また、より好適な実施態様においては、上記芳香族ビニル化合物単位はスチレン単位である。さらに、より好適な実施態様においては、上記前記熱可塑性樹脂(B)はブロック共重合体である。
【0019】
好適な実施態様においては、上記ガスバリア性樹脂(A)は、エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度90%以上のEVOHである。
【0020】
好適な実施態様においては、上記ガスバリア性樹脂(A)と上記熱可塑性樹脂(B)との屈折率の差は0.01以下である。
【0021】
好適な実施態様においては、上記樹脂組成物においては、上記熱可塑性樹脂(B)からなる粒子が、前記ガスバリア性樹脂(A)のマトリックス中に分散している。
【0022】
好適な実施態様においては、上記樹脂組成物は、上記ガスバリア性樹脂(A)を65〜99.8重量%、上記熱可塑性樹脂(B)を0.1〜30重量%、および上記熱可塑性樹脂(C)を0.1〜5重量%の割合で含有する。
【0023】
本発明の多層構造体は、上記の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む。
【0024】
本発明の多層容器は、上記の樹脂組成物からなる層、および熱可塑性ポリエステル層をそれぞれ少なくとも1層含む。
【0025】
本発明のキャップは、上記の樹脂組成物からなるガスケットを装着してなる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、酸素を“掃去する”とは、与えられた環境から酸素を吸収・消費し、またはその量を減少させることを言う。
【0027】
本発明の樹脂組成物に含有されるガスバリア性樹脂(A)の種類は特に限定されず、良好なガスバリア性を有する樹脂であればいずれも使用することができる。具体的には、酸素透過速度が500ml・20μm/m・day・atm(20℃、65%RH)以下である樹脂が用いられる。これは、20℃、相対湿度65%の環境下で測定したときに、1気圧の酸素の差圧がある状態で、面積1m、20μm厚のフィルムを1日に透過する酸素の体積が、500ml以下であることを意味する。酸素透過速度が500ml・20μm/m・day・atmを超えると、得られる樹脂組成物のガスバリア性が不十分となる。ガスバリア性樹脂(A)の酸素透過速度は、好適には100ml・20μm/m・day・atm以下であり、より好適には20ml・20μm/m・day・atm以下であり、さらに好適には5ml・20μm/m・day・atm以下である。
【0028】
ガスバリア性樹脂(A)の屈折率は、1.50〜1.56の範囲が好ましい。この範囲を逸脱すると、後述のように、ガスバリア性樹脂(A)の屈折率と熱可塑性樹脂(B)の屈折率との差が大きくなり、得られる樹脂組成物の透明性が低下する虞がある。一般に、酸素吸収性を有する熱可塑性樹脂(B)の屈折率が上記範囲にあることが多いことから、熱可塑性樹脂(B)とガスバリア性樹脂(A)の屈折率の差を小さくすることが容易となり、結果として透明性の良好な樹脂組成物を得ることが可能となる。ガスバリア性樹脂(A)の屈折率は、より好ましくは1.51以上であり、さらに好ましくは1.52以上である。また好ましくは1.55以下であり、さらに好ましくは1.54以下である。
【0029】
上記のようなガスバリア性樹脂(A)の例としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等が代表的な樹脂として例示されるが、これらの樹脂に限定されない。
【0030】
上記ガスバリア性樹脂(A)のうち、ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステルの単独重合体、またはビニルエステルと他の単量体との共重合体(特にビニルエステルとエチレンとの共重合体)を、アルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表的な化合物として挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)も使用できる。
【0031】
上記ポリビニルアルコール系樹脂のビニルエステル成分のケン化度は、好適には90%以上であり、より好適には95%以上であり、さらに好適には97%以上である。ケン化度が90モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下する。また、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)がEVOHである場合、熱安定性が不充分となり、成形時にゲル・ブツが発生し易くなる。
【0032】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)がケン化度の異なる2種類以上のポリビニルアルコール系樹脂の混合物からなる場合には、混合重量比から算出される平均値をケン化度とする。
【0033】
上記のようなポリビニルアルコール系樹脂(A)の中でも、溶融成形が可能で、高湿度下でのガスバリア性が良好な点から、EVOHが好適である。
【0034】
EVOHのエチレン含有量は5〜60モル%であるのが好ましい。エチレン含有量が5モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下し溶融成形性も悪化することがある。EVOHのエチレン含有量は、好適には10モル%以上であり、より好適には15モル%以上、最適には20モル%以上である。一方、エチレン含有量が60モル%を超えると十分なガスバリア性が得られないことがある。エチレン含有量は、好適には55モル%以下であり、より好適には50モル%以下である。
【0035】
好適に用いられるEVOHは、上述のように、エチレン含有量が5〜60モル%であり、かつケン化度が90%以上である。
【0036】
EVOHがエチレン含有量の異なる2種類以上のEVOHの混合物からなる場合には、混合重量比から算出される平均値をエチレン含有量とする。この場合、エチレン含有量が最も離れたEVOH同士のエチレン含有量の差が15モル%以下であり、かつケン化度の差が10%以下であることが好ましい。これらの条件から外れる場合には、樹脂組成物層の透明性が損なわれる場合がある。エチレン含有量の差はより好適には10モル%以下であり、さらに好適には5モル%以下である。また、ケン化度の差はより好適には7%以下であり、さらに好適には5%以下である。
【0037】
EVOHのエチレン含有量およびケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0038】
このEVOHには、上述のように、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレンおよびビニルアルコール以外の単量体を共重合成分として少量含有することもできる。このような単量体の例としては、次の化合物が挙げられる:プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類等。
【0039】
中でも、EVOHに共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有する場合は、該EVOHを含む本発明の樹脂組成物を、基材となるべき樹脂(例えば、PES)と共に、共押出成形または共射出成形して多層構造体を得る際に、該基材樹脂との溶融粘性の整合性が改善され、均質な成形物の製造が可能である。ビニルシラン系化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
【0040】
さらに、EVOHにホウ素化合物が添加されている場合にも、EVOHの溶融粘性が改善され、均質な共押出または共射出成形物が得られる点で有効である。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸(以下、ホウ酸と略記することがある)、メタホウ酸、四ホウ酸等が挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等が挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂等が挙げられる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸が好ましい。
【0041】
ホウ素化合物が添加される場合に、その含有量は好適にはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好適には50〜1000ppmである。この範囲にあることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOHを得ることができる。20ppm未満ではホウ素化合物の添加効果が不十分となる場合がある。一方、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
【0042】
EVOHに、アルカリ金属塩を好適にはアルカリ金属元素換算で5〜5000ppm添加しておくことも層間接着性や相容性の改善のために効果的である。アルカリ金属塩の添加量は、より好適にはアルカリ金属元素換算で20〜1000ppm、さらに好適には30〜500ppmである。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ金属塩としては、アルカリ金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、リン酸塩、金属錯体等が挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられ、これらの中でも酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウムが好適である。
【0043】
EVOHに対し、リン酸化合物を好適にはリン酸根換算で20〜500ppm、より好適には30〜300ppm、最適には50〜200ppmの割合で添加することも好ましい。上記範囲でリン酸化合物を配合することにより、EVOHの熱安定性を改善することができる。特に、長時間にわたる溶融成形を行なう際のゲル状ブツの発生や着色を抑制することができる。
【0044】
EVOHに添加するリン化合物の種類は特に限定されず、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩は第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形であってもよい。リン酸塩のカチオン種も特に限定されないが、カチオン種がアルカリ金属、アルカリ土類金属であることが好ましい。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムの形でリン化合物を添加することが好ましい。
【0045】
EVOHの好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下、JIS K7210に基づく)は0.1〜100g/10分、より好適には0.5〜50g/10分、さらに好適には1〜30g/10分である。
【0046】
ガスバリア性樹脂(A)のうち、ポリアミド樹脂の種類は特に限定されず、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウロラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)等の脂肪族ポリアミド単独重合体;カプロラクタム/ラウロラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン−6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンセバカミド共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)等の脂肪族ポリアミド共重合体;ポリメタキシリレンアジパミド(MX−ナイロン)、ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド共重合体(ナイロン−6T/6I)等の芳香族ポリアミドが挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの中でも、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)がガスバリア性の観点から好適である。
【0047】
ポリ塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンの単独重合体のほか、酢酸ビニル、マレイン酸誘導体、高級アルキルビニルエーテル等との共重合体が挙げられる。
【0048】
ポリアクリロニトリル樹脂としては、アクリロニトリルの単独重合体のほか、アクリル酸エステル等との共重合体が挙げられる。
【0049】
ガスバリア性樹脂(A)として、これらのうちの1種を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度90%以上のEVOHがより好ましい。ガスバリア性樹脂(A)がこのようなEVOHである場合、得られる樹脂組成物の熱安定性が顕著に改善される。
【0050】
本発明においては、本発明の目的を阻害しない範囲で、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、他の樹脂(ポリアミド、ポリオレフィン等)をあらかじめガスバリア性樹脂(A)にブレンドすることもできる。
【0051】
本発明の樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂(B)は、炭素−炭素二重結合を含有する。炭素−炭素二重結合は酸素と効率よく反応するので、このような熱可塑性樹脂(B)は酸素掃去機能を有する。なお、本発明において、炭素−炭素二重結合とは共役二重結合を包含するが、芳香環に含まれる多重結合は包含しない。
【0052】
本発明の樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂(B)の種類は、上記特徴を有する樹脂であれば特に限定されない。
【0053】
本発明の樹脂組成物において、この炭素−炭素二重結合は、好適には熱可塑性樹脂(B)に0.0001eq/g(等量/g)以上含有され、より好適には0.0005eq/g以上、さらに好適には0.001eq/g以上、最適には0.002eq/g以上含有される。炭素−炭素二重結合の含有量が0.0001eq/g未満である場合、得られる樹脂組成物の酸素掃去機能が不十分となる場合がある。
【0054】
炭素−炭素二重結合は、熱可塑性樹脂(B)の主鎖に含まれてもよく、側鎖に含まれてもよいが、側鎖に含まれる二重結合の量が多い方が(すなわち、炭素−炭素二重結合を有している基が側鎖に多い方が)、酸素との反応の効率の観点から好ましい。側鎖に含まれる炭素−炭素二重結合として、下記構造式(I)で示される構造単位に含まれる二重結合が好ましい:
【0055】
【化3】
Figure 0004889891
【0056】
(式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアルコキシ基であり、RおよびRは各々独立して、水素原子、アルキル基、置換されていてもよいアリール基、−COOR、−OCOR、シアノ基、またはハロゲン原子であり、RおよびRは各々独立してアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアルコキシ基である)。上記R、R、R、RおよびRにおいて、アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜10であり、アリ−ル基の炭素原子数は、好ましくは6〜10であり、アルキルアリ−ル基およびアリールアルキル基の炭素原子数は好ましくは7〜11であり、アルコキシ基の炭素原子数は好ましくは1〜10である。アルキル基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が、アリール基の例としてはフェニル基が、アルキルアリール基の例としてはトリル基が、アリールアルキル基の例としてはベンジル基が、アルコキシ基の例としてはメトキシ基、エトキシ基が、ハロゲン原子の例としては塩素原子が、それぞれ挙げられる。
【0057】
構造式(I)で示される構造単位の中でも、ジエン化合物由来の構造単位が好ましい。該構造を有する熱可塑性樹脂の製造が容易であるためである。このようなジエン化合物としては、イソプレン、ブタジエン、2−エチルブタジエン、2−ブチルブタジエン等が挙げられる。これらの1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ジエン化合物の例と、該ジエン化合物から誘導される構造式(I)で示される基の種類との関係を表1に示す。
【0058】
【表1】
Figure 0004889891
【0059】
これらの中でも、酸素との反応の効率の観点から、Rが炭素数1〜5のアルキル基であるものが好ましく、Rがメチル基であるもの(すなわち、イソプレン由来の構造単位)がより好ましい。イソプレンは入手が容易であり、他の単量体との共重合も可能であるので、熱可塑性樹脂(B)の製造コストの点からも好適である。また、入手が容易であり、他の単量体との共重合が可能であるという観点からは、ブタジエンも好ましい。
【0060】
構造式(I)で示される構造単位がジエン化合物由来である場合、ジエン化合物由来の全構造単位に対する、構造式(I)で示される構造単位の割合は、10%以上であることが好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらにより好ましい。前記割合を10%以上にするためには、不活性な有機溶媒中で、ルイス塩基を共触媒として用いてジエン化合物をアニオン重合する、当該分野で一般に用いられる方法が採用される。
【0061】
構造式(I)で示される構造単位を有する熱可塑性樹脂(B)を得るためには、ジエン化合物を含む単量体を重合させる際に、共触媒としてルイス塩基を使用することが好ましい。ルイス塩基としては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、トリエチレンジアミン等の第三級アミン類、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等のエーテル含有アミン類等が挙げられる。これらのルイス塩基は、通常、後述の開始剤100重量部あたり0.1〜400重量部使用される。
【0062】
本発明の樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂(B)は、芳香族ビニル化合物と上記ジエン化合物との共重合体であることが好ましい。熱可塑性樹脂(B)が該共重合体である場合、ジエン化合物に由来する炭素−炭素二重結合部分が酸素と反応し易くなり、得られる樹脂組成物の酸素バリア性および酸素掃去機能が向上する。また、芳香族ビニル化合物とジエン化合物との共重合比率を調節することにより、熱可塑性樹脂(B)の溶融挙動や硬度を制御することができる。さらに、該共重合比率を調節することにより、熱可塑性樹脂(B)の屈折率を所望の値にすることができる。従って、ガスバリア性樹脂(A)の屈折率と熱可塑性樹脂(B)の屈折率との差を小さくすることができ、その結果、透明性に優れた製品が得られる。
【0063】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−ビニルナフタレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等が挙げられる。これらの中でも、コストおよび重合の容易さの観点からスチレンが最も好ましい。一方、ジエン化合物としては、前述の化合物が例として挙げられる。
【0064】
芳香族ビニル化合物とジエン化合物の共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、またはそれらの複合物等いずれの形態であってもよい。製造の容易さ、得られる熱可塑性樹脂(B)の機械的特性、取り扱いの容易さ、および酸素掃去機能の観点から、ブロック共重合体であることが好ましい。
【0065】
上記ブロック共重合体において、芳香族ビニル化合物ブロックの分子量は、好適には300〜100000であり、より好適には1000〜50000であり、さらに好適には3000〜50000である。芳香族ビニル化合物ブロックの分子量が300未満の場合は、熱可塑性樹脂(B)の溶融粘度が低くなり、得られる樹脂組成物の成形性、加工性およびハンドリング性に問題が生じる場合がある。さらに、成形物とした場合の機械的特性が低下する場合がある。加えて、熱可塑性樹脂(B)のガスバリア性樹脂(A)への分散性が低下し、透明性、ガスバリア性および酸素掃去機能が低下する場合がある。一方、芳香族ビニル化合物ブロックの分子量が100000を越える場合には、熱可塑性樹脂(B)の溶融粘度が高くなって熱可塑性が損なわれるので、得られる樹脂組成物の成形性および加工性が低下する場合がある。また、上記と同様に熱可塑性樹脂(B)のガスバリア性樹脂(A)への分散性が低下し、透明性、ガスバリア性および酸素掃去機能が低下する場合がある。
【0066】
ブロック共重合体のブロック形態としては、例えばX(YX)、(XY)等が挙げられる。ここで、Xは芳香族ビニル化合物ブロック、Yはジエン化合物ブロックを示し、nは1以上の整数である。これらの中でも、2元ブロック共重合体および3元ブロック共重合体が好ましく、機械的特性の観点から3元ブロック共重合体がより好ましい。中でも、芳香族ビニル化合物ブロックがポリスチレンブロックであり、ジエン化合物ブロックがポリイソプレンブロックであることがコストおよび重合の容易さの観点から好適である。
【0067】
上記ブロック共重合体の製造方法は特に限定されないが、アニオン重合法が好適である。具体的には、アルキルリチウム化合物を開始剤として芳香族ビニル化合物とジエン化合物とを共重合し、カップリング剤によってカップリングする方法、ジリチウム系化合物を開始剤として、ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを逐次重合する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルキルリチウム化合物としては、アルキル基の炭素原子数が1〜10のアルキルリチウム化合物、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、ベンジルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等が好ましい。
【0068】
カップリング剤としてはジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン等が用いられる。ジリチウム化合物としては、例えば、ナフタレンジリチウム、オリゴスチリルジリチウム、ジリチオヘキシルベンゼン等が挙げられる。使用量は、重合に用いられる全モノマー100重量部に対し、開始剤0.01〜0.2重量部、カップリング剤0.04〜0.8重量部が適当である。
【0069】
熱可塑性樹脂(B)を製造するための溶媒としては、上記の開始剤、カップリング剤およびルイス塩基に対して不活性な有機溶媒が使用される。これらの中でも、炭素原子数が6〜12の飽和炭化水素、環状飽和炭化水素、芳香族炭化水素が好ましい。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、キシレン等が挙げられる。熱可塑性樹脂(B)を製造するための重合反応は通常−20〜80℃の温度範囲で、1〜50時間行われる。
【0070】
例えば、重合反応液をメタノール等の貧溶媒中に滴下し、反応生成物を析出させた後、該反応生成物を加熱または減圧乾燥するか、重合反応液を沸騰水中に滴下し、溶媒を共沸・除去した後、加熱または減圧乾燥することにより、熱可塑性樹脂(B)が得られる。なお、重合後に存在する二重結合は、本発明の樹脂組成物の効果を阻害しない範囲で、その一部が水素により還元されていても構わない。
【0071】
こうして得られたブロック共重合体の、ジエン化合物ブロックに由来するtanδの主分散ピーク温度は、得られる樹脂組成物の酸素掃去機能の観点から、−40℃〜60℃であることが好ましく、−20℃〜40℃がより好ましく、−10℃〜30℃がさらにより好ましい。tanδの主分散ピーク温度が−40℃未満である場合、得られる樹脂組成物の酸素掃去機能が低下する場合がある。一方、tanδの主分散ピーク温度が60℃を超える場合、得られる樹脂組成物の特に低温における酸素掃去機能が低下する場合がある。
【0072】
熱可塑性樹脂(B)の分子量は、好適には1000〜500000であり、より好適には10000〜250000であり、さらに好適には40000〜200000の範囲である。熱可塑性樹脂(B)の分子量が1000未満の場合には、ガスバリア性樹脂(A)への分散性が低下し、透明性、ガスバリア性および酸素掃去機能が低下する場合がある。分子量が500000を超える場合、同様の問題に加えて樹脂組成物の加工性も悪くなる場合がある。
【0073】
熱可塑性樹脂(B)は、単一の樹脂であっても複数の樹脂からなる混合物であってもよい。いずれの場合にも、透明性の良好な成形物を得たい場合には、厚み20μmのフィルムにおいて、その内部ヘイズ値が10%以下であるのが好ましい。
【0074】
本発明の樹脂組成物においては、本発明に用いられる熱可塑性樹脂(B)の屈折率と、ガスバリア性樹脂(A)の屈折率との差が0.01以下であることが好ましい。ガスバリア性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との屈折率の差が0.01を超える場合、得られる樹脂組成物の透明性が悪化する場合がある。屈折率の差は0.007以下がより好ましく、0.005以下がさらに好ましい。ただし、ガスバリア性樹脂(A)が2種類以上のガスバリア性樹脂からなる場合(例えば、異なる2種類のEVOHからなる場合)は、各々のガスバリア性樹脂の屈折率と重量割合とから算出される屈折率の平均値をもってガスバリア性樹脂(A)の屈折率とする。
【0075】
熱可塑性樹脂(B)は、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、例えば次の化合物が挙げられる。2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−tert−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2,6−ジ−(tert−ブチル)−4−メチルフェノール(BHT)、2,2−メチレンビス−(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス−(ノニルフェニル)、チオジプロピオン酸ジラウリル等。
【0076】
酸化防止剤の添加量は、樹脂組成物中の各成分の種類、含有量、樹脂組成物の使用目的、保存条件等を考慮して適宜決定される。通常、熱可塑性樹脂(B)に含有される酸化防止剤の量は、熱可塑性樹脂(B)と酸化防止剤の合計重量を基準として、0.01〜1重量%であることが好ましく、0.02〜0.5重量%であることがより好ましい。酸化防止剤の量が多すぎると、熱可塑性樹脂(B)と酸素との反応が妨げられるため、本発明の樹脂組成物の酸素バリア性および酸素掃去機能が不十分となる場合がある。一方、酸化防止剤の量が少なすぎると、熱可塑性樹脂(B)の保存時または溶融混練時に、酸素との反応が進行し、本発明の樹脂組成物の実使用前に酸素掃去機能が低下してしまう場合がある。
【0077】
例えば、熱可塑性樹脂(B)を比較的低温で、もしくは不活性ガス雰囲気下で保存する場合、または窒素シールした状態で溶融混練して樹脂組成物を製造する場合等は、酸化防止剤の量は少なくてもよい。また、酸化を促進するために溶融混合時に酸化触媒を添加する場合、熱可塑性樹脂(B)がある程度の量の酸化防止剤を含んでいても、良好な酸素掃去機能を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0078】
本発明の樹脂組成物に含有されるカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂(C)は、ガスバリア性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との相容性を向上させ、得られる樹脂組成物に安定したモルフォロジーを形成させる。同時に、得られる樹脂組成物は高い熱安定性を有する。樹脂組成物に後述する遷移金属塩(D)が過剰に含まれる場合、該樹脂組成物の熱安定性が低下する場合があるが、遷移金属塩(D)と共にカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂(C)が含まれていると、該樹脂組成物の熱安定性が保持される。このような顕著な効果の理由は明らかではないが、該熱可塑性樹脂(C)と遷移金属塩(D)とのなんらかの相互作用によるものと考えられる。
【0079】
本明細書においては、「カルボキシル基」とは、カルボキシル基に加えて、カルボン酸無水物基およびカルボン酸塩基をも包含する。これらのうちカルボン酸塩基とは、カルボン酸の全部または一部が金属塩の形で存在しているものである。上記金属塩の金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、マンガン、コバルト等の遷移金属等が挙げられる。これらの中でも、亜鉛が相容性の観点から好ましい。
【0080】
カルボキシル基を含有する炭化水素系重合体を調製する方法は特に限定されないが、例えばα−オレフィンと、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基を含有する単量体とを共重合するのが好適である。このような方法に用いられ得る単量体のうち、カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。重合体中のカルボキシル基の含有量は、好ましくは0.5〜20モル%、より好ましくは2〜15モル%、さらに好ましくは3〜12モル%である。
【0081】
また、カルボン酸無水物基を有する単量体としては、無水イタコン酸、無水マレイン酸等が挙げられ、特に無水マレイン酸が好適である。重合体中のカルボン酸無水物基の含有量としては、好ましくは0.0001〜5モル%、より好ましくは0.0005〜3モル%、さらにより好ましくは0.001〜1モル%である。
【0082】
カルボン酸塩基は、例えば、上記方法により調製されたカルボキシル基またはカルボン酸無水物基を有する重合体と低分子金属塩との塩交換反応により、重合体に導入される。このときの低分子金属塩は上記した金属の1種を含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよい。
【0083】
低分子金属塩における金属の対イオンとしては、有機酸または塩化物由来のアニオンが挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸、ステアリン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルへキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、樹脂酸、カプリン酸、ナフテン酸等が挙げられる。特に好ましい低分子金属塩としては、2−エチルへキサン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ステアリン酸コバルトおよび酢酸コバルトが挙げられる。
【0084】
得られるカルボン酸塩基の中和度は、好適には100%未満、より好適には90%以下、さらに好適には70%以下である。また好適には5%以上、より好適には10%以上、さらに好適には30%以上である。例えば、好適には5〜90%、より好適には10〜70%である。
【0085】
上記のようにして得られる熱可塑性樹脂の中でも、得られる樹脂組成物の熱安定性の観点から、ランダム共重合体が好ましい。ランダム共重合体の例としては、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、およびこれらの金属塩が挙げられる。これらの中でも、EMAAおよびその金属塩が好ましい。
【0086】
また、ポリオレフィンに上記のカルボキシル基またはカルボン酸無水物基を有する単量体をグラフトさせた共重合体も好適に使用される。このときのポリオレフィンとしては、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)など)、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体が好適なものとして挙げられる。グラフトする単量体としては、無水マレイン酸が好ましい。
【0087】
カルボキシル基を含有する炭化水素系重合体には、次のような単量体を共重合成分として含有していてもよい:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジエチル等の不飽和カルボン酸エステル;一酸化炭素等。
【0088】
上記のカルボキシル基を含有する重合体のメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は、通常0.01g/10分以上であり、好適には0.05g/分以上、より好適には0.1g/10分以上である。また、MFRは通常50g/10分以下であり、好適には30g/10分以下、より好適には10g/10分以下である。
【0089】
以上に述べた熱可塑性樹脂(C)は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0090】
本発明の第2の樹脂組成物は、遷移金属塩(D)を含有することが必要である。本発明の第1の樹脂組成物は、遷移金属塩(D)を含有していることが好ましい。遷移金属塩(D)は、熱可塑性樹脂(B)の酸化反応を促進することにより、樹脂組成物の酸素掃去機能を向上させる効果がある。例えば、本発明の樹脂組成物から得られる包装材料内部に存在する酸素および包装材料中を透過しようとする酸素と熱可塑性樹脂(B)との反応を促進し、包装材料の酸素バリア性および酸素掃去機能が向上する。
【0091】
本発明の樹脂組成物においては、遷移金属塩(D)は好適には金属元素換算で1〜5000ppmの割合で含有される。つまり、遷移金属塩(D)は、ガスバリア性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)の合計量1000000重量部に対して、金属元素換算で1〜5000重量部の割合で含有される。より好適には、遷移金属塩(D)は5〜1000ppm、さらに好適には10〜500ppmの範囲で含有される。遷移金属塩(D)の含有量が1ppmに満たない場合は、その添加の効果が不十分となる場合がある。一方、遷移金属塩(D)の含有量が5000ppmを超えると、樹脂組成物の熱安定性が低下し、分解ガスの発生やゲル・ブツの発生が著しくなる場合がある。
【0092】
遷移金属塩(D)に用いられる遷移金属としては、例えば鉄、ニッケル、銅、マンガン、コバルト、ロジウム、チタン、クロム、バナジウム、ルテニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、鉄、ニッケル、銅、マンガン、コバルトが好ましく、マンガンおよびコバルトがより好ましく、コバルトがさらにより好ましい。
【0093】
遷移金属塩(D)に含まれる金属の対イオンとしては、有機酸または塩化物由来のアニオンが挙げられる。有機酸としては、酢酸、ステアリン酸、アセチルアセトン、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルへキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、樹脂酸、カプリン酸、ナフテン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましい塩としては、2−エチルへキサン酸コバルト、ネオデカン酸コバルトおよびステアリン酸コバルトが挙げられる。また、金属塩は重合体性対イオンを有する、いわゆるアイオノマーであってもよい。
【0094】
本発明の樹脂組成物においては、ガスバリア性樹脂(A)が65〜99.8重量%、熱可塑性樹脂(B)が0.1〜30重量%、そして熱可塑性樹脂(C)が0.1〜5重量%含有されることが好ましい。ガスバリア性樹脂(A)の含有割合が65重量%未満である場合、該樹脂組成物を用いた多層容器等の成形物における透明性に劣り、酸素ガス、炭酸ガス等に対するガスバリア性が低下する虞がある。一方、含有割合が99.8重量%を超える場合、熱可塑性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)の含有割合が少なくなるため、酸素バリア性および酸素掃去機能が低下する他、樹脂組成物全体のモルフォロジーの安定性が損なわれる虞がある。ガスバリア性樹脂(A)の含有割合は、より好適には80〜99重量%であり、さらに好適には85〜98重量%である。
【0095】
また、熱可塑性樹脂(B)の含有割合は、より好適には1〜20重量%であり、さらに好適には2〜15重量%である。さらに、熱可塑性樹脂(C)の含有割合は、より好適には0.3〜4.5重量%であり、さらに好適には0.5〜4重量%である。
【0096】
本発明の第1の樹脂組成物の酸素吸収速度は、0.01ml/m・day以上であることが必要であり、0.05ml/m・day以上が好ましく、0.1ml/m・day以上がより好ましい。酸素吸収速度が0.01ml/m・day未満である場合、得られる樹脂組成物からなる成形物の酸素バリア性および酸素掃去効果が不十分となる虞がある。また、本発明の第2の樹脂組成物も、酸素吸収速度は上記の数値以上であることが好ましい。酸素吸収速度は、樹脂組成物のフィルムを一定容量の空気中に放置した場合に、単位表面積当たり単位時間にそのフィルムが吸収した酸素の体積である。具体的な測定方法については、後述の実施例に示す。
【0097】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない程度に、上記ガスバリア性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)以外の熱可塑性樹脂(E)を含有していてもよい。熱可塑性樹脂(E)としては、特に限定されず、例えば、次の化合物が挙げられる:ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンまたはプロピレン共重合体(エチレンまたはプロピレンと次の単量体のうちの少なくとも1種との共重合体:1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネート等のカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類等)、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ1−ブテン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート等。
【0098】
本発明の樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂(E)を選択するときには、該熱可塑性樹脂(E)と、ガスバリア性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)との混和性を考慮することが好ましい。これらの樹脂の混和性により、得られる製品のガスバリア性、清浄性、酸素掃去剤としての有効性、機械的特性、製品のテキスチャー等が影響を受けることがある。
【0099】
本発明の樹脂組成物には、本発明の作用効果が阻害されない範囲内で各種の添加剤を含有させてもよい。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、乾燥剤、充填剤、顔料、染料、加工助剤、難燃剤、防曇剤、他の高分子化合物等が挙げられる。上記のうち、(i)熱安定剤、(ii)光開始剤、および(iii)脱臭剤について、以下に説明する。
【0100】
上記添加剤のうち、(i)熱安定剤としては、ハイドロタルサイト化合物、高級脂肪族カルボン酸の金属塩の1種または2種以上が用いられる。これらの化合物は、樹脂組成物の製造時において、ゲルやフィッシュアイの発生を防止することができ、長時間の運転安定性をさらに改善することができる。これらの化合物は、樹脂組成物全体の0.01〜1重量%の割合で含有されるのが好適である。
【0101】
高級脂肪族カルボン酸の金属塩とは、炭素数8〜22の高級脂肪酸の金属塩である。炭素数8〜22の高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸等が挙げられる。塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム等が挙げられる。このうちマグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属が好適である。このような高級脂肪族カルボン酸の金属塩の中でも、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0102】
上記添加剤のうち、(ii)光開始剤は、本発明の樹脂組成物からなる成形物、包装用フィルム、多層構造体等の中で、酸素掃去を開始または促進させるために使用される。特に、樹脂組成物が酸化防止剤を含有する場合、光開始剤を同時に含有させることが好ましい。光開始剤を含有する樹脂組成物に所望の時期に光を照射することにより、熱可塑性樹脂(B)と酸素との反応の開始が促進されて、樹脂組成物の酸素掃去の誘導期が減少または消失し、その結果、樹脂組成物の酸素掃去機能を速やかに発現することが可能となる。ここで誘導期とは、本発明の樹脂組成物が充分に酸素の捕捉を開始するまでの時間である。
【0103】
上記光開始剤としては、次の化合物が挙げられるが、これらに限定されない:ベンゾフェノン、o−メトキシベンゾフェノン、アセトフェノン、o−メトキシアセトフェノン、アセナフテンキノン、メチルエチルケトン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α−フェニルブチロフェノン、p−モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4−モルホリノベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、4−o−モルホリノデオキシベンゾイン、p−ジアセチルベンゼン、4−アミノベンゾフェノン、4′−メトキシアセトフェノン、α−テトラロン、9−アセチルフェナントレン、2−アセチルフェナントレン、10−チオキサントン、3−アセチルフェナントレン、3−アセチルインドール、9−フルオレノン、1−インダノン、1,3,5−トリアセチルベンゼン、チオキサンテン−9−オン、キサンテン−9−オン、7−H−ベンズ[de]アントラセン−7−オン、ベンゾインテトラヒドロピラニルエーテル、4,4′−ビス−(ジメチルアミノ)−ベンゾフェノン、1′−アセトナフトン、2′−アセトナフトン、2,3−ブタンジオン、ベンズ[a]アントラセン−7,12−ジオン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α,α−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジブトキシアセトフェノン等。これらの化合物以外にも、例えばローズベンガル、メチレン青、テトラフェニルポルフィリン等の一重項酸素発生光増感剤、ポリ−(エチレン−一酸化炭素)およびオリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)−フェニル]−プロパノン]等の重合体開始剤も光開始剤として使用することができる。
【0104】
上記使用される光開始剤の量は、使用する熱可塑性樹脂(B)の種類、使用する光の波長および強度、使用する酸化防止剤の性質および量、使用する光開始剤の種類、さらには、本発明の樹脂組成物の使用時の形態に応じて適宜選択すればよい。例えば、本発明の樹脂組成物からなる成形物が若干不透明なものである場合には、比較的多量の光開始剤が必要となる。一般的には、光開始剤の使用量は樹脂組成物全体の0.01〜10重量%の範囲であることが好適である。
【0105】
照射される光としては、例えば約200〜750ナノメートル(nm)の、好ましくは約200〜400nmの波長を有する紫外線または可視光が有用である。これらの光は比較的長い波長を有するため、コストおよび人体等への影響等の観点から好ましい。光の照射量としては、本発明の樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂(B)1gあたり0.1ジュール(J)以上であることが好ましく、通常は10〜100Jの範囲である。上記の光以外にも、約0.2〜20メガラド(Mrad)の、好ましくは約1〜10Mradの放射線量を有する電子線、イオン化放射線、例えばガンマ線、X線およびコロナ放電等が使用可能である。光の照射は、好ましくは酸素の存在下で行う。光の照射時間は、光開始剤の量および種類、成形物の形状(厚さ等)、酸化防止剤の量、ならびに光の波長および強度等に応じて、適宜選択すればよい。
【0106】
上記光の照射の時期としては、本発明の樹脂組成物の酸素掃去機能が必要となる時点よりも前であれば、特に限定されない。例えば、本発明の樹脂組成物を包装材料として使用する場合、光の照射は包装の直前であっても包装中であっても、また包装後であってもよい。光を均一に照射するという観点から、樹脂組成物を、例えば平坦なシート状として照射することが好ましい。
【0107】
上記添加剤のうち、(iii)脱臭剤(または消臭剤、吸着剤;以下これらを含めて脱臭剤という)は、本発明の樹脂組成物の酸素掃去に伴い発生する低分子の副生成物による臭気を低減させるために使用される。
【0108】
脱臭剤の種類としては特に制限はないが、亜鉛化合物、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、鉄(II)化合物、亜鉛化合物およびケイ素化合物を含む組成物、亜鉛化合物およびアルミニウム化合物を含む組成物、有機酸類、鉄(II)化合物−有機酸組成物等が挙げられる。これらは単独で用いることもできるし、複数種の混合物または複塩であってもよい。
【0109】
亜鉛化合物としては、ケイ酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、リン酸亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、クエン酸亜鉛、フマル酸亜鉛、ギ酸亜鉛等が挙げられる。
【0110】
アルミニウム化合物としては、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム等が挙げられる。
【0111】
ケイ素化合物としては、二酸化ケイ素、オルソリン酸ケイ素、ピロリン酸ケイ素−I型、ピロリン酸ケイ素−II型等のリン酸ケイ素化合物、活性シリカゲル等が挙げられる。
【0112】
鉄(II)化合物としては、2価の鉄イオンを形成するものであれば特に制限はなく、例えば、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)等の無機塩、没食子酸鉄(II)、リンゴ酸鉄(II)、フマル酸鉄(II)等の有機塩が挙げられる。これらの中でも、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)が好ましい。
【0113】
亜鉛化合物とケイ素化合物とを含む組成物(混合物または複塩)も好適に用いられる。この組成物の具体的な例としては、酸化亜鉛と二酸化ケイ素の比率が重量比で1:5〜5:1の範囲であり、大部分がアモルファスな構造を有している、ケイ酸亜鉛の実質的に不定形な微粒子が好ましい。酸化亜鉛と二酸化ケイ素の比率は、好ましくは1:4〜4:1の範囲、より好ましくは1:3〜3:1の範囲である。
【0114】
亜鉛化合物とアルミニウム化合物との組成物もまた好適に用いられる。この組成物の具体的な例としては、酸化亜鉛および/または炭酸亜鉛と、硫酸アルミニウムおよび/または硫酸アルミニウムカリウムとの混合物が好ましく、亜鉛化合物100重量部に対してアルミニウム化合物1〜1000重量部、好ましくは30〜300重量部の割合で含有される。
【0115】
有機酸類としては、炭素数8以上の有機酸、例えば脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ポリカルボン酸、芳香族モノカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸が好ましく、特に芳香族ポリカルボン酸が好ましい。芳香族ポリカルボン酸の例としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリツト酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリツト酸、ベンゼンへキサカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ジフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、アゾベンゼンテトラカルボン酸、その無水物等が挙げられる。これらの中でも、ベンゼントリカルボン酸、とりわけトリメリット酸が好ましい。
【0116】
鉄(II)化合物−有機酸組成物に用いられる鉄(II)化合物としては、前記したような水に溶解して2価の鉄イオンを形成する化合物が使用できる。また、有機酸としては水に可溶なものであれば特に制限はなく、例えばアスコルビン酸(D体およびL体)、イソアスコルビン酸、その金属塩等のアスコルビン酸類、クエン酸、イソクエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸等のカルボン酸類が挙げられる。これらの中でも、L−アスコルビン酸が好ましい。このとき、2種以上の鉄(II)化合物および/または2種以上の有機酸を混合して用いても差し支えない。
【0117】
鉄(II)化合物−有機酸組成物は、両者が結合していることが好ましい。このような組成物は、例えば、両成分を混合、溶解した水溶液を噴霧乾燥、凍結乾燥等により乾燥し、粉末とすることにより調製することができる。鉄(II)化合物と有機酸との比率は重量比で1:0.01〜1:1の範囲が好ましく、1:0.02〜1:0.8がより好ましい。有機酸成分がアスコルビン酸類の場合は、鉄(II)化合物と有機酸との比率は重量比で1:0.02〜1:0.3の範囲が好ましく、1:0.02〜1:0.13がより好ましく、1:0.05〜1:0.13がさらに好ましい。また、鉄(II)化合物−有機酸組成物には脱臭機能の安定化剤としてミョウバンを、鉄(II)化合物と有機酸との合計量に対して2〜20重量%添加することが好ましい。ミョウバンとしては特に制限はないが、カリミョウバン、アンモニアミョウバン、ナトリウムミョウバンが好適である。
【0118】
他の脱臭剤として、亜鉛化合物とポリカルボン酸とからなる金属化合物を安定化させた組成物、鉄(II)−フタロシアニン誘導体等の生体酵素モデル化合物、キリ、ヒイラギ、モクセイ、ツワブキ、フキ、ライラック、シナレンギヨウ、クリ、ハンノキ等の植物の樹木液または抽出成分、ゼオライト等のアルミノ珪酸塩、セピオライト、シロタイル、バリゴルスカイト、ラフリナイト等の含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物、活性フミン酸、活性アルミナ、活性炭等が使用され、多孔質吸着剤も使用可能である。
【0119】
脱臭剤の含有量は、好適には樹脂組成物全体の0.1重量%以上、より好適には0.2〜50重量%、さらに好適には0.5〜10重量%である。
【0120】
本発明の樹脂組成物の好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下、JIS K7210に基づく)は0.1〜100g/10分、より好適には0.5〜50g/10分、さらに好適には1〜30g/10分である。本発明の樹脂組成物のメルトフローレートが上記の範囲から外れる場合、溶融成形時の加工性が悪くなる場合が多い。
【0121】
本発明の樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂(B)からなる粒子がガスバリア性樹脂(A)からなるマトリックス中に分散していることが好ましい。このような樹脂組成物からなる成形物は、透明性、ガスバリア性および酸素掃去機能が良好である。このとき、熱可塑性樹脂(B)からなる粒子の平均粒径は10μm以下であることが好適である。平均粒径が10μmを超える場合には、熱可塑性樹脂(B)とガスバリア性樹脂(A)等でなるマトリックスとの界面の面積が小さくなり、酸素ガスバリア性および酸素掃去機能が低下する場合がある。熱可塑性樹脂(B)粒子の平均粒径は5μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。
【0122】
本発明の樹脂組成物の各成分は混合され、所望の製品に加工される。本発明の樹脂組成物の各成分を混合する方法は特に限定されない。各成分を混合する際の順序も特に限定されない。例えば、ガスバリア性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、熱可塑性樹脂(C)および遷移金属塩(D)を混合する場合、これらを同時に混合してもよいし、熱可塑性樹脂(B)、熱可塑性樹脂(C)および遷移金属塩(D)を混合した後、ガスバリア性樹脂(A)と混合してもよい。また、熱可塑性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)を混合した後、ガスバリア性樹脂(A)および遷移金属塩(D)と混合してもよいし、ガスバリア性樹脂(A)および遷移金属塩(D)を混合した後、熱可塑性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)と混合してもよい。さらに、ガスバリア性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)を混合した後、遷移金属塩(D)と混合してもよいし、熱可塑性樹脂(C)および遷移金属塩(D)を混合した後、ガスバリア性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)と混合してもよい。また、ガスバリア性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)を混合して得た混合物と、ガスバリア性樹脂(A)および遷移金属塩(D)を混合して得た混合物とを混合してもよい。
【0123】
混合の具体的な方法としては、工程の簡便さおよびコストの観点から溶融混練法が好ましい。このとき、高い混練度を達成することのできる装置を使用し、各成分を細かく均一に分散させることが、酸素吸収性能、透明性を良好にすると共に、ゲル、ブツの発生や混入を防止できる点で好ましい。
【0124】
混練度の高い装置としては、連続式インテンシブミキサー、ニーディングタイプ二軸押出機(同方向または異方向)、ミキシングロール、コニーダー等の連続型混練機、高速ミキサー、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、加圧ニーダー等のバッチ型混練機、(株)KCK製のKCK混練押出機等の石臼のような摩砕機構を有する回転円板を使用した装置、一軸押出機に混練部(ダルメージ、CTM等)を設けたもの、リボンブレンダー、ブラベンダーミキサー等の簡易型の混練機等を挙げることができる。これらの中でも、連続型混練機が好ましい。市販されている連続式インテンシブミキサーとしては、Farrel社製FCM、(株)日本製鋼所製CIM、(株)神戸製鋼所製KCM、LCM、ACM等が挙げられる。これらの混練機の下に一軸押出機を設置し、混練と押出ペレット化を同時に実施する装置を採用することが好ましい。また、ニーディングディスクまたは混練用ロータを有する二軸混練押出機としては、例えば(株)日本製鋼所製TEX、Werner&Pfleiderer社製ZSK、東芝機械(株)製TEM、池貝鉄工(株)製PCM等が挙げられる。
【0125】
これらの連続型混練機においては、ローター、ディスクの形状が重要な役割を果たす。特にミキシングチャンバとローターチップまたはディスクチップとの隙間(チップクリアランス)は重要で、狭すぎても広すぎても分散性の良好な混合物は得られない。チップクリアランスとしては1〜5mmが最適である。
【0126】
混練機のローターの回転数は、通常100〜1200rpmであり、好ましくは150〜1000rpmであり、より好ましくは200〜800rpmである。また、混練機チャンバー内径(D)は通常30mm以上であり、好ましくは50〜400mmである。さらに、混練機のチャンバー長さ(L)と内径(D)との比L/Dは、4〜30が好適である。混練機は1機でもよいし、また2機以上を連結して用いることもできる。
【0127】
混練温度は、通常50〜300℃の範囲である。熱可塑性樹脂(B)の酸化防止のためには、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが好ましい。混練時間は、長い方が良い結果を得られるが、熱可塑性樹脂(B)の酸化防止および生産効率の観点から、通常10〜600秒であり、好ましくは15〜200秒であり、より好ましくは15〜150秒である。
【0128】
本発明の樹脂組成物は、成形方法を適宜採用することによって、種々の成形物、例えば、フィルム、シート、容器その他の包装材料等に成形することができる。このとき、本発明の樹脂組成物を一旦ペレットとしてから成形に供してもよいし、樹脂組成物の各成分をドライブレンドして、直接成形に供してもよい。
【0129】
成形方法および成形物としては、例えば、溶融押出成形によりフィルム、シート、パイプ等に、射出成形により容器形状に、また中空成形によりボトル状等の中空容器に成形することができる。中空成形としては、押出成形によりパリソンを成形し、これをブローして成形を行う押出中空成形と、射出成形によりプリフォームを成形し、これをブローして成形を行う射出中空成形が好ましい。
【0130】
本発明においては、上記成形により得られる成形物は単層であってもよいが、機械的特性、水蒸気バリア性、さらなる酸素バリア性などの特性を付与するという観点から、他の層と積層して多層構造体として用いることが好ましい。
【0131】
多層構造体の層構成としては、本発明の樹脂組成物以外の樹脂、金属、紙、織布、不織布等からなる層をx層、本発明の樹脂組成物層をy層、接着性樹脂層をz層とすると、x/y、x/y/x、x/z/y、x/z/y/z/x、x/y/x/y/x、x/z/y/z/x/z/y/z/x等が例示されるが、これらに限定されるものではない。複数のx層を設ける場合は、その種類は同じであっても異なっていてもよい。また、成形時に発生するトリム等のスクラップからなる回収樹脂を用いた層を別途設けてもよいし、回収樹脂を他の樹脂からなる層にブレンドしてもよい。多層構造体の各層の厚み構成は、特に限定されるものではないが、成形性およびコスト等の観点から、全層厚みに対するy層の厚み比は2〜20%が好適である。
【0132】
上記のx層に使用される樹脂としては、加工性等の観点から熱可塑性樹脂が好ましい。かかる熱可塑性樹脂としては、次の樹脂が挙げられるが、特にこれらに限定されない:ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンまたはプロピレン共重合体(エチレンまたはプロピレンと次の単量体の少なくとも1種との共重合体:1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネート等のカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類等)、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ1−ブテン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリε−カプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド;ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアクリレート等。かかる熱可塑性樹脂層は無延伸のものであってもよいし、一軸もしくは二軸に延伸または圧延されているものであっても構わない。
【0133】
これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリオレフィンは耐湿性、機械的特性、経済性、ヒートシール性等の点で、また、ポリエステルは機械的特性、耐熱性等の点で好ましい。
【0134】
一方、z層に使用される接着性樹脂としては、各層間を接着できるものであれば特に限定されず、ポリウレタン系またはポリエステル系の一液型または二液型硬化性接着剤、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂等が好適に用いられる。カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸またはその無水物(無水マレイン酸等)を共重合成分として含むオレフィン系重合体または共重合体;あるいは不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体または共重合体にグラフトさせて得られるグラフト共重合体である。
【0135】
これらの中でも、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂がより好ましい。特に、x層がポリオレフィン樹脂である場合、y層との接着性が良好となる。かかるカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリエチレン{低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)}、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(メチルエステルまたはエチルエステル)共重合体等をカルボン酸変性したものが挙げられる。
【0136】
また、x層に使用される金属としては、例えば、缶容器等に一般的に使用されているスチールやアルミ等が挙げられる。
【0137】
多層構造体を得る方法としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、共射出成形法、共押出成形法等が例示されるが、特に限定されるものではない。共押出成形法としては、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押出インフレーション成形法、共押出ブロー成形法等を挙げることができる。
【0138】
このようにして得られた多層構造体のシート、フィルム、パリソン等を、含有される樹脂の融点以下の温度で再加熱し、絞り成形等の熱成形法、ロール延伸法、パンタグラフ式延伸法、インフレーション延伸法、ブロー成形法等により一軸または二軸延伸して、延伸された成形物を得ることもできる。
【0139】
本発明の樹脂組成物は適切な樹脂を選択することにより透明性が良好となる。従って、積層する他の樹脂として透明性が良好な樹脂を選択することにより、内容物を視認しやすい包装容器を得られる。かかる観点から、本発明の樹脂組成物層を有する多層構造体のヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
【0140】
上記の多層構造体を用いた成形物は各種用途に用いられる。とりわけ、本発明の多層構造体の効果は、多層容器としたときに大きく発揮される。さらに、本発明の樹脂組成物層の両側または高湿度側に、水蒸気バリア性の高い層を配置した多層構造体は、酸素掃去機能の持続期間が特に延長され、結果として極めて高度なガスバリア性がより長い時間継続される観点から好適である。一方、樹脂組成物層を最内層に有する多層容器は、容器内の酸素掃去機能が速やかに発揮されるという観点から好適である。
【0141】
さらに、本発明の樹脂組成物は適切な樹脂を選択することにより透明性が良好となる。従って、このような樹脂組成物は、内容物を視認しやすい包装容器としての用途に最適である。かかる包装容器の内でも透明性に対する要求性能が厳しく、本発明の樹脂組成物を使用することの有用性が大きい態様として、以下の2種の態様が挙げられる。すなわち、一つは本発明の樹脂組成物からなる層を含み、全層厚みが300μm以下である多層フィルムからなる容器であり、他の一つは本発明の樹脂組成物からなる層および熱可塑性ポリエステル(PES)層をそれぞれ少なくとも1層含む多層容器である。以下、それらの実施態様について順次説明する。
【0142】
本発明の樹脂組成物からなる層を含み、全層厚みが300μm以下である多層フィルムからなる容器は、全体層厚みが比較的薄い多層構造体からなるフレキシブルな容器であり、通常パウチ等の形態に加工されている。この容器はガスバリア性に優れ、さらには持続的な酸素掃去機能を有し、かつ製造が簡便であるので、酸素に対し感受性が高く劣化し易い製品の包装に極めて有用である。
【0143】
一般に良好な透明性が要求される容器としては、多層構造体を構成する各樹脂層の厚みが薄く、全体としての厚みの薄い容器が製造される。例えば、ポリオレフィン等の結晶性の樹脂を用いる場合に、厚みが大きい場合には、結晶による散乱に由来して透明性が悪化する場合が多いのに対し、厚みの薄い容器であれば、良好な透明性が得られる。また一般に、無延伸で結晶化している樹脂は透明性が不良であっても、延伸配向して結晶化した樹脂は透明性が良好となる。かかる一軸または二軸に延伸されたフィルムは通常厚みが薄く、この点からも厚みの薄い多層構造体が良好な透明性を与える場合が多い。
【0144】
本発明の樹脂組成物は適切な樹脂を選択することにより透明性が良好となる。従って、透明性が要求されることの多い、厚みの薄い多層フィルムからなる容器に好適に使用することが可能である。このような薄いフィルムにおいては経時的に透明性が悪化してもその程度は小さい。このような多層フィルムの厚みは、特に限定されないが、透明性およびフレキシブル性を維持するという観点から好適には300μm以下であり、より好適には250μm以下であり、さらに好適には200μm以下である。一方、容器としての機械的特性を考慮すると、全層厚みは好適には10μm以上であり、より好適には20μm以上であり、さらに好適には30μm以上である。
【0145】
上記の多層容器を多層フィルムから製造する場合、該多層フィルムの製造方法に特に制限はなく、例えば、本発明の樹脂組成物層と他の熱可塑性樹脂層とをドライラミネート、共押出ラミネート等の方法で積層することによって多層フィルムを得ることができる。
【0146】
ドライラミネートする場合には、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、圧延フィルム等が使用可能である。これらの中でも、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリε−カプロラクタムフィルムが、機械的強度の観点から好ましく、防湿性も考慮すると、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが特に好ましい。無延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムを使用する場合、積層した後に多層フィルムを再加熱し、絞り成形等の熱成形法、ロール延伸法、パンタグラフ式延伸法、インフレーション延伸法等により一軸または二軸延伸することによって、延伸された多層フィルムを得ることもできる。
【0147】
得られる多層容器を密封するために、多層フィルムの製造段階において、少なくとも一方の最外層表面にヒートシール可能な樹脂からなる層を設けることも好ましい。かかる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを挙げることができる。
【0148】
こうして得られた多層フィルムは、例えば袋状に加工され、内容物を充填するための包装容器とすることができる。フレキシブルで簡便であり、かつ透明性および酸素掃去性に優れるので、酸素の存在により劣化しやすい内容物、特に食品等の包装に極めて有用である。
【0149】
本発明の樹脂組成物からなる層およびPES層をそれぞれ少なくとも1層含む多層容器は、ガスバリア性、酸素掃去機能に優れ、さらに適切な樹脂を選択することにより透明性が良好となる。そのため、袋状容器、カップ状容器、中空成形容器等の種々の形態で使用される。これらの中でも、中空成形容器、特にボトルが重要である。
【0150】
PESからなるボトルは、現在広く飲料容器として使用されている。かかる用途においては内容物の劣化を防ぐ必要があるとともに、内容物である飲料を消費者が充分に視認できることが要求されている。しかも、例えばビールのような酸素による風味の劣化を極めて受けやすい内容物を充填する場合には、極めて高度なガスバリア性と酸素掃去性能を有することが望まれる。
【0151】
本発明の樹脂組成物からなる層およびPES層をそれぞれ少なくとも1層含む多層容器は、高い透明性を得ることが可能であり、内容物の品質の保持性能が極めて優れているので、かかる用途に最適である。多層容器の層構成としては、樹脂組成物層とPES層との間に接着性樹脂層を配置してもよいが、PES層が樹脂組成物層の両面に直接接触するように配置されてなる多層容器は、より高い透明性を得ることが可能であり、かつ樹脂組成物層とPES層との間の耐衝撃剥離性に優れるという本発明の効果を充分に奏し得る観点から、特に好ましい。
【0152】
上記本発明の樹脂組成物からなる層およびPES層からなる本発明の多層容器に用いられるPESとしては、芳香族ジカルボン酸またはそれらのアルキルエステルと、ジオールとを主成分とする縮合重合体が用いられる。特に本発明の目的を達成するには、エチレンテレフタレート成分を主とするPESが好ましい。具体的には、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位との合計割合(モル%)が、PESを構成する全構造単位の合計モル数に対して、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上がより好ましい。テレフタル酸単位とエチレングリコール単位の合計割合が70モル%未満であると、得られるPESが非晶性となり、機械的強度が不足する上に、延伸して容器とした後に内容物を加熱充填(ホットフィル)すると、熱収縮が大きく使用に耐えない虞がある。また、樹脂内に含有されるオリゴマーを低減するために固相重合を行うと、樹脂の軟化による膠着が生じやすく、生産が困難になる虞がある。
【0153】
上記PESは、必要に応じてテレフタル酸単位およびエチレングリコール単位以外の二官能化合物単位を、上記の問題が発生しない範囲において含有することができる。その割合(モル%)としては、PESを構成する全構造単位の合計モル数に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましい。このような二官能化合物単位としては、ジカルボン酸単位、ジオール単位、ヒドロキシカルボン酸単位等が挙げられ、脂肪族、脂環式、芳香族のいずれでもよい。具体的には、ネオペンチルグリコール単位、シクロヘキサンジメタノール単位、シクロヘキサンジカルボン酸単位、イソフタル酸単位、ナフタレンジカルボン酸単位等が挙げられる。
【0154】
これらの中でも、イソフタル酸単位は、得られたPESを用いた場合、良好な成形物を得ることのできる製造条件が広く、成形性に優れるため、不良品率が低いという利点を有する。結晶化速度の抑制により、成形品の白化を防止できる点からも好ましい。また、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位は、得られる成形物の落下時の強度が一層優れるという点から好ましい。さらに、ナフタレンジカルボン酸単位は、得られるPESのガラス転移温度が上昇し、耐熱性が向上する上に、紫外線を吸収する能力が付与されるので好ましく、内容物が紫外線による劣化を生じやすい場合に特に有用である。例えば、ビールのように内容物が酸化によっても、紫外線によっても劣化しやすいものである場合に特に有用である。
【0155】
PESの製造に際して重縮合触媒を使用する場合は、PESの製造に通常用いられている触媒を使用することができる。例えば、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド等のゲルマニウム化合物;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のチタン化合物;ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート等の錫化合物等を使用することができる。これらの触媒は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。重縮合触媒の使用量としては、ジカルボン酸成分の重量に基いて0.002〜0.8重量%の範囲が好ましい。
【0156】
これらの中でも、触媒コストの面からはアンチモン化合物が好ましく、三酸化アンチモンが特に好ましい。一方、得られるPESの色調が良好となるという面からはゲルマニウム化合物が好ましく、二酸化ゲルマニウムが特に好ましい。また、成形性の観点からは、ゲルマニウム化合物がアンチモン化合物よりも好ましい。アンチモン化合物を触媒とした重合反応により得られるPESは、ゲルマニウム化合物を触媒として重合したPESよりも結晶化速度が速く、射出成形時またはブロー成形時に、加熱による結晶化が進行しやすく、結果として得られたボトルに白化が生じて透明性が損なわれる場合がある。また、延伸配向性が低下して、賦形性が悪化する場合もある。このように、良好な成形物を得ることのできる製造条件の範囲が狭くなり、不良品率が上昇しやすくなる傾向にある。
【0157】
特に、本発明に使用されるPESとして、副生するジエチレングリコール単位以外の共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートを使用する場合には、該PESを製造する際に、結晶化速度を抑えるためにゲルマニウム化合物を触媒として用いることが好ましい。
【0158】
上記樹脂組成物からなる層およびPES層をそれぞれ少なくとも1層含む、本発明の多層容器の製造方法は特に限定されるものではないが、共射出ブロー成形を用いることが生産性等の観点から好適である。共射出ブロー成形においては、共射出成形によって得られた容器前駆体(パリソン)を延伸ブロー成形することにより容器が製造される。
【0159】
共射出成形においては、通常、多層構造体の各層を構成すべき樹脂を2台またはそれ以上の射出シリンダーより同心円状のノズル内に導き、同時にまたはタイミングをずらして交互に、単一の金型内に射出し、1回の型締め操作を行うことにより成形が行われる。例えば(1)先に内外層用のPES層を射出し、次いで、中間層となる樹脂組成物を射出して、PES/樹脂組成物/PESの3層構成の成形容器を得る方法、(2)先に内外層用のPES層を射出し、次いで樹脂組成物を射出して、それと同時にまたはその後にPES層を再度射出し、PES/樹脂組成物/PES/樹脂組成物/PESの5層構成の成形容器を得る方法等によりパリソンが製造されるが、これらの製造方法に限定されるものではない。また、上記層構成において、樹脂組成物層とPES層との間に、必要に応じて接着性樹脂層を配置してもよい。
【0160】
射出成形の条件としては、PESは250〜330℃の温度範囲で射出することが好ましく、270〜320℃がより好ましく、280〜310℃がさらに好ましい。PESの射出温度が250℃未満である場合、PESが十分に溶融せず、成形物に未溶融物(フィッシュアイ)が混入し外観不良を生じ、同時に成形物の機械的強度の低下の原因となる虞がある。また、極端な場合はスクリュートルクが上昇し、成形機の故障を引き起こす虞がある。一方、PESの射出温度が330℃を超える場合、PESの分解が著しくなり、分子量低下による成形物の機械的強度の低下を引き起こす虞がある。また、分解時に生じるアセトアルデヒド等のガスにより成形物に充填する物質の性質を損なうだけでなく、分解時に生じるオリゴマーにより金型の汚れが激しくなり成形物の外観を損なう虞がある。
【0161】
樹脂組成物は170〜250℃の温度範囲で射出することが好ましく、180〜240℃がより好ましく、190〜230℃がさらに好ましい。樹脂組成物の射出温度が170℃未満である場合、樹脂組成物が十分に溶融せず、成形物に未溶融物(フィッシュアイ)が混入し外観不良を生じる虞がある。また、極端な場合はスクリュートルクが上昇し、成形機の故障を引き起こす虞がある。一方、樹脂組成物の射出温度が250℃を超える場合、熱可塑性樹脂(B)の酸化が進行し、樹脂組成物のガスバリア性および酸素掃去機能が低下する虞がある。同時に、着色やゲル化物による成形物の外観不良が生じ、あるいは分解ガスやゲル化物により流動性が不均一となりもしくは阻害されて、樹脂組成物層の欠落部分を生じることもある。極端な場合には、ゲル化物の発生により、射出成形が不可能となる。溶融時の酸化の進行を抑制するためには、原料供給ホッパーを窒素でシールすることも好ましい。
【0162】
なお樹脂組成物は、前もって原料成分を溶融配合したペレットの形で成形機に供給してもよいし、ドライブレンドした各原料成分を成形機に供給してもよい。
【0163】
PESおよび樹脂組成物が流入するホットランナー部分の温度は220〜300℃の範囲が好ましく、240〜280℃がより好ましく、250〜270℃がさらに好ましい。ホットランナー部分の温度が220℃未満である場合、PESが結晶化してホットランナー部分で固化するため、成形が困難となる場合がある。一方、ホットランナー部分の温度が300℃を超える場合、熱可塑性樹脂(B)の酸化が進行し、樹脂組成物のガスバリア性および酸素掃去機能が低下する虞がある。同時に、着色やゲル化物による成形物の外観不良が生じ、あるいは分解ガスやゲル化物により流動性が不均一となりもしくは阻害されて、樹脂組成物層の欠落部分を生じることもある。極端な場合には、ゲル化物の発生により、射出成形が不可能となる。
【0164】
金型温度としては、0〜70℃の範囲が好ましく、5〜50℃がより好ましく、10〜30℃がさらに好ましい。これにより、パリソンのPESおよび樹脂組成物の結晶化が抑制され、均一な延伸性が確保されて、得られる多層容器の耐層間剥離性および透明性が向上し、形状の安定した成形物を得ることができる。金型温度が0℃未満である場合、金型の結露によりパリソンの外観が損なわれ、良好な成形物が得られない虞がある。また、金型温度が70℃を超える場合、パリソンのPESおよび樹脂組成物の結晶化が抑制されず、延伸性が不均一となり、得られる成形物の耐層間剥離性および透明性が低下する上、意図した形に賦形された成形物を得ることが困難となる。
【0165】
こうして得られたパリソンにおいては、総厚みが2〜5mm、樹脂組成物層の厚みが合計で10〜500μmであることが好ましい。
【0166】
上記のパリソンは、高温の状態で直接、またはブロックヒーター、赤外線ヒーター等の発熱体を用いて再加熱された後、延伸ブロー工程に送られる。加熱されたパリソンを、延伸ブロー工程において縦方向に1〜5倍に延伸した後、圧縮空気等で1〜4倍に延伸ブロー成形することにより、本発明の多層射出ブロー成形容器を製造することができる。パリソンの温度は、75〜150℃が好ましく、85〜140℃がより好ましく、90〜130℃がさらにより好ましく、95〜120℃が最も好ましい。パリソンの温度が150℃を超えると、PESが結晶化しやすくなり、得られる容器が白化して外観が損なわれたり、容器の層間剥離が増加する場合がある。一方、パリソンの温度が75℃未満であると、PESにクレーズが生じ、パール調になって透明性が損なわれる場合がある。
【0167】
こうして得られる多層容器の胴部の総厚みは、一般的には100〜2000μm、好適には150〜1000μmであり、用途に応じて使い分けられる。このときの樹脂組成物層の合計厚みは、2〜200μmの範囲であることが好ましく、5〜100μmがより好ましい。
【0168】
このようにして本発明の樹脂組成物からなる層およびPES層からなる多層容器が得られる。この容器は高い透明性を得ることが可能であり、かつガスバリア性および酸素掃去機能に極めて優れる。従って、酸素の存在により劣化しやすい内容物、例えば、食品、医薬品等の容器として有用である。特にビール等の飲料の容器として極めて有用である。
【0169】
さらに、本発明の樹脂組成物は、容器用パッキング(ガスケット)として、特に容器のキャップ用のガスケットとして使用するのにも適している。この場合、キャップ本体の素材としては特に制限はなく、熱可塑性樹脂、金属などの当該分野で一般に使用される材料を採用することができる。かかるガスケットを装着してなるキャップは、ガスバリア性に優れ、かつ持続的な酸素掃去機能を有するので、酸素に対し感受性が高く劣化し易い製品の包装に極めて有用である。
【0170】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。
【0171】
本実施例における分析は次のようにして行った。
【0172】
(1)EVOHのエチレン含有量およびケン化度:
重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒としたH−NMR(核磁気共鳴)測定(日本電子社製「JNM−GX−500型」を使用)により得られたスペクトルから算出した。
【0173】
(2)EVOHのリン酸根含有量:
試料とする乾燥チップ10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液を、イオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸根含有量をリン酸イオン(PO 3−)含有量として得た。クロマトグラフィーのカラムとしては(株)横川電機製のCIS−A23を使用し、溶離液としては2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液を使用した。なお、定量に際してはリン酸水溶液で作製した検量線を用いた。
【0174】
(3)EVOHのナトリウム塩、カリウム塩およびマグネシウム塩含有量:
試料とする乾燥チップ10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液を、イオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、ナトリウム塩、カリウム塩およびマグネシウム塩含有量をそれぞれのカチオン含有量として金属換算の量で得た。クロマトグラフィーのカラムとして、(株)横河電機製のICS−C25を使用し、溶離液として5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液を使用した。なお、定量に際してはそれぞれの金属の塩化物の水溶液で作成した検量線を用いた。
【0175】
(4)EVOHの酸素透過速度:
EVOHペレットを用いて、押出温度210℃にて押出成形を行い、厚み20μmのフィルムを得た。このフィルムをEVOHの融点よりも20℃低い温度で10分間熱処理した後、20℃−65%RHに温湿度調節し、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN−10/50A)を用いて酸素透過速度を測定した。
【0176】
(5)共重合体の数平均分子量、および共重合体のスチレンブロックの数平均分子量
共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算値として求めた。共重合体のスチレンブロックの数平均分子量は、第1のスチレンブロックの重合後にサンプリングした中間体を試料として、同様にGPCを用いてポリスチレン換算値として求めた。
【0177】
(6)共重合体のスチレン含有量、イソプレンブロックにおける構造式(I)で示される構造単位の割合および炭素−炭素二重結合含有量:
これらはいずれも重クロロホルムを溶媒としたH−NMR(核磁気共鳴)測定(日本電子社製「JNM−GX−500型」を使用)により得られたスペクトルから算出した。ここで、スチレン含有量とは、共重合体を構成する全単量体単位に対するスチレンの割合(モル%)である。イソプレンブロックにおける構造式(I)で示される構造単位の割合とは、イソプレン由来の全構造単位(1,4−イソプレン単位、3,4−イソプレン単位、および1,2−イソプレン単位)に対する、構造式(I)で示される構造単位(3,4−イソプレン単位および1,2−イソプレン単位)の割合(%)である。さらに、これらの結果から、炭素−炭素二重結合含有量を樹脂1g中に含まれる二重結合のモル数(eq/g)として算出した。
【0178】
(7)共重合体のtanδ主分散ピーク温度:
試料とする樹脂を、押出温度210℃にてフィルム押出成形に供して、厚み20μmの無延伸フィルムを得た。このフィルムから幅5mmの試験片を切り出し、DVE RHEOSPECTOLER DVE−V4(RHEOLOGY Co.,LTD製)を用いて、周波数11Hz、変位振幅10μm、チャック間距離20mm、測定温度−150〜150℃、昇温速度3℃/分の条件で測定し、得られたチャートから共重合体のイソプレンブロックに由来するtanδ主分散ピーク温度を求めた。
【0179】
(8)メルトフローレート:
試料とする樹脂または樹脂組成物のチップを、メルトインデクサーL244(宝工業株式会社製)の内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに充填し、210℃で溶融した後、溶融した樹脂に対して、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーを使用して均等に荷重をかけた。シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより単位時間あたりに押出される樹脂量(g/10分)を測定し、これをメルトフローレートとした。
【0180】
(9)屈折率:
試料とする樹脂のチップを、押出温度210℃にてフィルム押出成形に供して、厚み20μmの無延伸フィルムを得た。このフィルムの屈折率を、アッベの屈折率計(株式会社アタゴ社製4T型、株式会社東芝社製SL−Na−1ランプ)を用いて測定した。
【0181】
(10)ヘイズ値(曇価):
試料とする樹脂または樹脂組成物のチップを、押出温度210℃にてフィルム押出成形に供して、厚み20μmの無延伸フィルムを得た。このフィルムのヘイズ値を、ASTM D1003−61に準じて、ポイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(村上色彩技術研究所製「HR−100型」)を用いて測定した。また、多層フィルムも同様に測定した。さらに、多層ボトルについては、ボトル胴部中央を円周上に4分割した4箇所について、各箇所における内部ヘイズ値を測定し、その平均値をボトルのヘイズ値(曇価)とした。
【0182】
(11)PETの各構造単位の含有率:
重水素化トリフルオロ酢酸を溶媒としたH−NMR(核磁気共鳴)測定(日本電子社製「JNM−GX−500型」を使用)により得られたスペクトルから算出した。
【0183】
(12)PETの極限粘度:
多層容器胴部のPET層からサンプルのフィルム層を切り出し、フェノールとテトラクロルエタンの等重量混合溶媒に溶解させた。得られた溶液の粘度を、30℃にてウベローデ型粘度計(林製作所製「HRK−3型」)を用いて測定した。
【0184】
(13)PETの融点およびガラス転移温度:
多層容器胴部のPET層からサンプルのフィルム層を切り出し、JIS K7121に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計(DSC)RDC220/SSC5200H型を用いて測定した。280℃に試料を5分間保持した後、速度100℃/分で30℃まで降温し、5分間保持した後、速度10℃/分で昇温して測定した。温度の校正にはインジウムと鉛を用いた。得られたチャートから、前記JISでいう融解ピーク温度(Tpm)および中間点ガラス転移温度(Tmg)を求め、これを各々融点およびガラス転移温度とした。
【0185】
実施例においては、ガスバリア性樹脂(A)としてEVOH(A−1)を使用した。EVOH(A−1)のエチレン含有量は32モル%、ケン化度は99.5%、メルトフローレート(210℃、2160g荷重)は8.4g/10分であった。また、EVOH(A−1)のリン酸根含有量は100ppm、ナトリウム塩、カリウム塩およびマグネシウム塩含有量は、それぞれ金属換算で20ppm、60ppmおよび20ppmであった。さらに、EVOH(A−1)の融点は183℃、酸素透過速度は、0.4ml・20μm/m・day・atm、屈折率は1.533であった。
【0186】
熱可塑性樹脂(B)として、以下のような方法によって調製したトリブロック共重合体(B−1)を使用した。
【0187】
乾燥した窒素で浄化された攪拌式オートクレーブ中にシクロヘキサン600体積部、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)0.16体積部、および開始剤としてn−ブチルリチウム0.094体積部を投入した。温度を50℃に昇温し、スチレンモノマーを4.25体積部フィードし1.5時間重合させた。次に温度を30℃に下げ、イソプレンを120体積部フィードし2.5時間重合させた。さらに再び温度を50℃に昇温し、スチレンモノマーを4.25体積部フィードし1.5時間重合させた。
【0188】
得られた反応液に、酸化防止剤として2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)を、それぞれスチレンおよびイソプレンの合計量100重量部に対して0.15重量部ずつ加えた。反応液をメタノールに注いで生成物を沈殿させ、これを分離・乾燥して、酸化防止剤が添加されたトリブロック共重合体(B−1)を得た。
【0189】
得られたスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(B−1)の数平均分子量は85000、共重合体中のスチレンブロックの分子量はそれぞれ8500、スチレン含有量は14モル%、イソプレンブロックにおける構造式(I)で示される構造単位の割合は、55%であった。また、共重合体の炭素−炭素二重結合含有量は0.014eq/gであり、メルトフローレート(210℃−2160g荷重)は7.7g/10分であった。共重合体(B−1)中には、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート0.12重量%およびペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.12重量%が含まれていた。この共重合体(B−1)の屈折率は1.531、ヘイズ値(曇価)は1.0%、イソプレンブロックに由来するtanδ主分散ピーク温度は−3℃であった。
【0190】
熱可塑性樹脂(C)として、エチレン−メタクリル酸共重合体(C−1、三井デュポンポリケミカル株式会社製「ニュクレル(商品名)」N−1207C)を使用した。
【0191】
熱可塑性ポリエステルとして、二酸化ゲルマニウムを触媒とした重合により得られたポリエチレンテレフタレート(PET)を使用した。該PETにおけるテレフタル酸単位、エチレングリコール単位、およびジエチレングリコール単位の含有率はそれぞれ50.0モル%、48.9モル%、1.1モル%であった。また、極限粘度は0.83dl/g、融点およびガラス転移温度はそれぞれ252℃、80℃であった。
【0192】
実施例1
EVOH(A−1)94重量部、トリブロック共重合体(B−1)5重量部、熱可塑性樹脂(C−1)1重量部およびステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、210℃でスクリュー回転数300rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出してペレット化し、30℃で16時間減圧乾燥を行い樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は9.4g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、トリブロック共重合体(B−1)のおおむね1μm前後の粒子が、EVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0193】
この樹脂組成物の熱安定性を評価するために、示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子工業株式会社製TG/DTA220型およびSSC5200H型)を使用し、上記樹脂組成物ペレットを窒素雰囲気下、10℃/分の速度で室温から260℃まで昇温し、260℃で2時間保持したところ、ペレットの重量保持率(加熱前の重量を基準としたペレットの重量割合)は98.5%であった。
【0194】
得られた樹脂組成物ペレットを用いて、押出温度210℃にて押出成形を行い、厚み20μmのフィルムを得た。このフィルムのヘイズ値は1.1%であった。このフィルム0.9m(0.2m×4.5m;表面積1.8m)をフィルム製膜の5時間後にロール状に巻いて、20℃、65%RHの空気を満たしておいた内部容量375mlの三角フラスコに入れた。三角フラスコ中の空気は、体積比で21:79の酸素および窒素を含有していた。三角フラスコの口を、エポキシ樹脂を用いて、アルミニウム層を含む多層シートで封じてから、20℃で放置した。封入2日後、6日後および13日後の内部の空気をシリンジでサンプリングし、この空気の酸素濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。測定時に多層シートに空いた細孔は、エポキシ樹脂を用いてその都度封じた。測定によって得られた酸素と窒素の体積比から、酸素の減少量(酸素吸収量)を計算したところ、図1に示す結果を得た。2日後と13日後の測定結果から算出した、フィルムの酸素吸収速度は0.525ml/m・dayであった。
【0195】
次に、得られたフィルムの両面に、厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ株式会社製OP−#20 U−1)を、ウレタン系接着剤(東洋モートン製、商品名:AD335A)と硬化剤(東洋モートン製、商品名:Cat−10)のトルエン/メチルエチルケトン混合溶液(重量比1:1)を使用して積層し、多層フィルムを得た。この多層フィルムのヘイズ値は2.4%であった。この多層フィルムを20℃−85%RHに温湿度調節し、製膜後24時間経過した時点を0として、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN−10/50A)を用いて酸素透過速度を1000時間測定したところ、図2に示す結果を得た。
【0196】
次に、上記樹脂組成物ペレットと、前述のPETとを原料とし、日精ASB製共射出延伸ブロー成形機(ASB−50HT型750ml、2個取り)を使用して、PET/樹脂組成物/PETの2種3層のパリソンを成形した。このとき、PET側射出機温度は290℃、樹脂組成物側射出機温度は220℃、PETと樹脂組成物とが合流するホットランナーブロック部の温度は260℃、射出金型コア温度は15℃、射出金型キャビティー温度は15℃であった。また、サイクルタイムは40秒であった。その後、コーポプラスト(CORPOPLAST)社製延伸ブロー成形機(LB01)を使用し、パリソンの表面温度を105℃に加熱して延伸ブロー成形を行い、胴部における平均厚みが内層PET200μm、中間層樹脂組成物20μm、外層PET70μmである2種3層の多層射出ブロー成形ボトルを製造した。このボトルのヘイズ値は2.9%であった。
【0197】
得られたボトルを、ボトル外部20℃−65%RH、ボトル内部20℃−100%RHに温湿度調整し、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN−10/50A)を使用して、成形10日後の容器1個当たりの酸素透過速度を測定したところ、0.00ml/container・day・atmであった。また、ボトル外部を窒素雰囲気下20℃−65%RH、ボトル内部を窒素雰囲気下20℃−100%RHに保持してボトルを3ヶ月間保管し、容器1個当たりの酸素透過速度を測定したところ、0.00ml/container・day・atmであった。
【0198】
さらに、上記のボトルの成形を連続して行い、12時間連続運転後のボトルの外観を目視で観察したところ、気泡等の外観不良は全く見られなかった。
【0199】
実施例2
熱可塑性樹脂(C−1)100重量部および酢酸コバルト(II)3重量部(コバルト原子として1重量部)をドライブレンドし、ブラベンダーを装着したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用い、窒素雰囲気下220℃でスクリュー回転数60rpmで5分間溶融混練した。原料投入直後より中和反応が始まり、副生物である酢酸蒸気の発生が認められたが、混練終了時には蒸気の発生は収まっていた。こうして、濃青色の熱可塑性樹脂(C−1)およびコバルトを含む組成物101重量部が得られた。
【0200】
実施例1で使用したEVOH(A−1)93重量部、トリブロック共重合体(B−1)5重量部および上記の熱可塑性樹脂(C−1)およびコバルトを含む組成物2.02重量部を用いて、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は9.6g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、トリブロック共重合体(B−1)のおおむね1μm前後の粒子が、EVOHからなるマトリックス中に分散していた。実施例1と同様にしてこの樹脂組成物の熱安定性を評価したところ、ペレットの重量保持率は99.4%であった。
【0201】
この樹脂組成物から、実施例1と同様にして厚み20μmのフィルムを得て、ヘイズ値を測定したところ、1.6%であった。また、酸素吸収量を測定したところ、図1に示す結果を得た。フィルムの酸素吸収速度は0.507ml/m・dayであった。次に、実施例1と同様にして多層フィルムを作製し、ヘイズ値を測定したところ、2.7%であった。
【0202】
さらに、実施例1と同様にしてボトルを作製し、ヘイズ値を測定したところ、3.4%であった。このボトルの酸素透過速度を実施例1と同様にして測定したところ、0.00ml/container・day・atmであった。3ヶ月保管後のボトルの酸素透過速度は、0.00ml/container・day・atmであった。
【0203】
さらに、上記のボトルの成形を連続して行い、12時間連続運転後のボトルの外観を目視で観察したところ、気泡等の外観不良は全く見られなかった。
【0204】
実施例3
酢酸コバルト(II)3重量部の代わりに、ステアリン酸コバルト(II)10.6重量部(コバルト原子として1重量部)を使用した以外は、実施例2と同様にして、濃青色の熱可塑性樹脂(C−1)およびコバルトを含む組成物101重量部を得た。
【0205】
熱可塑性樹脂(C−1)およびコバルトを含む組成物を上記の組成物に変更した以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は9.6g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、トリブロック共重合体(B−1)のおおむね1μm前後の粒子が、EVOHからなるマトリックス中に分散していた。また、実施例1と同様にしてこの樹脂組成物の熱安定性を評価したところ、ペレットの重量保持率は99.3%であった。
【0206】
この樹脂組成物から、実施例1と同様にして厚み20μmのフィルムを得て、ヘイズ値を測定したところ、1.4%であった。また、酸素吸収量を測定したところ、図1に示す結果を得た。フィルムの酸素吸収速度は0.471ml/m・dayであった。次に、実施例1と同様にして多層フィルムを作製し、ヘイズ値を測定したところ、2.8%であった。
【0207】
さらに、実施例1と同様にしてボトルを作製し、ヘイズ値を測定したところ、3.2%であった。このボトルの酸素透過速度を実施例1と同様にして測定したところ、0.00ml/container・day・atmであった。3ヶ月保管後のボトルの酸素透過速度は、0.00ml/container・day・atmであった。
【0208】
さらに、上記のボトルの成形を連続して行い、12時間連続運転後のボトルの外観を目視で観察したところ、気泡等の外観不良は全く見られなかった。
【0209】
比較例1
EVOH(A−1)を単独で用いた。実施例1と同様にしてこのEVOHの熱安定性を評価したところ、該EVOHペレットの重量保持率は91.4%であった。実施例1と同様にして厚み20μmのフィルムを得て、酸素吸収量を測定したところ、図1に示す結果を得た。フィルムの酸素吸収速度は0.000ml/m・dayであった。次に、実施例1と同様にして多層フィルムを作製し、ヘイズ値を測定したところ、2.0%であった。また、酸素透過速度を経時的に測定したところ、図2に示す結果を得た。
【0210】
さらに、実施例1と同様にしてボトルを作製し、ヘイズ値を測定したところ、2.4%であった。このボトルの酸素透過速度を実施例1と同様にして測定したところ、0.02ml/container・day・atmであった。3ヶ月保管後のボトルの酸素透過速度は、0.02ml/container・day・atmであった。
【0211】
さらに、上記のボトルの成形を連続して行い、12時間連続運転後のボトルの外観を目視で観察したところ、気泡等の外観不良は全く見られなかった。
【0212】
比較例2
実施例1で使用したEVOH(A−1)95重量部、トリブロック共重合体(B−1)5重量部およびステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は9.5g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、トリブロック共重合体(B−1)のおおむね1μm前後の粒子が、EVOHからなるマトリックス中に分散していた。また、実施例1と同様にしてこの樹脂組成物の熱安定性を評価したところ、ペレットの重量保持率は83.0%であった。
【0213】
この樹脂組成物から、実施例1と同様にして厚み20μmのフィルムを得て、ヘイズ値を測定したところ、1.0%であった。また、酸素吸収量を測定したところ、図1に示す結果を得た。フィルムの酸素吸収速度は0.565ml/m・dayであった。次に、実施例1と同様にして多層フィルムを作製し、ヘイズ値を測定したところ、2.3%であった。また、酸素透過速度を経時的に測定したところ、図2に示す結果を得た。
【0214】
さらに、実施例1と同様にしてボトルを作製し、ヘイズ値を測定したところ、2.7%であった。このボトルの酸素透過速度を実施例5と同様にして測定したところ、0.00ml/container・day・atmであった。3ヶ月保管後のボトルの酸素透過速度は、0.00ml/container・day・atmであった。
【0215】
さらに、上記のボトルの成形を連続して行い、12時間連続運転後のボトルの外観を目視で観察したところ、若干の気泡が認められた。
【0216】
上記の樹脂組成物の構成を表2に、各種評価の結果を表3にまとめて示す。
【0217】
【表2】
Figure 0004889891
【0218】
【表3】
Figure 0004889891
【0219】
実施例4
実施例1で作製した多層フィルムを、外径65mm、底部厚み1.2mmのポリプロピレン製スクリューキャップ本体に合うように、ガスケットの形状に打ち抜き、このスクリューキャップ本体に取り付けた。次いで圧縮成形用ガスケット成形機の金型に得られたガスケット付きキャップを供給し、また、この圧縮成形用ガスケット成形機にエチレン−1−ブテン共重合体(シェルケミカル製「POLYBUTYLENE 8240」: 1−ブテン(99モル%以上)およびエチレン(1モル%以下)の共重合体、密度0.908g/cm、MFR=2.0g/10分(210℃、2160g荷重))を、該多層フィルムでなるガスケット表面に供給し、圧縮成形することにより多層ガスケット付きキャップを作製した。このとき圧縮成形機のシリンダー温度は245℃、ノズル温度は235℃、金型温度は30℃となるよう調節した。
【0220】
次に、内容量500mlの円筒状のポリエステル製ブローボトルに、水200mlを入れ、上記のキャップを取り付け、指先で軽く締めた。ボトル胴部を手で持ち上下に大きく20回振って、液漏れの状態を観察したが、液漏れは全く見られなかった。
【0221】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた酸素掃去機能を有する樹脂組成物が得られる。該樹脂組成物は取り扱いが容易であり、任意の形状に成形することができる。特に、該樹脂組成物からなる容器は、優れたガスバリア性、防湿性、保香性、およびフレーバーバリア性を有し、また、外観、特に高い透明性を得ることが可能であるため、酸素に対し感受性が高く劣化し易い製品、特に食品、飲料、医薬品、化粧品等の容器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1〜3および比較例1および2の単層フィルムの酸素吸収量を時間に対してプロットしたグラフである。
【図2】 実施例1、比較例1および2の多層フィルムの酸素透過速度を時間に対してプロットしたグラフである。

Claims (16)

  1. 酸素透過速度が500ml・20μm/m・day・atm(20℃、65%RH)以下のガスバリア性樹脂(A)、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(B)、カルボキシル基を有する熱可塑性樹脂(C)、および遷移金属塩(D)を含有する樹脂組成物であって、
    該ガスバリア性樹脂(A)がポリビニルアルコール系樹脂であり、
    該熱可塑性樹脂(C)が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸、無水イタコン酸、および無水マレイン酸から選ばれる単量体とα−オレフィンとの共重合体であり、
    該ガスバリア性樹脂(A)を65〜99.8重量%、該熱可塑性樹脂(B)を0.1〜30重量%、該熱可塑性樹脂(C)を0.1〜5重量%の割合で含有し、そして
    該ガスバリア性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)の合計重量を基準として、遷移金属塩(D)を金属元素換算で1〜5000ppmの割合で含有する、樹脂組成物。
  2. 前記遷移金属塩(D)が鉄、ニッケル、銅、マンガンおよびコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記熱可塑性樹脂(C)が、エチレン−メタクリル酸共重合体である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記熱可塑性樹脂(B)が、炭素−炭素二重結合を0.0001eq/g以上の割合で含有する請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 前記熱可塑性樹脂(B)が、下記構造式(I)
    Figure 0004889891
    (式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアルコキシ基であり、RおよびRは各々独立して、水素原子、アルキル基、置換されていてもよいアリール基、−COOR、−OCOR、シアノ基、またはハロゲン原子であり、RおよびRは各々独立してアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアルコキシ基である)
    で示される単位を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 前記熱可塑性樹脂(B)の数平均分子量が1000〜500000である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. 前記熱可塑性樹脂(B)が芳香族ビニル化合物単位およびジエン化合物単位を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
  8. 前記ジエン化合物単位がイソプレン単位およびブタジエン単位からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項7に記載の樹脂組成物。
  9. 前記芳香族ビニル化合物単位がスチレン単位である、請求項7または8に記載の樹脂組成物。
  10. 前記熱可塑性樹脂(B)がブロック共重合体である、請求項7〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
  11. 前記ガスバリア性樹脂(A)が、エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度90%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体である請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物。
  12. 前記ガスバリア性樹脂(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との屈折率の差が0.01以下である、請求項1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
  13. 前記熱可塑性樹脂(B)からなる粒子が、前記ガスバリア性樹脂(A)のマトリックス中に分散している、請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の樹脂組成物からなる層を、少なくとも1層含む多層構造体。
  15. 請求項1〜13のいずれかに記載の樹脂組成物からなる層、および熱可塑性ポリエステル層をそれぞれ少なくとも1層含む多層容器。
  16. 請求項1〜13のいずれかに記載の樹脂組成物からなるガスケットを装着してなるキャップ。
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