JP4781507B2 - 多層構造体 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は酸素に対し感受性が高く劣化し易い製品、特に食品、飲料、医薬品、化粧品などの包装材料、容器などに好適に用いられる多層構造体に関する。具体的には、ガスバリア性、防湿性、保香性、フレーバーバリア性に優れ、かつ酸素吸収能力を有する酸素吸収性樹脂組成物からなる層と、脱臭性に優れた樹脂組成物からなる層を含む、低臭性に優れた多層構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸素に対し感受性が高く劣化し易い製品が酸素に対し暴露されるのを防ぐことにより、その製品の品質を維持し、貯蔵寿命、いわゆる“Shelf Life”を延長することができることはよく知られている。例えば包装材料を用いて、酸素雰囲気下で劣化し易い食品の酸素暴露を抑制することにより、その食品の品質が維持され、食品の腐敗が回避される。この種の包装はまた、製品の商品価値をより長く保ち、廃棄と再仕入れの必要とにより生ずる経費を減少させる。食品の包装分野においては、数種の酸素暴露を制限する手段が既に開発されている。現在、一般的に使用される手段には、改良大気包装(MAP)、真空包装および酸素障壁フィルム包装が含まれる。最初の2者の場合には、酸素濃度の低い雰囲気を包装に使用し、後者の場合には酸素が包装環境に入ることを物理的に防止する。
【0003】
上記酸素障壁フィルム包装は、最も古典的に用いられている手段であり、フィルム材料として種々のガスバリア性樹脂が用いられている。
【0004】
このようなガスバリア性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略すことがある)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが広く用いられている。これらの樹脂は、酸素あるいは炭酸ガスバリア性に優れた材料であり、かつ溶融成形が可能で、包装用のフィルム、シート、ボトル、容器等に広く用いることが可能である。このような樹脂は、耐湿性、機械的特性等に優れた熱可塑性樹脂、なかでもポリオレフィン系樹脂の層と積層され、多層プラスチック包装材として好適に用いられている。例えば、バッグ、ボトル、カップ、パウチ等の形で酸素バリア性に優れた容器として食品、化粧品、医化学薬品、トイレタリー等の種々の分野で広く使用されている。
【0005】
このようなガスバリア性樹脂を用いた包装材料は、酸素、炭酸ガスなどのバリア性に優れるものの、缶詰等の用途に使用される金属素材や、瓶詰め等の用途に使用されるガラスのように、酸素等の気体に対する透過性はゼロに限りなく近いというわけではなく、未だ無視し得ない量の気体を透過する。特に食品用途における包装材料においては、長期間保存した場合の内容物の酸化による品質の低下が懸念されるため、酸素バリア性の改良が強く望まれている。また、酸化されやすい内容物を包装する場合、内容物包装時や充填時に内容物とともに包装容器内に混入する酸素を掃去することにより、内容物の劣化を防ぐことも望まれている。そのため、包装環境内に酸素掃去剤を封入すること、あるいは酸素掃去剤をガスバリア性樹脂に混入させてガスバリア性樹脂に酸素掃去機能を付与することが提案されている。特にガスバリア性樹脂に酸素吸収機能を付与する場合には、包装内部全体を通じての均一な掃去効果が得られ、加えて包装材壁を通過する酸素が掃去剤によりを掃去される。そのため、包装内部全体を通じて酸素のレベルを最小限に維持することが可能となる。
【0006】
上記酸素掃去剤としては種々の化合物が知られているが、改良された酸素掃去剤として、遷移金属触媒とエチレン性不飽和化合物(たとえばポリブタジエン、ポリイソプレン等)とを含有する組成物が提案されている(特開平5−115776号参照)。この公報には、エチレン性不飽和化合物としてトランス−1,4−ポリイソプレン、および1,2−ポリブタジエンが、そして遷移金属触媒としてコバルト化合物が例示されている。しかしながら、該酸素掃去剤の酸素掃去効果は必ずしも十分でなく、また場合によっては、有用な酸素掃去の開始までの遅れ(以下、誘導期間という)が、長くなってしまう問題を有している。
【0007】
ガスバリア性樹脂に酸素吸収機能(掃去機能)を付与する方法としては、次のような方法が提案されている:▲1▼EVOHに遷移金属等の酸化触媒を加えることにより、該EVOHを酸化されやすくし、透過しようとする酸素と該EVOHとを反応させ、そのことによりEVOHに酸素吸収機能を付与する方法(特開平4−211444号);▲2▼ポリ塩化ビニルに遷移金属等の酸化触媒を加えることにより、該ポリ塩化ビニルを酸化されやすくし、透過しようとする酸素と該ポリ塩化ビニルとを反応させ、そのことによりポリ塩化ビニルに酸素吸収機能を付与する方法(特開平4−45144号);▲3▼ポリオレフィンと酸化触媒からなる樹脂組成物をEVOH中に分散させて、透過しようとする酸素とEVOH中のポリオレフィンとを反応させることにより、酸素吸収機能を有する樹脂組成物を得る方法(特開平05−156095号);および▲4▼EVOH、ポリオレフィンおよび酸化触媒を配合し、透過しようとする酸素とポリオレフィンおよびEVOHとを反応させることにより、酸素吸収機能を有する樹脂組成物を得る方法(特開平05−170980号)。
【0008】
しかしながら、上記した▲1▼および▲2▼の方法は酸素バリア性の向上効果が十分でなく、かつ酸化触媒を多量に添加するため透明性が十分でないという問題がある。▲3▼および▲4▼の方法でも、ガスバリア性樹脂にポリオレフィンを加えることにより著しく透明性が損なわれるという問題を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、酸素に対し感受性が高く劣化し易い製品、特に食品、飲料、医薬品、化粧品などの包装材料、容器などに好適に用いられる多層構造体を提供することにある。具体的には、食品、飲料、医薬品、化粧品などを包装する場合において、優れたガスバリア性、酸素吸収性、防湿性、保香性、およびフレーバーバリア性に優れ、さらに内容物に対する臭いの移行が抑制された、多層構造体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の多層構造体は、数平均分子量が1000〜500000の範囲であり、構造式(I):
【0011】
【化3】
Figure 0004781507
【0012】
[式中、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアルコキシ基であり、R2およびR3は各々水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、置換アリール基、非置換アリール基、−COOR4、−OCOR5、シアノ基、またはハロゲン原子であり、R4およびR5は各々独立して炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアルコキシ基である]
で示される構造単位の少なくとも1種を有する樹脂であって、該構造単位中の炭素−炭素二重結合が0.0001eq/g以上の割合で含有され、かつビニル結合含有量が10%以上である熱可塑性樹脂(a)および遷移金属塩(b)からなる酸素吸収性成物層と、脱臭剤(c)0.1〜50重量%および熱可塑性樹脂(d)50〜99.9重量%からなる脱臭層を含み、
前記熱可塑性樹脂(a)が構造式(I)を含むポリイソプレンブロックおよびポリスチレンブロックから主としてなる、多層構造体である。
【0013】
好適な実施態様においては、前記酸素吸収性樹脂組成物層の酸素吸収速度は0.01ml/m2・day以上である。
【0014】
本発明の第2の多層構造体は、、数平均分子量が1000〜500000の範囲であり、構造式(I):
【0015】
【化4】
Figure 0004781507
【0016】
[式中、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアルコキシ基であり、R2およびR3は各々水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、置換アリール基、非置換アリール基、−COOR4、−OCOR5、シアノ基、またはハロゲン原子であり、R4およびR5は各々独立して炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアルコキシ基である]
で示される構造単位の少なくとも1種を有し、該構造単位中の炭素−炭素二重結合が0.0001eq/g以上の割合で含有され、かつビニル結合含有量が10%以上である熱可塑性樹脂(a)を含み、さらに酸素吸収速度が0.01ml/m2・day以上である酸素吸収性樹脂組成物層と、脱臭剤(c)0.1〜50重量%および熱可塑性樹脂(d)50〜99.9重量%からなる脱臭層を含み、
前記熱可塑性樹脂(a)が構造式(I)を含むポリイソプレンブロックおよびポリスチレンブロックから主としてなる、多層構造体である。
【0017】
好適な実施態様においては、本発明に用いられる熱可塑性樹脂(a)が上記構造式(I)で示される構造単位を有し、当該構造単位において、R1はメチル基であって、R2およびR3は各々水素原子である。
【0018】
好適な実施態様においては、上記熱可塑性樹脂(a)は芳香族ビニル化合物から誘導される構造単位を有する。
【0019】
好適な実施態様においては、熱可塑性樹脂(a)は、ポリスチレンブロック−構造式(I)を含むポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロックからなる3元ブロック共重合体である。
【0020】
好適な実施態様においては、熱可塑性樹脂(a)の炭素−炭素二重結合は、該樹脂中に0.002eq/g以上の割合で含有される。
【0021】
好適な実施態様では、本発明の多層構造体を構成する、前記脱臭剤(c)および熱可塑性樹脂(d)からなる脱臭層が、脱臭剤(c)0.1〜50重量%および熱可塑性樹脂(d)50〜90重量%からなる樹脂組成物である。
【0022】
好適な実施態様においては、上記遷移金属塩(b)は鉄塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩、およびコバルト塩のうちのいずれかである。
【0023】
ある実施態様においては、本発明の酸素吸収性樹脂組成物層は、さらに上記熱可塑性樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂を含有する。この樹脂は、例えば、酸素透過速度が500ml・20μm/m2・day・atm(20℃、65%RH)以下のガスバリア性樹脂(e)である。また、好適な実施形態においては、上記前記熱可塑性樹脂(a)がさらに酸化防止剤0.01〜1重量%を含有する。さらに別の好適な実施形態においては、層構成が脱臭層/酸素吸収層/脱臭層または脱臭層/接着性樹脂層/酸素吸収層/接着性樹脂層/脱臭層の多層構造体である。
【0024】
好適な実施態様においては、本発明の樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂(a)およびガスバリア性樹脂(e)を有し、該熱可塑性樹脂(a)からなる粒子が該ガスバリア性樹脂(e)のマトリックス中に分散している。
【0025】
好適な実施態様においては、上記多層構造体の全層厚みが、300μm以下であり、さらに好適な実施態様では、上記多層構造体は、全層厚みが300μm以下の多層フィルムとして用いられる。
【0026】
本発明はまた、上記多層構造体からなるガスケットを装着してなるキャップを包含する。
【0027】
【発明の実施の形態】
本明細書において、酸素を“掃去する”とは、与えられた環境から酸素を吸収・消費し、あるいはその量を減少させることを言う。
【0028】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂(a)は、数平均分子量が1000〜500000の範囲であり、構造式(I):
【0029】
【化5】
Figure 0004781507
【0030】
[式中、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアルコキシ基であり、R2およびR3は各々水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、置換アリール基、非置換アリール基、−COOR4、−OCOR5、シアノ基、またはハロゲン原子であり、R4およびR5は各々独立して炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアルコキシ基である]
で示される構造単位の少なくとも1種を有する。この構造単位由来の炭素−炭素二重結合は0.0001eq/g以上の割合で該樹脂中に含有される。
【0031】
上記構造式(I)の定義におけるアリール基の炭素数は、好ましくは6から10であり、アルキルアリール基の炭素数は、好ましくは7〜11であり、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは、1〜10である。アルキル基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が、アリール基の例としてはフェニル基が、アルキルアリール基の例としてはベンジル基が、アルコキシ基の例としてはメトキシ基、エトキシ基が、ハロゲン原子の例としては塩素原子が、それぞれ挙げられる。
【0032】
この熱可塑性樹脂(a)は、上記のようにその分子内に炭素−炭素二重結合を有するため、酸素と効率よく反応することが可能であり、酸素掃去機能(酸素吸収機能)が得られる。上記炭素−炭素二重結合とは、共役二重結合を包含するが、芳香環に含まれる多重結合は包含しない。
【0033】
この炭素−炭素二重結合は、上記のように、熱可塑性樹脂(a)中に0.0001eq/g以上の割合で含有される。この二重結合は、好ましくは、0.0005eq/g以上、より好ましくは0.001eq/g以上、さらに好ましくは0.002eq/g以上の割合で含有される。炭素−炭素二重結合の含有量が0.0001eq/g未満である場合には、酸素吸収速度が十分とならず、本発明の組成物の酸素掃去効果が十分に向上しない。上記熱可塑性樹脂(a)の酸素吸収速度の下限は、好ましくは0.01ml/m2・day以上であり、より好ましくは0.1ml/m2・day以上であり、さらに好ましくは1ml/m2・day以上であり、特に好ましくは10ml/m2・day以上である。
【0034】
熱可塑性樹脂(a)の分子量は、好ましくは、上記のように、1000〜500000である。さらに、樹脂組成物の成形・加工性、それから得られる成形品の機械的性質及び熱可塑性樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂への分散性の点を考慮すると、より好ましくは、10000〜250000、最も好ましくは40000〜200000の範囲である。
【0035】
熱可塑性樹脂(a)の分子量が1000未満の場合には、樹脂組成物の成形・加工性或いは取り扱いのし易さが著しく低下する虞があり、成形品とした場合の強度や伸度等機械的性質も低下する虞がある。更に、熱可塑性樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂(例えば、ガスバリア性樹脂)と混合して使用する場合において分散性が低下し、その結果、ガスバリア性および酸素掃去性能が低下する場合がある。数平均分子量が500000を超える場合においても、樹脂組成物の成形・加工性が低下することがある。さらに、熱可塑性樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂と混合して使用する場合の分散性が低下し、ガスバリア性および酸素掃去性能が低下することもある。
【0036】
熱可塑性樹脂(a)の炭素−炭素二重結合は、一般にジエン化合物由来であるが、それに限定されない。本発明において用いられる熱可塑性樹脂(a)の合成に用いられるジエン化合物の例としては、イソプレン、ブタジエン、2−エチル−ブタジエン、2−ブチル−ブタジエン等が挙げられる。ジエン化合物として、1成分のみを使用しても良いし、2成分を同時に使用しても良く、特に制限されない。
【0037】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(a)の炭素−炭素二重結合は、主鎖に含まれてもよく、側鎖に含まれてもよいが、側鎖に含まれる二重結合の量が多い方が(すなわち、炭素−炭素二重結合を有している基が側鎖に多い方が)、酸素吸収速度を早くすることから好ましい。例えば、熱可塑性樹脂(a)の合成原料として、イソプレンあるいはブタジエンを用いる場合、得られる熱可塑性樹脂(a)中のビニル結合含有量は10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましい。ビニル結合含有量とは、ポリマー中のすべてのジエン由来の単位のうちで、ビニル結合(CH2=CH-)を形成したもの(1,2付加重合したもの)の割合をいう。なお、重合後に存在する二重結合は、本発明の組成物における性能を妨げない範囲において、その一部が水素により還元されていても構わない。
【0038】
ビニル結合の含有量を10%以上にするためには、イソプレン等のジエン化合物を重合させる際に、共触媒としてルイス塩基が用いられる。ルイス塩基の例としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、トリエチレンジアミン等の第三級アミン類、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等のエーテル含有アミン類が挙げられる。ルイス塩基は後述の開始剤100重量部あたり0.1〜400重量部使用される。
【0039】
溶媒としては不活性な有機溶媒を用いる。特に炭素原子数が6〜12の炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン並びにそれらの環状類似物が適している。芳香族系の溶媒、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン等も適している。重合は通常−20〜80℃の温度範囲、1〜50時間の範囲で行われる。
【0040】
このようにして得られる熱可塑性樹脂(a)は、側鎖に二重結合を多く含むため酸化され易く、酸素吸収性能に優れる。
【0041】
熱可塑性樹脂(a)が有する上記構造式(I)が、R1として炭素数1〜3のアルキル基を有する場合(特に、イソプレン、2−エチルブタジエン、2−ブチルブタジエンを重合してなる構造単位を有する場合)、熱可塑性樹脂(a)が酸化され易く、酸素吸収性の樹脂として好ましい。なかでも、熱可塑性樹脂(a)が、構造式(I)で示される構造単位としてイソプレンを重合してなる構造単位(すなわち構造式(I)におけるR1がメチル基、R2およびR3が水素原子である場合)を含む場合は該構造単位の二重結合(ビニル結合)が酸素と効果的に反応するため、特に熱可塑性樹脂(a)が酸化され易く、酸素吸収性に優れる。さらにイソプレンは入手が容易であり、他のモノマーと容易に重合するので、熱可塑性樹脂(a)合成コストの点からも好適である。
【0042】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(a)は、芳香族ビニル化合物とジエン化合物の共重合体であることが好ましい。熱可塑性樹脂(a)が芳香族ビニル化合物とジエン化合物の共重合体である場合、ジエン化合物に由来する二重結合と酸素とが反応し易くなり、酸素バリア性および酸素掃去効果を向上させることができる。更に、芳香族ビニル化合物とジエン化合物の共重合比率を調整することで熱可塑性樹脂(a)の成形・加工性を向上することができ、また硬度を変化させることも可能となる。芳香族ビニル化合物とジエン化合物の共重合比率を調整することにより、得られる熱可塑性樹脂(a)の屈折率を調整することが可能である。従って、後述のように、本発明の組成物がガスバリア性樹脂(e)を含有する場合には、このガスバリア性樹脂(e)の屈折率と熱可塑性樹脂(a)の屈折率との差を小さく設定することができ、その結果、透明性に優れた製品が得られる。このように、本発明の組成物を、種々の包装材料に適した物性に調整することが可能となる。
【0043】
本発明において用いられる熱可塑性樹脂(a)の合成に用いられる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等が挙げられる。中でも、コストおよび重合の容易さの観点からスチレンが最も好ましい。
【0044】
熱可塑性樹脂(a)が、芳香族ビニル化合物とジエン化合物の共重合体である場合に、この共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、あるいはそれらの複合物であってもよく、特に制限されない。製造性、並びに熱可塑性樹脂(a)の機械的特性、取り扱いの容易さ、および酸素吸収速度の観点から、ブロック共重合体であることが好ましい。
【0045】
熱可塑性樹脂(a)がブロック共重合体である場合、その製造方法は特に限定されないが、アニオン重合法を用いることが好適である。このとき、芳香族ビニル化合物ブロックの数平均分子量は、好ましくは300〜100000の範囲であり、より好ましくは1000〜50000の範囲であり、更に好ましくは3000〜50000の範囲である。芳香族ビニル化合物ブロックの分子量が300未満の場合は、熱可塑性樹脂(a)の溶融粘度が低く、樹脂組成物の成形・加工性或いは取り扱い性の悪い場合がある。さらに、成形品とした場合の強度や伸度等機械的性質が低下する傾向にある。更に、後述のように、熱可塑性樹脂(a)をガスバリア性樹脂(e)のような他の樹脂に分散させる態様の場合には、この熱可塑性樹脂(a)の分散性が低下し、その結果、酸素掃去性能が低下するおそれがある。芳香族ビニル化合物ブロックの分子量が100000を越える場合には、溶融粘度が高く熱可塑性が損なわれるため、樹脂組成物の成形・加工性が低下する。また、上記に分散性も低下するため、その結果酸素掃去性能が低下する傾向にある。
【0046】
ブロック共重合体のブロック形態は、A(BA)n、(AB)nで示される。ここでAは芳香族ビニル化合物からなるブロック、Bはジエン化合物からなるブロックを示し、nは1以上の整数である。
【0047】
本発明において用いられる熱可塑性樹脂(a)は2元ブロック共重合体あるいは3元ブロック共重合体であるのが好ましく、3元ブロック共重合体であることが更に好ましい。中でも、芳香族ビニル化合物からなるブロックがポリスチレンブロックであり、ジエン化合物からなるブロックがポリイソプレンであることがコストおよび重合の容易さの観点から好適である。特に、熱可塑性樹脂(a)が構造式(I)を含むポリイソプレンブロック及びポリスチレンブロックからなる2元ブロック共重合体である場合、重合の容易さ、取り扱いの容易さ、酸素吸収速度およびコストの点で好ましい。熱可塑性樹脂(a)がポリスチレンブロック−構造式(I)を含むポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロックからなる3元ブロック共重合体である場合、重合の容易さ、取り扱いの容易さ、酸素吸収速度およびコストの点に加え、機械的性質が向上する点からより好ましい。
【0048】
更に、本発明における熱可塑性樹脂(a)は、ジエン化合物から誘導されるブロックにおけるtanδの主分散ピーク温度が−40℃〜60℃の範囲内であるのが好ましい。tanδの主分散ピーク温度が−40℃未満である場合、酸素吸収速度が遅くなり酸素掃去性能が低下する傾向にある。tanδの主分散ピーク温度が60℃を超える場合、低温での酸素吸収速度が遅くなり酸素掃去性能が低下する傾向にある。酸素掃去性能の点を考慮すると、ジエン化合物から誘導されるブロックにおけるtanδの主分散ピーク温度は−20℃〜40℃の範囲内がより好ましく、−10℃〜30℃の範囲内が更に好ましい。
【0049】
芳香族ビニル化合物とジエン化合物のブロック共重合体は次の種々の方法により得られる。アルキルリチウム化合物を開始剤として芳香族ビニル化合物とジエン化合物とを重合し、カップリング剤によってカップリングする方法、あるいはジリチウム系化合物を開始剤として、ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを逐次重合する方法などが代表的なものとして挙げられるが、これらに限定されない。アルキルリチウム化合物の例としては、アルキル残基の炭素原子数が1〜10のアルキル化合物が挙げられる。特にメチルリチウム、エチルリチウム、ベンジルリチウム、およびブチルリチウムが好ましい。
【0050】
カップリング剤としてはジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン等が用いられる。ジリチウム化合物の例としては、ナフタレンジリチウム、オリゴスチルジリチウム、ジリチオヘキシルベンゼン等が挙げられる。使用量は重合に用いられる全モノマー100重量部に対し、開始剤0.01〜0.2重量部、カップリング剤0.04〜0.8重量部が適当である。
【0051】
ブロック共重合体は、重合の反応液をメタノールなどの貧溶媒中に添加し、凝固させた後、加熱あるいは減圧乾燥させるか、重合反応液を沸騰水中に滴下し、溶媒を共沸・除去した後、加熱あるいは減圧乾燥させて得られる。
【0052】
上記熱可塑性樹脂(a)は、単一の樹脂であっても複数の樹脂からなる混合物であってもよい。混合物であるときに、透明性の良好な成形品を得たい場合には、厚み20μmのフィルムにおいて、その内部ヘイズ値が10%以下であるのが好ましい。
【0053】
上記熱可塑性樹脂(a)は、その構造上酸化を受けやすいため、例えば、保存時の酸化を防止するために、あらかじめ酸化防止剤を添加しておくことも推奨される。
【0054】
上記酸化防止剤の例としては、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2,6−ジ−(t−ブチル)−4−メチルフェノール(BHT)、2,2′−メチレンビス−(6−t−ブチル−p−クレゾール)、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス−(ノニルフェニル)、チオジプロピオン酸ジラウリル等を挙げることができる。
【0055】
酸化防止剤の添加量は、組成物中の成分の種類、含有割合、使用目的、保存条件などを考慮して最適量が決定される。一般に酸化防止剤を多く含む場合には、熱可塑性樹脂(a)を含む樹脂組成物中を透過しようとする酸素と、この熱可塑性樹脂(a)との反応が妨げられる。そのため、本発明の組成物の酸素バリア性および酸素掃去機能が十分に発揮されない場合がある。一方、酸化防止剤を含まない場合あるいはその含有量が少なすぎる場合には、熱可塑性樹脂(a)の保存時あるいは溶融加工時に酸素との反応が進行してしまい、実使用時には酸素吸収性能が低下してしまっている場合がある。
【0056】
熱可塑性樹脂(a)を不活性ガス雰囲気下で保存する場合や、比較的低温であるいは窒素シールした状態で溶融配合して樹脂組成物を製造する場合などは、酸化防止剤の量は少なくても良い。
【0057】
また、酸化を促進するために溶融配合時に酸化触媒である遷移金属塩(b)を添加するような場合には、熱可塑性樹脂(a)がある程度の量の酸化防止剤を含んでいても、良好な酸素吸収能力を有する樹脂組成物を得ることができる。このような場合の酸化防止剤の含有量は、0.01〜1重量%が好ましく、0.02〜0.5重量%がより好ましい。この酸化防止剤は、上記のように、熱可塑性樹脂(a)にあらかじめ添加されていてもよく、あるいは後述の他の一般の添加剤と同様に酸素吸収性樹脂組成物の各成分を混合するときに加えられてもよい。
【0058】
本発明の多層構造体を構成する酸素吸収性樹脂組成物層は、好ましくは遷移金属塩(b)を含有する。この遷移金属塩(b)は、金属元素換算で1〜10000ppm、好ましくは5〜5000ppm、より好ましくは10〜2000ppmの割合で含有される。これにより、熱可塑性樹脂(a)の酸素酸化反応を促進することができる。例えば、本発明の組成物から得られる包装材料内部に存在する酸素並びに包装材料中を透過しようとする酸素と熱可塑性樹脂(a)とが効率よく反応し得るようになる。その結果、本発明の樹脂組成物における酸素バリア性および酸素掃去作用が向上する。但し、遷移金属塩(b)の含有量が金属元素換算で10000ppmを超える範囲で使用すると本発明の樹脂組成物の熱安定性が低下し、分解ガスの発生やゲル物の発生が著しくなる虞がある。このような観点から、遷移金属塩(b)の含有量は上記の範囲が好ましい。本発明の組成物が、ガスバリア性樹脂など、熱可塑性樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂を含有する場合には、上記遷移金属塩(b)は1〜5000ppm、好ましくは5〜1000ppm、さらに好ましくは10〜500ppmの範囲で含有される。
【0059】
このような遷移金属塩(b)に用いられる金属は、周期表の第1、第2または第3遷移系列から選択されるのが好ましい。適当な金属にはマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ロジウム、チタン、クロム、バナジウムおよびルテニウムが含まれるが、これに限定されない。これらの金属の中で好ましいのは、鉄、ニッケル、銅、マンガンおよびコバルトであり、より好ましくは、マンガンおよびコバルトであり、更に好ましくはコバルトである。
【0060】
遷移金属塩(b)に用いられる金属の対イオンとしては、有機酸または塩化物由来のアニオンが挙げられる。有機酸としては、酢酸、ステアリン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルへキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、樹脂酸、カプリン酸、およびナフテン酸が含まれるが、これに限定されるものではない。特に好ましい塩には、2−エチルへキサン酸コバルト、ネオデカン酸コバルトおよびステアリン酸コバルトが挙げられる。金属塩は重合体性対イオンを有する、いわゆるアイオノマーであっても良い。
【0061】
本発明の組成物は、必要に応じて、熱可塑性樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂を含有する。この熱可塑性樹脂は、例えば、ガスバリア性樹脂(e)であってもよく、あるいは他の機能を有する熱可塑性樹脂であってもよい。
【0062】
上記ガスバリア性樹脂(e)としては、20℃、相対湿度65%の条件下で測定したときの酸素透過速度が、500ml・20μm/m2・day・atm以下であるような樹脂が好ましい。これは、1気圧の酸素の差圧がある状態で、面積1m2、20μm厚のフィルムを1日に透過する酸素の体積が、500ml以下であることを意味する。酸素透過速度が500ml・20μm/m2・day・atmを超えると、ガスバリア性能が十分に発揮されない。良好なガスバリア性を得る必要のある場合には、ガスバリア性樹脂(e)の酸素透過速度が小さい方が好ましい。好ましくは、100ml・20μm/m2・day・atm以下であり、より好ましくは20ml・20μm/m2・day・atm以下であり、さらに好ましくは、5ml・20μm/m2・day・atm以下である。
【0063】
かかるガスバリア性樹脂(e)と炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(a)を配合することで、樹脂(e)によるガスバリア効果に加えて樹脂(a)による酸素捕捉効果が発揮され、結果として極めて高度なガスバリア性を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0064】
透明度の高い樹脂組成物を得たい場合には、熱可塑性樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂の屈折率は、1.50〜1.56であることが好ましい。この範囲を逸脱すると、後述のように、該樹脂の屈折率と熱可塑性樹脂(a)の屈折率との差が大きくなり、得られる樹脂または樹脂組成物の透明性が低下する。一般に、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(a)の屈折率が上記範囲にあることが多いことから、熱可塑性樹脂(a)と、ガスバリア性樹脂(e)のようなその他の樹脂との屈折率の差を小さくすることが容易となり、結果として透明性の良好な樹脂組成物を得ることが可能となる。ガスバリア性樹脂(e)の屈折率は、上記範囲において、より好ましくは1.51以上であり、さらに好ましくは1.52以上である。また好ましくは上記範囲において1.55以下であり、さらに好ましくは1.54以下である。
【0065】
本発明の樹脂組成物において、熱可塑性樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂としてガスバリア性樹脂(e)が含有されるときに、該ガスバリア性樹脂(e)の種類は特に限定されない。上記のような、酸素透過速度が500ml・20μm/m2・day・atm以下であり、かつ、屈折率が1.50〜1.56であるという条件を満たすガスバリア性樹脂(e)の例としては、ポリビニルアルコール系樹脂(例えばEVOH)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが代表的な樹脂として例示されるが、これらの樹脂に限定されない。
【0066】
上記ガスバリア性樹脂(e)のうちポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステルの単独重合体、またはビニルエステルと他の単量体との共重合体(特にビニルエステルとエチレンとの共重合体)を、アルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。
【0067】
上記ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的な化合物としてあげられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。
【0068】
上記ポリビニルアルコール系樹脂のビニルエステル成分のケン化度は、好適には90%以上であり、より好適には95%以上であり、更に好適には97%以上である。ケン化度が90モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下する虞がある。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)の場合には熱安定性が悪化し、得られる成形品にゲル・ブツが発生しやすくなる。
【0069】
ポリビニルアルコール系樹脂がケン化度の異なる2種類以上のポリビニルアルコール系樹脂の配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。かかるポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0070】
本発明に用いられるポリビニルアルコール系樹脂としては、溶融成形が可能で、高湿度下でのガスバリア性が良好な点から、上記ガスバリア性樹脂の中でも、EVOHが好適である。
【0071】
EVOHのエチレン含有量は5〜60モル%であるのが好ましい。エチレン含有量が5モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下し溶融成形性も悪化することがある。EVOHのエチレン含有量は、好適には10モル%以上であり、より好適には15モル%以上、最適には20モル%以上である。エチレン含有量が60モル%を超えると十分なガスバリア性が得られにくい。エチレン含有量は、好適には55モル%以下であり、より好適には50モル%以下である。EVOHのエチレン含有量は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0072】
好適に利用されるEVOHは、エチレン含有量が5〜60モル%、ケン化度が90%以上である。
【0073】
EVOHがエチレン含有量あるいはケン化度の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をエチレン含有量あるいはケン化度とする。
【0074】
ただし、2種類のEVOHを配合する際には、両者のエチレン含有量の差が15モル%以下であり、かつケン化度の差が10%以下であることが好ましい。これらの条件から外れる場合には、樹脂組成物層の透明性が損なわれる。良好な透明性を得る観点からはエチレン含有量の差はより好適には10モル%以下であり、さらに好適には5モル%以下である。また、同様に良好な透明性を得る観点からケン化度の差はより好適には7%以下であり、さらに好適には5%以下である。
【0075】
また、ポリビニルアルコール系樹脂、特にEVOHには、本発明の目的が阻害されない範囲で、他の単量体を共重合成分として少量含有することもできる。共重合成分となり得る単量体の例としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類などが挙げられる。
【0076】
なかでも、EVOHに共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有する場合は、共押出成形あるいは共射出成形する際の基材樹脂との溶融粘性の整合性が改善され、均質な成形品の製造が可能である。ここで、ビニルシラン系化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
【0077】
さらに、EVOHにホウ素化合物が添加されている場合にも、EVOHの溶融粘性が改善され、均質な共押出あるいは共射出成形品が得られる点で有効である。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物うちでもオルトホウ酸が好ましい。
【0078】
ホウ素化合物が添加される場合に、その含有量はホウ素元素換算で20〜2000ppm、望ましくは50〜1000ppmである。この範囲にあることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOHを得ることができる。20ppm未満ではそのような効果が小さく、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
【0079】
EVOHに、アルカリ金属塩をアルカリ金属元素換算で5〜5000ppm添加しておくことも層間接着性や相容性の改善のために効果的である。
【0080】
アルカリ金属塩のより好適な添加量はアルカリ金属元素換算で20〜1000ppm、好ましくは、30〜500ppmである。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどがあげられ、アルカリ金属塩としては、一価金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、燐酸塩、金属錯体等が挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。中でも酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸ナトリウムが好適である。
【0081】
また、本発明に用いられるEVOHに対し、リン酸化合物をリン酸根換算で20〜500ppm、より好適には30〜300ppm、最適には50〜200ppm含有させることも好ましい。上記範囲でリン酸化合物を配合することにより、EVOHの熱安定性を改善することができる。特に、長時間にわたる溶融成形を行う際のゲル状ブツの発生や着色を抑制することができる。
【0082】
EVOH中に配合するリン酸化合物の種類は特に限定されるものではない。リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩としては第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていても良く、そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。中でもリン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウムの形でリン酸化合物を添加することが好ましい。
【0083】
この他、必要に応じて、EVOHにあらかじめ熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、他の樹脂(ポリアミド、ポリオレフィンなど)をブレンドしておくことも可能である。上記ホウ素化合物、アルカリ金属塩、リン化合物などが添加されたEVOHは、市販されている。
【0084】
本発明に用いられ得るEVOHの好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下、JIS K7210に基づく)は0.1〜100g/10分、より好適には0.5〜50g/10分、さらに好適には1〜30g/10分である。
【0085】
本発明の多層構造体を構成する酸素吸収性樹脂組成物層中に含有され得る熱可塑性樹脂(a)以外の樹脂であって、かつ上記ポリビニルアルコール系樹脂以外の樹脂としては、例えば、次の熱可塑性樹脂が挙げられる:エチレンホモポリマーおよびエチレンコポリマー(エチレンと以下の単量体とのコポリマー:プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネートなどのカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類など)、プロピレンホモポリマーおよびプロピレンコポリマー(プロピレンと以下の単量体とのコポリマー:エチレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネートなどのカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類など)、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1などのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ポリε−カプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジポアミド、ポリメタキシリレンアジポアミドなどのポリアミド;ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアクリレートなど。上記熱可塑性樹脂の選択は、製造する成形品の構造及び用途に依存する。このような選択因子は構造及び用途において周知である。
【0086】
本発明の組成物が熱可塑性樹脂(a)および該樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有する場合には、これらの樹脂の混和性を考慮することが好ましい。これらの樹脂の混和性により、透明性、清浄性、酸素掃去剤としての有効性、バリアー性、機械的性質、製品のテキスチャーなどが影響を受けることがある。
【0087】
本発明の樹脂組成物が、熱可塑性樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂を含有する場合に各成分の含有量は、特に限定されない。通常、熱可塑性樹脂(a)および遷移金属塩(b)の合計量が99〜1重量%であり、熱可塑性樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂が1〜99重量%である。好ましくは樹脂(a)および遷移金属塩(b)の合計量が90〜10重量%であり、熱可塑性樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂が10〜90重量%である。
【0088】
本発明の種々の態様のうちで、ガスバリア性に優れた組成物を得たい場合には、本発明の多層構造体を構成する酸素吸収性樹脂組成物層中には、ガスバリア性樹脂がやや多い量で含有される。通常、熱可塑性樹脂(a)を0.1〜30重量%の割合で、そしてガスバリア性樹脂(e)を、99.9〜70重量%の割合で含有することが好ましい。
【0089】
ガスバリア性樹脂(e)の含有割合が70重量%未満である場合、樹脂組成物を用いた多層容器等の成形品における透明性や酸素ガスあるいは炭酸ガス等のガスバリア性が低下する場合がある。含有割合が99.9重量%を超える場合には、熱可塑性樹脂(a)の含有割合が少なくなるため、酸素吸収速度が低下し、酸素ガスバリア性および酸素掃去性が低下する傾向にある。樹脂組成物における熱可塑性樹脂(a)の含有割合の好適な範囲は1〜20重量%であり、より好適な範囲は2〜15重量%である。ガスバリア性樹脂(e)の含有割合のさらに好適な範囲は80〜99重量%であり、より好適な範囲は85〜98重量%である。
【0090】
他方、ガスバリア性よりも、酸素吸収速度を重視する場合、ガスバリア性樹脂(e)は含まない態様も好ましい態様である。
【0091】
本発明に用いられる酸素吸収性樹脂組成物層が、ガスバリア性樹脂(e)など、熱可塑性樹脂(a)以外の樹脂を含む場合は、熱可塑性樹脂(a)からなる粒子が、この(a)以外の樹脂および必要に応じて後述の各種添加剤などを含むマトリックス中に分散している態様が推奨される。例えば、本発明に用いられる酸素吸収性樹脂組成物層が、が熱可塑性樹脂(a)およびガスバリア性樹脂(e)でなる場合には、熱可塑性樹脂(a)でなる粒子がガスバリア性樹脂(e)のマトリックスに分散している態様が推奨される。このような状態の組成物でなる各種成形品においては酸素掃去性及びガスバリア性が持続し易く、ガスバリア性樹脂(e)など熱可塑性樹脂(a)以外の樹脂の有する機能が付与できる点で好ましい。透明性も良好である。このとき、熱可塑性樹脂(a)からなる粒子の分散粒径は10μm以下であることが好適である。分散粒径が10μmを超える場合には、熱可塑性樹脂(a)と熱可塑性樹脂(a)以外の樹脂との界面の面積が小さくなり、酸素ガスバリア性が低下するとともに、酸素掃去性能が低下する場合がある。酸素吸収性樹脂組成物層を使用した多層容器等の成形品の酸素掃去性、ガスバリア性および透明性の観点から、分散している熱可塑性樹脂(a)粒子の平均粒径は5μm以下がより好ましく、2μm以下が更に好ましい。
【0092】
本発明に用いられる酸素吸収性樹脂組成物層のうち、ガスバリア性樹脂(e)など、熱可塑性樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂を含む組成物においては、熱可塑性樹脂(a)の屈折率と熱可塑性樹脂(a)以外の樹脂の屈折率との差が0.01以下である場合に、この組成物から得られる成形品の透明性が良好である。屈折率の差が0.01を超える場合、樹脂組成物から得られる成形品はやや不透明となる傾向がある。良好な透明性を得るためには、上記屈折率の差が0.007以下であることが好ましく、0.005以下であることがより好ましい。熱可塑性樹脂(a)との屈折率の差が0.01以下である樹脂としてはポリビニルアルコール、ポリ(エチレンビニルアルコール)などのビニルアルコール系樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが好適であるが、これらに限定されない。
【0093】
本発明に用いられる酸素吸収性樹脂組成物層は、上記のように、その酸素吸収速度が0.01ml/m2・day以上であることが好ましい。酸素吸収速度は0.05ml/m2・day以上であることがより好ましく、0.1ml/m2・day以上であることが更に好ましい。酸素吸収速度が0.01ml/m2・day未満である場合、本発明の多層構造体を用いて成形される多層容器等の成形品の酸素バリア性が必ずしも十分でない場合があり、また、酸素掃去効果も十分でない場合が多い。
【0094】
上記酸素吸収速度は、樹脂組成物のフィルムを一定容量の空気中に放置した場合に、単位表面積当たりで、単位時間内にそのフィルムが吸収した酸素の体積である。具体的な測定方法については、後述の実施例に示す。
【0095】
本発明に用いられる酸素吸収性樹脂組成物層を構成する樹脂組成物の好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下、JIS K7210に基づく)は0.1〜100g/10分、より好適には0.5〜50g/10分、さらに好適には1〜30g/10分である。本発明の樹脂組成物のメルトフローレートが0.1〜100g/10分の範囲から外れる場合、溶融成形を行うときの加工性が悪くなる場合が多い。
【0096】
本発明に用いられる脱臭剤(c)とは、臭気成分を物理吸着もしくは物理吸着および化学吸着により脱臭する多孔性活性物質や、臭気成分を酸化還元反応作用によって分解する触媒物質を指す。
【0097】
脱臭剤(c)は、本発明の樹脂組成物の酸素掃去に伴い発生する低分子の反応生成物による臭気を低減させるために、利用される。
【0098】
適当な脱臭剤の例としては、その種類に特に制限はないが、亜鉛化合物、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、鉄(II)化合物、有機酸類、鉄(II)化合物−有機酸組成物等があげられる。これらは単独で用いることもできるし、複数種の混合物あるいは複塩であってもよい。
【0099】
上記亜鉛化合物としては、ケイ酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、リン酸亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、シユウ酸亜鉛、クエン酸亜鉛、フマル酸亜鉛、ギ酸亜鉛等があげられる。
【0100】
アルミニウム化合物としては、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウムなどがあげられる。
【0101】
ケイ素化合物としては、二酸化ケイ素、オルソリン酸ケイ素、ピロリン酸ケイ素−I型、ピロリン酸ケイ素−II型などのリン酸ケイ素化合物、活性シリカゲルなどが挙げられる。
【0102】
鉄(II)化合物としては、2価の鉄イオンを形成するものであれば任意の鉄化合物が使用できる。例としては硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硝酸第一鉄、臭化第一鉄、ヨウ化第一鉄などの鉄(II)無機塩、没食子酸第一鉄、リンゴ酸第一鉄、フマル酸第一鉄などの鉄(II)有機塩が挙げられ、このうち硫酸第一鉄、塩化第一鉄が好ましい。
【0103】
亜鉛化合物とケイ素化合物とを含む組成物(混合物あるいは複塩)も好適に用いられる。この組成物の具体的な例としては、酸化亜鉛と二酸化ケイ素の比率が重量比で1:5〜5:1の範囲からなり、大部分がアモルファスな構造を有している、ケイ酸亜鉛の、実質的に不定形微粒子が好ましい。酸化亜鉛と二酸化ケイ素の比率は、好ましくは1:4〜4:1の範囲、更に好ましくは1:3〜3:1の範囲である。
【0104】
亜鉛化合物とアルミニウム化合物との組成物も好適に用いられる。このような具体的な例としては、酸化亜鉛および/または炭酸亜鉛と、硫酸アルミニウムおよび/または硫酸アルミニウムカリウムと、の混合物が好ましく、亜鉛化合物100重量部に対してアルミニウム化合物1〜1000重量部、好ましくは30〜300重量部の割合で混合される。
【0105】
有機酸類としては、炭素数8以上の有機酸、例えば脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ポリカルボン酸、芳香族モノカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸が好ましく、特に芳香族カルボン酸が好ましい。芳香族ポリカルボン酸の例としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリツト酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリツト酸、ベンゼンへキサカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ジフエニルテトラカルボン酸、ジフエニルエーテルテトラカルボン酸、アゾベンゼンテトラカルボン酸あるいはこれらの無水物が挙げられ、これらの中でベンゼントリカルボン酸、とりわけトリメリット酸が好ましい。
【0106】
鉄(II)化合物−有機酸組成物に用いられる鉄(II)化合物としては、前記したとおりの、水中に溶解して2価の鉄イオンを形成する化合物であれば任意のものが使用できる。例として硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硝酸第一鉄、臭化第一鉄、ヨウ化第一鉄などの鉄(II)無機塩、没食子酸第一鉄、リンゴ酸第一鉄、フマル酸第一鉄などの鉄(II)有機塩が挙げられ、このうち硫酸第一鉄、塩化第一鉄が好ましい。
【0107】
鉄(II)化合物−有機酸組成物に用いられる有機酸としては水に可溶なものであればよく、例としてはアスコルビン酸、イソアスコルビン酸及びその金属塩などのアスコルビン酸類、クエン酸、イソクエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸などのカルボン酸類が挙げられ、このうちL−アスコルビン酸が好ましい。
【0108】
用いられる鉄(II)化合物−有機酸組成物は、両者が結合していることが好適であり、これは、例えば、両成分を一旦混合、溶解した水溶液を噴霧乾燥、凍結乾燥等により乾燥、粉末化して調製できる。鉄(II)化合物と有機酸の成分比率は重量比で1:0.01〜1:1.0の範囲が好ましく、より好ましくは1:0.02〜1:0.80の範囲である。有機酸成分がアスコルビン酸類の場合は鉄(II)化合物と有機酸の成分比率は重量比で1:0.02〜1:0.30の範囲が好ましく、より好ましくは1:0.02〜1:0.13、特に好ましくは1:0.05〜1:0.13の範囲である。本発明において2種以上の鉄(II)化合物あるいは2種以上の有機酸を併用して用いても差し支えない。また鉄(II)化合物−有機酸組成物には脱臭機能の安定化剤としてミヨウバンを鉄(II)化合物と有機酸の合計量に2〜20重量%添加することが好ましい。ミヨウバンとしては特に制限はないが、カリミヨウバン、アンモニアミヨウバン、ナトリウムミヨウバンが好適である。
【0109】
さらにまた、他の脱臭剤として、亜鉛化合物とポリカルボン酸からなる組成物などの金属化合物を安定化させた組成物、鉄(II)−フタロシアニン誘導体などの生体酵素モデル化合物、キリ、ヒイラギ、モクセイ、ツワブキ、フキ、ライラック、シナレンギヨウ、クリ、ハンノキなどの植物の樹木液または抽出成分、ゼオライトなどのアルミノ珪酸塩、セピオライト、シロタイル、バリゴルスカイト、ラフリナイトなどの含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物、活性フミン酸、活性アルミナ、活性炭なども使用できる。また、多孔性マイクロカプセルパウダーなどの多孔質吸着剤も使用可能である。
【0110】
前記した脱臭剤の中で酸化亜鉛、硫酸亜鉛などの亜鉛化合物、二酸化ケイ素、オルソリン酸ケイ素などのケイ素化合物、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウムなどのアルミニウム化合物、亜鉛化合物およびケイ素化合物を含む組成物、亜鉛化合物およびアルミニウム化合物を含む組成物、有機酸、鉄(II)化合物−有機酸組成物、多孔性マイクロカプセルパウダーなどの多孔質吸着剤が好ましく、特に好ましくは、二酸化ケイ素、オルソリン酸ケイ素などのケイ素化合物、亜鉛化合物およびケイ素化合物を含む組成物、多孔性マイクロカプセルパウダーなどの多孔質吸着剤が挙げられる。さらに、樹脂組成物の透明性の観点からは、多孔性マイクロカプセルパウダーなどの多孔質吸着剤が特に好ましい。
【0111】
本発明に用いられる脱臭剤(c)の粒子径は0.5〜10μmであり、より好適には1〜8μmであり、さらに好適には1〜5μmであり、特に好適には1〜4μmである。脱臭剤(c)の粒子径が10μmを超える場合は、臭気バリア性および透明性が不充分なものとなる。かかる粒子径の小さい脱臭剤を製造する方法は特に限定されないが、一般に市販されている脱臭剤に対して粉砕処理を行う方法などが好適なものとして例示される。また、脱臭剤(c)が多孔性マイクロカプセルパウダーなどの多孔質吸着剤の場合は、ゾル−ゲル法により前記吸着剤を作製することにより、上記に示す粒径を有する吸着剤を得ることができる。
【0112】
なお、本発明における脱臭剤(c)の粒子径は、以下のようにして測定した。脱臭剤(c)を電子顕微鏡により1000倍に拡大した写真を撮影し、その中から、無作為に20個の吸着剤選び出し、定規により粒径を測定した。この操作を3回繰り返し、計60個の測定結果から脱臭剤(c)の平均粒子径を求めた。
【0113】
本発明の多層構造体は、前記酸素吸収性樹脂組成物層と、前記脱臭剤(c)および熱可塑性樹脂(d)からなる脱臭層を有することを特徴とする。前記脱臭層は、好適な実施態様では脱臭剤(c)0.1〜50重量%および熱可塑性樹脂(d)50〜99.9重量%からなり、より好適な実施態様では、(c)0.2〜50重量%および(d)50〜99.8重量%からなり、さらに好適な実施態様では、(c)0.5〜10重量%および(d)90〜99.5重量%からなる。
【0114】
熱可塑性樹脂(d)としては、特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが好適なものとしてが挙げられ、中でも、ポリオレフィン系樹脂およびポリエステル系樹脂が好適である。
【0115】
ポリオレフィン系樹脂としては、高密度、低密度もしくは超低密度ポリエチレン、カルボン酸変性ポリオレフィン、ボロン酸変性ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリブテン−1などのα−オレフィンの単独重合体、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1などから選ばれたα−オレフィン同士の共重合体などが例示される。また、α−オレフィンに以下の成分:ジオレフィン、塩化ビニル、酢酸ビニルなどのビニル化合物、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの不飽和カルボン酸エステルなど;を共重合したものも含まれる。
【0116】
また、スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS)、スチレン−イソブチレンとのブロック共重合体、スチレン−ブタジエンとの共重合体あるいはスチレン−イソプレンとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0117】
ポリエステル系樹脂としては特に限定されないが、熱可塑性ポリエステル樹脂が好ましい。前記熱可塑性ポリエステル樹脂としては、芳香族ジカルボン酸またはそれらのアルキルエステルとジオールを主成分とする縮合重合体が用いられるが、特に本発明の目的を達成するには、エチレンテレフタレート成分を主成分とするポリエステル樹脂が好ましい。本発明に用いられるポリエステル樹脂では、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位との合計割合(モル%)が、ポリエステルを構成する全構造単位の合計モル数に対して、70モル%以上であるのが好ましく、90モル%以上であるのがより好ましい。
【0118】
ポリアミド系樹脂およびポリ塩化ビニル系樹脂としては、上述のガスバリア性樹脂(e)として用いられるものと、同様なものが利用可能である。
【0119】
また、上述のように、本発明に用いられる熱可塑性樹脂(d)は接着性樹脂を包含する。接着性樹脂としては特に限定されないが、カルボン酸変性ポリオレフィンを用いることが好ましい。カルボン酸変性ポリオレフィンとは、オレフィン、特にα−オレフィンと不飽和カルボン酸またはその無水物とからなる共重合体のことをいい、分子中にカルボキシル基を有するポリオレフィンおよびポリオレフィン中に含有されるカルボキシル基の全部あるいは一部が金属塩の形で存在しているものも含まれる。カルボン酸変性ポリオレフィンのベースとなるポリオレフィンとしては、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)など)、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の各種ポリオレフィンが挙げられる。
【0120】
不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタアクリル酸、エタアクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸などが例示され、特にアクリル酸あるいはメタアクリル酸が好ましい。不飽和カルボン酸の含有量は、好ましくは0.5〜20モル%、より好ましくは2〜15モル%、さらに好ましくは3〜12モル%である。不飽和カルボン酸無水物としては無水イタコン酸、無水マレイン酸等が例示され、特に無水マレイン酸が好適である。不飽和カルボン酸無水物の含有量としては、好ましくは0.0001〜5モル%、より好ましくは0.0005〜3モル%、更に好ましくは0.001〜1モル%である。これらの不飽和カルボン酸またはその無水物の中でも、ガスバリア性樹脂(e)との層間接着性の観点から、無水マレイン酸を用いることが好ましい。すなわち、カルボン酸変性ポリオレフィンとして、α−オレフィンおよび無水マレイン酸の共重合体を用いることが特に好ましい。
【0121】
また、共重合体に含有されても良い他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸イソブチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などが例示される。
【0122】
カルボン酸変性ポリオレフィンの金属塩における金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの遷移金属が例示される。カルボン酸変性ポリオレフィンの金属塩における中和度は、100%未満、特に90%以下、さらに70%以下の範囲が望ましい。中和度の下限値については、通常5%以上、特に10%以上、さらには30%以上が望ましい。
【0123】
本発明に用いられるカルボン酸変性ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)の下限は0.01g/10分であり、好適には0.05g/分以上であり、より好適には0.1g/10分以上である。また、MFRの上限は50g/10分以下、より好適には30g/10分以下、最適には10g/10分以下であることが望ましい。これらのカルボン酸変性ポリオレフィンは、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0124】
これらの熱可塑性樹脂(d)は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。熱可塑性樹脂(d)の選択は、製造する成形品の構造及び用途に依存する。このような選択因子は構造及び用途において周知であり、それによって熱可塑性樹脂(d)が選択される。
【0125】
本発明の多層構造体の任意の層には、必要に応じて各種の添加剤が含有される。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、乾燥剤、充填剤、顔料、染料、加工助剤、難燃剤、防曇剤あるいは他の高分子化合物を挙げることができ、これらを本発明の作用効果が阻害されない範囲内で含有させることが可能である。
【0126】
上記添加剤のうち熱安定剤(溶融安定剤)としては、ハイドロタルサイト化合物、高級脂肪族カルボン酸の金属塩(たとえば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)の1種または2種以上が用いられる。これらの化合物は、特に酸素吸収性樹脂組成物層がガスバリア性樹脂(e)を含有してなる場合に特に有用であり、さらに、ガスバリア性樹脂(e)がEVOHである場合に、その改善効果が大きい。上記ハイドロタルサイト化合物、高級脂肪族カルボン酸の金属塩は、樹脂組成物全体の0.01〜1重量%の割合で含有されるのが好適である。
【0127】
高級脂肪族カルボン酸の金属塩とは、炭素数8〜22の高級脂肪酸の金属塩である。炭素数8〜22の高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸などがあげられる。塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウムなどがあげられる。このうちマグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属が好適である。
【0128】
上記添加剤のうち光開始剤は、酸素吸収性樹脂組成物層の酸素掃去を開始または促進させるために好適に使用される。
【0129】
本発明に用いられる酸素吸収性組成物層に酸化防止剤が含有されている場合、この組成物にさらに1種以上の光開始剤を含有させることもまた、推奨される。このような組成物に所望の時期に光を照射することにより、熱可塑性樹脂(a)と酸素との反応の開始が促進され、その結果、組成物の酸素掃去機能を発現することが可能となる。
【0130】
適当な光開始剤の例としては、次の化合物が挙げられるがこれに限定されない:ベンゾフェノン、o−メトキシベンゾフェノン、アセトフェノン、o−メトキシアセトフェノン、アセナフテンキノン、メチルエチルケトン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α−フェニルブチロフェノン、p−モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4−モルホリノベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、4−o−モルホリノデオキシベンゾイン、p−ジアセチルベンゼン、4−アミノベンゾフェノン、4′−メトキシアセトフェノン、α−テトラロン、9−アセチルフェナントレン、2−アセチルフェナントレン、10−チオキサントン、3−アセチルフェナントレン、3−アセチルインドール、9−フルオレノン、1−インダノン、1,3,5−トリアセチルベンゼン、チオキサンテン−9−オン、キサンテン−9−オン、7−H−ベンズ[de]アントラセン−7−オン、ベンゾインテトラヒドロピラニルエーテル、4,4′−ビス−(ジメチルアミノ)−ベンゾフェノン、1′−アセトナフトン、2′−アセトナフトン、アセトナフトンおよび2,3−ブタンジオン、ベンズ[a]アントラセン−7,12−ジオン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α,α−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジブトキシアセトフェノンなど。一重項酸素発生光増感剤、たとえばローズベンガル、メチレン青およびテトラフェニルポルフィリンも、光開始剤として使用することができる。上記のような単量体タイプの光開始剤の他、重合体開始剤も使用することが可能であり、それにはポリ−(エチレン一酸化炭素)およびオリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)−フェニル]−プロパノン]が含まれる。一般にはより迅速かつ効率的な開始効果が得られるので、光開始剤の使用が好ましい。
【0131】
光開始剤が含有される場合、放射線へ暴露されると、熱可塑性樹脂(a)と酸素との反応の開始が促進される。使用される光開始剤の量は、種々の要因によって変化する。光開始剤の量は、一般に使用する熱可塑性樹脂(a)の種類、使用する放射線の波長および強度、使用する酸化防止剤の性質および量、ならびに使用する光開始剤の型に応じて適切に決定される。光開始剤の量はまた、酸素吸収性樹脂組成物の使用時の形態によっても異なる。例えば、光開始剤を含む組成物でなる成形品が若干不透明な層状体であり、これに対して放射線を照射する場合には、比較的多量の開始剤が必要となる。
【0132】
一般に光開始剤を使用する場合は、その量は組成物全体の0.01〜10重量%の範囲であることが好適である。
【0133】
上記光開始剤を含有する本発明の酸素吸収性組成物は、所望の時期に放射線に暴露され、そのことによりこの組成物の酸素掃去が開始される。放射線を暴露することにより、酸素吸収性組成物の酸素捕捉の誘導期を有意に減少または消失させ、酸素捕捉を開始させ、あるいは、酸素捕捉を促進することができる。上記誘導期とは、酸素吸収性組成物が充分に酸素の捕捉を開始するまでの時間である。
【0134】
上記使用される放射線としては、化学作用放射線、たとえば約200〜750ナノメートル(nm)の、好ましくは約200〜400nmの波長を有する紫外または可視光が有用である。化学作用放射線は比較的長い波長を有するため、コスト面および人体等への影響などの観点から好ましい。放射線による暴露を行なう場合には酸素吸収性組成物を、この組成物に含有される熱可塑性樹脂(a)1グラムあたり少なくとも0.1ジュール暴露するのが好ましい。暴露の典型的な量は熱可塑性樹脂(a)1グラムあたり10から100ジュールの範囲である。放射線はまた、約0.2から20メガラッドの、好ましくは約1から10メガラッドの線量の電子線であってもよい。他の放射線源には、イオン化放射線、たとえばガンマ線、X線およびコロナ放電が含まれる。放射線暴露は、好ましくは酸素の存在下に行う。暴露の継続時間は種々の要因に応じて変化する。その要因には、存在する光開始剤の量および型、暴露すべき成形品の形状(例えば、層状体の厚さ)、存在する全ての酸化防止剤の量、ならびに放射線源の波長および強度を含むが、これらに限定されない。
【0135】
上記光開始剤を含有する本発明の酸素吸収性樹脂組成物の放射線への暴露は、この組成物を所望の成形品または物品に調製した後であっても、調製の途中であってもよい。例えば、本発明の組成物を酸素感受性製品の包装に使用するならば、放射線への暴露は包装の直前であっても包装中であっても、包装後であってもよい。但し、放射線暴露は、成形品または物品の酸素捕捉剤としての使用の前であることが必要である。放射線を最大限に均一に照射するためには、暴露は成形品または物品が、例えば、平坦なシートの形状である加工段階で行うべきである。
【0136】
上述した、熱可塑性樹脂(a)(および必要に応じて遷移金属塩(b)、ガスバリア性樹脂(e))からなる酸素吸収性樹脂組成物の各成分を混合・成形する方法は特に限定されない。各成分を混合する際の順序も特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂(a)、遷移金属塩(b)、およびガスバリア性樹脂(e)を配合して成形品を調製する場合に、これらの成分は同時に混合しても良いし、熱可塑性樹脂(a)および遷移金属塩(b)の配合物を製造した後、ガスバリア性樹脂(e)と混合しても良い。あるいは、ガスバリア性樹脂(e)および遷移金属塩(b)の配合物を製造した後、熱可塑性樹脂(a)と混合しても良い。ガスバリア性樹脂(e)および熱可塑性樹脂(a)の配合物を製造した後、遷移金属塩(b)を混合しても良い。更に、ガスバリア性樹脂(e)および熱可塑性樹脂(a)の配合物、並びにガスバリア性樹脂(e)および遷移金属塩(b)の配合物を別々に製造した後、それらを混合しても良い。
【0137】
また、脱臭剤(c)および熱可塑性樹脂(d)からなる脱臭層の製造方法も特に限定されない。これら組成物の各成分は溶融配合してペレット状にしてから成形に供しても良いし、ドライブレンドして直接成形に供しても良い。
【0138】
上記各成分を配合・混錬する手段としては、溶剤を用いて各樹脂成分を溶解し、混合した後に溶媒を蒸発させる方法;および50℃から300℃の範囲の温度において溶融・混錬する方法(溶融配合法)が挙げられる。工程の簡便さ及びコストの観点から溶融配合法が好ましいが、特に制限されるものではない。溶融配合に利用される手段としては、リボンブレンダー、高速ミキサー、コニーダー、ミキシングロール、押出機、バンバリーミキサー、インテイシブミキサー等が例示される。
【0139】
例えば、本発明の組成物の各成分は、バンバリーミキサー、単軸又は二軸スクリュー押出し機などで混練し、ペレット化してから溶融成形に供される。特に、熱可塑性樹脂(a)(および必要に応じて遷移金属塩(b)、ガスバリア性樹脂(e))からなる酸素吸収性樹脂組成物を製造する場合には、ブレンド操作時に熱可塑性樹脂(a)の酸化が進行するのを防止するためには、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが望ましい。さらに、混練度の高い押出機を使用し、各成分を細かく均一に分散させることが、酸素吸収性能、透明性を良好にすると共に、ゲル、ブツの発生や混入を防止できる点で好ましい。
【0140】
樹脂組成物中の各成分が良好に分散されるために、混練操作は重要である。高度な分散を有する組成物を得るための混練機としては、連続式インテンシブミキサー、ニーディングタイプ二軸押出機(同方向、あるいは異方向)などの連続型混練機が最適であるが、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、加圧ニーダーなどのバッチ型混練機を用いることもできる。また別の連続混練装置としては石臼のような摩砕機構を有する回転円板を使用した装置、たとえば(株)KCK製のKCK混練押出機を用いることもできる。混練機として通常に使用されるもののなかには、一軸押出機に混練部(ダルメージ、CTM等)を設けたもの、あるいはブラベンダーミキサーなどの簡易型の混練機もあげることができる。
【0141】
この中で、本発明の目的に最も好ましいものとしては、連続式インテンシブミキサーを挙げることができる。市販されている機種としては、Farrel社製FCM、(株)日本製鋼所製CIMあるいは(株)神戸製鋼所製KCM、LCMあるいはACM等がある。実際にはこれらの混練機の下に一軸押出機を有する、混練と押出ペレット化を同時に実施する装置を採用するのが好ましい。また、ニーディングディスクあるいは混練用ロータを有する二軸混練押出機、例えば(株)日本製鋼所製のTEX、Werner&Pfleiderer社のZSK、東芝機械(株)製のTEM、池貝鉄工(株)製のPCM等も本発明の混練の目的に用いられる。
【0142】
これらの連続型混練機を用いるにあたっては、ローター、ディスクの形状が重要な役割を果たす。特にミキシングチャンバとローターチップあるいはディスクチップとの隙間(チップクリアランス)は重要で、狭すぎても広すぎても良好な分散性を有する組成物は得られない。チップクリアランスとしては1〜5mmが最適である。
【0143】
混練機のローターの回転数は100〜1200rpm、望ましくは150〜1000rpm、さらに望ましくは200〜800rpmの範囲が採用される。混練機チャンバー内径(D)は30mm以上、望ましくは50〜400mmの範囲のものが挙げられる。混練機のチャンバー長さ(L)との比L/Dは4〜30が好適である。また混練機はひとつでもよいし、また2以上を連結して用いることもできる。
【0144】
混練時間は長い方が良い結果を得られるが、熱可塑性樹脂(a)の酸化防止あるいは経済性の点から10〜600秒、好適には15〜200秒の範囲であり、最適には15〜150秒である。
【0145】
また、本発明においては、酸素吸収性樹脂組成物層と、脱臭剤(c)および熱可塑性樹脂(d)からなる脱臭層に加え、他のさまざまな樹脂から構成される層との積層体として用いることが、多機能を付与できる点からより好ましい。例えば機械的強度の高い層を積層することで、機械的強度を向上させることができる。
【0146】
例えば、酸素吸収性樹脂組成物層の外側を他の樹脂層で覆うことによって、外部からの酸素の浸入速度を抑制することができ、樹脂組成物の酸素吸収機能を長時間維持することができる点からも、多層構成とすることが好ましい。
【0147】
多層構造体の具体的な層構成は特に限定されない。好適な実施態様としては、酸素吸収性樹脂組成物層を酸素吸収層、脱臭剤(c)および熱可塑性樹脂(d)からなる層を脱臭層、前記酸素吸収層および前記脱臭層以外の層をF層とした場合、酸素吸収層/脱臭層、脱臭層/酸素吸収層/脱臭層、酸素吸収層/脱臭層/F層などの層構成が例示される。また、接着性樹脂をAdとした場合、酸素吸収層/Ad/脱臭層、脱臭層/Ad/酸素吸収層/Ad/脱臭層、酸素吸収層/Ad/脱臭層/F層なども、本発明の多層構造体の好適な層構成として例示される。なお、F層としては特に限定されないが、熱可塑性樹脂、金属、紙、織布あるいは不織布等が好適なものとして例示される。また、Ad層としては、上述の接着性樹脂(e1)と同様なものを用いることが出来る。
【0148】
これらに他の層を適宜付加することは何ら差しつえなく、上記の例に限定するものではない。複数の他の樹脂からなる層を設ける場合は、異なった種類のものでもよいし、同じものでもよい。さらに、成形時に発生するトリムなどのスクラップからなる回収樹脂を用いた層を別途設けてもよいし、回収樹脂を他の樹脂からなる層にブレンドしてもよい。多層構造体の厚み構成に関しても、特に限定されるものではないが、成形性およびコスト等を考慮した場合、全層厚みに対する酸素吸収性樹脂組成物層の厚み比は2〜20%が好適である。
【0149】
上記のF層が樹脂からなる場合は、加工性等の点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。かかる熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、次のような樹脂が挙げられる:エチレンホモポリマーおよびエチレンコポリマー(エチレンと以下の単量体とのコポリマー:プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネートなどのカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類など)、プロピレンホモポリマーおよびプロピレンコポリマー(プロピレンと以下の単量体とのコポリマー:エチレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネートなどのカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類など)、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1などのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ポリε−カプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジポアミド、ポリメタキシリレンアジポアミドなどのポリアミド;ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ(エチレンビニルアルコール)など。かかる熱可塑性樹脂により積層される層は無延伸のものであっても良いし、一軸あるいは二軸に延伸あるいは圧延されているものであっても構わない。
【0150】
これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリオレフィンは耐湿性、力学特性、経済性、ヒートシール性等にも優れる点から好適である。また、ポリエステルは透明性が良好で、力学特性にも優れるため、透明性の良好な本発明の多層構造体と積層する有用性が大きい。
【0151】
また、これらの熱可塑性樹脂のうち、酸素透過速度が、20℃で1気圧当たり、200cm3/m2・day以下の材料の使用は、酸素吸収層の酸素吸収能持続期間を延長する観点より好適である。典型的な酸素バリア材として、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルクロリド、ポリ(ビニリデンジクロリド)、ポリエチレンテレフタレート、及びポリアミド等が例示されるが、これらの樹脂に限定されない。また、上記の単量体の1種を含有するコポリマー、及び金属箔層も使用することができる。
【0152】
また、本発明の多層構造体と積層する金属層を形成する材料としては、缶容器などに一般的に使用されているスチールやアルミ等が挙げられる。
【0153】
本発明の多層構造体を得る方法としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、溶剤流延法、共射出成形法、共押出成形法などが例示されるが、特に限定されるものではない。共押出成形法としては、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押出インフレ成形法、共押出ブロー成形法などを挙げることができる。
【0154】
このようにして得られた多層構造体のシート、フィルム、パリソンなどを、含まれる樹脂の融点以下の温度で再加熱し、絞り成形等の熱成形法、ロール延伸法、パンタグラフ式延伸法、あるいはインフレ延伸法、ブロー成形法などにより一軸、あるいは二軸延伸することによって延伸された成形品を得ることもできる。
【0155】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は含有される熱可塑性樹脂(a)、および必要に応じて使用されるガスバリア性樹脂(e)などの種類を、屈折率を考慮して適宜選択することにより、透明性が良好となる。従って、積層する他の樹脂として透明性に優れた樹脂を選択することにより、内容物を視認しやすい包装容器が得られる。透明性に優れた多層構造体を得たい場合には、内部ヘイズが10%以下、より好適には5%以下、さらに好適には3%以下となるようにする。
【0156】
本発明の多層構造体は、各種用途に用いられる。なかでも、酸素掃去性に極めて優れ、また酸素バリア性および低臭性にも優れるという本発明の多層構造体を用いることの優位性は、各種包装容器として用いられたときに大きく発揮される。特に、食品、医薬品、農薬等、酸素の存在によって品質が悪化しやすいものの包装容器として好適である。さらに、本発明の樹脂組成物は、容器用パッキング(ガスケット)として、特に容器のキャップ用のガスケットとして使用するのにも適している。かかるガスケットを装着してなるキャップは、優れたガスバリア性、酸素掃去性を有している。
【0157】
前記多層構造体を構成する酸素吸収性樹脂組成物は、酸素掃去機能を発現する際に、熱可塑性樹脂(a)の分解が生じ、かかる分解物の臭気が前記多層容器の内容物に移行することがある。このため、前記多層容器において、酸素吸収性樹脂組成物層より内層側に、脱臭剤(c)および熱可塑性樹脂(d)からなる脱臭層を配置することが、内容物への臭気の移行を抑制することができる観点から好適である。
【0158】
一方、前記多層容器のうち、この容器の最内層が酸素吸収性樹脂組成物で形成されている実施態様は、容器内の酸素掃去機能が速やかに発揮される観点から好適である。
【0159】
上記の多層容器は、特に、食品、医薬品、農薬等、酸素の存在によって品質が悪化しやすいものの包装容器として好適である。さらに包装容器の内でも、本願発明の多層構造体を使用することの有用性が大きい態様として、例えば、以下の2種の実施態様が挙げられる。
すなわち、一つは本願発明の多層構造体からなる、全層厚みが300μm以下である多層フィルムからなる容器であり、他の一つは本願発明の多層構造体からなる、押出しブロー成形法により成形してなる多層容器である。以下、それらの実施態様について順次説明する。
【0160】
本願発明の多層構造体において、全層厚みが300μm以下である多層フィルムからなる容器は、全体層厚みが比較的薄い多層構造体からなるフレキシブルな容器であり、通常パウチ等の形態に加工されている。
【0161】
一般に良好な透明性が要求される容器としては、多層構造体を構成する各樹脂層の厚みが薄く、全体としての厚みの薄い容器が製造される。例えばポリオレフィン等の結晶性の樹脂を用いる場合に、厚みが大きい場合には、結晶による散乱に由来して透明性が悪化する場合が多いのに対し、厚みの薄い容器であれば、良好な透明性が得られる。また一般に、無延伸で結晶化している樹脂は透明性が不良であっても、延伸配向して結晶化した樹脂は透明性が良好となる。かかる一軸あるいは二軸に延伸されたフィルムは通常厚みが薄く、この点からも厚みの薄い多層構造体が良好な透明性を与える場合が多い。
【0162】
本発明の多層構造体は、酸素吸収性樹脂組成物層および脱臭層のそれぞれを構成する樹脂および脱臭剤(c)を適切に選択することにより、透明性が非常に良好となる。従って、透明性が要求されることの多い、厚みの薄い多層フィルムからなる容器に好適に使用することが可能である。
【0163】
かかる多層フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、300μm以下であることが良好な透明性を維持しやすく好適である。より好適には250μm以下であり、さらに好適には200μm以下である。一方、厚みの下限値も特に限定されるものではないが、容器としての力学的な強度を考慮すると、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。
【0164】
層構成は特に限定されるものではないが、本発明の酸素吸収性樹脂組成物からなる層(酸素吸収層)、脱臭剤(c)および熱可塑性樹脂(d)からなる層(脱臭層)、および必要に応じて前記脱臭層以外の層(F層)とをドライラミネート、共押出ラミネートなどの手法で多層化することによって多層フィルムを得ることができる。
【0165】
前記F層としては熱可塑性樹脂が好ましく、ドライラミネートにより積層する場合には、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、圧延フィルムが使用可能である。これらの内で、前記F層としては、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリε−カプロラクタムフィルムが、強度、透明性等の点から好ましいものとして挙げられる。二軸延伸ポリプロピレンフィルムは防湿性が良好であり特に好ましい。
【0166】
包装容器を密封するために、この包装容器を構成する多層フィルムの少なくとも片面の最表面にヒートシール可能な樹脂からなる層を設けることも好ましい。かかる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを挙げることができる。
【0167】
また、積層した後に再加熱し、絞り成形等の熱成形法、ロール延伸法、パンタグラフ式延伸法、あるいはインフレーション延伸法などにより一軸、あるいは二軸延伸することによって延伸された多層フィルムを得ることもできる。
【0168】
こうして得られた多層フィルムは、袋状に加工され、内容物を充填して、包装容器とすることができる。フレキシブルで簡便であり、かつ透明性、ガスバリア性そして酸素掃去性に優れるので、酸素の存在により劣化しやすい内容物、特に食品等の包装に極めて有用である。
【0169】
本願発明の多層構造体において、押出しブロー成形法により成形される多層容器は、ガスバリア性、酸素掃去性に優れる。
【0170】
本発明における押出しブロー成形法による多層容器の製造方法には以下のような方法があげられる。
まず、少なくとも2台の押出機を有する多層押出機を用いて、内外層を形成する熱可塑性樹脂およびガスバリア性樹脂組成物と、必要であれば層間接着性樹脂とを別々の押出機に供給して別々に混練、溶融押出しを行い、各層を多層パリソン成形用ダイの内部またはダイより吐出直後の外部で密着合流させるように押出し、管状の多層パリソンを得、次いでこのパリソンを溶融状態でブロー成形して共押出多層容器を得る、いわゆるダイレクトブロー成形法があげられる。
また、押出成形法によって多層パイプを成形してからこれを適当な長さに切断し、次いで一端を密封し他端にはキャップ等の蓋を取付け可能な加工をして有底パリソンを成形し、これを再加熱してブローする延伸ブロー成形方法も採用される。
【0171】
ブロー成形の方法は公知のダイレクトブロー法か延伸ブロー法を用途に応じて適宜選択する。例えば一般にダイレクトブロー法は、樹脂の分子の配向度が低いため、機械的強度は高くならないが、高温における寸法安定性が良いので、高温殺菌を必要とする用途には適している。一方、炭酸飲料容器のように耐圧、耐クリープ性が必要な用途には、延伸ブロー法が適している。なおダイレクトブロー法により多層成形容器を成形する場合は、内外層を形成する熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を用いることが好適であり、延伸ブロー法により多層成形容器を成形する場合は、内外層を形成する飽和ポリエステル系樹脂を用いることが好適である。
【0172】
本発明におけるブロー容器の容器胴部の総厚みは一般的には100〜2000μm、好適には150〜1000μmであり、用途に応じて使い分けられる。このときの酸素吸収性樹脂組成物層の合計厚みは2〜200μmの範囲内であるのが好ましく、5〜100μmの範囲内であるのがより好ましい。
【0173】
本願発明の多層構造体において、押出しブロー成形法により成形される多層容器はガスバリア性および酸素掃去性に極めて優れる。従って、酸素の存在により劣化しやすい内容物、例えば、食品、医薬品等の包装に有用である。
【0174】
【実施例】
以下に本発明を実施例などの例によって具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の実施例における分析および評価は次のようにして行った。
【0175】
(1)熱可塑性樹脂(a)のスチレン含有量、構造式(I)で示される構造単位の含有量(ビニル結合含有量)および炭素−炭素二重結合含有量:
重クロロホルムを溶媒とした1H−NMR(核磁気共鳴)スペクトル(日本電子社製「JNM−GX−500型」により測定)により、熱可塑性樹脂(a)を測定し、この樹脂の構造を同定した。それにより上記含量の算出を行なった。
【0176】
ここで、スチレン含有量とは、この樹脂を構成する全単量体中のスチレンの割合(モル%)であり、構造式(I)で示される構造単位の含有量(ビニル結合含有量)は、ジエンブロック中の全ジエン単量体のうちで構造式(I)で示される構造単位の割合(すなわちビニル結合を形成したものの割合)(%)をいう。炭素−炭素二重結合の含有量は、樹脂1g中に含まれる二重結合のモル数(eq/g)を計算により求めた。
【0177】
(2)メルトフローレート:
メルトインデクサーL244(宝工業株式会社製)を用いて測定した。具体的には、検体の樹脂(樹脂あるいは樹脂組成物)のチップを、内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに充填し、210℃で溶融した後、溶融した検体の樹脂に対して、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーによって均等に荷重をかけた。シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより押出された樹脂の流出速度(g/10分)を測定し、これをメルトフローレートとした。
【0178】
(3)樹脂の屈折率:
測定すべき樹脂を用いて、押出温度210℃にてフィルム押出成形を行い、厚み20μmの無延伸フィルムを得た。得られたフィルムを用いてアッベの屈折率計(株式会社アタゴ社製4T型、株式会社東芝社製SL−Na−1ランプ)を用いて屈折率を測定した。
【0179】
(4)ヘイズ値(曇価):
測定すべき樹脂あるいは樹脂組成物を押出成形し、厚み20μmの無延伸フィルムを得た。得られたフィルムを用いて、ASTM D1003−61に準じて、ポイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(村上色彩技術研究所製「HR−100型」)を使用し内部ヘイズ値を測定した。多層フィルムについても同様に測定した。
【0180】
(5)樹脂のジエン化合物から誘導されるブロックにおけるtanδの主分散ピーク温度:
測定すべき樹脂あるいは樹脂組成物を押出成形し、厚み20μmの無延伸フィルムを得た。得られたフィルムを用いて、RHEOLOGY Co.,LTD製「DVE RHEOSPECTOLER DVE−V4」を使用し、周波数11Hz、変位振幅10μm、チャック間距離20mm、幅5mm、測定温度範囲−150℃〜150℃、昇温速度3℃/分の条件で、樹脂のジエン化合物から誘導されるブロックにおけるtanδの主分散ピーク温度を測定した。
【0181】
(6)ポリビニルアルコール系樹脂のエチレン含有量およびケン化度:
ポリビニルアルコール系樹脂のエチレン含有量およびケン化度は、重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒とした1H−NMR(核磁気共鳴)スペクトル(日本電子社製「JNM−GX−500型」により測定)により測定した。
【0182】
(7)ポリビニルアルコール系樹脂におけるリン酸根含有量:
リン酸根含量は、以下に示す方法に従いリン酸イオン(PO4 3-)含量として得た。試料とする乾燥済みポリビニルアルコール系樹脂10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液を、イオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸イオン含量を得た。クロマトグラフィーのカラムは、(株)横川電機製のCIS−A23を使用し、溶離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液とした。なお、定量に際してはリン酸水溶液で作製した検量線を用いた。
【0183】
(8)ポリビニルアルコール系樹脂におけるNa、K、Mgイオンの含有量:
試料とする乾燥チップ10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液を、イオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、Naイオン、KイオンおよびMgイオンの量を定量した。クロマトグラフィーのカラムは、(株)横河電機製のICS−C25を使用し、溶離液は5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液とした。定量に際してはそれぞれ塩化ナトリウム、塩化カリウムおよび塩化マグネシウム水溶液で作成した検量線を用いた。こうして得られたNaイオン、KイオンおよびMgイオンの量から、乾燥チップ中のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の量を金属換算の量で得た。
【0184】
(9)酸素吸収速度
(9−1)樹脂組成物の酸素吸収速度(1):
酸素吸収性樹脂組成物を用い、押出温度210℃にて押出成形を行い、厚み20μmのフィルムを得た。得られた単層フィルム0.01m2(0.1m×0.1m;表面積0.02m2)を精秤し、フィルム製膜の1時間後にロール状に巻いて、20℃、65%RHの空気を満たしておいた内部容量260mlのガラス容器に入れた。ガラス容器中の空気は、体積比で21:79の酸素および窒素を含有する。ガラス容器の口を、アルミニウム層を含む多層シートを用いてエポキシ樹脂で封じてから、20℃で放置した。封入後、経時的に内部の空気をシリンジでサンプリングして、この空気の酸素濃度を、ガスクロマトグラフィーを用いて測定した。測定時に多層シートに空いた細孔は、エポキシ樹脂を用いてその都度封じた。ガスクロマトグラフィーで得られた酸素と窒素の体積比から、酸素の減少量を計算することによって組成物の酸素吸収量を求めた。その結果から、最も速い速度となる時点における樹脂組成物の酸素吸収速度(ml/m2・day)を、グラフの傾きによって算出した。実施例1、比較例2においてこの方法を採用した。
(9−2)樹脂組成物の酸素吸収速度(2):
樹脂組成物を用い、押出温度210℃にて押出成形を行い、厚み20μmのフィルムを得た。得られた単層フィルム0.9m2(0.2m×4.5m;表面積1.8m2)をフィルム製膜の5時間後にロール状に巻いて、20℃、65%RHの空気を満たしておいた内部容量375mlの三角フラスコに入れた。三角フラスコ中の空気は、体積比で21:79の酸素および窒素を含有する。三角フラスコの口を、アルミニウム層を含む多層シートを用いてエポキシ樹脂で封じてから、20℃で放置した。封入96時間後、168時間後および336時間後の内部の空気をシリンジでサンプリングし、この空気の酸素濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。測定時に多層シートに空いた細孔は、エポキシ樹脂を用いてその都度封じた。測定はガスクロマトグラフィーで得られた酸素と窒素の体積比から、酸素の減少量(酸素吸収量)を計算することによって求めた。4日後〜14日後の10日間での酸素減少量を、日数と表面積とで割ることにより、樹脂組成物の酸素吸収速度(ml/m2・day)を算出した。実施例2、および比較例4においてこの方法を採用した。
【0185】
(実施例1)
下記の方法で、酸化防止剤が添加された熱可塑性樹脂(a)を調製した。
【0186】
乾燥した窒素で浄化された攪拌式オートクレーブ中にシクロヘキサン600体積部、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)0.16体積部、開始剤としてn−BuLi0.094体積部を投入した。温度を50℃に昇温した後にスチレンモノマーを4.25体積部フィードし1.5時間重合させた。次に温度を30℃に下げてからイソプレンを120体積部フィードし2.5時間重合させた。次いで、再び温度を50℃に昇温して、スチレンモノマーを4.25体積部フィードし1.5時間重合させた。
【0187】
得られた反応液に、酸化防止剤として2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)を、それぞれ、スチレンおよびイソプレンの合計重量に対して0.15phrずつ加えた。反応液をメタノールに注ぎ、トリブロック共重合体を沈殿させた。これを乾燥し、酸化防止剤が添加された熱可塑性樹脂(a)として用いた。
【0188】
得られたトリブロック共重合体の数平均分子量は85000、共重合体中のスチレンブロックの分子量はそれぞれ8500、スチレン含有量は14mol%、イソプレンブロック中のビニル結合含有量は55%であり、構造式(I)で示される構造単位の含有量は55%であった。得られたトリブロック共重合体における炭素−炭素二重結合の含有量は0.014eq/gであり、メルトフローレートは7.7g/10分であった。当該樹脂中には、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート0.12重量%およびペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.12重量%が含まれていた。
【0189】
上記酸化防止剤を含む熱可塑性樹脂(a)の屈折率およびヘイズ値(曇価)を測定したところ、それぞれ1.531および1.0%であった。また、この樹脂の、ジエン化合物から誘導されるブロックにおけるtanδの主分散ピーク温度を測定したところ、−3℃であった。
【0190】
上記の熱可塑性樹脂100重量部およびステアリン酸コバルト(II)0.8484重量部(コバルト原子として0.0800重量部)をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、210℃でスクリュー回転数300rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、30℃、16時間減圧下で乾燥を行い酸素吸収性樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃−2160g荷重)は7.1g/10分であった。
【0191】
上記した樹脂組成物を用い、押出温度210℃で押出成形を行ない、厚さ20μmのフィルムを得た。また、樹脂組成物の酸素吸収速度(1)の測定法によりフィルムの酸素吸収量を測定したところ、図1に示す結果を得た。その結果、樹脂組成物の酸素吸収速度は78ml/m2・dayであった。
【0192】
次に、下記の方法で、脱臭剤(c)および熱可塑性樹脂(d)からなる樹脂組成物を調製した。
【0193】
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂(三井化学株式会社製 「ウルトゼックス2022L」)97重量部および粒子径3.0μmの脱臭剤(D)(多孔性マイクロカプセルパウダー;株式会社マイクロン製 消臭カプセル「G20007」)を3重量部ドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、210℃でスクリュー回転数300rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、30℃、16時間減圧下で乾燥を行い樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(190℃−2160g荷重)は2.0g/10分であった。
【0194】
得られた脱臭剤(c)および熱可塑性樹脂(d)からなる樹脂組成物を用いて、押出温度210℃にてフィルム押出成形を行い、厚み20μmのフィルムを得た。
【0195】
上記酸素吸収性樹脂組成物を用いて作製したフィルム(酸素吸収層)の両面に、上記脱臭剤(c)および熱可塑性樹脂(d)からなる樹脂組成物を用いて作製したフィルム(脱臭層)を積層し、ウレタン系接着剤(東洋モートン製、商品名:AD335Aと硬化剤(東洋モートン製、商品名:Cat−10)とのトルエン/メチルエチルケトン混合溶液(重量比1:1))を用いて接着させて、脱臭層/酸素吸収層/脱臭層となる構成の積層フィルムを作製した。この積層フィルムのヘイズは9.5%であった。
【0196】
さらに、上記積層フィルム0.05m2(0.1m×0.5m;表面積0.1m2)を、フィルム製膜の1時間後にロール状に巻いて、20℃、65%RHの空気を満たしておいた内部容量260mlのスクリュー管ガラス瓶に入れた。ガラス瓶中の空気は、体積比で21:79の酸素および窒素を含有する。スクリュー管ガラス瓶の口を、アルミニウム層を含む多層シートを内蓋に用いて、ポリエチレン製スクリューキャップで封じてから、40℃で4時間放置した。放置後、スクリュー管ガラス瓶のスクリューキャップを、瓶が冷却しないようできるだけ速やかに開封し、フィルムの臭いを嗅いだところ、僅かに臭気を感じた。
【0197】
(比較例1)
実施例1で使用した熱可塑性樹脂100重量部およびステアリン酸コバルト(II)0.8484重量部(コバルト原子として0.0800重量部)を用いて、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0198】
上記した樹脂組成物を用い、押出温度210℃で押出成形を行ない、厚さ20μmのフィルムを得た。
【0199】
上記樹脂組成物を用いて得られたフィルム(酸素吸収性フィルム)を用いて、次のようにして積層フィルムを作成した。実施例1において使用した、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂を単独で用いて、実施例1と同様にして押出温度210℃にてフィルム押出成形を行い、厚み20μmのフィルムを得た。このとき得られた単層フィルムと、上記酸素吸収性フィルムを用いて、実施例1と同様の構成を有する積層フィルムを得た。この積層フィルムのヘイズは2.4%であった。
【0200】
上記積層フィルムを用いて、実施例1と同様にしてフィルムをスクリュー管ガラス瓶の中で40℃、4時間放置した後に、フィルムの臭いを嗅いだところ、明らかな臭気を感じた。
【0201】
(比較例2)
実施例1で使用した熱可塑性樹脂(a)を用い、押出温度210℃で押出成形を行ない、熱可塑性樹脂(a)のみからなる厚さ20μmのフィルムを得た。また、樹脂組成物の酸素吸収速度(1)の測定法によりフィルムの酸素吸収量を測定したところ、図1に示す結果を得た。その結果、樹脂組成物の酸素吸収速度は0.000ml/m2・dayであった。
【0202】
上記作製したフィルムを用いて、次のようにして積層フィルムを作成した。実施例1において使用した、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂を単独で用いて、実施例1と同様にして押出温度210℃にてフィルム押出成形を行い、厚み20μmのフィルムを得た。上記作製した熱可塑性樹脂(a)のみからなるフィルムの両面に、上記作製したLLDPEのみからなる単層フィルムを実施例1と同様にして積層し、積層フィルムを得た。この積層フィルムのヘイズは2.0%であった。
【0203】
上記積層フィルムを用いて、実施例1と同様にしてフィルムをスクリュー管ガラス瓶の中で40℃、4時間放置した後に、フィルムの臭いを嗅いだところ、ごく僅かな臭気を感じた。
【0204】
上記試験の結果を下記表1にまとめて示す。
【0205】
【表1】
Figure 0004781507
【0206】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で酸化防止剤を含む熱可塑性樹脂(a)を調製した。ガスバリア性樹脂(e)としてポリビニルアルコール系樹脂であるEVOHを使用した。このEVOHは、エチレン含有量44モル%、ケン化度99.5%、メルトフローレート(210℃−2160g荷重)13g/10分であった。このEVOHのリン酸根含有量及びNa、K、Mgイオン含有量を測定したところ、それぞれ100ppm,20ppm、60ppm、20ppmであった。さらにこのEVOHの屈折率を測定したところ、1.528であった。
【0207】
上記の熱可塑性樹脂(a)5重量部、ガスバリア性樹脂(e)95重量部、およびステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、210℃でスクリュー回転数300rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出し、ペレット化した後、30℃、16時間減圧下で乾燥を行い、EVOH樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃−2160g荷重)は11g/10分であった。得られた樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(a)であるトリブロック共重合体のおおむね1μm前後の粒子がEVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0208】
得られた樹脂組成物を押出温度210℃にてフィルム押出成形を行い、厚み20μmのフィルムを得た。次に、フィルムの酸素吸収量を測定したところ、図2に示す結果を得た。4日後と14日後の測定結果から算出した、樹脂組成物の酸素吸収速度は1.894ml/m2・dayであった。
【0209】
上記樹脂組成物を用いて作製したフィルムの両面に、実施例1と同様の方法で作製した、脱臭剤(c)および熱可塑性樹脂(d)からなるフィルム(脱臭層)を積層した。この積層フィルムのヘイズは9.5%であった。
【0210】
上記積層フィルムを用いて、実施例1と同様にしてフィルムをスクリュー管ガラス瓶の中で40℃、4時間放置した後に、フィルムの臭いを嗅いだところ、ごく僅かな臭気を感じた。
【0211】
(比較例3)
実施例2で作製したEVOH樹脂組成物ペレットを用い、押出温度210℃で押出成形を行ない、厚さ20μmのフィルムを得た。
【0212】
上記EVOH樹脂組成物を用いて作製したフィルムの両面に、比較例1で作製した熱可塑性樹脂(d)のみからなるフィルムを積層した。この積層フィルムのヘイズは2.8%であった。
【0213】
上記積層フィルムを用いて、実施例1と同様にしてフィルムをスクリュー管ガラス瓶の中で40℃、4時間放置した後に、フィルムの臭いを嗅いだところ、明らかな臭気を感じた。
【0214】
(比較例4)
実施例2で使用したガスバリア性樹脂(e)を単独で用い、押出温度210℃で押出成形を行ない、厚さ20μmのフィルムを得た。次に、フィルムの酸素吸収量を測定したところ、図2に示す結果を得た。4日後と14日後の測定結果から算出した、樹脂組成物の酸素吸収速度は0.000ml/m2・dayであった。
【0215】
上記樹脂組成物を用いて作製したフィルムの両面に、比較例1で作製した熱可塑性樹脂(d)からなるフィルムを積層した。この積層フィルムのヘイズは2.1%であった。
【0216】
上記積層フィルムを用いて、実施例1と同様にしてフィルムをスクリュー管ガラス瓶の中で40℃、4時間放置した後に、フィルムの臭いを嗅いだところ、ごく僅かな臭気を感じた。
【0217】
上記試験の結果を下記表2にまとめて示す。
【0218】
【表2】
Figure 0004781507
【0219】
(実施例3)
実施例1で作製したフィルム(酸素吸収性フィルム)から、次のようにして積層フィルムを作成した。このフィルムの一方の面に、実施例1で作成した脱臭剤(c)を含有する熱可塑性樹脂(d)を用いたフィルム(脱臭層)及び厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ株式会社製OP−#20 U−1)を順次積層し、ウレタン系接着剤(東洋モートン製、商品名:AD335Aと硬化剤(東洋モートン製、商品名:Cat−10)のトルエン/メチルエチルケトン混合溶液(重量比1:1))を用いて接着させた。次いで、フィルムの他方の面に、厚さ15μm酸素バリア性フィルム(株式会社クラレ製エバールフィルムEF−F#15)及び厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ株式会社製OP−#20 U−1)を順次積層し、上記ウレタン系接着剤を用いて接着させた。このようにして、延伸ポリプロピレンフィルム層/ウレタン系接着剤層/酸素バリア性フィルム層/ウレタン系接着剤層/酸素吸収性フィルム層/ウレタン系接着剤層/脱臭層/ウレタン系接着剤層/延伸ポリプロピレンフィルム層の層構成を有する積層フィルムを得た。
【0220】
上記積層フィルムを、外径65mm、底部厚み1.2mmのポリプロピレン製スクリューキャップ本体に合うように、ガスケットの形状に打ち抜き、このスクリューキャップ本体にキャップ側/延伸ポリプロピレンフィルム層/ウレタン系接着剤層/酸素バリア性フィルム層/ウレタン系接着剤層/酸素吸収性フィルム層/ウレタン系接着剤層/脱臭層/ウレタン系接着剤層/延伸ポリプロピレンフィルム層/内容物側の層構成になる様に取り付けた。次いで圧縮成形用ガスケット成形機の金型に得られたガスケット付きキャップを供給し、また、この圧縮成形用ガスケット成形機にエチレン−1−ブテン共重合体(シェルケミカル製「POLYBUTYLENE 8240」: 1−ブテン(99モル%以上)、エチレン(1モル%以下)共重合品、密度0.908g/cm3、MFR=2.0g/10分(210℃、2160g荷重))を供給し、圧縮成形することにより多層ガスケット付きキャップを作製した。このとき圧縮成形機のシリンダー温度は245℃、ノズル温度は235℃、金型温度は30℃となるよう調節した。
【0221】
このようにして作製したキャップの容器のシール性について、次の様に評価した。
【0222】
内容量500mlの円筒状のポリエステル製ブローボトルに、水200mlを入れ、スクリュー式キャップを取り付け、下記評価方法に示すような要領でキャップを締めた。その後にボトル胴部を手で持ち上下に大きく20回振った。その結果、液漏れの状態を観察して以下の4段階で評価分類した。
A:指先で軽く締めただけでも全く漏れない。
B:指先で軽く締めただけでは漏れ、キャップのスクリュー部が濡れる。
C:指先で軽く締めただけでは漏れ、キャップ外部に水が飛散するが、強く締めれば漏れない。
D:強く締めても漏れる。
評価の結果、「A」であり良好なシール性を示した。
【0223】
【発明の効果】
本発明によれば、酸素吸収性に優れ、さらに低臭性に優れた多層構造体が得られる。さらに適切に樹脂を選択することにより、良好なガスバリア性および透明性が得られる。このような多層構造体は任意の形状の成形品に調製され得る。これらを用いて調製された成形品、例えば、フィルムや容器は、酸素吸収性、および低臭性に優れ、さらに適切に樹脂を選択することにより、良好なガスバリア性および透明性が得られる。
【0224】
上記多層構造体のなかで、例えば多層フィルムからなる包装材料も上記優れた性能を有するため好適に用いられる。特に、全層厚みが300μm以下である多層フィルムからなる容器、あるいは押出しブロー成形法により成形される多層容器は、上記酸素吸収性あるいはガスバリア性が要求される容器の用途に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1および比較例2の単層フィルムの酸素吸収量を時間に対してプロットした図である。
【図2】 実施例2および比較例4の単層フィルムの酸素吸収量を時間に対してプロットした図である。

Claims (7)

  1. 数平均分子量が1000〜500000の範囲であり、構造式(I):
    Figure 0004781507
    [式中、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアルコキシ基であり、R2およびR3は各々水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、置換アリール基、非置換アリール基、−COOR、−OCOR、シアノ基、またはハロゲン原子であり、RおよびRは各々独立して炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアルコキシ基である]
    で示される構造単位の少なくとも1種を有する樹脂であって、該構造単位中の炭素−炭素二重結合が0.0001eq/g以上の割合で含有され、かつビニル結合含有量が10%以上である熱可塑性樹脂(a)および遷移金属塩(b)からなる酸素吸収性樹脂組成物層と、脱臭剤(c)0.1〜50重量%および熱可塑性樹脂(d)50〜99.9重量%からなる脱臭層を含み、
    前記熱可塑性樹脂(a)が構造式(I)を含むポリイソプレンブロックおよびポリスチレンブロックから主としてなる、多層構造体。
  2. 前記酸素吸収性樹脂組成物層の酸素吸収速度が0.01ml/m・day以上である、請求項1に記載の多層構造体。
  3. 数平均分子量が1000〜500000の範囲であり、構造式(I):
    Figure 0004781507
    [式中、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアルコキシ基であり、R2およびR3は各々水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、置換アリール基、非置換アリール基、−COOR、−OCOR、シアノ基、またはハロゲン原子であり、RおよびRは各々独立して炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアルコキシ基である]
    で示される構造単位の少なくとも1種を有し、該構造単位中の炭素−炭素二重結合が0.0001eq/g以上の割合で含有され、かつビニル結合含有量が10%以上である熱可塑性樹脂(a)を含み、さらに酸素吸収速度が0.01ml/m・day以上である酸素吸収性樹脂組成物層と、脱臭剤(c)0.1〜50重量%および熱可塑性樹脂(d)50〜99.9重量%からなる脱臭層を含み、
    前記熱可塑性樹脂(a)が構造式(I)を含むポリイソプレンブロックおよびポリスチレンブロックから主としてなる、多層構造体。
  4. 前記熱可塑性樹脂(a)がさらに酸化防止剤0.01〜1重量%を含有する、請求項1〜のいずれかの項に記載の多層構造体。
  5. 層構成が脱臭層/酸素吸収層/脱臭層または脱臭層/接着性樹脂層/酸素吸収層/接着性樹脂層/脱臭層である、請求項1〜のいずれかの項に記載の多層構造体。
  6. 請求項1〜いずれかの項に記載の多層構造体からなる全層厚みが300μm以下の多層フィルム。
  7. 請求項1〜いずれかの項に記載の多層構造体からなるガスケットを装着してなるキャップ。
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