JP4889851B2 - タイヤ用ゴム組成物およびタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はゴム組成物およびこれをゴム部材に適用したタイヤに関し、特に、加工性が良好で、異方性が高く、低発熱性に優れたゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、強度等に優れたゴム組成物を得るために、各種有機短繊維を配合することが行われている。これにより、弾性率の向上は図れるが、短繊維の分散性、配向性、また、短繊維を核とする破壊抑制の点から、短繊維の配合量は少なくせざるを得ないという不都合があった。
これらの不都合のうち、分散性、配向性の点は、プロセスオイル等の配合により、ある程度、改良されるが、低発熱性が損なわれるという不都合があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記不都合に鑑み、有機短繊維配合ゴム組成物の加工性、および各種物性を改良させる技術を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的達成のため、本発明のゴム組成物は以下の構成とする。
(1)ジエン系ゴムを含んでなるゴム成分、平均径が0.05〜50μmかつ平均長さが10〜2000μmの有機短繊維、および分子内に親水基と疎水基とをそれぞれ1個以上有する界面活性剤を含んでなるゴム組成物であって、これらの配合割合が、前記ゴム成分100重量部に対して、前記有機短繊維0.1〜100重量部、前記界面活性剤0.1〜20重量部であり、前記界面活性剤が、ジメチルステアリルアミン、ジメチルフェニルアミン及びトリステアリルアミン、並びに、それらのオレイン酸塩、ステアリン酸塩、フタル酸塩及び安息香酸塩のうちから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
(2)ジエン系ゴムを含んでなるゴム成分、平均径が0.05〜50μmかつ平均長さが10〜2000μmの有機短繊維、分子内に親水基と疎水基とをそれぞれ1個以上有する界面活性剤、およびポリオレフィンを含んでなるゴム組成物であって、これらの配合割合が、前記ゴム成分100重量部に対して、前記有機短繊維0.1〜100重量部、前記界面活性剤0.1〜20重量部、前記ポリオレフィン1〜40重量部であり、前記界面活性剤が、ジメチルステアリルアミン、ジメチルフェニルアミン及びトリステアリルアミン、並びに、それらのオレイン酸塩、ステアリン酸塩、フタル酸塩及び安息香酸塩のうちから選択される少なくとも1種であることを特徴とすることを特徴とする。
(3)前記有機短繊維が、脂肪族ポリアミド系、芳香族ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系、およびセルロース系のうち少なくとも1種の樹脂よりなると好ましい。
(4)前記有機短繊維が、前記ゴム成分と化学的に結合してなると好ましい。
(5)前記有機短繊維を構成する前記脂肪族ポリアミド系樹脂および前記芳香族ポリアミド系樹脂が融点135〜350℃であると好ましい。
【0005】
(6)前記有機短繊維が、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂からなると好ましい。
【0016】
)前記ポリオレフィンが、融点100〜150℃であると好ましい。
また、本発明のタイヤは、以下の構成を有する。
)上記ゴム組成物のうちいずれかのゴム組成物を、トレッド部、2層構造の場合のべーストレッド部、サイドトレッド部のうち少なくとも1つの部材に用いてなることを特徴とする。なお、タイヤには、空気の他、窒素等の気体を充填することができる。
【0017】
【発明の実施の態様】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のゴム組成物のうち、前記ジエン系ゴム成分としては、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム等を例示でき、他のゴム成分としては、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)等を例示できる。
有機短繊維の平均径が0.05μm未満の場合は、異方性が小さく、50μmを超えた場合は、加工性が悪化する。また、平均長さが10μm未満の場合は、異方性が小さく、2000μm
を超えた場合は、配向性が乱れ、また加工性も悪化する。有機短繊維を構成するポリマーは、分子量8000以上が好ましい。有機短繊維は、他の配合薬品と共に配合、混練してもよいが、生産性の観点から、予め、少量のゴム成分と混練し、ゴム−短繊維マスターバッチを作製してもよい。
また、有機短繊維と共に、無機短繊維を配合してもよく、この場合無機短繊維としては、グラスファイバー、炭素繊維、スチールファイバー等を例示できる。
【0018】
分子内に親水基と疎水基とをそれぞれ1個以上有する界面活性剤(加工助剤)の、ゴム組成物内での作用は、加硫ゴム物性に悪影響を与えることなく、未加硫ゴムの粘度を低減させることである。
前記短繊維の配合割合が、前記ゴム成分100重量部に対して、0.1重量部未満の場合は、異方性が小さく、100重量部を超えると、加工性が悪化する。このような観点から、2〜20重量部が好ましい。前記界面活性剤の配合割合が、前記ゴム成分100重量部に対して、0.1重量部未満の場合は、加工性の改良効果が少なく、20重量部を超えると、コストがアップし、さらにゴム弾性率が低下する。このような観点から、0.5〜5重量部が好ましい。
前記ポリオレフィンを含む場合、前記ポリオレフィンのゴム組成物内での作用は、補強性がさらに改良されること、および、有機繊維とゴムとの接着を補助することである。また、前記ポリオレフィンの配合量が、ゴム成分100重量部に対して、1重量部未満の場合は、改良効果が小さく、40重量部を超えた場合は、加工性が悪化する。
【0019】
前記ポリオレフィンは、融点100〜150℃であると好ましく、これは、100℃未満の場合は、加硫後のゴム物性である発熱性を低下させることができず、一方、150℃を超えると、加工性が悪化し、ゴム練り時に溶融せず、不都合だからである。このような観点から、融点110〜140℃がより好ましい。前記ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等を例示できる。ゴム組成物の混練に際し、加硫促進剤や加硫剤を含まない練りステージにおいて、最終練り温度がポリオレフィンの融点より3℃以上高い温度となるようにする。これは、ポリオレフィンを完全に溶融し、ポリオレフィンの良好な分散と、有機短繊維への融着を促進するためである。なお、加硫温度も、同様の理由から、ポリオレフィンの融点より3℃以上高くすると好ましい。
【0020】
上記(3)に記載の、前記有機短繊維が、脂肪族ポリアミド系、芳香族ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系、およびセルロース系のうち少なくとも1種の樹脂よりなる場合に関して、前記脂肪族ポリアミド系としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−ナイロン66共重合体、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6等を例示でき、前記芳香族ポリアミド系としては、キシリレンジアミンとアジピン酸との重縮合体、キシリレンジアミンとピメリン酸との重縮合体、キシリレンジアミンとスペリン酸との重縮合体、キシリレンジアミンとアゼライン酸との重縮合体、キシリレンジアミンとセバシン酸との重縮合体、テトラメチレンジアミンとテレフタル酸との重縮合体、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との重縮合体、オクタメチレンジアミンとテレフタル酸との縮重合体、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との縮重合体、デカメチレンジアミンとテレフタル酸との縮重合体、ウンデカメチレンジアミンとテレフタル酸との縮重合体、ドデカメチレンジアミンとテレフタル酸との縮重合体、テトラメチレンジアミンとイソフタル酸との縮重合体、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との縮重合体、オクタメチレンジアミンとイソフタル酸との縮重合体、トリメチルヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との縮重合体、デカメチレンジアミンとイソフタル酸との縮重合体、ウンデカメチレンジアミンとイソフタル酸との縮重合体、ドデカメチレンジアミンとイソフタル酸との縮重合体、ケブラー(商標)等を例示でき、前記ポリエステル系としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、芳香族ポリエルテル等を例示でき、前記ポリオレフィン系としては、シンジオタクティック−1,2−ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン等を例示でき、前記ポリビニルアルコール系としては、ビニロン等を例示でき、前記セルロース系としては、レーヨン等を例示できる。
【0021】
上記(4)に記載の、前記有機短繊維が、前記ゴム成分と化学的に結合してなる場合に関して、このように、化学的結合が得られると、有機繊維の異方性効果が高まる。また、ポリオレフィンをも配合する場合には、ジエン系ゴムと有機短繊維とが化学的に結合するのみならず、有機短繊維にポリオレフィンが融着された状態となり、有機短繊維配合によりもたらされる耐破断性および耐疲労性の向上と共に、ポリオレフィンにより、異方性の向上が複合化され、異方性が高く、低発熱性に優れたものとなる。
上記(5)に記載の、前記有機短繊維を構成する前記脂肪族ポリアミド系樹脂および前記芳香族ポリアミド系樹脂は製造上の観点から融点135〜350℃であると好ましく、より好ましくは、150〜300℃である。
【0022】
上記(6)に記載の、前記有機短繊維が、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂からなる場合、未変性のものより、高い異方性効果が得られる。
【0031】
上記(1)に記載の、前記界面活性剤を構成するアミンとしては、ジメチルステアリルアミン、ジメチルフェニルアミン、トリステアリルアミン例示でき、その塩としては、これらのオレイン酸塩、ステアリン酸塩、フタル酸塩、安息香酸塩例示できる。
【0033】
なお、本発明のゴム組成物には、前記界面活性剤10重量部に対して、分子内に硫黄を含むシラン系、アルミニウム系、およびチタネート系のカップリング剤のうち少なくとも1種を1重量部以上含むと好ましい。
シラン系カップリング剤としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等を例示でき、前記アルミニウム系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピオネート等を例示でき、前記チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート等を例示できる。
【0034】
また、本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物のうちいずれかのゴム組成物を、トレッド部、べーストレッド部、サイドトレッド部のうち少なくとも1つの部材に用いてなるが、この場合、低発熱性の効果が得られる。
なお、本発明のゴム組成物には、通常使用される各種添加剤を適宜配合できる。
【0035】
【実施例】
本発明を具体的に説明する。
表1記載の基本配合および表2記載の加工助剤に関する個別的配合に従って、ゴム組成物を調整し、以下の方法で物性を測定し、その結果を表2に記載する。
なお、加硫条件は150℃×30分である。
ムーニー粘度
JIS K6300−1994に従い、100℃のムーニー粘度ML1+4を測定した。
配向方向および配向垂直方向における50%伸び時のモジュラス
JIS K6301−1995に従い、3号ダンベルを試料として測定した。
異方性
配向方向における50%伸び時のモジュラス対配向垂直方向における50%伸び時のモジュラスとして表す。
発熱性( tanδ)
発熱性を tanδにより評価した。 tanδはレオメトリクス社製、メカニカルスペクトロメータを用いて動的歪1.0%、周波数(振動)52Hzの条件下で、25℃における tanδを測定し、比較例をコントロール(100)として指数表示した。数値は大きいほど、低発熱性であり、良好であることを示す。
【0036】
【表1】
Figure 0004889851
【0037】
【表2】
Figure 0004889851
【0038】
上記の結果より、本発明の加工助剤を配合することにより、ムーニー粘度が低下し、加工性が向上し、異方性も高くなることがわかる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、加工性、モジュラスの異方性、および低発熱性が向上し、タイヤのトレッド、ベーストレッド、サイドトレッドに好適に利用できる。

Claims (8)

  1. ジエン系ゴムを含んでなるゴム成分、平均径が0.05〜50μmかつ平均長さが10〜2000μmの有機短繊維、および分子内に親水基と疎水基とをそれぞれ1個以上有する界面活性剤を含んでなるゴム組成物であって、これらの配合割合が、前記ゴム成分100重量部に対して、前記有機短繊維0.1〜100重量部、前記界面活性剤0.1〜20重量部であり、
    前記界面活性剤が、ジメチルステアリルアミン、ジメチルフェニルアミン及びトリステアリルアミン、並びに、それらのオレイン酸塩、ステアリン酸塩、フタル酸塩及び安息香酸塩のうちから選択される少なくとも1種であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
  2. ジエン系ゴムを含んでなるゴム成分、平均径が0.05〜50μmかつ平均長さが10〜2000μmの有機短繊維、分子内に親水基と疎水基とをそれぞれ1個以上有する界面活性剤、およびポリオレフィンを含んでなるゴム組成物であって、これらの配合割合が、前記ゴム成分100重量部に対して、前記有機短繊維0.1〜100重量部、前記界面活性剤0.1〜20重量部、前記ポリオレフィン1〜40重量部であり、
    前記界面活性剤が、ジメチルステアリルアミン、ジメチルフェニルアミン及びトリステアリルアミン、並びに、それらのオレイン酸塩、ステアリン酸塩、フタル酸塩及び安息香酸塩のうちから選択される少なくとも1種であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
  3. 前記有機短繊維が、脂肪族ポリアミド系、芳香族ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系、およびセルロース系のうち少なくとも1種の樹脂よりなることを特徴とする請求項1または2記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. 前記有機短繊維が、前記ゴム成分と化学的に結合してなることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. 前記有機短繊維を構成する前記脂肪族ポリアミド系樹脂および前記芳香族ポリアミド系樹脂が融点135〜350℃であることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  6. 前記有機短繊維が、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  7. 前記ポリオレフィンが、融点100〜150℃であることを特徴とする請求項2〜6のうちいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  8. 請求項1〜7のうちいずれか1項に記載のゴム組成物を、トレッド部、べーストレッド部、サイドトレッド部のうち少なくとも1つの部材に用いてなることを特徴とするタイヤ。
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