JP4889108B2 - 防菌防カビ消臭性無機組成物の製造方法 - Google Patents

防菌防カビ消臭性無機組成物の製造方法 Download PDF

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本発明は、防菌防カビ消臭性を備えた無機組成物の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、ケイ酸カルシウム水和物を主成分とする原料粉末が有する当初の細孔径分布をそのまま維持し、当初適用を意図していた被吸着物(菌、カビ、臭気など)の適用を阻害することのない炭酸化および金属置換された防菌防カビ消臭性無機組成物を製造する方法に関するものである。
防菌、防カビ、消臭性を有する材料としては、例えば有機化合物や、錫、鉛、砒素、水銀などの金属またはその化合物などの多くの物質が従来から知られているが、有機化合物は耐熱性に劣るためにその用途に制限があり、また金属またはその化合物は、毒性の強いものが多くそのままでは使用し難いという問題があった。
さらに近年では、金属イオンの溶出が少なく、かつ耐熱性に優れた防菌防カビ消臭性の材料として、銀、銅、亜鉛などの金属を担持させたアルミノケイ酸塩やケイ酸カルシウム(例えば、特許文献1参照)が提案されているが、これらの防菌防カビ消臭性材料は、母材がアルカリ性であるために、これを取り扱う作業員の皮膚や粘膜を侵す怖れがあって取り扱いが容易ではないばかりか、アルミノケイ酸塩の代表であるゼオライト系抗菌剤は、母材ゼオライトの製造工程が煩雑であることから、廉価であるという特徴を欠いた高価な材料にならざるを得ないという問題があった。
また、特定構造の母材トバモライトの層間に銀イオンを担持させることにより、耐熱性、耐水性、機械強度と共に抗菌性とエチレン吸着能を付与した抗菌性材料(例えば、特許文献2参照)が知られているが、経年と共にトバモライトが炭酸化し、それに伴い銀が外部に溶出してしまい、優れた防菌効果が持続できないという問題があった。
一方、軽量気泡コンクリート材料を炭酸ガス雰囲気下で養生することにより吸放湿性に優れた建築材料を製造する方法(例えば、特許文献3参照)についても知られているが、この方法で得られる建築材料は、吸放湿性こそ優れるものの防菌、防カビ、消臭性を有するものではなかった。
特開平1−286913号公報 特開平6−166514号公報 特開平7− 25679号公報
そこで本出願人は、安価で取り扱いが容易であり、優れた防菌、防カビ、消臭性を発揮する無機組成物の取得を目的として検討した結果、ケイ酸カルシウム母材に防菌、防カビ、消臭性を有する金属イオンを担持させ、これを炭酸化することにより前記目的が達成できることを見出し先に特願2005−95521として提案した。
すなわち、ケイ酸カルシウム母材に防菌、防カビ、消臭性を有する金属イオンを接触させると、ケイ酸カルシウムに含まれるカルシウムイオンが前記金属イオンに置換され、さらにこのケイ酸カルシウムを炭酸化すると、母材の細孔中に前記金属イオンが担持された無機組成物が得られ、これにより単に金属イオンを表面に吸着させた無機組成物に較べて母材からの金属の溶出を抑制することができたのである。
また、炭酸化して得られた無機組成物は、平均細孔径の大径側と小径側にそれぞれピークが存在するという特徴的な細孔径分布を示し、この無機組成物を菌・カビ・臭気成分などの被吸着物を含む雰囲気中に置くと、まず被吸着物が細孔内に進入して細孔内面に吸着され、そこに担持されている金属の防菌、防カビ、消臭作用を受けるのである。
そして、細孔径分布の中で大径側の細孔は、無機組成物表面における開口面積を増大させ、被吸着物の無機組成物内への速やかな取り込みのために寄与し、小径側の細孔は、無機組成物の比表面積を増大させ、被吸着物との接触面積を増やして被吸着物の無機組成物への吸着量を増大させるために寄与することから、防菌、防カビ、消臭性能が著しく向上するのである。
一方、被吸着物はその種類により分子の大きさが様々であるから、無機組成物の細孔径分布に応じて吸着できるものとできないものがあり、これにより、細孔径分布の程度に応じてその無機組成物に吸着されるのが最も適した被吸着物の種類が選定される。
しかしながら、本出願人のその後の検討によれば、上記先の提案においては、金属イオンを担持させた無機組成物を次いで炭酸化処理すると、カルシウムイオンが炭酸カルシウムとなって細孔の空隙を膜で覆うことに起因して、無機組成物が当初有していた細孔径分布が変化してしまうため、予め意図していた被吸着物の吸着が困難となり、目的とする被吸着物への適用ができなくなるという問題を包含していることが判明した。
本発明は、上述した先行技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
したがって、本発明の目的は、ケイ酸カルシウム水和物を主成分とする原料粉末が有する当初の細孔径分布をそのまま維持し、当初適用を意図していた被吸着物の適用を阻害することのない防菌防カビ消臭性無機組成物の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために本発明によれば、ケイ酸カルシウム水和物を主成分とする原料粉体を、炭酸ガス雰囲気で養生する炭酸化処理工程に供し、次いでこの炭酸化した原料粉体を防菌防カビ消臭性を有する金属イオンと接触させることにより、前記原料粉体に前記金属イオンを担持させるイオン担持工程に供することを特徴とする防菌防カビ消臭性無機組成物の製造方法が提供される。
なお、本発明の防菌防カビ消臭性無機組成物の製造方法においては、
前記金属イオンが、銀、銅および亜鉛から選ばれた少なくとも一種であること、
前記金属イオンの担持率を、全組成物重量の0.5〜3.0重量%とすること、
前記原料粉体が低結晶性ケイ酸カルシウム水和物粉体であること、
前記原料粉体がトバモライト結晶を含む粉体であること、および
前記原料粉体が軽量気泡コンクリート粉体であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
本発明によれば、以下に説明するとおり、ケイ酸カルシウム水和物を主成分とする原料粉末が有する当初の細孔径分布をそのまま維持し、当初適用を意図していた被吸着物の適用を阻害することのない防菌防カビ消臭性無機組成物を効率的に製造することができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の防菌防カビ消臭性無機組成物の製造方法は、無機ケイ酸カルシウム水和物を主成分とする原料粉体を、炭酸ガス雰囲気で養生する炭酸化処理工程に供し、次いでこの炭酸化した原料粉体を防菌防カビ消臭性を有する金属イオンと接触させることにより、前記原料粉体に前記金属イオンを担持させるイオン担持工程に供することを特徴とする。
本発明において、母材に使用する無機ケイ酸カルシウム水和物を主成分とする原料粉体としては、低結晶性ケイ酸カルシウム水和物粉体、トバモライト結晶を含む粉体および軽量気泡コンクリート粉体などが挙げられる。
低結晶性ケイ酸カルシウム水和物粉体とは、一般にCSHと呼ばれる低結晶性ケイ酸カルシウム水和物を粉砕して得られる粉末のことである。低結晶性ケイ酸カルシウム水和物は、セメントの水和反応やトバモライトの製造過程で得ることができるが、純度や生産性などを考えると、ポゾラン反応性を有するケイ酸質原料と石灰質原料とを混合した原料に水を加え、60〜95℃に加熱しながら混合する方法を採用するのが好ましい。
低結晶性ケイ酸カルシウム水和物の原料となるポゾラン反応性を有するケイ酸質原料としては、アエロジル、シリカヒューム、シラスバルーン、フライアッシュ、ガラス粉末、シリカゲル、ホワイトカーボン、パーライトなどを使用することができる。また、低結晶性ケイ酸カルシウム水和物の原料となる石灰質原料としては、試薬級石灰、あるいはJIS−R−9001に規定される工業用石灰などを使用することができる。
トバモライト結晶を含む粉体とは、合成トバモライトを粉砕して得られる粉末のことである。合成トバモライトとは、軽量気泡コンクリートに含まれているトバモライトのことではなく、軽量気泡コンクリートとは別に、トバモライトの合成を主目的とする工程で製造されたトバモライトのことである。合成トバモライトには、トバモライト以外のものはほとんど含まれておらず、また、その結晶性も高い。
合成トバモライトは、ケイ酸質原料と石灰質原料とを混合した原料に水を加えてオートクレーブ養生することにより得ることができる。具体的には、例えば微粉砕珪石と消石灰とを、CaO/SiO2モル比が0.83になるように調整し、これに20倍の水を加えて183℃、1.01325MPa(10atm)に調整した攪拌オートクレーブ(回転数20r.p.m.)で水熱合成させることにより得ることができる。
合成トバモライトは、できるだけ高純度で結晶性の高いものを得るために、用いる原料の種類や比率が、軽量気泡コンクリートの場合よりも限定される。ケイ酸質原料としては、SiO2 の純度が90%以上、ブレーン比表面積5000cm2/g以上の微粉砕珪石または珪砂を使用するのが好ましい。合成トバモライトの原料となる石灰質原料としては、CaO純度の高さから消石灰が好ましい。消石灰としては、試薬級消石灰、あるいはJIS−R−9001に規定される工業用消石灰などを使用することができる。
軽量気泡コンクリート粉体とは、一般にALCなどと呼ばれる軽量気泡コンクリートを粉砕して得られる粉末のことである。軽量気泡コンクリートは、ケイ酸質原料と石灰質原料とを主原料として、これに金属アルミニウムなどの発泡剤を添加し、さらにこれに水を加えてスラリーとなし、型枠に充填して発泡成形した後、オートクレーブ養生することにより得ることができる。
ケイ酸質原料としては、石英、クリストバライトなどの非晶質シリカ鉱物、珪砂、フライアッシュ、スラグ、シリカフュームなどの内の一種類あるいは二種類以上の混合物を使用することができる。
石灰質原料としては、生石灰、消石灰、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、シリカセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントなどの内の一種類あるいは二種類以上の混合物を使用することができる。軽量気泡コンクリートは、軽量でかつ耐熱性に優れていることから、建築資材として多く用いられている。
軽量気泡コンクリートには、ケイ酸質原料と石灰質原料との反応により生成した結晶性ケイ酸カルシウム水和物(トバモライト)が含まれている。また、その他にも、石灰質原料と反応しなかったケイ酸質原料を起源とするシリカが含まれている。
これら無機ケイ酸カルシウム水和物を主成分とする原料粉体の粒径は、製造工程の効率化および得られる無機組成物の物性への影響を考慮して、0.1μm以上1mm以下とすることが好ましい。粒径が1mmを越えると、炭酸化処理工程あるいはイオン担持工程において、炭酸ガスあるいは金属イオンが粒子の内部に浸透するのに長時間を要することになり、また0.1μm未満の場合には、後述の洗浄工程における洗浄ろ過作業が困難となるからである。
本発明においては、上記原料粉体をまず炭酸化処理工程に供し、次いでイオン担持工程に供することが重要である。
炭酸化処理工程とは、原料粉体を例えば養生用の釜内において炭酸ガスと接触させ、炭酸化反応を行う工程である。
この炭酸化処理工程で使用する炭酸ガスとしては、純度100%の二酸化炭素でも良く、他の気体と混合された混合ガスであっても良い。具体的には市販のドライアイスを気化したもの、燃焼ガス、排気ガスなどを用いることができる。混合ガスを用いる場合には、炭酸ガス濃度が高いほど反応が速く進行するため、二酸化炭素濃度が高い混合ガスの使用が好ましい。
具体的には、二酸化炭素濃度が3%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。二酸化炭素濃度が3%未満では反応速度が遅くなり過ぎるため工業的に適切ではない。混合ガスを用いる場合に二酸化炭素と混合される他のガスとしては、窒素などの不活性ガスや酸素などが好ましい。また、排気ガスを使用する場合には、脱硫、脱硝、集塵などの処理を行ったものを用いるのが適切である。
なお、炭酸化処理温度は特に限定しないが、原料粉体中の水分が炭酸化反応を促進することから、原料粉体中に水分が存在する状態、すなわち0℃以上100℃以下とすることが好ましい。特に炭酸化反応が促進される温度は30〜80℃の範囲であるが、炭酸化反応は発熱を伴い、これにより釜内の温度が上昇するため、反応開始時における釜内の温度をおおよそ60℃以下とすることが望ましい。また、炭酸養生中の圧力も反応速度に大きく影響し、圧力が高いほど反応が促進されるが、工業的には2MPa以下の圧力で行うのが好ましい。
さらに、炭酸化反応をより効率的に行うには、釜内への炭酸ガスの流入に先立ち、予め釜内を真空にする真空工程を設けることにより、原料粉体中の空気を抜き、その後釜内へ高濃度の炭酸ガスを流入する方法を適用することが望ましい。
また、ケイ酸カルシウムをスラリー合成する場合、合成終了後直ちに同容器内に炭酸ガスをバブリングして炭酸化する方法も採用できる。
この炭酸化反応により、ケイ酸カルシウム中のカルシウム成分が炭酸カルシウムとなって原料粉体の細孔を埋めるとともに、カルシウムイオンが溶出した部分が新たな細孔となることにより、細孔径分布が当初よりも変化してしまう。また、炭酸カルシウムとしては、最も安定なカルサイトだけではなく、微細なバテライトも生成する。
本発明においては、上記のような炭酸化処理工程を施した原料粉体を、次いで防菌防カビ消臭性を有する金属イオンと接触させることにより、前記原料粉体に前記金属イオンを担持させるイオン担持工程に供する。
イオン担持工程は、例えば原料粉体と目的とする金属イオンを含む塩の水溶液とを混合することにより、目的とする金属イオンが原料粉体に担持される。
どのような形でこの金属イオンが原料粉体に担持されるかは明確ではないが、おそらく金属炭酸塩が生成されていると考えられる。
ここで使用する金属イオンを含む塩としては、例えば目的とする金属イオンが銀の場合は、硝酸銀、硫酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、ジアンミン銀硝酸塩、ジアンミン銀硫酸塩などが、目的とする金属イオンが銅である場合は、硝酸銅、硫酸銅、過塩素酸銅、酢酸銅、テトラシアノ銅酸カリウムなどが、目的とする金属イオンが亜鉛である場合は、硝酸亜鉛(II)、硫酸亜鉛、過塩素酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛などが、それぞれ挙げられる。
イオン担持工程で使用する金属イオンを含む塩の水溶液のpHを、3以上10以下に調整しておくことが好ましく、5以上7以下に調整しておくことがさらに好ましい。このようにpHを調整しておくことにより、金属の酸化物が炭酸カルシウムの表面または細孔内部へ析出することが抑制されるからである。
原料粉体と金属塩水溶液との混合は、例えば撹拌容器の内部にアジテータなどの撹拌部材を備えた通常のミキサーなどを用いて、バッチ式または連続式で行うことができる。混合温度は、10℃以上80℃以下とすることが好ましく、混合時間は3時間以上24時間以下とすることが好ましい。
イオン担持工程が終了した後は、原料粉体を吸引ろ過しながら水洗した後、乾燥することにより防菌防カビ消臭性を有する無機組成物を得ることができる。洗浄は、ろ液に例えば塩酸や塩化ナトリウム溶液を添加して、塩化銀などによる白濁が生じなくなるまで十分に行うことが望ましい。また、乾燥は、常圧下105〜110℃の温度、あるいは減圧(133.322Pa〜3999.66Pa(1〜30Torr))下70〜90℃の温度で行うことが好ましい。
このイオン担持工程において、原料粉体の細孔空隙を覆っていた炭酸カルシウムの膜が、金属イオン担持させる金属酸により破壊されることで、細孔の空隙がほぼ元の大きさに回復し、原料粉末が有していた当初の細孔径分布がほぼそのまま再現されて維持されることになる。
したがって、当初適用を意図していた被吸着物の適用を阻害することがなく、その無機組成物を目的のとおりの防菌、防カビ、消臭用途へとそのまま適用することが可能となるのである。
本発明で得られた防菌防カビ消臭性無機組成物を使用するに際しては、例えばこの無機組成物の粉粒体を適宜に容器に入れて、処理したい菌、カビ、臭気などを含む雰囲気中に置く。すると、菌、カビ、臭気などの被吸着物は、無機組成物の細孔中に吸着される。このとき、被吸着物を最も効果的に吸着できる細孔径を持つ粉体を採用することによって、防菌、防カビ、消臭性能が著しく向上して、単位時間当たりの処理量の増大が期待できるのである。
また、原料粉体の構造中に防菌防カビ消臭性を有する金属イオンが担持されているから、金属イオンの溶出の抑制が図られ、長時間にわたって防菌防カビ消臭性能が維持できるばかりか、金属イオンの溶出による周囲環境の汚染を防止することができる。さらに、母剤が炭酸カルシウムと非晶質シリカとを主成分とする無機組成物からなるため、従来のアルミノケイ酸塩のようなアルカリ性の母材を使用した抗菌剤組成物に比較して取り扱いが容易であるばかりか、母材を安価に入手できるため、防菌、防カビ、消臭性に優れた無機組成物を低コストで提供することができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳述する。
[実施例1、参考例1、比較例1,2]
原料粉体として、軽量気泡コンクリート(ALC)を切削し、その平均粒子径が0.1〜1.0μmとなるように粉砕・分級したものを使用した。
上記ALC粉体を密閉容器中へ入れ、真空ポンプで容器内を脱気した後、市販の純度99.5%の炭酸ガスを容器内に圧力0.2MPaとなるまで導入し、初期温度25℃で18時間保持することにより炭酸化反応を行った。この炭酸化反応に伴う発熱により、容器内の温度は最終的に60〜70℃となった。
次に、上記炭酸化処理を施したALC粉体1Kgに水を加えて3リットルのスラリーとし、これを9リットルの容器内に入れて50℃に保持した状態で撹拌し、脱気した。さらに、適量の0.5N硝酸水溶液と蒸留水とを加えてpHを7に調整した。
防菌防カビ消臭性を有する金属イオンを含む塩として、硝酸銀特級試薬(米山化学工業社製)を使用し、上記で調整したスラリーに対し、1リットルの硝酸銀水溶液を加え、50℃に保持した状態で18時間撹拌することにより、イオン担持処理を行った。なお、硝酸銀水溶液の濃度は、最終的に得られる無機組成物の全重量に対する銀の重量が0.5重量%となるように調整した。
次いで、イオン担持処理後の銀担持ALC粉体を蒸留水で洗浄・ろ過した。なお、ろ液には塩酸または塩化ナトリウム水溶液を滴下し、塩化銀の沈殿と思われる白濁が観察されなくなるまで洗浄・ろ過を繰り返すことにより過剰の銀を洗い流した。さらに、洗浄終了後の銀担持ALC粉体を減圧下70℃で乾燥することにより、防菌防カビ消臭性を有する無機組成物(実施例1)を得た。この実施例1の無機組成物について、無機組成物の全重量当たりの銀の重量で示される銀の担持率を求めたところ、0.5重量%であった。
ここで、炭酸化処理およびイオン担持処理を行わないALC粉体を参考例1、上記炭酸化処理のみを行いイオン担持処理を行わないで得た無機組成物を比較例1、まず最初にイオン担持処理を行い、洗浄・乾燥した後に炭酸化処理を行って得られた無機組成物を比較例2とする。
上記で得られた4種類の無機組成物について、カンタクローム社製のオートソーブ−1を使用して、ガス吸着法により求めた細孔径分布のグラフを図1に示した。
図1の結果から、本発明の方法により得られた無機組成物(実施例1)は、当初のALC粉体(参考例1)の細孔径分布をほぼそのままに維持していることが明らかである。一方、炭酸化処理のみを行いイオン担持処理を行わないで得た無機組成物(比較例1)およびまず最初にイオン担持処理処理を行い、洗浄・乾燥した後に炭酸化処理を行って得られた無機組成物(比較例2)では、当初のALC粉体(参考例1)に較べて細孔径分布が変化していることが分かる。
また、実施例1の無機組成物0.05gを1.0mlの蒸留水に分散したものを直径10mmの紙性ディスクに含侵し、乾燥したものを被検ディスクとし、JIS Z 2911にしたがってアスペルス・ニガーに対する防カビ試験を行った結果、被検ディスクに胞子液を接種した部位に菌糸の発育は全く認められなかった。
さらに、実施例1の無機組成物を、含まれる銀の総モル量が7.0X10−5molとなるようにシャーレに分注し、このシャーレを20℃、相対湿度50%に設定した100リットルの密閉容器に入れ、容器内を窒素ガスで約0.3ppmに希釈した硫化水素で充満した。
充満完了時を試験開始時刻とし、所定時間ごとに容器内の硫化水素濃度を測定した結果、5分以内に容器内の硫化水素濃度は0.1ppm以下にまで減少した。また、試験開始2時間後に容器内の温度を35℃まで昇温して容器内の硫化水素の濃度上昇を観測した結果、濃度上昇は全く認められなかった。この結果、当初脱臭を意図していた硫化水素の消臭を効果的に達成することができた。
[実施例2、参考例2、比較例3,4]
シリカフュームと消石灰をCaO/SiO2モル比が1.0になるように調整してビーカーに入れた後に、これに20倍の水を加え、80℃に調整したウォータバス内で6時間攪拌することによって低結晶質ケイ酸カルシウム水和物(CSH)を合成した。これを平均粒径が0.1μm〜1mmとなるように粉砕・分級し、原料粉体として使用した。
そして、原料粉末に軽量気泡コンクリート(ALC)を使用した時と同様の方法・条件で、炭酸化処理および金属イオン担持処理を行い、防菌防カビ消臭性を有する無機組成物(実施例2)を得た。
ここで、炭酸化処理およびイオン担持処理を行わないCSH粉体を参考例2、上記炭酸化処理のみを行いイオン交換処理を行わないで得た無機組成物を比較例3、まず最初イオン交換処理を行い、洗浄・乾燥した後に炭酸化処理を行って得られた無機組成物を比較例4とした。
図2の結果から、本発明の方法で得られた無機組成物(実施例2)は、当初のCSH粉体(参考例2)の細孔径分布をほぼそのまま維持していることが明らかである。一方、炭酸化処理のみ行いイオン交換処理を行わないで得た無機組成物(比較例3)およびまず最初イオン交換処理を行い、洗浄・乾燥した後に炭酸化処理を行って得られた無機組成物(比較例4)では、当初のCSH粉体(参考例2)に比べて、細孔径分布が変化していることが分かる。
[実施例3、参考例3、比較例5,6]
微粉砕珪石と消石灰をCaO/SiO2モル比が0.83になるように調整し、これに20倍の水を加え、183℃、10atmに調整した攪拌オートクレーブ(200r.p.m.)で養生することによってトバモライトを合成した。これを平均粒径が0.1μm〜1mmとなるように粉砕・分級し、原料粉体として使用した。
そして、原料粉末に軽量気泡コンクリート(ALC)を使用した時と同様の方法・条件で、炭酸化処理および金属イオン担持処理を行い、防菌防カビ消臭性を有する無機組成物(実施例3)を得た。
ここで、炭酸化処理およびイオン担持処理を行わないCSH粉体を参考例3、上記炭酸化処理のみを行いイオン交換処理を行わないで得た無機組成物を比較例5、まず最初イオン交換処理を行い、洗浄・乾燥した後に炭酸化処理を行って得られた無機組成物を比較例6とした。
図3の結果を見ると、本発明の方法で得られた無機組成物(実施例3)は、当初のトバモライト粉体(参考例3)の細孔径分布をほぼそのまま維持している。一方、炭酸化処理のみ行いイオン交換処理を行わないで得た無機組成物(比較例5)およびまず最初イオン交換処理を行い、洗浄・乾燥した後に炭酸化処理を行って得られた無機組成物(比較例6)では、当初のトバモライト粉体(参考例3)に比べて、細孔径分布が変化していることが分かる。
以上説明したように、本発明によれば、ケイ酸カルシウム水和物を主成分とする原料粉末が有する当初の細孔径分布をそのまま維持し、当初適用を意図していた被吸着物の適用を阻害することのない防菌防カビ消臭性無機組成物を効率的に製造することができる。
さらに、得られた防菌防カビ消臭性無機組成物は、防菌、防カビ、消臭性能が著しく向上して、単位時間当たりの処理量の増大し、かつ長時間にわたって防菌防カビ消臭性能が維持できるばかりか、金属イオンの溶出による周囲環境の汚染を防止することができる。
また、従来のアルミノケイ酸塩のようなアルカリ性の母材を使用した抗菌剤組成物に比較して取り扱いが容易であり、母材を安価に入手できるため、各種防菌、防カビ、消臭用途に対し広く活用することができる。
ALC粉体の実施例における無機組成物の細孔径分布を示すグラフである。 CSH粉体の実施例における無機組成物の細孔径分布を示すグラフである。 トバモライト粉体の実施例における無機組成物の細孔径分布を示すグラフである。

Claims (5)

  1. ケイ酸カルシウム水和物を主成分とする原料粉体を、炭酸ガス雰囲気で養生する炭酸化処理工程に供し、次いでこの炭酸化した原料粉体を防菌防カビ消臭性を有する金属イオンと接触させることにより、前記原料粉体に前記金属イオンを担持させるイオン担持工程に供することを特徴とする防菌防カビ消臭性無機組成物の製造方法。
  2. 前記金属イオンが、銀、銅および亜鉛から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の防菌防カビ消臭性無機組成物の製造方法。
  3. 前記原料粉体が低結晶性ケイ酸カルシウム水和物粉体であることを特徴とする請求項1または2に記載の防菌防カビ消臭性無機組成物の製造方法。
  4. 前記原料粉体がトバモライト結晶を含む粉体であることを特徴とする請求項1または2に記載の防菌防カビ消臭性無機組成物の製造方法。
  5. 前記原料粉体が軽量気泡コンクリート粉体であることを特徴とする請求項1または2に記載の防菌防カビ消臭性無機組成物の製造方法。
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