JP4888927B2 - セラミックグリーンシートの製造方法、積層セラミック電子部品の製造方法およびセラミックグリーンシート用キャリアシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はセラミックグリーンシートの製造方法に関する。また、本発明は、前記セラミックグリーンシートの積層体の製造工程を含む、積層セラミック電子部品の製造方法、また当該セラミックグリーンシートの製造方法に用いられるセラミックグリーンシート用キャリアシートに関する。さらには、本発明は、前記積層セラミック電子部品の製造方法により得られた積層セラミック電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックコンデンサやインダクタのような積層セラミック電子部品は、内部に電極を必要とするため、内部電極を設けたセラミックグリーンシートの所定枚数を積層し、加熱焼成し、さらに外部電極を端部に塗布することにより製造している。特に、積層セラミックコンンデンサなどは小型化、高性能化が要求されるために、限られた厚みの中で前記セラミックグリーンシートの積層数をより多くする必要がある。そのため、セラミックグリーンシートの厚みを薄くするなどして、その積層回数を増やしている。
【0003】
セラミックグリーンシートの積層法としては、セラミックグリーンシート上に、内部電極となる電極パターンを形成した後に、セラミックグリーンシートの所定枚数を積層する方法がある。しかしながら、この方法ではセラミックグリーンシート上に電極を印刷する工程を経るため、電極分の厚みにより凸部を生じ、積層数を増やすことでその厚み分が積算され、セラミックグリーンシート同士のズレなどが生じて理想とする積層精度を達成することができない。また、セラミックグリーンシートを積層した後には一体化を計るために高い圧力でプレスを行うが、この際、電極のある部分と電極ない部分とで受ける圧力の違いにより、剥がれなどが生じる可能性が高く、欠陥や歩留まりの低下を招く。
【0004】
上記セラミックグリーンシートの積層法の問題を解決した方法として、たとえば、キャリアシート上に、内部電極となる電極パターンを形成した後に、セラミックスラリーによりセラミックグリーンシートを形成し、次いで、得られたセラミックグリーンシートを他のセラミックグリーンシートに積層する操作を繰り返す方法が提案されている(特開平6−61090号公報等)。かかる方法で得られるセラミックグリーンシートは、その内部に電極が埋め込まれたいるため、電極の凸部が無く、理想的な積み重ねや薄膜化が可能となる。また積層後のプレス工程で生じていた圧力むらが無くなり、より良い一体化が製品の良品化率が向上し、高積層化による高性能化を図ることができる。
【0005】
前記セラミックグリーンシートの積層方法では、最終的には剥離されるキャリアシート上にセラミックグリーンシートが形成されるため、キャリアシートには得られたセラミックグリーンシートから容易に剥離することができる剥離性が要求される。さらには、キャリアシートには、内部電極となる電極パターンを形成する際に電極のズレがないようにパターン精度を確保することが要求される。しかし、従来知られているセラミックグリーンシート用キャリアシートで前記要求を満足するものは知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、パターン精度よく電極を形成でき、しかもセラミックグリーンシートの形成後にはキャリアシートを容易に剥離することができるセラミックグリーンシートの製造方法、すなわち、内部電極の埋め込まれた高精度のセラミックグリーンシートを効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、前記セラミックグリーンシートの製造方法により製造したセラミックグリーンシートを積層して積層セラミック電子部品を製造する方法を提供すること、さらには、当該製造方法により作製される積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記セラミックグリーンシートの製造方法、積層セラミック電子部品の製造方法に用いるセラミックグリーンシート用キャリアシートを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下のセラミックグリーンシート用キャリアシートを用いた方法により、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ベースフィルムの片側に加熱剥離粘着層を有するキャリアシートの当該加熱剥離粘着層上に、所定の電極パターンを形成した後、当該電極パターンの形成された加熱剥離粘着層上にセラミックスラリーによりセラミックグリーンシートを成形するセラミックグリーンシートの製造方法であって、前記加熱剥離粘着層が、熱膨張性微粒子を含有し、加熱することにより発泡して剥離が容易になるものであることを特徴とするセラミックグリーンシートの製造方法、に関する。
【0011】
上記本発明のセラミックグリーンシートの製造方法では、キャリアシートに剥離性を付与するために、シリコーン処理等により剥離処理されたフィルムを使用する代わりに、加熱剥離粘着層を有するキャリアシートを用いている。前記キャリアシートの加熱剥離粘着層は、加熱により容易に剥離性を示すものであり、セラミックグリーンシートを形成または積層した後に加熱することにより、セラミックグリーンシートとキャリアシートとを容易に分離することができる。また、加熱剥離粘着層は、ある程度の粘着性を示し、セラミックスラリーを塗布することによるセラミックグリーンシートの成形工程では塗布時の濡れ性を確保しており、形成した内部電極パターンの位置精度を崩すことなく、キャリアシート側にパターン精度よく電極パターンを形成したグリーンシートを製造できる。
【0012】
前記セラミックグリーンシートの製造方法において、キャリアシートの加熱剥離粘着層が、加熱することにより発泡して剥離が容易になるものが好ましい。加熱剥離粘着層が加熱により発泡するとキャリアシートとセラミックグリーンシートと接着面積が減少して粘着力が小さくなりキャリアシートとセラミックグリーンシートを容易に分離できる。このようなキャリアシートの加熱剥離粘着層は、たとえば、粘着層中に熱膨張性微粒子を含有させたものを好適に用いることができる。
【0013】
前記セラミックグリーンシートの製造方法において、加熱剥離粘着層を形成する粘着剤の動的弾性率が、23℃〜150℃において、5×103 〜1×106 Paの範囲にあることが好ましい。
【0014】
キャリアシートの加熱剥離粘着層を形成する粘着剤は、内部電極をパターン精度よく形成するため、また、セラミックグリーンシートの製造後には加熱により容易に剥離できることを考慮して、前記範囲に動的弾性率を有するの高弾性ポリマーであることが好ましい。前記動的弾性率が小さくなると、加熱剥離粘着層に含ませる熱膨張性微粒子が膨張時に流動化して加熱発泡による接着面積の減少効果に乏しくなり、キャリアシートを剥離しにくくなる傾向にあるため、前記動的弾性率は、5×103 Pa以上、さらには5×104 Pa以上とするのが好ましい。一方、前記動的弾性率が大きくなると、導電ペースト等による電極印刷後にセラミックスラリーを塗布する際、電極ズレなどが生じてパターン精度を損なう傾向がある。また、電極を金属箔の転写(移し変え)で行う場合にも、前記動的弾性率が大きな高弾性率のものは、転写不良を起し、精度の良い電極パターンが得られなくなってしまう傾向があるため、前記動的弾性率は1×106 Pa以下、さらには8×105 Pa以下に調整するのが好ましい。なお、前記動的弾性率は、動的粘弾性測定装置 レオメトリックスARESスペクトロメーター(周波数1Hz,サンプル厚2mm,圧着加重100g)で測定した値である。
【0015】
また本発明は、前記製造方法によりセラミックグリーンシートを製造した後、得られたセラミックグリーンシートを他のセラミックグリーンシート上に積層する工程、およびセラミックグリーンシートから加熱によりキャリアシートを剥離する工程を含むことを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法、に関する。
【0016】
前記製造方法により製造したセラミックグリーンシートは、加熱により容易にキャリアシートと剥離して、分離することができ、またセラミックグリーンシートの積層体は電極ズレがなく高精度のものが得られる。
【0017】
また本発明は、前記セラミックグリーンシートの製造方法または前記積層セラミック電子部品の製造方法に用いられる、ベースフィルムの片側に加熱剥離粘着層を有するセラミックグリーンシート用キャリアシート、に関する。
【0018】
かかるセラミックグリーンシート用キャリアシートを用いることにより、パターン精度よく内部電極を形成でき、しかもキャリアシートはセラミックグリーンシートから容易に剥離でき、効率的にセラミックグリーンシート、その積層体、さらには積層セラミック電子部品を製造できる。
【0019】
さらに本発明は、前記積層セラミック電子部品の製造方法により得られた積層セラミック電子部品、に関する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態についての詳細を図面を参照しながら説明する。 図1は、ベースフィルム1aの片側に加熱剥離粘着層1bを有するセラミックグリーンシート用キャリアシート1である。
【0021】
キャリアシート1の基材であるベースフィルム1aとしては、各種プラスチックフィルムを特に制限なく使用できるが、一般的にはポリエステルフィルムを用いるのが好適である。その他のプラスチックフィルムとしては、たとえば、ポリイミドフィルム、ポリメチルペンテン、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどの耐熱性を兼ね備えたフィルムを用いるのが好ましい。また、ベースフィルム1aとしてはプラスチックフィルムの他、紙基材、金属箔や、これらを複合したフィルムを用いることもできる。ベースフィルム1aの厚さは、通常10〜200μm程度である。
【0022】
加熱剥離粘着層1bの形成材としては、形成する電極パターンを固定するため、通常、若干の粘着性を有するベースポリマーを含む粘着剤が用いられる。前記ベースポリマーとしては、たとえば、天然ゴム、合成ゴム、アクリル系ポリマー等があげられる。なお、アクリル系ポリマーは、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステル(アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2 −エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基の炭素数1〜20のアルキル基があげられる)を主成分として、これらにアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、N−メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、スチレン、イソプレン、ブタジエン、イソプレン、ビニルエーテル等を共重合したものなどがあげられる。
【0023】
また、前記粘着剤にはベースポリマーに加えて架橋剤を適宜に加えることもできる。架橋剤の具体例としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系化合物や金属塩系化合物、金属キレート系化合物、アミノ樹脂系化合物や過酸化物などの加硫剤があげられる。さらに、粘着剤層を形成する粘着剤には、必要により、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤、充填剤、老化防止剤、着色剤等の慣用の添加剤を含有させることができる。
【0024】
前記粘着剤により形成する加熱剥離粘着層1bに加熱剥離性を付与するため、粘着剤には熱膨張性微粒子を配合して使用することができる。熱膨張性微粒子の平均粒子径は1〜25μm程度のものが好ましい。平均粒子径が小さいと、加熱により剥離に必要な接着面積の減少を得がたい。また、平均粒子径があまり大きな粒子径のものを使用すると、セラミックスラリーを塗布して作成するグリーンシート2に対して、表面の平滑性を損なうなどして、欠陥となり得る。平均粒子径は、より好ましくは5〜15μmであり、特に10μm程度のものが好ましい。熱膨張性微粒子としては、加熱下に膨張する素材を特に制限なく使用できるが、たとえば、ブタン、プロパン、ペンタンなどの如き低沸点の適宜のガス発泡性成分をインサイト重合法等により、塩化ビニリデン、アクリロニトリル等の共重合物の殻壁でカプセル化した熱膨張性マイクロカプセルを用いることができる。熱膨張性マイクロカプセルは、前記粘着剤との分散混合性に優れているなどの利点も有する。熱膨張性マイクロカプセルの市販品としては、たとえば、マイクロスフェアー(商品名:松本油脂社製)などがあげられる。
【0025】
前記粘着剤に対する熱膨張性微粒子(熱膨張性マイクロカプセル)の配合量は、前記キャリアシート1を容易に剥離しうる程度まで粘着力を低下できる量を、前記粘着剤の種類に応じて、適宜に決定することができるが、一般的には、ベースポリマー100重量部に対して、1〜100重量部程度、好ましくは5〜50重量部、更に好ましくは10〜40重量部である。加熱剥離粘着層1bの厚さは、通常5〜150μm程度である。好ましくは20〜80μm程度である。
【0026】
本発明のキャリアシート1は、ベースフィルム1a上に若干粘着性のある加熱剥離粘着層1bが形成されたものであるが、その作成方法は特に制限されない。たとえば、ベースフィルム1aに、直接、前記粘着剤を塗布して加熱剥離粘着層1bを形成する方法のほか、容易に剥離可能なセパレータ、剥離処理を施したフィルム上に前記粘着剤を塗布して加熱剥離層1bを形成した後、これをベースフィルム1a上に移着させる方法などを採用することもでき、適宜に方式を選んで作成することができる。
【0027】
本発明のセラミックグリーンシート2の製造方法は、まず、図2のように前記キャリアシート1に形成された加熱剥離粘着層1bに、所定の電極パターン2aを形成した後、図3のように当該電極パターン2aの形成された加熱剥離粘着層1b上に、電極パターン2aを覆うようにセラミックスラリーを塗布、乾燥してセラミックバインダー層2bを形成することにより行う。
【0028】
電極パターン2aの形成方法は特に制限されず、たとえば、内部電極となる導電ペーストを印刷する方法があげられる。導電ペーストとしては、パラジウム合金またはニッケル等を主体とした導電ペーストがあげられ、印刷方法としてはスクリーン印刷法等があげられる。電極パターン2aの厚みはできるだけ薄層にすることが望ましい。乾燥後の厚みとして、通常1〜1.5μmとなるように調整するのが望ましい。また、電極パターン2aの形成方法としては、パターン化された箔状金属を、キャリアシート1の加熱剥離粘着層1bの粘着性を利用して転写する方法等を採用できる。更に薄膜からなる電極パターン2aを得るためには、パターンメッキまたはパターン蒸着を利用することができる。
【0029】
セラミックバインダー層2bを形成するセラミックスラリーとしては、チタン酸バリウムやチタン酸カルシウムなどのセラミック原料粉末と有機バインダーを含んでなり、希釈用溶剤などにより粘度調整されたスラリーが用いられる。セラミックスラリーの塗布法は一般的なシート成形方法を採用でき、たとえば、ドクターブレード法、リバースコート法などにより行うことができる。乾燥後のセラミックグリーンシート2の厚みは、2〜5μm程度が好ましく、乾燥後の厚みが前記範囲になるように均一に塗布する。なお、セラミックスラリーの乾燥温度は、加熱剥離粘着層1b中の熱膨張性微粒子が乾燥時の熱により、膨張しない程度の温度であり、通常80℃程度以下で溶剤分を乾燥させるようにするのが好ましい。
【0030】
こうして図3に示すような、キャリアシート1の加熱剥離粘着層1b面に、所定パターンで内部電極となる金属パターン2aを配列し、かつ両面とも平滑となるセラミックグリーンシート2が形成される。セラミックグリーンシート2は電極2aと一体に、キャリアシート1と分離するため、電極2aによる凸部はできない。セラミックグリーンシート2は厚みが一定で平滑面同士の積層となるので、重ね合わせが容易で、積算による厚みの影響を気にすることなく、低圧力でのプレスで高積層ができる。
【0031】
図3に示す、キャリアシート1上に形成されたセラミックグリーンシート2は、図4または図5に示すように、他のセラミックグリーンシートと積層してセラミックグリーンシート積層体とするが、その際には加熱によりセラミックグリーンシート2からキャリアシート1を剥離する。
【0032】
たとえば、図4(a)のように、キャリアシート1とセラミックグリーンシート2を、一般的な加熱装置を用いて分離した後、セラミックグリーンシート2のみを吸着して、図4(b)のようにセラミックグリーンシート2を順次に積み重ねて積層する方法があげられる。図4(b)では、ベースとなるセラミックグリーンシート3上にセラミックグリーンシート2をまず積層し、順次にセラミックグリーンシート2を積層している。キャリアシート1を剥離し、分離する際の加熱温度は特に制限されないが、通常、90〜150℃程度である。
【0033】
また、図5(a)のようにセラミックグリーンシート2を、ベースのセラミックグリーンシート3上に重ね合わせた後、熱プレスを用いて圧着加熱することで、図5(b)(c)のようにセラミックグリーンシート2を転写して積層するとともに、キャリアシート1を剥離する方法があげられる。その後、この操作を順次、繰り返して電極パターンを精度良く合わせて、圧着加熱を繰り返してセラミックグリーンシート2積層する。圧着加熱の条件は特に制限されないが、通常、20〜50℃程度、1×105 〜1×108 Pa程度のような条件である。
【0034】
前記セラミックグリーンシート2の積層にあたっては、予め、セラミックグリーンシート2をキャリアシート1ごと、精度良く打ち抜いた後に、順次に積層とキャリアシート1を剥離を行うことにより、積層時の重ね合わせ精度をコントロールすることもできる。
【0035】
前記セラミックグリーンシート積層体は、これを切断してチップ化する工程、チップを焼成する工程、さらにはチップに外部電極を形成する工程を施すことにより積層セラミックコンデンサ等の電子部品となる。
【0036】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。なお、各例中の部、%は重量基準である。
【0037】
実施例1
アクリル酸エチル50重量部、アクリル酸ブチル50部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル1部を共重合して得られた共重合体からなるポリマー100部(固形分40%のトルエン溶液を換算)に、イソシアネート系架橋剤5部を加えて、架橋後の動的弾性率を、5×105 Paに調整した弾性体(溶液)を調製した。前記弾性体(固形分)100部に対し、平均粒子径15μmの熱膨張性微粒子(松本油脂社製,マツモトマイクロスフエアーF−50D)30部を分散配合して加熱剥離粘着剤を調製した。加熱剥離粘着剤を、厚さ50μmのポリエステルフィルム上に塗布、乾燥して、加熱剥離粘着層50μmのキャリアシートを作製した。
【0038】
比較例1
実施例1において、粘着剤中に熱膨張性微粒子を含有させなかったこと以外は実施例1と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0039】
(粘着力の測定)
実施例または比較例で得られたキャリアシートの常温(23℃)での粘着力(N/20mm)と加熱後の粘着力(N/20mm)を調べた。粘着力はステンレス板(SUS304BA)に対する粘着力である。加熱後の粘着力は、キャリアシートをステンレス板に貼り合わせた後、130℃の加熱炉に3分間投入した後の粘着力である。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(セラミックグリーンシートおよびその積層体の製造)
実施例または比較例で得られたキャリアシート上へ、スクリーン印刷法を用いて、導電ペーストを所定のパターン状に塗布し、加熱剥離粘着層中の熱膨張微粒子が膨張しない温度(70℃)で加熱乾燥を行った。その上から、セラミックスラリーとして、アクリル系樹脂をバインダーとしたチタン酸バリウムを、アプリケーターを使用して塗布し、乾燥して、厚さ3μmのセラミックグリーンシートを製造した。得られたセラミックグリーンシートを、別途、前記同様のセラミックスラリー(アクリル系樹脂をバインダーとしたチタン酸バリウム)により形成されたベースのセラミックグリーンシート(厚さ30μm)にハンドローラで貼り合わせた後、ヒートシール機(熱圧着プレス)で130℃で20秒間、5×105 Paの圧力で圧着して、セラミックグリーンシートを積層するとともに、加熱発泡により剥がれるキャリアシートを取り除いた。更にこの上に同様にして、セラミックグリーンシートを10層積層した。セラミックグリーンシート積層体について以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0042】
(電極ズレ)
得られたセラミックグリーンシートを積層体を切断し、内部の電極パターンの寸法にズレが発生しているか否かを確認した。
【0043】
(積層性:剥離性)
セラミックグリーンシートを積層する際に、キャリアシートの剥離が良好に行われるか否かを評価した。
【0044】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】セラミックグリーンシート用キャリアシートの断面図である。
【図2】セラミックグリーンシート用キャリアシート上に内部電極を形成した場合の断面図である。
【図3】セラミックグリーンシート用キャリアシート上にセラミックグリーンシートを形成した場合の断面図である。
【図4】セラミックグリーンシートとキャリアシートを分離して製造したセラミックグリーンシート積層体の断面図である。
【図5】セラミックグリーンシートとキャリアシートを分離して製造したセラミックグリーンシート積層体の断面図である。
【符号の説明】
1 キャリアシート
1a ベースフィルム
1b 加熱剥離粘着層
2 セラミックグリーンシート
2a 内部電極
2b セラミックバインダー層
3 ベースのセラミックグリーンシート
Claims (4)
- ベースフィルムの片側に加熱剥離粘着層を有するキャリアシートの当該加熱剥離粘着層上に、所定の電極パターンを形成した後、当該電極パターンの形成された加熱剥離粘着層上にセラミックスラリーによりセラミックグリーンシートを成形するセラミックグリーンシートの製造方法であって、
前記加熱剥離粘着層が、熱膨張性微粒子を含有し、加熱することにより発泡して剥離が容易になるものであることを特徴とするセラミックグリーンシートの製造方法。 - 加熱剥離粘着層を形成する粘着剤の動的弾性率が、23℃〜150℃において、5×103〜1×106Paの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法によりセラミックグリーンシートを製造した後、得られたセラミックグリーンシートを他のセラミックグリーンシート上に積層する工程、およびセラミックグリーンシートから加熱によりキャリアシートを剥離する工程を施すことを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
- 請求項1または2に記載のセラミックグリーンシートの製造方法または請求項3記載の積層セラミック電子部品の製造方法に用いられる、ベースフィルムの片側に加熱剥離粘着層を有するセラミックグリーンシート用キャリアシートであって、
前記加熱剥離粘着層が、熱膨張性微粒子を含有し、加熱することにより発泡して剥離が容易になるものであるセラミックグリーンシート用キャリアシート。
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