JP2004168556A - セラミックグリーンシート及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】PETフィルム及び金型との離型性が高く、寸法精度の高いグリーンシート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】セラミック粉末と有機樹脂からなるセラミックグリーンシートにおいて、前記有機樹脂のガラス転移点が−20〜0℃、該セラミックグリーンシートの少なくとも一方の主面の表面粗さRaが0.1〜0.9μmであり、前記セラミックグリーンシートの一主面に、温度50℃、圧力3.4MPaで5秒間圧着して付着させた幅50mm、表面粗さRaが0.1μmのPETフィルムを引剥す時の応力が400mN以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】セラミック粉末と有機樹脂からなるセラミックグリーンシートにおいて、前記有機樹脂のガラス転移点が−20〜0℃、該セラミックグリーンシートの少なくとも一方の主面の表面粗さRaが0.1〜0.9μmであり、前記セラミックグリーンシートの一主面に、温度50℃、圧力3.4MPaで5秒間圧着して付着させた幅50mm、表面粗さRaが0.1μmのPETフィルムを引剥す時の応力が400mN以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、グリーンシートに関し、特に、セラミック多層回路基板の絶縁層形成に用いられるグリーンシートの金型への付着を抑制し、寸法精度に優れたグリーンシート及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来から、半導体素子を搭載するセラミック多層基板やセラミックパッケージとして用いられるグリーンシートは、厚みが200μmを越えるため、ドクターブレード法や押出し成形法等のいわゆるテープ成形法により、紙製のキャリアシート上にテープ状に形成されてきた。
【0003】
このように、グリーンシートの厚みが大きい場合に用いられた紙製のキャリアシートは、表面粗さが大きく、キャリアシートの強度も大きいため、グリーンシートを剥離する際の寸法精度が高い。その結果、キャリアシートを剥離したグリーンシートは、接触する加工用金型やテーブル等と付着することもなく、取扱いが容易であるという特徴を有している。
【0004】
しかし、近年、半導体素子の高集積化、高機能化、小型化に伴い、絶縁層の薄層化によるコンデンサ等の機能内蔵型の基板が要求され、これに伴ってグリーンシートの薄層化が行われている。例えば、200μm以下、特に120μm以下の薄いグリーンシートを形成することが必要となっている。
【0005】
このような薄層のグリーンシートを紙製キャリアシート上に形成しようとすると、厚みのバラツキが大きくなるという問題が発生する。そこで、厚み精度を改善するため、キャリアシートとしてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、このPET上に薄層のグリーンシートを形成した後、所望の形状に打抜き、配線形成、加圧積層することが行われるようになった。
【0006】
しかし、PETフィルムを用いて作製した薄層のグリーンシートは、添加物として有機樹脂と可塑剤を含むため、キャリアシートとの付着力が高く、グリーンシートをキャリアシートから剥離する際に伸びて基板寸法や配線寸法の精度が悪化するばかりか、グリーンシートが破損するという問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
そこで、シリコーン離型層をキャリアシート表面に形成することによって、セラミック粉末と、結合剤と、可塑剤とからなるスラリーを塗布し、乾燥させて得られたグリーンシートが、キャリアシートから剥離する際の剥離強度が低減され、剥離時に発生する上記の問題を改善されることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−221889号公報
【特許文献2】
特開2000−25163号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載されたグリーンシートは、キャリアシートから容易に剥離できるものの、その後の打抜き加工工程、配線形成工程及び加圧積層工程等において、キャリアフィルムに接していたグリーンシート主面が金型に付着するため、グリーンシートが伸びて基板寸法や配線寸法精度が低く、破れやクラックが発生するため取扱いが容易ではないという問題があった。
【0010】
従って、本発明は、PETフィルム及び金型との離型性が高く、寸法精度の高いグリーンシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、グリーンシートに含まれる有機成分がPETフィルムとの表面付近に偏在し、PETフィルムや金型との付着性を高め、その結果、グリーンシートの寸法精度を低下させ、或いはグリーンシートの破損を改善するとの新規な知見に基づくもので、有機成分及びグリーンシートの表面粗さを制御することにより、PETフィルム及び金型との離型性が高く、厚みバラツキを抑制して寸法精度の高いグリーンシート及びその製造方法を提供するものである。
【0012】
特に、有機成分としてガラス転移点を制御した有機樹脂を用い、更にその含有量を制御することによって、グリーンシートの結合性と可塑性を調整し、剥離強度を低減したグリーンシートを実現したものである。
【0013】
即ち、本発明のセラミックグリーンシートは、セラミック粉末と有機樹脂とからなるセラミックグリーンシートにおいて、前記有機樹脂のガラス転移点が−20〜0℃、該セラミックグリーンシートの少なくとも一方の主面の表面粗さRaが0.1〜0.9μmであり、前記セラミックグリーンシートの一主面に、温度50℃、圧力3.4MPaで5秒間圧着して付着させた幅50mm、表面粗さRaが0.1μmのPETフィルムを引剥す時の応力が400mN以下であることを特徴とするものである。
【0014】
特に、前記有機樹脂が、単一の単量体の重合体、或いは複数種の単量体の共重合体であることが好ましい。これにより、有機樹脂のガラス転移点を調整し、種々のテープ特性を得ることができる。
【0015】
また、前記有機樹脂が、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体であることが好ましい。これにより、焼成時における有機樹脂の良好な熱分解性を確保できる。
【0016】
さらに、セラミックグリーンシートが可塑剤を含有しないことが好ましい。これにより、グリーンシートのPETフィルム近傍に顕著に偏在する可塑剤を含まないため、PETフィルムや金型等との剥離性を効果的に高めることができる。
【0017】
また、前記セラミック粉末87〜92.6質量%と、前記有機樹脂7.4〜13質量%とからなることが好ましい。これにより、結合剤及び可塑剤としての役割を同時に且つ効果的に果たすことが容易となり、グリーンシートに発生するクラックや配線層の断線を効果的に防止するとともに、グリーンシートが金型へ付着することをより改善することができる。
【0018】
さらに、前記セラミック粉末が、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素及びチタン酸塩のうち少なくとも1種を主成分とするセラミック粉末、又はガラス粉末を含む低温焼結性のセラミック粉末であることが好ましい。これによって、機械特性に優れる配線基板、誘電特性に優れる配線基板、配線層の低抵抗化に優れる配線基板の作成が可能となる。
【0019】
また、本発明のセラミックグリーンシートの製造方法は、セラミック粉末と、ガラス転移点が−20〜0℃の有機樹脂とを溶媒中で混合してスラリーを作製し、しかる後に表面粗さRaが0.8μm以下であるPETフィルムの表面に塗工し、前記スラリーをシート状に成形することを特徴とするものであり、これにより、上記のセラミックグリーンシートを得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミックグリーンシートは、含有する有機成分を制御することが重要であり、有機樹脂の種類及びその特性を調整し、結合剤と可塑剤とを兼ねる有機樹脂を含むことによって、グリーンシートがPETフィルムや加工時の金型、更には装置やテーブルに付着することによる変形を防止し、クラックや破損を抑制したものであり、その結果、焼成して得られるセラミック多層基板の寸法精度を改善することができる。
【0021】
即ち、本発明では、セラミック粉末のガラス転移点(Tg)が−20〜0℃の有機樹脂とがセラミックグリーンシートに含まれることが重要である。Tgが−20℃よりも低いと樹脂の粘着性が高くなり、グリーンシートの付着性が高くなり過ぎるため、PET樹脂や金型への付着によるグリーンシートの破損が増加する。また、0℃よりも高い場合、グリーンシートの柔軟性が低下硬化し、打抜き等の加工時にクラックが発生する。離型性と加工性とを併せ持ち、寸法精度の高いセラミックグリーンシートを得るため、有機樹脂のTgは−15〜−5℃が好ましい。
【0022】
このような有機樹脂は、薄層のセラミックグリーンシートを作製する場合に、PETフィルムとの接触面近傍に偏在する有機成分の量を顕著に低減し、その結果、優れた離型性を示すことが可能となる。
【0023】
本発明に用いる有機樹脂は、単量体の重合体、或いは複数種の共重合体であることが好ましい。有機樹脂が1種の有機樹脂の単量体の重合体である場合、樹脂が均一である為安定したテープ特性が得られるという効果がある。また、複数種の共重合体である場合、種々のガラス転移点を持つ有機樹脂を組み合わせることでテープの強度や伸度を任意に調整できるという効果がある。
特に、個々の単量体のTgが−60℃から100℃の範囲に含まれる有機樹脂を複数選択し、これらの種々のTgを持つ単量体を共重合させることにより、有機樹脂全体としてのTgを−20〜0℃にすることができる。このような共重合体は、グリーンシートの柔軟性を確保するとともに、金型との付着性を効果的に低減することができる。
【0024】
有機樹脂は熱分解性に優れるアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルモノマーの重合体又は両者の共重合体であることが良い。非酸化性雰囲気で脱バインダーから磁器の焼結までを一連の連続した工程で完了させるためには、一般的用いられるブチラール樹脂等では残留炭素の影響で、充分な磁気特性を得ることができず、磁器の膨れ、割れが発生する為である。
【0025】
例えば、上記の有機樹脂として、単量体としては、MMA(メチルメタクリレート)、EA(エチルアクリレート)、nBMA(n−ブチルメタクリレート、iBMA(i−ブチルメタクリレート)、2EHMA(2−エチルヘキシルメタクリレート)、又は、LMA(ラウリルメタクリレート)等を例示できる。重合体としては、上記単量体を用いたアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体を例示することができる。これらの重合体は、低熱分解という特徴を有し、焼成時の残留カーボンによる磁気特性のバラツキ低減や、積層間の剥離に効果がある。
【0026】
本発明によれば、セラミックグリーンシートが可塑剤を特に含まないことが好ましい。可塑剤は、セラミックグリーンシートの可塑性を高め、シートの打抜き、配線パターンがもたらす表面凹凸への良好な追従性のためのものであるが、乾燥時にセラミックグリーンシートのPETフィルムとの接触面付近に沈積しやすいため、上記の有機樹脂がグリーンシートに可塑性を付与させるため、可塑剤を特に含む必要がない。
【0027】
ここで、可塑剤とは、スラリー又はグリーンシートの可塑性を高めるためのもので、特に代表的なものとしては、DBP(フタル酸ジブチル)、DOP(フタル酸ジオクチル)、又はBBP(フタル酸ブチルベンジル)等を例示できる。
【0028】
本発明によれば、上述のようにガラス転移点を制御した有機樹脂を使用することが重要であるが、更にそのような樹脂を使用した上でグリーンシートの一主面に接着したPETフィルムの引き剥がし強度が400mN以下であることが重要である。400mNより大きい場合には、グリーンシートがPETシートや加工用金型との離型性が悪く、グリーンシートが破壊されたり、伸びすぎて寸法精度が低下する。このような問題を、引き剥がし強度を400mN以下にすることにより解決できる。剥離をより容易にするため、引き剥がし強度は350mN以下、更には300mN以下が好ましい。
【0029】
本発明における引き剥がし強度の測定は、以下のように規定するものである。即ち、グリーンシートの一主面に対して、表面粗さ0.1μm、厚み50μmのPETフィルムを、50℃の温度で、3.4MPaの圧力で5秒間加圧して圧着する。しかる後に、室温に5時間放置する。このようにして得られたグリーンシートに対して、PETフィルムを90°の角度、200mm/秒の剥離速度で引き剥がし、その時の最大引き剥し力を測定し、これを引き剥がし強度とする。
【0030】
セラミック粉末は、特に限定されるものではないが、一般に用いられる酸化アルミニウム、絶縁性、熱伝導、強度の点で優れる窒化アルミニウム、窒化珪素、コンデンサ等の機能内蔵に有用なチタン酸塩を主成分とするセラミック粉末であることが好ましい。上記セラミックスを用いることにより、機械特性に優れる配線基板、誘電特性に優れる配線基板の作成が可能となる。
【0031】
また、ガラス粉末を含む低温焼結性のセラミック粉末であることが好ましい。このようにガラス粉末をセラミックス中に含有させることによって、低温焼成が可能なセラミックスを合成でき、その結果、例えば配線層の低抵抗化の点で有利なガラス粉末を含む低温焼結性の混合粉末等を選択でき、特に配線層の低抵抗化に優れる配線基板を実現できる。
【0032】
このようなセラミック粉末が87〜92.6質量%、有機樹脂7.4〜13質量%とからなることが好ましい。有機樹脂は結合剤及び可塑剤としての役割を有し、上記の範囲に設定することにより、グリーンシートの成形・乾燥時のクラックや配線層の断線を回避すると同時に、セラミック粉末の充填性を向上出来、安定した焼成収縮率を得ることが可能となる。
【0033】
しかも、有機樹脂の効果によりグリーンシートが金型に付着するのを防止することができる。特に、グリーンシートに発生するクラックを防止し、配線層の断線を効果的に防止するため、セラミック粉末88〜92質量%、有機樹脂8〜12質量%が好ましく、更にはセラミック粉末89〜91質量%、有機樹脂9〜11質量%が好ましい。
【0034】
グリーンシートの少なくとも一方の主面の表面粗さRaが0.1〜0.9μmであることが重要である。即ち、PETフィルムの表面にセラミックグリーンシートを作製した後、PETフィルムを剥して得られる主面の表面粗さRaが0.1〜0.9μmであることが重要であり、特に0.1〜0.5μm、更には0.1〜0.3μmであることが好ましい。
【0035】
表面粗さRaが0.1μm未満の場合、グリーンシートとの剥離性が悪く、また、剥離後のグリーンシートの表面粗さが小さいために金型との離型性が悪くなり、シートの伸び、破れが発生する。また、表面面粗さRaが0.9μmを越える場合、PETフィルムや金型と剥離しやすくなるものの、グリーンシートの厚みバラツキが大きくなり、寸法精度が低下する。
【0036】
本発明のグリーンシートは、その厚みバラツキが抑制されているため、グリーンシートの積層体を焼成して得られる誘電体や圧電体の静電容量等の特性バラツキを低減することができ、優れた特性を有するセラミック焼結体を得ることができる。
【0037】
次に、本発明のセラミックグリーンシートの製造方法をアルミナを例として用いた場合について説明する。
【0038】
平均粒径1.3μmのアルミナ粉末87〜92.6質量%と有機樹脂を7.4〜13質量%からかる混合粉末100重量部に対し、混合用の溶媒としてトルエンを40質量部添加し、ボールミルを用い、粉砕・混錬に用いるメディア量は粉末に対し100質量部を充填する。
【0039】
ここで用いる有機樹脂は、ガラス転移点Tgが−20〜0℃であることが重要である。Tgが−20℃よりも低いと樹脂の粘着性が高くなり、グリーンシートの付着性が高くなり過ぎるため、PET樹脂や金型への付着によるグリーンシートの破損が増加する。また、0℃よりも高い場合、グリーンシートの柔軟性が低下硬化し、打抜き等の加工時にクラックが発生する。離型性と加工性とを併せ持ち、寸法精度の高いセラミックグリーンシートを得るため、有機樹脂のTgは−15〜−5℃が好ましい。
【0040】
次いで、上記調合比にてグリーンシート成形用のスラリーを作製する。この時、ズリ速度40s−1におけるスラリー粘度を2〜5Pa・sになるようにトルエンにて調整すると良い。
【0041】
スラリー乾燥後のシート厚みが100μmになるようにブレードのクリアランスを調整し、スラリーをドクターブレード法にてキャリアシート上に塗工する。このキャリアシートは表面粗さRaが0.8μm以下のPETフィルムであることが重要である。PETフィルムの表面粗さRaを上記の範囲に設定することにより、PETフィルムに接するグリーンシートの主面の表面粗さRaを0.1〜0.9μmに制御することができる。
【0042】
得られたグリーンシートを乾燥する。その後、所望によりキャリアシートがグリーンシートに接着したままでグリーンシートを所定の寸法に切断し、所望の形状のグリーンシートを得ることができる。
【0043】
また、所望により、キャリアシートを支持枠等に固定した後、穴加工を行ってビアを作製する。そして、電極用スラリーを印刷し、ビアにも充填し、電極が形成されたグリーンシートとして用いることができる。
【0044】
【実施例】
平均粒径1.3μmのアルミナ粉末、平均粒径1.5μmの窒化アルミニウム粉末、平均粒径2.5μmのチタン酸バリウム、平均粒径1.0μmの窒化珪素粉末、及び粒径3μmのホウ珪酸ガラス70質量%と粒径2μmのアルミナ30質量%とからなるガラスセラミック粉末に対して、表1に示した有機樹脂を、トルエンを溶媒として混合してスラリーを調製した後、ドクターブレード法にてキャリアフィルムの上に100μm厚みを目指してグリーンシートを作製した。
【0045】
なお、所望により、表1に示す可塑剤を加えた。また、グリーンシート成形時のキャリアフィルムは表1のPETフィルム及び紙(工程紙)を用いた。
【0046】
次に、キャリアフィルムを付着させたまま、グリーンシートを長さが横、縦それぞれ250mmとなるように切断した。次いで、グリーンシートの端部から200mmの位置に直径1mmの基準穴をパンチングによって作製した後、50℃に加温し、3.4MPaにて5秒間圧着した後、室温で5時間放置したグリーンシートをキャリアフィルムから引剥す際の応力を測定するとともに、グリーンシートの平均厚み及び厚みバラツキ、キャリアシートを剥した主面の表面粗さRaを測定した。
【0047】
グリーンシートの厚みは、マイクロメータで10点測定し、平均値を算出するとともに、100μmからの最大のズレを厚みで除し、これをバラツキとして百分率表示した。また、Raは触針式表面粗さ計を用いて測定した。さらに、キャリアフィルムの引剥しは、キャリアフィルムを固定し、セラミックグリーンシートの端部から引上げて引剥す際の応力を測定した。また、その際にグリーンシートの変形量を寸法ズレとして測定した。
【0048】
寸法ズレは、グリーンシート端部から基準穴の長さをPET引剥し時を初期とし、上記の工程を経た後の値を処理後として、初期値に対する処理後の穴位置のズレを光学顕微鏡にて測定したものである。結果を表1に示した。
【0049】
さらに、グリーンシートを打抜き、配線印刷、積層加圧処理を行い、加工金型或いは装置テーブルへのグリーンシートの付着を各工程間のグリーンシート搬送時に確認し、加工金具への付着として評価した。また、グリーンシートの打抜き加工(穴加工)時におけるクラックの発生を顕微鏡で観察した。
【0050】
【表1】
【0051】
本発明の試料No.4〜8、12〜15、17〜21、26、28、30及び32は、厚みバラツキが5.5%以下、PET引き剥がし時の応力が392mN以下、寸法ズレが4μm以下であり、加工金型への付着が観察されず、付着に伴うクラック発生や変形もなかった。
【0052】
一方、可塑剤を使用した本発明の範囲外の試料No.1及び2、Tgが−25℃と低い本発明の範囲外の試料No.3は、引剥し時の応力が500mN以上と大きく、寸法ズレが10μm以上と非常に大きく、いずれも加工金型への付着が観察された。
【0053】
また、Tgが0℃を越える本発明の範囲外の試料No.9〜11は、厚みバラツキが3.1%以下、PET引き剥がし時の応力が145mN以下と小さいものの、Tgが高いためにグリーンシートが硬く且つ脆いため、穴加工時にクラックが発生した。
【0054】
さらに、有機樹脂の含有量が15%と多いため、引剥し時の応力が450mNと大きい本発明の範囲外の試料No.16は、穴加工時に金型への付着が観察された。
【0055】
さらにまた、PETフィルムを引剥した後のセラミックグリーンシートの主面の表面粗さが1.2μm以上と大きい本発明の範囲外の試料No.22〜25は、厚みバラツキが6.2%以上と大きかった。なお、試料No.24及び25は、従来から用いられていた紙をキャリアシートとして用いた場合に相当するものである。
【0056】
また、セラミックスとしてアルミナ(AO)以外にAlN(AN)、チタン酸バリウム(TB)、窒化珪素(SN)及びガラスセラミックス(GC)を用いた場合であっても、有機樹脂のTgが20℃と高く本発明の範囲外の試料No.27、29、31及び33は、穴加工時にクラックが発生した。
【0057】
【発明の効果】
本発明のセラミックグリーンシートは、含有する有機樹脂の種類と表面粗さを制御し、キャリアフィルムであるPETフィルムを引剥す際の応力を400mN以下にすることで、セラミックグリーンシートを用いた多層積層体の加工工程、特に100μm以下の薄層グリーンシートの加工工程において、グリーンシートの加工金型等への付着やグリーンシートの破損を回避でき、多層積層体の寸法精度を改善できる。
【0058】
また、本発明のセラミックグリーンシートの製造方法は、ガラス転移点を制御した有機樹脂を結合剤及び可塑剤として同時に作用させることにより、PETフィルム上にセラミックグリーンシートを作製した時に、寸法精度及び信頼性が高く、加工歩留まりが高く、生産性に優れたグリーンシートの製造方法を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、グリーンシートに関し、特に、セラミック多層回路基板の絶縁層形成に用いられるグリーンシートの金型への付着を抑制し、寸法精度に優れたグリーンシート及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来から、半導体素子を搭載するセラミック多層基板やセラミックパッケージとして用いられるグリーンシートは、厚みが200μmを越えるため、ドクターブレード法や押出し成形法等のいわゆるテープ成形法により、紙製のキャリアシート上にテープ状に形成されてきた。
【0003】
このように、グリーンシートの厚みが大きい場合に用いられた紙製のキャリアシートは、表面粗さが大きく、キャリアシートの強度も大きいため、グリーンシートを剥離する際の寸法精度が高い。その結果、キャリアシートを剥離したグリーンシートは、接触する加工用金型やテーブル等と付着することもなく、取扱いが容易であるという特徴を有している。
【0004】
しかし、近年、半導体素子の高集積化、高機能化、小型化に伴い、絶縁層の薄層化によるコンデンサ等の機能内蔵型の基板が要求され、これに伴ってグリーンシートの薄層化が行われている。例えば、200μm以下、特に120μm以下の薄いグリーンシートを形成することが必要となっている。
【0005】
このような薄層のグリーンシートを紙製キャリアシート上に形成しようとすると、厚みのバラツキが大きくなるという問題が発生する。そこで、厚み精度を改善するため、キャリアシートとしてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、このPET上に薄層のグリーンシートを形成した後、所望の形状に打抜き、配線形成、加圧積層することが行われるようになった。
【0006】
しかし、PETフィルムを用いて作製した薄層のグリーンシートは、添加物として有機樹脂と可塑剤を含むため、キャリアシートとの付着力が高く、グリーンシートをキャリアシートから剥離する際に伸びて基板寸法や配線寸法の精度が悪化するばかりか、グリーンシートが破損するという問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
そこで、シリコーン離型層をキャリアシート表面に形成することによって、セラミック粉末と、結合剤と、可塑剤とからなるスラリーを塗布し、乾燥させて得られたグリーンシートが、キャリアシートから剥離する際の剥離強度が低減され、剥離時に発生する上記の問題を改善されることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−221889号公報
【特許文献2】
特開2000−25163号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載されたグリーンシートは、キャリアシートから容易に剥離できるものの、その後の打抜き加工工程、配線形成工程及び加圧積層工程等において、キャリアフィルムに接していたグリーンシート主面が金型に付着するため、グリーンシートが伸びて基板寸法や配線寸法精度が低く、破れやクラックが発生するため取扱いが容易ではないという問題があった。
【0010】
従って、本発明は、PETフィルム及び金型との離型性が高く、寸法精度の高いグリーンシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、グリーンシートに含まれる有機成分がPETフィルムとの表面付近に偏在し、PETフィルムや金型との付着性を高め、その結果、グリーンシートの寸法精度を低下させ、或いはグリーンシートの破損を改善するとの新規な知見に基づくもので、有機成分及びグリーンシートの表面粗さを制御することにより、PETフィルム及び金型との離型性が高く、厚みバラツキを抑制して寸法精度の高いグリーンシート及びその製造方法を提供するものである。
【0012】
特に、有機成分としてガラス転移点を制御した有機樹脂を用い、更にその含有量を制御することによって、グリーンシートの結合性と可塑性を調整し、剥離強度を低減したグリーンシートを実現したものである。
【0013】
即ち、本発明のセラミックグリーンシートは、セラミック粉末と有機樹脂とからなるセラミックグリーンシートにおいて、前記有機樹脂のガラス転移点が−20〜0℃、該セラミックグリーンシートの少なくとも一方の主面の表面粗さRaが0.1〜0.9μmであり、前記セラミックグリーンシートの一主面に、温度50℃、圧力3.4MPaで5秒間圧着して付着させた幅50mm、表面粗さRaが0.1μmのPETフィルムを引剥す時の応力が400mN以下であることを特徴とするものである。
【0014】
特に、前記有機樹脂が、単一の単量体の重合体、或いは複数種の単量体の共重合体であることが好ましい。これにより、有機樹脂のガラス転移点を調整し、種々のテープ特性を得ることができる。
【0015】
また、前記有機樹脂が、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体であることが好ましい。これにより、焼成時における有機樹脂の良好な熱分解性を確保できる。
【0016】
さらに、セラミックグリーンシートが可塑剤を含有しないことが好ましい。これにより、グリーンシートのPETフィルム近傍に顕著に偏在する可塑剤を含まないため、PETフィルムや金型等との剥離性を効果的に高めることができる。
【0017】
また、前記セラミック粉末87〜92.6質量%と、前記有機樹脂7.4〜13質量%とからなることが好ましい。これにより、結合剤及び可塑剤としての役割を同時に且つ効果的に果たすことが容易となり、グリーンシートに発生するクラックや配線層の断線を効果的に防止するとともに、グリーンシートが金型へ付着することをより改善することができる。
【0018】
さらに、前記セラミック粉末が、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素及びチタン酸塩のうち少なくとも1種を主成分とするセラミック粉末、又はガラス粉末を含む低温焼結性のセラミック粉末であることが好ましい。これによって、機械特性に優れる配線基板、誘電特性に優れる配線基板、配線層の低抵抗化に優れる配線基板の作成が可能となる。
【0019】
また、本発明のセラミックグリーンシートの製造方法は、セラミック粉末と、ガラス転移点が−20〜0℃の有機樹脂とを溶媒中で混合してスラリーを作製し、しかる後に表面粗さRaが0.8μm以下であるPETフィルムの表面に塗工し、前記スラリーをシート状に成形することを特徴とするものであり、これにより、上記のセラミックグリーンシートを得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミックグリーンシートは、含有する有機成分を制御することが重要であり、有機樹脂の種類及びその特性を調整し、結合剤と可塑剤とを兼ねる有機樹脂を含むことによって、グリーンシートがPETフィルムや加工時の金型、更には装置やテーブルに付着することによる変形を防止し、クラックや破損を抑制したものであり、その結果、焼成して得られるセラミック多層基板の寸法精度を改善することができる。
【0021】
即ち、本発明では、セラミック粉末のガラス転移点(Tg)が−20〜0℃の有機樹脂とがセラミックグリーンシートに含まれることが重要である。Tgが−20℃よりも低いと樹脂の粘着性が高くなり、グリーンシートの付着性が高くなり過ぎるため、PET樹脂や金型への付着によるグリーンシートの破損が増加する。また、0℃よりも高い場合、グリーンシートの柔軟性が低下硬化し、打抜き等の加工時にクラックが発生する。離型性と加工性とを併せ持ち、寸法精度の高いセラミックグリーンシートを得るため、有機樹脂のTgは−15〜−5℃が好ましい。
【0022】
このような有機樹脂は、薄層のセラミックグリーンシートを作製する場合に、PETフィルムとの接触面近傍に偏在する有機成分の量を顕著に低減し、その結果、優れた離型性を示すことが可能となる。
【0023】
本発明に用いる有機樹脂は、単量体の重合体、或いは複数種の共重合体であることが好ましい。有機樹脂が1種の有機樹脂の単量体の重合体である場合、樹脂が均一である為安定したテープ特性が得られるという効果がある。また、複数種の共重合体である場合、種々のガラス転移点を持つ有機樹脂を組み合わせることでテープの強度や伸度を任意に調整できるという効果がある。
特に、個々の単量体のTgが−60℃から100℃の範囲に含まれる有機樹脂を複数選択し、これらの種々のTgを持つ単量体を共重合させることにより、有機樹脂全体としてのTgを−20〜0℃にすることができる。このような共重合体は、グリーンシートの柔軟性を確保するとともに、金型との付着性を効果的に低減することができる。
【0024】
有機樹脂は熱分解性に優れるアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルモノマーの重合体又は両者の共重合体であることが良い。非酸化性雰囲気で脱バインダーから磁器の焼結までを一連の連続した工程で完了させるためには、一般的用いられるブチラール樹脂等では残留炭素の影響で、充分な磁気特性を得ることができず、磁器の膨れ、割れが発生する為である。
【0025】
例えば、上記の有機樹脂として、単量体としては、MMA(メチルメタクリレート)、EA(エチルアクリレート)、nBMA(n−ブチルメタクリレート、iBMA(i−ブチルメタクリレート)、2EHMA(2−エチルヘキシルメタクリレート)、又は、LMA(ラウリルメタクリレート)等を例示できる。重合体としては、上記単量体を用いたアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体を例示することができる。これらの重合体は、低熱分解という特徴を有し、焼成時の残留カーボンによる磁気特性のバラツキ低減や、積層間の剥離に効果がある。
【0026】
本発明によれば、セラミックグリーンシートが可塑剤を特に含まないことが好ましい。可塑剤は、セラミックグリーンシートの可塑性を高め、シートの打抜き、配線パターンがもたらす表面凹凸への良好な追従性のためのものであるが、乾燥時にセラミックグリーンシートのPETフィルムとの接触面付近に沈積しやすいため、上記の有機樹脂がグリーンシートに可塑性を付与させるため、可塑剤を特に含む必要がない。
【0027】
ここで、可塑剤とは、スラリー又はグリーンシートの可塑性を高めるためのもので、特に代表的なものとしては、DBP(フタル酸ジブチル)、DOP(フタル酸ジオクチル)、又はBBP(フタル酸ブチルベンジル)等を例示できる。
【0028】
本発明によれば、上述のようにガラス転移点を制御した有機樹脂を使用することが重要であるが、更にそのような樹脂を使用した上でグリーンシートの一主面に接着したPETフィルムの引き剥がし強度が400mN以下であることが重要である。400mNより大きい場合には、グリーンシートがPETシートや加工用金型との離型性が悪く、グリーンシートが破壊されたり、伸びすぎて寸法精度が低下する。このような問題を、引き剥がし強度を400mN以下にすることにより解決できる。剥離をより容易にするため、引き剥がし強度は350mN以下、更には300mN以下が好ましい。
【0029】
本発明における引き剥がし強度の測定は、以下のように規定するものである。即ち、グリーンシートの一主面に対して、表面粗さ0.1μm、厚み50μmのPETフィルムを、50℃の温度で、3.4MPaの圧力で5秒間加圧して圧着する。しかる後に、室温に5時間放置する。このようにして得られたグリーンシートに対して、PETフィルムを90°の角度、200mm/秒の剥離速度で引き剥がし、その時の最大引き剥し力を測定し、これを引き剥がし強度とする。
【0030】
セラミック粉末は、特に限定されるものではないが、一般に用いられる酸化アルミニウム、絶縁性、熱伝導、強度の点で優れる窒化アルミニウム、窒化珪素、コンデンサ等の機能内蔵に有用なチタン酸塩を主成分とするセラミック粉末であることが好ましい。上記セラミックスを用いることにより、機械特性に優れる配線基板、誘電特性に優れる配線基板の作成が可能となる。
【0031】
また、ガラス粉末を含む低温焼結性のセラミック粉末であることが好ましい。このようにガラス粉末をセラミックス中に含有させることによって、低温焼成が可能なセラミックスを合成でき、その結果、例えば配線層の低抵抗化の点で有利なガラス粉末を含む低温焼結性の混合粉末等を選択でき、特に配線層の低抵抗化に優れる配線基板を実現できる。
【0032】
このようなセラミック粉末が87〜92.6質量%、有機樹脂7.4〜13質量%とからなることが好ましい。有機樹脂は結合剤及び可塑剤としての役割を有し、上記の範囲に設定することにより、グリーンシートの成形・乾燥時のクラックや配線層の断線を回避すると同時に、セラミック粉末の充填性を向上出来、安定した焼成収縮率を得ることが可能となる。
【0033】
しかも、有機樹脂の効果によりグリーンシートが金型に付着するのを防止することができる。特に、グリーンシートに発生するクラックを防止し、配線層の断線を効果的に防止するため、セラミック粉末88〜92質量%、有機樹脂8〜12質量%が好ましく、更にはセラミック粉末89〜91質量%、有機樹脂9〜11質量%が好ましい。
【0034】
グリーンシートの少なくとも一方の主面の表面粗さRaが0.1〜0.9μmであることが重要である。即ち、PETフィルムの表面にセラミックグリーンシートを作製した後、PETフィルムを剥して得られる主面の表面粗さRaが0.1〜0.9μmであることが重要であり、特に0.1〜0.5μm、更には0.1〜0.3μmであることが好ましい。
【0035】
表面粗さRaが0.1μm未満の場合、グリーンシートとの剥離性が悪く、また、剥離後のグリーンシートの表面粗さが小さいために金型との離型性が悪くなり、シートの伸び、破れが発生する。また、表面面粗さRaが0.9μmを越える場合、PETフィルムや金型と剥離しやすくなるものの、グリーンシートの厚みバラツキが大きくなり、寸法精度が低下する。
【0036】
本発明のグリーンシートは、その厚みバラツキが抑制されているため、グリーンシートの積層体を焼成して得られる誘電体や圧電体の静電容量等の特性バラツキを低減することができ、優れた特性を有するセラミック焼結体を得ることができる。
【0037】
次に、本発明のセラミックグリーンシートの製造方法をアルミナを例として用いた場合について説明する。
【0038】
平均粒径1.3μmのアルミナ粉末87〜92.6質量%と有機樹脂を7.4〜13質量%からかる混合粉末100重量部に対し、混合用の溶媒としてトルエンを40質量部添加し、ボールミルを用い、粉砕・混錬に用いるメディア量は粉末に対し100質量部を充填する。
【0039】
ここで用いる有機樹脂は、ガラス転移点Tgが−20〜0℃であることが重要である。Tgが−20℃よりも低いと樹脂の粘着性が高くなり、グリーンシートの付着性が高くなり過ぎるため、PET樹脂や金型への付着によるグリーンシートの破損が増加する。また、0℃よりも高い場合、グリーンシートの柔軟性が低下硬化し、打抜き等の加工時にクラックが発生する。離型性と加工性とを併せ持ち、寸法精度の高いセラミックグリーンシートを得るため、有機樹脂のTgは−15〜−5℃が好ましい。
【0040】
次いで、上記調合比にてグリーンシート成形用のスラリーを作製する。この時、ズリ速度40s−1におけるスラリー粘度を2〜5Pa・sになるようにトルエンにて調整すると良い。
【0041】
スラリー乾燥後のシート厚みが100μmになるようにブレードのクリアランスを調整し、スラリーをドクターブレード法にてキャリアシート上に塗工する。このキャリアシートは表面粗さRaが0.8μm以下のPETフィルムであることが重要である。PETフィルムの表面粗さRaを上記の範囲に設定することにより、PETフィルムに接するグリーンシートの主面の表面粗さRaを0.1〜0.9μmに制御することができる。
【0042】
得られたグリーンシートを乾燥する。その後、所望によりキャリアシートがグリーンシートに接着したままでグリーンシートを所定の寸法に切断し、所望の形状のグリーンシートを得ることができる。
【0043】
また、所望により、キャリアシートを支持枠等に固定した後、穴加工を行ってビアを作製する。そして、電極用スラリーを印刷し、ビアにも充填し、電極が形成されたグリーンシートとして用いることができる。
【0044】
【実施例】
平均粒径1.3μmのアルミナ粉末、平均粒径1.5μmの窒化アルミニウム粉末、平均粒径2.5μmのチタン酸バリウム、平均粒径1.0μmの窒化珪素粉末、及び粒径3μmのホウ珪酸ガラス70質量%と粒径2μmのアルミナ30質量%とからなるガラスセラミック粉末に対して、表1に示した有機樹脂を、トルエンを溶媒として混合してスラリーを調製した後、ドクターブレード法にてキャリアフィルムの上に100μm厚みを目指してグリーンシートを作製した。
【0045】
なお、所望により、表1に示す可塑剤を加えた。また、グリーンシート成形時のキャリアフィルムは表1のPETフィルム及び紙(工程紙)を用いた。
【0046】
次に、キャリアフィルムを付着させたまま、グリーンシートを長さが横、縦それぞれ250mmとなるように切断した。次いで、グリーンシートの端部から200mmの位置に直径1mmの基準穴をパンチングによって作製した後、50℃に加温し、3.4MPaにて5秒間圧着した後、室温で5時間放置したグリーンシートをキャリアフィルムから引剥す際の応力を測定するとともに、グリーンシートの平均厚み及び厚みバラツキ、キャリアシートを剥した主面の表面粗さRaを測定した。
【0047】
グリーンシートの厚みは、マイクロメータで10点測定し、平均値を算出するとともに、100μmからの最大のズレを厚みで除し、これをバラツキとして百分率表示した。また、Raは触針式表面粗さ計を用いて測定した。さらに、キャリアフィルムの引剥しは、キャリアフィルムを固定し、セラミックグリーンシートの端部から引上げて引剥す際の応力を測定した。また、その際にグリーンシートの変形量を寸法ズレとして測定した。
【0048】
寸法ズレは、グリーンシート端部から基準穴の長さをPET引剥し時を初期とし、上記の工程を経た後の値を処理後として、初期値に対する処理後の穴位置のズレを光学顕微鏡にて測定したものである。結果を表1に示した。
【0049】
さらに、グリーンシートを打抜き、配線印刷、積層加圧処理を行い、加工金型或いは装置テーブルへのグリーンシートの付着を各工程間のグリーンシート搬送時に確認し、加工金具への付着として評価した。また、グリーンシートの打抜き加工(穴加工)時におけるクラックの発生を顕微鏡で観察した。
【0050】
【表1】
【0051】
本発明の試料No.4〜8、12〜15、17〜21、26、28、30及び32は、厚みバラツキが5.5%以下、PET引き剥がし時の応力が392mN以下、寸法ズレが4μm以下であり、加工金型への付着が観察されず、付着に伴うクラック発生や変形もなかった。
【0052】
一方、可塑剤を使用した本発明の範囲外の試料No.1及び2、Tgが−25℃と低い本発明の範囲外の試料No.3は、引剥し時の応力が500mN以上と大きく、寸法ズレが10μm以上と非常に大きく、いずれも加工金型への付着が観察された。
【0053】
また、Tgが0℃を越える本発明の範囲外の試料No.9〜11は、厚みバラツキが3.1%以下、PET引き剥がし時の応力が145mN以下と小さいものの、Tgが高いためにグリーンシートが硬く且つ脆いため、穴加工時にクラックが発生した。
【0054】
さらに、有機樹脂の含有量が15%と多いため、引剥し時の応力が450mNと大きい本発明の範囲外の試料No.16は、穴加工時に金型への付着が観察された。
【0055】
さらにまた、PETフィルムを引剥した後のセラミックグリーンシートの主面の表面粗さが1.2μm以上と大きい本発明の範囲外の試料No.22〜25は、厚みバラツキが6.2%以上と大きかった。なお、試料No.24及び25は、従来から用いられていた紙をキャリアシートとして用いた場合に相当するものである。
【0056】
また、セラミックスとしてアルミナ(AO)以外にAlN(AN)、チタン酸バリウム(TB)、窒化珪素(SN)及びガラスセラミックス(GC)を用いた場合であっても、有機樹脂のTgが20℃と高く本発明の範囲外の試料No.27、29、31及び33は、穴加工時にクラックが発生した。
【0057】
【発明の効果】
本発明のセラミックグリーンシートは、含有する有機樹脂の種類と表面粗さを制御し、キャリアフィルムであるPETフィルムを引剥す際の応力を400mN以下にすることで、セラミックグリーンシートを用いた多層積層体の加工工程、特に100μm以下の薄層グリーンシートの加工工程において、グリーンシートの加工金型等への付着やグリーンシートの破損を回避でき、多層積層体の寸法精度を改善できる。
【0058】
また、本発明のセラミックグリーンシートの製造方法は、ガラス転移点を制御した有機樹脂を結合剤及び可塑剤として同時に作用させることにより、PETフィルム上にセラミックグリーンシートを作製した時に、寸法精度及び信頼性が高く、加工歩留まりが高く、生産性に優れたグリーンシートの製造方法を提供することができる。
Claims (7)
- セラミック粉末と有機樹脂とからなるセラミックグリーンシートにおいて、前記有機樹脂のガラス転移点が−20〜0℃、該セラミックグリーンシートの少なくとも一方の主面の表面粗さRaが0.1〜0.9μmであり、前記セラミックグリーンシートの一主面に、温度50℃、圧力3.4MPaで5秒間圧着して付着させた幅50mm、表面粗さRaが0.1μmのPETフィルムを引剥す時の応力が400mN以下であることを特徴とするセラミックグリーンシート。
- 前記有機樹脂が、単一の単量体の重合体、或いは複数種の単量体の共重合体であることを特徴とする請求項1記載のセラミックグリーンシート。
- 前記有機樹脂が、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載のセラミックグリーンシート。
- 可塑剤を含有しないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載セラミックグリーンシート。
- 前記セラミック粉末87〜92.6質量%と、前記有機樹脂7.4〜13質量%とからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のセラミックグリーンシート。
- 前記セラミック粉末が、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素及びチタン酸塩のうち少なくとも1種を主成分とするセラミック粉末、又はガラス粉末を含む低温焼結性のセラミック粉末であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のセラミックグリーンシート。
- セラミック粉末と、ガラス転移点が−20〜0℃の有機樹脂とを溶媒中で混合してスラリーを作製し、しかる後に表面粗さRaが0.8μm以下であるPETフィルムの表面に塗工し、前記スラリーをシート状に成形することを特徴とするセラミックグリーンシートの製造方法。
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