JP4887755B2 - 静電駆動素子とこれを用いたプロジェクター - Google Patents

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Description

本発明は、例えばプロジェクターの光変調素子や、インクジェットプリンターの駆動素子として用いて好適な、梁いわゆるビームを静電引力により駆動する静電駆動素子及びこれを用いたプロジェクターに関する。
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスを用いた製品開発は現在数多く行われているが、その駆動機構として最も広く使われているのが電極間の電位差によって生じる静電引力を用いた静電駆動方式である。これは、上部電極及び下部電極の間の静電力によって可動部となる上部電極を駆動するもので、上部及び下部電極の間に一定量の電圧を印加することにより、空間的な容量を変化させ、すなわち両電極間の距離を狭める(または密着させる)ことでスイッチングや変調を行うものである。例えば可変キャパシタ、エレクトロメカニカル格子、ミラー、インクジェットプリントヘッド、及び種々のセンサ等の多くのタイプのMEMSデバイスを実現している。
このような静電駆動方式によるMEMSデバイスである静電駆動素子の一例の概略断面構成図を図18Aに示す。下部電極3に対して、絶縁層7及び上部電極15がこの順に形成された梁20(いわゆるビーム)に対し、適当な電圧Vを印加することによって静電引力を発生させて、図18Bにおいて矢印kで示すように、梁20を下部電極3側へ変位させる。
一方、光学用途のMEMSデバイス、特に梁材料に誘電体を用いた静電駆動素子においては、表面の上部電極が反射膜を兼ねる場合がある。以下に一般的な光学用途の静電駆動素子の一例について説明する。
図19は、光の反射や回折を利用し、光スイッチ、光変調素子等に適用可能な静電駆動素子の代表的な例の概略斜視構成図である。基板2上に2以上のリボン(条帯)状の下部電極3が配列形成されて成り、その上に下部電極3に対向して略平行に、かつこの下部電極3とは空間によって電気的に絶縁された薄膜リボン状の梁20が例えばその両端を支持部16(16A及び16B)により支持された状態で、ブリッジ状に配列形成される。
この場合、基板2は、例えば、シリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)などの半導体基板上に絶縁膜を形成した基板、石英基板やガラス基板のような絶縁性基板などが用いられる。基板2側の下部電極3は、不純物をドーピングした多結晶シリコン膜、金属膜(例えばW、Cr蒸着膜)などで形成される。また、梁20は、例えばシリコン窒化膜(SiN膜)等の絶縁膜7と、その上面に形成された膜厚100nm程度の例えばAl膜からなる反射膜を兼ねる上部電極15とを有する構成とされる。この例においては、梁20は両端を支持された両持ち梁式構造となっているが、片側のみ支持されるいわゆる片持ち梁式構造であってもよい。
そしてこの光学用途の静電駆動素子では、基板側の下部電極3と上部電極15に与える電位に応じて、梁20の上部電極15と下部電極3との間の静電引力又は静電反発力により変位し、例えば図18A及びBで示すように、基板2側の下部電極3に対して平行状態と凹み状態に変位することを利用して、図19に示すように、例えば1つおきの梁20を基板2側に変位することによって、回折格子として作用させることができる。
これにより、ある方向への反射光強度を連続的に変えることができるものであり、より具体的には、梁を2以上並列した静電駆動素子を多数並置配列することによって、1次元型の光変調素子として使用するものである。このような1次元型の光変調素子は、例えば米国Silicon Light Machine社が開発した回折ライトバルブ(GLV:grating light valve)が知られており、プロジェクター等への応用が期待されている(特許文献1及び2参照。)。
また、梁を1本とする場合は、例えば駆動位置に応じて反射方向を変化させることにより、スイッチ機能を持たせた光スイッチとして利用することも可能である。
このような構造の静電駆動素子では、上部電極15と下部電極3との間に誘電体である絶縁層7が存在するため、反射膜を兼ねる上部電極15とこの誘電体の界面、誘電体中に存在する欠陥などを介してチャージが蓄積される可能性がある。
誘電体中の欠陥は、例えばMOS(Metal Oxide Semiconductor)のゲート絶縁膜の開発において知られている(非特許文献1参照。)。
MOSにおいては、例えばNaイオンなどの不純物イオンが長時間の電界印加により負極側に移動するとか、負極側からSiOの伝導帯へ電子が注入され、正電極近傍のSiO膜にトラップされ、局所的に電界を増加させるという現象などがある。
上述の静電駆動素子においてこのような誘電体中の欠陥によるチャージの蓄積が生じると、駆動電圧(Vop)の変動が引き起こされ、一定電圧で駆動させた場合にも、素子間で梁の変位特性が変わってしまう場合がある。また、素子条件によっては、長時間電圧を印加することによる絶縁破壊(TDDB:Time Dependant Dielectric Breakdown)が発生する可能性があるなど、信頼性上問題となる。
特許第3164824号 米国特許第5841579号明細書 特開2004−54245号公報 S. M. Sze 著、"Semiconductor Devices:Physics and Technology"、 JOHN WILEY & SONS, Inc.、 (1985)、 p.197
上述したような静電駆動素子における誘電体膜のチャージの蓄積の問題に対して、例えば光学機能を有する静電駆動素子では、下部電極上と上部電極の下面にそれぞれ誘電体膜を形成し、これら誘電体膜の材料を適切に選定することによって、誘電体膜に生じるチャージを抑制する方法が提案されている(例えば上記特許文献3参照。)。
しかしながらこのような工夫を行っても、例えば電圧印加に伴う誘電体層への水分などの吸着によって、依然として梁の下面側の絶縁層においてチャージが蓄積されることが問題となっており、より確実にチャージングの発生量を抑えることが望まれている。
以上の問題に鑑みて、本発明は、静電駆動素子において、梁の上部電極と下部電極との間に電荷が蓄積されることを抑制ないしは回避して、チャージングの発生量を抑えることを目的とし、これにより特性の良好な静電駆動素子及びこれを用いたプロジェクターを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明による静電駆動素子は、基板上に形成された下部電極と、下部電極と対向して設けられ、上部電極と、上部電極上に形成される絶縁層とを有する第1の梁と、第1の梁の絶縁層上に設けられ、反射層を有し、前記絶縁層と前記反射層の間に空間を形成する第2の梁と、を備える。第1の梁は、静電引力により下部電極側に駆動する。
このように、本発明の静電駆動素子においては、梁の母材、すなわち第1の梁を支える材料である絶縁層(誘電体)の下に上部電極となる導電膜を設ける構造とすることから、電荷がこの第1の梁の下部電極と対向する下面側に蓄積されることが殆どなくなり、チャージングの発生量を抑えることができる。
また、本発明の静電駆動素子は、上述の構成において、第1の梁の絶縁層上に、反射層を設ける構成としてもよい。
このように、第1の梁の絶縁層の上に上部電極とは別体の反射層を設ける構成とする場合は、光スイッチ、光変調などの光学的機能を有する静電駆動素子において、上述したようにチャージングの発生量を抑えることができる。
更に、本発明の静電駆動素子は、上述の構成において、反射層を、第1の梁上の少なくとも光照射領域を含む一部の領域に設ける構成としてもよい。
このように、本発明の静電駆動素子においては、第1の梁上の反射膜は、電極を目的とする必要がなくなるため、光が入射するところにだけ限定して形成すればよく、光照射領域外の反射膜による余計な散乱光の発生を抑えることができるという利点も有する。
また、本発明の静電駆動素子は、上述の構成において、反射層を、上部電極よりも幅広に形成してもよい。
このような構成とする場合は、反射膜を幅広にすることによって光利用効率を高めることができると共に、特に、上部電極同士のいわゆる横方向の貼り付きの発生を抑制し、静電駆動素子の不具合の発生を抑える効果が得られる。
また、本発明によるプロジェクターは、光源と、この光源から出射された光の光軸上に配置され、前記光の強度を変調する光変調素子とを有するプロジェクターであって、その光変調素子は、基板上に形成された下部電極と、下部電極と対向して設けられ、上部電極と、上部電極上に形成される絶縁層とを有する第1の梁と、第1の梁の絶縁層上に、反射層を有する第2の梁とを備える。また、第1の梁及び第2の梁は2以上配列される。さらに、静電引力により第1の梁が下部電極側に駆動して回折格子を構成する静電駆動素子より構成され
このような本発明のプロジェクターによれば、上述したように、静電駆動素子の上部電極と下部電極との間のチャージングの発生量が抑えられ、良好な駆動特性を保持した静電駆動素子を光変調素子として用いることによって、光変調素子の不具合による画像の乱れ、表示特性の低下を抑制することが可能となる。
以上説明したように、本発明の静電駆動素子によれば、上部電極と下部電極との間に電荷が蓄積されることを抑制し、チャージングの発生量を抑制することができる。
また、本発明のプロジェクターによれば、その光変調素子の特性が良好に保持されることによって、特性の低下を抑制することが可能となる。
以下本発明を実施するための最良の形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
〔1〕第1の参考例
図1の概略断面構成図を参照して静電駆動素子の第1の参考例を説明する。図1に示すように、第1の参考例の静電駆動素子1は、上部電極6と絶縁層7とを有する梁20が、基板2上に形成された下部電極3と対向して例えばブリッジ状に、図示の例では両持ち梁式に設けられる。そして、例えば下部電極3を接地し、上部電極6に適切な電圧を印加することによって、静電引力により梁20が下部電極3側に駆動される構成とするものであり、特に梁20の絶縁層7は、上部電極6の上に形成する。 またこの例においては、上部電極6上の絶縁層7の上面に、反射層10を設ける構成とする。すなわちこの場合、前述の図19において説明した例と同様に、梁を例えば1つおきに駆動して回折格子を構成するもので、梁の駆動により、ある方向への反射光強度を連続的に変えることができ、このような梁を2以上並列した静電駆動素子を多数並置配列することによって、1次元型の光変調素子として例えばプロジェクターなどに使用することができる。
上述したように、第1の参考例の静電駆動素子においては、表面の反射層10と上部電極6とを電気的に絶縁分離するものであり、反射層10の下に誘電体膜である絶縁層7を設け、絶縁層7の下に上部電極6となる導電膜を形成することにより、上部電極6と下部電極3の電極間には、原則的には空間12が存在するだけとなり、上部電極6上の誘電体の影響は受けなくなる。
したがって、前述したようなMOS等において問題となっていた誘電体膜の欠陥等により発生する電荷蓄積の問題は回避されることとなり、上部電極6と下部電極3との間に電荷が蓄積されず、チャージング発生量を確実に抑えることができることがわかる。
このような構造の静電駆動素子の具体的な材料構成の一例について説明する。
この場合、図1に示すように、基板2及び下部電極3までは従来の例えば図18A及びBにおいて説明した静電駆動素子と同様の材料及び構造とし得る。
すなわち基板2は、例えば、SiやGaAsなどの半導体基板上に絶縁膜を形成した基板、石英基板やガラス基板のような絶縁性基板などが用いられる。基板2側の下部電極3は、不純物をドーピングした多結晶シリコン膜、金属膜(例えばW、Cr蒸着膜)などで形成される。
そして、梁20を形成するための犠牲層として、非晶質シリコン(a−Si)を減圧CVD(Chemical Vapor Deposition、化学的気相成長)法により形成する。この犠牲層の膜厚は、静電駆動素子を利用するデバイス特性に依存するが、例えば1μmの膜厚とし得る。
次に上部電極3を形成する。上部電極3は、Ti、W、Mo、Co、Niなどの高融点材料、例えばWより形成する。W、Ti、Coなどは、MOSのゲート電極として実績があるため、半導体製造工程において形成、加工条件は確立されている。この上部電極3の膜厚は、デバイス設計値に依存するが、必要な場合には、成膜後に高速熱処理(RTA:Rapid Thermal Annealing)などの熱処理を加えても構わない。
次に、梁20の材料となる絶縁層7、すなわち誘電体膜を形成する。ここでは、上述の一般的な光学MEMS素子と同じSiNやSiOなどより絶縁層7を形成する。膜厚は例えば100nmとする。
なお、この絶縁層7を減圧CVD等により形成する場合は、処理温度が800℃程度となるが、その下の上部電極6を上述した高融点材料により構成することによって、上部電極6の変形等を招くことなく、良好に絶縁層7を上部電極6上に形成することができる。
最後に反射層10として、膜厚例えば100nmのAl等を例えばスパッタにより形成する。
その後、犠牲層を選択的にエッチング除去することによって、図1に示す第1の参考例の構成の静電駆動素子を得ることができる。
そして、この場合従来の静電駆動素子と異なる点は、このAl膜より成る反射層10は、駆動させる上部電極を兼ねておらず、上部電極6である例えばW膜と電気的に絶縁されている点である。
本発明の構造とすることにより、静電容量は梁20の内側の空間12のみとなるため、反射層10と絶縁層7の界面である例えばAl/SiN膜の界面、更に絶縁層7である例えばSiN中に存在する欠陥などを介して電荷が蓄積されることはなく、チャージング発生量を確実に抑制することができる。
また、この静電駆動素子を例えばプロジェクターにおける光変調素子として用いることにより、チャージング発生量の抑制によって、駆動電圧の変動が抑えられることから、光変調素子の不具合による画像の乱れ、表示特性の低下を抑制することが可能となる。
〔2〕第2の参考例
次に、静電駆動素子の第2の参考例について図2の概略断面構成図を参照して説明する。図2において、図1と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。 第2の参考例の静電駆動素子は、その下部電極の材料構成によっては、様々なパターンが考えられる。この例においては、図2に示すように、下部電極3として、上述の第1の参考例実施形態例におけるように金属ではなく、例えば不純物ドープされた多結晶シリコン(poly−Si)又は非晶質シリコン(a−Si)などより構成する。
梁20の構造を支持する絶縁層7をSiNなどの誘電体より構成する場合は、梁20を形成する過程で設ける犠牲層としてSi系材料を用いる必要がある。このため、このように下部電極3をSi系材料より構成する場合は、下部電極3と犠牲層との間にエッチストップ層となる材料層、例えば熱酸化膜やCVD酸化膜、CVD窒化膜より成る誘電体層14が、下部電極3を覆って形成されることが必要である。つまりこの場合は下部電極3の上には誘電体が存在することになるが、第2の参考例の静電駆動素子においては上部電極6の下面には誘電体が存在しないことから、前述したような荷電欠陥による電荷の蓄積量を従来に比して抑制することが可能となる。すなわちこの場合、上部電極6と下部電極3との間には、いわば直列に存在する誘電体層の数が少なくなるので、チャージの蓄積による駆動電圧シフトを抑えることができる。
なお、このように下部電極3の上に誘電体層14を形成する例としては、その他例えば図3にその一例の概略断面構成図を示すように、基板2としてSi基板を用い、その表面に不純物が拡散されて下部電極3とする場合も同様である。
また、例えば図4にその一例の概略断面構成図を示すように、SOI(Silicon on Insulator)型構成の基板21を用いて、すなわち絶縁材より成る基板21上にSi単結晶薄膜やエピタキシャルSi膜より成るSi層22を形成し、この上に下部電極3を設ける場合も同様である。これら図3及び図4において、図2と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。なお、これらの図2〜図4の例においては、上述した下部電極3以外の材料構成については、前述の図1を参照して説明した第1の参考例と同様の材料構成とすることができる。
これらの場合も上述の図2において説明した例と同様に、上部電極6の下面には誘電体が存在しないことから、上部電極6と下部電極3との間で直列に存在する誘電体層の数を少なくすることができ、チャージの蓄積による駆動電圧シフトを抑えることができる。
また、こられの静電駆動素子を例えばプロジェクターにおける光変調素子として用いることにより、チャージング発生量の抑制によって、駆動電圧の変動が抑えられることから、光変調素子の不具合による画像の乱れ、表示特性の低下を抑制することが可能となる。
〔3〕第の実施形態例
次に、上述したチャージの蓄積を抑える効果に加えて、隣接する梁同士の間の静電引力を抑えることが可能な本発明の実施形態例について説明する。
この例においても、前述の図19において説明したように、梁を例えば1つおきに駆動して回折格子を構成して光変調素子として用いるもので、梁を複数並列し、これを静電引力によって一つおきに凹ませることで反射光に回折を生じさせ、ある方向への反射光強度を連続的に変えるものであり、このような梁を2以上並列した静電駆動素子を多数並置配列することによって、1次元型の光変調素子としてプロジェクター等に使用可能である。
なお、プロジェクターとして用いる場合には、梁を複数設けた静電駆動素子を一列に多数並べることによって表示される1次元の画像を走査照明系によりスキャニングすることによって2次元の画像を得る。
上述したような静電駆動方式を用いたMEMSデバイスにおいて、複数の梁を近接した状態で並べる場合、静電引力は下部電極との間に働く他、隣接した梁同士の間にも働くこととなる。梁が過度に近接している状態では、静電引力により梁が横方向へ吸着して離れず、下部電極側へ駆動しなくなる場合もあるため、一般的に梁の駆動方向として、横方向への変位は望ましくない。したがって、この隣接した梁間の静電引力による影響を最小化することが望ましい。
一方、このような回折格子型の静電駆動素子において、非常に重要な性能の指標となる光効率は、上部電極が反射層を兼ねる従来構成の場合、梁自体の幅と梁間のギャップとの比率に大きく依存している。梁の幅に対してギャップの幅が大きいほど、相対的に反射面積が減少するため、光効率は低下する。したがって、光効率を向上させるためにはギャップ幅をより狭くすることが重要となる。
このようにギャップ幅を狭くする際に問題となるのが、前述した隣接する梁の間の静電引力による意図しない横方向の変位、および隣接する梁の間の吸着現象である。横方向へ吸着すると隣接する梁の電極部がショートし、しばしば梁が破壊してしまう。通常、光反射膜を金属薄膜で形成する場合には、反射膜自体が上部電極、すなわち電圧印加層としての役割を兼ねるため、横方向への静電吸着現象を避けられる程度の梁間隔が必要となる。
また、反射膜と電圧印加層を分ける場合においても、同じ梁内において梁の幅は一定であるため、やはり静電吸着と高い光効率を両立させることは困難であった。この問題に対しては、ある程度設計によって回避することが可能である。例えば、下部電極と上部電極を有する梁とのギャップを狭くするとか、又は梁の長さを短くすることによって、横方向への吸着現象は発生しにくくなる。しかし、他の特性まで同時に変化してしまい、必ずしも十分に横方向への吸着現象のみを防ぐことはできない。
このような問題に鑑みて、本実施形態例においては、静電駆動に必要な電極層と光を反射する反射層とを分離し、梁を2段に作成することにより、静電引力による横方向への吸着現象を回避する構造とする。この例で示す静電駆動素子は、以下の点で新規な内容になっている。
図5A及びBにこの静電駆動素子の概略平面構成及び概略断面構成図を示す。図5Bに示すように、この場合先ず基板上に下部電極3が形成され、この上に例えば全面的に絶縁層4が形成される。そしてこの下部電極3の上部にこれと対向して、導電性材料より成る上部電極6と絶縁層7より成る梁20Aがブリッジ状に形成される。この梁20Aは、下部電極3とは異なるエッチング特性の材料を犠牲層として形成し、その上に被着して、後に犠牲層をエッチング除去することによって形成される。なお、絶縁層4は、上部電極6の支持部の直下のみに設けてもよい。
そして更に、この梁20Aの上に、ブリッジ状の反射層10より成るいわば第2の梁20Bが形成され、2つの梁20A及びBより成る梁20が構成される。この反射層10より成る梁20Bも、同様にエッチング特性の異なる犠牲層を用いて容易に形成することができる。なお、このような2段構造の静電駆動素子の製造方法については後述する。
この場合、図5Aに示すように、反射層10の幅W2は、上部電極6及びこの上の絶縁層7の幅W1に対し幅広に、すなわちW1<W2とされる。
つまりこの場合、光変調素子として光が照射される領域(図5A中破線Lで示す)においては、梁20の幅が広くなっており、より多くの光を反射することができるため、光効率が向上する。
図5A及びBにおいて説明した構造の梁20を複数並べ、光変調素子として利用可能な静電駆動素子を構成した場合の一例を図6の概略斜視構成図に示す。図6において、図5A及びBと対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
従来の静電駆動素子において問題となっていた静電駆動による横方向への吸着現象は、横方向の電極間距離(図6中Yで示す)によって規定される。すなわち図6に示すY(電極間距離)が小さいほど横方向への静電吸着による故障モードが発生し易くなる。
これに対し、回折格子型の光変調素子としての光効率は、梁のピッチに対する幅、すなわちいわゆるフィルファクターによって規定される。このフィルファクターは、梁の幅をZ、梁同士の間隔をXとすると、Z/(X+Z)として表される。すなわち、隣接する反射層の間の距離Xが小さいほど光効率が向上する。
従来の静電駆動素子では、上部電極6の間隔Yと、反射層10の間隔Xが基本的にX=Yであったため、これを大きくすると光効率が下がり、小さくすると横方向への静電吸着が発生しやすくなるというトレードオフの関係であった。
これに対し、本実施形態例の構造では、これらX及びYを個別に設計できるため、光効率と故障モードの防止を両立させることが可能となる。すなわち、本実施形態例によれば、従来は分離できなかった回折型光変調素子としての光効率に関わるパラメータと横方向への静電吸着による故障モードに関わるパラメータとを分離することができ、したがって光効率と故障モードの防止を両立し、より高い性能を有する光変調素子の実現が可能となる。
またこの例においても、上述の第1及び第2の参考例と同様に、上部電極6の下面には誘電体が存在しないことから、上部電極6と下部電極3との間で直列に存在する誘電体層の数を少なくすることができ、チャージの蓄積による駆動電圧シフトを抑えることができる。
また、これらの静電駆動素子を例えばプロジェクターにおける光変調素子として用いることにより、チャージング発生量の抑制によって、駆動電圧の変動が抑えられることから、光変調素子の不具合による画像の乱れ、表示特性の低下を抑制することが可能となる。
以上説明した第の実施形態例による静電駆動素子の製造方法の一例を、図7A〜F及び図8A〜Fを参照して説明する。なお、各部の材料は、上述の第1の参考例において説明した例と同様の材料を用いることができる。また、以下に示す概略平面構成図においては、並列する2本の梁に対応する領域を示すが、梁の本数はこの例に限定されるものではない。
先ず図7Aに示すように、下部電極3上に例えば全面的に絶縁層4が被着される。この後、図7Bに示すように、上部電極のパターンに対応するパターンの犠牲層5をCVD及びフォトリソグラフィの適用によって形成する。その後、図7Cに示すように、この犠牲層5上を覆って上部電極6及び絶縁層7を形成する。この工程での上面からみた概略平面構成図を図7Dに示す。図7C及びDに示すように、犠牲層5により絶縁層7には段差7Sが生じる。
次に、図7Dにおいて一点鎖線a1及びa2で区切られる領域に、図7Eに示すように、開口8をフォトリソグラフィ等によって形成する。
そしてこの後、開口8を含む絶縁層7の上面に第2の犠牲層9を所定のパターンをもって形成する。この犠牲層9は、開口8上を跨いで形成されることから上面に凹凸が生じるが、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)により図7Gに示すように容易に表面を平らにすることが可能である。この工程での上面からみた概略平面構成図を図7Fに示す。図7Fに示すように、犠牲層9は、開口8よりも中央寄りに形成される。
そしてこの後、図8Aに示すように、犠牲層9の上を覆って所定の領域に反射層10を形成する。この工程での上面からみた概略平面構成図を図8Bに示す。図8A及びBに示すように、犠牲層9により反射層10には段差10Sが生じる。
次に、図8Cに示すように、2本分の梁に対応するように、反射層10を分断するエッチングを行う。この工程における概略断面構成図を図8Dに示す。図8C及びDに示すように、図8D中一点鎖線b1、b2で区切られた領域のみにおいて、反射層10が所定の間隔をもって隣接するように間隙11を形成し、反射層10を目的とする形状にパターニングする。
この後、犠牲層5及び9を同時に除去することによって、図8Eに示すように、上部電極6の下部と、反射層10の下部にそれぞれ空間12及び13を形成し、いわば2段構成の梁20を形成する。この工程における概略平面構成図を図8Fに示す。
図8Fから明らかなように、このような製造工程を経て形成された静電駆動素子は、隣接する梁20同士の間において、上部電極6の間隔Yよりも反射層10の間隔Xが小さく、すなわち反射層10の幅が上部電極6と比較して幅広となっており、またフィルファクターZ/(Z+X)が大となっていることがわかる。
なお、上述の図5及び図6において説明した本実施形態例の静電駆動素子は、以上説明した製造方法に限定されることなく、その他種々の方法によって製造することが可能である。また本実施形態例の静電駆動素子は、図5及び図6において示す構成に限定されるものではなく、例えば絶縁層4が梁20の支持部の直下のみに形成されるなど、梁20以外の材料構成において種々の変形が可能である。
〔4〕第の実施形態例
次に、本発明による静電駆動素子の第の実施形態例について説明する。この例においても、静電駆動素子の梁の上面に反射層を設け、回折格子型の光変調素子として利用可能とする例を示す。図9A〜Cはこの実施形態例における静電駆動素子の一例の概略平面構成図、梁の長手方向に沿う概略断面構成図、更に梁の長手方向と直交する概略断面構成図を示す。図9A〜Cにおいて、図5A及びBと対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
図9A及びBに示すように、この場合、絶縁層7を挟んで下側に上部電極6、上側に直接的に反射層7を形成する。ただし、上部電極6の幅は、図9Cに示すように、比較的狭くされ、反射層10が相対的に幅広に形成される。
このような構造の梁を複数並べた場合の静電駆動素子の一例の概略断面構成図を図10に示す。図10において、図9A〜Cと対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。上述の第の実施形態例と同様に、光効率はフィルファクター、すなわち反射層10間の間隙をX、幅をZとしたときZ/(X+Z)によって規定され、横方向への静電引力は隣接する梁の間の上部電極6の間隔Yによって規定されるため、光効率向上と横方向への静電吸着回避を両立させることができる。
すなわちこの実施形態例においても、上述の第の実施形態例と同様に、従来は分離できなかった回折型光変調素子としての光効率に関わるパラメータと横方向への静電吸着による故障モードに関わるパラメータとを分離することができ、光効率と故障モードの防止を両立し、より高い性能を有する光変調素子として利用可能な静電駆動素子を提供することができる。
このような構造の静電駆動素子の製造方法の一例を、図11A〜Hを参照して説明する。なお、各部の材料は、上述の第1の参考例において説明した例と同様の材料を用いることができる。また、以下に示す梁の長手方向と直交する概略断面構成図においては、並列する2本の梁に対応する領域を示すが、梁の本数はこの例に限るものではない。
先ず図11Aに示すように、下部電極3上に絶縁層4が被着される。この後、上部電極のパターンに対応するパターンの犠牲層5をCVD及びフォトリソグラフィの適用によって形成する。その後、図11Bに示すように、この犠牲層5上を覆って上部電極6、絶縁層7及び反射層10を形成する。
次に、図11Cに示すように、図11C中一点鎖線c1及びc2で区切られた領域において、図11Dに長手方向と直交する概略断面構成図を示すように、上部電極6、絶縁層7及び反射層10を分断する間隙11を、犠牲層5に対し選択性を有する異方性エッチングによって形成する。
次に、図11Eに示すように、上部電極6以外の各層に対して十分なエッチング選択性を有する材料による等方性エッチングを行い、上部電極6が絶縁層7及び反射層10に対し幅狭となるように形成する。
この後、図11Fに示すように、犠牲層5を除去する選択エッチングを行って、前述の図9A〜C及び図10において説明した構成の梁20を形成する。この工程における梁20の長手方向と直交する概略断面構成図を図11Gに示す。図11Gから明らかなように、このような製造工程によって、梁20の反射層10の間の間隔Xは上部電極6の間隔Yよりも小さく、またフィルファクターZ/(Z+X)を大とできることがわかる。
なお、上述の図9及び図10において説明した本実施形態例の静電駆動素子は、以上説明した製造方法に限定されることなく、その他種々の方法によって製造することが可能である。
また、本例の静電駆動素子において、梁の長手方向と直交する断面の形状は、前述の図9Cに示す例に限定されるものではなく、例えば上部電極6の両端が絶縁層7に覆われている形状であってもよい。この構成とする静電駆動素子の製造方法の一例を、図12A〜Iを参照して説明する。
この場合においても、各部の材料は、上述の第1の参考例において説明した例と同様の材料を用いることができる。また、以下に示す梁の長手方向と直交する概略断面構成図においては、並列する2本の梁に対応する領域を示すが、梁の本数はこの例に限るものではない。
先ず図12Aに示すように、下部電極3上に絶縁層4が被着される。この後、上部電極のパターンに対応するパターンの犠牲層5をCVD及びフォトリソグラフィの適用によって形成する。その後、図12Bに示すように、この犠牲層5上を覆って上部電極6を形成し、一点鎖線e1及びe2で区切られた領域において、図12Cに示すように間隙15を形成する。このパターニングは、犠牲層5に対し十分な選択性を有するエッチング方法により行う。
次に、このパターン形成した上部電極6上を覆って絶縁層7を形成する。このとき、上部電極6の間の間隙15によって、絶縁層7の上面に凹凸が生じるが、例えばCMP法により上面を平坦化する。このとき、上部電極6及び絶縁層7の膜厚マージンに対して、CMPにより除去する膜厚の精度が十分とれることが必要である。
その後、図12Fに示すように、一点鎖線f1及びf2で区切られた領域の絶縁層7及び反射層10に対する選択的な異方性エッチングを行って、図12Gに示すように梁20を分断する間隙11を形成する。
そして、図12Hに示すように、犠牲層5を選択的に除去して、梁20を形成する。図12Iに示すように、この例においても、梁20の反射層10の間の間隔Xは上部電極6の間隔Yよりも小さく、またフィルファクターZ/(Z+X)を大とできることがわかる。
〔5〕第の実施形態例
次に、本発明の静電駆動素子を回折格子型の光変調素子として構成する場合において、各梁が幅方向に傾くいわゆるブレーズ構造とする例について説明する。
図13A及びBは、梁を下部電極に対しほぼ平行に設ける通常の光変調素子と、梁を幅方向に傾けるいわゆるブレーズ構造の光変調素子の一例の概略断面構成図である。図13A及びBにおいて、図1と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
図13Aに示すように、この光変調素子においては、1つおきの梁に電圧を印加して、下部電極3との静電引力によりこれを凹ませる構造となっている。この構造に矢印Liで示すように光を入射すると凹ませた変位量によって一次回折光L(+1)、L(−1)の強度が制御できるため、光の変調が可能となる。
この場合、梁の変位量を入射光の波長の4分の1にすると一次回折光の強度が最大となる。
また、図13Bに示すように、梁を幅方向に傾けたブレーズ型構造とすると、回折光の方向を矢印L(+1)で示すように1方向へ限定できる(米国特許第6639722B2号参照。)。
このような回折微小光学素子の光効率は、主に反射率、梁のフィルファクター、梁の形状の3つにより決定される。このうち反射率と梁の形状が理想的な値である場合、梁のフィルファクター、すなわち光照射面積に対する梁の面積の比率が高いほど、光効率は向上する。
通常の構造(フラット構造)とブレーズ構造における、フィルファクターと光効率との関係を図14に示す。ブレーズ構造の場合は、回折光の方向を完全に1方向へ限定できるため、フィルファクターが100%ならば光効率も100%となることがわかる。
すなわち、このようなブレーズ構造を用いた静電駆動素子に対して上記第の実施形態例又は第の実施形態例の構造を採用すると、横方向への静電吸着現象が回避できるため、隣接する梁の間隔は、梁の間の間隙の加工精度限界まで狭めることができ、フィルファクターを100%に近い値にまで高めることが可能である。
したがって、図15に示すように、例えば前述の図5A及びB、図6において説明した構造を採用するとともに、その反射層10をブレーズ構造として形成することによって、光効率を理論的な限界値近くまで高めることができる。
なお、ブレーズ構造を実現する具体的な構造としては、例えば梁20のうち反射層10による上段の梁のみを、その長手方向両端に段差部を設ける構成とし、この段差部の深さ及び幅を適切に選定することによって、梁中央部の光照射領域において、所望の角度をもって幅方向に傾斜したブレーズ構造とすることができる(例えば米国特許第6639722B2号参照)。また、ブレーズ構造やその梁の支持構造などにおいては、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
以上説明したように、上述の第1〜第の実施形態例においては、静電駆動素子において、上部電極と下部電極との間の誘電体層を設けないか、又は1層のみとすることによって、従来に比してチャージング発生量を抑制することができて、チャージの蓄積による駆動電圧シフトを抑えることができる。
また、こられの静電駆動素子を例えばプロジェクターにおける光変調素子として用いることにより、チャージング発生量の抑制によって、駆動電圧の変動が抑えられることから、光変調素子の不具合による画像の乱れ、表示特性の低下を抑制することが可能となる。
また更に、本発明の第〜第の実施形態例においては、上記効果に加え、上部電極と反射層との幅を変えて構成することによって、横方向の吸着が発生しないよう十分隣接する梁の間隔を広く取り、且つ、光効率に関わる反射層の間隔を狭小化することによって、高い光効率と横方向への吸着回避を両立させることができるという効果も得ることができる。
〔6〕第の実施形態例
次に、本発明の静電駆動素子を光変調素子としてプロジェクターに用いた一実施形態例について、図16の概略構成図を参照して説明する。
本実施形態例は、回折格子型光変調素子の例えばGLVを光変調素子として用いたレーザーディスプレイにおいて、その光変調素子として本発明による静電駆動素子を適用する例を示す。
このプロジェクターは、例えば、大型スクリーン用プロジェクター、特にディジタル画像のプロジェクターとして、または、コンピュータ画像投影用として用いられるものである。
図12に示すように、このプロジェクター81は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色のレーザー光源82R、82G、82Bと、各レーザー光源に対して、それぞれ光軸上に順次設けられたミラー84R、84G、84B、各色照明光学系(レンズ群)86R、86G、86B、及び光変調素子として機能する上述の本発明に係る静電駆動素子88R、88G、88Bを備えている。この静電駆動素子としては、例えば上述の第乃至第の実施形態例において説明した構成の静電駆動素子が好適である。
レーザー光源82R、82G及び82Bは、それぞれ赤色光(例えば波長642nm、光出力約3W)、緑色光(例えば波長532nm、光出力約2W)、青色光(波長457nm、光出力約1.5W)のレーザーを射出する。なお、レーザー光の波長及び光出力はこれらに限定されるものではない。
更に、レーザーディスプレイ81は、本発明構成の静電駆動素子より成る静電駆動素子88R、88G、88Bによりそれぞれ光強度が変調された赤色レーザー光、緑色レーザー光及び青色レーザー光を合成する色合成フィルタ90、空間フィルタ92、ディフューザー94、ミラー96、ガルバノスキャナー等の走査照明系98、投影光学系(レンズ群)100、及びスクリーン102を備えている。色合成フィルタ90は、例えばダイクロイックミラーで構成される。
本実施形態例のプロジェクター81は、レーザー光源82R、82G、82Bから射出されたRGB各レーザー光が、それぞれミラー84R、84G、84Bを経て各色照明光学系86R、86G、86Bから各静電駆動素子88R、88G、88Bに同期入力されるようになっている。
更に、各レーザー光は、静電駆動素子88R、88G、88Bによって回折されることにより空間変調され、これら3色の回折光が色合成フィルタ90によって合成され、続いて空間フィルタ92によって信号成分のみが取り出される。
次いで、このRGBの画像信号は、ディフューザー94によってレーザースペックルが低減され、ミラー96を経て、画像信号と同期する走査照明系98によって空間に展開され、投影光学系100によってスクリーン102上にフルカラー画像として投影される。
このプロジェクター81においては、本発明構成の静電駆動素子を光変調素子として用いることから、チャージングによる駆動電圧シフトがなくなる。したがって、通常は、梁毎、又は静電駆動素子毎にチャージ量が異なるためそれらの値を駆動電圧にフィードバックするシステムを必要とするが、本実施形態例においては、このようなフィードバックシステムは不要となる。
なお、本発明による静電駆動素子及びプロジェクターは上述の実施形態例に限定されるものではなく、その他静電駆動素子の材料構成、特に梁の形状や支持部の構造など、またプロジェクターにおいては、その各光学部品の構成などについては、本発明構成を逸脱しない範囲で種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。
〔7〕第参考例
次に、静電駆動素子を光学用途以外の用途に用いる参考例として、インクジェットプリンタヘッドに用いる例について、図17の概略断面構成図を参照して説明する。
図17に示すように、この例においては、基板2上に例えば絶縁層16が形成され、その上に下部電極3が形成され、これを覆って誘電体層14が形成される。そして、この上に上部電極6及び絶縁層7より成る梁20がこれら下部電極3及び誘電体層14を跨ぐようにブリッジ状に形成され、参考例の構成の静電駆動素子1が構成される。
一方、このような梁20を有する静電駆動素子1が形成された基板2上に、蓋体51が図示しない支持部によって、静電駆動素子1を含む内部を密閉し、適切な容積を保つように形成され、その一部に開孔が形成されて、インクジェットノズル53とされる。
静電駆動素子1の上部の蓋体51内部は例えばインク流路52とされる。梁20の下部、すなわち上部電極6と誘電体層14との間は空間12としてもよく、また液体が注入されていてもよい。
このような構成において、静電駆動素子1の下部電極3及び上部電極6に電圧を印加することによって、静電反発力を生じさせて梁20を押し上げることにより、流路52内のインクをインクジェットノズル53から外部に射出させることができる。
この例においては、参考例の構成の静電駆動素子を用いることから、上述の各参考例にかかる形態例と同様に、チャージングによる駆動電圧シフトがなくなる。したがって、安定した特性のインクジェットプリンタヘッドを提供することが可能となる。
またこの例においても、図17に示す例に限定されるものではなく、参考例の構成の静電駆動素子を用いる構成であれば、その他種々の構成のインクジェットプリンタヘッドに適用することができる。
また、本発明による静電駆動素子は、その他の静電引力又は静電反発力を利用する各種の静電駆動素子に適用可能であり、またこの静電駆動素子を用いる各種の装置に適用可能であることはいうまでもない。
電駆動素子の一参考例の概略断面構成図である。 電駆動素子の一参考例の概略断面構成図である。 電駆動素子の一参考例の概略断面構成図である。 電駆動素子の一参考例の概略断面構成図である。 Aは本発明による静電駆動素子の一実施形態例の概略平面構成図である。Bは本発明による静電駆動素子の一実施形態例の概略断面構成図である。 本発明による静電駆動素子の一実施形態例の概略斜視構成図である。 A〜Hは本発明による静電駆動素子の一実施形態例の製造工程図である。 A〜Fは本発明による静電駆動素子の一実施形態例の製造工程図である。 Aは本発明による静電駆動素子の一実施形態例の概略平面構成図である。Bは本発明による静電駆動素子の一実施形態例の概略断面構成図である。Cは本発明による静電駆動素子の一実施形態例の要部の概略断面構成図である。 本発明による静電駆動素子の一実施形態例の概略断面構成図である。 A〜Gは本発明による静電駆動素子の一実施形態例の製造工程図である。 A〜Iは本発明による静電駆動素子の一実施形態例の製造工程図である。 Aは通常の光変調素子の一例の概略断面構成図である。Bはブレーズ構造による光変調素子の一例の概略断面構成図である。 通常の光変調素子とブレーズ構造による光変調素子におけるフィルファクターと光効率との関係を示す図である。 本発明による静電駆動素子の一実施形態例の概略断面構成図である。 本発明によるプロジェクターの一実施形態例の概略構成図である。 静電駆動素子の一参考例を用いたインクジェットプリンタヘッドの要部の概略断面構成図である。 A及びBは従来の静電駆動素子の一例の概略断面構成図である。 従来の静電駆動素子の一例の概略斜視構成図である。
符号の説明
2.基板、3.下部電極、4.絶縁層、5.犠牲層、6.上部電極、7.絶縁層、8.開口、9.犠牲層、10.反射層、11.間隙、12.空間、13.空間、14.誘電体層、15.間隙、16.絶縁層、20.梁、50.インクジェットプリンタヘッド、51.蓋体、52.インク流路、53.インクジェットノズル、81.プロジェクター、82R.光源、82G.光源、82B.光源、86R.照明光学系、86G.照明光学系、86B.88R.光変調素子、88G.光変調素子、88B.光変調素子、90.色合成フィルタ、92.空間フィルタ、94.ディフューザー、96.ミラー、98.走査照明系、100.投影光学系、102.スクリーン

Claims (13)

  1. 基板上に形成された下部電極と、
    前記下部電極と対向して設けられ、上部電極と、前記上部電極上に形成される絶縁層とを有する第1の梁と、
    前記第1の梁の前記絶縁層上に設けられ、反射層を有し、前記絶縁層と前記反射層の間に空間を形成する第2の梁と、を備え、
    前記第1の梁は、静電引力により前記下部電極側に駆動する
    電駆動素子。
  2. 前記反射層が、前記第1の梁上の少なくとも光照射領域を含む一部の領域に設けられ
    求項記載の静電駆動素子。
  3. 前記反射層は、前記上部電極よりも幅広に形成され
    求項記載の静電駆動素子。
  4. 前記第1の梁及び前記第2の梁は2以上配列され、
    一部の前記第1の梁の駆動により回折格子が構成されて、光に対し回折作用を有す
    求項記載の静電駆動素子。
  5. 前記第1の梁及び前記第2の梁は、その長手方向の両端部において段差が設けられて幅方向に傾きを生じさせる構造であ
    求項記載の静電駆動素子。
  6. 前記下部電極と、前記上部電極との間が空間とされて成
    求項1記載の静電駆動素子。
  7. 前記上部電極を構成する材料が、Ti、W、Mo、Co、Niのうち少なくとも1つの材料であ
    求項1記載の静電駆動素子。
  8. 光源と、該光源から出射された光の光軸上に配置され、前記光の強度を変調する光変調素子とを有するプロジェクターであって、
    前記光変調素子は、
    基板上に形成された下部電極と、
    前記下部電極と対向して設けられ、上部電極と、前記上部電極上に形成される絶縁層とを有する第1の梁と、
    前記第1の梁の前記絶縁層上に、反射層を有し、前記絶縁層と前記反射層の間に空間を形成する第2の梁と、を備え、
    前記第1の梁及び前記第2の梁は、2以上配列され、
    前記第1の梁は、静電引力により前記下部電極側に駆動して回折格子を構成する静電駆動素子により構成され
    ロジェクター。
  9. 前記静電駆動素子の前記反射層は、前記第1の梁上の少なくとも光照射領域を含む一部の領域に設けられ
    求項記載のプロジェクター。
  10. 前記静電駆動素子の前記反射層は、前記上部電極よりも幅広に形成され
    求項記載のプロジェクター。
  11. 前記静電駆動素子の前記第1の梁及び前記第2の梁は、その長手方向の両端部において段差が設けられて幅方向に傾きを生じさせる構造であ
    求項記載のプロジェクター。
  12. 前記静電駆動素子の前記下部電極と、前記上部電極との間が空間とされて成
    求項記載のプロジェクター。
  13. 前記静電駆動素子の前記上部電極を構成する材料が、Ti、W、Mo、Co、Niのうち少なくとも1つの材料であ
    求項記載のプロジェクター。
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