JP4887755B2 - 静電駆動素子とこれを用いたプロジェクター - Google Patents
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Description
図19は、光の反射や回折を利用し、光スイッチ、光変調素子等に適用可能な静電駆動素子の代表的な例の概略斜視構成図である。基板2上に2以上のリボン(条帯)状の下部電極3が配列形成されて成り、その上に下部電極3に対向して略平行に、かつこの下部電極3とは空間によって電気的に絶縁された薄膜リボン状の梁20が例えばその両端を支持部16(16A及び16B)により支持された状態で、ブリッジ状に配列形成される。
これにより、ある方向への反射光強度を連続的に変えることができるものであり、より具体的には、梁を2以上並列した静電駆動素子を多数並置配列することによって、1次元型の光変調素子として使用するものである。このような1次元型の光変調素子は、例えば米国Silicon Light Machine社が開発した回折ライトバルブ(GLV:grating light valve)が知られており、プロジェクター等への応用が期待されている(特許文献1及び2参照。)。
また、梁を1本とする場合は、例えば駆動位置に応じて反射方向を変化させることにより、スイッチ機能を持たせた光スイッチとして利用することも可能である。
MOSにおいては、例えばNa+イオンなどの不純物イオンが長時間の電界印加により負極側に移動するとか、負極側からSiO2の伝導帯へ電子が注入され、正電極近傍のSiO2膜にトラップされ、局所的に電界を増加させるという現象などがある。
上述の静電駆動素子においてこのような誘電体中の欠陥によるチャージの蓄積が生じると、駆動電圧(Vop)の変動が引き起こされ、一定電圧で駆動させた場合にも、素子間で梁の変位特性が変わってしまう場合がある。また、素子条件によっては、長時間電圧を印加することによる絶縁破壊(TDDB:Time Dependant Dielectric Breakdown)が発生する可能性があるなど、信頼性上問題となる。
しかしながらこのような工夫を行っても、例えば電圧印加に伴う誘電体層への水分などの吸着によって、依然として梁の下面側の絶縁層においてチャージが蓄積されることが問題となっており、より確実にチャージングの発生量を抑えることが望まれている。
このように、本発明の静電駆動素子においては、梁の母材、すなわち第1の梁を支える材料である絶縁層(誘電体)の下に上部電極となる導電膜を設ける構造とすることから、電荷がこの第1の梁の下部電極と対向する下面側に蓄積されることが殆どなくなり、チャージングの発生量を抑えることができる。
このように、第1の梁の絶縁層の上に上部電極とは別体の反射層を設ける構成とする場合は、光スイッチ、光変調などの光学的機能を有する静電駆動素子において、上述したようにチャージングの発生量を抑えることができる。
このように、本発明の静電駆動素子においては、第1の梁上の反射膜は、電極を目的とする必要がなくなるため、光が入射するところにだけ限定して形成すればよく、光照射領域外の反射膜による余計な散乱光の発生を抑えることができるという利点も有する。
このような構成とする場合は、反射膜を幅広にすることによって光利用効率を高めることができると共に、特に、上部電極同士のいわゆる横方向の貼り付きの発生を抑制し、静電駆動素子の不具合の発生を抑える効果が得られる。
このような本発明のプロジェクターによれば、上述したように、静電駆動素子の上部電極と下部電極との間のチャージングの発生量が抑えられ、良好な駆動特性を保持した静電駆動素子を光変調素子として用いることによって、光変調素子の不具合による画像の乱れ、表示特性の低下を抑制することが可能となる。
また、本発明のプロジェクターによれば、その光変調素子の特性が良好に保持されることによって、特性の低下を抑制することが可能となる。
〔1〕第1の参考例
図1の概略断面構成図を参照して静電駆動素子の第1の参考例を説明する。図1に示すように、第1の参考例の静電駆動素子1は、上部電極6と絶縁層7とを有する梁20が、基板2上に形成された下部電極3と対向して例えばブリッジ状に、図示の例では両持ち梁式に設けられる。そして、例えば下部電極3を接地し、上部電極6に適切な電圧を印加することによって、静電引力により梁20が下部電極3側に駆動される構成とするものであり、特に梁20の絶縁層7は、上部電極6の上に形成する。 またこの例においては、上部電極6上の絶縁層7の上面に、反射層10を設ける構成とする。すなわちこの場合、前述の図19において説明した例と同様に、梁を例えば1つおきに駆動して回折格子を構成するもので、梁の駆動により、ある方向への反射光強度を連続的に変えることができ、このような梁を2以上並列した静電駆動素子を多数並置配列することによって、1次元型の光変調素子として例えばプロジェクターなどに使用することができる。
したがって、前述したようなMOS等において問題となっていた誘電体膜の欠陥等により発生する電荷蓄積の問題は回避されることとなり、上部電極6と下部電極3との間に電荷が蓄積されず、チャージング発生量を確実に抑えることができることがわかる。
この場合、図1に示すように、基板2及び下部電極3までは従来の例えば図18A及びBにおいて説明した静電駆動素子と同様の材料及び構造とし得る。
すなわち基板2は、例えば、SiやGaAsなどの半導体基板上に絶縁膜を形成した基板、石英基板やガラス基板のような絶縁性基板などが用いられる。基板2側の下部電極3は、不純物をドーピングした多結晶シリコン膜、金属膜(例えばW、Cr蒸着膜)などで形成される。
そして、梁20を形成するための犠牲層として、非晶質シリコン(a−Si)を減圧CVD(Chemical Vapor Deposition、化学的気相成長)法により形成する。この犠牲層の膜厚は、静電駆動素子を利用するデバイス特性に依存するが、例えば1μmの膜厚とし得る。
次に、梁20の材料となる絶縁層7、すなわち誘電体膜を形成する。ここでは、上述の一般的な光学MEMS素子と同じSiNやSiO2などより絶縁層7を形成する。膜厚は例えば100nmとする。
なお、この絶縁層7を減圧CVD等により形成する場合は、処理温度が800℃程度となるが、その下の上部電極6を上述した高融点材料により構成することによって、上部電極6の変形等を招くことなく、良好に絶縁層7を上部電極6上に形成することができる。
最後に反射層10として、膜厚例えば100nmのAl等を例えばスパッタにより形成する。
その後、犠牲層を選択的にエッチング除去することによって、図1に示す第1の参考例の構成の静電駆動素子を得ることができる。
本発明の構造とすることにより、静電容量は梁20の内側の空間12のみとなるため、反射層10と絶縁層7の界面である例えばAl/SiN膜の界面、更に絶縁層7である例えばSiN中に存在する欠陥などを介して電荷が蓄積されることはなく、チャージング発生量を確実に抑制することができる。
また、この静電駆動素子を例えばプロジェクターにおける光変調素子として用いることにより、チャージング発生量の抑制によって、駆動電圧の変動が抑えられることから、光変調素子の不具合による画像の乱れ、表示特性の低下を抑制することが可能となる。
次に、静電駆動素子の第2の参考例について図2の概略断面構成図を参照して説明する。図2において、図1と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。 第2の参考例の静電駆動素子は、その下部電極の材料構成によっては、様々なパターンが考えられる。この例においては、図2に示すように、下部電極3として、上述の第1の参考例実施形態例におけるように金属ではなく、例えば不純物ドープされた多結晶シリコン(poly−Si)又は非晶質シリコン(a−Si)などより構成する。
また、例えば図4にその一例の概略断面構成図を示すように、SOI(Silicon on Insulator)型構成の基板21を用いて、すなわち絶縁材より成る基板21上にSi単結晶薄膜やエピタキシャルSi膜より成るSi層22を形成し、この上に下部電極3を設ける場合も同様である。これら図3及び図4において、図2と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。なお、これらの図2〜図4の例においては、上述した下部電極3以外の材料構成については、前述の図1を参照して説明した第1の参考例と同様の材料構成とすることができる。
また、こられの静電駆動素子を例えばプロジェクターにおける光変調素子として用いることにより、チャージング発生量の抑制によって、駆動電圧の変動が抑えられることから、光変調素子の不具合による画像の乱れ、表示特性の低下を抑制することが可能となる。
次に、上述したチャージの蓄積を抑える効果に加えて、隣接する梁同士の間の静電引力を抑えることが可能な本発明の実施形態例について説明する。
この例においても、前述の図19において説明したように、梁を例えば1つおきに駆動して回折格子を構成して光変調素子として用いるもので、梁を複数並列し、これを静電引力によって一つおきに凹ませることで反射光に回折を生じさせ、ある方向への反射光強度を連続的に変えるものであり、このような梁を2以上並列した静電駆動素子を多数並置配列することによって、1次元型の光変調素子としてプロジェクター等に使用可能である。
なお、プロジェクターとして用いる場合には、梁を複数設けた静電駆動素子を一列に多数並べることによって表示される1次元の画像を走査照明系によりスキャニングすることによって2次元の画像を得る。
図5A及びBにこの静電駆動素子の概略平面構成及び概略断面構成図を示す。図5Bに示すように、この場合先ず基板上に下部電極3が形成され、この上に例えば全面的に絶縁層4が形成される。そしてこの下部電極3の上部にこれと対向して、導電性材料より成る上部電極6と絶縁層7より成る梁20Aがブリッジ状に形成される。この梁20Aは、下部電極3とは異なるエッチング特性の材料を犠牲層として形成し、その上に被着して、後に犠牲層をエッチング除去することによって形成される。なお、絶縁層4は、上部電極6の支持部の直下のみに設けてもよい。
この場合、図5Aに示すように、反射層10の幅W2は、上部電極6及びこの上の絶縁層7の幅W1に対し幅広に、すなわちW1<W2とされる。
つまりこの場合、光変調素子として光が照射される領域(図5A中破線Lで示す)においては、梁20の幅が広くなっており、より多くの光を反射することができるため、光効率が向上する。
従来の静電駆動素子において問題となっていた静電駆動による横方向への吸着現象は、横方向の電極間距離(図6中Yで示す)によって規定される。すなわち図6に示すY(電極間距離)が小さいほど横方向への静電吸着による故障モードが発生し易くなる。
これに対し、回折格子型の光変調素子としての光効率は、梁のピッチに対する幅、すなわちいわゆるフィルファクターによって規定される。このフィルファクターは、梁の幅をZ、梁同士の間隔をXとすると、Z/(X+Z)として表される。すなわち、隣接する反射層の間の距離Xが小さいほど光効率が向上する。
これに対し、本実施形態例の構造では、これらX及びYを個別に設計できるため、光効率と故障モードの防止を両立させることが可能となる。すなわち、本実施形態例によれば、従来は分離できなかった回折型光変調素子としての光効率に関わるパラメータと横方向への静電吸着による故障モードに関わるパラメータとを分離することができ、したがって光効率と故障モードの防止を両立し、より高い性能を有する光変調素子の実現が可能となる。
また、これらの静電駆動素子を例えばプロジェクターにおける光変調素子として用いることにより、チャージング発生量の抑制によって、駆動電圧の変動が抑えられることから、光変調素子の不具合による画像の乱れ、表示特性の低下を抑制することが可能となる。
先ず図7Aに示すように、下部電極3上に例えば全面的に絶縁層4が被着される。この後、図7Bに示すように、上部電極のパターンに対応するパターンの犠牲層5をCVD及びフォトリソグラフィの適用によって形成する。その後、図7Cに示すように、この犠牲層5上を覆って上部電極6及び絶縁層7を形成する。この工程での上面からみた概略平面構成図を図7Dに示す。図7C及びDに示すように、犠牲層5により絶縁層7には段差7Sが生じる。
そしてこの後、開口8を含む絶縁層7の上面に第2の犠牲層9を所定のパターンをもって形成する。この犠牲層9は、開口8上を跨いで形成されることから上面に凹凸が生じるが、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)により図7Gに示すように容易に表面を平らにすることが可能である。この工程での上面からみた概略平面構成図を図7Fに示す。図7Fに示すように、犠牲層9は、開口8よりも中央寄りに形成される。
そしてこの後、図8Aに示すように、犠牲層9の上を覆って所定の領域に反射層10を形成する。この工程での上面からみた概略平面構成図を図8Bに示す。図8A及びBに示すように、犠牲層9により反射層10には段差10Sが生じる。
次に、図8Cに示すように、2本分の梁に対応するように、反射層10を分断するエッチングを行う。この工程における概略断面構成図を図8Dに示す。図8C及びDに示すように、図8D中一点鎖線b1、b2で区切られた領域のみにおいて、反射層10が所定の間隔をもって隣接するように間隙11を形成し、反射層10を目的とする形状にパターニングする。
図8Fから明らかなように、このような製造工程を経て形成された静電駆動素子は、隣接する梁20同士の間において、上部電極6の間隔Yよりも反射層10の間隔Xが小さく、すなわち反射層10の幅が上部電極6と比較して幅広となっており、またフィルファクターZ/(Z+X)が大となっていることがわかる。
なお、上述の図5及び図6において説明した本実施形態例の静電駆動素子は、以上説明した製造方法に限定されることなく、その他種々の方法によって製造することが可能である。また本実施形態例の静電駆動素子は、図5及び図6において示す構成に限定されるものではなく、例えば絶縁層4が梁20の支持部の直下のみに形成されるなど、梁20以外の材料構成において種々の変形が可能である。
次に、本発明による静電駆動素子の第2の実施形態例について説明する。この例においても、静電駆動素子の梁の上面に反射層を設け、回折格子型の光変調素子として利用可能とする例を示す。図9A〜Cはこの実施形態例における静電駆動素子の一例の概略平面構成図、梁の長手方向に沿う概略断面構成図、更に梁の長手方向と直交する概略断面構成図を示す。図9A〜Cにおいて、図5A及びBと対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
図9A及びBに示すように、この場合、絶縁層7を挟んで下側に上部電極6、上側に直接的に反射層7を形成する。ただし、上部電極6の幅は、図9Cに示すように、比較的狭くされ、反射層10が相対的に幅広に形成される。
すなわちこの実施形態例においても、上述の第1の実施形態例と同様に、従来は分離できなかった回折型光変調素子としての光効率に関わるパラメータと横方向への静電吸着による故障モードに関わるパラメータとを分離することができ、光効率と故障モードの防止を両立し、より高い性能を有する光変調素子として利用可能な静電駆動素子を提供することができる。
先ず図11Aに示すように、下部電極3上に絶縁層4が被着される。この後、上部電極のパターンに対応するパターンの犠牲層5をCVD及びフォトリソグラフィの適用によって形成する。その後、図11Bに示すように、この犠牲層5上を覆って上部電極6、絶縁層7及び反射層10を形成する。
次に、図11Eに示すように、上部電極6以外の各層に対して十分なエッチング選択性を有する材料による等方性エッチングを行い、上部電極6が絶縁層7及び反射層10に対し幅狭となるように形成する。
なお、上述の図9及び図10において説明した本実施形態例の静電駆動素子は、以上説明した製造方法に限定されることなく、その他種々の方法によって製造することが可能である。
この場合においても、各部の材料は、上述の第1の参考例において説明した例と同様の材料を用いることができる。また、以下に示す梁の長手方向と直交する概略断面構成図においては、並列する2本の梁に対応する領域を示すが、梁の本数はこの例に限るものではない。
先ず図12Aに示すように、下部電極3上に絶縁層4が被着される。この後、上部電極のパターンに対応するパターンの犠牲層5をCVD及びフォトリソグラフィの適用によって形成する。その後、図12Bに示すように、この犠牲層5上を覆って上部電極6を形成し、一点鎖線e1及びe2で区切られた領域において、図12Cに示すように間隙15を形成する。このパターニングは、犠牲層5に対し十分な選択性を有するエッチング方法により行う。
その後、図12Fに示すように、一点鎖線f1及びf2で区切られた領域の絶縁層7及び反射層10に対する選択的な異方性エッチングを行って、図12Gに示すように梁20を分断する間隙11を形成する。
そして、図12Hに示すように、犠牲層5を選択的に除去して、梁20を形成する。図12Iに示すように、この例においても、梁20の反射層10の間の間隔Xは上部電極6の間隔Yよりも小さく、またフィルファクターZ/(Z+X)を大とできることがわかる。
次に、本発明の静電駆動素子を回折格子型の光変調素子として構成する場合において、各梁が幅方向に傾くいわゆるブレーズ構造とする例について説明する。
図13A及びBは、梁を下部電極に対しほぼ平行に設ける通常の光変調素子と、梁を幅方向に傾けるいわゆるブレーズ構造の光変調素子の一例の概略断面構成図である。図13A及びBにおいて、図1と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
図13Aに示すように、この光変調素子においては、1つおきの梁に電圧を印加して、下部電極3との静電引力によりこれを凹ませる構造となっている。この構造に矢印Liで示すように光を入射すると凹ませた変位量によって一次回折光L(+1)、L(−1)の強度が制御できるため、光の変調が可能となる。
この場合、梁の変位量を入射光の波長の4分の1にすると一次回折光の強度が最大となる。
このような回折微小光学素子の光効率は、主に反射率、梁のフィルファクター、梁の形状の3つにより決定される。このうち反射率と梁の形状が理想的な値である場合、梁のフィルファクター、すなわち光照射面積に対する梁の面積の比率が高いほど、光効率は向上する。
通常の構造(フラット構造)とブレーズ構造における、フィルファクターと光効率との関係を図14に示す。ブレーズ構造の場合は、回折光の方向を完全に1方向へ限定できるため、フィルファクターが100%ならば光効率も100%となることがわかる。
したがって、図15に示すように、例えば前述の図5A及びB、図6において説明した構造を採用するとともに、その反射層10をブレーズ構造として形成することによって、光効率を理論的な限界値近くまで高めることができる。
なお、ブレーズ構造を実現する具体的な構造としては、例えば梁20のうち反射層10による上段の梁のみを、その長手方向両端に段差部を設ける構成とし、この段差部の深さ及び幅を適切に選定することによって、梁中央部の光照射領域において、所望の角度をもって幅方向に傾斜したブレーズ構造とすることができる(例えば米国特許第6639722B2号参照)。また、ブレーズ構造やその梁の支持構造などにおいては、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
また、こられの静電駆動素子を例えばプロジェクターにおける光変調素子として用いることにより、チャージング発生量の抑制によって、駆動電圧の変動が抑えられることから、光変調素子の不具合による画像の乱れ、表示特性の低下を抑制することが可能となる。
また更に、本発明の第1〜第3の実施形態例においては、上記効果に加え、上部電極と反射層との幅を変えて構成することによって、横方向の吸着が発生しないよう十分隣接する梁の間隔を広く取り、且つ、光効率に関わる反射層の間隔を狭小化することによって、高い光効率と横方向への吸着回避を両立させることができるという効果も得ることができる。
次に、本発明の静電駆動素子を光変調素子としてプロジェクターに用いた一実施形態例について、図16の概略構成図を参照して説明する。
本実施形態例は、回折格子型光変調素子の例えばGLVを光変調素子として用いたレーザーディスプレイにおいて、その光変調素子として本発明による静電駆動素子を適用する例を示す。
このプロジェクターは、例えば、大型スクリーン用プロジェクター、特にディジタル画像のプロジェクターとして、または、コンピュータ画像投影用として用いられるものである。
レーザー光源82R、82G及び82Bは、それぞれ赤色光(例えば波長642nm、光出力約3W)、緑色光(例えば波長532nm、光出力約2W)、青色光(波長457nm、光出力約1.5W)のレーザーを射出する。なお、レーザー光の波長及び光出力はこれらに限定されるものではない。
更に、各レーザー光は、静電駆動素子88R、88G、88Bによって回折されることにより空間変調され、これら3色の回折光が色合成フィルタ90によって合成され、続いて空間フィルタ92によって信号成分のみが取り出される。
次いで、このRGBの画像信号は、ディフューザー94によってレーザースペックルが低減され、ミラー96を経て、画像信号と同期する走査照明系98によって空間に展開され、投影光学系100によってスクリーン102上にフルカラー画像として投影される。
次に、静電駆動素子を光学用途以外の用途に用いる参考例として、インクジェットプリンタヘッドに用いる例について、図17の概略断面構成図を参照して説明する。
図17に示すように、この例においては、基板2上に例えば絶縁層16が形成され、その上に下部電極3が形成され、これを覆って誘電体層14が形成される。そして、この上に上部電極6及び絶縁層7より成る梁20がこれら下部電極3及び誘電体層14を跨ぐようにブリッジ状に形成され、参考例の構成の静電駆動素子1が構成される。
一方、このような梁20を有する静電駆動素子1が形成された基板2上に、蓋体51が図示しない支持部によって、静電駆動素子1を含む内部を密閉し、適切な容積を保つように形成され、その一部に開孔が形成されて、インクジェットノズル53とされる。
静電駆動素子1の上部の蓋体51内部は例えばインク流路52とされる。梁20の下部、すなわち上部電極6と誘電体層14との間は空間12としてもよく、また液体が注入されていてもよい。
この例においては、参考例の構成の静電駆動素子を用いることから、上述の各参考例にかかる形態例と同様に、チャージングによる駆動電圧シフトがなくなる。したがって、安定した特性のインクジェットプリンタヘッドを提供することが可能となる。
またこの例においても、図17に示す例に限定されるものではなく、参考例の構成の静電駆動素子を用いる構成であれば、その他種々の構成のインクジェットプリンタヘッドに適用することができる。
また、本発明による静電駆動素子は、その他の静電引力又は静電反発力を利用する各種の静電駆動素子に適用可能であり、またこの静電駆動素子を用いる各種の装置に適用可能であることはいうまでもない。
Claims (13)
- 基板上に形成された下部電極と、
前記下部電極と対向して設けられ、上部電極と、前記上部電極上に形成される絶縁層とを有する第1の梁と、
前記第1の梁の前記絶縁層上に設けられ、反射層を有し、前記絶縁層と前記反射層の間に空間を形成する第2の梁と、を備え、
前記第1の梁は、静電引力により前記下部電極側に駆動する
静電駆動素子。 - 前記反射層が、前記第1の梁上の少なくとも光照射領域を含む一部の領域に設けられる
請求項1記載の静電駆動素子。 - 前記反射層は、前記上部電極よりも幅広に形成される
請求項1記載の静電駆動素子。 - 前記第1の梁及び前記第2の梁は2以上配列され、
一部の前記第1の梁の駆動により回折格子が構成されて、光に対し回折作用を有する
請求項2記載の静電駆動素子。 - 前記第1の梁及び前記第2の梁は、その長手方向の両端部において段差が設けられて幅方向に傾きを生じさせる構造である
請求項3記載の静電駆動素子。 - 前記下部電極と、前記上部電極との間が空間とされて成る
請求項1記載の静電駆動素子。 - 前記上部電極を構成する材料が、Ti、W、Mo、Co、Niのうち少なくとも1つの材料である
請求項1記載の静電駆動素子。 - 光源と、該光源から出射された光の光軸上に配置され、前記光の強度を変調する光変調素子とを有するプロジェクターであって、
前記光変調素子は、
基板上に形成された下部電極と、
前記下部電極と対向して設けられ、上部電極と、前記上部電極上に形成される絶縁層とを有する第1の梁と、
前記第1の梁の前記絶縁層上に、反射層を有し、前記絶縁層と前記反射層の間に空間を形成する第2の梁と、を備え、
前記第1の梁及び前記第2の梁は、2以上配列され、
前記第1の梁は、静電引力により前記下部電極側に駆動して回折格子を構成する静電駆動素子により構成される
プロジェクター。 - 前記静電駆動素子の前記反射層は、前記第1の梁上の少なくとも光照射領域を含む一部の領域に設けられる
請求項8記載のプロジェクター。 - 前記静電駆動素子の前記反射層は、前記上部電極よりも幅広に形成される
請求項8記載のプロジェクター。 - 前記静電駆動素子の前記第1の梁及び前記第2の梁は、その長手方向の両端部において段差が設けられて幅方向に傾きを生じさせる構造である
請求項8記載のプロジェクター。 - 前記静電駆動素子の前記下部電極と、前記上部電極との間が空間とされて成る
請求項8記載のプロジェクター。 - 前記静電駆動素子の前記上部電極を構成する材料が、Ti、W、Mo、Co、Niのうち少なくとも1つの材料である
請求項8記載のプロジェクター。
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