図1〜図3は、本発明に係るマイクロ構造体の第1の実施形態であるマイクロミラー素子X1を表す。図1は、マイクロミラー素子X1の斜視図であり、図2は、マイクロミラー素子X1の平面図である。図3は、図1の線III−IIIに沿った断面図である。マイクロミラー素子X1は、可動部10と、これを囲むフレーム20と、これらを連結する一対の連結部30とを有する。
可動部10は、本体部11および電極部12を有する。本体部11は、不純物のドープにより導電性が付与されたシリコン材料よりなり、上面11a、下面11b、側面11c、相反する一対の側面11d、および側面11eを有する。上面11aおよび下面11bにより、本体部11の所定の厚さが規定される。上面11aには、光反射機能を有するミラー面13が設けられている。電極部12は、不純物のドープにより導電性が付与されたシリコン材料よりなり、本体部11における下面11bの側において当該下面11bに直交する方向に延びている。また、電極部12は、本体部11の側面11c側の端部に絶縁層14を介して連結されている。絶縁層14は、酸化シリコンよりなる。本体部11および電極部12は、絶縁層14を貫通するように設けられた導通プラグ15を介して電気的に接続されている。導通プラグ15は、不純物のドープにより導電性が付与されたポリシリコンよりなる。
フレーム20は、第1導体層21、第2導体層22、およびこれらの間の絶縁層23よりなる積層構造を有する。第1および第2導体層21,22は、不純物のドープにより導電性が付与されたシリコン材料よりなる。絶縁層23は、酸化シリコンよりなる。第1および第2導体層21,22上の所定の箇所には、各々、外部接続用の電極パッド(図1〜図3にて図示せず)が設けられている。また、第2導体層22において電極部12に対向する箇所は、電極部24を構成する。このような電極部24と、電極部12とは、本素子の駆動電極としての一対の平行平板電極を構成する。駆動電極としての電極部12,24は、本体部11の面広がり方向(上面11aおよび下面11bが広がる方向)に離隔している。
連結部30は、各々、不純物のドープにより導電性が付与されたシリコン材料よりなる1本の連結バーにより構成されている。連結部30の一端は、可動部10の本体部11における電極部連結端部に接続している。すなわち、一方の連結部30について示す図4(a)によく表れているように、各連結部30の一端は、本体部11の側面11dにおける側面11cとの境界付近に接続している(図4においては、本体部11、フレーム20、および連結部30以外の部位の描出を省略する。後出の図5、図6、および図7についても同様である)。このような構成に代えて、本発明では、連結部30は、側面11dにおける他の箇所(例えば側面11dの延び方向の中央付近)に接続してもよい。各連結部30の他端は、一方の連結部30について示す図4(b)から理解できるように、フレーム20の第1導体層21に接続している。また、各連結部30ないし各連結バーは、可動部10の本体部11よりも薄肉であり、且つ、フレーム20の第1導体層21よりも薄肉である。
このような構成のマイクロミラー素子X1において、フレーム20の第1導体層21に所定の電位を付与すると、当該電位は、連結部30、本体部11、および導通プラグ15を介して電極部12に伝達される。また、フレーム20の第2導体層22に所定の電位を付与すると、当該電位は第2導体層22中を介して電極部24に伝達される。電極部12,24の間には、各々に付与された電位に応じて静電引力または静電斥力が発生する。その結果、当該静電力に応じて、可動部10ないし本体部11は、一対の連結部30を捩りながら回転軸心A1まわりに回転変位する。回転変位量については、電極部12,24の各々に伝達される電位を調節することにより所望に調整することが可能である。
マイクロミラー素子X1においては、このような駆動原理に基づいて可動部10ないし本体部11を駆動することにより、ミラー面13を所望の方向に向けることができる。したがって、マイクロミラー素子X1によると、ミラー面13に向かって進行して当該ミラー面13にて反射される光の反射方向について、所望の方向に切り換えることや調整することが、可能なのである。
マイクロミラー素子X1の各連結部30については、上述のような1本の連結バーよりなる構成に代えて、一方の連結部30について描出されている図5、図6、または図7に示すような構成を採用してもよい。図5(a)は、連結部30の一変形例の平面図であり、図5(b)は、図5(a)の線V−Vに沿った断面図である。同様に、図6(a)および図7(a)は、各々、連結部30の他の変形例の平面図であり、図6(b)および図7(b)は、各々、図6(a)の線VI−VIおよび図7(b)の線VII−VIIに沿った断面図である。
図5に示す連結部30は、平行な2本の連結バー31からなる。各連結バー31の一端は、本体部11に接続している。各連結バー31の他端は、フレーム20の第1導体層21に接続している。図6に示す連結部30は、非平行な2本の連結バー32からなる。各連結バー32の一端は、本体部11に接続している。各連結バー32の他端は、フレーム20の第1導体層21に接続している。2本の連結バーの間の離隔距離は、フレーム20の側から可動部10の側にかけて漸減している。図7に示す連結部30は、図6に示す2本の連結バー32に加えて連結バー33を有する。連結バー33の一端は、可動部10における電極部12に接続している。連結バー33の他端は、フレーム20の第2導体層22に接続している。連結バー33は、連結部30の幅方向において2本の連結バー32の間に位置する。
連結部30の捩れ抵抗を調節するという観点や、可動部10の変位について不要成分を除去ないし低減するという観点から、例えば図4〜図7のバリエーションの中から連結部30の態様を適宜選択するのが好ましい場合が多い。また、図7に示す連結部30を採用する場合には、導通プラグ15を設けなくとも、電極部12に電位を付与することが可能である。図7に示す連結部30を採用する場合には、電極部24からは電気的に分離され且つ連結バー33には電気的に接続された箇所を第2導体層22において設けたうえで、当該箇所に電位を付与すると、当該電位は連結バー33を介して電極部12に伝達される。
図8〜図10は、マイクロミラー素子X1の製造方法における一連の工程を表す。図8〜図10は、図1の破線Bに沿った断面にてマイクロミラー素子X1の形成過程を表すものである。また、本方法は、マイクロマシニング技術により上述のマイクロミラー素子X1を製造するための一手法である。
本方法においては、まず、図8(a)に示すような材料基板Sを用意する。材料基板Sは、シリコン層101、シリコン層102、およびこれらの間の絶縁層103よりなる積層構造を有する。シリコン層101,102は、不純物をドープすることにより導電性が付与されたシリコン材料よりなる。不純物としては、Bなどのp型不純物や、PやAsなどのn型不純物を採用することができる。絶縁層103は、酸化シリコンよりなる。シリコン層101の厚さは例えば10〜100μmであり、シリコン層102の厚さは例えば50〜500μmである。また、絶縁層103の厚さは、例えば0.1〜10μmである。
次に、図8(b)に示すように、シリコン層101および絶縁層103を貫通する導通プラグ形成用ホール15’を形成する。ホール15’の形成においては、まず、ホール15’に対応する開口部を有するレジストパターンをシリコン層101上に形成する。次に、当該レジストパターンをマスクとして、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)などのドライエッチングにより、絶縁層103が露出するまでシリコン層101に対してエッチング処理を施す。DRIEでは、エッチングと側壁保護とを交互に行うBoschプロセスにおいて、異方性の高い良好なエッチング処理を行うことができる。後出のDRIEについても、このようなBoschプロセスを採用することができる。シリコン層101に対する当該エッチング処理においては、ドライエッチングに代えて、エッチング液として水酸化カリウム水溶液を使用して行うウェットエッチングを採用してもよい。次に、エッチング液として例えばBHF(フッ酸とフッ化アンモニウムからなるバッファードフッ酸)を使用して行うウェットエッチングにより、前エッチング処理にて絶縁層103において露出した箇所に対してシリコン層102に至るまでエッチング処理を施す。この後、所定の剥離液を作用させることにより、シリコン層101上のレジストパターンを除去する。このようにして、ホール15’を形成することができる。
マイクロミラー素子X1の製造においては、次に、図8(c)に示すように、導通プラグ15を形成する。具体的には、LPCVD法(減圧化学気相成長法)によりホール15’内にポリシリコンを堆積させることによって、導通プラグ15を形成することができる。ホール15’外に過度に堆積したポリシリコンは、必要に応じて研磨除去する。本工程で堆積されるポリシリコンは、不純物のドープにより導電性が付与されている。
次に、図9(a)に示すように、シリコン層101上にミラー面13および外部接続用の電極パッド25(図1〜図3では図示せず)を形成する。ミラー面13および電極パッド25の形成においては、まず、これらを形成すべき箇所の各々に対応する開口部を有するレジストパターンをシリコン層101上に形成する。次に、当該レジストパターンをマスクとして、真空蒸着法またはスパッタリング法により、単一の金属材料を、又は、複数の金属材料を順次、堆積させる。この後、所定の剥離液を作用させることにより、シリコン層101上のレジストパターンを除去する。金属材料としては、Au,Ti,Al,Ni,Pt,Agなどを採用することができる。これにより、単層または多層構造のミラー面13および電極パッド25を形成することができる。ミラー面13および電極パッド25の形成においては、このような手法に代えて、別々の成膜工程を経る手法を採用してもよい。このような手法によると、ミラー面13および電極パッド25を、異なる材料および層構造で形成することが可能である。
マイクロミラー素子X1の製造においては、次に、図9(b)に示すように、シリコン層102上に外部接続用の電極パッド26(図1〜図3では図示せず)を形成する。具体的には、前工程で電極パッド25を形成したのと同様の手法により電極パッド26を形成することができる。
次に、図9(c)に示すように、シリコン層101において可動部10およびフレーム20の間の空隙に対応する箇所Rに対し、所定の深さまでエッチング処理を施す。本工程においては、まず、シリコン層101において可動部10の本体部11へと加工される箇所、および、シリコン層101においてフレーム20の第1導体層21へと加工される箇所をマスクするための酸化膜パターンを形成する。次に、シリコン層101において連結部30へと加工される箇所をマスクするためのレジストパターンを形成する。次に、これら酸化膜パターンおよびレジストパターンをマスクとして、DRIEにより、シリコン層101に対して所定の深さまでエッチング処理を施す。当該所定深さは、連結部30ないしそれを構成する連結バーの厚さに相当する。当該エッチングの後、所定の剥離液を作用させることにより、シリコン層101上のレジストパターンを除去する。
マイクロミラー素子X1の製造においては、次に、図10(a)に示すように、上述の酸化膜パターンをマスクとして、DRIEにより、所定箇所の絶縁層103が露出するまでシリコン層101に対してエッチング処理を施す。具体的には、シリコン層101において前工程にて所定深さエッチング除去された領域で絶縁層103が露出し、且つ、シリコン層101において前工程にてレジストパターンによりマスクされていた領域が適切に残存するように、シリコン層101に対してエッチング処理を施す。これにより、可動部10の本体部11、フレーム20の第1導体層21、および連結部30が成形される。連結部30ないし連結バーは、前工程から本工程にかけて行われる2段階のエッチング処理により、本体部11および第1導体層21より薄肉に成形される。この後、所定のエッチング液またはエッチングガスを作用させることにより、シリコン層101上の酸化膜パターンを除去する。
次に、図10(b)に示すように、シリコン層102に対してエッチング処理を施す。本工程においては、まず、シリコン層102において可動部10の電極部12へと加工される箇所およびフレーム20の第2導体層22へと加工される箇所をマスクするためのレジストパターンを形成する。次に、当該レジストパターンをマスクとして、DRIEにより、シリコン層102に対して絶縁層103が露出するまでエッチング処理を施す。これにより、可動部10の電極部12およびフレーム20の第2導体層22が成形される。この後、所定の剥離液を作用させることにより、シリコン層102上のレジストパターンを除去する。
次に、図10(c)に示すように、所定のエッチング液またはエッチングガスを作用させることにより、露出する絶縁層103をエッチング除去する。これにより、可動部10の絶縁層14およびフレーム20の絶縁層23が形成される。以上のようにして、単一の材料基板Sにおいて図1に示すマイクロミラー素子X1を製造することができる。
図4に示す連結部30に代えて図5または図6に示す連結部30を有するマイクロミラー素子X1は、図8〜図10を参照して上述したような工程を経ることにより製造することができる。
図4に示す連結部30に代えて図7に示す連結部30を有するマイクロミラー素子X1を製造する場合には、導通プラグ15を形成するための工程、すなわち図8(b)および図8(c)を参照して上述した工程については、必ずしも行う必要はない。また、図9(c)および図10(a)を参照して上述した2段階のエッチング処理による薄肉連結バーの形成手法と同様の手法を、シリコン層102に対するエッチング加工において図10(b)を参照して上述した1段階エッチング処理に代えて採用することにより、薄肉の連結バー33を形成する。
マイクロミラー素子X1を製造する際には、図8〜図10を参照して上述したように、単一素子を製造する過程において例えば2枚の材料基板に対して個別に加工を施す必要がなく、且つ、当該個別に加工された例えば2枚の材料基板を張り合わせる必要はない。したがって、マイクロミラー素子X1は、比較的少ない工程で製造することができる。製造工程数が少ないことは、歩留りの向上や製造コストの低減を図るうえで、好適である。
図11〜図13は、本発明に係るマイクロ構造体の第2の実施形態であるマイクロミラー素子X2を表す。図11は、マイクロミラー素子X2の斜視図であり、図12は、マイクロミラー素子X2の平面図である。図13は、図11の線XIII−XIIIに沿った断面図である。マイクロミラー素子X2は、電極部12に代えて電極部16を有し、且つ、電極部24に代えて電極部27を有する点において、マイクロミラー素子X1と異なる。マイクロミラー素子X2の他の構成については、マイクロミラー素子X1に関して上述したのと同様である。
電極部16は、複数の電極歯16aからなる櫛歯電極である。各電極歯16aは、不純物のドープにより導電性が付与されたシリコン材料よりなり、本体部11における下面11bの側において当該下面11bに直交する方向に延びている。また、各電極歯16aは、本体部11の側面11c側の端部に絶縁層14を介して連結されており、絶縁層14を貫通するように設けられた導通プラグ15を介して本体部11に電気的に接続されている。図14の平面図によく表れているように、各電極歯16aは、フレーム20への方向には本体部11から延出しないように設けられている。
電極部27は、複数の電極歯27aからなる櫛歯電極であり、電極部16に対向する。また、電極部27は、フレーム20の第2導体層22に設けられており、不純物のドープにより導電性が付与されたシリコン材料よりなる。図14の平面図によく表れているように、各電極歯27aは、その全体が可動部10への方向に第1導体層21から延出するように設けられている。図14においては、本体部11、フレーム20、および電極部16,27以外の部位の描出を省略する。後出の図15についても同様である。
このような2つの電極部16,27は、本素子の駆動電極としての一対の櫛歯電極を構成する。駆動電極としての電極部16,27は、本体部11の面広がり方向(上面11aおよび下面11bが広がる方向)に離隔する。図14に表す一対の電極部16,27においては、両電極部の離隔方向Dにおける先端間ギャップGは所定の正の値を有する。すなわち、これら電極部16,27においては、互いの電極歯どうしは入り込み合っていない。
図15は、一対の電極部16,27の変形例を表す。図15(a)に表す変形例では、電極部16の各電極部16aは、本体部11の側面11c側の端部に絶縁層14を介して連結されており、且つ、その一部がフレーム20への方向に本体部11から延出するように設けられている。電極部27の各電極部27aは、その一部が可動部10への方向に第1導体層21から延出するように設けられている。図15(a)に表す一対の電極部16,27においては、両電極部の離隔方向Dにおける先端間ギャップGは±0である。すなわち、電極部16,27においても、互いの電極歯どうしは入り込み合っていない。
図15(b)に表す他の変形例では、図15(a)に示す変形例と同様に、電極部16の各電極部16aは、本体部11の側面11c側の端部に絶縁層14を介して連結されており、且つ、その一部がフレーム20への方向に本体部11から延出するように設けられている。電極部27の各電極部27aは、その一部が可動部10への方向に第1導体層21から延出するように設けられている。図15(b)に表す一対の電極部16,27においては、両電極部の離隔方向Dにおける先端間ギャップGは所定の負の値を有する。すなわち、これら電極部16,27においては、互いの電極歯どうしは入り込み合っている。
電極部16,27における電極歯の寸法、形成ピッチ、および先端間ギャップGについては、可動部10ないし本体部11に要求される駆動態様に応じて適宜変更することができる。
このような構成のマイクロミラー素子X2において、フレーム20の第1導体層21に所定の電位を付与すると、当該電位は、連結部30、本体部11、および導通プラグ15を介して電極部16の各電極部16aに伝達される。また、フレーム20の第2導体層22に所定の電位を付与すると、当該電位は第2導体層22中を介して電極部27の各電極歯27aに伝達される。電極部16,27の間には、各々に付与された電位に応じて静電引力または静電斥力が発生する。その結果、当該静電力に応じて、可動部10ないし本体部11は、一対の連結部30を捩りながら回転軸心A1まわりに回転変位する。回転変位量については、電極部16,27の各々に付与される電位を調節することにより所望に調整することが可能である。マイクロミラー素子X2においては、このような駆動原理に基づいて可動部10ないし本体部11を回転駆動することができる。
マイクロミラー素子X2は、図8〜図10を参照してマイクロミラー素子X1に関して上述したのと同様に、単一の材料基板Sにおいて製造することができる。当該製造過程において、図10(b)を参照して上述したエッチング処理では、電極部12に代えて電極部16が成形されるとともに、第2導体層21にて電極部27が加えて成形される。したがって、マイクロミラー素子X2は、マイクロミラー素子X1に関して上述したのと同様に、比較的少ない工程で製造することができる。製造工程数が少ないことは、歩留りの向上や製造コストの低減を図るうえで、好適である。
加えて、マイクロミラー素子X2では、駆動用の電極部16,27が一対の櫛歯電極であるので、いわゆる引入れ電圧(Pull-in Voltage:それ以上であると電極間に生ずる静電力が急激に大きくなってしまう閾電圧)の問題が生じにくい。例えば、上述のマイクロミラー素子X5の電極対55a,61aや電極対55b,61bのような、一対の平行平板電極では、対向電極との間で電場を形成し得る電極表面の略全てが当該対向電極に対面するために、駆動の際に引入れ電圧が存在することが知られている。これに対し、マイクロミラー素子X2における駆動用の一対の電極部16,27では、対向電極との間で電場を形成し得る電極表面のうち当該対向電極に対面する電極表面の面積は比較的小さい。そのため、電極部対16,27においては、相当程度に高い電圧を印加しなければ引入れ電圧には達しない。したがって、比較的低電圧領域の電圧を利用して行うマイクロミラー素子X2の駆動に際しては、引入れ電圧の問題は生じにくいのである。
図16〜図18は、本発明に係るマイクロ構造体の第3の実施形態であるマイクロミラー素子X3を表す。図16はマイクロミラー素子X3の斜視図である。図17は、マイクロミラー素子X3の平面図である。図18は、図16の線XVIII−XVIIIに沿った断面図である。マイクロミラー素子X3は、本体部11の側面11dと第1導体層21とに接続する一対の連結部30に代えて、本体部11の側面11cと第1導体層21とに接続する連結部30’を有する点において、マイクロミラー素子X1と異なる。マイクロミラー素子X3の他の構成については、マイクロミラー素子X1に関して上述したのと同様である。
連結部30’は、可動部10における本体部11の側面11cの側をフレーム20と連結するためのものであり、不純物のドープにより導電性が付与されたシリコン材料よりなる。図19によく表れているように、連結部30’は、2本の連結バー31’により構成されている。各連結バー31’の一端は、本体部11の電極部連結端部に含まれる側面11cに接続し、他端は、フレーム20の第1導体層21に接続している。また、連結部30’ないし両連結バー31’は、可動部10の本体部11よりも薄肉であり、且つ、フレーム20の第1導体層21よりも薄肉である。図19においては、本体部11、フレーム20’、および連結部30’以外の部位の描出を省略する。後出の図20〜図22についても同様である。
このような構成のマイクロミラー素子X3において、フレーム20の第1導体層21に所定の電位を付与すると、当該電位は、連結部30’、本体部11、および導通プラグ15を介して電極部12に伝達される。また、フレーム20の第2導体層22に所定の電位を付与すると、当該電位は第2導体層22中を介して電極部24に伝達される。電極部12,24の間には、各々に付与された電位に応じて静電引力または静電斥力が発生する。その結果、当該静電力に応じて、可動部10ないし本体部11は、一対の連結部30’を曲げながら所定の回転軸心まわりに回転変位する。回転変位量については、電極部12,24の各々に付与される電位を調節することにより所望に調整することが可能である。マイクロミラー素子X3においては、このような駆動原理に基づいて可動部10ないし本体部11を回転駆動することができる。
マイクロミラー素子X3は、図8〜図10を参照してマイクロミラー素子X1に関して上述したのと同様に、単一の材料基板Sにおいて製造することができる。当該製造過程において、図9(c)および図10(a)を参照して上述したエッチング処理では、一対の連結部30に代えて連結部30’が成形される。したがって、マイクロミラー素子X3は、マイクロミラー素子X1に関して上述したのと同様に、比較的少ない工程で製造することができる。製造工程数が少ないことは、歩留りの向上や製造コストの低減を図るうえで、好適である。
マイクロミラー素子X3の連結部30’については、上述のような2本の連結バー31’よりなる構成に代えて、図20、図21、または図22に示す構成を採用してもよい。図20(a)は、連結部30’の一変形例の平面図であり、図20(b)は、図20(a)の線XX−XXに沿った断面図である。同様に、図21(a)および図22(a)は、各々、連結部30’の他の変形例の平面図であり、図21(b)および図22(b)は、各々、図21(a)の線XXI−XXIおよび図22(a)の線XXII−XXIIに沿った断面図である。
図20に示す連結部30’は、図19に示す2本の連結バー31’に加えて連結バー32’を有する。連結バー32’の一端は、本体部11の側面11cに接続しており、他端は、フレーム20の第1導体層21に接続している。連結バー32’は、連結部30’の幅方向において2本の連結バー31’の間に位置する。図21に示す連結部30’は、1枚の連結プレート33’からなる。連結プレート33’の一端は、本体部11の側面11cに接続しており、他端は、フレーム20の第1導体層21に接続している。図22に示す連結部30’は、図19に示す2本の連結バー31’に加えて連結バー34’を有する。連結バー34’の一端は、可動部10における電極部12に接続しており、他端は、フレーム20の第2導体層22に接続している。連結バー34’は、連結部30’の幅方向において2本の連結バー31’の間に位置する。
連結部30’の曲げ剛性を調節するという観点や、可動部10の変位について不要成分を除去ないし低減するという観点から、例えば図19〜図22のバリエーションの中から連結部30’の態様を適宜選択するのが好ましい。また、図22に示す連結部30’を採用する場合には、導通プラグ15を設けなくとも、電極部12に電位を付与することが可能である。図22に示す連結部30’を採用する場合には、電極部24からは電気的に分離され且つ連結バー34’には電気的に接続された箇所を第2導体層22において適切に設けたうえで、当該箇所に電位を付与すると、当該電位は連結バー34’を介して電極部12に伝達される。
図19に示す連結部30’に代えて図20または図21に示す連結部30’を有するマイクロミラー素子X3は、図8〜図10を参照して上述した工程を経ることにより製造することができる。
図19に示す連結部30’に代えて図22に示す連結部30’を有するマイクロミラー素子X3を製造する場合には、導通プラグ15を形成するための工程、すなわち図8(b)および図8(c)を参照して上述した工程については、必ずしも行う必要はない。また、図9(c)および図10(a)を参照して上述した2段階のエッチング処理による薄肉連結バーの形成手法と同様の手法を、シリコン層102に対するエッチング加工において図10(b)を参照して上述した1段階エッチング処理に代えて採用することにより、連結バー34’を形成する。
マイクロミラー素子X3によると、図23に示すようなマイクロミラー素子アレイYを構成することができる。マイクロミラー素子アレイYにおいては、複数の可動部10が、所定のピッチで図面横方向に一列に配されており、複数の素子列が、所定のピッチで図面縦方向に離隔して配されている。各可動部10は、連結部30’を介して、共通のフレーム20に連結されている。マイクロミラー素子X3では、可動部10とフレーム20とを連結するための連結部30’が可動部10の回転軸方向に延びるようには設けられていないため、複数の可動部10をその回転軸方向に密に配置することができる。また、マイクロミラー素子X3では、ある程度の離隔距離を確保すべき空隙を、即ち、可動部10における本体部11の側面11cの側とフレーム20との間を、橋渡すように、連結部30’は配設されている。したがって、マイクロミラー素子アレイYでは、可動部10の回転軸に直交する方向(各素子列が離隔する方向)における素子ないし素子列の配設ピッチは不当には長くならない。
図24は、本発明に係るマイクロ構造体の第4の実施形態であるマイクロミラー素子X4を表す。マイクロミラー素子X4は、マイクロミラー素子X2と同様の電極部16を電極部12に代えて有し、且つ、マイクロミラー素子X2と同様の電極部27を電極部24に代えて有する点において、マイクロミラー素子X3と異なる。マイクロミラー素子X4の他の構成については、マイクロミラー素子X3に関して上述したのと同様である。
このような構成のマイクロミラー素子X4において、フレーム20の第1導体層21に所定の電位を付与すると、当該電位は、連結部30’、本体部11、および導通プラグ15を介して電極部16の各電極部16aに伝達される。また、フレーム20の第2導体層22に所定の電位を付与すると、当該電位は第2導体層22中を介して電極部27の各電極歯27aに伝達される。電極部16,27の間には、各々に付与された電位に応じて静電引力または静電斥力が発生する。その結果、当該静電力に応じて、可動部10ないし本体部11は、一対の連結部30’を曲げながら所定の回転軸心まわりに回転変位する。回転変位量については、電極部16,27の各々に付与される電位を調節することにより所望に調整することが可能である。マイクロミラー素子X4においては、このような駆動原理に基づいて可動部10ないし本体部11を回転駆動することができる。
マイクロミラー素子X4は、図8〜図10を参照してマイクロミラー素子X1に関して上述したのと同様に、単一の材料基板Sにおいて製造することができる。当該製造過程において、図9(c)および図10(a)を参照して上述したエッチング処理では、一対の連結部30に代えて連結部30’が成形される。また、図10(b)を参照して上述したエッチング処理では、電極部12に代えて電極部16が成形されるとともに、第2導体層21にて電極部27が加えて成形される。したがって、マイクロミラー素子X4は、マイクロミラー素子X1に関して上述したのと同様に、比較的少ない工程で製造することができる。製造工程数が少ないことは、歩留りの向上や製造コストの低減を図るうえで、好適である。
また、マイクロミラー素子X4では、駆動用の電極部16,27が一対の櫛歯電極であるので、マイクロミラー素子X2に関して上述したのと同様に、引入れ電圧(Pull-in Voltage)の問題が生じにくい。
加えて、連結部30’を具備するマイクロミラー素子X4によると、マイクロミラー素子X3に関して上述したのと同様に、高い配置密度のマイクロミラー素子アレイを構成することができる。
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
(付記1)第1面およびこれとは反対の第2面を有し且つ当該第1および第2面により厚さが規定される本体部、並びに、前記第2面の側に設けられ且つ当該第2面と交差する方向に延びる第1電極部、を有する可動部と、
前記第1電極部に対向し且つ当該第1電極部から離隔する第2電極部、を有するフレームと、
前記可動部および前記フレームを連結する連結部と、を備えることを特徴とする、マイクロ構造体。
(付記2)前記第1電極部は、前記本体部の端部に連結されている、付記1に記載のマイクロ構造体。
(付記3)前記可動部および前記フレームを連結する前記連結部は、前記端部に接続する連結バーを含み、且つ、前記第1電極部および前記第2電極部の離隔方向に直交する方向に延びる、付記2に記載のマイクロ構造体。
(付記4)前記可動部および前記フレームを連結する前記連結部は、前記端部に接続する連結バーを含み、且つ、前記第1電極部および前記第2電極部の離隔方向に延びる、付記2に記載のマイクロ構造体。
(付記5)前記連結部は複数の連結バーからなる、付記1から4のいずれか1つに記載のマイクロ構造体。
(付記6)前記第1電極部は、前記第2面に直交する方向に延びる、付記1から5のいずれか1つに記載のマイクロ構造体。
(付記7)前記第1電極部および前記第2電極部は、一対の平板電極または一対の櫛歯電極を構成する、付記1から6のいずれか1つに記載のマイクロ構造体。
(付記8)前記本体部および前記第1電極部の間に介在する絶縁層を更に有する、付記1から7のいずれか1つに記載のマイクロ構造体。
(付記9)前記絶縁層を貫通して前記本体部および前記第1電極部を電気的に接続する導電連絡部を更に有する、付記8に記載のマイクロ構造体。
(付記10)前記連結部は複数の連結バーからなり、当該複数の連結バーは、前記本体部および前記フレームに接続する第1連結バーと、前記第1電極部および前記フレームに接続し且つ前記第1連結バーから電気的に分離されている第2連結バーとを含む、付記8に記載のマイクロ構造体。