JP4366961B2 - 光学mems素子とその製造方法、並びに回折型光学mems素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学MEMS素子とその製造方法、並びに回折型光学MEMS素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
微細技術の進展に伴い、いわゆるマイクロマシン(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems、超小型電気的・機械的複合体)素子、及びMEMS素子を組み込んだ小型機器が、注目されている。
MEMS素子は、シリコン基板、ガラス基板等の基板上に微細構造体として形成され、機械的駆動力を出力する駆動体と、駆動体を制御する半導体集積回路等とを電気的に、更に機械的に結合させた素子である。MEMS素子の基本的な特徴は、機械的構造として構成されている駆動体が素子の一部に組み込まれていることであって、駆動体の駆動は、電極間の静電力、即ちクーロン引力等を応用して電気的に行われる。
【0003】
従来、光の反射や回折を利用し、光スイッチ、光変調素子等に適用される光学MEMS素子が開発されている。図17A,Bは、一般的な光学MEMS素子の代表的な一例を示す。この光学MEMS素子1は、基板2上に形成した基板側電極3に対向して平行に配置した絶縁薄膜4及び駆動側電極5からなるビーム6を有し、このビーム6の一端を支持部7にて支持して構成される。ビーム6と基板側電極3とは、その間の空隙8によって電気的に絶縁されている。支持部7は、ビーム6と同じ積層膜でビーム6と一体に形成されている。ビーム6は、一端が支持された片持ち梁式構造となっている。
基板2は、例えばシリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)などの半導体基板上に絶縁膜を形成した基板、石英基板やガラス基板のような絶縁製造方法基板等が用いられる。基板側電極3は、不純物をドーピングした多結晶シリコン膜、金属膜(例えばW,Crの蒸着膜)等で形成される。ビーム6は、例えばシリコン窒化膜(SiN膜)等の絶縁薄膜4とその上面に形成された金属薄膜からなる光反射膜を兼ねる駆動側電極5とから構成される。
この光学MEMS素子1では、基板側電極3と駆動側電極5に与える電位に応じて、ビーム6が基板側電極3との間の静電引力又は静電反発により変位し、例えば図17Aで示すように、基板側電極3にたいして平行状態(実線)と傾斜状態(破線)に変位する。
【0004】
図18A,Bは、一般的な光学MEMS素子の代表的な他の例を示す。この光学MEMS素子11は、基板2上に形成した基板側電極3をブリッジ状に跨ぐように、両端を支持部13〔13A,13B〕で支持したビーム12を配置して構成される。ビーム12は上例と同様に絶縁膜4と駆動側電極5とから形成され、基板側電極3に対してその間の空隙8によって電気的に絶縁されている。ビーム6は、両端を支持したブリッジ式に形成され、いわゆる両持ち梁式構造となっている。基板2、絶縁薄膜4、駆動側電極5、ビーム12、支持部13等は、図17と同様の構成、材料となっている。
この光学MEMS素子11では、基板側電極3と駆動側電極5に与える電位に応じて、ビーム12と基板側電極3との間の静電引力又は静電反発により変位し、例えば図18Aの実線と破線で示すように、基板側電極3に対して平行状態と凹み状態に変位する。
【0005】
これらの光学MEMS素子1、11は、光反射膜を兼ねる駆動側電極5の表面に光が照射され、ビーム6、12の駆動位置に応じて、その借りの反射方向が異なるのを利用して、一方向の反射光を検出してスイッチ機能を持たせた、光スイッチとして適用できる。また、複数のビームを並列配置して、光の回折を利用した光変調素子としても適用できる。光の回折を利用した回折型光学MEMS素子、いわゆるGLV(Grating Light Valve)素子の例が特許文献1に記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特表2001ー518198号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の光学MEMS素子1、11において、光が照射される反射膜兼用の駆動側電極5及びビーム6、12の形状は、スイッチング特性となる光の反射効率や回折効率を左右する重要なパラメータである。駆動側電極5の形成条件は、通常の配線を目的とした電極形成条件とは異なるようにしなければならない。配線用の金属膜は、電気抵抗が低いことやワイヤーボンディングの密着性が高いことなどが重要であり、通常アルミニウム(Al)や銅(Cu)などが用いられる。また配線層では、その金属膜の膜厚として、ある程度の厚み、通常0.5μm〜1μm程度の厚みを必要とするが、反射率や表面ラフネス(表面粗度)などは特に問題とはならない。反面、配線層の形成では、比較的厚い膜厚を高速で成膜するために装置のパワーや成膜温度を上げる等の工夫がなされている。
【0008】
一方、光の反射や回折を利用した光学MEMS素子において、そのビームの駆動側電極の材料は反射率が高く加工性の優れた材料でなければならない。駆動側電極が反射膜を兼ねて且つ振動や変動をする場合には、駆動側電極として、表面平滑性が良く(即ち表面ラフネスが低く)、素子特性に応じた膜厚である必要がある。一般に駆動側電極の膜厚は100nm程度である。このような駆動側電極を形成する際、配線用金属膜の形成条件をそのまま採用すると、次のような問題が生じることを見いだした。(1)成膜速度が速すぎて膜厚の再現性、均一性が悪くなる。(2)成膜温度が高すぎて成膜中にグレイン成長が生じ表面粗度が大きくなり、また膜の応力が大きくなる。表面粗度は反射率に影響し、膜の応力はビームの変形(反り)に影響を与える。(3)これら(1)、(2)等の現象が生じて反射効率、回折効率を著しく劣化させる場合がある。
このように、ビーム最表面の駆動側電極と、駆動側電極に接続する配線層とは、両者の用途を満たし、且つ同時に形成することが困難であった。
【0009】
本発明は、上述の点に鑑み、駆動側電極と配線層との最適化を図り、また光学特性、特にビームにおける反射効率、回折効率度の向上を図った光学MEMS素子とその製造方法、並びに回折型光学MEMS素子を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光学MEMS素子は、基板側電極と、この基板側電極との間に働く静電力により駆動する、絶縁薄膜及び反射膜を兼ねる駆動側電極とからなるビームと、絶縁薄膜と同じ材料で一体に形成されたビームの支持部と、ビームの駆動側電極に接続された配線層とを有する。配線層は前記支持部及び前記ビームの絶縁薄膜の端部上に接するように形成される。駆動側電極は、配線層の成膜温度及び成膜速度よりも低い、室温〜200℃以下の成膜温度及び5〜20nm/secの成膜速度で成膜されて、表面粗度が10nm以下、膜応力が500MPa以下に設定されたアルミニウム合金膜からなり、端部を配線層上に接するように絶縁薄膜上に形成されて成る。
【0011】
本発明の光学MEMS素子においては、ビームを構成する駆動側電極の表面粗度(RMS)を10nm以下、駆動側電極の膜応力を500MPa以下に設定することにより、反射効率、回折効率の向上が図れる。
本発明の光学MEMS素子においては、ビームを構成する駆動側電極を、配線層の成膜温度より低い室温〜200℃以下の成膜温度で成膜されたアルミニウム合金膜で形成することにより、駆動側電極の膜中の粒径(グレイン)成長が抑制され、表面粗度が上記10nm以下に低減し、駆動側電極の反射率が高反射率になり、また駆動側電極の膜応力が上記500MPa以下に低減しビームが反り変形しにくくなり、反射効率、回折効率の向上が図れる。駆動側電極を配線層の成膜速度より低い5〜20nm/secの成膜速度で成膜するので、膜厚の再現性が良くなる。一方、配線層は、高速、高温成膜、成膜温度300℃〜400℃程度で成膜が可能になり目的に合った厚膜となる。
【0012】
本発明に係る光学MEMS素子の製造方法は、基板側電極を形成する工程と、犠牲層を介して基板側電極と対向して、同じ材料によりビームの一部を構成する絶縁薄膜を前記ビームの支持部と一体に形成する工程と、支持部及び絶縁薄膜の端部上に接するように配線層を形成する工程と、配線層に一部が接続するように絶縁薄膜上に、配線層の成膜温度及び成膜速度よりも低い、室温〜200℃以下の成膜温度及び5〜20nm/secの成膜速度でアルミニウム合金膜を成膜して表面粗度が10nm以下、膜応力が500MPa以下に設定された、ビームの一部を構成する反射膜を兼ねる駆動側電極を形成する工程と、犠牲層を除去する工程とを有する
【0013】
本発明の光学MEMS素子の製造方法においては、配線層とビームを構成する駆動側電極とを独立に形成することにより、両者の目的に合わせた成膜が可能になる。そして駆動側電極を、配線層の成膜温度より低い、室温〜200℃以下の成膜温度で形成するので、駆動側電極の成膜時に下地に配線層が有っても基板温度が急激に上昇せず、成膜中の粒径(グレイン)成長が抑制され、駆動側電極の表面粗度を10nm以下に低減し、駆動側電極の膜応力を500MPa以下に低減することができる。これによって、高反射率の駆動側電極を形成することが可能になり、且つビームに反り変形のない、或いは反り変形が極めて少ないビームを形成することができる。また、成膜温度が配線層の成膜温度より低いので、また成膜速度を配線層の成膜速度より低い、5〜20nm/sec以下としているので、駆動側電極の膜厚の再現性も良くなる。一方、配線層は、高速、高温成膜が可能になり厚膜の配線層を形成することができる。
【0014】
本発明に係る回折型光学MEMS素子は、共通の基板側電極と、この共通の基板側電極に対向して相互に独立に配列され、基板側電極との間に働く静電力により駆動する、絶縁薄膜及び反射膜を兼ねる駆動側電極とからなる複数のビームと、絶縁薄膜と同じ材料で一体に形成された前記各ビームの支持部と、各ビームの駆動側電極の夫々に接続された配線層とを有する。配線層は支持部及びビームの絶縁薄膜の端部上に接するように形成される。駆動側電極は、配線層の成膜温度及び成膜速度よりも低い、室温〜200℃以下の成膜温度及び5〜20nm/secの成膜速度で成膜されて、表面粗度が10nm以下、膜応力が500MPa以下に設定されたアルミニウム合金膜からなり、端部を配線層上に接するように絶縁薄膜上に形成されて成る。
【0015】
本発明の回折型光学MEMS素子においては、各ビームを構成する駆動側電極の表面粗度(RMS)を10nm以下、駆動側電極の膜応力を500MPa以下に設定することにより、駆動側電極表面の反射率が高反射率になり、反射効率、回折効率の向上が図れる。
本発明の回折型光学MEMS素子においては、各ビームを構成する駆動側電極を配線層の成膜温度より低い、室温〜200℃以下の成膜温度で成膜されたアルミニウム合金膜で形成することにより、駆動側電極の膜中の粒径(グレイン)成長が抑制され、表面粗度が上記10nm以下に低減し駆動側電極の反射率が高反射率になり、また駆動側電極の膜応力が上記500MPa以下に低減しビームが反り変形しにくくなり、反射効率、回折効率の向上が図れる。駆動側電極を配線層の成膜速度より低い5〜20nm/secの成膜速度で成膜するので、膜厚の再現性が良くなる。一方、配線層は、高速、高温成膜が可能になり目的に合った厚膜となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る光学MEMS素子の一実施の形態を示す。本例は両持ち梁式構造に適用した場合である。
本実施の形態に係る光学MEMS素子21は、基板22上に基板側電極23を形成し、この基板側電極23をブリッジ状に跨ぐように、両端を支持部24〔24A,24B〕で支持した絶縁薄膜25及び光反射膜を兼ねる駆動側電極26とからなるビーム27を配置し、駆動側電極26の両端に配線層28〔28A,28B〕を接続して構成される。支持部24〔24A,24B〕は、ビーム27の一部を構成する絶縁薄膜25と同材料で一体に形成される。配線層28〔28A,28B〕は、絶縁薄膜25の両端部上に接するように形成され、駆動側電極26は、両端が配線層28A及び28Bの上面に接続するように絶縁薄膜25上に形成される。ビーム27と基板側電極23とは、その間の空隙29によって電気的に絶縁される。
【0018】
前述と同様に、基板21は、例えばシリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)などの半導体基板上に絶縁膜を形成した基板、石英基板やガラス基板のような絶縁製造方法基板等が用いられる。基板側電極23は、不純物をドーピングした多結晶シリコン膜、金属膜(例えばW,Crの蒸着膜)等で形成される。ビーム27は、絶縁薄膜25として例えばシリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン酸化膜(SiO2 膜)等の絶縁膜、本例では強度、弾性定数などの物性値がビームの機械的駆動に対して適切なシリコン窒化膜が用いられ、このシリコン窒化膜25上に金属薄膜による駆動側電極26を被着した積層膜で形成される。この駆動側電極26は、アルミニウム(Al)を主成分として、これに数%の所要の添加物を含有したAl合金で形成することが好ましい。例えばAlーSi,AlーCu,AlーSiーCu,AlーHf,AlーZr,等が用いられる(なお、後述では便宜的にこのAl合金膜を、単にAl膜という)。表面に光が当たる駆動側電極26では、純Al膜で形成すると熱の耐性が得られないので、熱耐性が得られる上記Al合金膜で形成するのが良い。駆動側電極26の膜厚は、通常の100nm程度とすることができる。配線層28〔28A,28B〕は、電気抵抗が低く、ワイヤーボンディングの密着性が高い例えば純アルミニウム(Al)、銅(Cu)等で形成される。配線層28の膜厚は例えば0.5〜1.0μm程度とすることができる。
配線層28、駆動側電極26の成膜方法は、スパッタリング法、CVD(化学気相成長)法、電子ビームや抵抗加熱などの蒸着法、マスクを用いた蒸着法等、方法は問わない。
反射膜となる駆動側電極26が形成される領域は、ビーム27に光が照射される領域、かたは支持部を含むビーム全体とし、その形状は問わない。本例では駆動側電極26が支持部を含むビーム全体に形成される。
【0019】
そして、本実施の形態では、特に、このように下地に配線層28が形成された絶縁薄膜25上に駆動側電極26を有する構成において、その駆動側電極26が次のような条件で形成される。
即ち、駆動側電極26は、表面粗度が10nm以下に設定されるように形成する。駆動側電極26は、膜応力が500MPa以下に設定されるように形成する。より好ましくは駆動側電極26は、表面粗度が10nm以下に且つ膜応力が500MPa以下に設定されるように形成する。
また、このような表面粗度、膜応力を達成させるために、駆動側電極26は、配線層28より低い室温〜200℃以下の成膜温度で形成することができる。
より詳しくは、駆動側電極26の成膜条件として、成膜温度、成膜速度が配線層28のそれよりも低く、室温〜200℃以下、5〜20nm/secとすることができる。駆動側電極26の金属膜としては、上述したAlを主成分とした膜が好ましい。
【0020】
表面粗度10nm以下であれば、駆動側電極26の表面反射率として90%近傍以上の高反射率が得られる。駆動側電極26の膜応力が500MPa以下であれば、ビーム27の両支持部24A及び24Bを結ぶ方向と直交する方向、即ちリボン状のビーム27の幅方向の変形(所謂反り)が生じにくくなり、ビームの平滑性が得られる。
【0021】
本実施の形態に係る両持ち梁式構造の光学MEMS素子45の動作は、前述の図18で説明したと同様である。
【0022】
次に、図13〜図16及び表1を用いて本実施の形態を検証する。
図8Aに示す試料35は、シリコン基板31上にシリコン酸化膜32を堆積し、このシリコン酸化膜32上に成膜温度300℃で膜厚100nmの第2Al膜(AlーCu薄膜:駆動側電極に相当する)34を成膜したAl単膜構造である。図8Bに示す試料36は、同様にシリコン基板31に堆積したシリコン酸化膜32上に、成膜温度200℃で膜厚100nmの第2Al膜(AlーCu:薄膜)34を成膜したAl単膜構造である。
図9Aに示す試料37は、シリコン基板31上にシリコン酸化膜32を堆積し、このシリコン酸化膜32上に中央を除いて成膜温度300℃で膜厚1000nmの第1Al膜(AlーCu厚膜:配線層に相当する)33を成膜した後に、続いて中央のシリコン酸化膜32及び周囲の第1Al膜33を含む全面に成膜温度300℃で膜厚100nmの第2Al膜(AlーCu薄膜:駆動側電極に相当する)を成膜したAl積層膜構造でる。図9Bに示す試料38は、シリコン基板31上にシリコン酸化膜32を堆積し、このシリコン酸化膜32上に中央を除いて成膜温度300℃で膜厚1000nmの第1Al膜(厚膜)33を成膜した後に、続いて中央のシリコン酸化膜32及び周囲の第1Al膜33を含む全面に成膜温度200℃で膜厚100nmの第2Al膜(薄膜)34を成膜したAl積層膜構造である。各試料におけるAl膜34、33の成膜条件は、スパッターリング装置を用い、パワー:5kW,Arガス流量:65sccmとした。
【0023】
これら各試料35〜38の第2Al膜34表面に光L1 を入射しその反射光L2 の反射率の評価を行った。
図10は、試料35、試料36、試料37及び試料38に於ける第2Al膜34の表面反射率の測定結果を示す。●印、▲印、■印は第2Al膜34の成膜温度が300℃、○印、△印、□印は第2Al膜34の成膜温度が200℃である。また、●、○印は波長λ=457nmのとき、▲、△印は波長λ=532nmのとき、■、□印は波長λ=642nmのときの反射率である。
図11は、Al積層膜の試料37と38に於ける第2Al膜34の周波数に対する表面反射率の測定結果を示す。●印は第1Al/第2Al:成膜温度300℃/300℃のとき、○印は第1Al/第2Al:成膜温度300℃/200℃のときの反射率である。
【0024】
図10のグラフによれば、図8A,Bに示すAl単膜のみの試料35及び36の場合、成膜温度300℃、200℃に係わらず、両者とも約90%の反射率を維持していることが認められる。一方、図9Aに示す第1Al膜33の形成後に、第2Al膜34を第1Al膜33と同じ成膜温度300℃で形成したAl積層膜の試料37場合、反射率が80%まで低下しているの対し、図9Bに示す第1Al膜33の形成後に、第2Al膜34を第1Al膜33より低い成膜温度200℃で形成したAl積層膜の試料38では、反射率が90%を維持していることが認められた。
また、図11のグラフによれば、第2Al膜34の成膜温度が200℃の試料38は、第2Al膜34の可視光の反射率が90%を維持しているが、第2Al膜34の成膜温度が300℃の試料37は、反射率が80%以下に低下し且つ低波長になるに従って反射率が低下することが認められた。また、試料37の場合、第2Al膜34の表面が白濁しているのが認められた(これはチャンバー周辺の水分等を取り込むためと思われる)。
【0025】
成膜温度の高いAl積層膜の試料37において、反射率は低下する理由は、下地に厚膜のメタル膜33が有ることで、基板全体の温度が設定値(成膜温度)よりも高くなったことにより、成膜中にAlの粒径(グレイン)が成長し表面祖度(RMS)が大きくなり、反射率を低下させるものと予想される。即ち、成膜温度は、最初から設定値にならず、成膜開始からある時間まで設定値より低く、或いは高くなるなどして最終的に設定値に安定するものである。下地の厚膜メタル膜33の存在により、基板温度が速くに温度上昇すること、メタル膜34が薄膜であるために基板温度が設定温度に至らない不安定な状態で成膜完了することで表面粗度が大きくなる。
【0026】
一方、第2Al膜の成膜温度が低いAl積層膜の試料38において、反射率が向上する理由は、下地に厚膜のメタル膜33が有っても、基板温度の上昇が遅く低温で成膜されるので、成膜中にAlの粒径(グレイン)が成長しにくく、このため表面粗度(RMS)が小さいメタル膜34が成膜されるものと考えられる。また、成膜速度も遅くなるので、膜厚の再現性も良くなる。
【0027】
次に、図12のAl積層膜構造の試料39を用い、成膜温度を変化させて第2Al膜を形成したときの、第2Al膜の膜応力(MPa)と表面ラフネス(表面粗度:RMS)、反射率を測定した結果を、表1、図13〜図16に示す。
【0028】
試料39は、図12に示すように、シリコン基板31上のシリコン酸化膜(SiO2 膜)32の表面に中央部を除いて膜厚800nmの第1Al膜33を形成した後、中央部のシリコン酸化膜32上及び第1Al膜33上にわたる全面に膜厚70nmの第2Al膜34を形成して構成される。第1Al膜33の成膜温度は300℃とした。▲1▼は第2Al単膜部、▲2▼は第2Al/第1Al積層膜部である。第2Al膜34の膜応力は、ウェハでの評価のため▲1▼、▲2▼の分離は不可。
表1は、成膜温度(設定温度)を50℃、100℃、150℃、200℃、300℃に変化したときの、第2Al膜34の膜応力(MPa)、表面粗度:RMS(nm)、波長λ=457nmにおける反射率(%)をそれぞれ示す。第2Al単膜部▲1▼のパターン幅は200μmである。本表1では、駆動側電極の相当する第2Al単膜部▲1▼での評価が重要である。
【0029】
【表1】
【0030】
表1及び図13に示すように、第2Al単膜部・での反射率が90%近傍以上の高反射率を得るためには、第2Al単膜部・の表面粗度RMSを10nm以下(RMS≦10nm)にする必要がありる。さらに、第2Al単膜部・での反射率が90%以上の高反射率を得るためには、第2Al単膜部・の表面粗度RMSを10nm未満(RMS<10nm)にする必要がある。
また、光学MEMS素子のビームを変形(反り)難くするためには、第2Al膜34の膜応力を500MPa以下が目安になる。
【0031】
また、表1及び図14に示すように、第2Al膜34の膜応力を500MPa以下にするためには、第2Al膜34の成膜温度は300℃未満、好ましくは200℃以下にするのが良い。表1及び図15に示すように、第2Al膜34の表面粗度RMSを10nm以下にするためには、第2Al膜34の成膜温度は300℃未満、好ましくは200℃以下(RMS=6nm程度以下が得られる)にするのが良い。表1及び図16に示すように、第2Al膜34の表面反射率を90%近傍以上にするためには、第2Al膜34の成膜温度は300℃未満とし、好ましくは200℃以下(反射率90%以上が得られる)にするのが良い。
【0032】
上述した本実施の形態に係る光学MEMS素子21によれば、ビーム27を構成する光反射膜を兼ねる駆動側電極26を、表面粗度が10nm以下になるように形成することにより、駆動側電極26の表面反射率が90%近傍以上の高反射率となり、光学MEMS素子における反射効率、回折効率を向上することができる。また、駆動側電極26を、その膜応力が500MPa以下になるように形成することにより、ビーム27の反り変形が生じにくくなり、光学MEMS素子における反射効率、回折効率を向上することができる。好ましくは駆動側電極26を、表面粗度が10nm以下、膜応力が500MPa以下となるように形成することにより、駆動側電極の表面反射率が90%近傍以上の高反射率となり、且つ駆動側電極26の膜応力が50MPa以下になり、より反射効率、回折効率を向上することができる。
【0033】
駆動側電極26を、配線層28の成膜温度より低い成膜温度で形成することにより、駆動側電極26の表面粗度(RMS)が10nm以下、膜応力が500MPa以下になり、駆動側電極26の表面反射率を90%近傍以上の高反射率とし、かつビーム27を反り変形しにくくすることができる。
駆動側電極26を、室温〜200℃以下の成膜温度で形成することにより、駆動側電極26の表面粗度(RMS)が10nm以下、膜応力が500MPa以下となり、駆動側電極26の表面反射率を90%近傍以上の高反射率とし、かつビーム27を反り変形しにくくすることができる。
好ましくは駆動側電極26を、配線層28の成膜温度より低い室温〜200℃以下の成膜温度で形成するときは、駆動側電極の表面反射率が90%近傍以上の高反射率となり、且つ駆動側電極26の膜応力が50MPa以下になり、より反射効率、回折効率を向上することができる。
【0034】
図3及び図4は、図1の両持ち梁式構造のビームを有した光学MEMS素子21の製造方法の一実施の形態を示す。
先ず、図3Aに示すように、基板、例えばシリコン基板上にSiO2 、SiN等の絶縁膜を形成した基板22上に所要の導電膜、本例では多結晶シリコン膜による基板側電極23を形成し、基板側電極23を被覆するように絶縁膜41、例えばシリコン酸化膜(SiO2膜)を形成する。
【0035】
次に、図3Bに示すように、絶縁膜41上に基板側電極23に対応して選択的に犠牲層42、本例では非晶質シリコン膜を堆積する。
次に、図3Cに示すように、犠牲層42表面を含む絶縁膜41上に絶縁膜の例えばシリコン窒化膜43を形成した後、シリコン窒化膜43をパターニングして、シリコン窒化膜43によりビームの一部を構成する絶縁薄膜25及び両支持部24〔24A,24B〕を形成する。
【0036】
次に、図4Dに示すように、例えばスパッターリング法のより成膜温度300℃〜400℃程度で、一部両支持部24A及び24B上に接するように例えば純Alによる膜厚0,5〜1,0μm程度の配線層28〔28A,28B〕を形成する。
【0037】
次に、図4Eに示すように、絶縁薄膜25上に被着し且つ一部両配線層28A及び28B上に接続する反射膜を兼ねる駆動側電極26を選択的に形成する。駆動側電極26は、通常の膜厚100nm程度を有し、例えばスパッターリング法により配線層28の成膜温度より低い室温〜200℃以下、好ましくは200℃で形成する。駆動側電極26の成膜速度は、5〜20nm/secとする。この絶縁薄膜25と駆動側電極26とでビーム27を形成する。
【0038】
次に、図4Fに示すように、犠牲層42を選択的にエッチング除去し、目的の両持ち梁式構造の光学MEMS素子21を得る。
【0039】
本実施の形態の製造方法によれば、配線層28と駆動側電極26とを独立に形成することにより、配線層28及び駆動側電極26の目的を優先させた成膜ができる。即ち、駆動側電極26の成膜条件を特定することにより、表面粗度を10nm以下、膜物性である膜応力を500MPa以下に制御することができ、高反射率、低膜応力の駆動側電極26を形成することができる。駆動側電極26の形成に際して、室温〜200℃以下の成膜温度で形成することにより、駆動側電極26の成膜速度が速くならず、膜厚の再現性が良くなる。また、成膜温度が低いので、成膜中にAlのグレイン成長が生ぜず表面粗度を小さくすることができる。一方、配線層28は、300℃〜400℃の成膜温度で形成できるので、高速且つ厚膜の配線層を形成することがでる。これによって、配線層として十分機能を有すると共に、反射効率、回折効率の高い光学MEMS素子を精度よく且つ容易に製造することができる。
【0040】
図2は、本発明に係る光学MEMS素子の他の実施の形態を示す。本例は片持ち梁式構造に適用した場合である。なお、図1と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
本実施の形態に係る光学MEMS素子45は、基板22上に基板側電極23を形成し、この基板側電極23に対向して平行に一端を支持部24Cで支持した絶縁薄膜25及び光反射膜を兼ねる駆動側電極26とからなるビーム27を配置し、支持部28Cの側駆動側電極26端に配線層28Cを接続して構成される。支持部24Cは、ビーム27の一部を構成する絶縁薄膜25と同材料で一体に形成される。配線層28Cは、支持部24C側の絶縁薄膜25の一端に接するように形成され、駆動側電極26は一端が配線層28Cの上面に接続するように絶縁薄膜25上に形成される。ビーム27と基板側電極23とは、その間の空隙29によって電気的に絶縁される。
本実施の形態においては、特に、駆動側電極23が、前述した図1の光学MEMS素子21で説明したと同様の成膜条件、表面粗度、膜応力で形成される。
【0041】
本実施の形態に係る片持ち梁式構造の光学MEMS素子45の動作は、前述の図17で説明したと同様である。
本実施の形態に係る光学MEMS素子45においても、図1の光学MEMS素子21と同様に反射効率、回折効率の向上した片持ち梁式構造の光学MEMS素子を提供することができる。
【0042】
図5及び図6は、上述の図1の光学MEMS素子21を、回折光を利用する回折型光学MEMS素子であるGLV(Grating Light VALVE)素子に適用した実施の形態を示す。このGLV素子は、光強度変調素子の1つとして適用される。
本実施の形態に係るGLV素子51は、基板52上に共通の基板側電極53が形成され、この基板側電極53に交差してブリッジ状に跨ぐ複数、本例では5本のビーム57〔571、572 、573 、574 、575 〕が並列配置されて成る。基板側電極53及びビーム57は、前述の図1で説明した基板側電極23及びビーム27と同じ構成である。即ち、ビーム57は、例えばシリコン窒化(SiN)膜によるブリッジ部材の基板側電極53と平行する部分、つまり絶縁薄膜25の面上に、金属薄膜の例えば膜厚100nm程度のAl膜からなる光反射膜を兼ねる駆動側電極26が形成されてなる。各ビーム57の両端には、駆動側電極26に接続する配線層58〔58A,58B〕が形成される。ブリッジ部材による絶縁薄膜25と、その上に設けられた駆動側電極26とからなるビーム57は、リボンと称されている部分である。シリコン窒化膜のブリッジ部材の両端がビーム57を支持する支持部54〔54A,54B〕となる。
【0043】
ビーム57の駆動側電極26として使用するAl膜は、例えばスパッタリング法で成膜され、支持部58及びビーム57の絶縁薄膜25、いわゆるブリッジ部材を構成するシリコン窒化膜は、減圧CVD法によって成膜したシリコン窒化膜である。このシリコン窒化膜は、前述したように、その強度、弾性定数等の物理値が、ブリッジ部材の機械的駆動に対して適切であるとして選定されている。
【0044】
そして、本実施の形態のGLV素子51においては、その各ビーム57の駆動側電極26を図1で説明したと同じようにして形成される。即ち、駆動側電極26は、表面粗度が10nm以下に設定されるように形成される。駆動側電極26は、膜応力が500MPa以下に設定されるように形成される。より好ましくは駆動側電極26は、表面粗度が10nm以下で且つ膜応力が500MPa以下に設定されるように形成される。また、このような表面粗度、膜応力を達成させるために、駆動側電極26は、配線層58の成膜温度より低い成膜温度で形成することができる。駆動側電極26は、配線層58の成膜温度及び成膜速度より低い、室温〜200℃以下の成膜温度、及び5〜20nm/secの成膜速度で形成することはできる。
【0045】
このGLV素子51では、複数のビーム57のうち、1本置きのビーム572 、574 が基板側電極53に対して前述した静電力で近接、離間する可動ビームとなり、その他のビーム571、573、575 が固定ビームとなる。GLV素子51は、基板側電極53に対する1本置きのビーム572、574 の近接、離間の動作により、光反射膜を兼ねる駆動側電極26の高さを交互に変化させ、光の回折によって駆動側電極26で反射する光の強度(回折強度)を変調する。
【0046】
GLV素子57は、可動ビーム572 、574 の表面で反射する光の位相と、固定ビーム571、573 、575 の表面で反射する位相との差が0又はλ/4になるようにデジタル的に制御すること、或いは0〜λ/4の間でアナログ的に制御することが可能である。例えば5本ビーム57〔571〜575 〕が同一平面(図6参照)を形成していれば、ビーム57表面における反射光は、0次光である。一方、図5に示すようにビーム57が1本置きに沈み込んでいれば、回折により±1次光が発生する。GLV素子51は、この±1次光を加算して使用し、光の回折によって駆動側電極57で反射する光の強度(回折強度)を変調する光変調素子として適用される。
【0047】
図5及び図6の構成のGLV素子において、表1で示した条件でビーム57の駆動側電極(光反射膜兼用)26と、配線層58を独立に形成し、駆動側電極26が成膜温度300℃、200℃、150℃で形成された3種類のGLV素子を作製して評価した。その結果、成膜温度300℃で成膜した駆動側電極26を有するGLV素子より、成膜温度200℃及び150℃で成膜した駆動側電極26を有するGLV素子の方がコントラスト比が高いものが得られ、さらに成膜温度200℃で成膜した駆動側電極26を有するGLV素子より、成膜温度150℃で成膜した駆動側電極26を有するGLV素子の方がよりコントラスト比が高いものが得られた。
【0048】
ここで、コントラスト比とは、通常のプロジェクタの性能指標の1つで、光を遮断した時の黒のレベルと、光を通した時の白のレベルの比である。GLV素子では、表面凹凸による散乱光などがあると、光の遮断効果が悪くなる。すなわち、本来黒くしたいところが灰色のように明るくなってしまい、結果的にコントラスト比が低くなってしまう。したがって、コントラスト比を上げるためには、GLV素子の表面を出来る限り散乱光が少ない、すなわち表面凹凸のできるだけ小さくする必要がある。
【0049】
従って、本実施の形態のGLV素子57によれば、各ビームにおける駆動側電極とその配線層を独立に形成し、両者の目的を優先させて、配線層を高速、高温成膜して形成し、駆動側電極を低速、低温成膜して表面粗度が10nm以下、膜応力が500MPa以下となるように形成することにより、ビームの高表面反射を得、ビームの反りを防ぎ、反射効率の高いGLV素子を提供することができる。
【0050】
図7は、本発明の光学MEMS素子を適用した光変調素子としてのGLV素子を用いた光学装置の一実施の形態を示す。本例ではレーザディスプレイに適用した場合である。
本実施の形態に係るレーザディスプレイ71は、例えば、大型スクリーン用プロジェクタ、特にデジタル画像のプロジェクタとして、またはコンピュータ画像投影装置として用いられる。
【0051】
レーザディスプレイ71は、図7に示すように、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色のレーザ光源72R,72G,72Bと、各レーザ光源に対して、それぞれ光軸上に順次、設けられたミラー74R,74G,74B、各色証明光学系(レンズ群)76R,76G,76B、及び光変調素子として機能するGLV素子78R,78G,78Bとを備えている。
レーザ光源72R,72G,72Bは、それぞれ例えば、R(波長642nm、光出力約3W)、G(波長532nm、光出力約2W)、B(波長457nm、光出力約1.5W)のレーザを射出する。
【0052】
更に、レーザディスプレイ71は、GLV素子78R,78G,78Bによりそれぞれ光強度が変調された赤色(R)レーザ光、緑色(G)レーザ光及び青(B)レーザ光を合成する色合成フィルタ80、空間フィルタ82、ディフューザ84、ミラー86、ガルバノスキャナ88、投影光学系(レンズ群)90、及びスクリーン92を備えている。色合成フィルタ80は、例えばダイクロイックミラーで構成される。
【0053】
本実施の形態のレーザディスプレイ71は、レーザ光源72R,72G,72Bから射出されたRGB各レーザ光は、それぞれミラー74R,74G,74Bを経て各色照明光学系76R,76G,76Bから各GLV素子78R,78G,78Bに同期入力されるようになっている。
更に、各レーザ光は、GLV素子78R,78G,78Bによって回折されることにより空間変調され、これら3色の回折光が色合成フィルタ80によって合成され、続いて空間フィルタ82によって信号成分のみが取り出される。
次いで、このRGBの画像信号は、ディフューザ84によってレーザスペックルが低減され、ミラー86を経て、画像信号と同期するガルバノスキャナ88により空間の展開され、投影光学系90によってスクリーン92上にフルカラー画像として投影される。
本実施の形態のレーザディスプレイ71によれば、GLV素子78R,78G,78Bのコントラスト比が向上し、レーザ光源72R,72G,72Bからのレーザ光の利用効率が向上する。
【0054】
【発明の効果】
本発明に係る光学MEMS素子によれば、ビームを構成する光反射膜を兼ねる駆動側電極の表面粗度を10nm以下に設定し、駆動側電極の膜応力を500MPa以下に設定することにより、駆動側電極の反射率を90%近傍以上の高反射率とし、且つビームの反り変形を抑制することができ、より反射効率、回折効率を向上することができる。
【0055】
本発明に係る光学MEMS素子によれば、ビームを構成する光反射膜を兼ねる駆動側電極を、配線層の成膜温度、成膜速度より低い室温〜200℃以下の成膜温度、5〜20nm/secの成膜速度で形成することにより、駆動側電極の表面粗度が10nm以下に低減して反射率を高反射率90%近傍以上の高反射率とすることができ、且つ駆動側電極の膜応力を500MPa以下にしてビームの反り変形を抑制することができ、反射効率、回折効率を向上することができる。また、配線層を300℃〜400℃の高い成膜温度で形成できるので、目的に合った厚膜が得られる。
【0056】
本発明に係る光学MEMS素子の製造方法によれば、配線層と光反射膜を兼ねる駆動側電極を互いに独立に形成するので、両者を目的に合わせて成膜することができる。駆動側電極の成膜に際して、配線層の成膜温度より低い成膜温度で形成することにより、下地に配線層が有っても表面粗度を低減し、膜応力を低減することができ、高反射率を有し、ビームの反り変形を抑制できる駆動側電極を形成することができる。駆動側電極の膜厚の再現性も良くなる。従って、反射効率、回折効率の高い光学MEMS素子を精度良く且つ容易に製造することができる。
本発明に係る光学MEMS素子の製造方法によれば、特に、駆動側電極の成膜に際して、配線層の成膜温度、成膜速度より低い室温〜200℃以下の成膜温度、5〜20nm/sec成膜速度で形成することにより、下地に配線層が有っても表面粗度を低減し、膜応力を低減することができ、高反射率を有し、ビームの反り変形を抑制できる駆動側電極を形成することができる。駆動側電極の膜厚の再現性も良くなる。従って、反射効率、回折効率の高い光学MEMS素子を精度良く且つ容易に製造することができる。
本発明に係る光学MEMS素子の製造方法によれば、上記の成膜温度、成膜速度で駆動側電極を形成して、表面粗度が10nm以下、又は及び膜応力が500MPa以下の駆動側電極を形成することにより、反射効率、回折効率の高い光学MEMS素子を精度良く且つ容易に製造することができる。
【0057】
本発明に係る回折型光学MEMS素子によれば、各ビームを構成する光反射膜を兼ねる駆動側電極の表面粗度を10nm以下に設定し、駆動側電極の膜応力を500MPa以下に設定することにより、駆動側電極の反射率を90%近傍以上の高反射率とし、且つビームの反り変形を抑制することができ、より反射効率、回折効率を向上することができる。
【0058】
本発明に係る回折型光学MEMS素子によれば、各ビームを構成する光反射膜を兼ねる駆動側電極を、配線層の成膜温度、成膜速度より低い室温〜200℃以下の成膜温度、5〜20nm/secの成膜速度で形成することにより、駆動側電極の表面粗度が10nm以下に低減して反射率を高反射率90%近傍以上の高反射率とすることができ、且つ駆動側電極の膜応力を500MPa以下にしてビームの反り変形を抑制することができ、反射効率、回折効率を向上することができる。また、配線層を300℃〜400℃の高い成膜温度で形成できるので、目的に合った厚膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】A 本発明に係る光学MEMS素子の一実施の形態を示すように、断面図である。
B 図1Aの斜視図である。
【図2】A 本発明に係る光学MEMS素子の他の実施の形態を示すように、断面図である。
B 図2Aの斜視図である。
【図3】A〜C 本発明に係る光学MEMS素子の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その1)である。
【図4】D〜F 本発明に係る光学MEMS素子の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その2)である。
【図5】本発明に係る回折型光学MEMS素子となるGLV素子の実施の形態を示す斜視図である。
【図6】図5のGLV素子の断面図である。
【図7】本発明に係るGLV素子を光変調素子に用いた光学装置の一例のレーザディスプレイを示す構成図である。
【図8】A,B 夫々本発明の検証に用いたAl単膜構造の試料の構成図である。
【図9】A,B 夫々本発明の検証に用いたAl積層膜構造の試料の構成図である。
【図10】図8及び図9の試料の反射率を示す特性図である。
【図11】図9A,Bの試料の波長と反射率の関係を示す特性図である。
【図12】本発明の駆動側電極に相当するAl膜の成膜温度を変化させたときの成膜されたAl膜の膜応力、表面粗度、反射率の測定に用いたAl積層膜構造の試料の構成図である。
【図13】表面粗度と反射率の関係を示すグラフである。
【図14】成膜温度と膜応力の関係を示すグラフである。
【図15】成膜温度と表面粗度の関係を示すグラフである。
【図16】成膜温度と反射率の関係を示すグラフである。
【図17】A 従来の片持ち梁式構造の光学MEMS素子の例を示す断面図である。
B 図17Aの斜視図である。
【図18】A 従来の両持ち梁式構造の光学MEMS素子の例を示す断面図である。
B 図18Aの斜視図である。
【符号の説明】
21・・・光学MEMS素子、22・・・基板、23・・・駆動側電極、24〔24A,24B〕・・・支持部、25・・・絶縁薄膜、26・・・駆動側電極、27・・・ビーム、28〔28A,28B〕、28C・・・配線層、31・・・シリコン基板、32・・・シリコン酸化膜、33・・・第1Al膜、34・・・第2Al膜、35〜38・・・試料、39・・・試料、41・・・シリコン酸化膜、42・・・犠牲層、51・・・GLV素子、57〔571〜575 〕・・・ビーム、58〔58A,58B〕・・・配線層
Claims (3)
- 基板側電極と、
前記基板側電極との間に働く静電力により駆動する、絶縁薄膜及び反射膜を兼ねる駆動側電極とからなるビームと、
前記絶縁薄膜と同じ材料で一体に形成された前記ビームの支持部と、
前記ビームの駆動側電極に接続された配線層とを有し、
前記配線層は前記支持部及び前記ビームの絶縁薄膜の端部上に接するように形成され、
前記駆動側電極は、前記配線層の成膜温度及び成膜速度よりも低い、室温〜200℃以下の成膜温度及び5〜20nm/secの成膜速度で成膜されて、表面粗度が10nm以下、膜応力が500MPa以下に設定されたアルミニウム合金膜からなり、端部を前記配線層上に接するように前記絶縁薄膜上に形成されて成る
ことを特徴とする光学MEMS素子。 - 基板側電極を形成する工程と、
犠牲層を介して前記基板側電極と対向して、同じ材料によりビームの一部を構成する絶縁薄膜を前記ビームの支持部と一体に形成する工程と、
前記支持部及び前記絶縁薄膜の端部上に接するように配線層を形成する工程と、
前記配線層に一部が接続するように前記絶縁薄膜上に、前記配線層の成膜温度及び成膜速度よりも低い、室温〜200℃以下の成膜温度及び5〜20nm/secの成膜速度でアルミニウム合金膜を成膜して表面粗度が10nm以下、膜応力が500MPa以下に設定された、ビームの一部を構成する反射膜を兼ねる駆動側電極を形成する工程と、
前記犠牲層を除去する工程とを有する
ことを特徴とする光学MEMS素子の製造方法。 - 共通の基板側電極と、
前記共通の基板側電極に対向して相互に独立に配列され、前記基板側電極との間に働く静電力により駆動する、絶縁薄膜及び反射膜を兼ねる駆動側電極とからなる複数のビームと、
前記絶縁薄膜と同じ材料で一体に形成された前記各ビームの支持部と、
前記各ビームの駆動側電極の夫々に接続された配線層とを有し、
前記配線層は前記支持部及び前記ビームの絶縁薄膜の端部上に接するように形成され、
前記駆動側電極は、前記配線層の成膜温度及び成膜速度よりも低い、室温〜200℃以下の成膜温度及び5〜20nm/secの成膜速度で成膜されて、表面粗度が10nm以下、膜応力が500MPa以下に設定されたアルミニウム合金膜からなり、端部を前記配線層上に接するように前記絶縁薄膜上に形成されて成る
ことを特徴とする回折型光学MEMS素子。
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