JP4886455B2 - 化粧建材 - Google Patents

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Description

本発明は、主として窯業系建材及びプラスチック製品の廃材を再利用(リサイクル)して得られる化粧建材及びその製造方法に関するものである。
近年増え続ける建材、プラスチック製品などの廃材の処理が社会問題化している。例えば、繊維補強セメント板などの窯業系外装材から発生する廃材を処理するには、そのまま埋め立て地に投棄することが行われていたが、新たな埋め立て地が少なくなった現状では投棄し続けるには限界があり、従ってこれらの廃棄物を再資源化することが要請されている。
そこで、窯業系建材から発生する廃材の処理としては、細かく粒状に粉砕して新たな製品の原材料中に充填材として添加して再利用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、プラスチック製品から発生する廃材の処理としては、窯業系建材のような無機質製品とは異なって、燃焼廃棄ができるという利点はあるが、燃焼により発生するガスの処理が問題となっている。プラスチックの中でもポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂は、自動車の部品にも数多く使用されており、その再利用化による開発が期待されている。
そこで、これらの廃材を再資源化するために、窯業系建材の粉砕物と熱可塑性樹脂とを熱可塑性樹脂の融点近傍の温度に加熱しながら強制的に混合・混練し、この混練物を成型材料として金型に充填し、冷却固化した後、脱型することによって、基材を作製することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。そして、このような基材に対して密着性良く化粧層を形成して化粧建材を製造することも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2001−010856号公報 特開2004−223926号公報 特開2006−199569号公報
しかしながら、従来、上記の化粧層は、有機顔料を使用した一般的なエナメル質の塗装により形成されていたために、基材の表面のデザインの凹凸に沿って平滑な塗装面となって、基材の表面に石調の凹凸のデザインを形成しても、それを充分に活かせず、本物感が得にくいという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、本物の石材のような石調の外観あるいは本物の土壁のような土調の外観を有することができる化粧建材を提供することを目的とするものである。
発明に係る化粧建材は、基材の表面側に化粧層を有する化粧建材であって、クリアー樹脂と天然土からなる天然土層と、天然土層の表面に形成されるクリアー樹脂層とから前記化粧層が形成される化粧建材において、クリアー樹脂を含む塗料と天然土とを混合した混合物を基材に設けた密着層の表面に100〜300g/m の塗布量で塗布した後、塗布した混合物の乾燥前にさらにクリアー樹脂を含む塗料を30〜210g/m の塗布量で塗布し、この後、前記クリアー樹脂を含む塗料を乾燥硬化させることによって、前記化粧層を形成して成ることを特徴とするものである。
本発明の化粧建材は、化粧層の表面に保護層を形成するのが好ましい。
本発明の化粧建材は、化粧層の表面又は保護層の表面に、光触媒機能層を形成するのが好ましい
本発明の化粧建材は、無機質の粉体と熱可塑性樹脂を混練し、この混練物を金型にて加圧成型することによって基材を作製するのが好ましい
発明では、基材の表面側に化粧層を有する化粧建材であって、クリアー樹脂と天然土からなる天然土層と、天然土層の表面に形成されるクリアー樹脂層とから前記化粧層が形成される化粧建材において、クリアー樹脂を含む塗料と天然土とを混合した混合物を基材に設けた密着層の表面に100〜300g/m の塗布量で塗布した後、塗布した混合物の乾燥前にさらにクリアー樹脂を含む塗料を30〜210g/m の塗布量で塗布し、この後、前記クリアー樹脂を含む塗料を乾燥硬化させることによって、前記化粧層を形成するので、クリアー樹脂層を透して天然土層を視認することができ、有機顔料を使用したエナメル質の塗装に比べて、本物の石材のような石調の外観あるいは本物の土壁のような土調の外観を有することができるものである。また、基材と化粧層との間に密着層が介在していることによって、基材と密着層との間及び密着層と化粧層との間において密着性を得ることができ、その結果、基材に対する化粧層の密着性を高く得ることができるものである。
また、前記化粧層の表面に保護層を形成する場合は、化粧建材の外観の美観性及び耐候性を一層高く得ることができるものである。
また、前記化粧層の表面又は前記保護層の表面に、光触媒機能層を形成する場合は、光触媒機能層で防汚性を確保することができるものである。また、化粧層の表面に保護層が形成されている場合には、この保護層によって化粧層の耐侯性を向上させることができるので、長期間にわたって、防汚性及び耐侯性に優れ、外観の美観性を高く維持することができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
<基材>
本発明において無機質の粉体としては、建築廃材や、生産時・切断時に発生する工場端材などの窯業系外装材を、ハンマーミルなどの粉砕機で粉砕して得られるものを用いることができる。このような無機質の粉体が得られるのであれば、窯業系外装材に限定されるものではなく、例えば、スレート系屋根材の廃材、粘土瓦の廃材、ガラス屑、陶器屑などでも目的とする粉体を得ることができる。
また、熱可塑性樹脂としては、自動車部品の廃材などから多量に回収されるポリプロピレン等をバインダー樹脂として用いることができる。廃材からの回収量に限りがある場合には、バージン材であるポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を使用してもよいことはいうまでもない。また、熱可塑性樹脂としては、後述する密着層2の密着性に悪影響を及ぼさないものであれば、ポリプロピレンに限定されるものではない。
また、本発明では、無機質の粉体と熱可塑性樹脂を混練する過程で、無機質の粉体と熱可塑性樹脂の混練物100質量部に対して、エラストマーを2質量部以上(実質上の上限は100質量部、好ましくは50質量部)配合するのが好ましい。これにより、エラストマーが基材1の表層部に均一に分散されるので、基材1と密着層2との間において密着性をさらに高く得ることができ、厳しい環境下でも化粧建材Aを使用することができるものである。しかし、エラストマーが2質量部よりも少ないと、上記のような効果を得ることができない場合がある。エラストマーとしては、スチレン系やオレフィン系のものを用いることができるが、これら以外のものでも同様の効果を示すものであれば差し支えない。
そして、本発明において基材1は、次のようにして作製することができる。まず、無機質の粉体と熱可塑性樹脂を90〜50質量部:10〜50質量部の範囲(合計100質量部、以下同様の意味を示す。)、好ましくは85〜60質量部:15〜40質量部の範囲で配合し、熱可塑性樹脂の融点近傍の温度(例えば、160〜230℃)に加熱しながら強制的に混合・混練する。ここで、無機質の粉体と熱可塑性樹脂の配合量が上記の範囲を逸脱すると、基材1を作製することができなかったり、後述する密着層2に対して良好な密着性を得ることができなかったりする。次に、上記の混練物を金型に充填して、3〜9MPaの圧力をかけて加圧成型し、冷却固化した後に脱型することによって、板状などに形成された基材1を得ることができる。
また、基材1として、表面粗さが50nm〜500μmであるものを用いるのが好ましい。すなわち、本発明で使用する基材1において、その表面にRa値が50nm〜500μmの凹凸を設けることで、この次に設けられる密着層2を構成する樹脂成分が基材1の凹凸表面にアンカリングされるので、基材1と密着層2との密着性をさらに向上させることができるものである。なお、本明細書において、表面粗さとは、算術平均の粗さ(Ra値)であって平均線から絶対値偏差の平均値を示す(参考:JISB0601、市販の3次元粗度計を使用して測定することができる。)。
基材1の表面に凹凸を設ける場合に、Ra値が50nm未満では、密着層2を構成する樹脂成分が基材1の凹凸に入り込み難くなり、十分なアンカリングが起こらないため、密着性を向上させることが難しい。また、Ra値が500μmより大きい場合にも、凹凸に入り込んだ密着層2を構成する樹脂成分が十分に基材1にアンカリングされないため、密着性を向上させることが難しい。
基材1の表面に設ける凹凸は、Ra値が50nm〜500μmの範囲に入る方法であれば、どのような方法により形成されるものであっても良い。例えば、微細な砂を基材1の表面に吹き付けるサンドブラスト法、紙やすりなどにより基材1の表面を擦る摩擦法、水素、アルゴン、窒素、酸素などの気体を電離させたプラズマで基材1の表面を処理するプラズマ処理法、金型に予め凹凸処理などを施しておいて、金型成型により基材1を作製する際に基材1の表面に凹凸を設ける方法などが挙げられる。
これらの中でも、特にサンドブラスト法は、簡単に所望の表面粗さの凹凸を形成できることから好ましい。
また、プラズマ処理法は、プラズマ発生装置を必要とするが、微細な凹凸を形成することが可能であり好ましい。また、特に酸素プラズマを用いた場合には基材1の表面が親水性となり、密着層2を構成する樹脂成分の基材1に対する濡れ性を向上させることができる。さらに、あらかじめ各種の方法により凹凸を設けた基材1の表面をさらに酸素プラズマ処理しても良い。これにより、基材1の凹凸部分に親水性が付与されるので、密着層2を構成する樹脂成分の基材1に対する濡れ性が良くなり、その結果、密着性を一層高く得ることができる。基材1に対する濡れ性を向上させるには、水と基材1との接触角が40°以下(実質上の下限は0°)になるように処理することが好ましい。
また、酸素プラズマ処理の条件は、特に限定されるものではないが、常圧あるいは減圧下で酸素を充満させ、基材1の表面に高周波をかけることにより基材1の表面を親水性にすることができる。具体的には、例えば、0.01〜10Torr(1.33Pa〜1.33kPa)の減圧下、13.56MHzの周波数で1〜30分間処理することができる。もちろんこれらの条件は、生産性や装置の能力などを考慮して適宜変更できるものであり特に限定されるものではない。
また、基材1として、表面の濡れ性を高める処理を施したものを用いるのも好ましい。このような基材1を用いても、基材1と密着層2との密着性をさらに向上させることができるものである。本発明において、基材1の表面の濡れ性を高める処理としては、従来から公知の化学的処理などを施すことができるが、上述したように、特に酸素プラズマ処理が好ましい。酸素プラズマ処理は、上述した凹凸処理を行った基材1又は凹凸処理を行っていない基材1に対して施すことができる。
本明細書において、基材1の表面に対する濡れ性(親水性)は、水道水中に基材1を10秒間浸漬した後、引き上げたときの基材1の表面の水濡れ状態を目視で観察することにより判定することができる。このように水に対する濡れ性の良い基材1は、特に水を溶媒とする密着層形成用樹脂溶液(後述)との濡れ性が優れるので、基材1と密着層2との密着性に優れたものとなる。なお、濡れ性の判定基準は、次の通りである。すなわち、濡れ性が良好なものは、引き上げた後、10秒経過しても水の偏りがない状態であり、また、濡れ性が少し劣るものは、引き上げた直後は全面濡れているが、引き上げてから10秒後には基材1の端部から中央に水が寄っている状態であり、また、濡れ性が劣るものは、引き上げた直後に水玉ができて基材1の表面全体に水が濡れない状態である。
そして、上記のようにして作製される基材1は、屋内用の建材としてそのまま使用することもできるが、耐候性が要求される屋外用の建材として使用する場合には、熱可塑性樹脂の耐侯性の低さから基材1に塗装を行って化粧層3(ベース)を形成することが必要となる。しかし、基材1の表面にはポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂が偏在していることが多いため、基材1の表面に直接化粧層3を形成しても、密着性を高く得ることができない。そこで、本発明では、図1に示すように、基材1の表面に密着層2(プライマー)を介して化粧層3を形成するようにして、化粧建材Aを製造するようにしてある。
本発明においては、上記のように基材1の表面に密着層2を介して化粧層3を形成した上で、さらに必要に応じて、保護層4や光触媒機能層5を形成することによって、化粧建材Aを製造することができる。これらの化粧建材Aの概略断面図を図1〜図3に示す。
次に、密着層2、化粧層3、保護層4、光触媒機能層5の各層について説明する。
<密着層>
本発明では、図1に示すように、基材1の表面に密着層(プライマー)2を介して化粧層3を形成するようにして、化粧建材Aを製造するようにしてある。このように、基材1と化粧層3との間に密着層2が介在していることによって、基材1と密着層2との間及び密着層2と化粧層3との間において密着性を得ることができ、その結果、基材1に対する化粧層3の密着性を高く得ることができるものである。
ここで、密着層2はポリプロピレン系被膜層であることが好ましい。その理由は、ポリプロピレン系樹脂自体が基材1に対する密着性に優れ、かつ、化粧層3に対する密着性にも優れているからであり、これにより、耐久性に優れた化粧建材Aを得ることができるものである。
また、密着層2は、有機溶剤又は水を溶媒とするポリプロピレン系樹脂溶液を基材1の表面に塗布することによって形成された被膜層であることが好ましい。その理由は、ポリプロピレン系樹脂溶液は、ポリプロピレン系樹脂溶液以外の樹脂溶液と比べて、基材1に対する濡れ性に優れているからであり、これにより、基材1に対する密着性をさらに高く得ることができるものである。また、水を溶媒とするポリプロピレン系樹脂溶液を用いるようにすれば、環境に優しく、環境負荷を低減することができるものである。
ここで、有機溶剤を溶媒とするポリプロピレン系樹脂溶液としては、例えば、ポリプロピレン樹脂に塩素を付加させたものをトルエンなどの溶剤に溶かして調製したプライマー組成物を使用することができる。
一方、水を溶媒とするポリプロピレン系樹脂溶液としては、例えば、ポリプロピレン樹脂に塩素を付加させたものをトルエンなどの溶剤に溶かした後、この溶液を非イオン性界面活性剤などの乳化剤でエマルジョン化し、さらにこれを脱溶剤化することによって調製したエマルジョン組成物を使用することができる。
また、上述したもの以外には、ポリオレフィン系重合体に重合性不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、イタコン酸など)又はその無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸など)を既知の方法でグラフト重合させることにより得られた水性ポリオレフィン系樹脂を中和剤(アミンなど)で中和させた後、必要に応じて界面活性剤を配合した水に分散させたものを使用することができる。水以外に必要に応じてプロピルアルコールなどの水可溶性や水分散性の有機溶剤を基材1との濡れ性を良くするために水と組み合わせて使用することもできる。
上述したポリプロピレン系樹脂溶液には、化粧層3を形成するために使用する樹脂成分(後述)を配合することができる。このような樹脂成分を配合することにより、化粧建材Aをさらに厳しい環境下で使用するような場合であっても、密着層2と化粧層3との間の密着性をさらに高めることができるものである。具体的には、例えば、化粧層3を形成するために使用する樹脂成分が水性アクリル系樹脂組成物である場合には、水を溶媒とするポリプロピレン系樹脂溶液に水性アクリル系樹脂組成物を配合することができる。
また、ポリプロピレン系樹脂溶液に配合する上記樹脂成分は、固形分換算で両者の合計量が100質量部となるように、ポリプロピレン系樹脂20〜80質量部に対して上記樹脂成分80〜20質量部、好ましくはポリプロピレン系樹脂35〜65質量部に対して上記樹脂成分65〜35質量部の範囲である。ポリプロピレン系樹脂が20質量部未満であって、上記樹脂成分が80質量部を超える場合には、基材1と密着層2との間の密着性が低くなる場合があり、逆に、ポリプロピレン系樹脂が80質量部を超えて、上記樹脂成分20質量部を下回る場合には、密着層2と化粧層3との間の密着性が高くならない場合がある。
また、ポリプロピレン系樹脂溶液には、必要に応じて、着色剤、充填剤、流動性調整剤、防腐剤、その他の塗料用添加剤などを配合することができる。
密着層2を形成するためのプライマーの具体例としては、関西ペイント(株)製の商品名「レタンCDプライマー」を挙げることができる。これは、主剤が上記のポリプロピレン系樹脂、溶剤がシンナーからなるものであって、塗布量16〜34g/m(DRY重量計測値)、基材1の板温5〜50℃、タック時間5分〜24時間の条件で使用することができる。
<化粧層>
本発明において、化粧層3は、図1に示すように、基材1の表面に密着層2を介して形成することができる。また、化粧層3は、天然土層10とその表面に形成されるクリアー樹脂層11とから構成されている。天然土層10はクリアー樹脂と天然土の混合物で形成されている。クリアー樹脂としては透明なアクリルシリコン樹脂を例示することができるが、これに限定されるものではない。また、天然土としては粒径が1〜2mmのものであって、具体的には、京錆土、浅黄土、稲荷山黄土などを用いることができるが、これに限定されるものではない。また、クリアー樹脂層11は天然土層10で使用するクリアー樹脂と同様のもので形成することができる。
化粧層3を形成するにあたっては、特に有効な方法として、二つの方法を例示することができる。一つめの方法は、密着層2の表面にクリアー樹脂を含む塗料(クリアー塗料)を塗布し、この塗料の乾燥前に天然土を散布し、さらにこの後、散布した天然土の層の上にクリアー樹脂を含む塗料を塗布し、この後、クリアー樹脂を含む塗料を乾燥硬化させるようにすることができる。この場合、散布した天然土の層に上下のクリアー樹脂を浸透させて天然土層10を形成することができ、クリアー樹脂で天然土を保持して脱落しにくくすることができる。クリアー樹脂層11は天然土層10に浸透しなかったクリアー樹脂で形成される。二つめの方法は、クリアー樹脂を含む塗料と天然土とを混合した混合物を密着層2の表面に塗布した後、塗布した混合物の乾燥前にさらにクリアー樹脂を含む塗料を塗布し、この後、クリアー樹脂を含む塗料を乾燥硬化させるようにすることができる。この場合、混合物で天然土層10を形成することができ、混合物中のクリアー樹脂で天然土を保持して脱落しにくくすることができる。また、混合物の塗布後にさらに塗布するクリアー樹脂を含む塗料でクリアー樹脂層11を形成することができる。
クリアー樹脂層11は上記の効果を有する他、化粧層3の全面を略均一に覆うことにより、天然土層10の見え方にムラが無く意匠性が向上するものである。また、後述するように保護層4や光触媒機能層5を化粧層3の表面に設ける場合、クリアー樹脂層11の略均一な表面により、浸み込み等を防止して安定した保護層4や光触媒機能層5を形成可能とするものである。
上記のクリアー樹脂を含む塗料の具体例としては、関西ペイント(株)製の商品名「エコ建材ベース塗料」を挙げることができる。これは、主剤がアクリルシリコン樹脂、硬化剤が有機スズ化合物、溶剤がシンナーからなるものである。上記の化粧層3を形成する一つめの方法において、クリアー樹脂を含む塗料は、塗布量26〜44g/m(DRY重量計測値)、基材1の板温5〜50℃、タック時間5分〜24時間の条件で使用することができ、天然土の散布量は100〜300g/mとすることができる。上記の化粧層3を形成する二つめの方法において、混合物の塗布量は100〜300g/m(DRY重量計測値)とすることができ、クリアー樹脂を含む塗料の塗布量30〜210g/m(DRY重量計測値)とすることができる。また、混合物を調製する際のクリアー樹脂を含む塗料と天然土との混合割合は、クリアー樹脂を含む塗料:天然土=30〜70:70〜30(質量比)とすることができ、好ましくは、クリアー樹脂を含む塗料:天然土=50:50で混合することができる。
<保護層>
本発明では、図2に示すように、化粧層3の表面に保護層4を形成するのが好ましい。このように保護層4を形成することによって、化粧建材Aに意匠性、密着性、耐水性などの性能を付与することができ、化粧建材Aの外観の美観性及び耐候性を一層高く得ることができるものである。
ここで、保護層4は無機クリアー層(無機質を主成分とする透明な塗膜)、例えば、硬化型樹脂被膜層であることが好ましい。これにより、化粧建材Aの耐候性などの耐久性を一層高く得ることができるものである。
また、保護層4は、有機溶剤又は水を溶媒とする硬化型樹脂溶液(塗料)を塗布することによって形成された実質的に透明な被膜層であることが好ましい。その理由は、硬化型樹脂溶液は、化粧層3に対する濡れ性に優れているからであり、これにより、化粧層3に対する密着性をさらに高く得ることができると共に、化粧建材Aの外観の美観性をも高く得ることができるものである。また、水を溶媒とする硬化型樹脂溶液を用いるようにすれば、環境に優しく、環境負荷を低減することができるものである。なお、実質的に透明な被膜層とは、無色透明な被膜層のみならず、完全に隠蔽しない程度に着色された被膜層(半透明な被膜層)をも含む被膜層を意味する。よって、保護層4を形成するために使用される硬化型樹脂溶液には、着色剤を配合することができる。
ここで、有機溶剤又は水を溶媒とする硬化型樹脂溶液を調製するために使用される硬化型樹脂としては、特に限定されるものではないが、加熱する場合には硬化温度(基材1の表面温度)が120℃以下、特に100℃以下の温度で硬化するものを使用するのが好ましい。例えば、保護層4はイソシアネート硬化型樹脂及び反応性珪素基含有硬化型樹脂から選ばれる少なくとも1種のもので形成するのが好ましい。これにより、化粧建材Aの外観の美観性及び耐候性を一層高く得ることができるものである。
また、本発明において保護層4は、上述した有機溶剤又は水を溶媒とする硬化型樹脂溶液を用いて形成されるものに限定されるものではなく、100%熱硬化型樹脂溶液や熱硬化型粉体などで形成される化粧被膜層や、活性エネルギー線硬化型によって形成される化粧被膜層も包含されるものである。
また、本発明において、保護層4は紫外線(例えば、波長350nm)を70%以上(実質上の上限は99.9%)カットする被膜層であることが好ましい。このような保護層4はシリコーン系被膜などの被膜層で形成することができるが、このような被膜層で化粧層3に紫外線が照射されるのを阻止することによって、化粧層3の耐侯性を従来よりも飛躍的に向上させることができるので、長期間にわたって耐侯性に優れ、外観の美観性を高く維持することができるものである。
しかし、紫外線のカット率が70%未満であると、保護層4を通過した30%を超える紫外線が、化粧層3の劣化を引き起こし、化粧層3と保護層4との間で密着不良を引き起こす原因となる場合がある。
紫外線をカットする方法としては、例えば、保護層4を形成する樹脂中に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの微粒子酸化物を配合・分散させ、これを用いて保護層4を形成する方法を挙げることができる。また、紫外線を70%以上カットする場合、保護層4の膜厚が一定であるときには、上述した微粒子酸化物の配合量を適宜増加させるなどして調整する方法を使用することができ、また、上述した微粒子酸化物の配合量が一定であるときには、保護層4の膜厚を適宜厚くするなどして調整する方法を使用することができる。
保護層4を形成するための塗料としては、松下電工化研(株)製の商品名「MC−T570クリア」を用いることができ、塗布量5.5〜9.5g/m(DRY重量計測値)、基材1の板温5〜70℃の条件で使用することができる。
<光触媒機能層>
本発明では、図2に示すように、化粧層3の表面に直接光触媒機能層5を形成したり、又は、図3に示すように、化粧層3の表面に保護層4が形成されている場合には、保護層4の表面に光触媒機能層5を形成したりするのが好ましい。このようにすると、光触媒機能層5で防汚性を確保することができるものである。また、化粧層3の表面に保護層4が形成されている場合には、この保護層4によって化粧層3の耐侯性を向上させることができるので、長期間にわたって、防汚性及び耐侯性に優れ、外観の美観性を高く維持することができるものである。
ここで、光触媒機能層5は無機クリアー層(無機質を主成分とする透明な塗膜)であって、例えば、シリコン系樹脂に光触媒機能を有する化合物(酸化チタン、酸化亜鉛など)を配合したものを用いて形成することができる。
シリコン系樹脂としては反応性珪素基含有硬化型樹脂を使用することができ、また、この反応性珪素基含有硬化型樹脂を有機溶剤又は水に溶解させて調製される硬化型樹脂溶液(塗料)も使用することができる。
また、シリコン系樹脂としては、上述したもの以外にも、加水分解性シリル基含有ポリオルガノシロキサンなどの無機系珪素樹脂も使用することができる。このような無機系珪素樹脂は、有機溶剤又は水に分散した樹脂溶液として使用することができる。
加水分解性シリル基としては、例えば、水によりヒドロキシシリル基を生じるもの、具体的には、炭素数1〜3のアルコキシシリル基が好適なものとして挙げられる。また、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリプロポキシプロピルシラン、トリブトキシブチルシランなどのトリアルコキシアルキルシラン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物の低縮合物(縮合度5〜20)などが挙げられる。また、必要に応じてジアルコキシジアルキルシラン化合物、モノアルコキシトリアルキルシラン化合物を併用した縮合物やグリコールやアルキレンオキサイドなどで変性したものも使用することができる。また、加水分解性シリル基の加水分解性触媒及び硬化剤を必要に応じて配合することができる。さらに、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、透明顔料、完全に隠蔽しない程度に着色顔料などを必要に応じて配合することができる。
光触媒機能を有する化合物の配合割合は、要求される性能などに応じて適宜決めれば良いが、一般的にはシリコン系樹脂100質量部に対して10〜200質量部、好ましくは20〜150質量部の範囲である。
上述した光触媒機能層5は、特に化粧建材Aの防汚性能を高める役割を果たすものである。
また、光触媒機能層5は、図2に示すように、化粧層3の表面に直接形成する場合には、特にこの化粧層3がシリコン系被膜層やフッ素系被膜層であることが好ましい。ここで、このようなシリコン系被膜層やフッ素系被膜層などの耐候性に優れた化粧被膜層を形成しないで、他の化粧層3の表面に直接光触媒機能層5を形成すると、この光触媒機能層5の光触媒活性により、下地である化粧層3が分解されて剥離するなどして、長期の安定した防汚性能を得ることができないおそれがある。
また、光触媒機能層5は、図3に示すように、化粧層3の表面に保護層4を介して形成する場合には、この保護層4がシリコン系被膜層やフッ素系被膜層であることが好ましい。そうすると、最も外側に位置する光触媒機能層5により防汚性を確保することができ、また、この光触媒機能層5の光触媒活性では分解されるおそれのないシリコーン系被膜層やフッ素系被膜層である保護層4で、化粧層3に紫外線が照射されるのを阻止することができ、化粧層3の耐侯性を従来よりも飛躍的に向上させることができるので、長期間にわたって、防汚性及び耐侯性に優れ、外観の美観性を高く維持することができるものである。
光触媒機能層5を形成するための塗料としては、松下電工(株)製の商品名「光触媒200」を用いることができ、塗布量0.55〜1.11g/m(DRY重量計測値)、基材1の板温20〜50℃の条件で使用することができる。
次に、本発明に係る化粧建材Aにおける被膜層、すなわち、密着層2、化粧層3、保護層4、光触媒機能層5の形成方法について、より詳細に説明する。
上述のように、化粧建材Aは、図1に示すように、基材1の表面に密着層2を形成し、次いで化粧層3を形成することによって製造することができるほか、図2に示すように、化粧層3を形成した後に保護層4又は光触媒機能層5を形成することによって製造したり、図3に示すように、保護層4を形成した後に光触媒機能層5を形成することによって製造したりすることができる。
また、各被膜層は、有機溶剤又は水を溶媒とする樹脂溶液(塗料)を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
有機溶剤又は水を溶媒とする樹脂溶液を用いて各被膜層を形成する方法としては、従来から公知の、例えば、自動車のバンパーを塗装する塗装方法を使用することができ、このような方法によって、各被膜層を積層することができる。例えば、密着層2、化粧層3の2層で化粧建材Aの被膜層が形成される場合には、密着層2を形成する樹脂溶液を塗装し、密着層2中に溶媒が残存しない加熱条件で加熱した後、化粧層3を形成する樹脂溶液(塗料)を塗装し、次いで化粧層3が硬化する温度で焼付ける塗装方法(いわゆる2コート2ベーク方式)を使用することができ、また、密着層2を形成する樹脂溶液を塗装し、次いで加熱を行わないか(密着層2中に溶媒が残存した状態)又は必要に応じて固形分が95質量%以下になるように加熱を行った後、化粧層3を形成する樹脂溶液を塗装し、次いで化粧層3が硬化する温度で焼付ける塗装方法(いわゆる2コート1ベーク方式)を使用することができる。同様にして、密着層2、化粧層3、必要に応じて保護層4又は光触媒機能層5が積層される3層の場合には、3コート1ベーク方式、3コート2ベーク方式、3コート3ベーク方式、また、保護層4の上に光触媒機能層5が積層される4層の場合には、4コート1ベーク方式、4コート2ベーク方式、4コート3ベーク方式、4コート4ベーク方式により、各被膜層を積層することができる。
上述した塗装方法としては、例えば、エアースプレー、静電スプレー、非静電スプレー、ローラー、刷毛、浸漬、グラビアコーター、スクリーン、オフセット印刷、ナイフコーターなどの手段を用いて行う方法を挙げることができる。
また、各被膜層の膜厚は、要求される性能や外観により適宜選択すればよいが、一般的には、密着層2については10〜1000μm、化粧層3については500〜5500μm(このうち、天然土層10の厚みは450〜5000μm、クリアー樹脂層11の厚みは10〜500μm)、保護層4については4〜200μm、光触媒機能層5については1〜100μmの範囲の膜厚で十分と考える。
本発明に係る化粧建材Aは、外壁材、外壁用コーナー材、窓周囲の装飾枠部材、手摺の装材、破風板、鼻隠し、胴差、屋根材、屋根用役物及び付属部材、野地板、合板代替品としての型枠、軒天材などの建材や、ケーブルトラフ、排水溝、雨水枡などの土工材、さらには車止め、標識杭、インターロッキングブロックなどに使用することができ、これらのものは、すべて十分に実用可能な強度、密着性能を有するものである。このように、本発明に係る化粧建材Aは、化粧層3の密着性、耐候性に優れ、軽量であると共に、耐水性にも優れ、吸水率も低く、建材として非常に有用であるなどの効果を有し、無機質建材などの廃材とプラスチック製品の廃材とを原料として有用な製品が大量生産可能となり、廃棄物の処理の負担が大幅に軽減されるものである。
そして、本発明の化粧建材Aは、光触媒機能層5、保護層4、化粧層3のクリアー樹脂層11を透して化粧層3の天然土層10を視認することができ、本物の石材のような石調の外観あるいは本物の土壁のような土調の外観を有することができるものである。
本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。 本発明の実施の形態の他例を示す断面図である。 本発明の実施の形態のさらに他例を示す断面図である。
符号の説明
A 化粧建材
1 基材
2 密着層
3 化粧層
4 保護層
5 光触媒機能層
10 天然土層
11 クリアー樹脂層

Claims (4)

  1. 基材の表面側に化粧層を有する化粧建材であって、クリアー樹脂と天然土からなる天然土層と、天然土層の表面に形成されるクリアー樹脂層とから前記化粧層が形成される化粧建材において、クリアー樹脂を含む塗料と天然土とを混合した混合物を基材に設けた密着層の表面に100〜300g/m の塗布量で塗布した後、塗布した混合物の乾燥前にさらにクリアー樹脂を含む塗料を30〜210g/m の塗布量で塗布し、この後、前記クリアー樹脂を含む塗料を乾燥硬化させることによって、前記化粧層を形成して成ることを特徴とする化粧建材。
  2. 前記化粧層の表面に保護層を形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の化粧建材。
  3. 前記化粧層の表面又は前記保護層の表面に、光触媒機能層を形成して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧建材。
  4. 無機質の粉体と熱可塑性樹脂を混練し、この混練物を金型にて加圧成型することによって基材を作製して成ることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の化粧建材。
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