JP4885469B2 - キヌクリジン類の製造方法 - Google Patents

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本発明は医農薬原料として有用なキヌクリジン類の製造方法に関する。
従来、式(2):
Figure 0004885469
(式中、Rは水素原子又は低級アルキル基を表す。)で示されるキヌクリジン類(以下、キヌクリジン類(2)という。)の製造法としては、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン類若しくは1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン類をゼオライト触媒に気相で接触させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開昭60−260574
しかし、特許文献1には4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン類からの製造法は具体的に示されておらず、また1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン類からの製造においては収率23%でしかキヌクリジン類(2)が得られていない。
本発明は、収率よくキヌクリジン類(2)を製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者が上記課題を解決するために鋭意検討したところ、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン類を原料とし、ゼオライト触媒存在下に気相脱水反応させてキヌクリジン類(2)を製造するにあたり、水を共存させることで収率よくキヌクリジン類(2)が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、式(1):
Figure 0004885469
(式中、Rは水素原子又は低級アルキル基を表す。)で示される4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン類を、ゼオライト触媒の存在下に気相脱水反応させてキヌクリジン類(2)を製造するにあたり、水の共存下で反応させることを特徴とするキヌクリジン類(2)の製造方法に関する。
本発明の製造方法によれば、収率よくキヌクリジン類(2)が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
式(1)及び(2)中、Rで表される低級アルキル基としては、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。
4−ヒドロキシエチルピペリジン類(1)としては、例えば4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン、4−(1−ヒドロキシ−2−プロピル)ピペリジン、4−(1−ヒドロキシ−2−ブチル)ピペリジン、4−(1−ヒドロキシ−2−ペンチル)ピペリジン、4−(1−ヒドロキシ−2−ヘキシル)ピペリジン等が挙げられる。かかる4−ヒドロキシエチルピペリジン類(1)は市販品を用いることができる。
キヌクリジン類(2)としては、キヌクリジン、3−メチルキヌクリジン、3−エチルキヌクリジン、3−プロピルキヌクリジン、3−ブチルキヌクリジン等が挙げられる。
本発明の製造方法は、気相にて水共存下、4−ヒドロキシエチルピペリジン類(1)をゼオライト触媒に接触させることで実施される。
ゼオライト触媒としては、アルカリイオン型、アンモニウムイオン(NH )型又はプロトン(H)型のゼオライト触媒が通常用いられ、また、必要に応じて1〜17族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素のイオン及び/又は化合物を含有させたものを用いることもできる。ゼオライトとしては通常制御指数0.8〜12程度のゼオライトが用いられ、これらは市販で容易に入手できる。尚、ここで言う「制御指数」とは、例えばFrillette等のJournal of Catalysis,67,218(1981)で定義されている触媒の細孔特性を表わすものである。この値は測定の方法により若干の幅があるが、Frillette等の測定の結果を次の表1に示す。
Figure 0004885469
本発明における1〜17族元素とは、18族型元素周期律表に掲げられる元素であり、具体的には、1族元素としてはLi、K、Rb及びCs、2族元素としてはMg、Ca、Sr及びBa、3族元素としてはSc、Y及びランタノイド元素(La、Ce、Pr、Nd、Er及びYb)、4族元素としてはTi、Zr及びHf、5族元素としてはV、Nb及びTa、6族元素としてはCr、Mo及びW、7族元素としてはMn、Tc及びRe、8族元素としてはFe、Ru及びOs、9族元素としてはCo、Rh及びIr、10族元素としてはNi、Pd及びPt、11族元素としてはCu及びAg、12族元素としてはZn及びCd、13族元素としてはAl、Ga、In及びTl、14族元素としてはGe、Sn及びPb、15族元素としてはSb及びBi、16族元素としてはPo、17族元素としてはF、Clが挙げられる。
これら1〜17族元素のイオン及び/又は化合物としては、それら元素のイオン、酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、水酸化物、硫化物、ケイ酸塩、チタン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩等が挙げられ、これらの1種或いは2種以上を含有することができる。これらの元素のイオン及び/又は化合物を、ゼオライトに含有せしめる方法としては、イオン交換法、混練法、含浸法、浸漬法、沈着法又は蒸発乾固法等が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。具体的には、例えば、(1)イオン交換法により含有させるときには、上記元素の可溶性塩(例えば、塩化物、硝酸塩或いは酢酸塩等)を0.01〜2グラムイオン/リットルの濃度で水に溶解し、当該水溶液にアルカリイオン型、アンモニウムイオン(NH )型又はプロトン(H)型のゼオライト、好ましくはNH 型ゼオライトを浸し、所定温度で攪拌した後、濾過する工程を繰り返し、最終的に得られた濾滓を水で洗浄する。こうして得られた上記元素のイオンを含有するゼオライトを、乾燥し、必要に応じて焼成すればよい。(2)混練法により上記元素のイオン及び/又は化合物を含有させるときは、上記元素の化合物を、H型或いはNH 型のゼオライトと、必要に応じて水と共に混練した後、乾燥し、必要ならば焼成すればよい。(3)浸漬法により上記元素のイオン及び/又は化合物を含有させるときは、上記元素の可溶性塩を水に溶解し、得られた溶液にNH 型或いはH型のゼオライト、好ましくはNH4+型ゼオライトを浸した後、乾燥し、必要ならば焼成すればよい。(4)沈着法により含有させるときは、上記元素の可溶性塩の水溶液にNH 型或いはH型のゼオライトを分散させ、この混合物中にアンモニア水溶液を加えることによりNH 型或いはH型のゼオライトの表面に上記元素の水酸化物を沈着させ、濾過した後、水で洗浄して乾燥し、必要ならば焼成すればよい。(5)蒸発乾固法により含有させるときは、上記元素の化合物並びにNH 型或いはH型のゼオライトを水中で攪拌、混合し、蒸発乾固した後、必要ならば焼成すればよい。いずれの方法においても、焼成を行うときには、通常空気、窒素及び/又は二酸化炭素等の雰囲気下に、350〜800℃で数時間行われるが、触媒は気相接触反応時に反応器内で加熱されるため必ずしも触媒の焼成は必要でない。
1〜17族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素のイオン及び/又は化合物の含有量は、ゼオライトによって或いは含有させる元素の種類又はその形態によって好ましい範囲が異なるが、通常0.0005〜10mg当量/ゼオライトgである。
本発明のゼオライトは、そのまま又はシリカ、硅藻土、カオリン、ベントナイト、アルミナ及び/或いはシリカアルミナ等のバインダーや水、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルを加えた後、打錠機又は押し出し機で円柱状、円筒状等の所望の形状に成型して固定床触媒として使用することができる。またゼオライトを、シリカ、硅藻土、カオリン、ベントナイト、アルミナ及び/又はシリカアルミナ等のバインダー並びに水と混合してスラリーとし、これを噴霧乾燥して、球状のマイクロビーズにして流動床触媒として使用することができる。本発明のゼオライトが、1〜17族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素のイオン及び/又は化合物を含有するものであるときは、上記のようにして所望の形状成型したゼオライトに、上記イオン交換法、含浸法、浸漬法等により、1〜17族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素のイオン及び/又は化合物を含有させて、固定床触媒又は流動床触媒としてもよい。いずれの方法においても、空気、窒素及び二酸化炭素等の雰囲気下に、350〜800℃で数時間焼成して、成型品に強度を賦与し、バインダー等に含まれる揮発成分を除去する。しかし、触媒は気相接触反応時に反応器内で加熱されるため、この成形された触媒についても必ずしも焼成は必要でない。
水の使用量は4−ヒドロキシエチルピペリジン類(1)1モルに対して、通常0.5〜20モル、好ましくは1〜15モルである。水は4−ヒドロキシエチルピペリジン類(1)と同時に反応器内に導入しても良いし、予め4−ヒドロキシエチルピペリジン類(1)を水に溶解させた後に、原料水溶液として反応器内に導入しても良いが、原料水溶液として反応器内に導入するほうが好ましい。
反応温度は4−ヒドロキシエチルピペリジン類(1)が気化する温度以上であればよく、通常300〜500℃、好ましくは350〜450℃である。原料供給の空間速度は4−ヒドロキシエチルピペリジン類(1)水溶液の液空間速度で通常0.1〜10(g/cc−触媒・h)であり、好ましくは0.2〜5(g/cc−触媒・h)である。
反応は通常窒素ガス、アルゴンガス等の反応に不活性なガスの共存下で行われる。かかるガスの使用量は4−ヒドロキシエチルピペリジン類(1)1モルに対して、通常1〜20モル、好ましくは2〜10モルである。
反応終了後、キヌクリジン類(2)を主成分とする反応混合ガスを水又は酸性水溶液に通じて溶解させ、キヌクリジン類(2)を主成分とする反応混合液を得る。得られた反応混合液から、抽出、濃縮等の所望の分離操作によりキヌクリジン類(2)を得ることができる。また、ハロゲン化水素酸を用いて、ハロゲン化水素酸塩として得ることもできる。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明が実施例により限定されるものでない。尚、分析には島津製作所製ガスクロマトグラフィー(以後GCと略する)分析装置GC−14B型を用いた。
実施例1
内径15mmのガラス管に、H型のZSM−5ゼオライト10ml、その上部に長さ10cm分粒径2〜3mmのカーボランダム粒を詰めた。触媒層及びカーボランダム層の温度は400℃に保ち、上部より4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン水溶液(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン:水=1:10)を0.088g/minの速度で滴下し、同時に上部より窒素を200Nml/min導入した。得られた反応混合ガスを100mlの水に溶解させて、反応混合液を得た。反応混合液のGC分析の結果、キヌクリジンの収率は78.0%であった。
実施例2
実施例1の4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン水溶液のモル比を1:10に代えて、1:3にした以外は実施例1と同様にして行い、反応混合液を得た。反応混合液のGC分析の結果、キヌクリジンの収率は79.4%であった。
比較例1
実施例1の4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン水溶液に代えて、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジンを用いた以外は実施例1と同様にして行い、反応混合液を得た。反応混合液のGC分析の結果、キヌクリジンの収率は54.7%であった。

Claims (2)

  1. 式(1):
    Figure 0004885469
    (式中、Rは水素原子又は低級アルキル基を表す。)で示される4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン類を、ゼオライト触媒の存在下に気相脱水反応させて式(2):
    Figure 0004885469
    (式中、Rは前記に同じ。)で示されるキヌクリジン類を製造するにあたり、水の共存下で反応させることを特徴とするキヌクリジン類の製造方法。
  2. 水の使用量が、式(1)で表される4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン類1モルに対して、1〜15モルであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
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