JP4885389B2 - シリコーン組成物および硬化したシリコーン生成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はシリコーン組成物に関し、より詳細にはヒドロキシ官能性有機化合物とチタンキレート化合物の特定の組み合わせを含んで成るヒドロシリル化付加硬化性シリコーン組成物に関する。本発明は、さらに、この組成物から形成される硬化したシリコーン生成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコーンは、高い熱安定性、良好な耐湿性、優れた可撓性、高いイオン純度、低α粒子放出量、および様々な支持体に対する良好な接着性等のそれらの他に類のない特性の組み合わせのために、様々な用途で有用である。例えば、シリコーンは、自動車、エレクトロニクス、建設、アプライアンスおよび航空宇宙の各産業界で幅広く使用されている。
【0003】
アルケニル含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンシロキサン、チタン化合物、ヒドロキシ官能性有機化合物およびヒドロシリル化触媒を含んで成る付加硬化性シリコーン組成物は当該技術分野で知られている。例えば、Gray等の米国特許第5,364,921号明細書には、アルケニル含有ポリジオルガノシロキサン、オルガノハイドロジェンシロキサン、白金を含有するヒドロシリル化触媒、エポキシ官能性オルガノトリアルコキシシラン、アルコキシケイ素化合物、およびTi−O−CH結合を有するチタン化合物を含んで成る、シリコーンゴムに硬化可能な組成物が開示されている。この921号米国特許明細書には、ケイ素を含有しない不飽和エーテルを任意選択的に含む組成物も教示されている。
【0004】
Angell等の米国特許第5,683,527号明細書には、アルケニル官能性ポリオルガノシロキサンと;オルガノハイドロジェンシロキサンと;発泡剤と;白金触媒と;エポキシ官能性化合物、ヒドロキシル官能性化合物、テトラアルキルオルトシリケート、オルガノチタネートおよびアルミニウムまたはジルコニウム化合物を含む接着促進剤とを含んで成る発泡性の硬化性オルガノシロキサン組成物が開示されている。
【0005】
Collinsのヨーロッパ特許出願第0718432A1号明細書には、シリコーン樹脂、ヒドロシリル化反応抑制剤および接着促進作用のある添加剤を含んで成る硬化性コーティング組成物が開示されている。その接着促進作用のある添加剤は、エポキシ官能基およびアルコキシ官能基を有する有機ケイ素化合物と、アルケニルシラノールと、有機チタン化合物と、金属キレート化合物を含む。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記引用文献のいずれにも、本発明のヒドロキシ官能性有機化合物とチタンキレート化合物の特定の組み合わせは教示されていない。
本発明のシリコーン組成物は、低VOC(揮発性有機化合物)含量および調節可能な硬化等の含む多くの長所を有する。さらに、本発明のシリコーン組成物は、硬化すると、様々な支持体、特にプラスチックに対する接着性に優れたシリコーン生成物を形成する。
本発明のシリコーン組成物には多くの用途があり、特にエレクトロニクス分野での用途がある。例えば、本発明のシリコーン組成物は、印刷回路板にダイを取り付けること、電子デバイスを封入すること、ヒートシンクと電子デバイスの間のギャップを埋めること、電子デバイスにヒートシンクを取り付けること、または変圧器もしくはコンバーター内の巻線を封入することに使用できる。特に、本発明のシリコーン組成物は、可撓性または剛性支持体に電子部品を結合させることに有用である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(A)100質量部の、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を含むオルガノポリシロキサン;
(B)組成物を硬化させるのに十分な濃度の、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサン;
(C)0.5〜50質量部の、約1000以下の分子量を有し、かつ、1分子当たり少なくとも1個のヒドロキシ基および少なくとも1個の脂肪族炭素−炭素多重結合を含むヒドロキシ官能性有機化合物;
(D)1〜10質量部の、
【0008】
【化7】
【0009】
[式中、各R1は独立にアルキルまたは−(R7O)qR8(式中、R7はヒドロカルビレン、R8はヒドロカルビル、およびqは1〜20である)であり;各R2は独立にヒドロカルビル、ハロヒドロカルビル、シアノアルキル、アルコキシ、シアノアルコキシ、アミノまたはヒドロカルビル置換アミノであり;各R3は独立に水素、ヒドロカルビル、ハロヒドロカルビルまたはアシルであり;各R4は独立にヒドロカルビル、ハロヒドロカルビルまたはシアノアルキルであり;R5は、自由原子価が3,4または5個の炭素原子で隔てられているアルカンジイルであり;R6は、自由原子価が2,3または4個の炭素原子で隔てられているヒドロカルビレンであり;mは1〜3の整数であり;nは1または2であるが、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は脂肪族炭素−炭素多重結合を含まない]
から選ばれる式により表されるチタンキレート化合物;並びに
(E)触媒量のヒドロシリル化触媒;
を混合することにより製造されるシリコーン組成物に関する。
【0010】
本発明は、さらに、上記組成物の反応生成物を含んで成る硬化したシリコーン生成物に関する。
本発明は、さらに、成分(A)、(B)および(E)が同じパート(part)中に存在しないことを条件として、2つ以上のパートに成分(A)〜(E)を含んで成るマルチパート(multi-part)シリコーン組成物に関する。
本明細書において、「脂肪族炭素−炭素多重結合」なる用語は、脂肪族の炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を意味する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のシリコーン組成物は、
(A)100質量部の、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を含むオルガノポリシロキサン;
(B)組成物を硬化させるのに十分な濃度の、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサン;
(C)0.5〜50質量部の、約1000以下の分子量を有し、かつ、1分子当たり少なくとも1個のヒドロキシ基および少なくとも1個の脂肪族炭素−炭素多重結合を含むヒドロキシ官能性有機化合物;
(D)1〜10質量部の、
【0012】
【化8】
【0013】
[式中、各R1は独立にアルキルまたは−(R7O)qR8(式中、R7はヒドロカルビレン、R8はヒドロカルビル、およびqは1〜20である)であり;各R2は独立にヒドロカルビル、ハロヒドロカルビル、シアノアルキル、アルコキシ、シアノアルコキシ、アミノまたはヒドロカルビル置換アミノであり;各R3は独立に水素、ヒドロカルビル、ハロヒドロカルビルまたはアシルであり;各R4は独立にヒドロカルビル、ハロヒドロカルビルまたはシアノアルキルであり;R5は、自由原子価が3,4または5個の炭素原子で隔てられているアルカンジイルであり;R6は、自由原子価が2,3または4個の炭素原子で隔てられているヒドロカルビレンであり;mは1〜3の整数であり;nは1または2であるが、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は脂肪族炭素−炭素多重結合を含まない]
から選ばれる式により表されるチタンキレート化合物;並びに
(E)触媒量のヒドロシリル化触媒;
を混合することにより製造されるシリコーン組成物に関する。
【0014】
成分(A)は、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサンである。このオルガノポリシロキサンは、線状、枝分かれ、または樹脂状構造を有することができる。このオルガノポリシロキサンは、ホモポリマーまたはコポリマーであることができる。そのアルケニル基は、典型的には、2〜約10個の炭素原子を有し、ビニル、アリル、ブテニルおよびヘキセニルにより例示されるが、これらに限定されない。このオルガノポリシロキサン中のアルケニル基は末端、側鎖、または末端と側鎖位置の両方に位置していてよい。このオルガノポリシロキサン中の残りのケイ素結合有機基は、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基および一価ハロゲン化炭化水素基から独立に選ばれる。これらの一価基は、典型的には1〜約20個の炭素原子を有し、好ましくは1〜10個の炭素原子を有し、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシル等のアルキル;シクロヘキシル等のシクロアルキル;フェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよび2−フェニルエチル等のアリール;並びに3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、ジクロロフェニルおよび6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシル等のハロゲン化炭化水素基により例示されるが、これらに限定されない。このオルガノポリシロキサン中の脂肪族不飽和を含まない有機基の好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%はメチルである。
【0015】
分子量および構造に応じて変わる25℃でのこのオルガノポリシロキサンの粘度は、典型的には0.05〜500Pa・s、好ましくは0.1〜200Pa・s、より好ましくは0.1〜100Pa・sである。
オルガノポリシロキサンの例としては、下記式:
【0016】
【化9】
【0017】
(式中、Me,ViおよびPhはそれぞれメチル、ビニルおよびフェニルを表し、cはそのポリジオルガノシロキサンの粘度が25℃で0.05〜500Pa・sであるような値である)
により表されるポリジオルガノシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
対応するオルガノハロシランの加水分解および縮合または環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化等の本発明のシリコーン組成物において使用するのに好適なポリジオルガノシロキサンの製造方法は当該技術分野でよく知られている。
オルガノポリシロキサン樹脂の例としては、実質的にR10 3SiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるMQ樹脂、実質的にR10SiO3/2単位およびR10 2SiO2/2単位からなるTD樹脂、実質的にR10 3SiO1/2単位およびR10SiO3/2単位からなるMT樹脂、並びに実質的にR10 3SiO1/2単位、R10SiO3/2単位およびR10 2SiO2/2単位からなるMTD樹脂が挙げられる。ここで、各R10は、一価炭化水素基および一価ハロゲン化炭化水素基から独立に選ばれる。
【0019】
R10により表される一価基は典型的には1〜約20個の炭素原子を有し、好ましくは1〜約10個の炭素原子を有する。一価基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシル等のアルキル;シクロヘキシル等のシクロアルキル;ビニル、アリル、ブテニルおよびヘキセニル等のアルケニル;フェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよび2−フェニルエチル等のアリール;並びに3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、ジクロロフェニルおよび6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシル等のハロゲン化炭化水素基により例示されるが、これらに限定されない。このオルガノポリシロキサン樹脂中の好ましくは少なくとも3分の1、より好ましくは実質的に全てのR10基がメチルである。好ましいオルガノポリシロキサン樹脂は、実質的に(CH3)3SiO1/2単位およびSiO4/2単位からなり、SiO4/2単位に対する(CH3)3SiO1/2単位のモル比が0.6〜1.9であるものである。
【0020】
好ましくは、このオルガノポリシロキサン樹脂は平均約3〜30モル%のアルケニル基を含む。この樹脂中のアルケニル基のモル百分率は、この樹脂中のシロキサン単位の全モル数に対するこの樹脂中のアルケニル含有シロキサン単位のモル数の比に100を掛けたものとして定義される。
オルガノポリシロキサン樹脂の製造方法は当該技術分野で良く知られている。例えば、好ましいオルガノポリシロキサン樹脂は、Daudt等のシリカヒドロゾルキャッピング方法により生成した樹脂コポリマーを少なくとも1種のアルケニル含有末端封鎖剤で処理することにより製造される。Daudt等の方法は米国特許第2,676,182号明細書に開示されているこの米国特許明細書の開示を引用によりここに含まれていることにし、本発明において使用するのに好適なオルガノポリシロキサン樹脂の製造方法を教示する。
【0021】
簡単に述べると、Daudt等の方法は、酸性条件下でシリカヒドロゾルを、トリメチルクロロシラン等の加水分解可能なトリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサンまたはそれらの混合物と反応させ、そしてM単位およびQ単位を有するコポリマーを回収することを伴う。得られるコポリマーは概して約2〜約5質量%のヒドロキシル基を含む。
典型的には2質量%未満のケイ素結合ヒドロキシル基を含むこのオルガノポリシロキサン樹脂は、Daudt等の生成物を、最終生成物において3〜30モル%のアルケニル基をもたらすのに十分な量のアルケニル含有末端封鎖剤またはアルケニル含有末端封鎖剤と脂肪族不飽和を含まない末端封鎖剤との混合物と反応させることにより調製できる。末端封鎖剤としては、シラザン、シロキサンおよびシランが挙げられるが、これらに限定されない。好適な末端封鎖剤は当該技術分野で知られており、Blizzard等の米国特許第4,584,355号明細書;Blizzard等の米国特許第4,591,622号明細書;およびHoman等の米国特許第4,585,836号明細書に例示されている。これらの米国特許明細書の開示は引用によりここに含まれていることにする。このオルガノポリシロキサン樹脂を製造するために1種の末端封鎖剤またはそのような薬剤の混合物を使用できる。
【0022】
成分(A)は、1種のオルガノポリシロキサン、または次の特性:構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位および配列のうちの少なくとも1つが異なる2種以上のオルガノポリシロキサンを含んでなる混合物であることができる。
成分(B)は、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を含む少なくとも1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。一般的に、成分(A)における1分子当たりのアルケニル基の平均数と成分(B)における1分子当たりのケイ素結合水素原子の平均数との和が4よりも大きい場合に架橋が起きると理解されている。このオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素結合水素原子は、末端、側鎖、または末端と側鎖の両方に位置することができる。
【0023】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンはホモポリマーまたはコポリマーであることができる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの構造は、線状、分枝状、環状または樹脂状であることができる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサン中に存在してよいシロキサン単位の例としては、HR11 2SiO1/2単位、R11 3SiO1/2単位、HR11SiO2/2単位、R11 2SiO2/2単位、R11SiO3/2単位およびSiO4/2単位が挙げられるが、これらに限定されない。これらの式において、各R11は、成分(A)について先に定義および例示したような、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基および一価ハロゲン化炭化水素基から独立に選ばれる。好ましくは、このオルガノハイドロジェンポリシロキサン中に有機基の少なくとも50%はメチルである。
【0024】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの例としては、トリメチルシロキシ末端ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、および実質的にH(CH3)2SiO1/2単位とSiO4/2からなる樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
成分(B)は、1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、または次の特性:構造、平均分子量、粘度、シロキサン単位および配列のうちの少なくとも1つが異なる2種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含んでなる混合物であることができる。
このシリコーン組成物中の成分(B)の濃度は、当該組成物を硬化(架橋)させるのに十分な濃度である。成分(B)の正確な量は、所望の硬化度に依存する。硬化度は、成分(A)中のアルケニル基のモル数に対する成分(B)中のケイ素結合水素原子のモル数の比が増大するにつれて概して増大する。典型的には、成分(B)の濃度は、組み合わせた成分(A)および(C)中のアルケニル基1個当たり0.5〜5個のケイ素結合水素原子を与えるのに十分な濃度である。好ましくは、成分(B)の濃度は、組み合わせた成分(A)および(C)中のアルケニル基1個当たり0.8〜2個のケイ素結合水素原子を与えるのに十分な濃度である。
【0026】
オルガノハロシランの加水分解および縮合等の、線状、分枝状および環状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの製造方法は当該技術分野でよく知られている。オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂の製造方法も、米国特許第5,310,843号、米国特許第4,370,358号および米国特許第4,707,531号の各明細書に例示されているようによく知られている。
成分(A)と成分(B)が相溶性であるように、各成分中の主な有機基が同じであることが好ましい。この主な有機基がメチルであることが好ましい。
【0027】
成分(C)は、約1000以下の分子量を有し、かつ、1分子当たり少なくとも1個のヒドロキシ基および少なくとも1個の脂肪族炭素−炭素多重結合を含む少なくとも1種のヒドロキシ官能性有機化合物である。成分(C)がポリ(エチレングリコール)モノアリルエーテル等の多分散ヒドロキシ官能性有機化合物である場合に、「分子量」なる用語は、特に、その化合物の数平均分子量(Mn)を示す。多分散ヒドロキシ官能性有機化合物のMnは、個々の種類の化合物について周知の方法を使用して求めることができる。そのような方法の例としては、適切な分子量標準を使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)、プロトン核磁気共鳴分光法(1H−NMR)、13C核磁気共鳴分光法(13C−NMR)が挙げられる。ヒドロキシ官能性有機化合物の分子量が約1000を超える場合には、組成物を硬化させることにより形成されるシリコーン生成物は、そのヒドロキシ官能性有機化合物のみを欠く同様なシリコーン組成物を硬化させることにより形成されるシリコーン生成物と比較して実質的に改良された接着性を示さない。
【0028】
このヒドロキシ官能性有機化合物の構造は、線状、分枝状または環状であることができる。このヒドロキシ官能性有機化合物中のヒドロキシ基は、第1級、第2級または第3級の脂肪族炭素原子に、芳香族炭素原子に、または分子中の二重結合炭素原子に結合していてよい。炭素−炭素多重結合は、ヒドロキシ官能性有機化合物の内部または末端位置に位置することができる。好ましくは、炭素−炭素多重結合は末端位置に位置し、より好ましくは、炭素−炭素多重結合は式:−CH=CH2により表される末端基の部分である。さらに、ヒドロキシを有する炭素原子または炭素−炭素多重結合の立体化学についての制約はない。
【0029】
このヒドロキシ官能性有機化合物が組成物の硬化を実質的に妨げないことを条件に、このヒドロキシ官能性有機化合物はさらなる官能基を含むことができる。適切な官能基の例としては、−OR12、エポキシ、>C=O、−CHO、−CO2R12、−C≡N、−NO2、>C=C<、−F、−Cl、−Brおよび−Iが挙げられるが、これらに限定されない。ここで、R12は、一価の炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基である。しかしながら、ヒドロシリル化触媒と強く錯化する官能基、例えば−SH、−NH2、−S−、−SO−、−SO2−、≡P、≡P(=O)および=P(=O)OHを含むヒドロキシ官能性有機化合物は、組成物の硬化を実質的に抑制することがある。抑制の程度は、ヒドロシリル化触媒中の白金族金属に対するその特定の官能基のモル比に依存する。本発明のシリコーン組成物における使用についての個々のヒドロキシ官能性有機化合物の適合性は、下記実施例に記載の方法を使用する常套的な実験により容易に求めることができる。
【0030】
このヒドロキシ官能性有機化合物は、室温で液体または固体状態の天然に産出する化合物または合成化合物であることができる。また、このヒドロキシ官能性化合物は、シリコーン組成物に可溶、部分的に可溶、または不溶であることができる。その化合物の分子量、構造並びに化合物中の官能基の数および性質に依存するヒドロキシ官能性有機化合物の標準沸点は、広い範囲にわたる様々な値を取ることができる。好ましくは、このヒドロキシ官能性有機化合物は、組成物の硬化温度よりも高い標準沸点を有する。そうでないと、かなりの量のヒドロキシ官能性有機化合物が硬化の間に揮発によって除去され、硬化したシリコーン生成物の接着性にほとんどまたは全く改良をもたらさない。また、硬化の間のヒドロキシ官能性有機化合物の過度の揮発は、硬化したシリコーン生成物においてボイドの形成をもたらすことがある。
【0031】
ヒドロキシ官能性有機化合物の例としては、5−ヘキセン−1−オールおよびウンデシレニルアルコール、ポリ(エチレングリコール)モノアリルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)モノアリルエーテル、ポリ(エチレングリコール)−co−(プロピレングリコール)モノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、CH2=CHCO2(CH2)6OH、CH2=C(CH3)CO2(CH2)6OH、CH2=CHCONH(CH2)6OHおよびCH2=C(CH3)CONH(CH2)6OHが挙げられるが、これらに限定されない。ヒドロキシ官能性有機化合物は1種の化合物単独または2種以上のそれぞれ異なる化合物の混合物であってもよい。
【0032】
成分(C)の濃度は、100質量部の成分(A)当たり典型的には0.5〜50質量部、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。成分(C)の濃度が0.5質量部未満である場合に、硬化したシリコーン生成物は、典型的には、接着性の実質的な改良を示さない。成分(C)の濃度が約50質量部を超える場合には、ヒドロシリル化触媒の存在下でのオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素結合水素原子とヒドロキシ官能性有機化合物中のヒドロキシ基の反応のために、典型的には、硬化の間に水素ガスの過剰の発生が起こる。水素の発生は、硬化したシリコーン生成物におけるボイドの形成をもたらすことがある。
本発明のシリコーン組成物に使用するのに好適なヒドロキシ官能性有機化合物の製造方法は当該技術分野で周知であり、それらの化合物の多くは市販入手可能である。
成分(D)は、
【0033】
【化10】
【0034】
[式中、各R1は独立にアルキルまたは−(R7O)qR8(式中、R7はヒドロカルビレン、R8はヒドロカルビル、およびqは1〜20である)であり;各R2は独立にヒドロカルビル、ハロヒドロカルビル、シアノアルキル、アルコキシ、シアノアルコキシ、アミノまたはヒドロカルビル置換アミノであり;各R3は独立に水素、ヒドロカルビル、ハロヒドロカルビルまたはアシルであり;各R4は独立にヒドロカルビル、ハロヒドロカルビルまたはシアノアルキルであり;R5は、自由原子価が3,4または5個の炭素原子で隔てられているアルカンジイルであり;R6は、自由原子価が2,3または4個の炭素原子で隔てられているヒドロカルビレンであり;mは1〜3の整数であり;nは1または2であるが、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は脂肪族炭素−炭素多重結合を含まない]
から選ばれる式により表される少なくとも1種のチタンキレート化合物である。
【0035】
チタンキレート化合物の式におけるアルキル基、ヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、シアノアルコキシ基およびアシル基は典型的には1〜18個の炭素原子を有し、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する。
R1により表されるアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル等の非分枝アルキルおよび分枝アルキル;シクロペンチル、シクロヘキシルおよびメチルシクロヘキシル等のシクロアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
式:−(R7O)qR8(R7およびR8並びにqは先に定義したとおり)を有するR1により表される基の例としては、−CH2OCH3、−CH2CH2OCH3、および−OCH2CH2OCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
R2、R3、R4およびR8により表されるヒドロカルビル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル等の非分枝アルキルおよび分枝アルキル;シクロペンチル、シクロヘキシルおよびメチルシクロヘキシル等のシクロアルキル;フェニルおよびナフチル等のアリール;トリルおよびキシリル等のアルカリール;並びにベンジルおよびフェネチル等のアラルキルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
R2,R3およびR4により表されるハロヒドロカルビル基の例としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピルおよび6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
R2およびR4により表されるシアノアルキル基の例としては、シアノメチル、シアノエチル、シアノプロピル、シアノブチルおよびシアノオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。
R2により表されるアルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシおよびペンチルオキシが挙げられるが、これらに限定されない。
R2により表されるシアノアルコキシ基の例としては、シアノエトキシ、シアノプロポキシおよびシアノブトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
R2により表されるヒドロカルビル置換アミノ基の例としては、メチルアミノ、ジメチルアミノおよびジエチルアミノが挙げられるが、これらに限定されない。
R3により表されるアシル基の例としては、アセチル、プロピオニル、ブチリルおよびステアロイルが挙げられるが、これらに限定されない。
R5により表されるアルカンジイル基は典型的には3〜18個の炭素原子を有し、好ましくは3〜12個の炭素原子を有する。さらに、このアルカンジイル基の自由原子価は典型的には3、4または5個の炭素原子により隔てられており、好ましくはアルカンジイル基の自由原子価は3または4個の炭素原子により隔てられている。R5により表されるアルカンジイル基の例としては、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2(CH2)3CH2−が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
R6により表されるヒドロカルビレン基は典型的には2〜18個の炭素原子を有し、好ましくは2〜12個の炭素原子を有する。さらに、このヒドロカルビレン基の自由原子価は典型的には2、3または4個の炭素原子により隔てられており、好ましくはヒドロカルビレン基の自由原子価は2または3個の炭素原子により隔てられている。R6により表されるヒドロカルビレン基の例としては、
【0040】
【化11】
【0041】
が挙げられるが、これらに限定されない。
R7により表されるヒドロカルビレン基は典型的には1〜18個の炭素原子を有し、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する。R7により表されるヒドロカルビレン基の例としては、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH(CH3)−、−CH2C(CH3)2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2(CH2)3CH2−、−C(CH3)2CH2CH2CH2−およびp−フェニレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明のチタンキレート化合物の例としては、チタンジ−n−ブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンエトキシドイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンジ−n−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)およびチタンジ−イソブトキシドビス(エチルアセトアセテート)が挙げられるが、それらに限定されない。
本発明のチタンキレート化合物は、チタンのアルコキシド、β−ジカルボニルキレート化合物、β−ヒドロキシカルボニルキレート化合物およびグリコールキレート化合物の周知の製造方法を使用して製造できる。例えば、代表的な方法は、C. S. RondestvedtによりThe Encyclopedia of Chemical Technology, 3rd ed., John Wiley & Sons: New York, 1983, Vol. 23, pp 177, 179, 187, 189および190;R. FeldおよびP. L. CoweによりThe Organic Chemistry of Titanates, Butterworth: Washington, 1965, pp 58-80;並びにBeers等の米国特許第4,438,039号明細書に教示されている。
【0043】
m=1,2または3であり、かつ、R1がアルキルである場合の式Iにより表されるチタンキレート化合物は、式:Ti(OR)4により表されるチタンアルコキシドを、チタンアルコキシド1モル当たり、mモルの式:R2−C(=O)−CH(R3)−C(=O)−R4(式中、RはC1〜C8アルキルであり、R2、R3、R4およびmは先に定義したとおりである)により表されるβ−ジカルボニル化合物で処理することにより調製できる。R1が高級(炭素原子数が8を超える)アルキル基である場合の類似の化合物は、得られるチタンキレート化合物を適切なアルコールで処理することによって調製できる。
【0044】
mが1、2または3であり、かつ、R1が−(R7O)qR8である場合の式Iにより表されるチタンキレート化合物は、式:Ti(OR)4により表されるチタンアルコキシドを、チタンアルコキシド1モル当たりmモルの式:R2−C(=O)−CH(R3)−C(=O)−R4により表されるβ−ジカルボニル化合物で処理し、次に4−mモルの式:HO(R7O)qR8(式中、R、R2、R3、R4、R7、R8、mおよびqは先に定義した通りである)により表されるヒドロキシエーテルで処理することにより調製できる。
【0045】
式IIにより表されるチタンキレート化合物は、式:R2−C(=O)−CH(R3)−C(=O)−R4により表されるβ−ジカルボニル化合物を式:
【0046】
【化12】
【0047】
(式中、R2およびR5は先に定義したとおりである)
により表されるβ−ジカルボニル化合物に置き換えて、式Iにより表されるチタンキレート化合物の調製について先に述べた方法を使用して調製できる。
式IIIにより表されるチタンキレート化合物は、式:R2−C(=O)−CH(R3)−C(=O)−R4により表されるβ−ジカルボニル化合物を式:
【0048】
【化13】
【0049】
(式中、R2は先に定義したとおりである)
により表されるβ−ヒドロキシカルボニル化合物に置き換えて、式Iにより表される遷移金属化合物の調製について先に述べた方法を使用して調製できる。
【0050】
nが1であり、かつ、R1がアルキルである場合の式IVにより表されるチタンキレート化合物は、式:Ti(OR)4により表されるチタンアルコキシドを、チタンアルコキシド1モル当たり1モルの式:HO−R6−OH(式中、RおよびR6は先に定義したとおりである)により表されるグリコールで処理することにより調製できる。R1が高級(炭素原子数が8を超える)アルキル基である場合の類似の化合物は、得られるチタンキレート化合物を適切なアルコールで処理することによって調製できる。
【0051】
pが1であり、かつ、R1が−(R7O)qR8である場合の式IVにより表されるチタンキレート化合物は、式:Ti(OR)4により表されるチタンアルコキシドを、チタンアルコキシド1モル当たり1モルの式:HO−R6−OHにより表されるグリコールで処理し、次いでチタンアルコキシド1モル当たり2モルの式:HO(R7O)qR8(式中、R、R6、R7、R8およびqは先に定義したとおりである)により表されるヒドロキシエーテルで処理することにより調製できる。
nが2である場合の式IVにより表されるチタンキレート化合物は、式:Ti(OR)4により表されるチタンアルコキシドを、チタンアルコキシド1モル当たり2モルの式:HO−R6−OHにより表されるグリコール(式中、RおよびR6は先に定義したとおりである)により表されるグリコールで処理することにより調製できる。
【0052】
チタンアルコキシドの例としては、チタンメトキシド、チタンn−ブトキシド、チタンn−プロポキシド、チタンイソプロポキシド(本明細書においてテトラ−イソプロピルチタネートともいう)、チタンt−ブトキシド、チタンイソブトキシドおよびチタン2−エチルヘキソキシドが挙げられるが、これらに限定されない。チタンアルコキシドの製造方法は当該技術分野でよく知られており、それらの化合物の多くは市販入手可能である。好ましくは、チタンアルコキシドTi(OR)4を、β−ジカルボニル化合物、ヒドロキシエーテル、β−ヒドロキシカルボニル化合物またはグリコールと反応させ、いずれの反応物よりも低い沸点を有するアルコールROHを生成させる。
【0053】
β−ジカルボニル化合物の例としては、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、エチルトリフルオロアセトアセテート、2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロペンタンジオン、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、メチル2−オキソシクロペンタンカルボキシレート、メチル2−オキソシクロヘプタンカルボキシレートおよび1−ベンゾイルアセトンが挙げられるが、これらに限定されない。β−ジカルボニル化合物は、1種の化合物単独または2種以上のそれぞれ異なる化合物の混合物であることができる。クライゼン縮合等のβ−ジカルボニル化合物の製造方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0054】
式:HO(R7O)qR8(式中、R7、R8およびqは先に定義したとおりである)により表されるヒドロキシエーテルの例としては、ポリ(プロピレングリコール)プロピルエーテルおよびポリ(エチレングリコール)エチルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。ヒドロキシエーテルは1種の化合物単独または2種以上のそれぞれ異なる化合物の混合物であることができる。式:HO(R7O)qR8により表されるヒドロキシエーテルの製造方法は当該技術分野でよく知られており、それらの化合物の多くは市販入手可能である。
【0055】
β−ヒドロキシカルボニル化合物の例としては、サリチル酸メチル、サリチル酸エチルおよびサリチルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。β−ヒドロキシカルボニル化合物は1種の化合物単独または2種以上のそれぞれ異なる化合物の混合物であることができる。β−ヒドロキシカルボニル化合物の製造方法は当該技術分野でよく知られており、それらの化合物の多くは市販入手可能である。
【0056】
グリコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−プロピル−1,3−ヘプタンジオール、2−ブチル−1,3−ブタンジオールおよびカテコールが挙げられるが、これらに限定されない。グリコールは1種の化合物単独または2種以上のそれぞれ異なる化合物の混合物であることができる。グリコールの製造方法は当該技術分野でよく知られており、それらの化合物の多くは市販入手可能である。
【0057】
チタンアルコキシドと、β−ジカルボニル化合物、ヒドロキシエーテル、β−ヒドロキシカルボニル化合物またはグリコールとの反応は、大気湿分の不在下で行われることが好ましい。これは、反応物を導入する前に、反応器を乾燥した不活性ガス、例えば窒素でパージし、その後、反応器内を不活性ガス雰囲気に保つことにより行うことができる。
【0058】
チタンアルコキシドを、典型的には、室温で、β−ジカルボニル化合物、ヒドロキシエーテル、β−ヒドロキシカルボニル化合物、またはグリコールにより処理する。チタンアルコキシドからアルコキシドの置換により生成したアルコールがいずれの反応物よりも低い沸点を有する場合、その低沸点アルコールを連続的に除去することにより平衡は生成物の方に傾く。例えば、低沸点アルコールは、適度な温度で減圧下で蒸留することにより除去できる。
【0059】
チタンアルコキシドに、β−ジカルボニル化合物、ヒドロキシエーテル、β−ヒドロキシカルボニル化合物またはグリコールをゆっくり添加することによって、チタンアルコキシドをそれらの化合物により処理することが好ましい。β−ジカルボニル化合物、β−ヒドロキシカルボニル化合物またはグリコールを最初に添加し、続いてヒドロキシエーテルを添加することが好ましい。反応混合物を、例えば各添加工程の間に攪拌することによって、かき混ぜることが好ましい。
上記反応は典型的には稀釈剤の不在下で行われるが、混合前に反応物の1種以上を炭化水素溶剤に溶解させることができる。炭化水素溶剤の例としてはペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンおよびキシレンが挙げられる。
【0060】
成分(D)の濃度は、100質量部の成分(A)当たり、典型的には1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部である。成分(D)の濃度が1質量部である場合には、硬化したシリコーン生成物は接着性の実質的な改良は示さない。成分(D)の濃度が10質量部を超える場合には、硬化したシリコーン組成物は接着性のさらなる実質的な改良は示さない。
【0061】
成分(E)は成分(A)および成分(C)と成分(B)との付加反応を促進するヒドロシリル化触媒である。このヒドロシリル化触媒は、白金族金属を含む周知のヒドロシリル化触媒、白金族金属を含む化合物、またはミクロカプセル化された白金族金属含有触媒のうちのいずれであってもよい。白金族金属としては、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウムおよびイリジウムが挙げられる。白金族金属は、ヒドロシリル化反応におけるその高い活性に基づいて、好ましくは白金である。
【0062】
好ましいヒドロシリル化触媒としては、引用によりその開示がここに含まれていることにするWillingにより米国特許第3,419,593号明細書に開示されたクロロ白金酸と特定のビニル含有オルガノシロキサンの錯体が挙げられる。この種類に属する好ましい触媒は、クロロ白金酸と1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの反応生成物である。
【0063】
ヒドロシリル化触媒は、熱可塑性樹脂中に封入された白金族金属を含むミクロカプセル化された白金族金属含有触媒であってもよい。ミクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒を含む組成物は、周囲条件下で長期間、典型的には数カ月以上も安定であることに加え、熱可塑性樹脂の融点または軟化点よりも高い温度で比較的急速に硬化する。
ミクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒およびその製造方法は、米国特許第4,766,176号明細書およびその中で引用されている文献、並びに米国特許第5,017,654号明細書に例示されているように当該技術分野でよく知られている。
【0064】
成分(E)の濃度は、成分(A)および(C)と成分(B)の付加反応を触媒するのに十分な濃度である。典型的には、成分(E)の濃度は、成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計質量を基準にして、0.1〜1000ppmの白金族金属、好ましくは1〜500ppmの白金族金属、より好ましくは5〜150ppmの白金族金属を与えるのに十分な濃度である。白金族金属の濃度が0.1ppm未満であると、硬化速度は非常に遅い。1000ppmを超える白金族金属の使用は、硬化速度の容易に認められる増加をもたらさないために、経済的でない。
【0065】
追加成分が先に述べたような改良された接着性を有するシリコーン生成物を形成するのを妨げないことを条件に、シリコーン組成物は追加成分を含んでよい。追加成分の例としては、ヒドロシリル化触媒抑制剤、例えば、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、ジアルキルフマレート、ジアルケニルフマレート、ジアルコキシアルキルフマレート、マレエート、シクロビニルシロキサン、およびアミン;接着促進剤、例えば米国特許第4,087,585号および第5,194,649号明細書に教示されている接着促進剤;染料;顔料;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線安定剤;難燃剤;流れ調節剤;反応性稀釈剤;沈殿防止剤;充填剤、例えばヒュームドシリカ、焼成シリカ、湿式法シリカ、石英粉末、酸化チタン、ヒュームド酸化チタン、炭酸カルシウム、珪藻土、クレー、タルク、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド粉末、銅粉末、金粉末、銀粉末、銀被覆銅、ニッケル粉末、金被覆銅粉末およびカーボンブラック;シリル化剤、例えば4−(トリメチルシリルオキシ)−3−ペンテン−2−オンおよびN−(t−ブチルジメチルシリル)−N−メチルトリフルオロアセトアミド;乾燥剤、例えばゼオライト、無水硫酸アルミニウム、分子ふるい(好ましくは10Å以下の細孔径を有するもの)、多孔質珪藻土、シリカゲルおよび活性炭;水素吸収性物質、例えば微粒のパラジウム、白金またはそれらの合金;並びに発泡剤、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオールおよびシラノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
本発明のシリコーン組成物は、成分(A)〜(E)を1つのパートに含むワンパート(one-part)組成物であるか、または代わりに、成分(A)、(B)および(E)が同じパートに存在しないことを条件に、成分(A)〜(E)を2つ以上のパートに含むマルチパート組成物であることができる。また、ヒドロシリル化触媒の存在下でのオルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロキシ官能性有機化合物の反応とその結果起こる水素ガスの発生を避けるために、成分(B)、(C)および(E)が同じパート中に存在しないことが好ましい。例えば、マルチパートシリコーン組成物は、成分(A)の一部と成分(C)、(D)および(E)の全部を含む第1パートと、成分(A)の残りの部分と成分(B)の全部を含む第2パートから成ることができる。
【0067】
ワンパートシリコーン組成物は、典型的には、有機溶剤の助けによりまたは有機溶剤の助けなしに成分(A)〜(E)と任意成分とを周囲温度で上記割合で組み合わせることにより調製される。シリコーン組成物を即座に使用する場合には種々の成分の添加順序は厳密ではないが、組成物の早期硬化を避けるためにヒドロシリル化触媒を約30℃未満の温度で最後に添加することが好ましい。また、各パートに割り当てた個々の成分を組み合わせることによりマルチパートシリコーン組成物を調製することができる。
混合は、回分式または連続式で、混練、ブレンディングおよび攪拌等の当該技術分野で周知の技術のいずれによっても達成できる。個々の装置は、各成分の粘度および最終的なシリコーン組成物の粘度により決定される。
【0068】
このシリコーン組成物は、様々な固体支持体に適用できる。固体支持体としては、金属、例えばアルミニウム、金、銀、錫、鉛、ニッケル、銅および鉄、並びにそれらの合金;シリコン;フルオロカーボンポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニル;ポリアミド、例えばナイロン(Nylon(商標));ポリイミド;エポキシ樹脂;ポリエステル;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;セラミック;並びにガラスが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る硬化したシリコーン生成物は、上記成分(A)〜(E)を含むシリコーン組成物の反応生成物を含む。このシリコーン組成物は、およそ室温から約250℃までの温度、好ましくはおよそ室温から約200℃までの温度、より好ましくはおよそ室温から約150℃までの温度で適切な時間で硬化できる。例えば、このシリコーン組成物は、典型的には、150℃で約1時間未満で硬化する。
【0069】
本発明のシリコーン組成物は、低VOC(揮発性有機化合物)含量および調節可能な硬化等の多くの利点を有する。さらに、このシリコーン組成物は硬化すると、様々な支持体、特にプラスチックに対する接着性に優れたシリコーン生成物を形成する。
多くの用途に対して有機溶剤を必要としない本発明のシリコーン組成物は非常に低いVOC含量を有する。従って、本発明のシリコーン組成物は、溶剤系シリコーン組成物に付随する健康上、安全性、環境上の危害を避ける。さらに、本発明の無溶剤組成物は、典型的には、溶剤系シリコーン組成物よりも硬化の間の収縮が少ない。
さらに、本発明のシリコーン組成物は、検出可能な副生成物の形成なしに、室温から適度に高温までの温度で急速に硬化する。実際に、このシリコーン組成物の硬化速度は、触媒および/または任意の抑制剤の濃度を調節することにより都合良く調整できる。
【0070】
重要なことは、本発明のシリコーン組成物が、硬化すると、前記ヒドロキシ官能性有機化合物またはチタンキレート化合物を欠く同様な組成物と比較してプラスチック支持体に対する接着性が驚くべきほど改良されたシリコーン生成物を形成することである。改良された接着性は、接着結合強度の増加または破壊様式が接着破壊から凝集破壊に変化することにより示される。
本発明のシリコーン組成物は多くの用途を有し、特にエレクトロニクス分野で有用である。例えば、本発明のシリコーン組成物は、印刷回路板にダイを取り付けること、電子デバイスを封入すること、ヒートシンクと電子デバイスの間のギャプを埋めること、電子デバイスにヒートシンクを取り付けること、または変圧器もしくはコンバーター内の巻線を封入することに使用できる。特に、このシリコーン組成物は、可撓性または剛性支持体に電子部品を結合させることに有用である。
【0071】
【実施例】
以下の実施例により本発明のシリコーン組成物をさらに例示するが、これらの実施例は特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。特に断らない限り、実施例に記載の全ての部および百分率は質量に基づく。
試薬
実施例において以下の化学物質を使用した:
シリコーン基材は、35%のポリマーAと65%のシリカから成る混合物を6754Paの圧力のもと温度80℃でNeulinger RDH(商標)ミキサー内で40分間加熱することにより調製されたシリコーン/シリカ粉末ブレンドである。
ポリマーAは、25℃で約0.45Pa・sの粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンである。
シリカは、U.S. Silica[ウェストバージニア州バークレースプリングス(Berkeley Springs)所在]によりMIN-U-SIL 5の名称で販売されているシリカ粉末である。このシリカは、5μmの最大粒子径(98%<5μm)、1.6μmのメジアン粒子径、41のタップ密度、31の非タップ密度、および2.65の比重を有する。
触媒Aは、1%の1,1−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの白金(IV)錯体、92%のポリマーAおよび7%のテトラメチルジビニルジシロキサンからなる混合物である。
架橋剤は1分子当たり平均して3個のジメチルシロキサン単位および5個のメチルハイドロジェンシロキサン単位を有し、かつ、約0.8%のケイ素結合水素原子を含むトリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)である。
ω−ウンデシレニルアルコール(10−ウンデセン−1−オール、98%)はAldrich[ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)所在]から入手可能。
チタンジ−n−ブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)は、n−ブタノール中に73%のチタンジ−n−ブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)からなる溶液である。これはGelest,Inc.[ペンシルバニア州チュリータウン(Tullytown)所在]から入手可能である。
アリルアルコールプロポキシレートは式:H2C=CHCH2(OC3H6)nOH(式中、nは1.6の平均値を有する)により表され、この化合物は、5mPa・sの粘度(ブルックフィールド、25℃)および約140〜160の平均Mn(数平均分子量)を有する。この化合物はAldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)から入手可能である。
式:
【0072】
【化14】
【0073】
により表されるチタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)は、DuPont[デラウェア州ウィルミントン(Wilmington)所在]によりTYZOR DCの名称で販売されている。
ポリ(エチレングリコール)モノアリルエーテルは、式:H2C=CHCH2(OCH2CH2)nOH(式中、nは4の平均値を有する)により表される化合物である。
トリメチロールプロパンジアリルエーテル(90%)はAldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)から入手可能である。
式:(i−C3H7O)4Tiにより表されるテトラ−イソプロピルチタネートはDuPont(デラウェア州ウィルミントン所在)によりTYZOR TPTの名称で販売されている。
2,4−ペンタンジオン(99+%)はAldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)から入手可能である。
エチルアセトアセテート(98%)はAldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)から入手可能である。
1−ウンデカノール(99%)はAldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)から入手可能である。
樹脂/ポリマーブレンドは、(i)CH2=CH(CH3)2SiO1/2単位、(CH3)3SiO1/2単位およびSiO4/2単位から実質的に成り、SiO4/2単位のモル数に対するCH2=CH(CH3)2SiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位の合計モル数のモル比が約0.7であり、約22,000の重量平均分子量および約5の分散度を有し、約1.8質量%(約5.5モル%)のビニル基を含むオルガノポリシロキサン樹脂27%と、(ii)ポリマーB、すなわち25℃で約55Pa・sの粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン71%とから成る混合物である。
触媒Bは、1.5%の1,1−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの白金(IV)錯体、93%のポリマーA、5%のテトラメチルジビニルジシロキサンおよび0.5%のジメチルシクロシロキサンからなる混合物であった。
顔料は、Elementis Pigments[イリノイ州フェアビューハイツ(Fairview Heights)所在]から入手可能なクロミウムグリーンオキシド顔料である。
抑制剤はテトラメチルビニルシクロテトラシロキサンである。
【0074】
支持体
以下の支持体から7.62cm×2.54cm(3インチ×1インチ)の寸法の平らなパネルを切り出した。
FR−4は、Laird Plastics[フロリダ州ウェストパームビーチ(West Palm Beach)所在]から入手可能な厚さ約0.152cm(約0.06インチ)の銅張りFR−4(ガラス繊維強化エポキシ)積層板のエポキシ側である。
PCは、Exotic Automation & Supply[ミシガン州ファーミントンヒルズ(Fermington Hills)所在]によりHYZOD Mの名称で販売されている厚さ約0.635cm(約0.25インチ)のビスフェノールAポリカーボネートシートである。
PBTは、Boedeker Plastics, Inc.[テキサス州シャイナー(Shiner)所在]によりHYDEX 4101(ホワイト)の名称で販売されている厚さ約0.635cm(約0.25インチ)のポリ(ブチレンテレフタレート)樹脂シートである。
N66は、Boedeker Plastics, Inc.(テキサス州シャイナー所在)により入手可能な厚さ約0.635cm(約0.25インチ)のナイロン101型6/6ポリアミド樹脂押出シートである。
ABSは、Boedeker Plastics, Inc.(テキサス州シャイナー所在)により入手可能な、厚さ約0.635cm(約0.25インチ)のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンシートである。
PPOは、Boedeker Plastics, Inc.(テキサス州シャイナー所在)によりNORYL EN-265(ブラック)の名称で販売されている厚さ約0.635cm(約0.25インチ)のスチレン変性ポリ(フェニレンオキシド)シートである。
PPSは、Boedeker Plastics, Inc.(テキサス州シャイナー所在)によりTECHTRON PPS(ナチュラル)の名称で販売されている厚さ約0.318cm(約0.125インチ)のポリ(フェニレンスルフィド)シートである。
Alは、厚さ約0.163cm(約0.064インチ)のダイカストアルミニウムである。
SSは、Q-Panel Lab Products[オハイオ州クリーブランド(Cleveland)所在]から入手可能な厚さ約0.160cm(約0.063インチ)の304ステンレススチール合金(タイプSS-34)パネルである。
Cuは、Laird Plastics(フロリダ州ウェストパームビーチ所在)から入手可能な厚さ約0.152cm(約0.06インチ)の銅張りFR−4(ガラス繊維強化エポキシ)積層板の銅側である。
【0075】
支持体の清浄化
ナイロン以外のプラスチック支持体を、まず、薄い石鹸溶液を入れた超音波槽中で洗浄してマシン油および他の炭化水素残留物を除去し、次いで清浄な水の中ですすいだ。使用直前に、各プラスチック支持体を、イソプロピルアルコールを染み込ませたKimwipe(商標)使い捨てワイパーで試験面を拭うことにより繰り返しきれいにした。最後の清浄化段階で、TECHNICLOTH TX604クリーンルームワイパー[The Texwipe Company, ニュージャージー州アッパーサドルリバー(Upper Saddle River)所在]を使用して試験面にイソプロピルアルコールを塗布した。各ナイロン支持体の試験面に、イソプロピルアルコールを吹付け、Kimwipeで拭き取り、アセトンを吹付け、そしてTECHNICLOTH TX604クリーンルームワイパーで拭き取った。金属支持体は、ヘプタンと、それに続いてイソプロピルアルコールを使用して同様に清浄にした。全ての支持体を、シリコーン組成物の適用前に少なくとも20分間風乾させた。
【0076】
引掻き接着(scrape adhesion)試験用試験片の作製
調製されたばかりのシリコーン組成物を、清浄にした支持体の表面に,フィルム厚が約0.0635cm(約0.025インチ)となるように、ドクターブレードにより掻き落とした。次に、被覆された支持体を強制通風炉中で温度70℃で30分間加熱し、次に、室温に放冷した。支持体に、剃刀の刃を用いて、シリコーン層を突き抜けて支持体に達する約0.635cm(約0.25インチ)離れた2本の平行な線を刻んだ。
【0077】
引掻き接着性の測定
両端が丸いステンレススチール製マイクロスパチュラ(Fisherbrand 21-401-5)を、上記の2本の平行な刻んだ線の間の硬化したシリコーン表面にその表面と約30°の角度をなすように接触させた。支持体の表面からシリコーン生成物を引掻き取ろうと試みて、2本の刻んだ線の間の跡に沿ってスパチュラに手で力を加えた。破壊様式を、接着破壊、凝集破壊、またはこれらの組み合わせとして報告する。接着破壊は、破壊をもたらすのに必要とした相対的な力の目安として弱い、中程度、または強いにさらに分類した。接着破壊は、支持体からのシリコーン生成物のきれいな脱着(剥離)を示す。凝集破壊は、シリコーン生成物自体の破壊(割れ)および支持体への残留物の付着を示す。
【0078】
比較例1
4オンスポリプロピレンカップ内で109.54部のシリコーン基材、0.032部のポリマーAおよび0.43部の触媒Aを組み合わせることによりシリコン組成物のパートAを調製した。これらの成分を、Hauschild AM-501(商標)デンタルミキサーを使用して3回の連続する12秒間のサイクルで混合した。4オンスポリプロピレンカップ内で101.40部のシリコーン基材、0.073部のポリマーAおよび2.54部の架橋剤を組み合わせることによりパートBを調製し、次いでパートAについて先に述べたようにこれらの成分を混合した。ポリスチレン計量皿上で等しい質量部のパートAおよびパートBを組み合わせ、そしてテフロン(商標)被覆スパチュラを使用して約30秒間混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表1に示す。
【0079】
例1
比較例1のパートA(2.20部)と、0.094部のω−ウンデシレニルアルコールと、0.093部のチタンジ−n−ブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)をポリスチレン計量皿のある領域で組み合わせた。比較例1のパートB(2.20部)と架橋剤0.182部をその計量皿の隣接する領域で組み合わせた。次に、テフロン被覆スパチュラを使用して2つの部分を約30秒間混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表1に示す。
【0080】
例2
比較例1のパートA(4.00部)と、0.126部のアリルアルコールプロポキシレートと、0.169部のチタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)をポリスチレン計量皿のある領域で組み合わせた。比較例1のパートB(4.00部)と架橋剤0.123部をその計量皿の隣接する領域で組み合わせた。次に、テフロン被覆スパチュラを使用して2つの部分を約30秒間混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表1に示す。
【0081】
例3
比較例1のパートA(4.00部)と、0.186部のポリ(エチレングリコール)モノアリルエーテルと、0.169部のチタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)をポリスチレン計量皿のある領域で組み合わせた。比較例1のパートB(4.00部)と架橋剤0.105部をその計量皿の隣接する領域で組み合わせた。次に、テフロン被覆スパチュラを使用して2つの部分を約30秒間混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表1に示す。
【0082】
例4
比較例1のパートA(2.20部)と、0.095部のトリメチロールプロパンジアリルエーテルと、0.080部のチタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)をポリスチレン計量皿のある領域で組み合わせた。比較例1のパートB(2.20部)と架橋剤0.116部をその計量皿の隣接する領域で組み合わせた。次に、テフロン被覆スパチュラを使用して2つの部分を約30秒間混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表1に示す。
【0083】
例5
比較例1のパートA(4.00部)と0.172部のω−ウンデシレニルアルコール、0.116部のテトラ−イソプロピルチタネートと、0.083部の2,4−ペンタンジオンをポリスチレン計量皿のある領域で組み合わせた。比較例1のパートB(4.00部)と架橋剤0.130部をその計量皿の隣接する領域で組み合わせた。次に、テフロン被覆スパチュラを使用して2つの部分を約30秒間混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表1に示す。
【0084】
例6
比較例1のパートA(4.00部)と0.171部のω−ウンデシレニルアルコール、0.114部のテトラ−イソプロピルチタネートと、0.156部のエチルアセトアセテートをポリスチレン計量皿のある領域で組み合わせた。比較例1のパートB(4.00部)と架橋剤0.133部をその計量皿の隣接する領域で組み合わせた。次に、テフロン被覆スパチュラを使用して2つの部分を約30秒間混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表1に示す。
【0085】
比較例2
比較例1のパートA(2.00部)と0.082部のチタンジ−n−ブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)をポリスチレン計量皿のある領域で組み合わせた。比較例1のパートB(2.00部)をその計量皿の隣接する領域に置いた。次に、テフロン被覆スパチュラを使用して2つの部分を約30秒間混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表1に示す。
【0086】
比較例3
比較例1のパートA(5.00部)と0.205部のチタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)をポリスチレン計量皿のある領域で組み合わせた。比較例1のパートB(5.00部)をその計量皿の隣接する領域に置いた。次に、テフロン被覆スパチュラを使用して2つの部分を約30秒間混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表1に示す。
【0087】
比較例4
比較例1のパートA(5.00部)と0.417部のチタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)をポリスチレン計量皿のある領域で組み合わせた。比較例1のパートB(5.00部)をその計量皿の隣接する領域に置いた。次に、テフロン被覆スパチュラを使用して2つの部分を約30秒間混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表1に示す。
【0088】
比較例5
比較例1のパートA(5.00部)と0.212部のω−ウンデシレニルアルコールをポリスチレン計量皿のある領域で組み合わせた。比較例1のパートB(5.00部)と0.166部の架橋剤をその計量皿の隣接する領域で組み合わせた。次に、テフロン被覆スパチュラを使用して2つの部分を約30秒間混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表1に示す。
【0089】
比較例6
比較例1のパートA(4.00部)と、0.170部の1−ウンデカノールと、0.169部のチタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)をポリスチレン計量皿のある領域で組み合わせた。比較例1のパートB(4.00部)と0.129部の架橋剤をその計量皿の隣接する領域で組み合わせた。次に、テフロン被覆スパチュラを使用して2つの部分を約30秒間混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
比較例7
62.22部の樹脂/ポリマーブレンド、37.33部のシリカ、0.13部の触媒Bおよび0.32部の触媒Aを組み合わせることによりシリコーン組成物のパートAを調製した。64.18部の樹脂/ポリマーブレンド、29.89部の架橋剤、5.03部の顔料および0.90部の抑制剤を組み合わせることによりパートBを調製した。パートA(13.00部)および1.30部のパートBを2オンスポリプロピレンカップ内で組み合わせた。これらの成分をHauschild AM-501デンタルミキサーを使用して12秒間混合し、テフロン被覆スパチュラを使用して約30秒間混合し、そして前記デンタルミキサーを使用して12秒間混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表1に示す。
【0092】
例7
1オンスポリプロピレンカップ内で、1.50部の比較例7のパートAに0.349部のω−ウンデシレニルアルコールおよび0.30部のチタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)を順に添加した。その混合物を、Hauschild AM-501デンタルミキサーを使用して12秒間混合し、そしてテフロン被覆スパチュラを使用して約30秒間混合した。その混合物に、比較例7のパートB(1.50部)および0.268部の架橋剤を添加した。次に、前記デンタルミキサーを使用してこれらの成分を2回の連続する12秒間のサイクルで混合した。硬化したシリコーン生成物の引掻き接着性を表2に示す。
【0093】
【表2】
Claims (10)
- (A)100質量部の、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を含むオルガノポリシロキサン;
(B)組成物を硬化させるのに十分な濃度の、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサン;
(C)0.5〜50質量部の、1000以下の分子量を有し、かつ、1分子当たり少なくとも1個のヒドロキシ基および少なくとも1個の脂肪族炭素−炭素多重結合を含むヒドロキシ官能性有機化合物;
(D)1〜10質量部の、
(E)触媒量のヒドロシリル化触媒;
を、混合することによるシリコーン組成物の製造方法(但し、成分(A)〜(E)に加えて、アルコキシシリル基を有する化合物を混合することによる方法を除く)。 - 前記オルガノポリシロキサンがポリジオルガノシロキサンである請求項1記載の製造方法。
- 成分(B)の濃度が、組み合わせた成分(A)および(C)中のアルケニル基1個当たり0.5〜5個のケイ素結合水素原子を与えるのに十分な濃度である請求項1または2記載の製造方法。
- 前記ヒドロキシ官能性有機化合物中の炭素−炭素多重結合が末端位置に位置する請求項1〜3記載の製造方法。
- 前記炭素−炭素多重結合が、式:−CH=CH2により表される末端基の部分である請求項4記載の製造方法。
- 前記ヒドロキシ官能性有機化合物が、ウンデシレニルアルコール、ポリ(エチレングリコール)モノアリルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)モノアリルエーテルまたはポリ(エチレングリコール)−co−ポリ(プロピレングリコール)モノアリルエーテルである請求項5記載の製造方法。
- 成分(C)の濃度が、100質量部の成分(A)当たり0.5〜10質量部である請求項1〜6記載の製造方法。
- R2が−OCH2CH3、R3が−H、R4がCH3である請求項1〜7記載の製造方法。
- 成分(D)の濃度が100質量部の成分(A)当たり1〜5質量部である請求項1〜8記載の製造方法。
- 下記成分(A)、(B)および(E)が同じパート中に存在しないことを条件とする、
(A)100質量部の、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を含むオルガノポリシロキサン;
(B)組成物を硬化させるのに十分な濃度の、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサン;
(C)0.5〜50質量部の、1000以下の分子量を有し、かつ、1分子当たり少なくとも1個のヒドロキシ基および少なくとも1個の脂肪族炭素−炭素多重結合を含むヒドロキシ官能性有機化合物;
(D)1〜10質量部の、
(E)触媒量のヒドロシリル化触媒;
を含むマルチパートシリコーン組成物の製造方法(但し、成分(A)〜(E)に加えて、アルコキシシリル基を有する化合物を含むシリコーン組成物の製造方法を除く)。
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