JP4885361B2 - ウィップル病の診断 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、診断の分野に関する。さらに正確には、本発明は、ウィップル病のインビトロ血清学的診断のための方法および該方法を実施するための装置に関する。さらに本発明は、ウィップル病の原因である細菌のインビトロ検出のためのキットに関する。
【0002】
さらに、本発明は、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを利用して検出および/または増幅し配列決定する技術の分野、ならびに細菌種Tropheryma whippeliiの存在を検出する試験への前記プローブまたはプライマーの利用あるいは該細菌種の同定に関する。
【0003】
ウィップル病は、様々な状態となって発症する病気である。最も典型的な状態は、体重減少につながる慢性下痢を伴う発熱であるが、この疾患はまた、慢性関節症状、痴呆を伴う脳症状を引き起こす恐れがあり、心臓症状(特に、陰性血液培養を伴う心内膜炎)も引き起こす恐れがある。
【0004】
1907年に最初に述べられてから、ウィップル病は、腸間膜神経節を銀染色した後に非常に多くの微生物が観察されたため、「腸性脂肪異栄養症」に関連する細菌の存在を伴うことが理解されてきた(Whipple,Bull.John Hopkins Hosp.1907;18:328−391)。この細菌の非特異的PAS陽性(PAS=過ヨウ素酸シッフ)特性の証明と、その後の電子顕微鏡による観察から、グラム陽性構造の細胞内細菌種が存在することが確認された(Chearsら,Gastroenterology 1961;41:129−138)。ユニバーサルな分子ツールである16S rRNAにより、この仮説が確かめられた。この新しい細菌種の系統分類学が特定され、腸吸収不良の概念を想起させるようにすると共にこの病気の発見者に敬意を払うために、この細菌に仮名称Tropheryma whippeliiが付けられた(Relmanら,N.Engl.J.Med.1992;327:293−301)。1人の患者の小腸(Wilsonら,Lancet 1991;338:474−475)、次いで、もう1人の患者の神経節(Wilsonら,ASM News 1992;58:318−321)の生検材料から増幅された721塩基のフラグメントを直接配列決定することにより、ウィップル病に関連する細菌種の新規性が確認された。Relmanら(前掲)による、1人の試料の1321塩基(遺伝子の90%に相当する)と、もう4人の患者の284塩基フラグメントの配列決定により、このウィップル病に関連する細菌は新種であることを確認し、放線菌門(すなわち、グラム陽性構造、グアノシン+シトシン高含有量の細菌)における分類学的位置を特定することができた。この細菌は、ヒト病理学で周知の2種、すなわち、Actinomyces pyogenesおよびRothia dentocariosaに比較的近い新しい分枝である。
【0005】
ウィップル病は、現在、生検材料から得られたスメアを染色した後の顕微鏡観察により、またはユニバーサルな遺伝子ツールである16S rRNA(Relmanら,前掲)の増幅および配列決定により診断されている。
【0006】
今まで、血清学試験の実施に適するように、ウィップル病の原因である細菌を単離および培養することは事実上不可能であった。
予想に反して、本出願人は、ウィップル病の原因である細菌を培養する方法を開発した。
【0007】
本発明者らは、細菌Tropheryma whippeliiの単離と増殖を可能にする細胞培養物は、寿命が長くかつ増殖時間が長くならなければならないことを発見した。実際に、本発明者らは、前記細菌の倍化時間が非常に長い(18日)ことを証明している。好ましくは、初代培養を、直接、不死化細胞上で行うべきである。
【0008】
ヒト血液単球の初代培養に関して行われた初期研究(SHOEDONら,“Jornal of Infectious Discases”,volume 176,number 3,1997,672−677頁)を、細菌Tropheryma whippeliiが増殖するような培養において、この細菌を樹立するための基礎として使用することができなかった。なぜなら、これらの単球の平均寿命が、細菌の倍化時間の観点からすると不十分な30日しかなかったからである。
【0009】
さらに、細菌の増殖時間と比較して細胞があまりに急速に増殖する場合、細菌を培養することができない。なぜなら、希釈効果が生じ、感染細胞と非感染細胞とを分離することができなくなるからである。
【0010】
1つの有利な実施態様では、本発明者らは不死化線維芽細胞を使用した。これらの線維芽細胞は培養皿の底に広がり、細胞マット全体をふさぐと増殖を止めるが、そのような条件下で数ヶ月間、生存することができる。
【0011】
さらに正確には、以下の実施例1および2に詳細に記載する、細菌を単離および培養する方法は、ヒト線維芽細胞HEL株に、MEMに溶かした粉砕心臓弁調製物を接種することを含む。最低2ヶ月間インキュベートした後に(培地を定期的に交換する)、ウィップル病の原因である細菌を単離し、培養において樹立した。「培養において樹立する」という言い回しは、特に、細胞培養物上での連続的な継代培養により、細菌が再現可能に得られ、経時的に増殖する意味であると理解される。
【0012】
従って、本発明は、抗原供給源として、このように単離および樹立された細菌に関する。本細菌は、CNCM(フランス、パリ)に番号I−2202および識別参照TWIST−Marseilleで寄託されている。
【0013】
さらに、本発明は、本発明による細菌の抗原に関する。さらに詳細には、本発明は、SDS−PAGE技術を使用したポリアクリルアミドゲル電気泳動とウエスタンブロッティングとにより決定された、約10,20,35,50,60,80,100,120,150,170および200kDの分子量を有するものから選択されるタンパク質である抗原に関する。
【0014】
さらに、本発明は、本発明による細菌または抗原に対する特異的抗体、さらに詳細には、動物起源のポリクローナル抗体(特に、マウスもしくはウサギ免疫グロブリン)またはモノクローナル抗体(特に、パスツール研究所のCNCMに、登録番号I−2411および識別参照TW 17G2で寄託されたハイブリドーマにより産生されたモノクローナル抗体)に関する。
【0015】
さらに、本発明は、前記細菌を認識するヒト免疫グロブリン(好ましくは、IgG、IgM、またはIgA)に特異的な抗体、より詳細には、動物免疫グロブリン(特に、抗ヒトヤギ免疫グロブリン)の検出に関する。
【0016】
さらに、本発明は、より詳細には、本発明による前記ハイブリドーマにより産生されたモノクローナル抗体と反応する200kDのタンパク質であることを特徴とする抗原に関する。
【0017】
さらに、本発明は、細菌Tropheryma whippeliiにより引き起こされる感染に関連する疾患のインビトロ診断のための方法における本発明による細菌、細菌の抗原、または特異的抗原の使用と、本発明による細菌Tropheryma whippeliiにより引き起こされる感染症の血清学的診断のための方法に関する。前記方法は、患者の血清または任意の他の生物学的液体を前記細菌と接触させ、免疫学的反応を検出することを含む。
【0018】
より詳細には、本発明は、Tropheryma whippeliiにより引き起こされる感染症のインビトロ血清学的診断のための方法に関する。ここで、本発明による細菌、本発明による細菌の抗原、または本発明による特異的抗体を、患者から採取し、ヒト血清、生物学的液体、またはスワブからなる試料と接触させる。
【0019】
本発明による方法は、本質的に、本発明による細菌に特異的な抗体と前記細菌の抗原との免疫学的反応、または前記細菌を認識する本発明による免疫グロブリンに特異的な抗体と、前記細菌を認識するヒト免疫グロブリンとの免疫学的反応を検出することにあるステップを含む。
【0020】
さらに、本発明は、ウィップル病のインビトロ血清学的診断のための方法に関する。前記方法は、患者の血清または任意の他の生物学的液体を、前記で定義された細菌と接触させることと、免疫学的反応を検出することを含む。
【0021】
1つの実施態様では、本発明による診断方法は以下の工程から成る。
−本発明による細菌の溶液、特に0.5〜5μl、好ましくは1μlの前記細菌を含む前記溶液を、固体支持体中に、または固体支持体上に付着させること
−試験血清または生物学的液体(好ましくは、希釈した試験血清または生物学的液体)を、前記支持体中に、または前記支持体上に導入すること
−標識抗体(特に、前記細菌を認識するヒト免疫グロブリン(特に、IgG、IgM、またはIgAタイプ)に特異的な抗ヒト動物免疫グロブリン)を、前記支持体中に、または前記支持体上に導入すること
−インキュベーション期間を観察すること
−適宜、前記固体支持体を洗浄すること
−特に、前記細菌を認識するヒト抗体と前記抗ヒト免疫グロブリンとの免疫学的反応を実際に検出すること。
【0022】
有利なことに、本発明の診断方法は、ELISAタイプの酵素イムノアッセイまたは免疫蛍光アッセイを含む。より詳細には、本発明による方法は、以下の工程から成る。
【0023】
−前記のように単離および樹立した細菌の溶液を、固体支持体中に、または固体支持体上に付着させること
−希釈した試験血清または生物学的液体を、前記支持体中に、または前記支持体上に導入すること
−標識抗ヒト免疫グロブリンを、前記支持体中に、または前記支持体上に導入すること
−インキュベーション期間を観察すること
−適宜、前記固体支持体を洗浄すること
−免疫学的反応を実際に検出すること。
【0024】
使用する固体支持体は、細胞懸濁液および細菌懸濁液の操作に適した任意の装置(特に、チューブ、ガラススライド、bijouxチューブ、または堅いマイクロタイタープレート(ポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニル、またはニトロセルロースで作られ、マイクロウェルを有する))であってよい。ガラススライドが好ましい。
【0025】
検出される抗体は、ウィップル病の原因である細菌に特異的な、特に、G、M、またはAタイプの免疫グロブリンである。抗ヒト免疫グロブリンに使用される標識のタイプは、酵素標識、放射性標識、または蛍光標識である。最後のタイプの標識が好ましい。
【0026】
「蛍光標識」という言い回しは、適切な蛍光剤(例えば、フルオレセインイソ(チオ)シアネート)と、ヒト抗体を認識する動物免疫グロブリンとの結合により、抗体が蛍光を発するようになっていることを意味する。
【0027】
「放射性標識」という言い回しは、抗体が、その構造要素(例えば、構成チロシン残基)またはそれに固定されている適切なラジカルに、放射能をカウントすることにより分析することができる放射性同位体を有することを意味する。
【0028】
「酵素標識」という言い回しは、抗体が、適切な薬剤と会合した場合にこの特異的抗体を定量的に測定することができる酵素と結合していることを意味する。
基質および試薬は、この酵素により引き起こされ、これらの基質を必要とする反応または反応順序の最終生成物が、次のうちのいずれか一方となるように選択される。
【0029】
−着色基質または蛍光基質(試験試料を取り囲む液体培地に拡散し、それぞれ最終的な分光光度測定もしくは蛍光測定または目視評価(任意に、カラースケールと照らし合わせる)に供される)
−不溶性着色基質(試験試料に付着し、反射光度計による測定または目視評価(任意に、カラースケールと照らし合わせる)に供することができる)
蛍光を発するようになっている抗体を使用する場合、試験試料に関連する蛍光は、適切な装置により直接読み取る。
【0030】
放射性プローブ(例えば、ヨウ素125)を使用する場合、試験試料に関連する放射能は、任意の適切な実施方法(例えば、細胞をアルカリ溶液(例えば、水酸化ナトリウム溶液)で可溶化し、吸収プラグを使用して放射能を含む溶液を回収した後に)によりガンマカウンターでカウントする。
【0031】
特異的抗体に酵素を使用する場合、前記で説明したような、培地に溶ける着色生成物、不溶性着色生成物、または可溶性蛍光生成物を反応生成物として最終的に得ることができる、酵素基質と1または複数の補助試薬を含む溶液を添加することにより、着色生成物または蛍光生成物が出現する。次いで、このように処理した試料から生じる光シグナルを、それぞれの場合に適した装置(すなわち、それぞれ、透過光度計、反射光度計、または蛍光計)を使用して測定する。あるいは、得られた色を、目視により(任意に、着色溶液のスケールを使用して)評価することもできる。
【0032】
アルカリホスファターゼを酵素として使用する場合、Boehringer Mannheim−Biochemicaにより提案された方法により、この酵素を特異的抗体と結合させる。この酵素に好ましい基質は、最終測定が分光光度計によるものである場合、パラニトロフェニルリン酸、または測定が蛍光計によるものである場合、4−メチル−ウンベリフェリルリン酸、または不溶性着色反応生成物が得られる場合、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸である。同様に、β−ガラクトシダーゼを酵素として使用することができる。好ましい基質は、オルトニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシドまたは4−メチルウンベリフェリルβ−D−ガラクトピラノシドである。
【0033】
特異的抗体をペルオキシダーゼと結合できることが好ましい。この場合、結合プロセスは、M.B.WILSONおよびP.K.NAKANE,Immunofluorescence and Related Staining Techniques,W.Knapp,K.Kolubar,G.Wicks編,Elsevier/North Holland,Amsterdam 1978,215−224頁により記載されているものに基づいている。
【0034】
特異的抗体と共役したペルオキシダーゼを明らかにするために使用する試薬には、過酸化水素(酵素基質)と適切な色原体(例えば、培地に溶ける着色最終生成物を得るためにはオルトフェニレンジアミンまたは2,2’−アジノビス−(3−エチルチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、不溶性最終反応生成物を得るためには3,3’−ジアミノベンジジン、3−アミノ−9−エチルカルバゾール、または4−クロロ−α−ナフトール、培地に溶ける蛍光反応生成物を得るためにはパラヒドロキシフェニルプロピオン酸)が含まれる。
【0035】
本発明の別の実施態様は、アセチルコリンエステラーゼが結合している特異的抗体の使用である。
フランス特許第2550799号に記載に基づくプロセスによるか、または簡単に述べると、周知の技術により抗体フラグメントを調製し、適切なヘテロ二価性薬剤との反応により酵素を修飾し、最後に、結果として生じる生成物を結合させることを含むプロセスにより、アセチルコリンエステラーゼを抗体と結合させることが好ましい。この場合、免疫酵素結合体を構築する他の周知のプロセスも使用することができる。
【0036】
アセチルコリンエステラーゼ結合体により認識される抗原に特異的に関連する酵素活性は、この場合に適した任意の変異体(例えば、Pradellesら,Anal.Chem.1985,57:1170−1173に記載の変異体)を使用して、酵素基質としてアセチルチオコリンと色原体としてエルマン試薬(5,5’−ジチオ−2−ニトロ安息香酸)を利用する周知の技術により明らかにされることが好ましい。
【0037】
言及した色原体は、それ自体で、または水溶性の塩の形態で使用される。
本発明の血清学的診断の方法は、生物学および/または病理解剖学研究室での使用に適している。このために、本方法の実施のために提案された装置は固体支持体を備える。この固体支持体の上に、または固体支持体中に、前記で定義された細菌を含む溶液が付着されている。
【0038】
別の特徴によれば、さらに、本発明は、ウィップル病の原因である細菌のインビトロ検出のためのキットに関する。このキットは、以下の成分を含む溶液を備えている。
−本発明による細菌または抗原を含む溶液、および/または
−本発明による少なくとも1つの抗体を含む溶液、および/または
−前記細菌を認識にするヒト免疫グロブリンに特異的な少なくとも1つの抗体。
【0039】
さらに詳細には、前記キットは、以下のものを含む。
−陽性対照として、前記のように単離および樹立されたウィップル病の原因である細菌を含む溶液
−標識特異的抗体を含む溶液
−任意の洗浄溶液。
【0040】
本発明のキットに使用される特異的抗体は、放射性プローブ、酵素、または蛍光剤で有利に標識される。
特異的抗体を酵素で標識する場合、前記キットはまた、酵素基質と、酵素活性を視覚化するための1または複数の試薬を含む。
特異的抗体を蛍光剤で標識する場合、フルオレセインイソ(チオ)シアネートを使用することが好ましい。
【0041】
本発明の1つの好ましい実施態様では、使用される特異的抗体は、免疫グロブリン、特に、マウス免疫グロブリンである。
【0042】
さらに、本発明は、本発明による細菌Tropheryma whippeliiのrpoB遺伝子に関する。rpoB遺伝子の配列は、異なる属および種の多数の他の細菌の中でコンセンサスなプライマーを使用した酵素的増幅と直接的自動配列決定により決定した。
rpoB遺伝子は、細菌RNAポリメラーゼのサブユニットの1つをコードし、細菌種Tropheryma whippeliiの特異的検出を可能にする遺伝子マーカーを構成する。
【0043】
さらに詳細には、本発明は、添付の配列表中のヌクレオチド配列である配列番号3を有することを特徴とするrpoB遺伝子のフラグメントに関する。
従って、さらに本発明は、Tropheryma whippelii種に特異的な核酸配列に関し、このヌクレオチド配列は、前記細菌のrpoB遺伝子に由来し、特に、前記rpoB遺伝子のフラグメントに由来する。
【0044】
Lazcanoら(J.Mol.Evol.(1988)27:365−376)によれば、RNAポリメラーゼは、その起源により2つのグループに分類される。一方は、RNA依存性またはDNA依存性ウイルスRNAポリメラーゼからなり、他方は、真核生物または原核生物起源(古細菌および真正細菌)のDNA依存性RNAポリメラーゼからなる。真正細菌DNA依存性RNAポリメラーゼは、αββ’により表される「コア酵素」またはαββ’σにより表される「ホロ酵素」と呼ばれる単純な、保存された多量体構造により特徴付けられる(YuraおよびIshihama,Ann.Rev.Genet.(1979)13:59−97)。
【0045】
非常に多くの研究により、多量体酵素複合体内での、真正細菌RNAポリメラーゼβサブユニットの機能的役割が証明されている。古細菌および真核細菌のRNAポリメラーゼに関する限りでは、これらは、約10または11〜約30のサブユニットになることができる、さらに複雑な構造を有する(Puhlerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1989)86:4569−4573)。
【0046】
真正細菌におけるDNA依存性RNAポリメラーゼの異なるαββ’σサブユニットをコードする遺伝子(すなわち、それぞれ、rpoA、rpoB、rpoC、およびrpoD遺伝子)が、リボソームサブユニットの構成タンパク質またはゲノムの複製および修復に関与する酵素をコードする遺伝子を含む、それぞれ異なるグループに分類される(YuraおよびIshihama,Ann.Rev.Genet.(1979)13:59−97)。著者の中には、rpoBおよびrpoC遺伝子の核酸配列を使用して、生物界の中で異なる分枝および小分枝を分離することを可能にする系統樹を構築できることを証明したものもいる(Rowlandら、Biochem.Soc.Trans.(1992)21:40s)。
【0047】
本発明のこの特徴をさらに詳細に説明する前に、説明および特許請求の範囲で使用する様々な用語を以下で定義する。
【0048】
「細菌から抽出した核酸」は、全核酸、ゲノムDNA,メッセンジャーRNA、またはメッセンジャーRNAの逆転写から得られたDNAのいずれかを意味すると理解される。
【0049】
「ヌクレオチドフラグメント」および「オリゴヌクレオチド」は、同義の2つの用語であり、厳しいストリンジェンシーの所定条件下で相補的なまたは実質的に相補的なヌクレオチドフラグメントと、天然核酸と同様にハイブリダイズすることができる天然(または、ことによると修飾された)核酸の情報配列により特徴付けられる、ヌクレオチド単位が連結したものを意味する。この連結は、構造が天然核酸とは異なるヌクレオチド単位を含んでもよい。ヌクレオチドフラグメント(またはオリゴヌクレオチド)は、例えば、100ヌクレオチド単位までを含んでもよい。これは、一般に、少なくとも10ヌクレオチド単位、特に、少なくとも12ヌクレオチド単位を含み、天然核酸分子から、ならびに/あるいは遺伝子組換えおよび/または化学合成により得ることができる。
【0050】
ヌクレオチド単位は単量体に由来する。前記単量体は、その構成要素が、糖と、リン酸基と、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、およびチミンから選択される窒素塩基である天然核酸ヌクレオチドでもよい。あるいは、前記単量体は、前記で列挙した3つの構成要素のうち少なくとも1つで修飾されているヌクレオチドである。一例として、塩基では、イノシン、5−メチルデオキシシチジン、デオキシウリジン、5−ジメチルアミノデオキシウリジンなどの修飾塩基またはハイブリダイゼーションが可能な他の任意の修飾塩基を使用して、あるいは糖では、例えば、少なくとも1つのデオキシリボースをポリアミドで置換することにより(P.E.Nielsenら,Science(1991)254:1497−1500)、あるいはリン酸基では、例えば、特に、ジホスフェート、アルキルホスホネートおよびアリルホスホネート、ならびにホスホロチオエートから選択されるエステルで置換することにより、修飾を行うことができる。
【0051】
「情報配列」は、その化学的性質と基準方向(reference direction)への順序が天然核酸の配列により与えられるものと類似する情報を構成する、任意の順序付けられた一連のヌクレオチド型単位を意味すると理解される。
【0052】
「ハイブリダイゼーション」は、適切な条件下で、十分に相補的な配列を有する2つのヌクレオチドフラグメントが安定かつ特異的な水素結合を介して互いに会合し、二本鎖を形成することができるプロセスを意味すると理解される。ハイブリダイゼーション条件は、「ストリンジェンシー」(すなわち、操作条件の厳しさ)により決定される。ストリンジェンシーが大きくなればなるほど、ハイブリダイゼーションは特異的になる。ストリンジェンシーは、特に、プローブ/標的二重鎖の塩基組成物の関数であり、2つの核酸間のミスマッチの程度によるものである。ストリンジェンシーはまた、ハイブリダイゼーション反応のパラメータ(例えば、ハイブリダイゼーション溶液に存在するイオン種の濃度およびタイプ、変性剤の性質および濃度、ならびに/またはハイブリダイゼーション温度)の関数であり得る。ハイブリダイゼーション反応を行わなければならない条件のストリンジェンシーは、特に、使用するプローブによって決まる。これらの事実の全てが周知であり、適切な条件を、その都度、日常的な実験により必要に応じて決定することができる。一般に、使用するプローブの長さに応じて、ハイブリダイゼーション反応の温度は、濃度が約0.8〜1Mの食塩水中で、約20〜65℃、特に、35〜65℃である。
【0053】
「プローブ」は、例えば、10〜100ヌクレオチド単位、特に、12〜35ヌクレオチド単位からなり、核酸(この場合では、メッセンジャーRNA(すなわち、転写産物)に含まれる、またはメッセンジャーRNAの逆転写により得られるDNAに含まれるヌクレオチド配列を有する核酸)とハイブリダイゼーション複合体を形成する所定の条件下でハイブリダイゼーション特異性を有するヌクレオチドフラグメントである。プローブを診断のために使用してもよく(特に、キャプチャープローブまたは検出プローブ)、治療のため使用してもよい。
【0054】
「キャプチャープローブ」は、任意の適切な手段により(例えば、共有結合、吸着、または固体上への直接合成により)、固体支持体上に固定化されるか、または固定化することができる。支持体の例として、マイクロタイタープレートおよびDNAチップが挙げられる。
【0055】
「検出プローブ」は、例えば、放射性同位体、酵素(特に、発色基質、蛍光基質、発光基質に作用することができる酵素(特に、ペルオキシダーゼまたはアルカルホスファターゼ))、発色団化学物質、発色化合物、蛍光化合物、または発光化合物、ヌクレオチド塩基アナログ、およびリガンド(例えば、ビオチン)から選択されるマーカーで標識することができる。
【0056】
「種プローブ」は、細菌の種を同定するためのプローブである。
「属プローブ」は、細菌の属を同定するためのプローブである。
「プライマー」は、例えば、10〜100ヌクレオチド単位からなり、例えば、PCRなどの増幅技術、配列決定プロセス、転写法などで酵素的重合を開始するための所定の条件下でハイブリダイゼーション特異性を有するプローブである。
【0057】
本発明の主題の1つは、添付の配列表中の配列番号4および配列番号5の配列の1つに含まれる少なくとも12の連続的なヌクレオチド単位からなる配列を有するオリゴヌクレオチドならびにこれらのオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドから選択される1本鎖オリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、オリゴデオキシリボヌクレオチド(DNA)でもよく、「T」を「U」で置換したオリゴリボヌクレオチド(RNA)でもよい。
【0058】
特に、本発明によるオリゴヌクレオチドは、前記のように少なくとも12単位、多くても50単位を有する。さらに詳細には、本発明によるオリゴヌクレオチドは、12〜35単位を有する。
【0059】
好ましいオリゴヌクレオチドは、配列番号4および5の配列から選択される配列を有する。
イノシンは、他の任意の塩基と対合することができる。
配列番号4および5の配列は、当業者に周知な例えばItakura K.ら((1984)Annu.Rev.Biochem.53:323)による論文に記載されている技術を使用した化学合成により調製することができる。
【0060】
本発明のオリゴヌクレオチドの第1の応用例は、細菌種Tropheryma whippeliiを生物学的試料中で検出するためのプローブとしての使用である。このプローブは、配列番号4および配列番号5の1つに含まれる少なくとも12の連続したヌクレオチド単位からなるヌクレオチド配列とこれらの相補的配列を含む。本説明ではこれより、本発明のこのようなプローブを種プローブと呼ぶ。
【0061】
本発明によるプローブは、周知の任意のハイブリダイゼーション技術(特に、「DOT−BLOT」と呼ばれる技術(Maniatisら(1982)Molecular Cloning,Cold Spring Harbor)、「SOUTHERN BLOTTING」と呼ばれるDNA転写技術(Southern,E.M.,J.Mol.Biol.(1975)98:503)、「NOTHERN BLOTTING」と呼ばれるRNA転写技術、またはいわゆる「サンドイッチ」技術(Dunn,A.R.,Hassel,J.A.(1977)Cell 12:23))により、試料中に標的核酸が存在するか存在しないかを検出するための試験において診断目的に使用することができる。特に、「サンドイッチ」技術は、キャプチャープローブおよび/または検出プローブと共に使用される。これらのプローブは標的核酸の2つの異なる領域とハイブリダイズすることができ、これらのプローブの少なくとも一方(一般に、検出プローブ)が、種に特異的な標的領域とハイブリダイズすることができる。キャプチャープローブおよび検出プローブには、少なくとも部分的に異なるヌクレオチド配列がなければならないことが理解されている。
【0062】
検出しようとする核酸(標的)はDNAでもRNAでもよい(任意に、どちらか一方をPCRにより増幅した後に得る)。二本鎖核酸型の標的を検出する場合、検出プロセスを行う前に二本鎖核酸を変性することが適切である。標的核酸は、周知の方法を使用して試験試料の核酸から抽出することにより得ることができる。二本鎖核酸を、化学的、物理的、または酵素的変性の周知の方法により、特に、80℃以上の適切な温度まで加熱することにより変性することができる。
【0063】
前記のハイブリダイゼーション技術、特に、「サンドイッチ」技術を行うために、キャプチャープローブと呼ぶ本発明のプローブを固体支持体に固定化し、検出プローブと呼ぶ本発明のもう1つのプローブをマーカーで標識する。
【0064】
支持体およびマーカーの例は、前記で定義した通りである。
本発明のさらなる主題は、Tropheryma whippelii細菌が、少なくとも1つのこのような細菌の核酸を含むかまたは含む可能性がある試料中に存在するか、存在しないかを決定するプロセスである。前記プロセスは、前記試料を少なくとも1種類の本発明のプローブと接触させ、次いで、それ自体は周知の方法で、前記プローブと前記試料の核酸とのハイブリダイゼーション複合体が形成したか、または形成しなかったかを決定することにあるステップを含む。
【0065】
プローブと核酸とのハイブリダイゼーション複合体が形成したか、または形成しなかったかを検出する方法の例として、前記の技術、すなわち、「DOT−BLOT」、「SOUTHERN BLOTTING」、および「サンドイッチ」技術が挙げられる。
【0066】
Tropheryma whippelii種が存在するか、または存在しないかを決定する、このプロセスを行う特定の態様の1つでは、数種類の本発明のプローブを使用する。これらのプローブは、Tropheryma whippeliiのrpoB遺伝子に対応する核酸の非重複領域とハイブリダイズできることが理解される。
【0067】
有利なことには、ある1つの種類のプローブを固体支持体上に固定化し、別の種類のプローブをマーカーで標識する。
本発明のオリゴヌクレオチドの別の応用例は、配列番号4および5の配列の1つに含まれる少なくとも12ヌクレオチド単位からなる配列を有するオリゴヌクレオチドから選択される1本鎖オリゴヌクレオチドを含むヌクレオチドプライマーとしての使用である。このプライマーは、それ自体は周知のプロセスにより、ポリメラーゼ存在下での核酸合成において(特に、ポリメラーゼの存在下で、このような合成を利用する増幅法(PCR、RT−PCRなど)において)使用することができる。特に、本発明のプライマーを、Tropheryma whippeliiのメッセンジャーRNA配列の特異的逆転写に使用して、対応する相補的DNA配列を得ることができる。このような逆転写はRT−PCR技術の第1段階を構成することができる。次の段階は、結果として生じる相補的DNAのPCRによる増幅である。本発明のプライマーはまた、ポリメラーゼ連鎖反応により、Tropheryma whippeliiのrpoB遺伝子の全DNA配列を特異的に増幅するために使用することができる。
【0068】
1つの特定の場合では、本発明のオリゴヌクレオチドを含むプライマーはまた、RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーター(例えば、T7、T3、またはSP6プロモーター(Studier,F.W.,B.A.Moffatt(1986)J.Mol.Biol.189:113))のセンスまたはアンチセンス配列を含む。このようなプライマーは、転写ステップを伴う核酸増幅プロセス(例えば、NASBAまたは3SR技術(Van Gemen B.ら,Abstract MA 1091,7th International Conference on AIDS(1991)Florence,Italy))に使用することができる。
【0069】
本発明のさらなる主題は、配列番号4および配列番号5の配列の1つに含まれる少なくとも12の連続したヌクレオチド単位からなる配列を有するオリゴヌクレオチドから選択される1本鎖オリゴヌクレオチドを含むヌクレオチドプライマーである。このプライマーは、Tropheryma whippeliiの任意の株のrpoB遺伝子を、全てまたは部分的に配列決定するために使用することができる。特に、このヌクレオチドプライマーを、増幅核酸を配列決定するために使用することができる。それ自体は周知のプロセス(すなわち、ジデオキシヌクレオチドを使用した吸収重合(Sanger F.,Coulson A.R.(1975)J.Mol.Biol.94:441)またはDNAチップを使用した複数ハイブリダイゼーションによる配列決定から、rpoB遺伝子の全配列または部分配列が得られる。
【0070】
プライマーとしての使用またはrpoB遺伝子の配列決定には、配列番号4および配列番号5の配列を使用することが好ましい。
最後に、本発明の最後の主題は、Tropheryma whippeliiの株により引き起こされる感染症を治療するための遺伝子治療プローブである。このプローブは、前記で定義したようなオリゴヌクレオチドを含む。前記細菌のメッセンジャーRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズすることができる、この遺伝子治療プローブは、翻訳および/または転写および/または複製の現象をブロックすることができる。
【0071】
遺伝子治療法の原理は周知であり、特に、アンチセンス鎖に対応するプローブを使用することに基づいている。このプローブとセンス鎖とのハイブリッドの形成により、遺伝子情報の解読に関与するステップの少なくとも1つを混乱させることができる。従って、遺伝子治療プローブは、スピロヘータにより引き起こされる感染症と戦うための抗細菌薬として使用することができる。
【0072】
本発明は、実施例に分けられた以下の説明により、さらに詳細に理解されるだろう。実施例は、本発明を実施するために行われた実験に関し、単に例として示される。
【0073】
実施例1:細菌の初代単離
ATCCから入手可能なヒト線維芽細胞HEL株を接種したbijouxチューブでの遠心分離技術により、初代単離を行った。HEL細胞を、10%胎児ウシ血清(Gibco)および2mL L−グルタミン(Gibco)を添加したMEM(Gibco)上で培養した。直径12mmのキャリアスライドを備えるbijouxチューブ(Sterilin−Feltham−England,3.7ml)に、約50,000個の細胞を含む培地1mlを接種し、5%CO2下、37℃で3日間インキュベートして、コンフルエント細胞マットを得た。
【0074】
研究されている心臓弁をMEM中で粉砕し、この懸濁液を使用して3個のbijouxチューブに接種した。次いで、これらのチューブを、22℃で1時間、700gで遠心分離した。次いで、上清を取り出し、マットを滅菌PBSで2回洗浄し、次いで、5%CO2下、37℃で培地1mlと共にインキュベートした。培養物を、bijouxチューブ中の上清100μlの細胞遠心分離とGimenez染色によりモニターした。この手順を、10、20、および30日後に繰り返した。30日後に、bijouxチューブ中の上清および細胞マットを収集し、培地15mlを含む25cm2培養皿中のコンフルエント細胞マット上に継代培養し(培養皿I)、5%CO2下、37℃でインキュベートした。それから6週間、毎週(D72)、細胞マットを、細胞変性効果を探すために倒立顕微鏡で調べ、培地を新鮮な培地と交換した。培地を交換する前に、上清200μlを使用して、細胞遠心分離とGimenez染色を行った。
【0075】
65日目前では、細胞変性効果は検出されなかった。72日目に、倒立顕微鏡で細胞マットを調べると、HEL細胞内に小さな、黒っぽい、不ぞろいな封入体を検出することができた。培養皿Iの上清を細胞遠心分離し、Gimenez染色した後に、いくつかの微細なバチルスを検出した。バチルスの大部分は細胞内にあり、細胞内のバチルスは細胞外のバチルスより小さく見えた。それにもかかわらず、その大部分は、Gimenez染色により、あったとしても十分には染色されず、薄青色に見えた。グラム染色後にも、非常に多くのバチルスが検出された。その大部分はグラム陽性に見えたが、いくつかは部分的に紫色になっているだけであるか、グラム陰性に見えた。これらのバチルスは、Ziehl染色後、酸によって脱色された。PAS染色後、PAS陽性バチルスは、前の染色より非常に多く見えた。長く微細なバチルスの大部分を細胞外で観察することができた。HEL細胞は、PAS陽性凝集塊と、短く微細なPAS陽性バチルスで満たされているように見えた。
【0076】
実施例2:単離物の増殖
全増殖手順を、10%ウシ胎児血清と2mM L−グルタミンを添加したMEM培地で培養したHEL細胞上で行い、5%CO2下、37℃でインキュベートした。75日目に、培養皿I中の上清3mlを使用して、前記方法により10個のbijouxチューブに接種し、上清2mlを使用して、培地15mlを含む25cm2培養皿中のコンフルエント細胞マットに接種した(培養皿A)。培養皿I中の細胞と上清の残りを収集して、10mlの懸濁液を得た。次いで、この懸濁液を、5つの2mlアリコートに分けた。アリコートの1つを液体窒素で凍結した。別のアリコートを、培地15mlを含む25cm2培養皿中のコンフルエント細胞マットに接種した(培養皿B)。別のアリコートの細胞を、液体窒素と温水(55℃)を使用した4回の凍結融解サイクルにより溶解し、次いで、培地15mlを含む25cm2培養皿中のコンフルエント細胞マットに接種した(培養皿C)。別のアリコートを、培地15mlを含むが、細胞マットが無い25cm2培養皿に接種した(培養皿D)。85日目に、これら全ての培養皿およびbijouxチューブ中の培地を、新鮮な培地と交換した。細胞を収集し、培地30mlを含む75cm2培養皿に接種した(培養皿D2)。培地を交換する前に、上清200μlを使用して細胞遠心分離とPAS染色を行い、血清学用の抗原として使用するために、上清の残りを凍結した。95および105日目に、全ての培養皿およびbijouxチューブ中の培地を前記のように交換した。PAS染色用の細胞スメアを調製するために、細胞マットの一部をかき集めた。染色により増殖効率を半定量的に評価した。PAS陽性バチルスの存在を、以下の通りに(0、存在しない;+、存在するが見つけにくい;++、見つけ易いが、全視野には存在しない;+++、全視野で存在する)、倍率1000倍で顕微鏡により評価した。これらの評価を盲検で行った。
【0077】
単離物を継代培養の30日後に見つけることができたので、増殖方法は全て有効であることが分かった(表1)。半定量的評価により、最も有効な手順がbijouxチューブ中での継代培養、上清の継代培養(培養皿A)、および細胞の継代培養(培養皿D、D2)であることを観察することができた。
【0078】
【表1】
Figure 0004885361
実施例3:免疫蛍光法による検出
細胞内細菌を、105日目に免疫蛍光法によりbijouxチューブ中で直接検出した。アセトンで固定した後に、チューブをPBSで2回洗浄した。3%脱脂粉乳を含むPBSで1:50に希釈した患者血清100μlを添加し、チューブを加湿チャンバー内で37℃で30分間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後に、0.2%エバンスブルーを添加したPBSで1:200に希釈したフルオレセインイソチオシアネート標識抗ヒトヤギ免疫グロブリン(Fluoline H,BioMerieux,Marcy l’Etoilc,France)100μlと共に、チューブを37℃で30分間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後に、スライド(細胞は下方に向いている)を緩衝化グリセロール(pH8)中で固定し、Zeiss蛍光顕微鏡と、100×(NA.1.4)液浸系対物レンズを備える共焦点顕微鏡(LEICA DMIRBE)を使用して倍率400倍で調べた。
【0079】
免疫蛍光法により調べると、PAS染色および他の染色では細胞感染は過小評価されることが分かった。継代培養の30日後、スライド上の細胞は全て細菌抗原で満たされている。共焦点顕微鏡による研究から細菌の細胞内位置が確かめられた。いくつかの細菌が、単離物中に、PAS染色後に観察されるものに似た微細バチルスの形態で観察された。それにもかかわらず、免疫陽性物質の大部分はより大きな封入体と一致し、この封入体では細菌を個別化することができない。免疫陽性物質は細胞核で検出されない。
【0080】
実施例4:電子顕微鏡
105日目に、培養皿D2から収集された細胞を含む溶液300μlを、電子顕微鏡による研究のために調製した。細胞を、0.1Mスクロースを含む0.1Mカコジル酸緩衝液に溶かした2.5%グルタルアルデヒド溶液で、4℃で1時間固定した。細胞を同じ緩衝液で一晩洗浄し、次いで、0.1Mカコジル酸緩衝液に溶かした四酸化オスミウムで、室温で1時間固定した。漸増濃度のエタノール溶液での連続洗浄により、脱水を行った。次いで、細胞を、Epon812のブロックに包埋した。次いで、LKB Ultratome IIIミクロトームを使用してブロックから薄切片を切り、その後、メタノールに溶かした飽和酢酸ウラニル溶液とクエン酸鉛水溶液で染色した後、Jcol JEM 1200 EX電子顕微鏡で調べた。
【0081】
電子顕微鏡研究により、PAS陽性封入体と免疫陽性物質は、無傷の細菌または分解している細菌と一致することが確かめられた。これらの細菌の細胞質膜は、電子密度が高い2つの層からなる。薄い細菌壁は、所定の位置で、3層の外観を示す外側偽膜で覆われている。分裂過程にある細菌が観察された。
【0082】
実施例5:ウィップル病の原因である細菌に対するマウスポリクローナル抗体の作製
Balb C系統のマウスの腹腔内に、ウィップル病の原因である104個の細菌を含む上清0.5mlを注射した。次いで、1、2、および3週間後に、このマウスに同じ上清0.5mlを注射した。この最後の接種の1週間後に、このマウスから血を出した。免疫蛍光法を1回、免疫ペルオキシダーゼ法を1回行うことにより、血清を、一方では、ウィップル病の原因である細菌の培養物に対して、他方では、ウィップル病に罹患している患者の弁に対して試験した。明らかにする抗体は、フルオレセインまたは免疫ペルオキシダーゼで標識した抗マウス抗体(Immunotechにより供給)であった。
【0083】
細菌を、細胞内で視覚化することができた。従って、さらに、本特許出願は、ウィップル病の原因である細菌を、生検材料および様々なスワブ(例えば、心臓弁、消化器生検材料、またはウィップル病の原因である細菌に感染していると思われる他の任意の器官の生検材料)中で直接検出することに関する。
【0084】
実施例6:Tropheryma whippelii Twist−Marseille株の産物に対するモノクローナル抗体の作製および使用、ならびに抗原の決定
【0085】
装置と方法
Tropheryma whippelii株。ハイブリドーマを作製およびスクリーニングし、モノクローナル抗体(Mab)の特異性を試験するために使用するTropheryma whippeliiの株は、番号I−2202でCNCMに寄託されたTwist−Marseille株である。Tropheryma whippeliiを、前記の培養条件下で、ヒト胎児線維芽細胞(HEL)上で培養した。75日目に、感染細胞を1つのフラスコから採取し、4000gで10分間、遠心分離した。次いで、遠心分離残渣を、5mlのPBSに再懸濁した。この懸濁液0.5mlを、それぞれのマウスに接種した。細菌をまたRenografin勾配下で精製し、SDS−PAGEの場合、脱イオン水に、マイクロ免疫蛍光法(MIF)の場合、PBSに再懸濁した。
【0086】
モノクローナル抗体(Mab)の作製。PBSに溶かしたTropheryma whippelii TWIST−Marseille 番号I−2202の懸濁液0.5mlを腹腔内注射することにより、6週齢の雌BALB/Cマウスに7日間隔で3回接種した。3回注射の最後から1週間後に、静脈内追加抗原量の、PBSに溶かしたTropheryma whippeliiの懸濁液0.1mlを、マウスに与えた。3日後に、免疫化マウスの脾臓を取り出し、50%ポリエチレングリコール(分子量:1300〜1600;Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo)を使用して、脾細胞をSP2/0−Ag14ミエローマ細胞と融合させた(10:1)。融合細胞を、20%ウシ胎児血清(Gibco,BRL)とヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo)を添加したハイブリドーマ培地(Seromed,Berlin,Germany)中で、5%CO2に富む加湿雰囲気中、37℃で培養した。
【0087】
上清中の抗T.whippelii抗体の存在をMIFにより検出した。陽性ハイブリドーマを、腹水産生のために継代培養した。IgM、IgA、IgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3マウス抗血清(Sigma)を含むImmuno Type Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit(SIGMA)を使用して、Mabのアイソタイプを決定した。Mabの特異性をウエスタンブロッティングにより試験した。マウスに、プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン;Sigma)0.5mlを腹腔内注射した1週間後に、0.5mlのPBSに溶かした3×106個ハイブリドーマの懸濁液を腹腔内注射することにより、腹水抗体を作製した。
【0088】
マイクロ免疫蛍光法(MIF)。MIFを使用して、ハイブリドーマをスクリーニングし、Mabの特異性を決定した。Tropheryma whippelii培養物からなる抗原を、細く尖った棒(quill)を使用して24ウェルスライド上に付着させた。メタノールを使用して室温で10分間固定した後に、Mabを付着させ、加湿チャンバ内で37℃で30分間インキュベートした。その後、スライドをPBS、次いで、蒸留水で2×5分間洗浄し、風乾させ、次いで、0.2%エバンスブルーを含むPBSで1/200に希釈したフルオレセイン結合抗マウスIgMヤギ抗体およびフルオレセイン結合抗マウスIgGヤギ抗体(BioMerieux,Marcy l’Etoilc,France)と37℃で30分間インキュベートした。洗浄後に、スライドをFluorep(BioMerieux)を使用して固定し、次いで、蛍光顕微鏡(Axioskop20;Carl Zeiss,Gottingen,Germany)で、倍率400×で読み取った。免疫化マウスの血清を陽性対照として使用し、健康なマウスの血清を陰性対照として使用した。
【0089】
ウィップル病に罹患している患者の血清中の抗Tropheryma whippelii抗体を検出するために、MIFを、Labtechスライド(Raoult D.ら,N.Engl.J.Med.,2000)上で行った。血清を、1:50、1:100、1:200、1:400、および1:800まで希釈した。
【0090】
SDS−PAGEおよびウエスタンブロッティング。SDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングを、12%ポリアクリルアミド分離ゲルおよび5%トランスファーゲルを使用することで改良されたLaemmliの方法で行った。緩衝液(0.0625M Tris塩酸塩(pH8.0)、2%SDS、5%2−メルカプトエタノール、10%グリセロール、0.02%ブロモフェノールブルー)中に4mg/mlのタンパク質を含むTropheryma whippelii懸濁液を、100℃で5分間、加熱した。溶解した抗原を、電気泳動槽(Mini ProteinII:Bio Rad,Richmond,Calif)中で、8〜10mAの一定強度で3〜4時間のゲル電気泳動により分離した(泳動用緩衝液:25mM Tris、192mMグリシン、0.1%SDS)。タンパク質サイズを、ペプチド量マーカー(Low Range;Bio Rad)との比較により決定した。このように分離された抗原を、ウエスタンブロッティング槽(Mini Trans−Blot;Bio Rad)中、50Vの電流で、4℃で1時間、転写緩衝液(2.5mM Tris、192mMグリシン、20%メタノール)を使用してニトロセルロース膜(0.45μm孔)に移した。転写した後、非特異的結合部位をブロックするために、ニトロセルロース膜を5%脱脂粉乳溶液と一晩インキュベートした。その後、膜を3回、PBSで洗浄し、次いで、風乾させた。次いで、膜を、3%乳を添加したPBSで1:4に希釈したハイブリドーマ上清または1:100に希釈した患者血清と室温で1時間インキュベートし、次いで、前記のように洗浄した。その後、膜を、3%脱脂粉乳を添加したPBSで1:500に希釈したペルオキシダーゼ結合抗マウスIgGヤギ抗体F(ab’)2フラグメント(重鎖および軽鎖:AffiniPure;Jackson ImmunoRsearch)と室温で1時間インキュベートし、次いで、PBSで洗浄した。特異的抗体の存在を、基質4−クロロ−1−ナフトールを使用してペルオキシダーゼ活性の存在により明らかにした。
【0091】
Mabに対する盲検法。モノクローナル抗体の特異性を、19種類の細菌:12種類のBartonella(すなわち、5種類のB.quintana、B.henselae Marseille、B.henselae Houston、B.vinsonii Baker、B.elizabethae、B.grahamii、B.doshiae、およびB.taylorii)、Coxiella burnetii Nine Mileと、本発明者らの研究室において診療試料から単離された様々な6種類の株(すなわち、Listeria monocytogenes、Staphylococcus aureus、Streptococcus bovis、Mycobacterium avium、Corynebacterium ANF群、およびActinomyces mayerii)に対してMIFにより盲検で評価した。PBSに懸濁し、ウェルを備えるスライドに付着させた後に、Mabと細菌との反応性を、1:100に希釈した腹水を使用して前記のようにMIFにより評価した。
【0092】
患者。15人の患者を試験した。8人の患者は、組織学および/または消化器生検材料のPCRによるT.whippelii増幅により診断された、消化系だけにあるウィップル病に罹患している。7人の患者は、弁生検材料のPCRにより診断された、T.whippeliiにより引き起こされた心内膜炎に罹患している。
【0093】
マウスおよびウサギ。どの抗原が抗体反応により認識されるかを決定するために、5匹のマウスと1匹のウサギにT.whippelii懸濁液を接種した。
結果
SDS−PAGEプロフィール(図1)。T.whippeliiのSDS−PAGEから、7つの主要バンドが10、20、80、120、150、170、および200kDaにあることがさらに詳細に分かった。
【0094】
Mabの作製。4種類のハイブリドーマの上清をMIFにより試験した。4種類のハイブリドーマが、T.whippeliiに特異的であることが分かった。1種類のハイブリドーマを、パスツール研究所のCNCM(25 rue du Docteur Roux,PARIS 75724)に番号I−2411および識別参照TW 17G2で寄託した。
【0095】
患者に対して行った血清学試験。15人の患者のうち13人(86.7%)が陽性の血清学試験結果(IgMレベル1:100)を示した。ウスタンブロッティングで観察された抗原プロフィールから、IgGに関する200kDaの主要バンドを含む、いくつかのバンドと反応性があることが分かった(図2)。100、60、50、および35kDaのタンパク質に対する反応性を含む、いくつかのタンパク質プロフィールをIgMについて同定した(図3)。
【0096】
免疫化マウスおよび免疫化ウサギに対して行った血清学試験。免疫化マウスおよび免疫化ウサギは、陽性の血清学試験結果(IgMレベル1:100)を示した。ウエスタンブロッティングで観察された抗原プロフィールから、マウスとウサギとで反応性が異なり、患者で観察されたものとは異なることが分かった。他方で、主要な反応性が200kDaのバンドで観察された。
【0097】
Mabの特徴付け(図2)。4種類のMabは、200kDa抗原に特異的な反応性を示した。これは、患者、マウス、およびウサギのウエスタンブロットで既に証明されている。これらのMabは全てIgMとして同定された。認識される抗原は、プロテイナーゼKの作用により破壊された。このことから、抗原はタンパク質であることが分かった。
Mabに対する盲検法。4種類のハイブリドーマの腹水は、T.whippeliiのみと反応した。
【0098】
実施例7:Tropheryma whippelii rpoB遺伝子の配列
Tropheryma whippelii rpoB遺伝子の配列を、コンセンサスプライマーを使用する酵素的増幅と直接自動配列決定により決定した。
使用したコンセンサスプライマーの配列は、以下の通りであった。
配列番号1=5’−TIA TGG GII CIA AIA TGC A−3’
配列番号2=5’−GCC CAI CAT TCC ATI TCI CC−3’(I=イノシン)
であった。
【0099】
機械的溶解および化学的溶解(Fast−Prep Bio 101)により、Tropheryma whippelii Twist−Marseille株CNCM I−2202から抽出したDNAを、以下の実験条件:35回の増幅サイクル(各サイクルが、94℃30秒のDNA変性、50℃30秒の初回プライマーハイブリダイゼーション(1サイクル当たり−0.1℃の勾配を含む)、次いで、72℃60秒の伸長からなる)に組み込んだ。
【0100】
配列番号1および配列番号2の配列を、以下の細菌の以下のアクセッション番号でGenbankに寄託されたペプチド配列のアラインメントにより決定した。Bacillus subtilis,L43593、Bartonella henselae,AF171070、Borrelia burgdorferi,AE001144、Buchnera aphidicola,Z11913、Chlamydia pneumoniae,AE001593、Chlamydia trachomatis,AE001304、Coxiella burnetti,U86688、Escherichia coli,U76222、Haemophilus influenzae,U32733、Helicobacter pylori,E000625、Legionella pneumophila,AF087812、Mycobacterium leprae,Z14314、Mycobacterium smegmatis,U24494、Mycobacterium tuberculosis,L27989、Mycoplasma gallisepticum,L38402、Mycoplasma genitalium,U39715、Mycoplasma pneumonlae,AE000030、Neisseria meningitidis,Z54353、Pseudomonas putida,X15849、Rickettsia prowazekii,AF034531、Rickettsia typhi,P77941、Salmonella enterica typhimurium,X04642、Spiroplasma citri,U25815、Staphylococcus aureus,U970062、Synechocystis spp.,D90905、Thermotoga maritima,X72695、Treponema pallidum,AE001205、およびHuman Granulocytic Ehrlichiosis agent,AF237414。
【0101】
配列番号1および配列番号2を配列、これらの配列がTropheryma whippeliiにも存在すると仮定して、最も保存されている配列を選択することにより選択した。
【0102】
プライマー配列番号1および配列番号2を使用して得られた、配列番号3に対応する、Tropheryma whippelii(Genbankアクセッション番号AF243072) rpoB遺伝子の部分配列は、以下の通りである。
BASE 157a 117c 176g 150t その他12
【0103】
実施例8:Tropheryma whippelii rpoB遺伝子の特異的検出
Tropheryma whippeliiに特異的な以下の配列:
配列番号4:5’−GCA TTG TGG GGG ATG TTT−3’
配列番号5:5’−TTG GGG TCA CCT TAC CAA−3’
を、フラグメント配列番号3から選択した。
選択した配列は、Genbankに列挙された前記28種類の細菌のrpoB遺伝子の既知配列と比較して、Tropheryma whippeliiに特異的な配列である。
【0104】
実施例9:Tropheryma whippelii rpoB遺伝子の特異的増幅
Tropheryma whippelii rpoB遺伝子を、35回の増幅サイクル(各サイクルが、94℃30秒の変性段階、52℃30秒のプライマー配列番号4と配列番号5のハイブリダイゼーション段階、72℃90秒の伸長段階からなる)を使用するPCR技術により増幅した。増幅産物を、臭化エチジウム染色後に視覚化した(図4)。
【0105】
対照細菌(すなわち、Mycobacterium avium、Mycobacterium tuberculosis、Nocardia otitidiscaviarum、Escherichia coli、Staphylococcus eperdimilis、およびCorynebacterium amycolatum)は検出されなかった。このことから、試験したプライマーの特異性が証明された。
【0106】
Tropheryma whippeliiとの遺伝子類似性のために、または予想される汚染菌としてTropheryma whippelii検出のために提出された臨床スワブに存在するために、以下のアクセッション番号でGenbankに寄託された、これらの対照種のrpoB配列:Mycobacterium avium ATCC25291,AF060336、Mycobacterium tuberculosis,U12205、およびEscherichia coli K−12,U77436を選択した。
【図面の簡単な説明】
【図1】 電気泳動ゲルの写真である。Tropheryma whippeliiのSDS−PAGEタンパク質プロフィールを示す。
【図2】 電気泳動ゲルの写真である。ウエスタンブロッティングにより得られたTropheryma whippeliiの抗原プロフィールを示す。レーン1=免疫化マウスの血清、レーン2=免疫化ウサギの血清、レーン3=患者血清(IgG+IgM)、レーン4=モノクローナル抗体1、レーン5=モノクローナル抗体2、レーン6=モノクローナル抗体3、レーン7=モノクローナル抗体4。
【図3】 電気泳動ゲルの写真である。ウィップル病に罹患している患者の血清を使用して、TWIST株、番号I−2202に対して行われ、IgM検出したウエスタンブロットを示す。
【図4】 電気泳動ゲルの写真である。臭化エチジウム染色した後の、プライマー配列番号1および2を使用したTropheryma whippelii rpoB遺伝子の増幅から生じた産物を視覚化したものを示す。レーン1=Tropheryma whippelii、レーン2=Nocardia otitidiscaviarum、レーン3=Mycobacterium tuberculosis、レーン4=Staphylococcus epidermidis、レーン5=Corynebacterium amycolatum、レーン6=Mycobacterium avium、レーン7=Escherichia coli、レーン8=H2O、レーン9=H2O。
【配列表】
Figure 0004885361
Figure 0004885361

Claims (18)

  1. 細菌が再現可能に得られると共に経時的に増殖するように、単離され、かつ培養において樹立された、ウィップル病の原因であるTropheryma whippelii細菌であって、パスツール研究所のCNCMに番号I−2202で寄託されていることを特徴とする細菌。
  2. 細菌が再現可能に得られると共に経時的に増殖するように、単離され、かつ培養において樹立された、ウィップル病の原因であるTropheryma whippelii細菌のタンパク質であって、ウィップル病の原因であるTropheryma whippelii細菌または該細菌の抗原に対する、パスツール研究所のCNCMに登録番号I−2411で寄託されているハイブリドーマにより産生される特異的モノクローナル抗体と反応する、ウエスタンブロッティングを使用するポリアクリルアミドゲル電気泳動により決定された200kDの分子量を有するものから選択されるタンパク質。
  3. 請求項1に記載の細菌に対する特異的抗体。
  4. 動物起源のポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項3に記載の抗体。
  5. モノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項3に記載の抗体。
  6. パスツール研究所のCNCMに登録番号I−2411で寄託されているハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項3に記載の抗体。
  7. Tropheryma whippelii細菌のインビトロ検出のための方法であって、本質的に、請求項3のいずれか一項に記載の前記細菌に特異的な抗体と、細菌との免疫学的反応を検出する工程から成る方法。
  8. Tropheryma whippelii細菌のインビトロ検出方法であって、本質的に、請求項1に記載の細菌を認識するヒト免疫グロブリンに特異的な抗体と、請求項1に記載の細菌を認識する前記ヒト免疫グロブリンとの免疫学的反応を検出する工程から成る方法。
  9. 請求項1に記載の細菌を含む溶液を、固体支持体中に、または固体支持体上に付着させるステップと、
    試験血清または生物学的液体を、前記支持体中に、または前記支持体上に導入するステップと、
    前記細菌を認識するヒト免疫グロブリンに特異的な標識抗体の溶液を、前記固体支持体中に、または前記固体支持体上に導入するステップと、
    インキュベーション期間を観察するステップと、
    前記固体支持体を洗浄するステップと、
    免疫学的反応を検出するステップとを含む、請求項に記載の方法。
  10. 本質的に、以下の成分:
    請求項1に記載の細菌を含む溶液、
    請求項3〜6のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗体を含む溶液、および
    請求項1に記載の細菌を認識するヒト免疫グロブリンに特異的な少なくとも1つの抗体を含む溶液
    のうちの少なくともいずれか1つを含む、請求項乃至のいずれか一項に記載の方法によるインビトロ検出のためのキット。
  11. 少なくとも1つの標識特異的抗体を含むことを特徴とする、請求項10に記載のキット。
  12. ヌクレオチド配列配列番号3を有することを特徴とする、請求項1に記載のTropheryma whippelii細菌のrpoB遺伝子のフラグメント。
  13. 請求項1に記載のTropheryma whippelii細菌のrpoB遺伝子に特異的な配列を有するオリゴヌクレオチドであって、前記特異的な配列は配列番号3の配列に含まれる少なくとも18の連続したヌクレオチド単位からなる配列を有する、オリゴヌクレオチド。
  14. 配列番号4および5の配列のいずれか1つであるオリゴヌクレオチドならびにこれらのオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドから選択される、請求項13に記載の1本鎖オリゴヌクレオチド。
  15. 配列番号4および5の配列であることを特徴とする、請求項13または14に記載のオリゴヌクレオチド。
  16. 請求項12に記載の配列または請求項1315の1つに記載のオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、Tropheryma whippelii細菌を生物学的試料中で検出するためのプローブ。
  17. 少なくとも1つの前記細菌の核酸を含むかまたは含む可能性がある試料中に、Tropheryma whippelii細菌が存在するか存在しないかを決定するためのプロセスであって、前記試料を請求項16に記載の少なくとも1種類のプローブと接触させ、次いで、前記プローブと前記試料の核酸とのハイブリダイゼーション複合体が形成したかまたは形成しなかったかを決定することを特徴とする、プロセス。
  18. 請求項13乃至15に記載のオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、ポリメラーゼの存在下でTropheryma whippelii rpoB遺伝子を合成するために使用することができるヌクレオチドプライマー。
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