JPWO2020111272A1 - 細菌感染による急性副鼻腔炎の起炎菌の検出方法 - Google Patents

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Abstract

急性副鼻腔炎において、起炎菌を特定するための検出手段の提供。細菌感染による急性副鼻腔炎の起炎菌であるインフルエンザ菌又は肺炎球菌の検出方法であって、被検体より採取した綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液サンプル中の、該起炎菌のリボゾームL7/L12蛋白質の該綿棒当たりの換算質量を、該起炎菌のリボゾームL7/L12蛋白質に特異的に結合し、かつ、該起炎菌を他の細菌と種又は属で識別することができる抗体を用いて、測定し、得られた測定値に基づき起炎菌検出の有無を判断するための判断基準値(カットオフ値)を決定する工程を含む、上記検出方法。

Description

本発明は、細菌感染による急性副鼻腔炎の起炎菌の検出方法に関する。
副鼻腔とは、顔の中にある、左右、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、及び上顎洞からなる空洞である。副鼻腔は、鼻の中と繋がっていて、普段は空気が入っているが、風邪をきっかけに鼻の中から副鼻腔に膿が入り、溜まると副鼻腔炎となる。副鼻腔炎は風邪により引き起こされるため、その病因はウイルスであるが、まれに細菌が病因の場合がある。抗生物質(抗菌薬、抗生剤)はウイルスには効かないため、その治療法としては、多くは対症療法、休養が中心となるが、細菌が病因であり、かつ、頭痛や顔の痛みを伴う重症の場合には、抗生物質により治療することになる。風邪の児が、鼻汁又は昼の咳が改善せず10日以上持続する、症状が一旦改善した後、鼻汁、昼の咳或いは発熱が新しく出現、再び悪くなる、3日以上続く膿性鼻汁(緑黄色の鼻水)と39℃以上の発熱、のいずれかを認めた場合に急性副鼻腔炎と診断される。
また、中耳炎とは、鼓膜の奥に部屋である中耳に細菌が入り、膿が溜まる症状である。
中耳は鼻の奥と管でつながっているため、細菌は鼻の奥から中耳に入り、中耳炎を起こす。痛みや腫れの強い、はじめの1週間を急性中耳炎といい、ピークを過ぎて、残りの膿が、だんだん抜けて治っている時期を滲出性中耳炎という。ほとんどの中耳炎は抗生剤を使わずに治るため、腫れが非常に強く、中耳炎が原因で高熱が出ている時や、痛み止めでも痛みがとれない時にだけ抗生剤が使われている。
急性副鼻腔炎の原因となる細菌としては、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、モラキセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)が知られている。日本鼻科学会がまとめた急性副鼻腔炎診療ガイドラインでは、第一に使用すべき抗生剤としてペニシリン系のアモキシシリン(ワイドシリン、パセトシン、サワシリン)が、効果がない場合や重症のときには、セファム系のセフジトレンピボキシル(メイアクト)やセフカペンピボシル(フロモックス)などが、それでも効果がない場合には、カルバペネム(オラペネム)が推奨されている。ニューキノロン系(オゼックス)という抗生剤も有効であるが、小児においては安易な使用は極力避けるべきとされており、重症の中耳炎を併発しているときなどに限られる。マクロライド系のクラリスロマイシン(クラリシッド)、アジスロマイシン(ジスロマック)などの抗生剤もあるが、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)とも、クラリシッドに耐性をもっていることが多い。
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)については、低年齢ほど耐性菌も割合が高く、5歳以下の副鼻腔炎で検出された肺炎球菌の7〜8割がペニシリン耐性菌となっているという報告がある。その原因は抗生剤の使い過ぎであり、細菌は抗生剤を使いすぎると進化し、その抗生剤がだんだん効かなくなり、また、中途半端に抗生剤を使うと、抗生剤が効きにくい菌が生き残ってしまい増殖する。これを繰り返すとか抗生剤が全く効かない菌集団が生じることになる。
そこで、急性副鼻腔炎診療ガイドラインでは、副鼻腔炎発症の初期はウイルス感染が主であるため、軽症であれば、鼻水を吸引する等の鼻処置を優先すること、軽症の副鼻腔炎では小児も成人も、まず、抗生剤非投与で5日間経過観察することが推奨されている。また、急性中耳炎でも、同様に、軽度の場合は抗生剤を使わずに3日間観察することが推奨されている。
2015年5月、世界保健機構(WHO)により「薬剤耐性に関するグローバル・アクション・プラン」が採択され、2016年4月に日本版薬剤耐性(AMR)対策アクション・プランも策定・実行されている。その成果指標として、ヒトの抗微生物剤の使用量を、2020年(対2013年比)に全体として33%減、経口セファロスポリン、フルオロキノン、マクロライド系薬として50%減、静注抗菌薬として20%減とすること、特に、肺炎球菌のペニシリン耐性率を、2020年に15%以下にすること(2014年に48%)、黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率を20%以下にすること(2014年に51%)が掲げられている。さらに、平成30年度の診療報酬改定では、急性気道感染症(急性副鼻腔炎、急性気管支炎、急性咽頭炎)又は急性下痢症で受診した基礎疾患のない患者であって、診察の結果、抗菌薬の投与の必要性が認められないため抗菌薬を使用しないものに対して、療養上必要な指導及び検査結果の説明を行い、文書により説明内容を提供した場合に、小児科のみを専任する医師が診療を行った初診に限り、「小児抗菌薬適性使用支援加算」として80点が新設されている。
かかる状況下、急性副鼻腔炎において、その起炎菌を特定し、その重軽度を診断し、その治療に抗菌薬の投与が必要であるか否かを診断するために必要な情報を提供することができる検査手段、例えば、細菌感染否定検査が求められている。
細菌感染症の診断は、通常、感染部位などでの原因菌の検出か、血清、体液中の原因菌に対する抗体の検出により確定される。特に、この診断は原因菌の検出が患者への迅速な治療を可能にする意味で重要である。感染症原因菌の検出には原因菌の分離培養を経て、その生化学的性状に基づき菌の同定を行う培養同定法、原因菌特異的遺伝子をもとにPCR法などにより増幅し検出する遺伝子診断法、原因菌の表面抗原マーカーとの抗体の特異的反応を利用して原因菌検出を行う免疫的手法に大別できるが、培養同定法、遺伝子診断法は検出結果を得るまでに時間がかかり、短時間にしかも高感度に原因菌を検出し、迅速かつ適切な患者への治療につながる点で免疫法による診断が汎用されている。従来、免疫法による感染症原因菌の検出には、菌種によって様々なマーカー抗原と抗体の組み合わせが使われている。
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は、肺炎などの呼吸器の感染症や全身性感染症を引き起こす細菌であり、気道の細菌性感染症の起炎菌として重要であるばかりでなく、前記したように急性副鼻腔炎の起炎菌でもある。非特許文献1〜3に記載されるように、従来、肺炎球菌の多糖成分に対する抗体を用いて尿中に排出される肺炎球菌を検出していたが、この検出方法は、小児では、咽頭常在菌に起因すると思われる偽陽性率が高く、肺炎などの起炎細菌の診断目的のためには実用的なものではなかった。すなわち、小児では咽頭に肺炎球菌が80%以上の高頻度で常在するため、肺炎患者又は気管支炎患者でなくても陽性を示すことが多かった。また、症状が治癒しても、尿中抗原の陽性化が維持されるため、治療の効果を正しく判断することが不可能であった。そこで、特許文献2では、以下の特許文献1に記載されるリボソームL7/L12蛋白質に対する抗体を作製し、対象微生物に特異的に反応する抗体を選択し、この抗体を用いて尿又は血清検体から起炎菌を検出する方法を提供している。
特許文献1には、種特異的であり、かつ、同一種内のすべての血清型を検出できる細菌検出用抗体とその作製法、細菌検出方法及び細菌検出用試薬キットが記載されている。特許文献1では、各種細菌について細胞内の同一機能分子、特にリボソーム蛋白質、とりわけリボソームL7/L12蛋白質に対する抗体を作製し、対象細菌に特異的に反応する抗体を選択し、この抗体を用いて細菌を検出している。
しかしながら、特許文献1と2のいずれにも、急性副鼻腔炎の起炎菌を、綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液である検体中の起炎菌のリボソームL7/L12蛋白質を定量的に測定し、かかる測定値に基づきカットオフ値を設定し、例えば、細菌感染否定検査としうることについては一切記載されていない。
国際公開第2000/06603号 特開2010-276441号公報
Clinical Infectious Diseases, 2002;34:1025-10258 Journal of Clinical Microbiology, Oct. 2004, 4853-4855 感染症学雑誌、78巻、1号、18-21、2004
前記した従来技術に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、急性副鼻腔炎において、その起炎菌を特定し、その重軽度を診断し、その治療に抗菌薬の投与が必要であるか否かを診断するために必要な情報を提供することができる検出手段、例えば、細菌感染否定検査手段を提供することである。
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、インフルエンザ菌及び肺炎球菌のリボソームL7/L12蛋白質に特異的に反応する抗体を用いて、鼻腔ぬぐい液中の対象細菌特異的なリボソームL7/L12蛋白質の濃度を測定し、かかる測定値に基づきカットオフ値を設定することにより、急性副鼻腔炎の起炎菌の検出や主要な細菌感染否定検査としうることができることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]細菌感染による急性副鼻腔炎の起炎菌であるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の検出方法であって、
被検体より採取した綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液サンプル中の、該起炎菌のリボゾームL7/L12蛋白質の該綿棒当たりの換算質量を、該起炎菌のリボゾームL7/L12蛋白質に特異的に結合し、かつ、該起炎菌を他の細菌と種又は属で識別することができる抗体を用いて、測定し、得られた測定値に基づき起炎菌検出の有無を判断するための判断基準値(カットオフ値)を決定する工程を含む、上記検出方法。
[2]前記換算質量の測定を、ELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)により行う、前記[1]に記載の検出方法。
[3]インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のリボゾームL7/L12蛋白質は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有し、かつ、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質は、配列番号4に示すアミノ酸配列を有する、前記[1]又は[2]に記載の検出方法。
[4]インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のリボゾームL7/L12蛋白質は、配列番号1に示す核酸配列によりコードされ、かつ、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質は、配列番号2に示す核酸配列によりコードされる、前記[3]に記載の検出方法。
[5]インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)について、カットオフ値を0.31ng/綿棒と設定し、また、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)についてカットオフ値を0.23ng/綿棒と設定し、これらのカットオフ値を超えた場合対応の菌を起炎菌と確定する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の検出方法。
[6]インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)について、カットオフ値を0.31ng/綿棒と設定し、また、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)についてカットオフ値を0.51ng/綿棒と設定し、これらのカットオフ値を超えた場合対応の菌を起炎菌と確定する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の検出方法。
本発明の方法によれば、綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液サンプル中の、該急性副鼻腔炎の起炎菌であるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質の該綿棒当たりの重量を、該起炎菌のリボゾームL7/L12蛋白質に特異的に結合し、かつ、該起炎菌を他の細菌と種又は属で識別することができる抗体を用いて、定量的に測定することができる。
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)及び肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質は、リボゾームが蛋白質合成のための細胞内小器官であるため、これらの細菌の存在量が増殖に応じて十分に増加していない時期に未だ至っていなくても、これらの細菌の増殖が盛んな時期であれば、検出に十分な量で発現しているため、これらのリボゾームL7/L12蛋白質を定量的に測定し、得られた測定値に基づきカットオフ値を設定することにより、細菌感染の初期においても、高い精度で感染の程度を判定することが可能となる。それゆえ、本発明に係る測定方法は、急性副鼻腔炎の細菌感染否定検査となり得る。
鼻腔ぬぐい液の綿棒を用いた検体採取は、多少の侵襲的苦痛を与えるものの、インフルエンザウイルス感染の検査において広く行われている。本実施形態では、かかる鼻腔ぬぐい液綿棒検体を、細菌感染による急性副鼻腔炎の起炎菌の迅速検出方法に用いることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
以下の遺伝子操作の一連の分子生物学的な実験は、一般的な実験書の記載にされた方法に従って行うことができる。一般的な実験書としては、例えば、Molecular Cloning, A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Sambrook, J. et. al. (1989) が挙げられる。
[リボゾームL7/L12蛋白質]
特許文献1に記載されるように、蛋白質合成に必要なリボソーム蛋白質の一種であるリボゾームL7/L12蛋白質は、全ての細菌内に存在し、細菌間で50%〜65%程度のアミノ酸配列の相同性を有しつつ、同一の機能が保存されている分子量約13キロダルトンの蛋白質である。
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の塩基配列と対応のアミノ酸配列を、配列番号1と2にそれぞれ示す(特許文献1に記載の配列番号17と18に同じ)。
また、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の塩基配列と対応のアミノ酸配列を、配列番号3と4にそれぞれ示す(特許文献1に記載の配列番号19と20に同じ)。
[起炎菌のリボゾームL7/L12蛋白質に特異的に結合し、かつ、該起炎菌を他の細菌と種又は属で識別することができる抗体]
呼吸器感染の原因菌(起炎菌)としては、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、肺炎クラミジア(Chlamydia Pneumoniae)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、肺炎かん菌(Klebsiella pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、A群溶連菌(Streptococcus sp. Group A)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、レジオネラ菌(Legionella pneumophila)、アスペルジルス属真菌(Aspergillus spp.)等が知られている。
また、前記したように、急性気道感染症(急性気管支炎、急性咽頭炎、急性副鼻腔炎)の内の急性副鼻腔炎の起炎菌としては、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、モラキセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)が知られている。
本実施形態は、綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液サンプル中の、該急性副鼻腔炎の起炎菌であるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質の該綿棒当たりの重量(濃度)を、該起炎菌のリボゾームL7/L12蛋白質に特異的に結合し、かつ、該起炎菌を他の細菌と種又は属で識別することができる抗体を用いて、定量的に測定することを特徴とする。
起炎菌を他の細菌と種又は属で識別することができる抗体は、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質の全長又は部分ペプチドを抗原として用いて作製することができる。前記したように、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質の塩基配列とアミノ酸配列は知られている。抗体を作製するためのペプチドの長さは特に限定されないが、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質に対する抗体の場合、各蛋白質を特徴づけられる長さがあればよく、好ましくは5アミノ酸以上、より好ましくは8アミノ酸以上のペプチドを用いればよい。かかる所定の長さの部分ペプチド又は全長蛋白質を、そのままで又はKLH(Keyhole limpet hemocyanin)、BSA(bovine serum albumin)などのキャリア蛋白質と架橋した後、必要に応じてアジュバントとともに動物に接種し、その血清を回収することで、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質を認識する抗体(ポリクローナル抗体)を含む抗血清を得ることができる。また、得られた抗血清から抗体を精製することもできる。接種する動物としてはヒツジ、ウマ、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット等が挙げられるが、特にポリクローナル抗体を作製する場合には、ヒツジ、ウサギなどが好ましい。
起炎菌を他の細菌と種又は属で識別することができる抗体としては、モノクローナル抗体を使用することが好ましい。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞を作製する公知の方法を用いて作製することができ、この場合には、抗原を接種する動物としてマウスが好ましい。また、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質の全長ペプチド又は5アミノ酸以上、好ましくは8アミノ酸以上の部分ペプチドを、GST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)などと融合させたものを精製して、又は未精製のまま、抗原として用いることもできる。
成書(Antibodies a laboratory manual, E. Harlow et al., Cold Spring Harbor Laboratory)に記載された各種の方法や遺伝子クローニング法などにより分離されたイムノグロブリン遺伝子を用いて、細胞に発現させた遺伝子組み換えタイプのモノクローナル抗体を作製してもよい。
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質に特異的に結合し、かつ、該起炎菌を他の細菌と種又は属で識別することができるモノクローナル抗体は、具体的には、以下の方法で取得することができる。
前記したように、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質の遺伝子配列は知られているため、そのリボゾームL7/L12蛋白質の遺伝子配列が知られている他の細菌における対応の蛋白質のアミノ酸配列との間に類似性が少ない領域において5〜30残基程度のペプチド断片を合成し、それを免疫原としてモノクローナル抗体を作製することができる。また、既知の該遺伝子の両端部位におけるDNA配列をプローブとしたPCR手法による遺伝子増幅、相同部分配列を鋳型プローブとしたハイブリダイゼーション法など通常の遺伝子操作手法を用いることにより該遺伝子の全長配列を取得することができる。その後、他の蛋白質遺伝子とのフュージョン遺伝子などを構築し、大腸菌等を宿主として公知の遺伝子導入手法により宿主内に該当フュージョン遺伝子を挿入し大量に発現させた後にフュージョン蛋白質として用いた蛋白質に対する抗体アフィニティーカラム法などにより発現蛋白質を精製することにより目的とする蛋白質抗原を取得することができる。この場合、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質の全長蛋白質が抗原となるため細菌間で保存されているアミノ酸部分に対する抗体を取得しても、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質に特異的に結合し、かつ、該起炎菌を他の細菌と種又は属で識別することができるとは限らないため、この方法によって取得した抗原に対しては、公知の手法によりモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを取得し、該当する細菌とのみ選択的に反応する抗体を産生するクローンを選択することにより所望の抗体を取得する必要がある。
抗原蛋白質の精製度が不足している場合には、公知の精製手法であるイオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの手法により精製した後、既に作製・取得済であるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質抗体によるウェスタンブロットなどの方法により対応のリボゾームL7/L12蛋白質の溶出画分を同定し、さらに精製度の高い蛋白質を得ることができる。こうして得られた精製された、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質抗原を用いて公知の方法によりハイブリドーマを取得し、前記と同様に、目的の細菌とのみ特異的に反応する抗体を産生するクローンを選択することにより目的の抗体を取得することができる。
[綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液サンプル中の、起炎細菌のリボゾームL7/L12蛋白質の該綿棒当たりの重量の測定]
このようにして取得した、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質に特異的に結合し、かつ、該起炎菌を他の細菌と種又は属で識別することができる抗体を、特に制限されないが、例えば、ポリスチレンラテックス粒子上に該抗体を吸着させた凝集反応、マイクロタイタープレート中で行う公知技術であるELISA法、既存のイムノクロマト法、着色粒子若しくは発色能を有する粒子又は酵素又は蛍光体でラベルされた該抗体とともに捕捉(capture)抗体で被覆した磁気微粒子などを用いるサンドイッチイムノアッセイなどの既知の免疫測定手法に用いることにより、綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液サンプル中の、該起炎菌のリボゾームL7/L12蛋白質の該綿棒当たりの重量を測定し、得られた測定値に基づき、細菌感染による急性副鼻腔炎疾患の診断のためのカットオフ値を設定することができる。好ましい免疫測定手法として、ELISA (Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)、イムノクロマト法が挙げられる。
綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液サンプル中のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)からの、細胞内リボゾームL7/L12蛋白質の抽出方法としては、トリトンX−100(Triton X-100(登録商標))、ツイーン−20(Tween-20(登録商標))などの界面活性剤を用いた抽出試薬による処理法、適当なプロテアーゼなどの酵素を用いる酵素処理法、物理的方法による細胞構造の破砕手法が用いられうるが、界面活性剤等の組み合わせによる検出系に合う抽出条件を選ぶことが好ましい。
前記した2種類の抗体を用いるサンドイッチイムノアッセイは、好ましくはELISA法である。ELISA法によるサンドイッチイムノアッセイにおいては、例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質に対する第一の抗体は、抗原蛋白質であるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質を固相又は液相中で捕獲するcapture抗体(1次抗体)として使用することができ、また、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質に対する第二の抗体をパーオキシダーゼやアルカリフォスファターゼなどの酵素で公知の方法により修飾することにより得られる酵素標識抗体(2次抗体)として使用することができる。
本実施形態においては、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質に対する2種類の抗体を、1次抗体と2次抗体として用いるサンドイッチイムノアッセイにより、患者(被験者)の綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液サンプル中の対応のリボゾームL7/L12蛋白質の濃度を定量的に測定する。
本明細書中、用語「被検体より採取した綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液サンプル中の対応のリボゾームL7/L12蛋白質の濃度」とは、患者(被験者)の鼻腔ぬぐい液が付着した綿棒1本あたりの該鼻腔ぬぐい液サンプル中の対応起炎細菌のリボゾームL7/L12蛋白質の重量をいう。鼻腔ぬぐい液サンプル採取に際して、綿棒1本あたりに付着する鼻腔ぬぐい液の重量は、採取の仕方に依存してばらつくことが想定される。本実施形態においては、定量的に測定された患者(被験者)の綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液サンプル中の対応のリボゾームL7/L12蛋白質の濃度の測定値に基づき、細菌感染による急性副鼻腔炎疾患の診断のためのカットオフ値を設定する。例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)について、カットオフ値を0.31ng/綿棒と設定し、また、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)についてカットオフ値を0.23ng/綿棒と設定し、これらのカットオフ値を超えた場合対応の菌を起炎菌と確定することができる。
[綿棒]
鼻腔ぬぐい液を採取するために使用する綿棒、スワブスティックは特に制限はなく、例えば、平和メディク社製滅菌綿棒F-Rであることができる。鼻腔ぬぐい液の場合、以下の方法で検体を採取し、試料を調製することができる。
(1)滅菌綿棒を鼻腔内に挿入し、鼻甲介を数回擦るようにして粘膜表皮を採取する。(2)検体抽出液を飛び散らせないように検体抽出容器のアルミシールをはがす。(3)検体を採取した滅菌綿棒を検体抽出液に浸し、滅菌綿棒を回しながら上下に動かして数回撹拌し、その後、滅菌綿棒を引き出し、この液を試料とする。
[カットオフ値の設定]
感度とは、診断に使用する検査において、疾患有の被験者を陽性と正しく判断する確率であり、感度が高い検査において陰性となった場合には、疾患の除外診断ができる。また、特異度とは、疾患無の被験者を陰性と正しく判断する確率であり、特異性が高い検査において陽性となった場合、疾患の確定診断ができる。陽性の被験者の中で疾患ありの確率が陽性的中率であり、また、陰性の被験者の中で疾患なしの確率が陰性的中率であり、これらが検査の臨床的有用性といえる。疾患群においては、カットオフ値(しきい値)は、真陽性と偽陽性とを分け、健常群においては、カットオフ値(しきい値)は、真陰性と偽陰性を分け、また、陽性的中率は、真陽性と偽陽性により求められる。したがって、カットオフ値をいかなる値に設定するかによって、検査の陽性的中率又は陰性的中率、すなわち、臨床的有用性が左右されることになる。
カットオフ値は、検査(測定)方法や条件に依存し、また、診断、検査データの数にも当然に依存する。したがって、カットオフ値を具体的にいかなる値に設定するかは、検査(測定)方法が具体的に確立された後に初めて可能となる。
尚、本実施形態において決定したカットオフ値は、必ずしも前記した臨床学的な疾患の確定診断のためのもではない。
本実施形態では、綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液サンプル中の、該急性副鼻腔炎の起炎菌であるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質の該綿棒当たりの重量を、該起炎菌のリボゾームL7/L12蛋白質に特異的に結合し、かつ、該起炎菌を他の細菌と種又は属で識別することができる抗体を用いて、定量的に測定することができる。
従来、培養により、及び/又は細菌表面抗原と特異的に反応する抗体を用いて、起炎菌を定性的に測定することは行われてきたが、カットオフ値を設定できる程度に、起炎菌を定量的に測定することは行われてこなかった。
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)及び肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質は、リボゾームが蛋白質合成のための細胞内小器官であるため、これらの細菌の存在量が増殖に応じて十分に増加していない時期に未だ至っていなくても、これらの細菌の増殖が盛んな時期であれば、検出に十分な量で発現しているため、これらのリボゾームL7/L12蛋白質を定量的に測定し、得られた測定値に基づきカットオフ値を設定することにより、細菌感染の初期においても、高い精度で感染の程度を判定することが可能となる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
特許文献1の実施例1〜3に記載の方法に従い、同文献に記載のハイブリドーマHIRB-1〜-5とは別に、新たにインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のリボゾームL7/L12蛋白質に対する抗体を産生するHIAYB-5〜HIAYB-10の6株のハイブリドーマを取得した。
[インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のリボゾームL7/L12遺伝子のクローニング]
具体的には、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)ATCC9334 (IID984)株(東京大学医科学研究所より分譲、購入)をチョコレート寒天培地上に適当量植菌した後、COインキュベーター中で37℃、CO0.5%条件で24時間培養した。生育したコロニーを最終的に5×10CFU/mL前後になるようにTE Buffer(和光純薬工業社製)に懸濁した。このうち約1.5mLを微量遠心チューブに移し取り10000rpmで2分間遠心し、上澄みを棄てた。沈殿部分を567μLのTE Bufferに再懸濁した。さらに30μLの10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と3μLの20mg/mL Proteinase K溶液を加えて良く混合し、37℃で1時間インキュベートした。次に、10%のセチルトリメチルアンモニウムブロマイド/0.7M NaCl溶液を80μL追添し、よく混合した後、65℃で10分間インキュベートした。次に、体積比24/1のクロロホルム−イソアミルアルコール混合液を700μL加えよく攪拌した。この溶液を微量遠心機で12000rpm、5分間(4℃コントロール下)遠心処理した後、水層画分を新しい微量遠心管に移した。そこに0.6倍量のイソプロパノールを加えチューブをよく振ってDNAの沈殿を形成せしめた。白いDNA沈殿をガラス棒ですくって1mLの70%エタノール(−20℃冷却したもの)が入った別の微量遠心管に移した。
次いで、10000rpmで5分間遠心処理し、上澄みを静かに除去した後、さらに1mLの70%エタノールを加えて再び5分間遠心した。再び上澄みを除去した後、沈殿を100μLのTE Bufferに溶解し、DNA溶液を得た。このゲノムDNA溶液の濃度をMolecular Cloning, A laboratory manual, 1989, eds. Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T., Cold Spring Harbor Laboratory PressのE5, Spectrophotometeric determination of the Amount of the DNA or RNAに従って定量した。
このゲノムDNAのうち10ngを用いてPCR(Polymerase chain reaction)を行った。PCRには、Taqポリメラーゼ(宝酒造社製、コードR001A)を用いた。酵素に添付のバッファーを5μL、酵素に添付のdNTP mixture 4μLと配列番号5に示す合成オリゴヌクレオチドA及び配番号6に示すオリゴヌクレオチドBをそれぞれ260pmol加え、最終容量を50μLとした。
この混合物を、TaKaRa PCR Thermal Cycler 480を用いて、95℃ 1分、50℃ 2分、72℃ 3分を5サイクル行った後、95℃ 1分、60℃ 2分、72℃ 3分を25サイクル行った。このPCR産物の一部を1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行い、エチジウムブロマイド(日本ジーン社製)にて染色後、紫外線下で観察し、約400bpのcDNAが増幅されていることを確認した。さらに、制限酵素BamHIとXhoIで切断処理後、1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色後約370bpのバンドをゲルから切り出してSuprec01(宝酒造社製)で精製後、市販のベクターであるpGEX−4T−1(Pharmacia社製)に組み込んだ。同ベクターは目的の遺伝子断片を適当な制限酵素サイトに組み込むことによりGST蛋白質とのフュージョン蛋白質を発現しうる目的分子の発現ベクターとして機能することができる。
具体的には、ベクターpGEX−4T−1と先のDNAとをそのモル比が1:3となるように混ぜ合わせて、T4 DNAリガーゼ(lnvitrogen社製)にてベクターにDNAを組み込んだ。DNAが組み込まれたベクターpGEX−4T−1を大腸菌One Shot Competent Cells(Invitrogen社製)に導入し、アンピシリン(Sigma社製)を50μg/mL含むL−Broth(宝酒造社製)半固型培地のプレートに蒔き、12時間程度37℃に放置し、現れてきたコロニーを無作為に選択し、同濃度のアンピシリンを含むL−Broth液体培地2mLに植え付け、8時間程度37℃で振盪培養し、菌体を回収し、ウィザードミニプレップ(Promega社製)を用いて添付の説明書に従ってプラスミドを分離し、このプラスミドを制限酵素BamHIとXhoIにて消化して、約370bpのDNAが切り出されてくることで該PCR産物が組み込まれていることを確認し、確認されたクローンについて、組み込まれているDNAの塩基配列決定を行った。
挿入DNA断片の塩基配列の決定は、Applied Biosystems社製の蛍光シークエンサーを用いて実施した。シークエンスサンプルの調製は、PRISM, Ready Reaction Dye Terminator Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems社製)を用いて行った。0.5mL容のマイクロチューブに9.5μLの反応ストック液、4.0μLの0.8pmol/μLのT7プロモータープライマー(GIBCO BRL社製)、及び6.5μLの0.16μg/μLのシークエンス用鋳型DNAを加えて混合し、100μLのミネラルオイルを重層後、96℃30秒、55℃15秒および60℃ 4分を1サイクルとするPCR増幅反応を25サイクル行い、4℃で5分間保温した。反応後、80μLの滅菌精製水を加えて攪拌し、遠心分離後、その水層を3回のフェノール・クロロホルム抽出を行った。100μLの水層にl0mLの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)と300μLのエタノールを加えて攪拌後、室温、14000rpmにて15分間の遠心を行い、沈殿を回収した。沈殿を75%エタノールで洗浄後、真空下に2分間静置して乾燥させ、シークエンス用サンプルとした。シークエンスサンプルは、4μLの10mMのEDTAを含むホルムアミドに溶解して90℃、2分間で変性後、氷中で冷却してシークエンスに供した。
得られた5個のクローンの内1個の配列にPCRに用いたプローブと配列の相同性があり、さらに他の微生物、例えば、Neisseria gonorrhoeaeのリボゾームL7/L12蛋白質の遺伝子配列と非常に類似したDNA配列が見いだされた。その構造L遺伝子部分の全塩基配列とアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1と2に示すものであった。この遺伝子断片は、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のリボゾームL7/L12蛋白質の遺伝子をコードするものである。
[同蛋白質の大腸菌での大量発現、精製]
発現ベクターを組み込んだ大腸菌をLB培地中で50mL 37℃1晩培養した。2倍濃度のTY培地500mLを37℃で1時間温めておいた。1晩培養した大腸菌液50mLを500mLの前述の培地に入れた。1時間後、100mMイソプロピルβ−D(−)−チオガラクトピラノシド(IPTG)550μL入れ、4時間培養後回収し、250mLずつ遠心チューブに入れて7000rpm、10分間遠心した。上澄みを棄て、50mMトリス塩酸(Tris−HCl)pH7.4、25%スクロース(Sucrose)を含むLysisバッファー25mLずつに溶解した。さらに、10%ノニデットP−40(NP−40)1.25mL、1M MgCl125μLを加えてプラスティックチューブに移した。1分間×5回氷冷中でsonicationを実施し、12000rpm、115分間遠心後、上澄み液を回収した。
次に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でコンディショニングしたグルタチオンアガロースカラムに、上澄み液を吸着させた。
次に、20mM TrisバッファーpH7.4、4.2mM MgCl、1mMジチオスレイトール(DTT)を含む洗浄液でカラムを2ベッドボリューム分洗浄した。その後、5mMのグルタチオンを含む50mM TrisバッファーpH9.6で溶出し、分画したフラクション中の蛋白質含有量を色素結合法(ブラッドフォード法、Biorad社)で検出し、メインフラクションを取得した。得られた精製GSTフュージョン・リボゾームL7/L12蛋白質の純度を電気泳動法により確認したところ、約75%であり免疫原として充分な純度を確保できた。
[同蛋白質に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの取得]
得られた精製GSTフュージョン・リボゾームL7/L12蛋白質抗原100μgを200μLのPBSに溶解後、フロイントのコンプリートアジュバントを200μL加え、混合、エマルジョン化した後、200μLをマウスの腹腔内に注射した。さらに、2週間後、4週間後、6週間後に同様のエマルジョン抗原を腹腔内に注射し、さらに10週間後、14週間後に2倍濃度の抗原エマルジョン液を腹腔内注射し、最終免疫から3日後に脾臓を取り出し、細胞融合に供した。
無菌的に取り出したマウスの脾細胞10個に対し骨髄腫細胞2×10個をガラスチューブに採り、良く混合した後、1500rpmで5分間遠心し、上澄みを棄て、その後、細胞をよく混合した。細胞融合に使用した骨髄腫細胞としては、NS−1系の細胞株を用い10%ウシ胎児血清(FCS)を含むRPMI1640培地で培養し、細胞融合の2週間前から0.13mMのアザグアニン、0.5μg/mLのMC−210、10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養後、さらに10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養したものを用いた。混合した細胞サンプルに37℃に保温した50mLのRPMI1640培地を30ml加え、1500rpmで遠心し、上澄みを除去後、37℃に保温した50%ポリエチレングリコールを1mL加え、激しく攪拌しながら2分間処理後、37℃に保温した10mLのRPMI1640培地を加え、液を滅菌ピペットで吸引、排出しながら、5分間激しく攪拌混合した。1000rpmで5分間遠心、上澄み除去後、さらに30mlのHAT培地を加え細胞濃度が5×10個/mLになるように調整し、攪拌均一化後、96穴プレート型培養プレートに0.1mLずつ分注し、7%CO条件下、37℃で培養し、1日目、1週間日、2週間目にHAT培地を0.1mLずつ加えた。
次に、所望の抗体を生産している細胞をスクリーニングするためにELISA法による評価を実施した。0.05%のアジ化ソーダ含むPBS中に溶解したインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のGSTフュージョン・リボゾームL7/L12蛋白質とGST蛋白質をそれぞれ10μg/mL濃度で希釈した液を、100μLずつ96穴プレートの別々に分注し、4℃で1晩吸着させた。上澄み除去後、1%牛血清アルブミン溶液(PBS中)200μLを添加し、室温で1時間反応させてブロッキングした。上澄み除去後、洗浄液(Tween20(登録商標)0.02%,PBS)で洗浄し、その上に融合細胞の培養液100μLを加え、室温で2時間反応後、上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄した。これに、500g/mLのペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体液を100μL加え室温、1時間反応を実施し、上澄みを除去し、さらに洗浄液で洗浄した後、TMB溶液(KPL社)を100μLずつ加え室温で20分反応、発色後、1Nの硫酸を100μL添加して反応を停止し、450nmの吸光を測定した結果、GSTフュージョン・リボゾームL7/L12蛋白質にのみ反応し、GST蛋白質には反応しない陽性ウェルが見いだされ、リボゾームL7/L12蛋白質に対する抗体が含まれていることが判明した。
そこで、陽性ウェル中の細胞をそれぞれ回収し24穴プラスティックプレート中、HAT培地で培養した。培養した融合培地を、細胞数が約20個/mLになるようにHT培地で希釈し、50μLを、HT培地に懸濁した6週齢のマウス胸腺細胞10個と96穴培養プレート中で混合後、7%CO条件下、37℃で2週間培養した。培養上澄み中の抗体活性を、前述のELISA法にて同様に検定し、リボゾームL7/L12蛋白質との反応陽性の細胞を回収した。
さらに、同様の希釈検定、クローニング操作を繰り返し、ハイブリドーマHIAYB-5〜HIAYB-10の6株のクローンを取得した。
[同ハイブリドーマ用いた抗体生産]
特許文献1の実施例4に記載の方法に従い、上記のように取得した陽性ハイブリドーマHIAYB-5〜HIAYB-10の6株を用いて、精製したモノクローナル抗体をそれぞれ生産し回収した。
具体的にはRPMI1640培地(10%FCS入り)を用いて継代培養した細胞を予め2週間前に0.5mLのプリスタンを腹腔内に注射したBalb/Cマウスの腹腔内に5×10個(PBS中)注射し、3週間後腹水を回収し、その遠心上澄みを取得した。取得した抗体含有液を、Protein Aカラム(5mLベッド、Pharmacia社)に吸着させ、PBSで3ベッドボリューム洗浄し、pH3のクエン酸バッファーで溶出し、抗体フラクションを回収して各ハイブリドーマの生産するモノクローナル抗体を得た。
[インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のリボゾームL7/L12抗原と反応するが、他の細菌由来の対応抗原とは反応しない抗体の組み合わせの選定(ELISAを用いた抗体特異性評価による選定)]
得られた6株のモノクローナル抗体を、それぞれ、サンドイッチ系ELISAにより、1次抗体、2次抗体として組み合わせて、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のリボゾームL7/L12抗原との反応性について評価した。ELISA測定の2次抗体として、対象となるモノクローナル抗体をパーオキシダーゼ酵素で標識したものを使用した。酵素標識にはホースラディッシュパーオキシダーゼ(SigmaグレードV)を用い、結合には試薬S-アセチルチオ酢酸N-ヒドロキシスクシンイミドを使用し、Analytical Bio-chemistry132(1983)、68-73で述べられている方法に従って行った。
具体的には1次抗体として評価する抗体の10μg/mLのPBS溶液100μlを、96穴ELISAプレート(Nunc社Maxsorp ELISAプレート)に分注し4℃で一晩吸着させた。上澄み除去後、1%牛血清アルブミン溶液(PBS中)200μL添加し、室温で1時間反応させてブロッキングした。上澄み除去後、洗浄液(0.02%Tween20(登録商標)、PBS)で数回洗浄し、インフルエンザ菌(ATCC9334株)培養液(約1×109 /mL)を0.5%TritonX-100(登録商標)、PBSにて100倍に希釈したもの(最終濃度)と0.5%TritonX-100(登録商標)、PBS(陰性コントロール)を100μL添加し、室温にて1時間反応させた。さらに上澄み除去後、前記した方法によりパーオキシダーゼ標識した各種インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)リボゾームL7/L12蛋白質抗体を2次抗体として、0.02%Tween20(登録商標)、PBSにて最終濃度1μg/mLになるように希釈したものをそれぞれ100μL添加し、室温にて1時間反応させた。上澄み除去後、さらに洗浄液で数回洗浄した後、TMB溶液(KPL社製)を100μLずつ加え、室温10分間反応させた後、1mol/Lの塩酸を100μL添加し、反応を停止した後、450nmの吸光度を測定し、陰性コントロールシグナルとの差により、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)が検出可能な、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)リボゾームL7/L12蛋白質抗体の組み合わせについて評価した。また、併せてインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)以外の主な細菌(Neisseria meningitides ATCC13090株、Neiserria lactamica ATCC30011株、Neisseria moucoa ATCC35611株、Neisseria sicca ATCC9913株、Branhamelle catarrharis ATCC25240株、Neiseria gonorroeae ATCC9793株、Escherichia coli ATCC25922株、Klebsiella pneumoniae ATCC13883株)についても、同様の条件にて検出試験を実施した。その結果、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)を特異的に検出可能なインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)リボゾームL7/L12蛋白質抗体の1次抗体HIAYB-6(ハイブリドーマHIAYB-6株の産生する抗体)を選定し、上記1次抗体に組み合わせる相手である2次抗体のモノクローナル抗体の組み合わせとして、2次抗体HIAYB-8(ハイブリドーマHIAYB-8株の産生する抗体)とを選定した。
[実施例2]
特許文献1の実施例5に記載された方法に従い、同文献に記載のハイブリドーマAMSP-1〜4とは別に、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質に対する抗体を産生するSPOKM-5〜SPOKM-10の6株のハイブリドーマを新たに取得した。
[肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12遺伝子のクローニング]
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae) IID555株(東京大学医科学研究所より分譲、購入)を血液寒天培地上に適当量植菌した後、インキュベーター中、37℃で48時間培養する。生育したコロニーを最終的に5×10CFU/mL前後になるようにTE Bufferに懸濁する。内約1.5mLを微量遠心チューブに移し取り10000rpmで2分間遠心し、上澄みを棄てた。沈殿部分を567μLのTE Bufferに再懸濁した。さらに30μLの10%SDSと3μLの20mg/mL Proteinase K溶液を加えて良く混合し、37℃で1時間インキュベートした。次に10%のセチルトリメチルアンモニウムブロマイド/0.7M NaCl溶液を80μL追添し、よく混合した後65℃で10分間インキュベートした。次に、体積比24/1のクロロホルム−イソアミルアルコール混合液を700μL加え、よく攪拌した。この溶液を微量遠心機で12000rpm、5分間(4℃コントロール下)遠心処理した後、水層画分を新しい微量遠心管に移した。そこに0.6倍量のイソプロパノールを加えチューブをよく振ってDNAの沈殿を形成させた。白いDNA沈殿をガラス棒ですくって1mLの70%エタノール(−20℃冷却したもの)が入った別の微量遠心管に移した。
次に10000rpmで5分間遠心処理し、上澄みを静かに除去した後、さらに1mLの70%エタノールを加えて再び5分間遠心した。再び上澄みを除去した後、沈殿を100μLのTE bufferに溶解しDNA溶液を得た。このゲノムDNA溶液の濃度を、Molecular Cloning, A laboratory manual, 1989, eds. Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T., Cold Spring Harbor Laboratory PressのE5, Spectrophotometeric determination of the Amount of the DNA or RNAに従って定量した。
このゲノムDNAのうち10ngを用いてPCRを行った。PCRはTaqポリメラーゼ(宝酒造社製、コードROOlA)を用いた。酵素に添付のバッファーを5μL、酵素に添付のdNTP mixture 4μlと配列番号7に示す合成オリゴヌクレオチドCと配列番号8に示す合成オリゴヌクレオチドDを、それぞれ、200pmolを加え、最終容量50μLとした。
この混合物を、TaKaRa PCR Thermal Cycler 480を用いて、95℃ 1分、50℃ 2分、72℃ 3分を5サイクル行った後、95℃ 1分、60℃ 2分、72℃ 3分を25サイクル行った。このPCR産物の一部を1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行い、エチジウムブロマイド(日本ジーン社製)にて染色後、紫外線下で観察し、約400bpのcDNAが増幅されていることを確認した。さらに制限酵素BamHIとXhoIで切断処理後、1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行いエチジウムブロマイド染色後約370bpのバンドをゲルから切り出してSuprec01(宝酒造社製)で精製後、市販のベクターであるpGEX−6P−1(Pharmacia社製)に組み込んだ。同ベクターは目的の遺伝子断片を適当な制限酵素サイトに組み込むことによりGST蛋白質とのフュージョン蛋白質を発現しうる目的分子の発現ベクターとして機能することができる。具体的にはベクターpGEX−6P−1と先のDNAとをそのモル比が1:5となるように混ぜ合わせて、T4 DNAリガーゼ(Invitrogen社製)にてベクターにDNAを組み込んだ。DNAが組み込まれたベクターpGEX−6P−1を大腸菌One Shot Competent Cells(Invitrogen社製)に遺伝子導入し、アンピシリン(Sigma社製)を50μg/mL含むL−Broth(宝酒造社製)半固型培地のプレートに蒔き、12時間程度37℃に放置し、現れてきたコロニーを無作為選択し、同濃度のアンピシリンを含むL−Broth液体培地2mlに植え付け、8時間程度37℃で振とり培養し、菌体を回収し、ウィザードミニプレップ(Promega社製)を用いて添付の説明書に従ってプラスミドを分離し、このプラスミドを制限酵素BamHI/XhoIにて消化して、約370bpのDNAが切り出されてくることで該PCR産物が組み込まれていることを確認し、確認されたクローンについて、組み込まれているDNAの塩基配列決定を行った。
挿入DNA断片の塩基配列の決定は、Applied Biosystems社製の蛍光シークエンサーを用いて実施した。シークエンスサンプルの調製はPRISM, Ready Reaction Dye Terminator Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems社製)を用いて行った。0.5mL容のマイクロチューブに9.5μLの反応ストック液、4.0μLの0.8pmol/μLのT7プロモータープライマー(GIBCO BRL社製)及び6.5μLの0.16μg/μLのシークエンス用鋳型DNAを加えて混合し、100μLのミネラルオイルを重層後、96℃30秒、55℃15秒、60℃ 4分を1サイクルとするPCR増幅反応を25サイクル行い、4℃で5分間保温した。反応後、80μlの滅菌精製水を加えて攪拌し、遠心分離後、その水層を3回のフェノール・クロロホルム抽出を行った。100μLの水層に10μLの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)と300μLのエタノールを加えて攪拌後、室温、14,000rpmにて15分間の遠心を行い、沈殿を回収した。沈殿を75%エタノールで洗浄後、真空下に2分間静置して乾燥させ、シークエンス用サンプルとした。シークエンスサンプルは、4μLの10mMのEDTAを含むホルムアミドに溶解して90℃、2分間で変性後、氷中で冷却してシークエンスに供した。
得られた7個のクローンの内1個の配列にPCRに用いたプローブと配列の相同性がありさらに他の微生物、例えば、Neisseria gonorrhoeaeのリボゾームL7/L12遺伝子配列と非常に類似したDNA配列が見出された。その構造遺伝子部分の全塩基配列とアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号3と4であった。この遺伝子断片は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質の遺伝子をコードするものである。
[同蛋白質の大腸菌での大量発現、精製]
発現ベクターを組み込んだ大腸菌を2倍濃度のYT培地50mL中 37℃で1晩培養した。2倍濃度のYT培地450mLを37℃で1時間温めておいた。1晩培養した大腸菌培養液50mLを450mLの前述の培地に入れた。37℃で1時間培養後、500mMのIPTGを100μL入れ、25℃ 4時間培養後回収し、250mLずつ遠心チューブにいれて5000rpm、20分速心した。上澄みを棄てて50mM Tris−HCl pH7.4、25% Sucroseを含むLysisバッファー25mLずつに溶解した。
さらに10% NP−40 1.25mL、1M MgCl 125μLを加えてプラスティックチューブに移した。1分間×5回水冷中でsonicationを実施し、12000rpm、15分間遠心後上澄みを回収した。
次にPBSでコンディショニングしたグルタチオンセファロース(Pharmacia社製)カラムに前記の上澄み液を吸着させた。次にPBSでカラムを3ベットボリューム分洗浄した。その後10mMのグルタチオンを含む50mMTris−HC1 8.0で溶出し、分画したフラクション中の蛋白質含有量を色素結合法(ブラッドフォード法、BioRad社)で検出し、メインフラクションを取得した。メインフラクションを3L PBSに対して3回透析を行った。
得られたGSTフュージョン・リボゾームL7/L12蛋白質の1mg/mL溶液10mLに、500mM Tris−HCI pH7.0、1.5M NaCl、10mM EDTA、10mM DTTを含むCleavageバッファー1mLを加え、さらに2u/μLのPreScission Protease (Pharmacia社製)を100μL添加して4℃で反応させることにより、GST部分をリボゾームL7/L12蛋白質部分から切り離した。
次にPBSでコンディショニングしたグルタチオンセファロースカラムに反応液を通し、通過液を回収し、さらにPBSを1ベッドボリューム流し、これも回収した。取得した精製リボゾームL7/L12蛋白質の純度は電気泳動法により確認したところ約90%であり免疫源として充分な純度を確保できた。
[同蛋白質に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの取得]
まず、マウスの免疫については肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質抗原100μgを200μLのPBSに溶解後フロイントのコンプリートアジュバントを200μL加え混合、エマルジョン化した後、200μLを腹腔内に注射した。さらに2週間後、4週間後、6週間後に同様のエマルジョン抗原を腹腔内に注射し、さらに10週間後、14週間後に2倍濃度の抗原エマルジョン液を腹腔内注射し最終免疫から3日後に脾臓を取り出し、細胞融合に供した。
無菌的に取り出したマウスの脾細胞10個に対し骨髄腫細胞2×10個をガラスチューブに取り良く混合した後1500rpmで5分間遠心し上澄みを棄て、その後細胞をよく混合した。
細胞融合に使用した骨髄腫細胞はNS−1系の細胞株を用い10%FCSを含むRPMI1640培地で培養し、細胞融合の2週間前から0.13mMのアザグアニン、0.5μg/mLのMC−210、10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養後、さらに10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養したものを用いた。混合した細胞サンプルに37℃に保温した50mLのRPMI1640培地を30mL加え1500rpmで遠心、上澄み除去後37℃に保温した50%ポリエチレングリコールを1mL加え、激しく攪拌しながら2分間処理後、37℃に保温した10mLのRPMI1640培地を加え、液を滅菌ピペットで吸引、排出しながら約5分間激しく攪拌混合した。
1000rpmで5分間遠心、上澄み除去後さらに30mLのHAT培地を加え細胞濃度が5×10個/mLになるように調整し攪拌均一化後、96穴プレート型培養プレートに0.1mLずつ分注し7%CO条件下、37℃で培養し、1日目、1週間目、2週間目にHAT培地を0.1mLずつ加えた。
次に目的の抗体を生産している細胞をスクリーニングするためにELISA法による評価を実施した。0.05%のアジ化ソーダ含むPBS中に溶解した肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質を10μg/mL濃度に希釈した液を100μLずつ96穴プレートの別々に分注し4℃で1晩吸着させた。上澄み除去後、1%牛血清アルブミン溶液(PBS中)200μL添加し、室温で1時間反応しブロッキングした。上澄み除去後洗浄液(Tween20(登録商標) 0.02%、PBS)で洗浄し、その上に融合細胞の培養液100μLを加え室温で2時間反応後上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄後、50ng/mLのペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体液を100μL加え室温、1時間反応を実施し、上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄した後、TMB溶液(KPL社)を100μLずつ加え室温で20分反応、発色後1Nの硫酸を100μL添加して反応を停止し、450nmの吸光を測定した。
この結果、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質に反応する陽性ウェルが見いだされ、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質に対する抗体が含まれていることが判明した。
そこで陽性ウェル中の細胞をそれぞれ回収し24穴プラスティックプレート中、HAT培地で培養した。培養した融合培地を細胞数が約20個/mLになるようにHT培地で希釈し50μLを、HT培地に懸濁した6週齢のマウス胸腺細胞10個と96穴培養プレート中で混合後、7%CO条件下、37℃で2週間培養した。培養上澄み中の抗体活性を前述のELISA法にて同様に検定し、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質との反応陽性の細胞を回収した。
さらに同様の希釈検定、クローニング操作を繰り返し、ハイブリドーマSPOKM−5〜SPOKM−10の6株のクローンを取得した。
[同ハイブリドーマ用いた抗体生産]
特許文献2の実施例2に記載の方法に従い、こうして取得した陽性ハイブリドーマSPOKM-5〜SPOKM-10の6株を用いて、精製したモノクローナル抗体をそれぞれ生産し回収した。
具体的には各ハイブリドーマを種細胞増殖用培地としてウシ胎児血清(FBS)を10%添加したTIL Media I培地(IBL社製)5mLで1〜2×105個/mL程度となるように希釈し、5%CO2、37℃、25cm2培養フラスコ中で2-3日培養した。5〜10×105個/mL程度に増殖した細胞を、さらに75cm2培養フラスコ中にて同様に増殖させた後、1〜2×105個/mL程度となるように同様のFBS入り培地で希釈しローラーボトル中へ250mLに継代した。5%CO2、37℃で2-3日培養した後、さらに250mLのFBS入り清培地を追加して2〜3日間培養を継続した。5〜10×105個/mL程度にまで増殖させた後、すべての細胞を回収し、同量の無血清培養用培地(ASF0104N 味の素社)に置換した。4〜7日間培養したのち培養液を回収して2500rpm、10分間の遠心により目的とする抗体を含む培養上清を取得した。培養上清は、ポアサイズ0.45μmで無菌濾過し、0.1%のアジ化ソーダ添加後4℃で保存した。取得した培養上清を0.05mol/Lリン酸緩衝液(pH7)で5倍希釈後Hitrap-proteinGカラム(アマシャム社製、5mL)に吸着させ、リン酸緩衝液で5ベッドボリューム分洗浄後pH2.5の0.1Mグリシン-塩酸緩衝液で溶出し、フラクションを回収して各ハイブリドーマの産生するモノクローナル抗体を得た。
[肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12抗原と反応するが、他の細菌由来の対応抗原とは反応しない抗体の組み合わせの選定(ELISAを用いた抗体特異性評価による選定]
得られた6株のモノクローナル抗体を、それぞれ、サンドイッチ型ELISAにより、1次抗体、2次抗体として組み合わせて、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12抗原との反応性について評価した。ELISA測定の2次抗体として、対象となるモノクローナル抗体をパーオキシダーゼ酵素で標識したものを使用した。酵素標識にはホースラディッシュパーオキシダーゼ(SigmaグレードV)を用い、結合には試薬S-アセチルチオ酢酸N-ヒドロキシスクシンイミドを使用し、Analytical Bio-chemistry132(1983)、68-73で述べられている方法に従って行った。
具体的には1次抗体として評価する抗体の10μg/mLのPBS溶液100μLを、96穴ELISAプレート(Nunc社Maxsorp(登録商標) ELISAプレート)に分注し4℃で一晩吸着させた。
上澄み除去後、1%牛血清アルブミン溶液(PBS中)200μL添加し、室温で1時間反応させてブロッキングした。上澄み除去後、洗浄液(0.02%Tween20(登録商標)、PBS)で数回洗浄し、インフルエンザ菌(ATCC9334株)培養液(約1×109 /mL)を0.5%TritonX-100(登録商標)、PBSにて100倍に希釈したもの(最終濃度0.5%TritonX-100(登録商標)、PBS(陰性コントロール))を100μl添加し、室温にて1時間反応させた。さらに上澄み除去後、前記した方法によりパーオキシダーゼ標識した各種肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)リボゾームL7/L12蛋白質抗体を2次抗体として、0.02%Tween20(登録商標)、PBSにて最終濃度1μg/mLになるように希釈したものをそれぞれ100μL添加し、室温にて1時間反応させた。上澄み除去後、さらに洗浄液で数回洗浄した後、TMB溶液(KPL社製)を100μLずつ加え、室温10分間反応させた後、1mol/Lの塩酸を100μL添加し、反応を停止した後、450nmの吸光度を測定し、陰性コントロールシグナルとの差により、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)が検出可能な、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)リボゾームL7/L12蛋白質抗体の組み合わせについて評価した。また、併せて肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)以外の主な細菌(Escherichia coliEnterrococcus faecalisHaemophilis influenzaeNeiserria lactamicaNeisseria meningitidisNeiseria gonorroeaeKlebsiella pneumoniaePseudomonus aeruginosaStreptococcus agalactiaeStreptococcus aureusMycoplasma pneunomiaeChlamysia pneumoniae)についても、同様の条件にて検出試験を実施した。その結果、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を特異的に検出可能な肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)リボゾームL7/L12蛋白質抗体の1次抗体SPOKM-6(ハイブリドーマSPOKM-6株の産生する抗体)を選定し、上記1次抗体に組み合わせる相手である2次抗体のモノクローナル抗体として、SPOKM-9(ハイブリドーマSPOKM-9株の産生する抗体)を選定した。
[実施例3]
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)を特異的に検出可能なインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)リボゾームL7/L12蛋白質抗体の1次抗体、2次抗体のモノクローナル抗体の組み合わせとして、実施例1で得た、1次抗体HIAYB-6(ハイブリドーマHIAYB-6株の産生する抗体)と2次抗体HIAYB-8(ハイブリドーマHIAYB-8株の産生する抗体)との組み合わせを、また、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を特異的に検出可能な肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)リボゾームL7/L12蛋白質抗体の1次抗体、2次抗体のモノクローナル抗体の組み合わせとして、実施例2で得た1次抗体SPOKM-6(ハイブリドーマSPOKM-6株の産生する抗体)と2次抗体SPOKM-9(ハイブリドーマSPOKM-9株の産生する抗体)の組み合わせを用いて、ELISAにより、検体中の対応抗原濃度を測定した。
[ELISA測定における検量線作成]
以下の手順に従って、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)リボゾームL7/L12蛋白質と肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)リボゾームL7/L12蛋白質のそれぞれについて、ELISA検量線を作成した。
96穴プレート(Thermo Fisher社製 Nunc MaxiSorp ELISAプレート)に、対応の1次抗体 10μL/mL PBS溶液を50μL添加し、4℃で終夜静置した。次いで、上澄みを除去後、数回0.02%Tween20(登録商標)PBS溶液で洗浄した。次いで、1% BSA PBS溶液を200μL添加後、4℃で終夜静置した。上澄みを除去後、数回0.02%Tween20(登録商標)PBS溶液で洗浄した。次いで、予め作製したインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)リボゾームL7/L12蛋白質(配列番号2に示すアミノ酸配列を有する)については、0.4ng/mL、0.2ng/mL、0.1ng/mL、0.05ng/mL、0.025ng/mL、0.0125ng/mL、0.00625ng/mL、0.003125ng/mL、0ng/mLとなる濃度にPBS溶液で希釈した抗原液を作製した。また、予め作製した肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)リボゾームL7/L12蛋白質(配列番号4に示すアミノ酸配列を有する)については、16ng/mL、8ng/mL、4ng/mL、2ng/mL、1ng/mL、0.5ng/mL、0.25ng/mL、0.125ng/mL、0ng/mLとなる濃度にPBS溶液で希釈した抗原液を作製した。各抗原液を50μL添加後、37℃で2時間静置した。上澄み除去後、数回0.02%Tween20(登録商標)PBS溶液で洗浄した。次いで、ホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP、SigmaグレードV)を用い、結合には試薬S−アセチルチオ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドを使用し、AnalyticalBio-chemistry132(1983), 68-73に記載された方法に従い対応の2次抗体をHRP標識した。HRP-2次抗体を50μL添加後、室温で1時間静置した。上澄み除去後、数回0.02%Tween20(登録商標)PBS溶液で洗浄した。次いで、TMB溶液(KPL社製TMB 2-Component Microwell Peroxidase Substrate Kit)を100μL添加後、室温で10分静置した。1mol/L HClを100μL添加し、反応停止させた。次いで、分光光度計(島津製作所製 SHIMAZU UV-1600)を用いて450nmの吸光度を測定した。
[検体中の対応抗原濃度の測定]
以下の手順に従って、検体中のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)リボゾームL7/L12蛋白質と肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)リボゾームL7/L12蛋白質の濃度を、上記のように作成したELISA検量線を用いて測定した。
96穴プレート(Thermo Fisher社製 Nunc MaxiSorp ELISAプレート)に、対応の1次抗体 10μL/mL PBS溶液を50μL添加し、4℃で終夜静置した。上澄み除去後、数回0.02%Tween20(登録商標)PBS溶液で洗浄した。次いで、1% BSA PBS溶液を200μL添加後、4℃で終夜静置した。上澄み除去後、数回0.02%Tween20(登録商標)PBS溶液で洗浄した。次いで、検体ぬぐい綿棒(平和メディク社製滅菌綿棒F-R)から500μLの1%Triton-X(登録商標)生理食塩水で対応のリボゾームL7/L12蛋白質を溶出した抗原液を作製した。抗原液を50μL添加後、37℃で2時間静置した。上澄み除去後、数回0.02%Tween20(登録商標)PBS溶液で洗浄した。次いで、ホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP、SigmaグレードV)を用い、結合には試薬S−アセチルチオ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドを使用し、AnalyticalBio-chemistry132(1983), 68-73に記載された方法に従い、対応の2次抗体をHRP標識した。HRP-2次抗体を50μL添加後、室温で1時間静置した。上澄み除去後、数回0.02%Tween20(登録商標)PBS溶液で洗浄した。次いで、TMB溶液(KPL社製TMB 2-Component Microwell Peroxidase Substrate Kit)を100μL添加後、室温で10分静置した。1mol/L HClを100μL添加し、反応停止させた。次いで、分光光度計(島津製作所製 SHIMAZU UV-1600)で450nmの吸光度を測定した。
[実施例4]
[検体の培養]
検体中のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)と肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を以下の培養により定性的に同定した。
[インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)]
チョコレート寒天培地上に、耳(耳漏、貯留液)及び鼻腔ぬぐい液を付着させた綿棒をぬぐい、37℃で24時間培養した。
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)であるか否かを生化学的性状に基づいて確認し、同定した。
生化学的性状に基づいて同定がつかない場合には、ブルカー・ジャパンのMALDI-TOFを用いて質量分析法により同定した。
[肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)]
血液寒天培地上に、耳(耳漏、貯留液)及び鼻腔ぬぐい液を付着させた綿棒をぬぐい、37℃で24時間培養した。
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)であるか否かを生化学的性状に基づき確認し、同定した。
生化学的性状に基づき同定がつかない場合には、ブルカー・ジャパンのMALDI-TOFを用いて質量分析法による同定した。
[耳鼻科からの臨床検体(耳漏液、鼻腔ぬぐい液)中のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)と肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の培養陽性の確認と、対応のリボゾームL7/L12蛋白質の濃度測定]
[インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)]
実施例4に従って、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の培養陽性を確認し、副鼻腔炎の起炎細菌として確定し、実施例3に従って、検体中のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のリボゾームL7/L12蛋白質の濃度(綿棒当たりの質量)をELISAにより測定した。
検体データを以下の表に示す。
Figure 2020111272
検体番号1〜7では、インフルエンザ菌が中耳貯留液又は耳漏から培養陽性として検出されているため、インフルエンザ菌が中耳炎の起炎菌として確定できる。中耳炎の起炎菌は副鼻腔炎の起炎菌が中耳に移行して発症することが広く知られている。したがって、検体番号1〜7の鼻腔ぬぐい液でもインフルエンザ菌が培養陽性となっているため、同サンプルの鼻腔ぬぐい液中のインフルエンザ菌は中耳炎と同様に副鼻腔炎の起炎菌のインフルエンザ菌であると特定可能である。このとき検体番号1〜7の鼻腔ぬぐい液中のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のリボゾームL7/L12蛋白質の濃度(綿棒当たりの質量)は0.31〜29.75ng/swabであった。また、3人の別な被験者から検体ぬぐい綿棒(平和メディク社製滅菌綿棒F-R)を鼻腔内に挿入し、鼻甲介を数回擦るようにして粘膜表皮を採取したところ、綿棒に付着した検体量は0.008mg〜0.081mgであった。つまり、綿棒に付着する検体量は0.25〜2.531倍まで変動する可能性があることになる。しかしながら、最小値である0.31ng/swab以上であれば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)が起炎菌である疑いがある。上記カットオフ値を用いれば、検出されたインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の菌量がカットオフ値未満であればインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)は起炎菌ではなく(すなわち、除外することができ)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の菌量がカットオフ値以上の場合、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)が起炎菌である疑いがあると判定(すなわち、確定)することができる。かかるカットオフ値0.31ng/swabは、鼻腔混合感染である検体番号8〜10のHIのL7/L12換算濃度である0.75〜8.60ng/swab、陰性である検体番号17、18、20に照らして、臨床的有用性があると考えられる。
尚、検体番号10のインフルエンザ菌は耳のL7/L12換算値が0.24ng/swabであるが、耳(中耳貯留液又は耳漏)は、細菌が常在する鼻腔に対して常在菌の数が圧倒的に少ないため、カットオフ値より小さい換算値であっても培養陽性を示したものと推察される。その意味では、上記カットオフ値は、本発明における常在菌の多い鼻腔より採取した検体のカットオフ値としての信頼性が高いと言え、特に単独感染においての信頼性が非常に高いと言える。
[肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)]
実施例4に従って、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の培養陽性を確認し、副鼻腔炎の起炎菌として確定し、実施例3に従って、検体中の肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質の濃度(綿棒当たりの質量)をELISAにより測定した。
検体データを以下の表に示す。
Figure 2020111272
検体番号11〜14では、中耳貯留液又は耳漏から肺炎球菌が培養陽性として検出されているため、肺炎球菌が中耳炎の起炎菌として確定できる。中耳炎の起炎菌は副鼻腔炎の起炎菌が中耳に移行して発症することが広く知られている。したがって、検体番号11〜14の鼻腔ぬぐい液でも肺炎球菌が培養陽性となっているため、同サンプルの鼻腔ぬぐい液中の肺炎球菌は中耳炎と同様に副鼻腔炎の起炎菌の肺炎球菌であると特定可能である。
このとき検体番号11〜14の鼻腔ぬぐい液中の肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質の濃度(綿棒当たりの質量)は0.23〜2.12ng/swabであった。また、3人の別な被験者から検体ぬぐい綿棒(平和メディク社製滅菌綿棒F-R)を鼻腔内に挿入し、鼻甲介を数回擦るようにして粘膜表皮を採取したところ、綿棒に付着した検体量は0.008mg〜0.081mgであった。つまり、綿棒に付着する検体量は0.25〜2.531倍まで変動する可能性があることになる。しかしながら、最小値である0.23ng/swab以上の範囲では、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)が起炎菌である疑いがある。そこで、0.23ng/swabを第一のカットオフ値とした。上記カットオフ値を用いれば、検出された肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の菌量がカットオフ値未満であれば肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は起炎菌ではなく(すなわち、除外することができ)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の菌量がカットオフ値以上の場合、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)が起炎菌である疑いがあると判定(すなわち、確定)することができる。かかるカットオフ値は、鼻腔混合感染である検体番号15のSPのL7/L12換算濃度である0.17ng/swabに照らして、また、陰性である検体番号16、19に照らして、臨床的有用性があると考えられる。より臨床的有用性が高いカットオフ値としては0.51ng/swabである。
尚、検体番号11、12の肺炎球菌は耳のL7/L12換算値が0.12ng/swab、0.06ng/swabであるが、これはインフルエンザ菌と同様に、耳(中耳貯留液又は耳漏)は、細菌が常在する鼻腔に対して常在菌の数が圧倒的に少ないため、カットオフ値より少ない換算値であっても培養陽性を示したものと推察される。また、検体番号15の肺炎球菌は鼻腔のL7/L12換算値が0.17ng/swabであるが、これは鼻腔混合感染の為、上記カットオフ値より小さくても培養陽性となったと推察される。その意味では、上記カットオフ値は、本発明における常在菌の多い鼻腔より採取した検体の単独感染のカットオフ値としての信頼性が非常に高いと言える。
本発明の方法によれば、綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液サンプル中の、該急性副鼻腔炎の起炎菌であるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質の該綿棒当たりの重量を、該起炎菌のリボゾームL7/L12蛋白質に特異的に結合し、かつ、該起炎菌を他の細菌と種又は属で識別することができる抗体を用いて、定量的に測定することができ、得られた測定値に基づきカットオフ値を設定することにより、細菌感染の初期においても、高い精度で感染の程度を判定することが可能となる。それゆえ、本発明に係る測定方法は、急性副鼻腔炎の細菌感染否定検査となり得、細菌感染による急性副鼻腔炎の起炎菌の迅速検出のために好適に利用可能である。

Claims (6)

  1. 細菌感染による急性副鼻腔炎の起炎菌であるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)又は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の検出方法であって、
    被検体より採取した綿棒に付着した鼻腔ぬぐい液サンプル中の、該起炎菌のリボゾームL7/L12蛋白質の該綿棒当たりの換算質量を、該起炎菌のリボゾームL7/L12蛋白質に特異的に結合し、かつ、該起炎菌を他の細菌と種又は属で識別することができる抗体を用いて、測定し、得られた測定値に基づき起炎菌検出の有無を判断するための判断基準値(カットオフ値)を決定する工程を含む、上記検出方法。
  2. 前記換算質量の測定を、ELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)により行う、請求項1に記載の検出方法。
  3. インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のリボゾームL7/L12蛋白質は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有し、かつ、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質は、配列番号4に示すアミノ酸配列を有する、請求項1又は2に記載の検出方法。
  4. インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のリボゾームL7/L12蛋白質は、配列番号1に示す核酸配列によりコードされ、かつ、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のリボゾームL7/L12蛋白質は、配列番号2に示す核酸配列によりコードされる、請求項3に記載の検出方法。
  5. インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)について、カットオフ値を0.31ng/綿棒と設定し、また、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)についてカットオフ値を0.23ng/綿棒と設定し、これらのカットオフ値を超えた場合対応の菌を起炎菌と確定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の検出方法。
  6. インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)について、カットオフ値を0.31ng/綿棒と設定し、また、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)についてカットオフ値を0.51ng/綿棒と設定し、これらのカットオフ値を超えた場合対応の菌を起炎菌と確定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の検出方法。
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