JP4884710B2 - 炭素材/導電性高分子複合材料及びこの製造方法 - Google Patents

炭素材/導電性高分子複合材料及びこの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、電気二重層キャパシタやレドックスキャパシタなどの電気化学キャパシタや充電可能な電池の電極に用いることのできる炭素材/導電性高分子複合材料及びこの製造方法に関するものである。
近年の電子機器の小型化及びモバイル化や、携帯電話などの普及により、電子機器の駆動用電源あるいは補助電源として、小型で大容量のキャパシタや二次電池の開発が活発に行われている。これらは、携帯電話やICカードなどにおけるメモリバックアップ用電源、コンピューターやデータ通信機器等における非常用電源、ソーラー発電システムにおける充電可能なエネルギー蓄積デバイス、高速充放電可能なガソリン自動車エンジンのイグナイタ用電源、電気−ガソリンハイブリッド自動車などにおける回生ブレーキのエネルギー蓄積デバイス、交換困難な道路埋め込み式点滅表示灯の電源などに応用が期待されている。
これらの用途にもっとも適していると考えられる電気二重層キャパシタは、一対の分極性電極と、両分極性電極間に介在し電気的に両者を遮断する多孔性のセパレータ、およびそれらを含浸する電解液によって構成されている。
従来は、分極性電極として活性炭または繊維状活性炭が用いられていたが、放電容量があまり高くないため、実際の使用において長時間にわたる放電を維持できない欠点があった。
これを解決するために、電解重合法により製作した導電性高分子を分極性電極として用いた電気二重層キャパシタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、活性炭等で構成された分極性電極を用いた場合に比べて放電容量を向上させている。
また、電解重合法により粉末状又は繊維状のカーボンを取り込んだ導電性高分子膜を分極性電極として用いた電気二重層キャパシタが提案されている(例えば、特許文献2参照)。これにより、導電性高分子膜だけを電極に使用した場合よりも放電容量を大きし、内部抵抗も小さくしている。
さらに、多孔性炭素系材料と化学酸化重合法により得られた導電性高分子との複合材料を分極性電極として用いた電気二重層キャパシタが提案されている(例えば、特許文献3参照)。これにより、放電容量の増加及び導電性を向上させている。
特開平6−104141号公報(段落番号0008,0016,図1等) 特開平7−201676号公報(段落番号0012,0016,0017,図1等) 特開2002−25865号公報(段落番号0009等)
しかし、特許文献1で提案されている電気二重層キャパシタでは、放電容量が不十分であり、内部抵抗に関しては満足できるレベルではない。また、電解重合法を用いているため、生産性が低く、特殊な設備を用いなければならない。しかも、電極膜厚のコントロールなど形成性にも課題があった。
また、特許文献2で提案されている電気二重層キャパシタでも、電解重合法を用いているため、上述した不具合が生じる。しかも、粉末状又は繊維状カーボンの取り込みを均一に行うことが困難となるため、電極材料の均一性及び量産の安定性に問題があった。
また、特許文献3で提案されている電気二重層キャパシタでは、複合化できる導電性高分子と多孔性炭素材料の質量比に制限があり、放電容量の増加に寄与する導電性高分子の複合化比率を大きく高めることはできない。また、多孔性炭素系材料の細孔(ミクロ孔)は、重合した導電性高分子で閉鎖されてしまうため、電気二重層形成に関与する大表面積の最重要因子である「細孔」が減少し、放電容量を大幅に増加させることができない。
本発明は、電気化学キャパシタや2次電池の電気容量及び充放電特性を向上させるために、電気化学キャパシタ等の電極として用いることのできる炭素材/導電性高分子複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明である炭素材/導電性高分子複合材料の製造方法は、一次粒子の平均粒径が1000nm以下の炭素材を、界面活性剤により水中に分散させる工程と、分散した炭素材に対して、アニオンのドープ及び脱ドープにより酸化還元反応を起こすことができる導電性高分子膜を、酸化剤を用いた重合反応によって形成する工程とを含み、界面活性剤の添加量が、100質量部の炭素材に対して0.05質量部以上で、かつ10質量部以下であり、界面活性剤がドデジルベンゼンスルホン酸塩であることを特徴とする。
ここで、一次粒子の平均粒径は100nm以下であることが好ましい。また、炭素材が100質量部に対して、導電性高分子膜が5質量部以上で、且つ200質量部以下であることが好ましい。
また、導電性高分子膜を形成するモノマーとしては、ピロール、アニリン、エチレンジオキシチオフェン及び、これらの誘導体のうち少なくとも1つを用いることができる。
ここで、界面活性剤としては、アニオン活性剤又は非イオン活性剤とアニオン活性剤との混合物を用いることができ、界面活性剤の添加量を、100質量部の炭素材に対して0.05質量部以上で、かつ10質量部以下とすることができる。
発明である炭素材/導電性高分子複合材料の製造方法によれば、界面活性剤を用いて炭素材を分散させることで、炭素材に対して均一に導電性高分子膜を形成することができる。しかも、水中にて導電性高分子膜を形成しているため、有機溶媒を使用する必要がなくなり、低コストで、かつ製造時に産出される廃棄物を低減することができる。
本発明である炭素材/導電性高分子複合材料は、例えば、一次粒子の平均粒径が1000nm以下である炭素材粉末を界面活性剤により水中に略均一に分散させた状態で、炭素材粉末に対して、アニオンのドープ及び脱ドープにより酸化還元反応を起こすことができる導電性高分子膜を、酸化剤を用いた重合反応によって形成することで得られる。
ここで、後述するように導電性高分子膜の表面積及び、炭素材粉末及び導電性高分子膜の複合化比率を高めるために、一次粒子の平均粒径を5nm以上で、且つ100nm以下に設定することがより好ましい。
一次粒子の平均粒径が1000nmよりも大きいと、炭素材/導電性高分子複合材料の導電性高分子膜の表面積が小さくなると共に、所定の厚みで被覆できる導電性高分子膜の炭素材粉末に対する質量分率が低くなるため、導電性高分子膜の複合化比率が低下し、導電性高分子の複合化による電気容量増加の効果が低減するおそれがある。
また、本発明に用いられる炭素材粉末の種類は特に制限されないが、導電性向上の観点から、例えば、アセチレンブラック、ファネストブラック、ケチェンブラック、活性炭又はカーボンナノチューブが好ましい。
本発明において使用する界面活性剤は、炭素材粉末が親水化でき、水中に良好(略均一)に分散できれば、いかなる種類を用いてもよい。ここで、本発明では、アニオンにてドープ及び脱ドープを生じさせる導電性高分子を用いているため、アニオン活性剤を単独で用いたり、非イオン活性剤とアニオン活性剤との混合物を用いたりすることが好ましい。
アニオン活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸などのカルボン酸塩、アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル又は硫酸化オレフィン等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩又はスルホコハク酸ジエステル塩等のスルホン酸塩、アルコールリン酸エステル塩又はアルキルエーテル硫酸エステル塩等のリン酸エステル塩が挙げられる。
ここで、導電性高分子のドーパントを兼ね、導電性高分子の導電性を向上させるために、硫酸エステル塩又はスルホン酸塩のアニオン活性剤を用いることが好ましい。また、炭素材粉末の分散性を向上させるために、非イオン活性剤を配合することもできる。
非イオン活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキル多価アルコールエーテルを挙げることができる。
界面活性剤の使用量は、炭素材粉末を100質量部としたときに、0.05質量部以上、かつ10質量部以下の値が好ましく、0.05質量部以上、且つ1質量部以下の値がより好ましい。0.05質量部未満では、炭素材粉末を水中に均一に分散することが難しく、目的とする(導電性高分子膜の表面積の大きな)炭素材/導電性高分子複合材料が得られないおそれがある。また、10質量部よりも多い場合には、炭素材粉末の分散だけではなく、導電性高分子膜を形成するモノマーが界面活性剤によって乳化してしまい、均一な複合材料が得られないおそれがある。
なお、上述した説明では界面活性剤を用いて炭素材粉末を分散させているが、炭素材粉末を水中に略均一に分散させるものであれば、いかなる方法を用いることもできる。
本発明において使用するアニオンのドープ及び脱ドープにより酸化還元反応を起こすことができる導電性高分子膜を形成するモノマーとしては、例えば、ピロール、アニリン、チオフェン、フラン、インドール、エチレンジオキシチオフェン又はそれらの誘導体を挙げることができる。そして、上述したモノマーのうち1種類だけで導電性高分子(単独重合体)を構成することもできるし、2種以上のモノマーを組み合わせて導電性高分子(共重合体)を構成することもできる。
ピロールの誘導体としては、例えば、N−メチルピロールなどのN−置換ピロール、3−メチルピロール、3−オクチルピロールなどの3−置換ピロール、4−メチルピロール−3−カルボン酸メチルなどの3,4−置換ピロール、3,5−ジメチルピロールなどの3,5−置換ピロールを挙げることができる。
アニリンの誘導体としては、o−メチルアニリン、o−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン、o−クロルアニリンなどのo−置換アニリン、m−メチルアニリン、m−メトキシアニリン、m−エトキシアニリン、m−クロルアニリンなどのm−置換アニリン、p−メチルアニリン、p−メトキシアニリン、p−エトキシアニリン、p−クロルアニリンなどのp−置換アニリンなどを挙げることができる。
チオフェンの誘導体としては、例えば、2−チオフェンカルボン酸等の2−置換チオフェン、3−メチルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−チオフェンカルボン酸などの3−置換チオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどの3,4−置換チオフェンを挙げることができる。
上述したモノマーの中で、ピロール、アニリン、エチレンジオキシチオフェン又はそれらの誘導体は、他のモノマーに比べて、アニオンの出入りによる酸化還元反応が容易に起こるとともに、高い電導性の炭素材/導電性高分子複合材料を得ることができるので好ましい。
導電性高分子を形成するモノマーの使用量は、炭素材粉末を100質量部としたときに、5質量部以上で、且つ200質量部以下の値が好ましい。5質量部未満では、充分な電気容量の増加が見られず、200質量部よりも多くなると、モノマーの重合反応によって目的とする炭素材/導電性高分子複合材料を得ることができにくくなるおそれがある。
ここで、電気容量の更なる増加と、炭素材/導電性高分子複合材料の生成効率の向上を図るために、モノマー使用量を10質量部以上で、且つ150質量部以下の値に設定することがより好ましい。
本発明において使用する酸化剤としては、例えば、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩類、三酸化クロム、二クロム酸ナトリウム、二クロム酸カリウム、二クロム酸銀等のクロル酸類、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸銀等の硝酸塩類、過酸化水素、過酸化ベンゾイル等の過酸化物類、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等のペルオキソ二硫酸類、次亜塩素酸、次亜塩素酸カリウム等の酸素酸類、過塩素酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、クエン酸第二鉄等の三価の鉄化合物類、塩化銅等の遷移金属塩化物が挙げられる。
これらの酸化剤は、1種を単独で用いることができるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。ここで、反応性及び導電性の向上を図る上で、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等のペルオキソ二硫酸類、塩化第二鉄又は、硫酸第二鉄を用いることが好ましい。
本発明である炭素材/導電性高分子複合材料を製造する具体的な方法としては、界面活性剤により炭素材粉末を水中に分散させておき、この分散液中において、導電性高分子膜を形成するモノマーを酸化剤にて、30℃以下、より好ましくは−10℃〜20℃で重合反応させる。これにより、一次粒子の平均粒径が1000nm以下である炭素材粉末に導電性高分子膜が形成される。そして、ろ過などにより、導電性高分子膜で覆われた炭素材粉末を抽出する。
ここで、上述した重合反応を30℃よりも高い温度で行うと、副反応により側鎖や枝分かれなどを持ったポリマーが生成し易く、二重結合が共役しにくくなる。これにより、ドーピングによる導電性が低下すると共に、ドーピングそのものも発現しにくくなり、ドープ及び脱ドープに伴う酸化還元量の低下により、電極材料としての電気容量が低下するおそれがある。重合反応を−10℃〜20℃で行えば、電気容量の低下を効率良く抑制することができる。
本発明である炭素材/導電性高分子複合材料は、電気二重層キャパシタやレドックスキャパシタなどのいわゆる電気化学キャパシタの分極性電極や、2次電池の活物質としての電極材料として用いられる。具体的には、本発明の炭素材/導電性高分子複合材料にN−メチルピロリドンやメタノールなどの分散溶媒とポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を加えてペースト状とし、これを集電体の片面、あるいは両面に塗布し乾燥することで、集電体付き電極とすることができる。
また、炭素材/導電性高分子複合材料をポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤と直接混合・混練することで、シート状の電極として加工することもできる。いずれの場合も、電極材料を成形するために結着剤を用いることができるが、これらの結着剤は化学的、熱的に安定なポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレンを用いることが好ましい。
電極材料中に占める結着剤の割合は、質量比で3%以上、かつ20%以下の値が好ましい。結着剤の割合が質量比で3%よりも小さいと、電極材料の成形が困難となる。また、結着剤の割合が質量比で20%よりも大きいと、電気容量に寄与しない結着剤の割合が多くなり、電気容量が低下すると共に、電極材料の一部と電解液の接触が過多の結着剤より妨げられ、電気二重層の形成や酸化還元反応を抑制することになり、電気容量を低減する要因となるおそれがある。
本発明である炭素材/導電性高分子複合材料によれば、一次粒子の平均粒径が1000nm以下の炭素材粉末に導電性高分子膜を形成することにより、導電性高分子膜の表面積を大幅に増加させることができる。これにより、放電容量及び導電性を大幅に向上させることができるとともに、内部抵抗を低減することができる。
また、本発明である炭素材/導電性高分子複合材料によれば、炭素材粉末を均一に分散させた状態で導電性高分子膜を形成することにより、炭素材粉末に対して導電性高分子膜を均一に形成でき、導電性を向上させることができる。しかも、炭素材粉末を水中に分散させることにより、有機溶媒を使用する必要がなくなり、低コストで、かつ製造時に産出される廃棄物を低減することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<炭素材/導電性高分子複合材料の製造>
容量が300mLのフラスコ内に、一次粒子の平均粒径が15nmである炭素材粉末5gを仕込み、これに水200g及びアニオン界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.01gを添加して、撹拌によって分散させた。この分散溶液に更にピロール1.68g(0.025mol)を仕込み30分攪拌した後、水100gに溶解させた過硫酸アンモニウム5.71g(0.025mol)を1時間かけて滴下しながら、20〜30℃にて重合反応を行わせた。
滴下終了後、20〜30℃で2時間、重合反応を継続させた。反応物をろ過、水洗浄後、さらにメタノールで洗浄し、ろ過残渣を60℃で15時間乾燥させることにより、炭素材/導電性高分子複合材料Aを6.37g得た。
<電極の作製>
上記の方法で得られた炭素材/導電性高分子複合材料A(0.1g)をめのう製乳鉢ですりつぶし、これを5mlのメタノールに分散させた。そして、直径3mmのグラッシーカーボン製電極[ビー・エー・エス(株)製]に固形分で0.2mg(分散液10μl)の炭素材/導電性高分子複合材料Aをコートし、パーフルオロスルホン酸(Nafion117)膜にて固定して電極を作製した。
この作製された電極を、25℃、0.5M硫酸水溶液中に入れ、サイクリックボルタンメトリー測定装置[HSV−100F、北斗電工(株)製]を用いて電気容量を測定した。参照電極としては、Ag/AgCl(0.1M NaCl)を用い、掃引速度は100mV/sec、掃引範囲は−0.6〜+0.4Vとした。この結果、本実施例の電極の電気容量は、74.5F/gであった。
<電池セルの作製>
また、上記の方法で得られた炭素材/導電性高分子複合材料A;0.45gとテトラフルオロエチレン粉末[フルオンPTFEモールディングパウダーG192、旭硝子(株)製];0.05gとを、めのう製乳鉢にて粉砕、混練した後に粉末化した。この粉末(30mg)に対して油圧式錠剤成型機[理研精機(株)製]を用いて6MPaの圧力をかけ、直径1cm、厚さ0.6mmのディスク状の電極を作製した。
この作製したディスク状の電極を用いて、SUS316製の電池セル(密閉型)に集電体/作成電極/ポリプロピレン不織布セパレーター/作成電極/集電体の構成にて組み込み、電解液として0.5M硫酸水溶液を用いて電池セルを作製した。これを定電流5mAにて0V〜1.0Vの間で充放電試験を行い、放電初期の電圧降下と放電時の放電曲線を求めた。ここで、放電曲線の直線性を以下のように定義して判定した。
放電電圧が0.5Vに到達した時までの放電電荷量をAクーロン、全放電電荷量をAクーロンとし、X=A/Aを用いて放電時における放電曲線の直線性の評価を行った。この評価方法としては、以下のように行った。
○:Xが0.45以上
△:Xが0.40以上0.45未満
×:Xが0.40未満
ここで、Xの値が0.5以下の範囲においては、放電時の電圧降下が時間(電荷量)に対して直線状に変化し、Xの値が0.5より小さくなるに従って、電圧が高い領域での電圧降下速度が、電圧が低い領域での電圧降下速度に比べて高くなり、取り出せるエネルギーがその分低下していくことになる。
また、Xの値が0.45以上の場合には、0.5〜1Vの高電圧領域における電気容量が実質的に90%以上に維持され、Xの値が0.4未満の場合には、0.5〜1Vの高電圧領域における電気容量が実質的に80%以下に低下してしまう。このため、本実施例では、放電曲線の直線性の評価基準として、電気容量が90%以上に維持される場合を「○」、80%以下の場合を「×」とし、90%〜80%の間を「△」とした。ここで、実用性の点において、放電曲線の直線性の評価は、「△」以上であることが好ましい。
本実施例で作製された電池セルの電圧降下は0.02V、放電曲線の直線性の評価は「○」であった。
(実施例2)
実施例1で使用したピロールを3.35g(0.05mol)、過硫酸アンモニウムを11.41g(0.05mol)とし、これ以外は実施例1と同じ条件で炭素材/導電性高分子複合材料B:8.33gを作製した。また、炭素材/導電性高分子複合材料Bを用いて、実施例1と同様に電極及び電池セルを作製した。
本実施例における電極の電気容量は、86.7F/gであり、電池セルの電圧降下は0.03V、放電曲線の直線性の評価は「○」であった。
(実施例3)
実施例1で使用したピロールを6.70g(0.1mol)、過硫酸アンモニウムを22.82g(0.1mol)とし、これ以外は実施例1と同じ条件で炭素材/導電性高分子複合材料C:11.80gを作製した。また、炭素材/導電性高分子複合材料Cを用いて、実施例1と同様に電極及び電池セルを作製した。
本実施例における電極の電気容量は、112.9F/gであり、電池セルの電圧降下は0.05V、放電曲線の直線性の評価は「○」であった。
(実施例4)
実施例1で使用した一次粒子の平均粒径が15nmである炭素材粉末の代わりに、一次粒子の平均粒径が30nmである炭素材粉末を使用し、これ以外は実施例1と同じ条件で炭素材/導電性高分子複合材料D:6.34gを作製した。また、炭素材/導電性高分子複合材料Dを用いて、実施例1と同様に電極及び電池セルを作製した。
本実施例における電極の電気容量は、72.6F/gであり、電池セルの電圧降下は0.02V、放電曲線の直線性の評価は「○」であった。
(実施例5)
実施例1で使用した一次粒子の平均粒径が15nmである炭素材粉末の代わりに、一次粒子の平均粒径が75nmである炭素材粉末を使用し、これ以外は実施例1と同じ条件で炭素材/導電性高分子複合材料E:6.3gを作製した。また、炭素材/導電性高分子複合材料Eを用いて、実施例1と同様に電極及び電池セルを作製した。
本実施例における電極の電気容量は、71.1F/gであり、電池セルの電圧降下は0.03V、放電曲線の直線性の評価は「○」であった。
(実施例6)
実施例1で使用した一次粒子の平均粒径が15nmである炭素材粉末の代わりに、一次粒子の平均粒径が91nmである炭素材粉末を使用し、これ以外は実施例1と同じ条件で炭素材/導電性高分子複合材料F:6.2gを作製した。また、炭素材/導電性高分子複合材料Fを用いて、実施例1と同様に電極及び電池セルを作製した。
本実施例における電極の電気容量は、70.7F/gであり、電池セルの電圧降下は0.03V、放電曲線の直線性の評価は「○」であった。
(実施例7)
実施例1で使用した一次粒子の平均粒径が15nmである炭素材粉末の代わりに、一次粒子の平均粒径が120nmである炭素材粉末を使用し、これ以外は実施例1と同じ条件で炭素材/導電性高分子複合材料G:6.3gを作製した。また、炭素材/導電性高分子複合材料Gを用いて、実施例1と同様に電極及び電池セルを作製した。
本実施例における電極の電気容量は、68.5F/gであり、電池セルの電圧降下は0.04V、放電曲線の直線性の評価は「△」であった。
(実施例8)
実施例1で使用した一次粒子の平均粒径が15nmである炭素材粉末の代わりに、一次粒子の平均粒径が850nmである炭素材粉末を使用し、これ以外は実施例1と同じ条件で炭素材/導電性高分子複合材料H:6.3gを作製した。また、炭素材/導電性高分子複合材料Hを用いて、実施例1と同様に電極及び電池セルを作製した。
本実施例における電極の電気容量は58.4F/gであり、電池セルの電圧降下は0.09V、放電曲線の直線性の評価は「△」であった。
(実施例9)
実施例1で使用したピロールの代わりに、アニリン1.68g(0.018mol)と35%塩酸水溶液1.88g(0.018mol)からなるアニリン塩酸塩水溶液を用い、過硫酸アンモニウムを4.11g(0.018mol)とした。これ以外は実施例1と同じ条件で炭素材/導電性高分子複合材料I:6.29gを作製した。また、炭素材/導電性高分子複合材料Iを用いて、実施例1と同様に電極及び電池セルを作製した。
本実施例における電極の電気容量は、92.0F/gであり、電池セルの電圧降下は0.15V、放電曲線の直線性の評価は「△」であった。
(実施例10)
実施例1で使用したピロールの代わりに、1.42g(0.01mol)のエチレンジオキシチオフェンを用いるとともに、過硫酸アンモニウムを2.28g(0.01mol)とし、これに塩化鉄III:0.16g(0.001mol)を混合した。これ以外は実施例1と同じ条件で炭素材/導電性高分子複合材料J:5.87gを作製した。また、炭素材/導電性高分子複合材料Jを用いて、実施例1と同様に電極及び電池セルを作製した。
本実施例における電極の電気容量は、67.1F/gであり、電池セルの電圧降下は0.1V、放電曲線の直線性の評価は「△」であった。
(比較例1)
実施例1で使用した一次粒子の平均粒径が15nmである炭素材粉末の代わりに、一次粒子の平均粒径が1500nmである炭素材粉末を使用した。これ以外は実施例1と同じ条件で比較用の炭素材/導電性高分子複合材料K:6.28gを作製した。また、炭素材/導電性高分子複合材料Kを用いて実施例1と同様に比較用電極及び比較用電池セルを作製した。
本比較例における電極の電気容量は、39.6F/gであり、電池セルの電圧降下は0.3V、放電曲線の直線性の評価は「×」であった。
(比較例2)
実施例1で使用した炭素材粉末とアニオン性界面活性剤を使用せずに、導電性高分子だけを用いた。これ以外は実施例1と同じ条件で比較用の導電性高分子材料L:1.32gを作製した。また、導電性高分子材料Lを用いて実施例1と同様に電極及び電池セルを作製した。
本比較例における電極の電気容量は、39.5F/gであり、電池セルの電圧降下は0.56V、放電曲線の直線性の評価は「×」であった。
(比較例3)
実施例1の電極及び電池セルの作製で使用した炭素材/導電性高分子複合材料Aの代わりに、一次粒子の平均粒径が15nmである炭素材粉末を使用した。すなわち、炭素材粉末の表面に導電性高分子膜を形成しなかった。これ以外は実施例1と同じ条件で比較用電極及び比較用電池セルを作製した。
本比較例における電極の電気容量は、39.4F/gであり、電池セルの電圧降下は0.01V、放電曲線の直線性の評価は「○」であった。
(比較例4)
実施例1の電極及び電池セルの作成で使用した炭素材/導電性高分子複合材料Aの代わりに、一次粒子の平均粒径が30nmである炭素材粉末を使用した。すなわち、炭素材粉末の表面に導電性高分子膜を形成しなかった。これ以外は実施例1と同じ条件で比較用電極及び比較用電池セルを作製した。
本比較例における電極の電気容量は、6.5F/gであり、電池セルの電圧降下は0.01V、放電曲線の直線性の評価は「○」であった。
(比較例5)
実施例1の電極及び電池セルの作製で使用した炭素材/導電性高分子複合材料Aの代わりに、一次粒子の平均粒径が1500nmである炭素材粉末を使用した。すなわち、炭素材粉末の表面に導電性高分子膜を形成しなかった。これ以外は実施例1と同じ条件で比較用電極及び比較用電池セルを作製した。
本比較例における電極の電気容量は、39.3F/gであり、電池セルの電圧降下は0.01V、放電曲線の直線性の評価は「○」であった。
実施例1〜6及び比較例1〜5における、電気容量及び電圧降下の測定結果と、放電曲線の直線性の評価結果を表1に示す。
Figure 0004884710
表1に示すように、比較例3〜5では、電圧降下及び放電曲線の直線性において優れた結果が得られたが、実施例1〜10に比べて電気容量が大幅に低下した。特に、比較例4については、最も小さい電気容量となった。これは、炭素材粉末の表面に導電性高分子膜を形成していないことによるものと考えられる。
導電性高分子だけを用いた比較例2では、電気容量、電圧降下及び放電曲線の直線性において好ましくない結果が得られた。また、炭素材粉末の表面に導電性高分子膜を形成した比較例1でも、電気容量、電圧降下及び放電曲線の直線性において好ましくない結果が得られた。
一方、各実施例1〜10では、各比較例1〜5に比べて電気容量が大幅に増加していることが分かる。また、比較例1、2に比べて電圧降下を少なくすることができた。実施例1〜10のうち実施例1〜6については、電気容量、電圧降下及び放電曲線の直線性において、優れた特性を示した。
また、表1から分かるように、炭素材粉末の一次粒子の平均粒径が1000nm以下である場合、特に、平均粒径を1000nm以下の近傍の値に設定した場合(実施例8)には、平均粒径が1000nmよりも大きい場合(比較例1)と比べて、電気容量を大幅に増加させることができるとともに、電圧降下を少なくすることができる。しかも、放電曲線の直線性の評価も良好となる。
さらに、表1から分かるように、炭素材粉末の一次粒子の平均粒径が100nm以下である場合、特に、平均粒径を100nm以下の近傍の値に設定した場合(実施例5,6)には、平均粒径が100nmよりも大きい場合、特に、平均粒径を100nmよりも大きく、100nmの近傍の値に設定した場合(実施例7)と比べて、電気容量、電圧降下及び放電曲線の直線性の点において、より優れている。特に、放電曲線の直線性において、優れている。
表1に示す実験結果から、炭素材/導電性高分子複合材料を、一次粒子の平均粒径が1000nm以下(より好ましくは100nm以下)の炭素材粉末と、導電性高分子膜とで構成することにより、この炭素材/導電性高分子複合材料を電極として用いた場合の電気化学キャパシタの特性(電気容量等)を大幅に向上させることができる。ここで、一次粒子の平均粒径が1000nm以下である炭素材粉末を用いた場合であっても、導電性高分子を形成しなければ、導電性高分子を形成した場合に比べて電気容量が大幅(略半分以下)に低下してしまうことが分かる。

Claims (8)

  1. 一次粒子の平均粒径が1000nm以下の炭素材を、界面活性剤により水中に分散させる工程と、
    分散した前記炭素材に対して、アニオンのドープ及び脱ドープにより酸化還元反応を起こすことができる導電性高分子膜を、酸化剤を用いた重合反応によって形成する工程とを含み、
    前記界面活性剤の添加量が、100質量部の炭素材に対して0.05質量部以上で、かつ10質量部以下であり、
    前記界面活性剤がドデジルベンゼンスルホン酸塩であることを特徴とする炭素材/導電性高分子複合材料の製造方法。
  2. 前記一次粒子の平均粒径が100nm以下の炭素材を水中に分散させることを特徴とする請求項1に記載の炭素材/導電性高分子複合材料の製造方法。
  3. 前記導電性高分子を形成するモノマーの使用量は、100質量部の炭素材に対して、5質量部以上で、且つ200質量部以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素材/導電性高分子複合材料の製造方法。
  4. 前記導電性高分子膜を形成するモノマーが、ピロール、アニリン、エチレンジオキシチオフェン及び、これらの誘導体のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1つに記載の炭素材/導電性高分子複合材料の製造方法。
  5. 前記導電性高分子膜を形成するモノマーが、ピロールであることを特徴とする請求項2に記載の炭素材/導電性高分子複合材料の製造方法。
  6. 請求項1から5のいずれか1つに記載の炭素材/導電性高分子複合材料の製造方法を用いたことを特徴とする分極性電極の製造方法。
  7. フッ素系樹脂を含む結着剤を、前記炭素材/導電性高分子複合材料と混合することを特徴とする請求項6に記載の分極性電極の製造方法。
  8. 前記フッ素系樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデンのうち少なくとも一方であることを特徴とする請求項7に記載の分極性電極の製造方法。
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