JP4883919B2 - 乳酸菌の発酵促進剤 - Google Patents
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Description
近年、多くの研究者により、これらの発酵飲食品から乳酸菌が分離同定されている。これらの研究結果から、乳酸菌は発酵により乳酸を生産する微生物の総称であると認識されている。
このように、乳酸菌は、その由来によって発酵可能な飲食品原料が相違し、明確な棲み分けがなされている。
このような状況下、ポリフェノールの機能性と乳酸菌の機能性を兼ね備えた飲食品の出現が望まれていた。
また、前記した広汎な機能性研究に伴い、野菜などの植物原料と乳などの動物原料を組み合わせて製造する、ヨーグルト等の発酵飲食品製造へのニーズが高い。しかし、先に述べたような課題があり、乳酸菌による植物原料と動物原料の両者の発酵を促進する物質の開発が望まれていた。
これまでに、ビフィドバクテリウム属細菌の増殖を促進する物質として、カボチャなどの植物成分を用いることが提案されている(特許文献1参照)。
また、原料乳を野菜などの植物原料と共存させると、乳酸菌によるヨーグルト発酵が難しい上に、雑菌汚染などの危険性にさらされることがある。そのため、発酵を短時間で効率よく実現するために有効な発酵促進剤の開発が期待されている。また、ポリフェノール類の機能性と、乳酸菌による発酵生産物の機能性を兼備した機能性飲食品の開発が望まれている。
この結果、驚くべきことに脱脂粉乳に2%ココアマスを添加することによりLactobacillus plantarum が旺盛な発酵を行なうことを見出した。すなわち、ココアマスの添加により、Lactobacillus plantarum の発酵が促進され、ココアマス非添加時に比べて4倍の乳酸生成を達成することが分かった。また、本条件下では、発酵生産物は、ヨーグルトの様に固形化することから、植物乳酸菌を用いてココア風味を有するヨーグルトが得られ、さらには発酵ココア飲料も製造できることを見出した。
しかも、原料乳にココアマスを添加することにより、発酵が迅速に行なわれ、発酵飲食品の製造時間を実質的に短縮することができる。
また、前記ナムから分離したLactobacillus plantarum SN13T を検定菌として、上記と同様の実験を行なったときの乳酸生成量を、MRS培地で旺盛に発酵したときの乳酸生成量をコントロールとして比較したところ、本菌の生育は極めて良好で、発酵が促進され、この場合も固形化したヨーグルトが得られた。
これらのことから、ヨーグルト等の発酵飲食品の製造に植物乳酸菌をスターターとして用いることができることが明らかとなった。
本発明は、上記した様々な知見に基づいて完成されたものである。
請求項2に記載の本発明は、請求項1記載の発酵促進剤を用いることを特徴とするココア風味発酵乳飲料の製造法である。
請求項3に記載の本発明は、請求項1記載の発酵促進剤を用いることを特徴とする酸乳またはヨーグルトの製造法である。
請求項4に記載の本発明は、酸乳またはヨーグルトの製造にあたり、植物乳酸菌をスターターとして用いることを特徴とする請求項3記載の酸乳またはヨーグルトの製造法である。
請求項5に記載の本発明は、ココアマスを原料とし、植物乳酸菌をスターターとして用いることを特徴とする発酵ココア飲料の製造法である。
請求項6に記載の本発明は、植物原料及び/又は動物原料を発酵原料とし、これにココアマスを添加し、乳酸菌を用いて発酵させることにより調製された発酵飲食品である。
請求項7に記載の本発明は、乳酸菌が植物乳酸菌及び/又は動物乳酸菌である請求項6記載の発酵飲食品である。
請求項8に記載の本発明は、乳を発酵原料とし、これにココアマスを添加し、植物乳酸菌及び/又は動物乳酸菌を用いて発酵させることにより調製された発酵乳製品である。
請求項9に記載の本発明は、調製された乳製品が酸乳又はヨーグルトである請求項8記載の発酵乳製品である。
請求項10に記載の本発明は、乳を発酵原料とし、これにココアマスを添加し、植物乳酸菌を用いて発酵させることにより調製されたヨーグルトである。
請求項11に記載の本発明は、植物乳酸菌がラクトバシルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)である請求項10記載のヨーグルトである。
請求項12に記載の本発明は、ココアマスを植物原料とし、植物乳酸菌を用いて発酵させることにより調製された発酵ココア飲料である。
請求項13に記載の本発明は、植物乳酸菌がラクトバシルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)である請求項12記載の発酵ココア飲料である。
しかも、発酵促進剤の添加により、これまで未利用であった原料に乳酸菌を作用させて発酵食品を製造することができる。また、得られた発酵飲食品は風味が良好である上に、他の菓子類に応用が可能である。
本発明に用いることのできる動物乳酸菌を例示すると、Lactobacillus bulgaricus, Lactobacillus acidophilus, Lactobacillus helveticus, Lactobacillus juguiri, Lactobacillus lactis, Lactobacillus leichmannii, Lactobacillus delbrueckii, Lactobacillus salvarius var. salivarius, Lactobacillus salivarius var. salicinius, Lactobacillus plantarum, Lactobacillus casei var. casei, Lactobacillus casei var. rhamnosus, Lactobacillus casei var. alactosus, Lactobacillus fermenti, Lactobacillus buchneri, Lactobacillus brevis, Lactobacillus cellobiosus,Lactobacillus viridescens, Streptococcus diacetilactis, Streptococcus lactis var. taette, Streptococcus thermophilus などを挙げることができる。
以上に示した各種乳酸菌は、スターターとして使用することができ、これらは必要に応じ単独で、または複数種を適宜組み合わせて用いることが可能である。これらの乳酸菌を利用したスターターは、牛乳や脱脂粉乳の溶液やココアマス懸濁液を用いることが可能であることは言うまでもない。
また、牛乳成分として、例えば生乳、加工乳、生クリームの他、酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等のカゼイン類、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳等の粉乳等、あるいは乳清蛋白質等の乳製品の一種または二種以上も使用できる。
ココアマス(明治製菓(株)製)を2%添加または添加しない脱脂粉乳(明治乳業(株)製)の13%溶液を培地とした。この培地は、各々115℃、20分間のオートクレーブ滅菌を行ない試験に用いた。
一方、Lactobacillus plantarum SN13T (以下、Lb. plantarum SN13Tと略記)を別途調製した13%脱脂粉乳溶液4mlを含む20ml容量の試験管に接種して37℃、20時間静置培養したものを種菌培養液とし、これを13%脱脂粉乳溶液に2%(80μl)となるように接種し、37℃で40時間静置培養を行なった。
ココアマス(明治製菓(株)製)を10重量%となるように蒸留水に懸濁したのち、50℃で1時間攪拌後、遠心分離により浮遊物を除去したココア抽出液を調製した。このココア抽出液を10%添加(ココアマス添加量として最終濃度1%に相当)または添加しない脱脂粉乳(明治乳業(株)製)の13%溶液を培地とした。この培地は、各々115℃、20分間のオートクレーブ滅菌を行なったのち試験に用いた。
その結果、ココア抽出液添加試験区は、いずれの乳酸菌でも増殖促進効果が見られた。特に、Lb. plantarum SN13Tでは増殖が4倍に、Lb. bulgaricus B-5bでは増殖が1.25倍に促進された。なお、いずれもココアマスによる増殖阻害効果は認められなかった。Lb. bulgaricus B-5bを供試したココア抽出液添加試験区では、培養後20時間以内に乳酸生成量が60mMに到達したのに対して、対照のココア抽出液無添加区では、培養時間が30時間以上でないと、乳酸生成量が60mMに到達しなかった。
牛乳 100mLにココアマス(明治製菓(株)製) 2gを懸濁した。このココア入り牛乳95mLにスターター(動物乳酸菌 Sc. lactis 527または植物乳酸菌 Lb. plantarum SN13T)5mLを接種し、清浄な滅菌容器に移し、37℃で20時間静置培養して、ハードタイプ(固形)ヨーグルトを調製した。
調製したヨーグルトの風味を15名のパネラーにより官能試験を行ない、5段階評価した。結果を表3に示す。
10%ココアマス水溶液にスターターを5%接種し、37℃で24時間培養した。得られた発酵ココア飲料を、冷蔵庫で3時間冷却した後、味の評価を行なった。なお、スターターは、発酵前日に2%ココアマス含有脱脂粉乳の13%溶液からなる培地でLb. plantarum SN13T を37℃にて20時間培養したものを使用した。また、得られた発酵ココア飲料に砂糖を5%添加したもの、またはコーヒーミルクを5%添加したもの、あるいは両者を添加したものを調製し(表4参照)、発酵前のココアとの比較で実施例3と同様に5段階評価した。結果を表5に示す。
Claims (6)
- ココアマスを含有することを特徴とする、植物乳酸菌ラクトバシルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)による乳発酵促進剤。
- ココアマスが、カカオバター含量が10〜24重量%のココアパウダーである請求項1記載の乳発酵促進剤。
- 乳を発酵原料とし、これにココアマスを添加し、植物乳酸菌ラクトバシルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)を用いて発酵させることを特徴とする、発酵乳製品の製造方法。
- ココアマスが、カカオバター含量が10〜24重量%のココアパウダーである請求項3記載の発酵乳製品の製造方法。
- 発酵乳製品が酸乳又はヨーグルトである請求項3又は4記載の発酵乳製品の製造方法。
- 請求項3〜5の何れか1項記載の方法により製造された発酵乳製品。
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