JP4878410B2 - アクリル系単量体の塊状重合方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、不活性ガス存在下、ゲル化や熱暴走反応等を起こさずに、アクリル系単量体の重合を制御しながら塊状重合を行うアクリル系単量体の塊状重合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系単量体のラジカル重合法としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法及び塊状重合法が知られている。これらの重合法のうち、乳化重合法、懸濁重合法及び溶液重合法は、アクリル系単量体を反応媒体に溶解もしくは分散させて重合反応を行うため、重合温度を制御しやすく、しかも重合率が高い場合や重合体の分子量が高い場合であっても反応液が流動性を有するという利点がある。
【0003】
しかしながら、乳化重合法、懸濁重合法では、通常分散媒である水から重合体を取り出すために濾過、沈降分離、乾燥等の操作が必要であり、工程が煩雑となる。しかも、これらの重合法で使用される分散剤あるいは乳化剤は、重合体からの完全な分離が困難であり、残存する乳化剤あるいは分散剤は、耐水性や耐候性など、本来のアクリル系重合体が有する特性に悪影響を及ぼす場合が多い。
【0004】
さらに、溶液重合法では、多量の有機溶剤を使用するために、重合反応温度の制御が容易で、しかも均一系の反応であるため、重合体の設計(単量体の配合割合等)が比較的容易に行うことができるなどの利点があるが、重合の初期段階と後半におけるモノマー濃度に大きな差が生じ、低分子量体が生成しやすく、分子量分布が広くなってしまうという問題点も有している。こうした問題点の解消策として、モノマーを分割して添加する方法やモノマーの滴下法などの方法を採用して上記問題点を解消しようとする試みがなされているが、逆にこうした方法を採用すると、反応工程が簡単であるという溶液重合法としての利便性を損なってしまう。また、溶液重合に反応溶媒として使用される有機溶剤は、一般に連鎖移動を伴う重合反応においては、停止反応や連鎖移動反応などの重合反応に関与してしまい、こうした有機溶媒の存在が、重合体の設計を複雑化してしまう。そして、溶液重合により得られた重合体は、多量の有機溶剤を含むため、これら重合体を利用する場合、反応時に使用した多量の有機溶剤を除去する必要があり、生産性が低いだけでなく、屋外などでこれら重合体溶液をそのまま使用した場合には、有機溶剤の揮散による自然環境への負荷が大きくなるという問題点もある。
【0005】
これに対して塊状重合法は、分散剤、乳化剤などを用いる必要がなく、重合に関与する有機溶剤のような不純物も含まないので、反応系が簡潔となるばかりでなく、得られる重合体中に乳化剤や分散剤などの不純物の混入がなく、さらには目的の重合体を得るために、溶媒の除去も不要である。
【0006】
しかしながら、一般に、塊状重合法では、重合反応速度が著しく速く、この塊状重合法を制御することは困難である。また、重合速度が制御できずに高温度で生成した重合体は、不均化停止により分子の末端基が不安定な状態となったり、低分子量体化したり、逆に先に生成していた重合体からの水素引き抜きなどにより、重合体の分岐化やゲル化が起こりやすい。このため重合体の分子量、分子量分布などの分子設計が困難になることはもとより、重合体の分岐化や不均化停止末端などの生成などにより、明確な分子構造の設計が困難となる。さらに、ゲル化物が急激にかつ大量に生成することがあり、最悪の場合、暴走反応による爆発の危険すらある。
【0007】
こうした中で、メルカプタンを用いて塊状重合反応の進行を制御する方法が提案されている。特公昭55−401号公報には、「重合し得るエチレン性不飽和モノマーを酸素存在下で約20℃から約200℃の温度で少なくとも一つのチオール基を持つ有機メルカプタンと、実質的に完全なモノマーのポリマーへの転化を得るのに十分な時間の間、接触させることを特徴とする重合法。」が開示されている。この反応においては、酸素の存在が不可欠であり、メルカプタンを酸素と共に用いてエチレン型不飽和モノマーの塊状重合を行っている。したがって、この反応は、酸素の存在しない雰囲気では有効に進行しない。この公報に記載されているメルカプタンと酸素を用いて重合させた場合、酸素を積極的に反応系内に吹き込んでしまうため、爆発、火災の危険性が高く、得られる重合体が着色するなどの問題もある。
【0008】
また、特許第2582510号公報の特許請求の範囲には、「アクリル酸系単量体を主成分として含んでなる単量体成分を塊状重合することによりアクリル系重合体を製造する方法であって、前記単量体成分の塊状重合が行われている重合系が不活性ガス雰囲気にあってメルカプタンを含み、重合開始剤を実質的に含まないことを特徴とするアクリル系重合体の製造法。」の発明が開示されている。この公報記載の発明におけるメルカプタンの役割は、一つは重合体の分子量および分子量分布を制御するため、もう一つは単量体成分の塊状重合を高重合率まで穏やかに進行させ、実質的に開始剤を含まない場合において重合速度を穏やかにコントロールするためであると、記載されている。この公報に記載の比較例3は、実施例1において使用されいているメルカプタンであるチオグリコール酸オクチル30部を使用せずに反応を行った実験例であり、その記載によれば、窒素雰囲気下においてアクリル系単量体 であるモノマーのみを加熱し、重合開始1時間30分後に温度が130℃まで上昇し、安定に重合することができず、また、得られた重合体はゲル状となったと示されている。すなわち、この公報記載の比較例3と実施例1を比較した場合、重合の開始はモノマー単量体の熱による重合開始であること、使用したメルカプタンの役割としては、重合体の分子量の調整と、塊状重合反応における反応の急激な進行を抑制するために用いられていることが示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来のメルカプタンを用いた不飽和単量体の塊状重合反応においては、メルカプタンを暴走しやすい塊状重合反応の進行の抑制剤として用いられているが、不活性ガス下に、メルカプタンを重合開始剤として塊状重合させるための重合方法は知られていない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系単量体の塊状重合において、重合率が高く、しかも得られる分子量の分散指数が小さく、さらに、反応を確実に制御しながら塊状重合させる重合方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主成分とし、かつ、(メタ)アクリル酸が7.83重量%以下の範囲内で含むアクリル系単量体を、不活性ガス雰囲気下、重合開始剤として分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物を用いて、塊状重合させることを特徴とするアクリル系単量体の塊状重合方法を提供する。
【0012】
本発明によれば、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系単量体のような非常に反応性の高い単量体を主成分としているが、不活性ガス雰囲気下、重合開始剤として分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物を用いることにより、塊状重合反応が暴走することなく、穏和な条件で塊状重合反応を行うことができ、得られる重合体の分子量分布が狭く、また、ゲル化物の生成など予定していない重合物が生成しにくい。さらに、他の反応開始剤、たとえば酸素などが反応系に共存する必要はないし、他の反応開始剤を用いて2段重合を行う必要もない。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明によるアクリル系単量体を塊状重合させる実施の形態について説明する。
【0014】
本発明は、不活性ガス雰囲気下、重合開始剤として、分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物を用いて、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系単量体を塊状重合させることを特徴とする。
【0015】
本発明において、重合開始剤として使用する分子内にチオール基及びカルボキシ基を有する化合物としては、α−メルカプトプロピオン酸(チオ乳酸)、β−メルカプトプロピオン酸、2,3−ジメルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、o−メルカプト安息香酸(チオサリチル酸)、m−メルカプト安息香酸、p−メルカプト安息香酸、チオリンゴ酸、チオール炭酸、o−チオクマル酸、α−メルカプトブタン酸(メルカプト酪酸)、β−メルカプトブタン酸、γ−メルカプトブタン酸、チオールヒスチジン及び11−メルカプトウンデカン酸等が挙げられる。中でもβ−メルカプトプロピオン酸及びチオグリコール酸が好ましい。
【0016】
本発明では、不活性ガス雰囲気下、重合開始剤として、分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物を用いることによって、アクリル酸アルキルエステルのように塊状重合反応速度を制御しにくいアクリル系単量体を用いた場合であっても、反応速度を制御可能な範囲内でアクリル系単量体の塊状重合反応を進行させることができる。本件発明の塊状重合法において、反応系内に酸素が存在していると、チオール基どうしの脱水縮合反応が進行する。従って、本件発明において、反応系を不活性ガスでパージする必要がある。使用される不活性ガスとしては、重合反応に対して活性のないガスであれば良く、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス又は炭酸ガス等を挙げることができる。
【0017】
本発明で使用するアクリル系単量体は、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルを主成分としている。アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸-2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル等が挙げられ、メタクリル酸アルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸-2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル等が挙げられる。
【0018】
本発明で使用するアクリル系単量体は、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルの1種類の単量体でも良いが、2種類以上の単量体を組合わせても良い。更に、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルの以外の単量体を組合わせても良く、例えば以下に示す単量体を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩などの塩;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピルのような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;
エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エスエル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エスエル、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルのような多価(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニル;塩化ビニリデン;
(メタ)アクリル酸-2−クロロエチル、メタクリル酸-2−クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;
(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;
2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;
(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸−2−アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;
アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸-2−エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニル単量体;
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニル化合物;
フッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体;
(メタ)アクリル酸を除く、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸、これらの塩並びにこれらの(部分)エステル化合物および酸無水物;
2−クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニル単量体;
(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドのようなアミド基含有ビニル単量体;
ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2−メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素基含有ビニル化合物単量体;ならびに、
エチルデンノルボルネン、ピペリジン、イソプレン、ペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、クロロプレン、ブタジエン、メチルブタジエン、シクロブタジエン、メチルブタジエンのようなジエン化合物。
その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等(例えば、フッ素系マクロモノマー、シリコン含有マクロモノマー等)を例示することができる。
【0019】
本発明の塊状重合法は、実質的に溶媒を使用しない条件で反応させる。ただし、分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物を単量体全体に均一に分散させるために、極微量の溶媒に溶解もしくは分散させる際に使用する溶媒、原材料中に残存する溶媒など重合反応に影響を与えない程度の溶媒は含んでも良い。
【0020】
本発明において、分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物は、アクリル系単量体の不飽和基モル数100に対し、0.01〜50モル、好ましくは0.1〜30モルの範囲内で使用される。アクリル系単量体の不飽和基モル数100に対し、分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物が0.01モル以下であると、重合が効率良く進行せず、50.0を越えると、最終生成物の固形分(不揮発分)を低下させることとなる。
【0021】
また、本発明の塊状重合法は、アクリル系単量体の種類によって、加熱あるいは加温下に行うこともできるし、冷却しながら行うこともできる。そして、この塊状重合反応温度は、40〜110℃の範囲内に設定することが好ましく、さらに60〜100℃の範囲内に設定することが特に好ましい。重合反応温度を上記範囲内に設定することにより、分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物が、効率よく重合開始剤としての機能を発揮することができる。
【0022】
また、使用するアクリル系単量体の不飽和基の活性にもよるが、比較的重合性の高いアクリル酸エステル系のアクリル系単量体を用いた場合でも、反応温度を40℃未満とした場合、分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物の活性が低くなり、充分な重合率を得るために必要な時間が長くなり、効率が悪い。さらに、メタクリル酸メチルのように重合活性が比較的低い単量体を用いた場合でも、40℃以上の条件であれば、充分な重合率を得ることができる。
【0023】
また、反応温度が110℃を超える場合は、分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物が重合速度の抑制に作用してしまい、分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物の重合開始剤としての効率が悪くなる。さらに、反応温度を150℃以上とすると、アクリル系単量体の活性にもよるが、アクリル酸アルキルエステルなどは、熱開始による重合も併発してしまい、熱開始により生成した重合体を含むこととなり、目的の重合体が得られないばかりでなく、重合反応中に著しい発熱による暴走反応の危険がある。重合温度を110℃以下と設定することにより、生成する重合体を効率よく得られ、また、反応を暴走させることなく、反応の進行を維持することができる。
【0024】
本発明の塊状重合法は、開始剤としてβ−メルカプトプロピオン酸を例にして説明すると、断定することはできないが、以下のように進行するものと推定される。
【0025】
β−メルカプトプロピオン酸は、単独では窒素のような不活性ガス雰囲気下で加熱をしても急激な反応等は起こらず比較的安定であるが、空気中などで暴露をすると空気中の酸素などによりチオール基の酸化反応がおこり、ジスルフィド化等が起こってしまう。これは、同一分子中のカルボキシル基により、チオール基水素原子の活性が高くなってしまい、酸化反応を受けやすくなる為である。本発明の塊状重合法における重合開始と進行は、不活性ガス雰囲気下で行われるため、チオール基の酸化反応によるものではないと考えられる。
また、チオール基は活性ラジカルの存在下では、チオール基の水素原子が活性ラジカルに水素引き抜きを受けやすく、ラジカル連鎖移動反応を起こす。
【0026】
本発明の塊状重合法においては、実質的に溶剤などを含まず、不活性ガス雰囲気下、アクリル系単量体とβ−メルカプトプロピオン酸を接触混合させる事により、重合性不飽和基に対し、同一分子内にカルボキシル基を有し活性の高くなったチオール基が配位的に攻撃する事により、チオラジカル(・Sラジカル)がラジカル付加し、重合が開始すると考えられる。
【0027】
次いで、β−メルカプトプロピオン酸及びアクリル系単量体に対しての連鎖移動、成長反応が進行するものと推定される。そして、この反応の停止反応は、β−メルカプトプロピオン酸及びアクリル系単量体への連鎖移動停止、成長ラジカル同士の再結合停止、チオラジカルの状態で存在するβ−メルカプトプロピオン酸ラジカルとの再結合停止によるものと推定される。この場合、連鎖移動により水素引き抜きをされたβ−メルカプトプロピオン酸は、ふたたび、開始末端としてモノマー付加する場合と、成長ラジカルと再結合し、停止剤として重合体末端に付加する。
【0028】
したがって、本発明の塊状重合法によって得られる重合体の分子末端は、β−メルカプトプロピオン酸から水素が脱離した残基もしくは水素原子で構成される分子が大多数である。よって、本発明の塊状重合法によって得られる重合体は、従来の重合開始剤切片や、単量体の不均化停止による不飽和基を末端に有することがなく、貯蔵安定性、耐候性に優れている。
【0029】
上記のように、β−メルカプトプロピオン酸を重合開始剤として使用することにより、この塊状重合の反応率は、通常は50%以上、好ましくは70%以上になる。このように反応率が高いにも拘わらず、例えばアクリル酸エステルのような反応性の高い重合性不飽和化合物を用いた場合であっても、反応が暴走することがなく、安定に塊状重合反応をさせることができる。
【0030】
上記のようにして製造される塊状重合体(組成物を含む)は、使用するアクリル系単量体の種類、分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物の種類及び量によって異なるが、数平均分子量は、通常は、500〜100000の範囲内にあり、重量平均分子量は、通常は700〜300000の範囲内にある。また、得られた塊状重合体は、必要に応じて精製されて、通常の重合体と同様に使用される。
【0031】
【実施例】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
【0032】
【実施例1】
撹拌装置、窒素導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコに、ラウリルメタクリレート100重量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコ内の内容物を80℃に加熱した。
ついで、十分に窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸5重量部を撹拌下のフラスコ内に添加した。その後、撹拌中のフラスコ内の内容物の温度が80℃に維持できるように、冷却及び加温を2時間行った。その後続けて、撹拌中のフラスコ内の内容物の温度が95℃に維持できるように、冷却及び加温を行いながら、重合反応を6時間行った。
【0033】
上記のようにして合計で8時間の反応後、反応物の温度を室温に戻し、反応物にベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を20重量部添加して重合を停止させた。こうして得られた反応物のTHF溶液について、単量体残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定し、重合率を求めた。その結果、重合率が71%の反応物が得られ、この重合に際して重合反応の暴走は認められなかった。
【0034】
つづいて得られた反応物をエバポレーターに移し、減圧下に80℃まで徐々に加熱しながらTHFおよび残存単量体、残存チオール化合物を除去した。こうして得られた重合体の150℃加熱残分は、99.0%であった。
また、得られた重合体についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量は、Mw=4600、Mn=2300であり、分散指数=2.1であり、23℃における粘度は、6.7(Pa・秒)であった。
【0035】
【実施例2】
撹拌装置、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート95重量部、およびスチレン5重量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコ内の内容物を80℃に加熱した。
ついで、十分に窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸8重量部を攪拌下のフラスコ内に添加した。その後、攪拌中のフラスコ内の内容物の温度が80℃に維持できるように、冷却および加温を2時間行った。さらに、十分に窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸6重量部を攪拌下のフラスコ内に追加添加した。その後、攪拌中のフラスコ内の内容物の温度が95℃に維持できるように、さらに冷却および加温を行いながら、重合反応を6時間行った。
【0036】
上記のようにして合計で8時間の反応後、反応物の温度を室温に戻し、反応物にベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を20重量部添加して重合を停止させた。こうして得られた反応物のTHF溶液について、単量体残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定し、重合率を求めた。その結果、重合率が78%の反応物が得られ、この重合に際して重合反応の暴走は認められなかった。
【0037】
つづいて得られた反応物をエバポレーターに移し、減圧下に80℃まで除々に加熱しながらTHFおよび残存単量体、残存チオール化合物を除去した。こうして得られた重合体の150℃加熱残分は、99.4%であった。
また、得られた重合体についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量は、Mw=2200、Mn=1100であり、分散指数=2.0であり、23℃における粘度は、2.6(Pa・秒)であった。
【0038】
【実施例3】
撹拌装置、窒素導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート100重量部及びアクリル酸8.5重量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコ内の内容物を80℃に加熱した。
ついで、十分に窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸5重量部を撹拌下のフラスコ内に添加した。その後、撹拌中のフラスコ内の内容物の温度が80℃に維持できるように、冷却および加温を2時間行った。さらに、十分に窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸4重量部を撹拌下のフラスコ内に追加添加した。その後、撹拌中のフラスコ内の内容物の温度が95℃に維持できるように、さらに冷却及び加温を行いながら、重合反応を6時間行った。
【0039】
上記のようにして合計で8時間の反応後、反応物の温度を室温に戻し、反応物にベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を20重量部添加して重合を停止させた。こうして得られた反応物のTHF溶液について、単量体残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定し、重合率を求めた。その結果、重合率が85.2%の反応物が得られ、この重合に際して重合反応の暴走は認められなかった。
【0040】
つづいて得られた反応物をエバポレーターに移し、減圧下に80℃まで徐々に加熱しながらTHFおよび残存単量体、残存チオール化合物を除去した。こうして得られた重合体の150℃加熱残分は、99.8%であった。
また、得られた重合体についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量は、Mw=2600、Mn=1500であり、分散指数=1.8であり、23℃における粘度は、15.4(Pa・秒)であった。
【0041】
【実施例4】
攪拌装置、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、ブチルアクリレート100重量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコ内の内容物を60℃に加熱した。
ついで、十分に窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸6重量部を攪拌下のフラスコ内に添加した。その後、攪拌中のフラスコ内の内容物の温度が60℃に維持できるように、冷却および加温を8時間行った。
【0042】
上記8時間の反応後、反応物の温度を室温に戻し、反応物にベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を20重量部添加して重合を停止させた。こうして得られた反応物のTHF溶液について、単量体残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定し、重合率を求めた。その結果、重合率が78.1%の反応物が得られ、この重合に際して重合反応の暴走は認められなかった。
【0043】
つづいて得られた反応物に、ラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.1重量部を添加して未反応単量体を重合させた、さらに、反応物をエバポレーターに移し、減圧下に80℃まで除々に加熱しながらTHFおよび残存単量体、残存チオール化合物を除去した。こうして得られた重合体の150℃加熱残分は、99.7%であった。
また、得られた重合体についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量は、Mw=3700、Mn=1800であり、分散指数=2.1であり、23℃における粘度は、3.1(Pa・秒)であった。
【0044】
【比較例1】
実施例1において、チオール化合物であるβ−メルカプトプロピオン酸の代わりに、N−ドデシルメルカプタンを使用した以外は、同様にして重合反応を行ったが、重合率は12%と低く、効率がかなり悪かった。
【0045】
【比較例2】
実施例1において、チオール化合物であるβ−メルカプトプロピオン酸を添加しなかった以外は、同様にして反応操作を行ったが、重合率は0%であった。
【0046】
【発明の効果】
本発明は、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系単量体のような非常に反応性の高い単量体を主成分としているが、不活性ガス雰囲気下、重合開始剤として分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物を用いることにより、塊状重合反応が暴走することなく、穏和な条件で塊状重合反応を行うことができ、得られる重合体の分子量分布が狭く、ゲル化物の生成など予定していない重合物が生成しにくい。また、他の反応開始剤、たとえば酸素などが反応系に共存する必要はないし、他の反応開始剤を用いて2段重合を行う必要もない。さらに、重合体分子末端が分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物のチオール基から水素原子が脱離した残基及び水素原子のみからなる重合体を容易に得ることができる。
Claims (3)
- 不活性ガス雰囲気下に、重合開始剤として分子内にチオール基及びカルボキシル基を有する化合物を用いて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、かつ、(メタ)アクリル酸が7.83重量%以下の範囲内で含む重合性単量体を重合させることを特徴とするアクリル系単量体の塊状重合方法。
- 前記アクリル系単量体100モルに対して、前記化合物を0.01〜50.0モルの範囲にて使用することを特徴とする請求項第1項記載のアクリル系単量体の塊状重合方法。
- 前記アクリル系単量体の重合を、40〜100℃の範囲内の温度で行うことを特徴とする請求項第1項又は第2項記載のアクリル系単量体の塊状重合方法。
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