JP4877712B2 - 窒化アルミニウム単結晶積層基板および窒化アルミニウム単結晶膜の製造方法 - Google Patents

窒化アルミニウム単結晶積層基板および窒化アルミニウム単結晶膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面に窒化アルミニウム単結晶膜を有する窒化アルミニウム積層基板に関する。
窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)およびこれらの混晶はIII族窒化物半導体と呼ばれ、可視域から紫外域の光を発する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)やレーザーダイオード(LD)等の発光デバイスを構成する機能層として知られている。中でもGaNおよびAlN、ならびにこれらの混晶である窒化アルミニウム・ガリウム(AlGaN)等は、青色帯〜紫外帯の短波長光を発する素子を構成しうる物質として近年特に注目されている。
これらの半導体素子は、シリコン単結晶やα−アルミナ(Al)単結晶(以下、サファイアともいう)等の基板上に、分子線エピタキシャル法(MBE)または有機金属気相成長法(MOVPE)等の気相成長手段を用いて多層の薄膜を堆積させる製造法が一般的である。
しかしながら、基板材料とこれらの半導体結晶の、格子定数および熱膨張係数の不整合に起因して、成膜プロセスにおいて高密度の欠陥が導入されてしまう。これらの欠陥は得られる半導体素子のエネルギー効率の低下・素子寿命の短縮をもたらすため、積層膜との良好な整合性を持ち、欠陥導入を回避できる基板材料の開発はこの分野に大きなブレークスルーをもたらす最重要課題となっている。
上記課題を解決する手段として、これらのIII族窒化物系半導体を利用する素子には格子整合性に優れる同種材料基板、例えば、Alを多く含有するAlGaN結晶層に対してはAlN結晶を用いるのが望ましい。
AlGaN系半導体積層基板として利用できるAlN結晶を得る手段として、AlN粉末を2250℃程度の超高温環境下において気相へ昇華させた後に種結晶へ析出させる昇華再析出法が知られている(非特許文献1)。上記昇華再析出法で得られるAlN単結晶は、後述する気相成長法によるAlN薄膜に比べて良好な品質を有するが、長径10mm以上の物を得る事が困難なため量産性に課題を持つ。
一方、MBEやMOVPEおよびハイドライド気相成長法(HVPE)等の気相成長法を用いて、サファイア基板や炭化珪素単結晶基板等の上にAlN結晶を得る技術が数多く研究されている。これらの方法ではAlN結晶基板の大口径化が比較的容易であるが、基板面の法線に対してAlNのc軸が平行になるよう配向した(以降この配向関係をc軸配向と呼ぶ)薄膜中の個々の結晶において、c軸を回転軸とするわずかな角度の回転を制御することが困難なため、異なる核より成長したAlN結晶粒の会合部で貫通転位が発生し易いという欠点を有する。
これらの評価は一般的に、X線回折分析(XRD)のωモードロッキングカーブ半値全幅で行われている。ロッキングカーブ半値全幅とは試料がブラッグの回折条件を満たす角度にX線発生装置と検出器のなす角を固定して、X線入射角ωを変化させて得られる回折チャートにおいて検出カウント数の最大値の50%以上の値をとるωの範囲であり、この値が小さい結晶であるほど貫通転位等の欠陥が少なく、品質が良好である傾向を示す。
MBE・MOVPE・HVPE等のいわゆる気相成長法では、AlNc軸と直交する{0 0 0 2}面についての測定値は300arcsec(3600arcsec=1°)以下の値を達成するものの、c軸と平行な{1 −1 0 0}面についての測定値は、前述の理由から1200arcsec以下に抑えることが非常に困難とされている。
本明細書中で用いられている中括弧ないし括弧を含む4桁の数字は六方晶の結晶において用いられるミラー指数を示しており、負の指数を本来の表記法に変えて以下のように表現している。
Figure 0004877712
以上をまとめると、先に述べた青色帯〜紫外帯の短波長光を発する素子の実用化には素子の積層膜との整合性を確保するために高い配向性を有し、かつ欠陥の少ないAlN結晶が必要であるが、AlN結晶を得るための既存の方法は量産性、結晶品質のいずれかに課題を抱えるという現状にある。
G.A.Slack and T.F.Mcnelly、Journal of Crystal Growth、1976年、Volume34、263。
本発明に先立ち、本発明者らはアルミナ、カーボン(C)、窒素(N)および一酸化炭素(CO)を反応原料とした還元窒化反応を用いた高結晶性AlN膜の作成法を開発し、特願2003−68361号において既に提案した。この方法によれば、従来の手段のように基板上に目的の薄膜を付着形成させるのではなく、原料サファイア基板表面から内部に向かってアルミナをAlNに変換させることにより、両相の界面で酸窒化アルミニウム(alon)が自動的に生成して緩衝層として機能し、良好なAlN結晶が形成できる。該方法では窒化反応が進む条件を満たした条件下の原料サファイア基板表面全体にAlN結晶が生成するため、原料サファイア基板の形状に応じてAlN結晶基板の大口径化も容易に達成される。
さらに、特願2005−031086号において、反応後の基板にalonが存在せず、且つ原料サファイア基板とAlN単結晶膜界面で発生する欠陥が両層に伝播する事を防ぎつつ格子不整合を緩和した構造を有する積層基板を開発し、原料サファイア基板とAlN単結晶膜との熱膨張差に起因する歪の残留を防止してAlN結晶の品質を改善するに至った。しかし、温度条件および雰囲気組成で決定される窒化反応の駆動力の最適化だけでAlN結晶が多結晶化する現象を防止するには確実性に欠けることがその後判明した。また、原料サファイア基板の結晶性と比較すると未だ劣化の幅が大きく、改善の余地があった。
そこで本発明者らは、特願2005−031086号における未反応の原料サファイア基板の表面状態によって複数方向に配向したAlN結晶の混在する理由について鋭意検討し、α−アルミナおよびAlNにて窒化反応条件下において発生する分解反応に着目した。
本発明で用いるアルミナの窒化反応はMOVPEやHVPEでAlN結晶を成長させる一般的な温度よりも400℃以上高温で行うため、アルミナやAlNの表面におけるAlないしAlO等のアルミニウム化合物への分解反応の平衡分圧が無視できないほどに高い。そのため最表面で速やかに窒化反応が完了しない条件においては原料サファイア基板の表面に露出している原子面は事前の表面処理の如何に関わらずアルミニウム原子層・酸素原子層が混在した状態となり、複数の方向へ配向したAlN結晶の混在やインバージョンドメインと呼ばれる1原子層分の格子のズレ等が発生すると考えられる。
また同時に、基板内部から表面へアルミニウム原子が移動する駆動力が発生する。この結果として発生するアルミニウムの移動が、基板表面に凹凸を発生させると同時に、基板内の結晶格子の規則性を乱して結晶品質を悪化させている可能性も考えられた。
本発明者らは原料基板を曝す雰囲気中に、アルミニウム濃度を適切に管理しつつ混入させる機構を反応装置内に設け、窒化反応条件下において原料サファイア基板表面および生成AlN膜表面より生じる気体を予め外部より供給して窒化反応を試みた結果、原料サファイア基板表面にAlN単結晶膜を有するAlN単結晶積層基板について、更なる結晶性の向上および欠陥密度の低減に効果を得て本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、単結晶α−アルミナのa面からなる基板上に窒化アルミニウム単結晶からなる膜が積層されてなる積層基板であって、両結晶の界面近傍に転位層が存在し且つ窒化アルミニウム単結晶の貫通転位密度が5×10 cm −2 以下であり、窒化アルミニウム単結晶の{0002}面および{1−100}面のX線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価される結晶配向性が、それぞれ200arcsec以下および300arcsec以下であることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶積層基板である。
さらに他の発明は、単結晶α−アルミナのc面からなる基板上に窒化アルミニウム単結晶からなる膜が積層されてなる積層基板であって、両結晶の界面近傍に転位層が存在し且つ窒化アルミニウム単結晶の貫通転位密度が5×10cm−2以下であり、窒化アルミニウム単結晶の{0002}面および{1−100}面のX線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価される結晶配向性が、それぞれ200arcsec以下および900arcsec以下であることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶積層基板である。
さらに他の発明は、単結晶α−アルミナ基板をカーボン、窒素および一酸化炭素の存在下に加熱して還元窒化反応で基板上に窒化アルミニウム単結晶膜を製造する方法において、原料単結晶α−アルミナ基板および生成窒化アルミニウム単結晶以外のアルミニウム化合物であって、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムおよび酸窒化アルミニウムよりなる群から選ばれた少なくとも一種からなるアルミニウム化合物を反応系中に共存させ、当該アルミニウム化合物に由来するアルミニウム含有物質の気体を、前記単結晶α−アルミナ基板表面に供給して前記還元窒化反応を行うことを特徴とする前記窒化アルミニウム単結晶膜の製造方法である。
上記本発明の方法によれば、貫通転位密度が5×10 cm −2 以下であり、X線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価される{0002}面の結晶配向性が200arcsec以下である窒化アルミニウム単結晶膜を製造することができる。
本発明によれば、原料サファイア基板を窒化反応に供する際に反応物質として導入する窒素・一酸化炭素混合ガスに加えて、原料サファイア基板および生成窒化アルミニウム単結晶以外のアルミニウムを含有する物質(アルミニウム化合物)をアルミニウム供給源として反応雰囲気中のアルミニウム濃度が適切となるように制御して反応系中に共存させて、発生した気体を原料サファイア基板表面および生成窒化アルミニウム単結晶表面に到達させる。
この方法によって、反応条件下においてα−アルミナおよびAlNが発生するアルミニウム含有物質の気体を基板以外の物質で補い、基板最表面原子の分解を防ぐとともに露出原子層の状態を均一に保つため、複数の方向へのAlN結晶の配向やインバージョンドメインの発生を防止する。
ここで、アルミニウム含有物質の気体とは、アルミニウム原子を含む化合物並びにアルミニウム単体よりなる気体を指し、本発明において制御する反応雰囲気中のアルミニウム濃度とは、それぞれのアルミニウム含有物質の気体が有する分圧の総和を指す。
また、基板内部から表面へアルミニウム原子が移動する駆動力を低減させるため、基板内部のアルミニウムの移動を抑制し、結晶格子の規則性を保ちながら酸素原子と窒素原子の置換を進める事が可能となる。
本発明の製造方法を特願2005−031086号によって提案した、界面構造に特徴を有するAlN単結晶膜積層基板の作製方法と組み合わせることによって該発明によって得られるAlN単結晶膜の品質が飛躍的に改良され、本発明のAlN単結晶積層基板が得られる。
得られたAlN単結晶積層基板は白色光源用および殺菌用の紫外発光ダイオード向けの基板材料として、あるいはレーザー発光光源等の高出力デバイス向けのAlN単結晶自立基板を製造するための種結晶として好適に使用できる。
以下、本発明について発明の実施の形態に即して詳細に説明する。
本発明は、原料サファイア基板の表面を還元窒化することにより原料サファイア基板上に直接AlN結晶膜を形成する。具体的には、熱処理装置の均熱部に、原料サファイア基板とグラファイトを装入し、N−CO混合ガスの組成を調節することにより、酸素ポテンシャルと窒素ポテンシャルを制御した雰囲気下で、原料サファイア基板を以下の反応式に従って窒化させる。
Figure 0004877712
alonとは、Al(64+x)/3(8−x)/332−x(但し□は陽イオン空孔)で示される酸窒化アルミニウムを指し、反応式(2)中alon(Alsat.)はAlが飽和したalonを意味する。また、反応式(3)中alon(AlNsat.)はAlNが飽和したalonを意味する。さらに、xはalonの不定比性に起因する変数で、2<x<6の範囲の値をとる。
炉内雰囲気を構成する窒素分圧と一酸化炭素分圧の和PCO+PN2が1bar、炭素の活量aが1の条件下では、1630℃未満では反応式(1)、1630℃以上では反応式(2)と反応式(3)で示す反応が起こるとされている。
これらの反応が進行するかどうかは下の一般式で示すGibbsエネルギー変化で推測することが出来る。
Figure 0004877712
ここで、Rは気体定数、Tは絶対温度、Kr(x)は各相の活量より計算される平衡定数である。
図1は、横軸にセルシウス温度、縦軸にエネルギー量をとったグラフである。右下がりの線は、上記3つの反応式について各々1molのNが反応した場合の標準Gibbsエネルギー変化項Δr(1)G°、Δr(2)G°、Δr(3)G°の関数を引いたものである。そして横線は、雰囲気総圧を1barとした時の等窒素分圧曲線を示す。
平衡定数および絶対温度で構成される、いわゆるRT項のエネルギー量が標準Gibbsエネルギー変化量を上回った場合、各反応のGibbsエネルギー変化Δr(1)G、Δr(2)G、Δr(3)Gはマイナスになり窒化が進む。すなわち、図1中の直線より上の領域はAlNの安定領域であり、直線より下の領域はAlの安定領域である。1630℃以上において、両者の境界にalonの安定領域が存在する。図中のAlN安定領域に該当する温度条件および雰囲気組成を選択することで窒化反応が進行する。
また、曲線は、以下の反応式で表されるα−アルミナおよびAlNがAl(g)を放出する分解反応におけるAl(g)の平衡分圧の等分圧曲線である。
Figure 0004877712
実線は各領域の安定相の分解反応におけるAl(g)の平衡分圧を繋げた等分圧曲線、点線はAlN安定条件下に置かれた未反応・非平衡状態の原料サファイア基板表面で起こる分解反応のAl(g)の分圧を予測した等分圧曲線である。
α−アルミナをはじめとするアルミニウム化合物の分解反応においては、Al(g)の他にAlO(g)、Al(g)など他の化学種も発生する。これらの化学種間の反応は常に起こっており、温度および反応系内に存在する物質によって変化する各化学種の安定性に従って変動し、最終的に平衡状態と呼ばれる雰囲気組成に至る。
その結果、実質的にアルミニウム以外の金属元素が存在しない反応系においては、図1に示した温度・雰囲気の範囲内においてAlO(g)をはじめとする他の化学種の平衡分圧の総和は常にAl(g)の平衡分圧の半分程度ないしそれ以下となるため、アルミニウム含有物質の気体全ての平衡分圧の総和、すなわち本発明におけるアルミニウム濃度はAl(g)の平衡分圧の1倍ないし2倍の範囲内と推定することができる。
本発明においては上記のAl(g)およびその他のアルミニウム化合物の平衡分圧を考慮して、未反応の原料サファイア基板表面でのアルミニウム含有物質への分解反応が著しく進行する前に、原料サファイア基板以外のアルミニウム化合物を用いてそれ由来のアルミニウム含有物質の気体を原料サファイア基板表面に到達させる手段を講じる。これらの気体を供給するための手段にはアルミニウム単体および全てのアルミニウム化合物が利用できるが、得られるAlN結晶への不純物混入を避ける観点から、反応に関与する元素であるところのアルミニウム・酸素・窒素・炭素のみで構成される物質が好適である。
さらに望ましくは、雰囲気中のアルミニウム濃度が10−6bar〜10−3barの範囲になるよう、制御が容易な物質を採用する。雰囲気中のアルミニウム濃度が前述の範囲を下回ると本発明の効果が得られにくくなり、逆に過剰に供給した場合は俗に気相成長法と呼ばれるプロセスと同様の堆積挙動が起こり、c軸を回転軸とした回転が十分制御されないAlN結晶が成長して全体的に品質が悪化する。
上記アルミニウム化合物としては、アルミニウム単体、酸化物、酸窒化物、窒化物、炭化物、有機化合物、三元および多元化合物等が挙げられ、高温安定性が比較的高い物質を炉内に設置して該物質を接触させた雰囲気を原料サファイア基板に到達させる方法、アルキルアルミニウム等の低沸点化合物を気化させて窒素ガスと混合した状態で炉内の原料サファイア基板に到達させる方法が採用される。特に、得られるAlN結晶への不純物混入を避け、雰囲気中のアルミニウム濃度の制御が比較的容易に達成できる点でアルミナ、酸窒化アルミニウム、窒化アルミニウムのいずれかを炉内に設置する方法が好ましい。また、前述の3物質の少なくとも一つと黒鉛を任意の割合で混合した複合材も好適に使用できる。
炉内に設置して用いるアルミニウム化合物の形状は緻密体、粉体、液体、多孔体等の様々な形状が制限無く使用可能であり、使用量としてはアルミニウム濃度を速やかに平衡に到達させる点で、表面に露出しているアルミニウム化合物の表面積が反応に供する原料サファイア基板の表面積以上となるよう使用量を決定することが望ましい。
また、原料サファイア基板およびAlN単結晶膜に対して、同条件における分解反応によるアルミニウム含有物質の気体の平衡分圧が同じ、あるいはそれ以下である物質を上記アルミニウム化合物として用いる場合、原料サファイア基板よりも高温に置くなどして発生する気体を量的に増加させる手段が有効である。
窒化アルミニウム単結晶膜の製法は、1630℃以上のAlN安定領域に置き、反応式(2)および反応式(3)に示す反応によって、特願2003−68361号にて提案したalon層含有窒化基板の構造を形成させる。この構造を形成した基板を1630℃以下に冷却して、alonが熱力学的に不安定、且つAlN成分やアルミナ成分に分解するための活性化エネルギーが与えられる状態に長時間置いたのち徐冷して原料サファイア基板とAlN結晶膜との熱膨張差に起因する残留歪を避けることで本発明の基板が得られる。
上記の方法は高温でalonが一旦生成し、それが冷却中に分解することによって本発明のAlN積層基板が得られるケースであるが、本発明の製造方法の効果を得るために必須の要件ではない。すなわち、1630℃未満のAlN安定領域において反応式(1)に示す反応によってAlN単結晶を作成したのちに徐冷した場合や、特願2003−68361号にて提案した製造方法に準じて急冷した場合でも、得られるAlN単結晶膜の品質は改良される。
上述した原料サファイア基板の表面を直接窒化する方法において用いられる加熱装置には特に制限はなく、任意の構造のものが使用できる。ただし窒素および一酸化炭素よりなる混合ガス中で、原料サファイア基板を図1中に示す温度条件に曝す事が出来る能力が無くてはならない。また、原料サファイア基板中の温度差を5℃以内に保つことができる設計であることが望ましい。加熱炉材は、得られるAlN結晶への不純物混入を避ける観点から、反応に関与する物質であるところの黒鉛、α−アルミナ、AlNおよびalonのみで構成することが望ましく、原料サファイア基板に到達する雰囲気中のアルミニウム濃度を管理する観点から、黒鉛のみで構成することがさらに望ましい。また、炉材に吸着した水蒸気や有機物は加熱時に炉内の酸素濃度を増加させ、雰囲気組成に対する変動要因となり反応挙動に影響を与えるため、製造前に加熱運転を行ったり、昇温過程において1000℃未満の低温域で真空引きによるクリーニングを行うなどの除去工程の導入が望ましい。
使用する原料サファイア基板は良質且つ配向性が制御されたAlN結晶を得るために、その表面は平滑であることが好ましい。そのため、一般的なエピタキシャル成長用サファイア基板が好適に用いられる。この基板表面に本発明の特徴を有するAlN単結晶膜を形成させる場合、基板の結晶面としては任意の面が使用できるが、得られるAlN単結晶がc軸配向を取りやすいことから{1 1 −2 0}面(以降a面)および{0 0 0 1}面(以降c面)が好適に用いられる。
反応系に共存させるカーボンとしては炉材を含め種々の市販品が使用できる。カーボンの純度は99.9%以上であることが好ましく、99.999%以上であることがより好ましい。
導入するガス種としては、窒素および一酸化炭素に限定されない。例えば、一酸化炭素の代わりに酸素を導入し、炉内の黒鉛と反応させて生成した一酸化炭素を反応に供しても本発明と同様の効果が得られる。
窒素および一酸化炭素は、通常ガス状のものが使用されるが、なるべく純度の高いものが好ましく、一般的には99.9999%以上の窒素および99.9%以上の一酸化炭素がそれに該当する。不純物の中でも二酸化炭素・水蒸気等の化学種は、分解して発生する酸素原子が窒化反応の化学ポテンシャルを変化させ、制御パラメータに対する誤差要因となるため、これらの混入を極力防止する。
反応系の全圧は特に制限されないが、1bar前後とするのが反応装置の製作や運転の容易さから好ましい。反応中は、所定の分圧になるようにした混合ガスを所定の流量で流す。窒素および一酸化炭素の混合比は、図1に示す相安定図に従って、反応温度に応じたAlN安定領域に入る(PN2/PCO )の範囲から決定する。
反応温度Tおよび(PN2/PCO )の選択で決定されるRT項の値と、標準Gibbsエネルギー変化項Δr(1)G°、Δr(2)G°、Δr(3)G°の差分が実質的な窒化駆動力の尺度となる。図1中の標準Gibbsエネルギー変化量を示す直線と、選択した条件で一義的に決まる座標との縦軸座標間の距離に当たる。
直接窒化反応の効果を最大限に得るためにはこの窒化駆動力を適切に設定する必要がある。上記3つの反応式について各々1molのNが反応した場合の理想的な窒化駆動力を数例挙げると、1750℃においては0〜30kJ、1675℃においては0〜100kJ、1600℃においては0〜150kJの範囲に入るように混合ガスの比率を選択することが望ましい。窒化駆動力が前述の範囲を超えて高すぎる場合、原料サファイア結晶が持つ対称性によって、複数の等価な結晶面に対してAlN{0 0 0 2}面がそれぞれほぼ平行に生成する現象が起こりやすくなり、結果として単結晶膜の作製が困難となる。
混合ガスの流量は、常に基板表面に窒素原子を到達させる必要があることから、ガス流と垂直な面における反応装置の断面積1cmに対して、25℃・1気圧のガスを5mL/min以上導入するのが好ましい。より好ましくは原料サファイア基板に到達する前に導入するガスを予備加熱する装置を設置する。導入する一酸化炭素および窒素の分圧制御は市販の流量計が制限無く使える。
昇温速度は任意に決定できるが、毎分5℃以上が好適に採用される。温度に応じてα−アルミナの分解反応の平衡分圧が急激に増加する点を考慮して、アルミニウム含有物質の気体の供給は遅滞無く開始する。遅くとも図1中に示すAl(g)の等分圧曲線について、10−6barを超える条件に原料サファイア基板が曝されるまでにアルミニウム含有物質の気体の供給を開始することが望ましい。
加熱時間は、所望するAlN膜厚により適宜決定される。例えば、全ての炉材に黒鉛を用いた加熱装置(以下、黒鉛炉と呼ぶ)において、1675℃でPCO=0.10bar、PN2=0.90barの条件下においてa面で切り出した原料サファイア基板を窒化させた場合、AlN膜の成長速度は、12時間の反応で5〜20nm、alon層の成長速度は12時間の反応で5〜10nmである。
反応終了後は、冷却中に図1のAl安定領域に入ってしまうとAlNが酸化してしまうため、1000℃を超える温度域では常にAlNが安定な状態に基板を置くよう一酸化炭素濃度を漸減させる手段を講じる。この方法としては、冷却開始前に一酸化炭素の供給を停止し、窒素のみ供給を続けて反応系内の一酸化炭素濃度を0.1%未満まで低下させる操作等が挙げられる。1000℃以下においても、窒素のみの供給を続けて、可能な限り一酸化炭素濃度を希釈することが望ましい。
冷却速度は前述の通り、原料サファイア基板・AlN単結晶膜の界面近傍に転位層を形成するに充分な時間をかけて冷却する。また、原料サファイア基板とAlN単結晶膜との熱膨張差に起因する残留歪を抑制するため、冷却速度が毎分20℃を超える時間帯を設けることは好ましくない。図1の相安定図中の1630℃以下の領域のうち、Al安定領域では前述のとおりAlN単結晶膜が酸化されてしまうため不適である。また、1100℃以下の温度域ではalonからAlNないしアルミナに変化する活性化エネルギー、あるいは原子の拡散速度が不十分と考えられ、alonを分解する条件としては好ましくない。従って冷却条件は、冷却速度を常に毎分20℃以下に保ち、alonの生成量に応じて窒化基板を1630℃から1100℃の範囲に置く時間を設定することが望ましい。
上記方法により、本発明の効果を十分発現したAlN単結晶積層基板を作製することができる。
作製したAlN単結晶積層基板は、断面観察用のサンプルを無作為の位置から切り出し、厚さを100nm程度までFIB装置ないしイオンミリング装置を用いて薄片化する。このサンプルのTEM観察像より貫通転位密度の計測を行う。
結晶品質の評価はX線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅により行う。背景技術の項で述べたとおり、本測定の半値全幅によって結晶品質の良否が判断できる。3次元全ての方向に対して結晶が揃っている事を確認するため、互いに直交する{0 0 0 2}面および{1 −1 0 0}面について測定する。
X線回折分析において発生装置より取り出すX線は少なからず波長分布を持つ上にターゲットから全方位に発生しているため、入射X線について施す波長の単色化処理および発散角の制御の程度によって装置起因の測定誤差が大きく変動する。さらに本発明で得られるAlN単結晶は膜厚が数nm〜数十nmと薄いため、Laueの式で表されるピークのブロード化の影響が大きく、回折X線の受光側の分解能が粗いと測定誤差が大きくなる。
測定対象の結晶起因の半値全幅の広がりに対して上乗せされるこれらの測定誤差を十分小さくするには、入射側に複結晶配置のモノクロメータ、および受光側にアナライザ結晶を導入してそれぞれの角度分解能を十分小さくする必要があり、薄膜結晶解析では各々30arcsec以下の分解能を有するX線回折装置が一般的に用いられている。
本発明のAlN単結晶積層基板が有する特徴として挙げたAlN単結晶の結晶配向性の計測値は上記の30arcsec以下の分解能を有する測定装置にて得られたものである。表1に使用した装置および測定条件を示す。
Figure 0004877712
実施例1
図2に示す構成よりなる反応系を用い、原料サファイア基板以外のアルミニウム化合物にAlN焼結体を用いて、1675℃でN−CO混合ガスによって、a面で切り出した直径50.8mmの円板状の原料サファイア基板を窒化し、徐冷することにより、AlN/原料サファイア界面に転位層を有するAlN単結晶膜を作製した。
加熱炉内にアルミニウム供給源としてのAlN焼結体を載せた黒鉛ブロックを置き、加熱時にこの黒鉛ブロックの発する赤外光を放射温度計で測定して原料基板の温度を管理した。
原料サファイア基板はアルミニウム供給源であるAlN焼結体の近傍を通過したガスが当たるよう排ガスポート寄りに設置した。このときAlN焼結体の温度が原料サファイア基板の温度よりも15℃高温になるように設置位置を調整して、アルミニウム含有物質の気体が原料サファイア基板の有する平衡分圧に対して十分供給されるようにした。
最初に炉内を一旦ロータリーポンプで真空排気して、一酸化炭素分圧が0.10barと窒素分圧の比が0.90barである混合ガスに置換し、そのまま同組成の雰囲気を一定の流量で流した。
排気弁は1.02barで開放する設定として、加熱中はほぼ1barに保持した。
原料サファイア基板を1675℃に置くためにAlN焼結体を1690℃まで10℃/minで加熱し、1690℃に到達後12時間保持した。12時間経過した後、1690℃に保持したまま一酸化炭素の投入を停止し、炉の容積の2倍の量の純窒素を30分間で流して炉内雰囲気を窒素に置換した後、冷却速度が常に毎分20℃以下となるように冷却した。
得られたAlN単結晶積層基板から無作為に5箇所を選び、それぞれの箇所から採取したサンプルをイオンミリングによって薄片化し、TEM断面観察を行った。観察に掛けるサンプルの厚みは平均して0.1μm程度であり、1個のサンプルより40μm幅の膜の観察が可能なため、1個のサンプルで4μmの基板面積中の欠陥数を計測することになる。
本実施例で得られた5サンプルの各視野からは貫通転位は1つも観察されなかった。貫通転位密度を最も多く見積るとすれば、観察した基板面積20μm中に1個の貫通転位が存在したと過程した時の1平方センチメートル当り5×10個となり、本実施例で得られたAlN単結晶中の貫通転位密度は5×10個以下と結論づけられる。また、いずれのサンプルのTEM観察像においても、AlN/原料サファイア界面に転位層の存在を確認した。
X線回折分析の結果、本実施例で得られた窒化膜は以下の結晶配向関係を有するAlN単結晶であることが判った。
Figure 0004877712
AlN単結晶膜の結晶品質をX線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価したところ、基板面と平行なAlN{0 0 0 2}面で106arcsec、基板面と垂直なAlN{1 −1 0 0}面で162arcsecであった。
実施例2
実施例1と同様にして、1600℃でN−CO混合ガスによって、c面で切り出した直径50.8mmの円板状の原料サファイア基板を窒化し、徐冷することにより、AlN/原料サファイア界面に転位層を有するAlN単結晶膜を作製した。炉内の雰囲気は一酸化炭素分圧が0.10bar、窒素分圧が0.90barである混合ガスを用いた。その他の反応条件は実施例1と同じとした。すなわち、アルミニウム供給源であるAlN焼結体の目標温度を1615℃となるように管理して反応に供した。
得られた積層基板表面の表面粗さを走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製SPA−400、ダイナミックフォースモード)を用いて10μm角の範囲について測定した結果、Raが0.23nm、RMSが0.33nmの良好な表面を有する膜である事が判明した。
得られた積層基板の断面をTEM観察にて欠陥密度の評価を行った結果、観察面積20μm中に貫通転位は確認されなかった。そこで、実施例1と同様に本実施例によって得られた積層基板の貫通転位密度は5×10個以下と結論づけた。また、いずれのサンプルのTEM観察像においても、AlN/原料サファイア界面に転位層の存在を確認した。
X線回折分析の結果、本実施例で得られた窒化膜は以下の結晶配向関係を満たすAlN単結晶であることが判った。
Figure 0004877712
AlN単結晶膜の結晶品質をX線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価したところ、基板面と平行なAlN{0 0 0 2}面で165arcsec、基板面と垂直なAlN{1 −1 0 0}面で540arcsecであった。
実施例3
実施例1と同様にして、1675℃でN−CO混合ガスによって、c面で切り出した直径50.8mmの円板状の原料サファイア基板を窒化し、徐冷することにより、AlN/原料サファイア界面に転位層を有するAlN単結晶膜を作製した。炉内の雰囲気は一酸化炭素分圧が0.40bar、窒素分圧が0.60barである混合ガスを用いた。その他の反応条件は実施例1と同じとした。すなわち、アルミニウム供給源であるAlN焼結体の目標温度を1690℃となるように管理して反応に供した。TEM観察像においてAlN/原料サファイア界面に転位層の存在を確認した。
X線回折分析の結果、本実施例で得られた窒化膜は実施例2と同じ結晶配向関係を有するAlN単結晶であることが判った。
AlN単結晶膜の結晶品質をX線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価したところ、基板面と平行なAlN{0 0 0 2}面で125arcsec、基板面と垂直なAlN{1 −1 0 0}面で876arcsecであった。
実施例4
実施例1と同様にして、原料サファイア基板以外のアルミニウム化合物をAlN焼結体からアルミナ焼結体に変更して、1675℃でN−CO混合ガスによって、a面で切り出した直径50.8mmの円板状の原料サファイア基板を窒化し、徐冷することにより、AlN/原料サファイア界面に転位層を有するAlN単結晶膜を作製した。用いるアルミニウム化合物以外の条件は実施例1と同じとした。すなわち、アルミニウム供給源であるアルミナ焼結体の目標温度を1690℃となるように管理して反応に供した。TEM観察像においてAlN/原料サファイア界面に転位層の存在を確認した。
X線回折分析の結果、本実施例で得られた窒化膜は実施例1と同じ結晶配向関係を有するAlN単結晶であることが判った。
AlN単結晶膜の結晶品質をX線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価したところ、基板面と平行なAlN{0 0 0 2}面で127arcsec、基板面と垂直なAlN{1 −1 0 0}面で287arcsecであった。
比較例1
図2に示す構成において、アルミニウム供給源であるAlN焼結体を撤去し、排ガスポート寄りに設置してある原料サファイア基板をAlN焼結体の位置に移動させた反応系に変更した実験を行った。この構成で1675℃でN−CO混合ガスによって、a面で切り出した直径50.8mmの円板状の原料サファイア基板を窒化し、徐冷することにより、AlN/原料サファイア界面に転位層を有するAlN単結晶膜を作製した。加熱時に放射温度計の測定対象となる黒鉛ブロックの上には原料サファイア基板が載っているため、目標温度を1675℃となるように管理して反応に供した。炉内の雰囲気は一酸化炭素分圧が0.10bar、窒素分圧が0.90barである混合ガスを用いた。その他の運転操作にかかる詳細は実施例1と同様に行った。TEM観察像においてAlN/原料サファイア界面に転位層の存在を確認した。
X線回折分析の結果、本実施例で得られた窒化膜は以下の結晶配向関係を有するAlN単結晶であることが判った。
Figure 0004877712
AlN単結晶膜の結晶品質をX線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価したところ、基板面と平行なAlN{0 0 0 2}面で472arcsec、基板面と垂直なAlN{1 −1 0 0}面で379arcsecであった。
比較例2
比較例1と同様にして、1600℃でN−CO混合ガスによって、c面で切り出した直径50.8mmの円板状の原料サファイア基板を窒化し、徐冷することにより、AlN/原料サファイア界面に転位層を有するAlN単結晶膜を作製した。炉内の雰囲気は一酸化炭素分圧が0.10bar、窒素分圧が0.90barである混合ガスを用いた。その他の反応条件は比較例1と同じとした。TEM観察像においてAlN/原料サファイア界面に転位層の存在を確認した。
X線回折分析の結果、本実施例で得られた窒化膜は実施例2と同様の結晶配向関係を有するAlN単結晶であることが判った。
AlN単結晶膜の結晶品質をX線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価したところ、基板面と平行なAlN{0 0 0 2}面で438arcsec、基板面と垂直なAlN{1 −1 0 0}面で1691arcsecであった。
比較例3
比較例1と同様にして、1675℃でN−CO混合ガスによって、c面で切り出した直径50.8mmの円板状の原料サファイア基板を窒化し、徐冷することにより、AlN/原料サファイア界面に転位層を有するAlN単結晶膜を作製した。炉内の雰囲気は一酸化炭素分圧が0.40bar、窒素分圧が0.60barである混合ガスを用いた。その他の反応条件は比較例1と同じとした。TEM観察像においてAlN/原料サファイア界面に転位層の存在を確認した。
X線回折分析の結果、本比較例で得られた窒化膜は実施例2とほぼ同じ結晶配向関係を有するが、AlNのc軸を共有しつつc軸を回転軸として互いに1°前後回転した関係にある2種類の結晶が混在していて単結晶としての要件を満たしていない膜であることが判った。図3は本比較例で得られたAlN膜について基板面と垂直なAlN{1 −1 0 0}面の1面についてφ軸についてスキャンしたチャートである。これはX線回折分析において入射側と受光側のなす角をAlN{1 −1 0 0}の回折角として、本実施例で得られた積層基板の横面に対して1°だけ傾斜させてX線を入射し、この状態で基板面法線を回転軸として、基板を回転させてAlN{1 −1 0 0}が配向している方向を特定したものである。
AlN単結晶膜の結晶品質をX線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価したところ、基板面と平行なAlN{0 0 0 2}面で1153arcsec、分離した片方のピークの、基板面と垂直なAlN{1 −1 0 0}面で867arcsecであった。
比較例4
比較例1と同様にして、1675℃でN−CO混合ガスによって、a面で切り出した直径50.8mmの円板状の原料サファイア基板を窒化し、徐冷することにより、AlN/原料サファイア界面に転位層を有するAlN単結晶膜を作製した。炉内の雰囲気は一酸化炭素分圧が0.40bar、窒素分圧が0.60barである混合ガスを用いた。その他の反応条件は比較例1と同じとした。TEM観察像においてAlN/原料サファイア界面に転位層の存在を確認した。
X線回折分析の結果、本比較例で得られた窒化膜は実施例1と同様の結晶配向関係を有するAlN結晶、および比較例1と同様の結晶配向関係を有するAlN結晶が混在している膜であることが判った。図4は本比較例で得られたAlN膜について基板面と垂直なAlN{1 −1 0 0}面をφ軸についてスキャンしたチャートである。両結晶はAlNのc軸を共有しつつc軸を回転軸として互いに30°回転した関係にあり、単結晶としての要件を満たしていない。
AlN単結晶膜の結晶品質をX線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価したところ、基板面と平行なAlN{0 0 0 2}面で578arcsec、ピークが強く現れたドメインの、基板面と垂直なAlN{1 −1 0 0}面で1548arcsecであった。
Figure 0004877712
アルミニウム−酸素−窒素−炭素系相安定図 実施例にて用いた反応装置の概念的に示す平面図 比較例3にて得られた複数の方向に配向したAlN膜のX線回折φ軸スキャンチャート 比較例4にて得られた複数の方向に配向したAlN膜のX線回折φ軸スキャンチャート
符号の説明
21 環状電極
22 加熱炉
23 断熱材
24 黒鉛支持台
25 アルミニウム供給源
26 原料サファイア基板

Claims (5)

  1. 単結晶α−アルミナのa面からなる基板上に窒化アルミニウム単結晶からなる膜が積層されてなる積層基板であって、両結晶の界面近傍に転位層が存在し且つ窒化アルミニウム単結晶の貫通転位密度が5×10 cm −2 以下であり、窒化アルミニウム単結晶の{0002}面および{1−100}面のX線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価される結晶配向性が、それぞれ200arcsec以下および300arcsec以下であることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶積層基板。
  2. 単結晶α−アルミナのc面からなる基板上に窒化アルミニウム単結晶からなる膜が積層されてなる積層基板であって、両結晶の界面近傍に転位層が存在し且つ窒化アルミニウム単結晶の貫通転位密度が5×10 cm −2 以下であり、窒化アルミニウム単結晶の{0002}面および{1−100}面のX線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価される結晶配向性が、それぞれ200arcsec以下および900arcsec以下であることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶積層基板。
  3. 単結晶α−アルミナ基板をカーボン、窒素および一酸化炭素の存在下に加熱して還元窒化反応で基板上に窒化アルミニウム単結晶膜を製造する方法において、原料単結晶α−アルミナ基板および生成窒化アルミニウム単結晶以外のアルミニウム化合物であって、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムおよび酸窒化アルミニウムよりなる群から選ばれた少なくとも一種からなるアルミニウム化合物を反応系中に共存させ、当該アルミニウム化合物に由来するアルミニウム含有物質の気体を、前記単結晶α−アルミナ基板表面に供給して前記還元窒化反応を行うことを特徴とする前記窒化アルミニウム単結晶膜の製造方法。
  4. 前記アルミニウム化合物の温度を単結晶α−アルミナ基板の温度よりも高くして、当該アルミニウム化合物に由来するアルミニウム含有物質の気体を、前記単結晶α−アルミナ基板表面に供給して前記還元窒化反応を行うことを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 貫通転位密度が5×10 cm −2 以下であり、X線回折ωモードロッキングカーブ半値全幅で評価される{0002}面の結晶配向性が200arcsec以下である窒化アルミニウム単結晶膜を製造する、請求項3または4に記載の方法。
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