JP4874676B2 - 構造体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複数のマイクロポアが存在する陽極酸化皮膜を表面に有するアルミニウム合金を用いた構造体およびその製造方法に関する。
アルミニウム基板上に、陽極酸化皮膜を設け、皮膜のマイクロポアを規則配列させるナノ構造体の製造方法としては非特許文献1、2に記載されているように、一般にAl材料は99.99%純度の材質が使用されている。
しかし、高純度のアルミニウムが必要な理由やどの元素が規則性に影響を与えるかといった微量成分に関する記載は無い。一般に、99.5%以下の純度で、規則化度50%を得る事は困難である。また、純度が高いと軟化しやすく300℃以上の熱処理によって大きく変形してしまう。
一方、マイクロポアの内部に触媒等の200℃以上の高温で機能を発現し、さらに温度を上げるほど活性化するような機能材料として使用する場合、高純度アルミニウム等の基板が熱に耐えられない問題があった(非特許文献4)。
特許文献1によれば、アルミニウム板を陽極酸化し、陽極酸化皮膜表面に触媒を担持させてなる触媒が記載されている。
これらの欠点は、特許文献2に記載されるように、ステンレス板の少なくとも一方の面にアルミナ層を有するプレート状アルミナ担体であって、前記ステンレス板とアルミナ層の界面にアルミニウム成分及び鉄成分が存在する拡散層を有すると共に、該拡散層中のアルミニウム及び鉄の含有量がなだらかに変化していることを特徴とする耐熱性に優れたプレート状アルミナ担体によって改善された。
この耐熱性の改善は、特に後焼成の前に水和処理をした場合に著しい。しかしながら、このアルミナ担体の耐熱性も約700℃が限度であり、近年の燃料電池の実用化技術の進展に伴って重要性が増大しているメタンの改質反応等、700℃以上の高温で行われる重要な反応には使用することが出来ないという欠点があった。
特許文献3によれば、耐熱性に優れたアルミナ構造体の製造方法において、クラッド材が使用され、マイクロポア拡大処理によって基材との密着性を向上させている。
特許文献4によれば、耐熱性多孔質アルミナ皮膜の表面層を備える基板、およびその製造方法において、耐熱性を有して通電可能な金属板の表面にアルミニウム層を積層させると共に、該アルミニウム層を陽極酸化処理してアルミナ皮膜とし、かつ該アルミナ皮膜のほぼ全面を特に多数の微細なクラックの形成によって耐熱性多孔質アルミナ皮膜を有する基板が使用されており技術を向上させている。
しかるに、これらの触媒担体で使われるアルミニウム材は何れも純度99.5%に相当するJIS1050材であり、それ以上の高純度アルミニウムを使った例は知られていない。さらに陽極酸化処理条件は定電流電解によってなされているので、電圧が経時で変化する為、深さ方向でマイクロポア径、マイクロポア密度が異なる。さらに、具体的には、深部になる程、電圧が低下する為、マイクロポア径が小さく、マイクロポア密度の高い構造となる。表面と深部で、マイクロポア径、密度が異なるので、中間部で、分岐が多数発生し、ガスや液体の流動性が妨げられる為と考えられる。事実、100μm以上の膜厚では効果が低下してゆく傾向が知られている。(非特許文献4)
本発明者は、これら陽極酸化皮膜構造体は陽極酸化処理時に定電流電解処理を行なっているので、処理中電圧が変化する為、マイクロポアのマイクロポア径分布のバラツキ(標準偏差)が大きく直進性が低いので、マイクロポアの深部までガスが流動せず、マイクロポア深部の触媒機能を生かしきれていなかったと推定している。
特許文献5では基板と表面層とを有し、前記基板と前記表面層とが、同種のバルブ金属からなり、前記表面層に用いられる前記バルブ金属が前記基板に用いられる前記バルブ金属よりも純度が高い金属板に、酸化皮膜を形成させて得られる酸化皮膜付き金属板であって、前記酸化皮膜におけるマイクロポアが、前記表面層の表面から前記表面層と前記基板との境界を超えて形成されており、かつ、前記マイクロポアの間隔の標準偏差が20%以下である酸化皮膜付き金属板の技術が公開されているが、バルブ金属として知られているAl、Ti、Ta、Hf、Zr、W、Nb等の内、Al以外は高温に耐えられるが皮膜の均一性や経済性の点で課題があった。
Appl.Phys.Lett.71(19,),10 November 1997 Hideki Masuda et. al J. Electrochem.Soc.vol144、No.5、May 1997 L127〜L130 H.Masuda et. al Japanese Journal of Applied Physics Vol 44,No3,2005,pp1529-1533 Chien Chon Chen他 表面技術 vol46、No5、1995、p425-428 、亀山 特開平2−144154号公報 特開平8−281125号公報 特開2003−144920号公報 特開2004―107739号公報 特開2004―107770号公報
従って、本発明の目的は、従来技術のクロム酸の使用、処理時間が長い、高額な高純度アルミニウムの使用等の問題点を解決し、マイクロポア内部のガスや液体の流動特性を向上させ、陽極酸化皮膜厚さが厚い、深部領域でも活性が低下しない高温でも使用できるアルミナ担体の製造方法を提供することにある。
すなわち本発明は以下を提供する。
(1)アルミニウムの融点(660℃)を越える融点を有する純金属または合金からなる耐熱性支持体上に、純度が99.7%以上のアルミニウム合金を30μm〜300μmの厚さで有し、該アルミニウム合金を陽極酸化処理し、660〜280℃の条件で熱処理した後、陽極酸化皮膜を化学溶解処理して規則化構造の起点を得て、該起点から陽極酸化処理して得られる、該マイクロポアの配列の規則化度が20%以上である構造体:
前記規則化度は、マイクロポアの規則性の指標であり、FE−SEMによる表面写真を測定し、下記式(1)により定義される、
規則化度(%)=B÷A×100 (1)
ここで、上記式(1)中、Aは、測定範囲(1〜5μm2)におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、Aのうち、一のマイクロポアを中心とし、該一のマイクロポアに最も近い距離にある他のマイクロポアの円周が内接する円を描いた場合に、該円の内部にマイクロポア(中心が該円の内部にあるマイクロポアを含む。)を6個有することになるマイクロポアの数を表す。
(2)アルミニウムの融点(660℃)を越える融点を有する純金属または合金からなる耐熱性支持体上に、純度が99.7%以上のアルミニウム合金を30μm〜300μmの厚さで有し、該アルミニウム合金を陽極酸化処理し、陽極酸化皮膜を化学溶解処理して規則化構造の起点を得て、該起点から陽極酸化処理して得られる、該マイクロポアの配列の規則化度が20%以上である構造体で、前記マイクロポアの少なくとも一部に触媒を有する構造体:ここで規則化度は、(1)に記載される
(3)アルミニウムの融点(660℃)を越える融点を有する純金属または合金からなる耐熱性支持体上に、純度が99.7%以上のアルミニウム合金を30μm〜300μmの厚さで形成し、該アルミニウム合金を陽極酸化処理し、660〜280℃の条件で熱処理した後、陽極酸化皮膜を化学溶解処理して規則化構造の起点を設け、さらに該起点から陽極酸化処理する、マイクロポアの配列の規則化度が20%以上である構造体の製造方法:ここで規則化度は、(1)に記載される
4)前記耐熱性の基板の材料が、ステンレス、銅とその合金、およびアルミナセラミックからなる群から選択される上記(1)に記載の構造体。
5)上記いずれかに記載のマイクロポアが、平均ポア径25〜35nm、平均周期50〜120nmである。
6)上記いずれかに記載のマイクロポアが、シュウ酸または硫酸電解液中で定電圧電解によって生成される陽極酸化皮膜である
本発明の構造体は、250℃〜800℃という、比較的高温での用途に対しても使用することの出来る、高アスペクト比(マイクロポアの深さと径の比)の陽極酸化処理して得られる規則配列したマイクロポアを有するアルミナ構造体を提供する。特に機械的強度に優れるのみならず、高温における耐久性にも優れた構造体であり、比表面積が大きく、マイクロポアの直進性が高いので、ガス液体等の流動特性が良好であり、例えば触媒担体として用いた場合、高性能の触媒となる。
1.耐熱性支持体
耐熱性支持体とは、アルミニウムの融点(660℃)を越える融点を有する材料からなる基盤であり、その形状は限定されないが、板状体の基板であることが好ましく、融点が1000℃以上の材料が好ましい。
例えば純金属ではCo、Cr、Fe、Cu、Li、Mn、Mo、Nb、Ni、Si、Ta、Ti、W、Zr、合金ではそれらを適宜、混ぜ合わせて溶融したものであって下記のようなものが知られている。
鋳鉄、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼、Ni鋼、Cr-Mo、耐熱合金(インコネル、ハステロイ、ニモニック)、銅合金、ニッケル合金、チタン合金が挙げられる。
さらにステンレス鋼の中には非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼(通称:SUS304)や磁性を示すフェライト系ステンレス鋼(通称:SUS405)を始めとして、マルテンサイト系ステンレス鋼、pH鋼、Cr鋳鉄、Cr-Ni耐熱鋳鋼、Ni-Cr耐熱鋳鋼などに分類される。
その他、各種セラミック、コンクリート、レンガ類や石英、ソーダガラス、ホウ珪酸ガラス(商品名:パイレックス7740)、ガラスセラミック(商品名:コーニング9606)等の無機酸化物系材料も知られている。
これら耐熱性基板は全て本発明の耐熱性支持体として使用可能であるが、中でも、金属アルミ層と耐熱性基板との密着性の点で、アルミニウムやアルミナを混合した基板が好ましい。一般に、金属の場合には、同じ金属であるアルミニウムが混入し易く、金属酸化物の場合にはアルミナがアルミニウム層と密着し易いので好ましい。
最も好ましい耐熱基板は金属では、アルミニウムを混入させたステンレス鋼または銅板、金属酸化物ではアルミナである。市販の材料としてはアルミナイズド鋼(伸光金属(株)製)等が知られている。
また、アルミ複合セラミックタイル「エコ・アルセラミックタイル」(テクノウェーブ(株)製)を660℃以上の温度で溶融するとアルミニウムとセラミックが分離し、重力で溶融したアルミニウムが下に泣き出して、軽量なセラミックが浮上するが、完全に分離する前に冷却するとセラミック上にアルミニウムが乗った複合材料が得られ、このようにして得られた基材を本発明の耐熱性支持体として使用する事もできる。
金属にアルミニウムを混入させる方法は各種公知の一般的方法が使用できる。
例えば、非特許文献5に記載されているように、大きく溶融メッキ、溶射、拡散被覆、CVD、PVDに分けられる。その他、電気メッキ等の湿式法も可能ではあるが、アルミニウムは酸化し易いので、湿式法よりも乾式法が好ましい。
非特許文献5:ドライプレーティング 1989年発行 槇書店
中でも、溶融メッキ、溶射、拡散被覆が、均一性、経済性の点でさらに好ましい。
溶融メッキとは、亜鉛とかアルミニウムなどの比較的低融点の金属を溶解した層の中に、基材を通過または浸漬させてメッキする方法である。
通称商品名では、「トタン」、「ブリキ」、「アルミナイズド鋼板」と呼ばれている。
このような浸漬方法は通称、 ”どぶ漬け” ”てんぷらメッキ”などと呼ばれる方法でもある。これらは電気メッキと異なり、素材と被覆金属との間に合金層が出来ることで密着性と耐食性を著しく向上させる事が可能となる。
溶射とは燃焼ガス・アーク・プラズマ等の熱源により溶融した金属・セラミック等を製品に吹き付けることにより皮膜を作るコーティング技術で、鉄鋼・造船・建築・電機から液晶・半導体産業迄多岐の業種にわたっている。
拡散被覆とは、1914年にAllisonとHawkinsにより初めて報告され、鋼板やステンレス等の鉄鋼材料や銅の表面に、アルミニウムを染み込ませる処理方法でありカロライジング処理とも呼ばれている。アルミニウム粉(またはフェロアルミニウム粉)、ハロゲン化物、アルミナ粉などから成る拡散剤中に埋め込んで加熱する。母材が銅や黄銅などの銅系材の場合には、700℃程度、鉄系材料の場合には850〜1000℃位の温度が利用されている。
本発明の耐熱支持体は、いずれの方法で得られた基板でも良いが、中でも特許文献6に見られるように、大掛かりな設備が必要無く、比較的簡便な方法である拡散被覆が最も好ましい。
特許文献6 特許第3083292号
これらに基板は、金属アルミニウム箔との密着性以外にも耐腐食性、入手性、加工の容易性、価格等の点から好ましい。
基材としては、SUS304材以外にも市販のSUS430も同様に利用できる。その他、Cu合金やNi―Cr合金、Fe―Ni合金なども好適である。
アルミニウム箔との密着性を向上させる観点から、このように1wt%〜20wt%のAlが熱拡散によって実質的に表面に混入した材料を用いる事がさらに好ましい。混入した量は蛍光X線測定装置によって、予め純度のわかっている標準試料を作成して測定した検量線を用いる、検量線法により測定をおこなった。
本発明の耐熱性支持体の好ましい厚さは0.3mm〜10mmの範囲であり、0.5mm〜5mmの範囲がさらに好ましい。
2.アルミニウム合金
本発明で用いる、純度99.7%以上のアルミニウム合金とは、例えば市販されている一般品で言えば、JIS1070材、JIS1080材、JIS1085材、JIS1N90材、JIS1N99材が該当する。他にも、純度99.999%のアルミニウム材が日本軽金属(株)などから特注品として入手可能である。アルミニウム以外の合金成分はそれぞれJISにて規格化されている。他に、JIS1N99材や純度99.999%の特注材を母材として、例えば、Mg、Mn、Si等を添加して製造することも可能である。アルミニウム純度が上記範囲であると、マイクロポアの配列の規則性が高くなる。
3.アルミニウム合金を所定の厚さ(30〜300μm)で設ける方法
本発明の構造体は耐熱性支持体上に純度が純度99.7%以上のアルミニウム合金を30〜300μmの厚さで有する。
アルミニウム合金の厚さが30μm未満であると、規則化度が不十分の不具合がある。一方300μm超であると、繰り返し熱処理の際に耐熱基板、アルミ合金、陽極酸化皮膜の熱膨張率の差異に起因する応力が繰り返し発生し、結果として、各皮膜間が剥離しやすくなる不具合がある。
耐熱性基板は一般にアルミニウムとの密着性が良くないので、基板上に予めアルミニウム材料を<溶融めっき処理/拡散被覆処理>などで密着させて、アルミニウム合金の密着性を向上させる為の前処理を行なった後、所定の厚さ(30〜300μm)の板状のアルミニウム合金を基板と張り合わせて、その後前記、<熱間圧延工程><冷間圧延工程><中間焼鈍工程><その他の圧延成形工程><その他の仕上げ工程><脱脂処理><中和処理>を経て得ることが出来る。例えば、耐熱性支持体としてステンレスを用い熱間圧延機を使用してアルミニウム・ステンレスクラッド基材を得ることが例示できる。
前処理で、さらに、溶融めっき処理の引き上げ速度を遅くする等して、溶融めっきされるアルミニウム合金を厚くすることで、アルミニウム合金を張り合わせる事無くアルミニウム合金を設ける事も可能である。
(1)前処理A<溶融めっき処理>
鉄鋼表面等にアルミニウム高濃度層を形成させるいわゆるアルミナイジング表面改質方法として、溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金中に被処理物を浸漬し、引き上げる溶融めっき法が知られている。(例えば、特開平3-180461号)
<加熱溶融する手段>
1)ルツボ
セラミック製ルツボ中にアルミニウム金属を入れて、さらにルツボを電気炉に入れて加熱溶融する。電気炉内部は酸化防止の為、アルゴン等の不活性ガスで置換する事が好ましい。例えば信越化学(株)製 商品名:分析用PBNるつぼ
2)溶解炉
市販の実験用溶解炉としては、一旦、真空にした後、不活性ガスで置換した雰囲気中で金属に高周波を印加して加熱するものや、アーク放電によって加熱するものが知られている。例えば下記のような物が知られている。
大亜真空(株)製 商品名:小型真空アーク溶解炉 ACM-C01
大亜真空(株)製 商品名:高周波溶解炉 VMF-I-I0.5
一般に、溶融炉の使用が最も不純物の混入が少ないので好ましい。
<面削する手段>
基板を溶融めっき処理後、必要な場合は余分な金属アルミニウムを取り除くため、面削りをおこなう。ダイヤモンドカッター、グラインダー、やすりなどで面削する事が可能である。異種金属が混入しないように、ダイヤモンドコーティングやDLCコーティングなどをおこなった切削刃を使用する事が好ましい。例えば (米)ビューラー(株)製 商品名:アイソメット2000。特に、基板の裏面やエッジ部分等アルミニウム合金を30μm〜300μmの厚さで設けない面の金属アルミニウムを削り取る。
<均質化処理>
均質化処理は省略可能であるが、行なう事が好ましい。
基材の表面を面削した後に、510〜560℃で30分〜2時間保持する前段と、460〜500℃で30分〜2時間保持する後段とから成る均質化処理を施す。
均質化処理前段の温度510〜560℃の加熱は、鋳塊中の元素の均質化を目的とする。この温度範囲であると均質化効果の点から好ましい。処理時間は40分〜60分が最も好ましい。後段の温度460〜500℃の加熱は、鋳塊の温度を低温度として、熱間圧延中に圧延板の再結晶を抑制し、熱間圧延の終了時に再結晶させて微細再結晶組織とさせるためのものである。この温度範囲であると結晶の微細化の点から好ましい。処理時間は40分〜60分が最も好ましい。
(2)前処理B <拡散被覆処理>
1)アルミニウムまたはアルミニウム合金粉末にアルミナ粉末、揮発性ハロゲン化物を加えた混合粉末中に被処理物を埋没し、高温に加熱する粉末パック法(例えば、特開平7-109579号)、2)被処理物表面に蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、電気めっき等でアルミニウムもしくはアルミニウム膜を形成し、加熱しアルミニウムを拡散させる方法(例えば、特開平8-319557号)などがある。3)また、少なくとも1100℃以上の融点を示し、アルミニウム含量が40〜60wt%の鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム等とのアルミニウム合金粉末とハロゲン化物(例えば、塩化アンモン)とを有機樹脂結合材(例えば、ポリメタクリル酸ブチルのキシレン溶液)に分散させたものを鋼表面に塗布、乾燥し、それを不活性ガス中で800〜1100℃に加熱して揮発性のハロゲン化アルミニウムを生成させて鋼表面に拡散処理する方法が特開昭50―57037号にみられる。また、特許第3083292号に開示されているように、アルミニウム粉末と、チタン粉末との混合物スラリーを鋼表面に塗布し、これを真空中もしくは還元雰囲気中、または不活性ガス中で加熱するという非常に簡易な処理法があり、最も好ましい。すなわち、アルミニウムまたはアルミニウムを主体とした合金の粉末と、アルミニウムと金属間化合物を形成しやすい金属粉末との混合物スラリーを鋼表面に塗布し、これを真空中、または不活性ガス中もしくは還元性ガス雰囲気中で、アルミニウムの融点もしくはアルミニウム合金の液相線以上の温度程度(例えば、650〜1000℃)に加熱し、鋼表面にアルミニウムを選択的に拡散浸透させ、アルミニウム濃度の高い層を鋼表面に形成させることを特徴とする粉体のスラリーを利用した鋼表面へのアルミニウムの拡散方法である。
(3)アルミニウムを積層する方法
前処理を行った後、熱間圧延工程または/および冷間圧延工程によってアルミニウム合金箔を耐熱性支持体に張り合わせることができる。
<熱間圧延工程>
均質化処理後、熱間圧延を一般に数回以上の圧延パスにより行う。熱間圧延開始の鋳塊の温度は、均質化処理の温度即ち460〜500℃の温度で開始し、360℃以上の温度で終了させて再結晶させる。熱延板の厚さは2〜10mmが好ましい。
陽極酸化を行なうアルミニウム材は、熱間圧延工程で基材上に純度99.7%以上のアルミニウム箔を乗せて、適宜圧延をする事で得られる。耐熱性支持体の両面に陽極酸化処理をおこなう場合には、アルミニウム材を両面に張り合わせた後、圧延すれば良い。
<冷間圧延工程>
好ましくは、アルミニウム合金板に冷間圧延を施して所望の厚さにする圧延工程を行う。鋳造工程で得られたアルミニウム合金板は、冷間圧延により更に厚さを薄くされる。冷間圧延の効率の点で、鋳造後のアルミニウム合金板の厚さは薄い方が好ましい。熱延板の厚さは0.2〜1mmが好ましい。陽極酸化を行なうアルミニウム材は、冷間圧延工程で基材上に純度99.7%以上のアルミニウム箔を乗せて、適宜圧延をする事でも得られるが、熱間圧延工程で圧延する事が均一性の点から好ましい。両面おこなう場合には、両面に張り合わせた後、圧延すれば良い。
その他、必要な場合は、下記のような処理を行ってもよい。
<中間焼鈍工程>
必要に応じて、冷間圧延の後、中間焼鈍と呼ばれる熱処理を行い、アルミニウム金属結晶組織を微細化したうえで、再度冷間圧延を行うのも好ましい。この圧延工程により、アルミニウム合金板の厚さを0.1〜0.5mmに仕上げるのが好ましい。処理温度の好ましい範囲は400℃〜620℃の範囲で、処理時間の好ましい範囲は3分〜60分であり、4分〜40分が最も好ましい。温度が高い程、短時間で処理可能である。この処理は、自然酸化皮膜が厚くなり過ぎるのを防止する為アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行う事が好ましい。
<その他の圧延成形工程>
さらに、仕上げられたアルミニウム合金板は、平面性を改善するために、ローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって、平面性を改善される矯正工程を施されてもよい。また、板幅を所定の幅に加工するため、スリッタラインを通すスリット工程を行っても良い。
(4)その他の仕上げ工程
圧延工程で生成した酸化皮膜、圧延油を除去し、仕上げる為、化学研磨処理によって表層を化学的に溶解除去し洗浄する事が好ましい。
<化学研磨の代表的条件>
アルカリ処理 5% NaOH 水溶液 70℃ 10秒
デスマット処理 30% 硫酸 50℃ 60秒
アルカリ処理で、アルミニウム表層を溶解させた後、デスマット処理によってアルカリ処理で生成した中和生成物を溶解除去する。
<その他化学的前処理>
非特許文献6:アルミニウム技術便覧 軽金属協会編 カロス出版 (1996) p926〜929記載の化学的前処理記載の各種方法を用いる事ができ、同様の効果がある。中でも、表面層を溶解する作用のあるアルカリ脱脂、酸脱脂、電解脱脂、またはそれらの組み合わせ、さらに表面層を溶解する作用が強いアルカリエッチング、酸エッチング、またはそれらの組み合わせが好適に用いる事ができる。
<脱脂処理>
表面に付着した圧延油、自然酸化皮膜、不純物等を取り除く為、脱脂処理を行うことが好ましい。アルミニウムの種類によっては、前述したように、圧延工程の一部として脱脂処理が行なわれているものもあるが、脱脂処理が行なわれていないものに関しては脱脂処理を行なう事が好ましい。
前述した化学処理以外にも市販の脱脂処理剤が使用可能である。例えば、メルテックス(株)製 アルミニウムクリーナー NE-6ノンエッチングタイプの弱アルカリ性アルミニウム用脱脂剤で、異種金属と接触していてもアルミニウム素材を侵さない。パーカライジング(株)製 アルミニム脱脂材 商品名:ファインクリーナー4377K、リドリン53、パルクリーン391 等を使用できる。簡便には苛性ソーダ水溶液などを使用可能である。入手の容易さから、苛性ソーダ水溶液が最も好ましい。液の安定性を向上されるために、アルミニウムイオンを3〜10g/l程度含有させた水溶液が好ましい。好ましいpHの範囲はpH 9〜14、好ましい温度範囲は30℃〜70℃、好ましい処理時間は5秒〜60秒である。
<中和処理>
脱脂処理によって表面に生成した水酸化生成物(通称 スマットと呼ばれアモルファス状の水酸化アルミニム)を取り除く為、中和処理をおこなう事が好ましい。硫酸、硝酸等の無機の酸水溶液が好ましく使用される。液の安定性を向上されるために、アルミニウムイオンを3〜10g/l程度含有させた水溶液が好ましい。好ましいpHの範囲はpH−1〜3、好ましい温度範囲は30℃〜60℃、好ましい処理時間は5秒〜60秒である。
<アルミニウム箔厚さの計測方法>
基板上のアルミニウム合金の厚さは、例えばサンコー電子製 SME-2を使用し電磁誘導式モードで計測した。
Cu合金やNi-Cr合金等の非磁性基材上のアルミニウム箔の厚さは下地が出るまで一部を削り取り、厚さの差をマイクロメーターで計測した。
(5)鏡面仕上げ処理
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸をなくして、電着法等による封孔処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。
本発明において、鏡面仕上げ処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法、電解研磨を施す方法、化学研磨を施す方法が挙げられる。これらの方法は、適宜組み合わせて用いることができる。
電解研磨および化学研磨の方法は、例えば、アルミニウムハンドブック(第6版)、(社)日本アルミニウム協会編(2001年)、p.164−165に記載されている各種の方法が挙げられる。
好ましい鏡面仕上げ処理としては、研磨剤を用い、用いる研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行い、その後、電解研磨を施す方法が挙げられる。この場合、最終的に用いる研磨剤としては、#1500のものが好ましい。この方法によれば、アルミニウム基板が圧延を経て製造されたものである場合、圧延時に圧延筋が発生していても、圧延筋をなくすことができる。
鏡面仕上げ処理により、例えば、平均表面粗さRa0.03μm以下、光沢度70%以上の表面を得ることができる。平均表面粗さRaは、0.02μm以下であるのが好ましい。また、光沢度は80%以上であるのが好ましい。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。
陽極酸化処理の前に結晶粒を拡大する為の熱処理条件で熱処理しても良い。好ましい温度範囲は650℃〜300℃であり、最も好ましい温度範囲は640℃〜350℃である。好ましい処理時間は長い程好ましいが、少なくとも0.5時間、好ましくは1時間以上、さらに好ましくは2時間以上処理する事が好ましい。
(6)陽極酸化処理
陽極酸化処理としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、後述する起点形成方法を用いるのが好ましい。起点形成方法には、熱拡散による自己規則化方法、電解処理による自己規則化方法、予め鋳型を形成するスタンプ方法がある。
起点形成方法は、陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、予め規則的な起点を形成した後に本陽極酸化を行う方法である。
<起点形成方法>
1)熱拡散による自己規則化方法
非特許文献3に記載されているように99.7%純度のアルミニウム合金を熱処理によって陽極酸化皮膜のマイクロポア配列の規則性を向上させる事が可能である。
熱拡散による自己規則化方法とは、マイクロポアが自己規則化しやすい公知の電解条件で10〜100μm、好ましくは20〜50μmの皮膜厚さの陽極酸化を行い、その後にアルミニウム合金の融点直下(660〜600℃)から軟化点(280℃)以上の条件で熱処理し、更に陽極酸化皮膜の一部を化学溶解処理で溶解し、規則構造の起点を得る方法である。
熱拡散による自己規則化方法を用いれば、クロム酸のような環境に負荷の高い溶液を用いないで規則構造の起点を得ることができ、規則化度の高いマイクロポアを有する構造体を得ることができる。
さらに(自己規則化)陽極酸化処理前に同様に660〜280℃の条件で熱処理しても良い。
例えば、公知の電解条件で12μmの皮膜厚さの陽極酸化を行い、その後にアルミニウム合金の融点直下の条件で熱処理し、更に6wt%、20℃の燐酸水溶液で85分間の条件で溶解することにより規則構造の起点を得る方法である。陽極酸化処理前に580℃、1時間の熱処理の条件で熱処理しても良い。
このような公知の条件以外でもこれらに近い条件で処理する事で、同様に、規則化構造の起点を得る事が可能である。
例えば、マイクロポアが自己規則化しやすい公知の陽極酸化電解条件(0.3mol/L 硫酸水溶液 16℃ 24〜27V や0.5mol/L シュウ酸水溶液 16℃ 40V)で、好ましくは皮膜厚さ5μm〜200μm以上であり、さらに好ましくは皮膜厚さ7μm〜50μm以上であり、最も好ましくは皮膜厚さ10μm〜20μm以上である。厚い方が、好ましいが、50μm〜100μm以上で、マイクロポアの底部分の配列は自己規則化的に整列するので、熱拡散による配列の規則化効果が明確となる範囲である事が好ましい。
その後にアルミニウム合金の融点(600〜660℃)直下〜軟化点(280℃)以上の条件で熱処理する事で熱拡散による配列の規則化が進行する。さらに好ましい熱処理の温度範囲は650℃〜300℃であり、最も好ましい温度範囲は640℃〜350℃である。好ましい処理時間は長い程好ましいが、少なくとも0.5時間、好ましくは1時間以上、さらに好ましくは2時間以上処理する事が好ましい。
更に化学溶解処理によって細孔の表層の乱れた部分を一部除去する。好ましい溶液はクロム酸、燐酸、硝酸、シュウ酸、硫酸、塩酸、苛性ソーダ、KOH、アンモニアまたは、それらの混合液を用いる溶解であり、処理の安定化の為に、溶液にアルミニウムイオン(アルミニウム塩)を添加しても良い。中でも好ましい化学溶解処理液はクロム酸、燐酸、硝酸、シュウ酸、硫酸またはそれらの混合酸性水溶液が、水素ガスの発生が少なく、溶解速度を適度に制御可能なので、好ましい。
硝酸、クロム酸には、金属アルミニウムと接した際に、酸化皮膜を形成し金属アルミニウムの腐食を抑制する作用がある事が知られているので、硝酸、クロム酸と燐酸、シュウ酸、硫酸、塩酸との混合水溶液も好ましく使用できる。
燐酸、シュウ酸、硫酸、塩酸の好ましい濃度範囲は1wt%〜50wt%であり、さらに好ましい濃度範囲は4wt%〜40wt%である。
硝酸、クロム酸に関しては、好ましい濃度範囲は10wt%〜90wt%であり、さらに好ましい濃度範囲は20wt%〜85wt%であり、最も好ましい濃度範囲は25wt%〜80wt%である。
化学溶解処理の好ましい温度範囲は5℃〜60℃であり、さらに、好ましい温度範囲は8℃〜50℃であり、最も好ましい温度範囲は10℃〜35℃である。
好ましい処理時間は10分〜480分であり、さらに好ましい処理時間は20分〜360分であり、最も好ましい処理時間は30分〜240分である。
2)電解処理による自己規則化法
具体的な作成方法は下記文献に記載されている。
非特許文献7 Jpn.J.Appl.Phys.Vol35(1996)L126-L129(シュウ酸)
非特許文献8 J.Electrochem.Soc.Vol.144(1997)L127-L130(硫酸)
従来、陽極酸化で得られるマイクロポアの規則性を改善する方法として、二段階に分けて陽極酸化を行う方法が提案されている(Jpn. Journal of Applied Phisics, Vol.35, Part 2, No.1B, pp.L126-L129, 15 January 1996)。すなわち、一定時間陽極酸化を行って形成した酸化皮膜をいったん選択的に溶解除去した後、再度、同一の条件で陽極酸化を行うことにより膜面に垂直でまっすぐな独立した細孔を有する酸化皮膜を得る方法である。これは、一段階目の陽極酸化により形成された陽極酸化皮膜を除去することによりアルミニウム表面に窪みが形成され、この窪みが二段階目の陽極酸化の開始点となることを利用したものである。
代表的な公知の自己規則化陽極酸化処理条件を列挙すると 0.3mol/L 硫酸水溶液 16℃ 10〜27V 7時間、0.5mol/L シュウ酸水溶液 16℃ 30〜60V 5時間、0.2mol/L燐酸 0〜5℃ 160〜195V 1時間、0.6mol/L酸 0〜5℃ 177V 1時間、2mol/L塩酸 20℃ 240V 1時間、5mol/Lマロン酸 20℃ 100V 1時間、5mol/Lマロン酸 0〜5℃ 120V 1〜4時間、3mol/L酒石酸 0〜5℃ 195V 1時間が知られている。
好ましい溶液種類は硫酸、シュウ酸、燐酸、クエン酸、マロン酸、酒石酸水溶液であり、濃度範囲は、0.08mol/L〜10mol/Lであり、さらに好ましくは0.1mol/L〜7mol/Lであり、0.5mol/L〜6mol/Lが最も好ましい。好ましい温度範囲は−10℃〜30℃が好ましく、−5℃〜25℃が好ましい。0℃〜20℃が最も好ましい。好ましい電圧範囲は、5V〜350Vが好ましい8V〜300Vが好ましい10V〜240Vが最も好ましい。
自己規則化時の陽極酸化皮膜の厚さの好ましい範囲は、好ましくは皮膜厚さ5μm〜200μm以上であり、さらに好ましくは皮膜厚さ7μm〜50μm以上であり、最も好ましくは皮膜厚さ10μm〜20μm以上である。
<脱膜処理>
自己規則化時の陽極酸化処理により形成された酸化皮膜は用途に応じて、陽極酸化皮膜を溶解させて除去する脱膜処理を行う。この場合、50℃程度のクロム酸とリン酸の混合水溶液を用いて、3時間以上をかけることが好ましく、7時間以上がより好ましく、10時間以上が特に好ましい。なお、沸騰した水溶液を用いて処理すると、規則化の起点が破壊され、乱れるので、沸騰させないで用いる。
形成された陽極酸化皮膜は、アルミニウム部分に近くなるほど規則性が高くなってくるので、一度脱膜して、アルミニウム部分に残存した陽極酸化皮膜の底部分を表面に出して、規則的な窪みを得る。したがって、脱膜処理においては、アルミニウムは溶解させず、酸化アルミニウムである陽極酸化皮膜のみを溶解させる。
3)予め鋳型を作成するスタンプ法
陽極酸化処理で得られる多孔性陽極酸化アルミナ膜の細孔間隔は0.1μm前後と非常に微細であり、アルミニウム合金表面にこのような微細な窪みを人工的に規則正しく形成するには、高解像度の微細加工技術が必要となる。電子ビームリソグラフィやX線リソグラフィを用いることによって耐熱性支持体上のアルミニウム合金に極微細な窪み(本陽極酸化時の起点となる窪み)を形成することができるが、多孔性陽極酸化アルミナを製造する際に毎回、上記のような高度な加工技術を適用することは経済的でなく、多孔性陽極酸化アルミナ膜の利用範囲が制限されることになりかねない。
アルミニウム合金表面に複数の窪みを形成する際に、複数の突起を表面に備えた基板をアルミニウム合金の表面に押しつけることにより行うこと、すなわちモールドによってマザーパタンをアルミニウム合金表面に転写することができる。
まず、アルミニウム合金表面に突起を有するモールドを用意する。これら突起は、アルミニウム合金表面に形成される窪みに対応して規則的に配列されている。このモールドと突起の材質は、押し付ける圧力により破壊されたり突起の配置が変形することのない強度と硬度を有するものが望ましい。このためには、微細加工が容易で汎用的なシリコンモールドを用いることができるが、繰り返し使用回数を多くすることを考えると、強度の高いダイヤモンドやシリコンカーバイドで構成されているモールドがより望ましい。
また、突起を形成するモールドは鏡面の表面を有することが必要である。突起は、高解像度リソグラフィを用いて、上記窪みに対応するように前記モールド上に形成される。
なお、突起の形状は半球形に限定されるものではなく、円錐形や、三角錘、四角錘等の多角錘であっても良いことは言うまでもない。
上述のように規則的に配列した突起を設けたモールドをアルミニウム合金表面に押し付けることにより、アルミニウム合金表面に微細な窪み(凹部)を形成する。以下、この工程をプレスパターニングによるテクスチャリングという。
プレスパターニングによるテクスチャリングにおいて、この突起を有するモールドをアルミニウム合金表面に押し付ける方法は、突起を有するモールドをアルミニウム合金表面上に密着させ、油圧プレスなどを用いて圧力を印加することにより実施できる。この時、窪みの形成をより容易にするために、あらかじめアルミニウム合金表面を200〜500℃で、2時間程度加熱した後、焼鈍処理を施すことも有効である。
上述のようにしてアルミニウム合金の表面にマザーパタンを転写することによって、アルミニウム合金表面には、所定の間隔で規則的に複数の窪みが形成される。
このようにして複数の窪みを形成したアルミニウム合金表面を以下で説明する本(再)陽極酸化処理すると、この窪みから細孔が形成され、所定の間隔で配列された細孔からなる陽極酸化皮膜構造体を作製することができる。
<本陽極酸化処理方法>
本発明では、上記の方法で得られた規則化構造を開始起点の構造として、好ましくは同じ陽極酸化条件で再度、陽極酸化を行い、20μm〜300μmの厚い規則配列された陽極酸化皮膜構造体を得る事が可能となった。さらに長時間の陽極酸化処理によって300μm以上の膜厚とする事も可能である事は、原理的に容易に推定できる。
<陽極酸化処理条件>
本発明に用いられる自己規則化陽極酸化処理または本陽極酸化処理(以下陽極酸化処理と記載する)は、例えば、酸濃度1〜10質量%の溶液中で、アルミニウム基板を陽極として通電する方法を用いることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、シュウ酸、硫酸、クエン酸、マロン酸、酒石酸、リン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度0.01〜10mol/L、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧15〜240V、電気量3〜10000C/dm2、電解時間30〜1000分であるのが好ましい。
電解は、定電圧電解を行うのが好ましい。陽極酸化処理を、電圧15〜240Vの定電圧で行うと、マイクロポアの深さ方向で、マイクロポア径、密度が一定範囲となり、微細な枝分かれが起きない。
本発明者は、陽極酸化処理の後、電圧を急激に変化させることなく漸減させることにより、即ち、電流回復期間を発生させず、常に電流が流れる状態を保持した状態を保つようにしながら電圧を下げる方法により、陽極酸化皮膜のマイクロポアの配列の規則性を損なうことなく、陽極酸化皮膜のバリア層を薄層化できることを見出した。これは、電流回復期間が発生しないため、微細な枝分かれが起きないからだと考えられる。
具体的には、例えば、陽極酸化処理の電圧が100V以上である場合は、電圧の降下速度を20V/分以下とするのが好ましく、10V/分以下とするのがより好ましく、5V/分以下とするのが更に好ましい。
維持する電流は大きいほどよい。具体的には、10μA/cm2以上であるのが好ましく、30μA/cm2以上であるのがより好ましく、50μA/cm2以上であるのが更に好ましい。
電流が低くなりすぎると、マイクロポアの配列の規則性が乱れるため、上記速度で、電流が10μA/cm2未満に低下した場合には、一旦電圧降下を中止し、電流が10μA/cm2以上流れるのを待って、電圧降下を続けるのが好ましい。
<本陽極酸化前後の焼成処理>
さらに好ましい態様としては、特に、本陽極酸化処理を行なう前に400℃〜600℃で1時間〜6時間前熱焼成処理することが好ましく、特に荷重をかけて焼成することが好ましい。また、本陽極酸化後、適宜350℃以上で数時間、後焼成することが好ましい。焼成処理によりマイクロポアの配列の規則化が高まる。
<ポアワイド処理>
ポアワイド処理は、陽極酸化処理後、アルミニウム基板を酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきさせることにより、陽極酸化皮膜を溶解させ、マイクロポアのポア径を拡大する処理である。これにより、マイクロポアの配列の規則性を制御することが容易となる。
ポアワイド処理に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、20〜40℃であるのが好ましい。前工程で用いた陽極酸化処理液中にそのまま放置してもよい。
ポアワイド処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜60分であるのが好ましく、10〜50分であるのがより好ましく、15〜30分であるのが更に好ましい。
本陽極酸化した後、次いで、酸性水溶液を用いて陽極酸化によって生じた表面マイクロポアを拡大化処理した後、洗浄に換えて、又は洗浄した後、水蒸気若しくは5〜100℃の水を用いて水和処理を行なうことも好ましい。
<規則化度の測定>
ここで、規則化度は、マイクロポアの規則性の指標であり、FE−SEMによる表面写真を測定し、下記式(1)により定義される。
規則化度(%)=B÷A×100 (1)
ここで、上記式(1)中、Aは、測定範囲(1〜5μm2)におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、Aのうち、一のマイクロポアを中心とし、該一のマイクロポアに最も近い距離にある他のマイクロポアの円周が内接する円を描いた場合に、該円の内部にマイクロポア(中心が該円の内部にあるマイクロポアを含む。)を6個有することになるマイクロポアの数を表す。
図1は、マイクロポアの規則化度を説明するための陽極酸化皮膜表面の模式図であり、以下に図1を用いて上記式(1)中のBについて詳述する。
図1(a)に示すように、一のマイクロポア1は、該一のマイクロポア1を中心とし、該一のマイクロポア1に最も近い距離にある他のマイクロポア2の円周が内接する円3を描いた場合に、該円3の内部にマイクロポアを6個有することになるマイクロポアとなるため、Bとして数えられる。なお、マイクロポア4は、円3からはみ出す部分もあるが、中心が円3の内部にあるため、円3の内部にあるマイクロポアの数として数える。
一方、図1(b)に示すように、一のマイクロポア5は、該一のマイクロポア5を中心とし、該一のマイクロポア5に最も近い距離にある他のマイクロポア6の円周が内接する円7を描いた場合に、該円7の内部にマイクロポアを5個有することになるマイクロポアとなるため、Bとして数えられない。なお、マイクロポア8は、その中心が円7からはみ出すため、円7の内部にあるマイクロポアの数として数えない。また、一のマイクロポア9は、該一のマイクロポア9を中心とし、該一のマイクロポア9に最も近い距離にある他のマイクロポア10の円周が内接する円11を描いた場合に、該円11の内部にマイクロポアを7個有することになるマイクロポアとなるため、Bとして数えられない。
<マイクロポア>
本発明の構造体は、マイクロポアの配列の規則化度が20%以上であり、好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。マイクロポアの配列の規則化度が20%以上であるとマイクロポア内部のガスや液体の流動特性が向上する。
本発明の構造体は、マイクロポアが、平均ポア径25〜35nm、平均周期50〜120nmであるのが好ましい。ここで、周期は隣接するマイクロポアの中心間の距離を意味し、平均周期は、測定視野内の平均値である。
(7)触媒担持方法
さらに得られた陽極酸化皮膜構造体に公知の方法によって触媒を担持させ、触媒の活性評価を行なうことができる。触媒担持方法としては例えば、特許文献7ではpH6 濃度0.1wt%の塩化白金酸水溶液に陽極酸化皮膜構造体を浸漬処理して、白金触媒を担持させる方法が使われ、特許文献8では、pH10 濃度0.5wt%の塩化白金酸水溶液に室温〜82℃で1時間浸漬処理する方法が使われている。さらに、熱水処理と触媒担持を同時に実現する方法も開示されている。特許文献9ではpH11、1g/Lの超微粒子白金触媒を含有する水溶液に80℃で2時間浸漬することで、粒径2〜3nmの白金粒子が担持可能である事が開示されている。
また、特許文献10ではオルト珪酸エチルとエチレングリコールの混合溶液に浸漬後焼成してSiO2皮膜を設けた後1g/LのPdを含有するpH11、25℃、25時間浸漬処理させ、SiO上にPd触媒を形成させる方法が開示されている。さらに特許文献11ではコロイダルシリカゾルとシュウ酸などの酸の混合水溶液を用いて、SiO2を形成させながら、陽極酸化皮膜を溶解させた後、酢酸パラジウムのアセトン溶液に浸漬してPdをSiO2上に担持させている。
特許文献7:特開昭62−237947号公報
特許文献8:特開平02−144154号公報
特許文献9:特開平5−116901号公報
特許文献10:特開平10−73226号公報
特許文献11:特開2002−66337号公報
これらの方法は陽極酸化皮膜内部に貴金属触媒を担持させる公知の方法である。
ここで触媒は、触媒機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば以下のものをあげることができる。AlCl、AlBr、Al、SiO、SiO−Al、Siゼオライト、SiO−NiO、活性炭、PbO/Al、LaCoO、HPO、H4P、Bi−MoO、Sb、SbO−Fe、SnO−Sb、Cu、CuO−Cr、Cu−Cr−ZnO、Cu/SiO、CuCl、Ag/α−Al、Au、ZnO、ZnO−Cr、ZnCl、ZnO−Al−CaO、TiO、TiCl・Al(C、Pt/TiO、V、V−P、V/TiO、Cr、Cr/Al、MoO、MoO−SnO、Co・Mo/Al、Ni・Mo/Al、MoS、Mo−Bi−O、MoO−Fe、HPMo1240、WO、HPW1240、MnO、Fe−KO−Al、Fe−Cr、Fe−Cr−KO、Fe、Co、Co/活性炭、Co、Coカルボニル錯体、Ni、RaneyNi、Ni/担体、修飾Ni、Pt、Pt/Al、Pt−Rh−Pd/担体、Pd、Pd/SiO、Pd/Al、PdCl−CuCl、Re、Re−Pt/Al、Re/Al、Ru、Ru/Al、Rh、Rh錯体。
実施例1〜18、および比較例1〜3の構造体を以下の工程で作製した。
[1]耐熱性支持体の作製
耐熱性支持体として、金属板は、(株)ニラコ製の市販品を使用した。大きさは予め50mm×170mmにカットした。
ステンレス : SUS304板材 厚さ5mm
: SUS430板材 厚さ5mm
Cu板 : 純度99.9% Cu板材 厚さ5mm
Ni-Cr合金: ニクロム板 厚さ5mm
アルミナ板は、15型磁製耐熱板(アズワン(株)製) 厚さ6mmを用いた。
アルミナ板をダイヤモンドカッターで50mm×150mmの大きさに切断した。
[2]基材の作製
<基板表面の前処理A>
(A−1)溶融メッキ処理
まずは、純度99.99%の金属アルミニウムを“るつぼ”の中で700℃で溶融させ、その中にSUS304、SUS403、SUS430、純Cu、Ni-Cr合金、アルミナを順次、ゆっくりと浸漬させた。30分経過後、引き上げると、金属アルミニウムが付着した状態の基材が得られた。エッジなど余分な金属アルミニウムを取り除くため、面削りをおこなった。
(A−2)面削
ダイヤモンドカッターでエッジ部分のアルミニウムを除去した。
(A−3)均質化処理
面削後、500℃で40分均質化処理を施した。
(A−4)熱間圧延工程
前処理Aを行った基材は表面の平滑性を向上させる為、基材のみを熱間圧延して、表面の平滑性を向上させた。熱間圧延開始の温度は、500℃の温度で開始し、360℃以上の温度で終了させた。
1回目 設定値 7mm
2回目 設定値 6.5mm
3回目 設定値 6mm
平滑になった基材の両面に、純度99.7%材のAl合金箔(厚さ0.3mm)を張り合わせた後、熱間圧延処理を再度施した。熱間圧延開始の温度は、500℃の温度で開始し、360℃以上の温度で終了させて再結晶させた。
1回目 設定値 6.5mm
2回目 設定値 6.4mm
3回目 設定値 6.3mm
(A−5)冷間圧延工程
前処理Aを行なったサンプルは、表面の平滑性をさらに向上させる為、冷間圧延をおこなった。
1回目 設定値 6.25mm
<基板表面の前処理B>
(B−1)拡散被覆処理
さらに拡散被覆処理を行なった。アルミニウム粉末(粒度3μm)及びチタン粉末(粒度10μm)を体積比で5:5(27g:48g)混合し、エチルアルコールを添加し撹拌してスラリー状にした。SUS304、SUS403、純Cu、Ni−Cr合金、アルミナ基板に順次、特注ワイヤーバー#40(ワイヤ直径、ピッチ0.9mm)にて粉末混合物を塗布した。塗布量は75cc/m2であった。塗布物を乾燥後、アルゴンガス中、950℃で1時間加熱した。
(B−2)熱間圧延工程
前処理Bを行った基材の両面に、純度99.7%材、または3N材、または4N材、または5N材のAl合金箔(厚さ0.3mm)を張り合わせた後、熱間圧延処理を施した。
熱間圧延開始の温度は、500℃の温度で開始し、360℃以上の温度で終了させて再結晶させた。
1回目 設定値 5.5mm
2回目 設定値 5.4mm
3回目 設定値 5.3mm
上記で用いたアルミニウム合金材(アルミニウム箔)は、以下のものを用い表2に記載した。
<アルミニウム合金材>
5N材:自家製材:ニラコ(株)製5N材(99.999%) AL-010250粒状 を真空度10-6Pa〜10-7Pa中で8回繰り返し溶融した。純度は99.9999%であった。
4N材:日本軽金属(株)製 一般品 JIS-1N99 規格品
3N材:日本軽金属(株)製一般品 JIS-1N90 規格品
JIS-1050材、JIS-1070材:日本軽金属(株)製一般品 99.5% 規格品
<アルミニウム箔厚さの計測>
支持体上のアルミニウム合金厚さを以下の方法で測定した。
サンコー電子製 SME-2を使用し電磁誘導式モードでステンレス支持体上のアルミニウム箔の厚さを計測した。
Cu合金やNi-Cr合金等の非磁性基材上のアルミニウム箔の厚さは下地が出るまで一部を削り取り、厚さの差をマイクロメーターで計測した。
[3]仕上げ工程
(1)圧延工程で生成した酸化皮膜、圧延油を除去し、仕上げる為、化学研磨処理によって表層を化学的に溶解除去し洗浄した。
化学研磨の条件:
アルカリ処理 5% NaOH 水溶液 70℃ 10秒
デスマット処理 30% 硫酸 50℃ 60秒
アルカリ処理で、アルミニウム表層を溶解させた後、デスマット処理によってアルカリ処理で生成した中和生成物を溶解除去した。
(2)鏡面仕上げ処理
上記基板に、以下の鏡面仕上げ処理を施した。
<鏡面仕上げ処理>
研磨布を用いた研磨、バフ研磨および電解研磨をこの順に行うことにより、鏡面仕上げ処理を施した。バフ研磨後には水洗を行った。
研磨布を用いた研磨は、研磨盤(Struers Abramin、丸本工業社製)および耐水研磨布(市販品)を用い、耐水研磨布の番手を#200、#500、#800、#1000および#1500の順に変更しつつ行った。
バフ研磨は、スラリー状研磨剤(FM No.3(平均粒径1μm)およびFM No.4(平均粒径0.3μm)、いずれもフジミインコーポレーテッド社製)を用いて行った。
電解研磨は、下記組成の電解液(温度70℃)を用いて、陽極を基板、陰極をカーボン電極とし、12.5A/dmの定電流で、2分間行った。電源としては、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。
<電解液組成>
・85質量%リン酸(和光純薬工業社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
[4]起点形成方法
(1)熱拡散による自己規則化
陽極酸化処理前に580℃、1hrの熱処理を行い、0.3mol/L 20℃ のシュウ酸水溶液で40V、1hrの陽極酸化処理を行った。なお、陽極酸化を行う際に基材の切断面から電流漏れしないようにマスキングを行った。また、マスキングの密着性をよくするため、基板断面をビニールテープで覆った基板を、5wt%30℃の水酸化ナトリウム溶液で1分間、25wt%、60℃硫酸水溶液に1分間浸して表面処理を行った。次いで、前処理としての2分間陽極酸化を行って表面を粗面化した後、純水で洗浄し、乾燥させ、再度陽極酸化以外の部分にマスキング剤を塗り、約半日、室温で乾燥させた。渦電流式膜厚計: サンコー電子(株)製 EDY-1000で測定した陽極酸化皮膜の厚さは12μmであった。
厚さ12μmの皮膜を得た後、600℃、4hr熱処理を行なった。その後、6wt%、20℃の燐酸水溶液で85分間処理する事によって厚さ9μmの本陽極酸化の起点となる規則構造を得た。
[5]本陽極酸化処理
上記の方法で得られた規則化構造を開始構造として、表1に示す条件以外は上記と同様の陽極酸化条件で再度、陽極酸化を行い、20μm〜300μmの厚い規則配列された陽極酸化皮膜構造体を得た。厚さ[μm]と処理時間[hr]はほぼ比例し、成長速度は9μm/hrであった。
陽極酸化を行う際に基材の切断面から電流漏れしないようにマスキングを行った。尚、マスキングの密着性をよくするため、基板断面をビニールテープで覆った基板を、5wt%30℃の水酸化ナトリウム溶液で1分間、25wt%、60℃硫酸水溶液に1分間浸して表面処理を行った。次いで、前処理としての2分間陽極酸化を行って表面を粗面化した後、純水で洗浄し、乾燥させ、再度陽極酸化以外の部分にマスキング剤を塗り、約半日、室温で乾燥させた。
電解電流をモニターして急峻に低下するまでの間、陽極酸化処理を行なった。
渦電流式膜厚計: サンコー電子(株)製 EDY-1000で測定した陽極酸化皮膜の厚さを表1に示す。
[6]マイクロポア拡大処理
電解処理終了後、20℃ 8時間、陽極酸化処理液中に放置してマイクロポアを拡大させた。
[7]触媒担持
上記で得られた構造体を、pH11.4、Pt濃度1wt%の塩化白金酸水溶液に82℃で0.5時間浸漬処理し、Pt触媒を担持した。
<焼成方法>
マスキング材を剥がした後、電気炉を用いて、350℃で3時間、空気中で焼成した。
Figure 0004874676
[支持体の性状]
<規則化度の算出方法>
規則化度は上記の方法で触媒を担持する前の構造体の表面を、FE−SEMによる表面写真より測定した。1視野約1〜5μm2で、約200〜400個のマイクロポアを、図1で示す方法で測定し、結果を表2に示した。
(比較例1、2)
表2に記載の支持体を用いて、前処理Bとして拡散被覆処理を実施例と同様に行い、アルミニウム合金としてJIS1050材を表1に示す厚さで設け、実施例と同様の圧延工程、鏡面仕上げ処理を行い、起点形成をせずに、実施例の条件と同じ本陽極酸化処理をし、マイクロポア拡大処理を行わなかった表2に示す規則化度の構造体を得、実施例と同様に触媒を担持させて、実施例と同様に評価した。結果を表2に示す。
(比較例3)
支持体を用いないで、5mm厚さのJIS1070アルミニウム合金板をそのまま用いた以外は、実施例1と同様の圧延工程、鏡面仕上げ処理、起点形成を行い、さらに本陽極酸化処理、マイクロポア拡大処理を実施例と同様の方法で行って、表2に示す規則化度の構造体を得、実施例と同様に触媒を担持させて、実施例と同様に評価した。結果を表2に示す。
[触媒評価方法]
(1)触媒能の評価
メチルシクロヘキサンの脱水素反応を利用して本発明の構造体を評価した。図2に示す工程を用いた。
ガスボンベ22の窒素を混合機23に流して混合し、加熱炉25へと流す、冷却したメチルシクロヘキサン24は、加熱炉25に入る手前で窒素との混合ガスで加熱炉25内へ入れる。加熱炉25中に面積5mm×50mmの大きさに切断したサンプルである触媒50を5本入れ、窒素雰囲気中で1気圧、200℃に到達した後、冷却したメチルシクロヘキサン24を混合ガスに入れて加熱炉25に導入し、触媒50とメチルシクロヘキサン(濃度約100ppm)を1時間接触させた。加熱炉25中の気体は温調ヒータ26を備えたラインで取り出し、サンプリング用気体を六方弁27で取り出し、低分子用ガスクロマトグラフィ28で発生したトルエン濃度をFID検出器を用いて測定した。トルエン濃度は予め検量線法で求めた。最大35%のメチルシクロヘキサンからトルエンへの転換率であった。測定後のサンプリング用気体は液体サンプリング用冷却器29を介して活性炭スクラバー30に吸着させ、不要気体はドラフト31で排気させた。
(2)耐熱性(変形)の評価
触媒を担持させた構造体を600℃×1時間後空冷を10回繰り返した後、酸化皮膜表面のうねり状の起伏(表面形状の変化)を目視して、変化が見られないものを○、僅かに変化が見られるものを△、明らかに変化が認められるものを×とした。
Figure 0004874676
図1は、マイクロポアの規則化度を説明するための陽極酸化皮膜表面の模式図である。 図2は、触媒の評価に用いたメチルシクロヘキサンの脱水素反応を説明する模式図である。
符号の説明
1、5、9 一のマイクロポア
2、6、10 他のマイクロポア
3、7、11 円
4、8 マイクロポア
22 ガスボンベ
23 混合機
24 メチルシクロヘキサン
25 加熱炉
26 温調ヒータ
27 六方弁
28 低分子用ガスクロマトグラフィ
29 液体サンプリング用冷却器
30 活性炭スクラバー
31 ドラフト
50 触媒

Claims (3)

  1. アルミニウムの融点(660℃)を越える融点を有する純金属または合金からなる耐熱性支持体上に、純度が99.7%以上のアルミニウム合金を30μm〜300μmの厚さで有し、該アルミニウム合金を陽極酸化処理し、660〜280℃の条件で熱処理した後、陽極酸化皮膜を化学溶解処理して規則化構造の起点を得て、該起点から陽極酸化処理して得られる、該マイクロポアの配列の規則化度が20%以上である構造体:
    前記規則化度は、マイクロポアの規則性の指標であり、FE−SEMによる表面写真を測定し、下記式(1)により定義される、
    規則化度(%)=B÷A×100 (1)
    ここで、上記式(1)中、Aは、測定範囲(1〜5μm2)におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、Aのうち、一のマイクロポアを中心とし、該一のマイクロポアに最も近い距離にある他のマイクロポアの円周が内接する円を描いた場合に、該円の内部にマイクロポア(中心が該円の内部にあるマイクロポアを含む。)を6個有することになるマイクロポアの数を表す。
  2. アルミニウムの融点(660℃)を越える融点を有する純金属または合金からなる耐熱性支持体上に、純度が99.7%以上のアルミニウム合金を30μm〜300μmの厚さで有し、該アルミニウム合金を陽極酸化処理し、陽極酸化皮膜を化学溶解処理して規則化構造の起点を得て、該起点から陽極酸化処理して得られる、該マイクロポアの配列の規則化度が20%以上である構造体で、前記マイクロポアの少なくとも一部に触媒を有する構造体:ここで規則化度は、請求項1に記載される
  3. アルミニウムの融点(660℃)を越える融点を有する純金属または合金からなる耐熱性支持体上に、純度が99.7%以上のアルミニウム合金を30μm〜300μmの厚さで形成し、該アルミニウム合金を陽極酸化処理し、660〜280℃の条件で熱処理した後、陽極酸化皮膜を化学溶解処理して規則化構造の起点を設け、さらに該起点から陽極酸化処理する、マイクロポアの配列の規則化度が20%以上である構造体の製造方法:ここで規則化度は、請求項1に記載される
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