JP4868729B2 - レーザ衝撃硬化処理方法および装置 - Google Patents

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本発明は、金属やセラミックスなどの固体材料の表面に液体を介してパルス状のレーザビームを照射することにより、材料表面および内部の組織、硬さ、残留応力などの特性を調整するレーザ衝撃硬化処理方法および装置に関する。
腐食や亀裂の発生など、構造物の損傷は表面を起点とする場合がほとんどであり、構造物の寿命は表面の特性に左右される。このため、各種の表面処理技術を適用して材料表面の機械的あるいは化学的な性質を改善し、疲労強度、耐腐食性、耐摩耗性などを向上させることにより、構造物の寿命延長を図る試みが行われている。
ショットピーニングは代表的な表面処理技術であり、部材表面層の硬さの上昇と、表面層への圧縮残留応力の導入が可能である。このため、自動車、航空機などの産業分野で多く利用されている(例えば、文献1参照)。
一方、レーザはエネルギー密度や照射位置の精密かつ高速な制御が容易であり、他の方法では困難な高速処理、超急熱急冷処理などを行うことができるため、種々の技術が開発され、材料の加工処理への応用が拡大している。
その一つとして、液体を介して材料の表面にパルス状のレーザビームを照射するレーザ衝撃硬化処理があり、ショットピーニングと同様に部材表面層の硬さの上昇と、表面層への圧縮残留応力の導入を行うことが可能である。
レーザ衝撃硬化処理はショットピーニングと比較して効果が高く、非接触作業が可能、反力がない、レーザ照射の条件や部位を精密に制御できる等、ショットピーニングでは実現できない優れた利点があり、開発および実用化が進められている(文献2〜文献5)。
そこで、金属やセラミックスなどの固体材料の表面に、液体を介してパルス状のレーザビームを照射することにより、材料表面および内部の組織、硬さ、残留応力などの材料特性を調整するレーザ衝撃硬化処理について、図1〜図3を用いて説明する。
図1は、液体22中に設置した被処理部材41にパルス状のレーザビーム51を照射することにより、組織、硬さ、残留応力などの材料特性を調整する方法を説明した図である。
レーザビーム51のピーク出力密度が被処理部材41のプラズマ発生閾値(金属の場合概ね0.1〜10TW/m2)を超えると、被処理部材41の極表層(1μm以下)が瞬時に蒸発し、プラズマ52が発生する。液体22中では慣性が瞬間的に強く働くため、プラズマ52はほとんど膨張することができず、狭い領域にレーザビーム51のエネルギーが集中する。このため、プラズマの圧力は大気中や真空中と比較して十〜百倍にも達する。
液体22として水を使用した場合、被処理部材41に照射されるレーザビーム51のピーク出力密度をI(TW/m2)とすると、発生するプラズマの圧力P(GPa)は概ね、P=(0.2 × I)0.5となる。被処理部材41の設置雰囲気が油、アルコール、アンモニア水、ホウ酸水など、水以外の液体の場合には、次の係数kを使用してP=(0.2 × I × k)0.5により、プラズマの圧力を求めることができる。
k=(液体の音響インピーダンス)/(水の音響インピーダンス)
ここで、液体の音響インピーダンスは、(液体の密度)×(液体中の音速)であるため、前記した液体であれば、プラズマの圧力は水の場合と大きくは変わらない。従って、被処理部材41の表面でレーザビーム51のピーク出力密度が1〜100TW/m2となるようにレーザビーム51の大きさおよびパルスエネルギーを制御すれば、プラズマ52の圧力は概ね450MPa〜4.5GPaとなる。
このようにして発生した高圧のプラズマ52は、被処理部材41の表面を瞬間的に圧縮し、圧縮による表面の変位は衝撃波53となって部材の深さ方向に伝播する。このとき、衝撃波53の圧力が部材の降伏応力を上回ると、局所的な塑性変形が生じるため、組織、硬さ、残留応力などの材料特性を調整することができる。
レーザ衝撃硬化処理により材料特性を調整した例として、ステンレス鋼(SUS304)の硬さおよび残留応力の変化を図2および図3にそれぞれ示す。ピーク出力密度が50TW/m2となるよう、パルスエネルギー200mJ、パルス幅8nsのレーザビームを照射スポットの形状が直径0.8mmの円になるよう集光し、1mm2あたり36パルス照射した。71、72は処理前および処理後の硬さであり、レーザ衝撃硬化処理により1mm弱の深さまで硬さが上昇した。また、73、74は処理前および処理後の残留応力であり、レーザ衝撃硬化処理により約1mm弱の深さまで残留応力が引張から圧縮に改善された。
このように、材料表面の硬さが上昇し、圧縮の残留応力が形成されると、疲労強度の向上や応力腐食割れの予防に効果があるため、航空機産業、自動車産業、原子力産業などでレーザ衝撃硬化処理の適用が進められている。
レーザ衝撃硬化処理は、パルス状のレーザビーム51を被処理部材41の表面に直接照射するため、プラズマ52によって分解された液体22の構成元素が被処理部材41の表面と反応する場合がある。
例えば、水雰囲気でステンレス鋼をレーザ衝撃硬化処理する場合、水の分解によって水素と酸素が発生し、酸素がステンレス鋼の表面と反応するため、レーザ衝撃硬化処理後の表面にはFe3O4を主成分とする厚さ約1μmの強固な黒色の酸化被膜が形成される。
黒色の被膜が外観上好ましくない場合には、塗料や金属テープなどにより被処理部材41の表面に予め厚さ数十μm程度の被膜を形成した後レーザ衝撃硬化処理を施せば、被膜除去後の被処理部材41の表面は処理前と殆ど同一の表面性状を示す。
ショットピーニング技術協会編「金属疲労とショットピーニング」現代工学社 特開平07-246483号公報 特開平08-112681号公報 特開平08-326502号公報 特開2003-504212号公報
レーザ衝撃硬化処理においては、水などの液体を通して材料の表面にパルス状のレーザビームを照射している。しかしながら、レーザビームを照射すると、材料の表面に発生する高圧のプラズマによって液体が跳ね上がり、液面が乱れるという現象が生じる。この状態で次のレーザビームを照射すると、屈折により照射位置や照射形状が変化するため、液面の乱れが収まるまで待つ必要があり、処理を高速化することができなかった。
また、一般にレーザ衝撃硬化処理においては、パルス状のレーザビームを数mmから1mm程度の大きさの円形または四角形に整形し、材料の表面に照射して処理を行うため、1パルスで処理できる面積が小さく、処理速度が遅いという欠点があった。このため、繰返しの高いレーザ発振器の使用、パルスエネルギーが大きいレーザ発振器の使用など、処理を高速化する検討も行われているが、レーザ発振器の大型化および被処理部材または照射ヘッドを移動させるための駆動装置が大型化するという課題があり、処理の高速化は難しかった。
本発明は、従来技術に伴うこれらの課題を解決することを目的としてなされたものであり、被処理部材表面の硬さの上昇および残留応力の改善が可能で、レーザ照射による液体の跳ね上がりや液体表面の波立ちをなくして、レーザビームを安定して照射することができるレーザ衝撃硬化処理方法および装置を提供するものである。
また、本発明の目的は、駆動装置に過剰な負荷をかけず十分高速な処理ができるできるようにしたレーザ衝撃硬化処理方法および装置を提供することにある。
請求項の発明は、液体に接した被処理部材の表面に液体を通してパルス状のレーザビームをレーザ照射装置から断続的に照射し、被処理部材の表面処理を、気中環境にある前記被処理部材の前記レーザ照射装置より高い部位に対して行うレーザ衝撃硬化処理方法において、前記レーザ照射装置のレーザ出射端から被処理部材の表面までの間を、前記レーザビームの波長に対して透明な液体を前記レーザ出射端から噴射して満たし、前記レーザビームを前記液体を通して前記被処理部材の表面に照射することによって被処理部材の表面を衝撃硬化処理することを特徴とすることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、液体に接した被処理部材の表面の処理領域に、第一方向に照射スポットを移動しながら液体を通してパルス状のレーザビームをレーザ照射装置から被処理部材に断続的に照射し、前記第一方向に所定の距離を移動したら、前記第一方向に直交する第二方向に照射スポットを所定間隔移動し、その後に前記第一方向と逆の方向に前記照射スポットを移動しながらレーザビームを照射することで前記被処理部材の表面処理を行うレーザ衝撃硬化処理方法であって前記第一方向の方向軸上でレーザビームが2回照射される間に前記照射スポットが移動する距離をdx、前記所定間隔をdyとして、dx<dyとなるように前記被処理部材とレーザビームを相対的に移動させることによって被処理部材の表面を衝撃硬化処理することを特徴とするものである。
請求項の発明は、液体に接した被処理部材の表面に液体を通してパルス状のレーザビームをレーザ照射装置から断続的に照射し、被処理部材の表面処理を、気中環境にある前記被処理部材の前記レーザ照射装置より高い部位に対して行うレーザ衝撃硬化処理装置において、レーザ発振器並びにレーザ発振器から出射されたレーザビームを被処理部材の表面に導くための光学装置で構成されたレーザ照射装置と、被処理部材の表面に沿ってレーザビームを相対的に移動させるための駆動装置と、レーザ照射装置のレーザ出射端に設けられ、照射するレーザの波長に対して透明な液体をレーザビームと同軸状に噴射し、レーザ出射端から被処理部材の表面までの間のレーザの光路を液体で満たす液体噴射ノズルと、を備えることを特徴とするものである。
本発明によれば、レーザ照射装置のレーザ出射端に液体噴射ノズルを設け、照射するレーザの波長に対して透明な液体をレーザビームと同軸状に噴射することにより、レーザ出射端から被処理部材の表面までのレーザの光路が液体で満たされ、レーザ光路上に液体の自由表面がなくなる。このため、レーザビームを所定の位置に安定して照射することが可能となり、より繰返しの高いレーザ発振器を使用して処理速度を向上させることができる。さらに、レーザビームと同軸状に噴射される液体により常に光路が清浄な状態に保たれるため、不純物によりレーザが散乱されたり吸収されたりする恐れがない。また、噴射される液体により、レーザビームの照射で生じる処理生成物の除去が効率よく行われるため、より高い繰返しでレーザパルスを照射することが可能となり、処理速度を向上させることができる。
本発明によれば、被処理部材とレーザビームの相対的な移動方向におけるレーザビームの照射間隔を、それに直交する方向より小さくすることにより、被処理部材とレーザビームの相対的な移動速度が小さくなり、駆動装置の負荷を押さえることができる。従って、同一の駆動装置で、より高い繰返しでレーザパルスを照射することが可能となり、処理速度を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
第1実施形態
図4は、本発明の第1の実施形態によるレーザ衝撃硬化処理方法を示す説明図である。なお、図1と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
被処理部材41は、容器21に満たされた液体22の中に置かれた保持台42に設置されている。ここで、保持台42は、被処理部材41を固定し、高さおよび角度調整などを行うための位置調整機能を備えている。
レーザ発振器11から出射したパルス状レーザビーム51は、出力調整装置12、シャッター13、入射光学系14を介して光ファイバ15に入射する。光ファイバ15から出射したレーザビーム51は、レンズ16を備えた照射ヘッド17により液体22中の被処理部材41に向けて照射される。また、駆動装置30により照射ヘッド17を被処理部材41の表面に倣って移動させながらレーザビーム51を断続的に照射することにより、被処理部材41の表面の所定の処理領域を均一に衝撃硬化処理する。
ここで、レーザ発振器11としては、波長約1μmの近赤外で発振するガラスレーザやNd:YAGレーザが使用される。液体22として水を使用する場合、近赤外の光は水に吸収されやすいため、水深は数mm以下とする必要があるが、被処理部材41が複雑な形状のときには、水深を数mmに制御することは難しい。このため、水に殆ど吸収されず、水深の制限がないNd:YAGレーザの第2高調波(波長0.53μm)をレーザ発振器11として使用することが好ましい。
出力調整装置12は、偏光板とビーム分岐器の組合せなどによって構成され、レーザビーム51のエネルギーを調整する光学装置である。シャッター13は、高速動作ミラーなどで構成され、駆動装置30と同期して開閉制御することにより、被処理部材41の表面の必要な部分にのみレーザビーム51を照射することができるようになっている。また、入射光学系14は、レーザビーム51と光ファイバ15の位置関係を調整および保持するとともに、ホモジナイザなどを備えることによりレーザビーム51のビーム内空間強度分布を平坦化して光ファイバ15のレーザ入射端面の損傷を防ぐ機能を有している。
照射ヘッド17はレンズ16を備え、光ファイバ15から出射されたレーザビーム51を絞り込みながら被処理部材41の表面に照射する機能を有する。従って、照射ヘッド17と被処理部材41の距離を変化させることにより、被処理部材41の表面に照射されるレーザビーム51の面積が変化し、被処理部材41の表面に照射されるレーザビーム51のピーク出力密度(I(TW/m2))も変化する。
レーザ衝撃硬化処理の効果はプラズマ52の圧力(P=(0.2 × I)0.5)によって決まるため、その効果を保証するためには、該ピーク出力密度を所定の範囲に保つ必要がある。このため、被処理部材41を保持する保持台42は位置調整機能を有し、被処理部材41の位置調整により概略の調整を行うとともに、駆動装置30により照射ヘッド17の高さを制御することにより、照射ヘッド17と被処理部材41の距離を所定の範囲に保っている。
ここで、超音波距離計またはレーザ距離計などの距離計測装置(図示せず)を使用して照射ヘッド17と被処理部材41の距離を測定し、照射ヘッド17の高さを制御することが行われる。また、レーザビーム51の照射によるプラズマ52の発生音の到達時間により照射ヘッド17の高さを制御することも可能である。更に、処理部材41の表面で反射されレーザビーム51の反射強度を、光ファイバ15を介して測定することにより、照射ヘッド17の高さを制御することも可能である。
レーザビーム51の照射によって発生したプラズマ52は、短時間(10-7秒程度)でエネルギーを失って冷却され、微粒子となって液体中に浮遊する。この状態で、次のレーザビームを照射すると、微粒子がレーザのエネルギーを吸収したり散乱したりするため、効率の良いレーザ衝撃硬化処理ができない。
本実施形態では、微粒子の浮遊を防止するため、液体供給装置20を容器21に接続し、常に清浄な液体22を供給することが行われる。ここで、液体供給装置20は、ポンプ、フィルター、流量計などで構成される。
さらに、本実施形態では、液体表面23とほぼ同じ高さに液体表面への入射窓となる透明窓24を設置する。透明窓24は、使用するレーザの波長に対して透明な(吸収が小さい)材質であれば良く、耐久性に優れる石英ガラスやポリカーボネートを使用する。このように透明窓24を設置すると、レーザビーム51の光路に液体22の自由表面がなくなるため、液体表面23の乱れは原理的に発生しない。
これに対して、透明窓24を使用せずに、レーザビーム51を液体22の表面が入射すると、プラズマ52の圧力(ピーク圧力は3GPa程度)により液体22の跳ね上がりや波打ちが生じ、レーザビーム51が屈折してレーザの照射位置や照射形状が変化する。このため、液体表面23の乱れが静定するのを待って次のレーザビーム51を照射する必要があるが、例えば300mm×400mm、深さ200mmの大きさの容器21を使用する場合、液体表面23の乱れが静定するまでに概ね10秒を要し、処理を高速化することができない。また、跳ね上がった液体22が照射ヘッド17のレンズ16やその他の光学装置に付着してレーザを屈折させるという問題が生じる。
この点、本実施形態によれば、透明窓24を設けることにより液体表面23の乱れが防止され、待ち時間が不要となるため、パルス状のレーザビーム51を次々と断続的に照射することが可能となる。従って、発振の繰返しの高いレーザ発振器11を使用することにより、処理速度を高めることが可能となる。
図4に記載した実施形態では、液体の一部を覆うように透明窓24を設置したが、容器21内の液体表面23を全て覆うように構成しても良い。また、レーザビーム51を伝送する手段として光ファイバ15を使用した例を記載したが、歯科治療などで使用されているパイプとミラーを組み合わせた関節型のフレキシブルアームを使用しても良い。
なお、本実施形態では、照射ヘッド17を移動させることにより、被処理部材41の表面の所定の範囲をレーザ衝撃硬化処理する場合について説明したが、照射ヘッド17を固定して被処理部材41を移動させる場合、照射ヘッド17と被処理部材41を同時に移動させる場合にも全く同じ効果があることは言うまでもない。
第2実施形態
図5は、本発明の第2の実施形態に関わるレーザ衝撃硬化処理方法および装置を示す説明図である。なお、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態における被処理部材41は、第1実施形態とは異なり、容器21の液体の中に入れてレーザ衝撃硬化処理を行うことができない部材で、例えば橋脚などの構造物である。
被処理部材41が橋脚の場合、照射ヘッド17から出射されたレーザビーム51は溶接部43のまわりの熱影響部に照射され、残留応力を始めとする材料特性の調整が行われる。
レーザ衝撃硬化処理の効果を得るためには、被処理部材41の表面にレーザビーム51が照射されるときに照射部44が液体22で覆われている必要がある。ところが、図5に例示したように照射部44が構造物の下側に位置するような場合、照射部44を覆うように液体22を保持することは従来の技術では難しかった。
そこで、本発明は、図5に例示したような位置関係にあっても、レーザビーム51と同軸状に液体22を噴射することにより、レーザビーム51の光路および照射部44が液体22によって覆われるようにしたことを特徴としている。
また、レーザビーム51を照射した後、プラズマ52の圧力が液体22を伝わって液体表面23に達し、液体22の跳ね上がりが生じる。例えば、照射部44における液体22の厚さが1mmの場合、レーザビーム51の照射から約10-6秒後に液体22が跳ね上がり、一時的に照射部44の表面が露出する。従って、液体22の流量などを調整することにより、次のレーザビーム51が照射される前に、照射部44が液体22で再度覆われるようにする必要がある。
そこで、次のレーザビーム51の照射前に照射部44を液体22で再度覆い、レーザ衝撃硬化処理を連続的に行うために、液体噴射ノズル61の大きさおよび形状、液体22の噴射流量をパラメータとした実験を行い、レーザビーム51の照射によって露出した照射部44が液体22によって再度覆われるまでの時間を調査した。更に、その状態でレーザビーム51を被処理部材41に照射して、レーザ衝撃硬化処理の効果を確認する実験を行った。
その結果、例えば毎秒3mの流速、毎分4リットルの流量で液体22をレーザビーム51と同軸状に流すことにより、一時的に表面が露出した被処理部材41の照射部44は、約10-3秒後には液体22によって再度覆われることを確認した。また、高繰返しのレーザ発振器を使用して300Hzまでの実験を行い、レーザ発振の繰返しが高い場合においてもレーザ衝撃硬化処理の効果に変化がないことを確認した。
上記のとおり、毎秒3mの速さで液体22をレーザビーム51と同軸状に流すことにより、繰返し300Hzまではレーザ衝撃硬化処理の効果があることを実験的に確認したが、計算上は約1kHzまでレーザ発振の繰返しを高め、処理を高速化することができる。しかしながら、現在一般的に入手可能なパルス発振の高出力レーザは高々100Hzの繰返しであることから、液体22の流速としては毎秒3mで十分である。なお、将来の技術革新によって更に高速で発振するレーザ発振器が開発された場合においても、液体22の流速および流量を増加させることにより、レーザ衝撃硬化処理の効果を得ることができる。
なお、照射部44へレーザビーム51を正しく照射するためには、液体22中に気泡などの気相が生じないことが肝要である。このため、レーザビーム51と同軸状に噴射される液体22が負圧となり、照射部44に到達する前にキャビテーションを生じないよう、流速および流量を制御する必要がある。
第3実施形態
図6〜図11は、本発明の第3の実施形態に関わるレーザ衝撃硬化処理方法を示す説明図である。なお、本実施形態によるレーザ衝撃硬化処理方法は、図4に示した装置が適用されるので、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本発明の第3実施形態は、レーザビームと被処理部材の相対的な移動速度に特徴があるものである。ここで、レーザビームの移動速度とは、被処理部材の表面におけるレーザスポットの移動の仕方と関連する。そこで、図6に、従来の技術によりレーザ衝撃硬化処理を行ったときの被処理部材41の表面における照射スポット45の配置を示す。また、図7は隣り合う照射スポット45の照射間隔を説明する図である。ここで、駆動装置30によって照射ヘッド17を所定の速度で移動させながら被処理部材41の表面にレーザビーム51を照射することにより、図6および図7の横方向(X方向)にほぼ同一の照射間隔(dx)で順次レーザビーム51を照射する。処理領域の境界47に達すると、縦方向(Y方向)に所定の距離(dy)移動し、再度横方向(-X方向)に照射を繰り返す。
このように従来の技術では、レーザビーム51の移動方向におけるレーザビーム51の照射間隔(dx)とそれに直交する方向のレーザビーム51の照射間隔(dy)は等しく、被処理部材41の表面には、均等に規則正しくレーザビーム51を照射していた。
レーザ衝撃硬化処理を高速化するためにレーザ発振器11の繰返しを高めると、それに伴ってレーザビーム51をより速く移動させる必要が生じる。即ち、レーザビーム51の移動速度(v)は、照射間隔(dx)とレーザ発振器11の繰返し(f)を使用して v = dx × f により表される。従って、レーザ衝撃硬化処理を高速化するためにはレーザビーム51の移動速度(v)を大きくする必要があり、それに伴って駆動装置30の負荷も増えるため、高速化には限度があった。
処理を高速化する別の方法として、レーザビーム51のパルスエネルギーを大きくして一度に処理する面積を大きくすることが考えられるが、被処理部材41の表面が平坦でない場合にはレーザビーム51のピーク出力密度に局所的なムラ(強弱)が生じ均一な処理が難しくなるという問題がある。また、パルスエネルギーを大きくすると、ミラーを始めとする伝送光学系も比例して大きくなり、光ファイバ15による伝送が困難になるという欠点がある。
そこで、本実施形態では、レーザ衝撃硬化処理を高速化する際に問題となる駆動装置30の負荷を軽減するため、被処理部材41とレーザビーム51の相対的な移動方向のレーザビーム51の照射間隔(dx)を、それに直交する方向の照射間隔(dy)より小さくすることにより、被処理部材41とレーザビーム51の相対的な移動速度を小さくして駆動装置30の負荷を軽減するものである。このような移動速度の設定および駆動装置30の制御を行うために、駆動装置30には制御装置31が設けられている。
図8に、dy/dx=4、dy/dx=16としたときの照射スポット45の配置を示す。単位面積あたりに照射するレーザビーム51のパルス数は従来技術(図6)と同一であるが、X方向のレーザビーム51の移動速度は図6(dy/dx=1)と比較して(a)は1/2、(b)は1/4となり、駆動装置30の負荷が軽減されることは明らかである。
本実施形態によるレーザ衝撃硬化処理が、従来技術と同等またはそれ以上の効果を有することを確認するため、パルスエネルギー200mJ、パルス幅8nsのレーザビーム51を水中のステンレス鋼の表面に1mm2あたり36パルス照射して、表面および内部の残留応力を測定した。ここで、dy/dxは1、4、16、1/4、1/16の5段階とし、その各々について、照射スポット45の直径を0.6、0.9、1.2mmとした。
その結果、残留応力に対するdy/dxの影響は見出せず、単位面積に照射するレーザビーム51のパルス数が等しければ、dxとdyが大きく異なる場合でも、残留応力分布には影響を与えないことを確認した。
なお、図9に例示するように、単位面積に照射するレーザビーム51のパルス数を一定とし、dxを更に小さくしていくと、それに反比例してdyが大きくなり、遂にはレーザビーム51の照射スポット45の径(D)よりdyが大きくなり、処理対象面に隙間が生じる結果となる。しかしながら、このような処理条件においても、実験によればdyがDの5倍以下であれば、隙間の部分を含めて表面の残留応力は圧縮となり、十分なレーザ衝撃硬化処理の効果があることが確認されている。
また、レーザ衝撃硬化処理では、処理領域46の両端、即ち処理領域の境界47で駆動装置30の移動方向を毎回逆転させる必要がある。その際の加減速で時間を浪費するため、レーザ発振器11の発振周波数を高めても、処理速度は大きく改善できない場合がある。
図10は、駆動装置30が処理領域46の一方の境界から他方の境界まで移動するときの、時間と移動速度の関係を例示している。T1で加速を始めた駆動装置30は、T2で規定の速度(Vc)に到達し、一定速度で移動を続けた後、T5で減速を開始し、T6で停止する。また、規定の速度(Vc)に到達した直後のT3で、レーザ照射装置10のシャッター13を開としてレーザビーム51を照射し、T4でシャッター13を閉とする。次に、駆動装置30はY方向にdy移動し、同様の動作を繰り返すことにより、処理領域46を順次施工処理していく。
このような手順でレーザ衝撃硬化処理を行う場合について、施工処理時間83とdy/dxの関係を評価した結果を図11に例示する。ここで、レーザ発振器11の繰返しは300Hz、1mm2あたりの照射回数は36パルス、処理領域46の大きさは30mm×30mm、駆動装置30の加減速時の加速度は50mm/s2、加減速領域は各々3mmとした。また、施工処理時間83には、照射時間81、加減速時間82、およびY方向移動時間が含まれている。
従来の技術、即ちdy/dx=1で処理を行った場合、施工処理時間83は約480秒必要で、その約80%は装置の移動に費やされている。一方、本発明によりdy/dx=4で処理を行った場合、施工処理時間83は約210秒となり、レーザビームの照射時間81と加減速時間82がほぼ半々となる。更に、dy/dx=16で処理を行えば、施工処理時間83は約140秒まで短縮される。
以上のように、本発明によれば、レーザ発振器11の繰返しを高めてレーザ衝撃硬化処理を高速化した場合においても、被処理部材41とレーザビーム51の相対的な移動速度を小さくすることができるため、駆動装置30の負荷を低減することができる。
特に、供用中の大型構造物のレーザ衝撃硬化処理などにおいては、照射ヘッド17を移動させながらレーザビーム51を照射することになるが、本発明により移動速度を小さくすることができるため、駆動装置30の小型軽量化が可能となり、駆動装置30の誤操作などによる万が一の衝突事故の際にも、構造物および駆動装置30に対する損害を低く抑えることができる。
更に、原子炉内構造物のような狭隘な部位のレーザ衝撃硬化処理においては、処理領域46を一種類の駆動装置30で処理することが困難な場合や、一方向からでは処理領域46の全体にアクセスできず複数の経路でアクセスする場合がある。このような場合には、複数回に分割して施工処理が行われるが、処理領域間でオーバーラップを取ることが行われる。
このように、一つの処理領域46が小さくなる場合には、レーザビームの照射時間81と比較して駆動装置30の加減速時間82が相対的長くなり、非効率的な施工処理となるが、本発明はこのような場合に特に有効である。
第4実施形態
図12は、本発明の第4の実施形態に関わるレーザ衝撃硬化処理方法を示す説明図である。なお、本実施形態によるレーザ衝撃硬化処理方法は、図4に示した装置が適用されるので、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
第3実施形態では、被処理部材41に照射するレーザビーム51の照射間隔(dx)を、それに直交する方向の照射間隔(dy)より小さくすることにより、照射ヘッド17および駆動装置30の移動速度が低下し、その結果、駆動装置30の負荷軽減とレーザ衝撃硬化処理の高速化が達成することができる。
しかしながら、図9で説明したとおり、レーザビーム51の移動速度を極端に小さくすると、照射スポット45のY方向の間隔(dy)が照射スポット45の径(D)より大きくなり、処理領域46に施工の隙間が生じることになる。前述のとおり、この隙間は照射スポット45の径(D)の4倍以下、即ちdyがDの5倍以下であれば、レーザ衝撃硬化処理の効果があるが、場所により効果の大きさにムラ(強弱)が生じることになる。
そこで、この第4実施形態では、図12に示すとおり、被処理部材41の表面に照射されるレーザビーム51の照射スポット45の形状を細長く整形し、照射スポット45の長手方向に直交する方向(図12ではX方向)にレーザビーム51を移動させることにより、駆動装置30の負荷を軽減して処理速度を更に向上させるとともに、処理のムラ(強弱)が生じないレーザ衝撃硬化処理を実現するものである。
図12に示す手順に従い、パルスエネルギー200mJ、パルス幅8nsのレーザビームを照射スポットの形状が長径9.25mm、短径0.2mmの楕円となるように円柱状凸レンズを使って集光し、ステンレス鋼の表面に1mm2あたり36パルス照射した。施工処理後の残留応力は表面で-645MPaの圧縮で、表面から約1mmの深さまで効果があり、図3の結果とほぼ同等の残留応力の改善効果が得られた。このとき、レーザビーム51の移動速度、即ち駆動装置30の移動速度は0.9mm/sであった。
第4実施形態によるレーザビーム51の移動速度と、従来技術および第3実施形態によるレーザビーム51の移動速度の比較を表1に示す。第4実施形態によれば、残留応力の改善効果は同等にもかかわらず、レーザビーム51の移動速度、即ち駆動装置30の移動速度は従来技術(dy/dx=1)の約1/56となり、駆動装置30の負荷を大幅に低減することができる。また、第3実施形態と比較しても1/28(dy/dx=4)または1/14(dy/dx=16)となり、その効果は絶大である。
Figure 0004868729
また、第4実施形態に係る発明によれば、例えば大型構造物の溶接熱影響部に対して処理を施す場合などにおいて、レーザビーム51を幅約10mmの楕円状の照射スポット45に整形し、溶接線に沿って移動させることにより、必要な処理を完了させることができる。一方、従来技術ではレーザビーム51の移動は2次元的であり、駆動装置30の停止(減速)動作および起動(加速)動作は処理領域の境界47に達する毎に必要であるが、本発明によれば、それらの動作は各1回だけとなり、処理の高速化と駆動装置30の耐久性の向上が見込まれる。
更に、従来技術では、照射スポット45の形状は例えば直径1mmの円形であるため、駆動装置30がY方向に移動する場合には±0.1mm程度の精度が要求される。一方、本発明では、例えば長径10mmの楕円状の照射スポット45で施工処理を行う場合、Y方向に移動する際の精度は±1mm程度で十分となるため、駆動装置30の設計自由度が大幅に広がることにな
る。
第5実施形態
図13は、本発明の第5の実施形態に関わるレーザ衝撃硬化処理装置を示す説明図であり、第4実施形態として記載したレーザ衝撃硬化処理方法を実施する装置に関する。なお、図1と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
レーザ発振器11から出射したパルス状レーザビーム51は、出力調整装置12、シャッター13、ビーム拡大器91、ミラー92を介して円柱状凸レンズ93を備えた照射ヘッド17に入射する。ここで、ビーム拡大器91はレーザビーム51の大きさを拡大または縮小し、照射ヘッドに入射するレーザビーム51の大きさを調整する機能を有している。
図14は、本実施形態における円柱状凸レンズ93の機能を概念的に示した説明図である。円柱状凸レンズ93はその軸がレーザビーム51と概ね直交するように配置される。円柱状凸レンズ93に入射するレーザビーム51の垂直断面形状が円形の場合、円柱状凸レンズ93を通過したレーザビーム51の断面形状は楕円となり、被処理部材41の表面における照射スポット45の形状は細長い楕円となる。
本実施形態では、駆動装置30により移動ミラー94と照射ヘッド17を規定の速度で移動させることにより、被処理部材41の表面をレーザ衝撃硬化処理する。その際、照射スポット45の長手方向の大きさは、ビーム拡大器91によって調整することができる。なお、必要に応じ、移動ミラー94と照射ヘッド17を水平面内で2次元的に移動させるか、または保持台42の位置調整機能を使用して被処理部材41を移動させることにより、より広い領域の施工処理を実施することができる。
図13および図14に記載した本実施形態では、楕円状の照射スポット45の長手方向に直行する方向に駆動装置30を移動させる場合が施工処理の効率が最も高い。従って、駆動装置30の移動方向を任意に設定したい場合には、円柱状凸レンズ93をレーザビーム51と同軸を保つように回転させることにより、効率の良い施工処理を行うことができる。
図15は、円柱状凸レンズ93の代わりに円柱状凹面鏡95を使用した場合について、本発明の概念を説明する図である。円柱状凹面鏡95は、紙面に平行な面と交わる線が放物線の一部をなし、紙面に垂直な面と交わる線は直線となるような形状に構成されている。放物線の軸に平行にレーザビーム51が入射すると、レーザビーム51は放物線の焦点に集光するように反射されるため、円柱状凸レンズ93を使用した場合(図14)と同等の効果を得ることができる。
図16は、本実施形態により被処理部材41の表面をより均一に施工処理するための概念を示し、(a)と(b)は90度異なる方向から施工ヘッド17を見たときの概念図である。図16(a)に示すとおり、ホモジナイザ97は鈍角プリズム状の光学部品であり、レーザビーム51の右半分と左半分が被処理部材41の表面の照射スポット45で重なり合うように構成されている。
このときの照射スポット45におけるレーザビーム51の強度分布を図17に示す。ここで、横軸は照射スポット45内の位置を示し、縦軸はピーク出力密度(相対強度)である。ホモジナイザ97を設置することにより、照射スポット45内の強度分布が均一化され、ほぼ平坦な強度分布が得られている。
なお、本実施形態では、円柱状凸レンズ93の手前(レーザ発振器側)にホモジナイザ97を設置したが、逆の配置においても同一の効果を得ることができる。また、図16の説明では、ホモジナイザ97として鈍角プリズム状の光学部品を使用したが、カライドスコープ、マイクロレンズアレイなどを使用することも可能である。
第6実施形態
図18は、本発明の第6の実施形態に関わるレーザ衝撃硬化処理装置における照射ヘッドを示す説明図である。なお、この照射ヘッドは図1のレーザ衝撃硬化処理装置の照射ヘッド17に代替して用いられ、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態における被処理部材41としては、例えば小口径配管の内面が考えられる。照射ヘッド17は、図示しない位置決め治具により配管状の被処理部材41とほぼ同軸に設置される。レーザ発振器11から出射されたレーザビーム51は、ミラー92などにより伝送され、照射ヘッド17の内側に設置されたレンズ16に入射する。レンズ16を通過したレーザビーム51は、徐々に集光されつつ円錐状ミラー96でほぼ90度の角度で反射され、放射状のレーザビーム51となって配管状の被処理部材41の内側表面に照射される。参照番号98は、レーザの波長に対して透明な固体として用いられる入射窓を示し、円筒状の部材から構成されている。この場合、入射窓98と被処理部材41の間のレーザ光路は、液体で満たされていることはもちろんである。
このとき、レンズ16の焦点距離またはレンズ16の設置位置を調整し、レンズ16の焦点距離とレンズ16から被処理部材41までの光学的距離をほぼ等しくすると、被処理部材41の表面の照射スポット45は、細いリング状となる。この状態でレーザビーム51を照射しながら、配管状の被処理部材41の軸方向に照射ヘッド17を移動させることにより、配管状の被処理部材41の内面を施工処理することができる。
従来の技術で配管状の被処理部材41の内面を施工処理する場合には、照射ヘッド17を高速で回転させながらレーザビーム51を照射し、同時に照射ヘッド17を軸方向に連続的に移動させることにより、レーザビーム51を螺旋状に照射していた。このため、回転摺動部を備える必要があり、駆動装置30が複雑になるといった課題があった。また、駆動装置30の動作速度が大きくなり、負荷が高いことから、施工処理の高速化には限界があった。
本実施形態によれば、レーザビーム51は放射状に照射され、照射ヘッド17を回転させることなく360度分の処理が同時に行われるため、周方向の高速回転動作は不要となる。従って、回転摺動部も不要となるため、駆動装置30の構成を大幅に簡素化することができ、施工処理の速度を飛躍的に向上させることができる。
なお、本実施形態では、レンズ16と円錐状ミラー96の組合せにより、放射状のレーザビーム51を形成しているが、凹面鏡をレンズ16の代わりに使用して円錐状ミラー96と組み合わせることにより、同様の効果を得ることもできる。
また、円錐状ミラー96の斜面とその軸を含む平面が交わる線が、放物線の一部となるように円錐状ミラー96の斜面を整形すれば、軸と平行に入射するレーザビーム51を放物線の焦点に集光させることができるため、レンズ16は不要となる。
レーザ衝撃硬化処理の原理を説明するための概念図 ステンレス鋼にレーザ衝撃硬化処理を行ったときの硬さの変化を示す説明図 ステンレス鋼にレーザ衝撃硬化処理を行ったときの残留応力の変化を示す説明図 本発明の第1の実施の形態によるレーザ衝撃硬化処理装置を説明するための断面図 本発明の第2の実施の形態によるレーザ衝撃硬化処理装置を説明するための断面図 レーザ衝撃硬化処理におけるレーザビームの照射手順を示す説明図 レーザ衝撃硬化処理におけるレーザビームの照射位置関係を示す説明図 本発明の第3の実施の形態におけるレーザビームの照射手順を示す説明図 本発明の第3の実施の形態におけるレーザビームの照射手順を示す説明図 レーザ衝撃硬化処理における装置の移動速度と処理領域の関係を示す説明図 本発明の第3の実施の形態によるレーザ衝撃硬化処理の処理速度を示す説明図 本発明の第4の実施の形態における照射スポットの形状とレーザビームの照射手順を示す説明図 本発明の第5の実施の形態によるレーザ衝撃硬化処理装置を説明するための断面図 円柱状凸レンズを使用したときの照射スポットの形状を示す説明図 円柱状凹面鏡を使用した照射ヘッドとその機能を説明するための断面図 ホモジナイザを使用した照射ヘッドとその機能を説明するための断面図 ホモジナイザによるレーザ強度分布の均一化の効果を示す説明図 本発明の第6の実施の形態によるレーザ衝撃硬化処理装置を説明するための断面図
符号の説明
10・・・レーザ照射装置
11・・・レーザ発振器
12・・・出力調整装置
13・・・シャッター
14・・・入射光学系
15・・・光ファイバ
16・・・レンズ
17・・・照射ヘッド
20・・・液体供給装置
21・・・容器
22・・・液体
23・・・液体表面
24・・・透明窓
25・・・液体供給管
30・・・駆動装置
41・・・被処理部材
42・・・保持台
43・・・溶接部
44・・・照射部
45・・・照射スポット
46・・・処理領域
47・・・処理領域の境界
51・・・レーザビーム
52・・・プラズマ
53・・・衝撃波
61・・・液体噴射ノズル
71・・・処理前の硬さ
72・・・処理後の硬さ
73・・・処理前の残留応力
74・・・処理後の残留応力
81・・・照射時間
82・・・加減速時間
83・・・施工処理時間
91・・・ビーム拡大器
92・・・ミラー
93・・・円柱状凸レンズ
94・・・移動ミラー
95・・・円柱状凹面鏡
96・・・円錐状ミラー
97・・・ホモジナイザ
98・・・入射窓

Claims (8)

  1. 液体に接した被処理部材の表面に液体を通してパルス状のレーザビームをレーザ照射装置から断続的に照射し、被処理部材の表面処理を、気中環境にある前記被処理部材の前記レーザ照射装置より高い部位に対して行うレーザ衝撃硬化処理方法において、
    前記レーザ照射装置のレーザ出射端から被処理部材の表面までの間を、前記レーザビームの波長に対して透明な液体を前記レーザ出射端から噴射して満たし、
    前記レーザビームを前記液体を通して前記被処理部材の表面に照射することによって被処理部材の表面を衝撃硬化処理することを特徴とするレーザ衝撃硬化処理方法。
  2. 前記液体が、前記レーザ出射端から流速3m/秒以上、流量4リットル/分以上で前記レーザビームと同軸上に噴射されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ衝撃硬化処理方法。
  3. 液体に接した被処理部材の表面の処理領域に、第一方向に照射スポットを移動しながら液体を通してパルス状のレーザビームをレーザ照射装置から被処理部材に断続的に照射し、前記第一方向に所定の距離を移動したら、前記第一方向に直交する第二方向に照射スポットを所定間隔移動し、その後に前記第一方向と逆の方向に前記照射スポットを移動しながらレーザビームを照射することで前記被処理部材の表面処理を行い、
    前記第一方向の方向軸上でレーザビームが2回照射される間に前記照射スポットが移動する距離をdx、前記所定間隔をdyとして、dx<dyとなるように前記被処理部材とレーザビームを相対的に移動させることによって被処理部材の表面を衝撃硬化処理することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ衝撃硬化処理方法。
  4. 前記dyが、レーザビームの照射スポットの大きさの5倍以下であることを特徴とする請求項に記載のレーザ衝撃硬化処理方法。
  5. 液体に接した被処理部材の表面に液体を通してパルス状のレーザビームをレーザ照射装置から断続的に照射し、被処理部材の表面処理を、気中環境にある前記被処理部材の前記レーザ照射装置より高い部位に対して行うレーザ衝撃硬化処理装置において、
    レーザ発振器並びにレーザ発振器から出射されたレーザビームを被処理部材の表面に導くための光学装置で構成されたレーザ照射装置と、
    被処理部材の表面に沿ってレーザビームを相対的に移動させるための駆動装置と、
    レーザ照射装置のレーザ出射端に設けられ、照射するレーザの波長に対して透明な液体をレーザビームと同軸状に噴射し、レーザ出射端から被処理部材の表面までの間のレーザの光路を液体で満たす液体噴射ノズルと、を備えることを特徴とするレーザ衝撃硬化処理装置。
  6. 前記液体が、前記レーザ出射端から流速3m/秒以上、流量4リットル/分以上で前記レーザビームと同軸上に噴射されることを特徴とする請求項に記載のレーザ衝撃硬化処理装置。
  7. 前記駆動装置は、レーザビームが2回照射される間に前記照射スポットが移動する距離がdxとなる速度でレーザビームを第一方向に移動させ、前記レーザビームが前記第一方向に所定の距離を移動したら、前記レーザビームを前記第一方向に直交する第二方向にdyだけ移動させ、その後に前記第一方向と逆の右行に前記レーザビームを移動する構成であり、dx<dyであることを特徴とする請求項5または6に記載のレーザ衝撃硬化処理装置。
  8. 前記dyが、レーザビームの照射スポットの大きさの5倍以下であることを特徴とする請求項に記載のレーザ衝撃硬化処理装置。
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