JP4868101B2 - 多糖類安息香酸・脂肪酸エステルを用いたゲル化剤及び該ゲル化剤を用いたチキソトロピー性粘性組成物 - Google Patents

多糖類安息香酸・脂肪酸エステルを用いたゲル化剤及び該ゲル化剤を用いたチキソトロピー性粘性組成物 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、新規な多糖類の安息香酸・脂肪酸エステルの用途に関する。
【0002】
本発明に係る多糖類安息香酸・脂肪酸エステルは、溶剤や油剤に溶解することにより従来では得られなかったチキソトロピー性粘性を有するゲルを形成する。
【0003】
本発明における「チキソトロピー性粘性」とは、一定の力を加えると粘度が低下し、力が加わらなくなると元の粘度に回復するという性状を指称し、本発明に係る多糖類安息香酸・脂肪酸エステルを用いて調製したチキソトロピー性粘性組成物を用いれば、化粧品、医薬品、医薬部外品は滑らかさが出て、展延性がよく、インキ、塗料は滑らかさが出て、書き心地がよく、塗りやすく、しかも垂れることがない。
【0004】
【従来の技術】
従来、多糖類と安息香酸のエステル化合物について、公知の化合物としてセルロース安息香酸エステルやニトロセルロース安息香酸エステル等の合成例が開示されている。しかし、その物性については詳細な報告がなされていない。また、多糖類と安息香酸と脂肪酸とのエステル化合物についての合成例の開示はない。
【0005】
一方、溶剤や油剤のゲル状組成物あるいは増粘性組成物を得るために、有機変性粘土鉱物、デキストリン脂肪酸エステル、界面活性剤、樹脂などを単独又はこれらの組み合わせ、あるいは他の基材との組み合わせ等による方法が知られており、例えば、デキストリン脂肪酸エステル及び/又は親油性しょ糖脂肪酸エステルと有機変性モンモリナイトクレーを必須に含有することを特徴とする親油メークアップ化粧料(特開昭61−56115号公報)、カチオン界面活性剤の一種又は二種以上と、有機変性粘土鉱物と、溶剤と、を含有することを特徴とするゲル組成物(特公平6−98298号公報)等が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のものは調製に手間がかかったり、配合する基材や割合に制約があったり、又再現性を得ることが難しい等の問題点があり、高チキソトロピー性の組成物を得ることが難しかった。前出特開昭61−56115号公報に開示されているデキストリン脂肪酸エステルと有機変成モンモリロナイトクレー等を組み合わせたものでは、ゲル状組成物を得るための配合に制約があり、得られるゲル状組成物のチキソトロピー性粘性も充分といえるものではなく、前出特公平6−98298号公報に開示されているカチオン界面活性剤と有機変性粘土鉱物等を組み合わせたものでは、ロール機等による強力な剪断力を与えて有機変性粘土鉱物を均一に分散させる必要があり、粘度安定性が不十分であった。このため、高チキソトロピー性粘性付与ゲル化剤や単純な系で高チキソトロピー性粘性を有するゲル状組成物が望まれているところである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記状況に鑑み、鋭意研究を行った結果、特定の置換度を有する多糖類安息香酸・脂肪酸エステルが溶剤や油剤のゲル化剤として有用であること、特に高チキソトロピー性粘性を付与するゲル化剤として有用であることを見出し、また、該多糖類安息香酸・脂肪酸エステルを溶剤や油剤に溶解させた組成物は高チキソトロピー性粘性を有し、使用感に優れたものが得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
即ち、本発明は、(1).多糖類と安息香酸と脂肪酸とのエステル化物であって、該多糖類の水酸基が構成糖1分子あたり0.1〜3.0のベンゾイル基及び0.1〜3.0の脂肪酸基で置換されていることを特徴とする多糖類安息香酸・脂肪酸エステルからなる溶剤及び/又は油剤のゲル化剤、(2).多糖類がでんぷん又はカードランである(1)記載の多糖類安息香酸・脂肪酸エステルからなる溶剤及び/又は油剤のゲル化剤、(3).(1)又は(2)記載のゲル化剤と、溶剤及び/又は油剤とを含有してなるチキソトロピー性粘性組成物、(4)(3)記載のチキソトロピー性粘性組成物を含有してなる化粧料、医薬品、医薬部外品、塗料及びインキである。
【0009】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明に用いられる多糖類には、ワキシーコーンスターチ、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉等のでんぷん類、カードラン、セルロース、キサンタンガム、グアーガム、寒天、アルギン酸、イヌリン、キトサン、キチン等であり、また、その分解物、加工物又は化学修飾物も用いることができる。これら多糖類の構造において糖鎖は直鎖状でも分岐鎖状でも良いが、直鎖状ではあるが構造上立体構造をとるカードランや分岐鎖状構造を多く含有するアミロペクチン含量が多いワキシーコーンスターチ等のでんぷん類がチキソトロピー性を付与する上で特に望ましい。
【0011】
本発明における脂肪酸は、炭素数2〜22の脂肪酸であり、直鎖状脂肪酸、分岐状脂肪酸のいずれも用いることができる。
【0012】
本発明における多糖類へのベンゾイル基の置換度は、単位糖あたり0.1〜3.0である。多糖類へのベンゾイル基の置換度は、単位糖あたり最大3.0であり、置換度が0.1未満では溶剤や油剤への溶解性が悪くなってチキソトロピー性付与効果が得られない。
【0013】
本発明における多糖類への脂肪酸の置換度は、単位糖あたり0.1〜3.0である。多糖類への脂肪酸の置換度は、単位糖あたり最大3.0であり、脂肪酸の置換度が0.1未満では溶剤や油剤に対する溶解性が悪くなってチキソトロピー性付与効果が得られない。
【0014】
本発明に係る多糖類安息香酸・脂肪酸エステルの具体例を挙げれば次のとおりである。
【0015】
ワキシーコーンスターチ安息香酸・パルミチン酸エステル、コーンスターチ安息香酸・酢酸エステル、馬鈴薯澱粉安息香酸・ベヘン酸エステル、タピオカ澱粉安息香酸・2−エチルヘキサン酸エステル、カードラン安息香酸・パルミチン酸エステル。
【0016】
次に本発明に係る多糖類安息香酸・脂肪酸エステルの製造方法について説明する。
【0017】
本発明に係る多糖類安息香酸・脂肪酸エステルは、前記多糖類と安息香酸と脂肪酸とのエステル化反応によって容易に得ることができ、例えば、前記多糖類を反応溶媒に分散し、必要に応じて触媒を添加し、これに、安息香酸並びに脂肪酸の酸ハロゲン化物又は酸無水物を添加して反応させればよい。反応溶媒にはジメチルホルムアミド、ホルムアミド等のホルムアミド系、アセトアミド系、ケトン系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ジオキサン等の溶剤を適宜使用することができ、反応触媒にはピリジン、ピコリン等の3級アミノ化合物等を適宜使用することができる。反応温度は多糖類並びに脂肪酸の種類により適宜選択されるが、0℃以上から100℃の温度が好ましい。
【0018】
次に本発明に係る多糖類安息香酸・脂肪酸エステルを含有するチキソトロピー性粘性組成物について詳述する。
【0019】
本発明に係る多糖類安息香酸・脂肪酸エステルを組成物に配合する場合、その配合量は特に限定されないが、好ましくは0.1〜90重量%(以下、単に%で示す)、さらに好ましくは0.5%〜50%である。組成物に用いられる溶剤や油剤として、例えば、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール等の芳香族アルコール、フェノール、クレゾール、グアヤコール等のフェノール化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、桂皮酸アルコール、メトキシ桂皮酸オクチル等の桂皮酸誘導体、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪酸アルコールエステル類、ヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類、流動パラフィン、イソパラフィン、スクワラン、ワセリン等炭化水素系オイル、ヒマシ油、オリーブ油、椿油、亜麻仁油、ホホバ油、大豆油、液状ラノリン、ミンクオイル、羊毛油等の動植物油、蜜ロウ、硬化ヒマシ油、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、ロジン等のワックス類、ジメチルポリシロキサン、環状シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油等を用いることができる。
【0020】
本発明に係るチキソトロピー性粘性組成物には、添加剤として、染料、酸化チタン、マイカ、カオリン、タルク、酸化鉄、群青、チタン酸コバルト等の粉末類並びにそれらの疎水化処理粉末、有機顔料、香料、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、薬剤、紫外線吸収剤、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤等を目的物の性能を損なわない程度に配合できる。
【0021】
本発明において使用した測定機器並びにIR分析、ガスクロマトグラフ分析、チキソトロピー性の測定法及び物性評価法は次のとおりである。
【0022】
<IR分析>
FT−IR測定機器:(株)堀場製作所製 FT−200を用いKBr錠剤法により測定した。
【0023】
<ガスクロマトグラフ分析>
ガスクロマトグラフ測定機器:GLサイエンス GC353。
カラム:GLサイエンス NB−5 df=20μm 0.53mmI.D×15m。
サンプル作成方法:試料をアルカリ分解後、安息香酸、脂肪酸を抽出しガスクロマトグラフ測定した。
【0024】
<チキソトロピー性の測定法>(ずり応力−ずり速度線の作成)。
測定機器:東京計器 E型粘度計(VISCONIC EMD型)。
測定方法:試料2.5gをベンジルアルコール47.5gに90℃で加熱溶解させ24時間室温で静置してゲルを形成する。次に、前記測定器を用い、測定温度25℃でずり速度に対するずり応力を測定した。
【0025】
<物性評価法>
溶解性:試料5gを各種溶剤または油剤45gに90℃で加熱溶解させたときの状態を下記の判断基準で評価した。
◎:透明に完全に溶解する。
○:溶解する。
△:完全には溶解しないが、膨潤状態で半溶解状である。
×:膨潤も溶解もしない。
【0026】
ゲル化性:試料5gを各種溶剤または油剤45gに90℃で加熱溶解させ、24時間室温で静置後のゲルの状態を下記の判断基準で評価した。
◎:しっかりした固いゲルである。
〇:やわらかいゲルである。
△:高粘性のゾルである。
×:ゾルにもゲルにもならない。
【0027】
チキソトロピー性:試料5gを各種溶剤または油剤45gに90℃で加熱溶解させ、24時間室温で静置してゲルまたはゾルを作成する。このゲルをスパテラで攪拌した時の状態を下記の判断基準で評価した。
○:攪拌によってゲルが壊れ、粘度が低下し、ゲル状態からゾル状態に変化す
るが攪拌終了後静置すると元のゲル状態に復元する。
△:攪拌によって急激に粘度が低下し、ゾル状態から溶液状態に変化するが攪
拌終了後静置することにより元のゾル状態に復元する。
×:攪拌によって急激に粘度が低下し、ゲル状態からゾル状態に変化し、攪拌
終了後静置しても元のゲル状態に復元しない。
【0028】
【発明の実施の形態】
<ワキシーコーンスターチ安息香酸・パルミチン酸エステル>
ワキシーコーンスターチ(ワキシーアルファY:三和澱粉工業(株)製)33.70gをジメチルホルムアミド500gとピリジン120gとからなる混合溶媒に70℃で分散させ、塩化ベンゾイル84.3g、パルミチン酸クロライド27.5g(反応モル比3.5、安息香酸/パルミチン酸=86/14)を20分間滴下した。滴下終了後、反応温度を90℃として4時間反応させた。反応液を10%炭酸ナトリウム水溶液で中和し、固形分をメタノールで洗浄後、乾燥して淡黄色の粉体75gを得た。図1は得られたワキシーコーンスターチ安息香酸・パルミチン酸エステルのIRスペクトルである。このIRスペクトルから3100cm−1に芳香族C−H伸縮振動由来、2800〜3000cm−1にアルキル由来、1740cm−1にエステル由来のピークを確認した。また、アルカリ分解後のガスクロマトグラフ分析から置換度2.8、安息香酸/パルミチン酸=90/10であることを確認した。このものを溶剤としてベンジルアルコールを用いてチキソトロピー性の測定法により測定した結果を図2に示す。図2において縦軸はずり応力、横軸はずり速度を示すもので、該ずり速度が上がるにつれてずり応力が上がり、ずり応力が最大限上がったところからずり速度を下げると、ずり応力が上昇曲線に沿って下がってくる。これはチキソトロピー性を示すもので、上昇曲線と下降曲線が近いほどチキソトロピー性に優れていることを示すものであり、ワキシーコーンスターチ安息香酸・パルミチン酸エステルが溶剤にチキソトロピー性を付与させる優れたゲル化剤として有用であることが確認できる。
【0029】
【作用】
本発明に係る多糖類安息香酸・脂肪酸エステルは溶剤及び/又は油剤に溶解させた際にチキソトロピー性粘性を付与し、該チキソトロピー性粘性が付与されたゲル組成物は化粧料、医薬品、医薬部外品、塗料及びインキ用の基材として優れたものである。
【0030】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
<コーンスターチ安息香酸・酢酸エステル>
コーンスターチ(コーンアルファY:三和澱粉工業(株)製)10gをジメチルホルムアミド135gとピリジン30gとからなる混合溶媒に80℃で分散させ、無水安息香酸28g、無水酢酸6.3g(反応モル比3.0、安息香酸/酢酸=67/33)を5分間滴下した。滴下終了後、反応温度を90℃として4時間反応させた。反応液を5%炭酸ナトリウム水溶液にて中和沈澱させてから濾過し、固形分を水で洗浄後、乾燥して淡黄色の粉体19gを得た。IRスペクトルから3100cm−1に芳香族C−H伸縮振動由来、2800〜3000cm−1にアルキル由来、1740cm−1にエステル由来のピークを確認した。また、アルカリ分解後のガスクロマトグラフ分析から置換度2.3、安息香酸/酢酸=65/35であることを確認した。
【0032】
(実施例2)
<アセチル化タピオカ澱粉安息香酸・ベヘン酸エステル>
アセチル化タピオカ澱粉(クローバーS:大栄産業(株)製)33.70gをジメチルホルムアミド500gとピリジン120gとからなる混合溶媒に70℃で分散させ、塩化ベンゾイル84.3g、ベヘン酸クロライド35.9g(反応モル比3.5、安息香酸/ベヘン酸=86/14)を20分間滴下した。滴下終了後、反応温度を90℃として4時間反応させた。反応液を60容積%メタノール水溶液に沈澱させてから濾過し、固形分をメタノールで洗浄後、乾燥して白色の粉体92gを得た。このもののIRスペクトルから3100cm−1に芳香族C−H伸縮振動由来、2800〜3000cm−1にアルキル由来、1740cm−1にエステル由来のピークを確認した。また、アルカリ分解後のガスクロマトグラフ分析から置換度2.5、安息香酸/ベヘン酸=90/10であることを確認した。
【0033】
(実施例3)
<馬鈴薯澱粉安息香酸・イソステアリン酸エステル>
馬鈴薯澱粉(クローバー:大栄産業(株)製)59gをジメチルホルムアミド438gとピリジン115gとからなる混合溶媒に70℃で分散させ、塩化ベンゾイル76g、イソステアリン酸クロライド65g(反応モル比2.1、安息香酸/イソステアリン酸=71/29)を20分間滴下した。滴下終了後、反応温度を90℃として4時間反応させた。反応液を40容積%メタノール水溶液に沈澱させてから濾過し、固形分をメタノールで洗浄後、乾燥して白色の粉体120gを得た。このもののIRスペクトルから3100cm−1に芳香族C−H伸縮振動由来、2800〜3000cm−1にアルキル由来、1740cm−1にエステル由来のピークを確認した。また、アルカリ分解後のガスクロマトグラフ分析から置換度2.8、安息香酸/イソステアリン酸=75/25であることを確認した。
【0034】
(実施例4)
<カードラン安息香酸・パルミチン酸エステル>
カードラン(カードラン:武田薬品工業(株)製)34gをジメチルホルムアミド565gとピリジン97gとからなる混合溶媒に70℃で分散させ、塩化ベンゾイル70g、パルミチン酸クロライド46g(反応モル比3.3、安息香酸/パルミチン酸=76/24)を20分間滴下した。滴下終了後、反応温度を90℃として4時間反応させた。反応液を60容積%メタノール水溶液に沈澱させてから濾過し、固形分をメタノールで洗浄後、乾燥して白色の粉体80gを得た。このもののIRスペクトルから3100cm−1に芳香族C−H伸縮振動由来、2800〜3000cm−1にアルキル由来、1740cm−1にエステル由来のピークを確認した。また、アルカリ分解後のガスクロマトグラフ分析から置換度2.0、安息香酸/パルミチン酸=74/26であることを確認した。
【0035】
(実施例5)
<セルロース安息香酸・ベヘン酸エステル>
セルロース(微結晶セルロースS−105:武田薬品工業(株)製)3gをジメチルアセトアミド40g、塩化リチウム1.2gとピリジン10gとからなる混合溶媒に90℃で分散させ塩化ベンゾイル24g、ベヘン酸クロライド3.3g(反応モル比3.5:安息香酸/ベヘン酸=86/14)を10分間滴下した。滴下終了後、反応温度を90℃として3時間反応させた。反応液を水に分散させ析出させた後、粉砕して濾過し、固形分を水、メタノールで洗浄後、乾燥して淡黄色の粉末10gを得た。このもののIRスペクトルから3100cm−1に芳香族C−H伸縮振動由来、2800〜3000cm−1にアルキル由来、1740cm−1にエステル由来のピークを確認した。また、アルカリ分解後のガスクロマトグラフ分析から置換度2.4、安息香酸/ベヘン酸=90/10であることを確認した。
【0036】
(比較例1)
<アルファ化ワキシーコーンスターチ安息香酸エステル>
ワキシーコーンスターチのアルファ化でんぷん(ワキシーアルファY:三和澱粉工業(株)製)100gをジメチルホルムアミド300gとピリジン60gとからなる混合溶媒に70℃で分散させ、塩化ベンゾイル8.7g(反応モル比0.1)を5分間滴下した。滴下終了後、反応温度を90℃として4時間反応させた。反応液をメタノールに沈澱させてから濾過し、固形分をメタノールで洗浄後、乾燥して白色の粉体100gを得た。このもののIRスペクトルから3100cm−1に芳香族C−H伸縮振動由来、1740cm−1にエステル由来のピークを確認した。また、アルカリ分解後のガスクロマトグラフ分析からベンゾイル基の置換度が0.06であることを確認した。
【0037】
実施例1〜5及び比較例1で得られた試料について評価した結果を表1に示した。
【0038】
(表1)
Figure 0004868101
【0039】
実施例1〜5の多糖類安息香酸・脂肪酸エステルは、比較例1と比べ溶解性、ゲル化性、チキソトロピー性に優れた物性を示した。
【0040】
(実施例6)
Figure 0004868101
(製法)1〜11を加熱溶解し、ローラーにて混練し容器に入れて冷却してネイルエナメルを得た。このネイルエナメルはチキソトロピー性粘性を有し、展延性及び付着性に優れ、顔料の沈降も見られなかった。
【0041】
(実施例7)
Figure 0004868101
(製法)1,2を混合して加熱溶解した後、3〜11を加えて、さらに加熱溶解させ、ローラーにて混練り後、口紅型に入れて冷却しスティック状口紅を得た。
この口紅は、発汗も見られず、展延性及び付着性に優れるものであった。
【0042】
(実施例8)
Figure 0004868101
(製法)各成分を混合、加熱溶解後、容器に流して植物性ポマードを得た。このポマードは、チキソトロピー性粘性を有し、髪への展延性、付着性に優れるものであった。
【0043】
(実施例9)
Figure 0004868101
(製法)上記成分を加熱溶解し、ローラにて混練し容器に入れて冷却してインキを得た。このインキはチキソトロピー性粘性を有し、展延性及び付着性に優れ、顔料の沈降も見られなかった。
【0044】
(実施例10)
Figure 0004868101
(製法)上記1〜4を加熱溶解させた後、5と共に円筒状耐圧容器に充填してエアゾール型塗料を得た。この塗料は噴霧すると、付着性に優れ顔料の沈降も見られなかった。
【0045】
(実施例11)
Figure 0004868101
(製法)上記成分を室温で攪拌溶解させ、防除剤ゲルを得た。この防除剤は付着性が良く、展延性に優れていた。
【0046】
(実施例12)
Figure 0004868101
(製法)1〜4を均一に加熱溶解し、この加熱溶液4mlを5cm四方の正方形に打ち抜いた不織布(ED−4150:日本バイリーン社(株)製)に含浸させた後冷却してゲル化させ、更に粘着剤を塗布した7cm四方のポリ塩化ビニルフィルムで覆いパッチ剤を作成した。このパッチ剤は、不織布から液の染み出しが無く安定なものであった。
【0047】
【発明の効果】
本発明に係る多糖類安息香酸・脂肪酸エステルは溶剤や油剤に溶解した場合に従来では得られなかったチキソトロピー性の粘性を有するゲルを形成し、当該多糖類安息香酸・脂肪酸エステルを配合したチキソトロピー性粘性組成物は、展延性及び付着性に優れ、化粧料、医薬品、医薬部外品、塗料及インキ用の基材として優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態で得られた多糖類安息香酸・脂肪酸エステルのIRスペクトルである。
【図2】本発明の実施の形態で得られた多糖類安息香酸・脂肪酸エステルをベンジルアルコールに加熱溶解ゲル化させたゲルのずり応力−ずり速度線を示すものである。

Claims (8)

  1. 多糖類と安息香酸と脂肪酸とのエステル化物であって、該多糖類の水酸基が構成糖1分子あたり0.1〜3.0のベンゾイル基及び0.1〜3.0の脂肪酸基で置換されていることを特徴とする多糖類安息香酸・脂肪酸エステルからなる溶剤及び/又は油剤のゲル化剤
  2. 多糖類がでんぷん又はカードランである請求項1記載の多糖類安息香酸・脂肪酸エステルからなる溶剤及び/又は油剤のゲル化剤
  3. 請求項1又は請求項2記載のゲル化剤と溶剤及び/又は油剤の一種又は二種以上とを含有してなるチキソトロピー性粘性組成物。
  4. 請求項記載のチキソトロピー性粘性組成物を含有してなる化粧料。
  5. 請求項記載のチキソトロピー性粘性組成物を含有してなる医薬品。
  6. 請求項記載のチキソトロピー性粘性組成物を含有してなる医薬部外品。
  7. 請求項記載のチキソトロピー性粘性組成物を含有してなる塗料。
  8. 請求項記載のチキソトロピー性粘性組成物を含有してなるインキ。
JP2000353713A 2000-11-21 2000-11-21 多糖類安息香酸・脂肪酸エステルを用いたゲル化剤及び該ゲル化剤を用いたチキソトロピー性粘性組成物 Expired - Lifetime JP4868101B2 (ja)

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