JP4868084B2 - ポリカーボネート樹脂 - Google Patents
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Description
ところが、このような特殊な構造を有するジヒドロキシ化合物は、ビスフェノール類に比べると沸点が低いため、高温、減圧下で行うエステル交換反応中の揮散が激しく、原料原単位の悪化を招くだけではなく、品質に影響を及ぼす末端基濃度を所定の値に制御することが困難になるという問題や、ジヒドロキシ化合物を複数種使用する場合には、使用するジヒドロキシ化合物のモル比率が重合中に変化し、所望の分子量や組成のポリカーボネート樹脂が得られないという問題があった。
また、特定の還流冷却器を有する重合反応器を用いる方法も提案されているが(特許文献7参照)、原料原単位の改善は未だ満足できるレベルではなく、更なる改良が求められている。
炭酸ジエステルが蒸留精製されたものであり、ジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表される化合物を少なくとも含む複数種のジヒドロキシ化合物からなり、該ジヒドロキシ化合物の内の少なくとも1種のジヒドロキシ化合物の大気圧での沸点が300℃以下であり、
ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルのモル比率が0.97〜1.03であり、
反応器の少なくとも1つが、エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上であり、かつ熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段及び還流冷却器を具備した内容積20L以上の反応器であって、該熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上80℃以下であり、
還流冷却器に導入される冷媒の温度が該還流冷却器の入口において80℃〜150℃であり、かつ、
反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率と、得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位のモル百分率との差を、反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率で除した値の絶対値が、少なくとも1種のジヒドロキシ化合物については、0.03以下であり、いずれのジヒドロキシ化合物についても0.05を超えない条件で重縮合させることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
[3] 少なくとも3つの反応器を用いる[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[4] 前記全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して3重量%以下である[1]乃至[3]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[5] 前記触媒が、長周期型周期表における第1族の金属化合物及び/又は第2族の金属化合物であって、該第1族の金属化合物の使用量が、ポリカーボネート樹脂中のナトリウム原子、カリウム原子及びセシウム原子の合計量として1ppm以下である[1]乃至[4]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[6] 前記エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する1つ目の反応器に、触媒として、リチウム及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を、その金属原子の合計量として、原料として用いた全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、20μmol以下用いる[1]乃至[5]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[7] 前記触媒が、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物である[6]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[8] 前記反応器の少なくとも一つの内温を最高温度140℃〜270℃とし、110kPa〜1kPaの圧力下、0.1時間〜10時間で発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しつつ重縮合を行う[1]乃至[7]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[9] 2段階目以降の反応器の内温を最高温度210℃〜270℃とし、第1段階目の反応器の圧力より低い圧力下、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら重縮合を行う[1]乃至[8]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[10] 全反応段階における反応液の最高温度が250℃未満である[1]乃至[9]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[11] 前記熱媒体の最高温度が265℃未満である[1]乃至[10]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[12] 前記ジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表される化合物と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含む[1]乃至[11]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明における第一の発明は、触媒及び原料モノマーとして炭酸ジエステル並びにジヒドロキシ化合物を用いて、複数の反応器で多段階で、エステル交換反応により重縮合させてポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、該ジヒドロキシ化合物が構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物を少なくとも含み、
エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する反応器の少なくとも1つが、内容積20L以上の、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段及び還流冷却器を具備した反応器であり、該熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、かつ、
全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して10重量%以下であることを特徴とするものである。
本発明においては、モノヒドロキシ化合物の留出量が、その理論留出量の20%以上留出する反応器の少なくとも1つが、内容積20L以上であり、好ましくは30L以上である。前述のように、反応器の内容積が大きくなるほど本発明の効果が大きくなる。
導入される熱媒体の温度は、達成したい反応液の温度によって、適宜決めればよいが、熱媒体の温度が高くなりすぎると、原料モノマーの留出量が多くなりすぎるため、最高温度が好ましくは265℃未満、より好ましくは260℃未満、特に好ましくは255℃未満である。
尚、本発明において、熱媒体の温度とは、加熱手段に導入する前の温度、例えば加熱手段が熱媒体ジャケットである場合には、反応器の周囲(全周囲又は部分的に)に設けられた熱媒体ジャケットに導入する前の熱媒体の温度をさす。また、本発明において、反応液の温度とは、熱電対などの測定機器で測定される反応液の温度をいう。
還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において、45〜180℃であるのが好ましく、より好ましくは、80〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下する傾向があり、逆に低すぎると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
ここで全反応段階で留出するモノマーの合計量(以下、「留出するモノマー量」と称する場合がある)とは、エステル交換反応の開始から終了までに留出した全てのモノマーの合計量である。
留出するモノマー量は、少ない方が原料原単位の改善が大きい一方で、内温や加熱媒体温度を過度に低くしたり、圧力を過度に高くしたり、触媒量を増やしたり、重合時間を長くしたりする必要があり、ポリカーボネート樹脂の生産効率低下や、品質の悪化を招くため、その下限は通常0.2重量%、好ましくは0.4重量%、より好ましくは0.6重量%である。
例えば、重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させるが、各分子量段階での熱媒体の温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりする可能性がある。
本発明の方法において、ポリカーボネート樹脂の製造は、触媒を用いて、複数の反応器を用いて多段階で重合させるが、重合を複数の反応器で実施する理由は、重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制してやることが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
本発明において、反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせ、段階的にあるいは連続的に温度・圧力を変えていくなどしてもよい。
本発明において、後述する触媒は原料調製槽、原料貯槽に添加することもできるし、反応器に直接添加することもできるが、供給の安定性、重合の制御の観点からは、反応器に供給される前の原料ラインの途中に触媒供給ラインを設置し、好ましくは水溶液で供給する。
副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する反応器の少なくとも1つの内温については、上述した通り、その最高温度として、140〜270℃、好ましくは180〜240℃、更に好ましくは200〜230℃であるが、その他の条件としては、通常110〜1kPa、好ましくは70〜5kPa、更に好ましくは30〜10kPa(絶対圧力)の圧力下、通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間で、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。
特にポリカーボネート樹脂の着色や熱劣化を抑制し、留出するモノマー量を原料モノマーの総量に対して10重量%以下とするためには、全反応段階における内温の最高温度が、250℃未満、特に225〜245℃であることが好ましい。本発明の方法において、副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジエステルやビスフェノール化合物等の原料として再利用することが好ましい。
該ジヒドロキシ化合物が、複数種のジヒドロキシ化合物からなり、その中の少なくとも1種が構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物であり、
エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する反応器の少なくとも1つが、内容積20L以上の、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段及び還流冷却器を具備した反応器であり、該熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、かつ、
反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率と、得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位のモル百分率との差を、反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率で除した値の絶対値が、少なくとも1種のジヒドロキシ化合物については、0.03以下であり、いずれのジヒドロキシ化合物についても0.05を超えないことを特徴とする。
より具体的に説明すると、反応器、加熱手段、還流冷却器、それぞれの温度条件などは、上記第一の発明で説明した通りであるが、第二の発明においては、複数種のジヒドロキシ化合物を原料として用い、反応器へ原料として仕込んだ仕込み時の各ジヒドロキシ化合物のモル百分率をそれぞれ、A、B、C・・・・Nモル%とし、得られたポリカーボネート樹脂中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のモル百分率を、それぞれa、b、c・・・nモル%とした場合に、(|(a−A)/A|、|(b−B)/B|、|(c−C)/C|、・・、|(n−N/N|)の何れかを、0.03以下、好ましくは0.02以下、更に好ましくは0.01以下、特に好ましくは0.005以下とする。また、いずれのジヒドロキシ化合物についても0.05を越えないことが必要であり、好ましくは0.03以下、更に好ましくは0.02以下、特に好ましくは0.01以下、好適には0.005以下である。該値は、前記のように触媒の種類と量、エステル交換反応の温度(内温)、熱媒体の温度、圧力、滞留時間、還流条件等を適宜選択することによって達成することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂の製法においては、原料モノマーとして、炭酸ジエステル及びジヒドロキシ化合物を用いるが、ジヒドロキシ化合物の少なくとも1種が、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物であることを特徴とする(以下、「本発明のジヒドロキシ化合物」と称することがある。)。即ち、本発明のジヒドロキシ化合物は、2つのヒドロキシル基と、更に下記一般式(1)の構造単位を少なくとも含むものをいう。
本発明のジヒドロキシ化合物としては、構造の一部に上記一般式(1)で表される部位を有するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、下記式(3)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられるが、中でも、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、下記式(3)で表される環状エーテル構造を有する化合物が好ましい。
これらのジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物を用いることがポリカーボネート樹脂の耐光性の観点から好ましく、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
本発明のジヒドロキシ化合物は、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を含んでいても良く、特に酸性下で本発明のジヒドロキシ化合物は変質しやすいことから、塩基性の安定剤を含むことが好ましい。塩基性の安定剤としては、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩、脂肪酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等のアミン系化合物が挙げられる。その中でも、その効果と後述する蒸留除去のしやすさから、NaまたはKのリン酸塩、亜リン酸塩が好ましく、中でもリン酸水素2Na、亜リン酸水素2Naが好ましい。
また、これらの塩基性安定剤を含有した本発明のジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度や品質の制御が困難になるだけでなく、初期色相の悪化を招き、結果的に成形品の耐光性を悪化させるため、ポリカーボネート樹脂の製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換樹脂や蒸留等で除去することが好ましい。
本発明においては、上述した本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させてポリカーボネート樹脂を得ることができる。本発明で用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般構造式(4)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記一般式(4)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある)、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その上限は通常250℃以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。中でも100℃以上120℃以下が好適である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度が不足する可能性があり、しばしば固化等の不具合を招き、混合の温度が高すぎるとジヒドロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られるポリカーボネート樹脂の色相が悪化し、耐光性や耐熱性に悪影響を及ぼす可能性がある。
本発明の方法においては、上述のように本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルをエステル交換反応により重縮合させてポリカーボネート樹脂を製造する際に、エステル交換触媒を存在させる。即ち、重合反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する1つ目の反応器に、特定の化合物を存在させる。
用いられるエステル交換触媒(以後、単に触媒と呼ぶことがある)としては、ポリカーボネート樹脂の色相、耐光性等を満足するものであれば、限定されるものではないが、長周期型周期表における1族または2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
触媒の使用量が少なすぎると、十分な重合活性が得られず重合反応の進行が遅くなるため、所望の分子量のポリカーボネート樹脂が得られにくく、また、原料モノマーがポリカーボネート樹脂中に取り込まれる量が減り、副生するモノヒドロキシ化合物とともに留出するモノマー量が増加し、結果的に原料原単位の悪化や、その回収のため余分なエネルギーが必要となる可能性があり、更には、複数種のジヒドロキシ化合物を用いた共重合の場合には、前述のように、原料として用いたモノマーの組成比と製品ポリカーボネート樹脂中の各モノマー単位に由来する構成単位比が変わってしまう原因となることがある。
また、1族金属、中でもナトリウム、カリウム及びセシウムは、特にはリチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウムは、ポリカーボネート樹脂中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性があり、該金属は使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入する場合があるため、ポリカーボネート樹脂中のこれらの化合物の合計量は、金属量として、通常1重量ppm以下、好ましくは0.8重量ppm以下、より好ましくは0.7重量ppm以下である。
本発明においては、重合反応中のモノマーの揮散を抑制することにより、原料として使用するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を理論量の1.00近傍にすることができ、重合速度を低下させることなく高分子量の色相のよいポリカーボネート樹脂が得られる。
本発明の方法で得られるポリカーボネート樹脂は、該樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長350nmにおける光線透過率が60%以上であることが好ましく、さらに好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上である。該波長における光線透過率が60%を下回ると、吸収が大きくなり、耐光性が悪化する場合がある。
本発明の方法で得られるポリカーボネート樹脂は、該樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)を、63℃、相対湿度50%の環境下にて、メタルハライドランプを用い、波長300nm〜400nmの放射照度1.5kW/m2で、100時間照射処理した後に、透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値が12以下であるのが好ましく、より好ましくは10以下、特に好ましくは8以下である。
また、本発明の方法で得られるポリカーボネート樹脂は、該樹脂から厚さ3mmの平板に成形し、上記のようなメタルハライドランプでの照射処理等を行わずに、透過光で測定したイエローインデックス値(初期のイエローインデックス値、初期のYI値と言う)が通常10以下、好ましくは7以下、特に好ましくは5以下であり、メタルハライドランプ照射前後でのイエローインデックスの差の絶対値が6以下であるのが好ましく、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。
更には、本発明の方法で得られるポリカーボネート樹脂は、該樹脂から厚さ3mmの平板に成形し、透過光で測定した国際照明委員会(CIE)で規定されたL*値は通常96.3以上、好ましくは96.6以上、好適には96.8以上である。L*値が96.3を下回った場合には、耐光性が悪化する傾向がある。
ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
また、本発明で得られるポリカーボネート樹脂の下記構造式(5)で表される末端基の濃度の下限量は、通常20μeq/g、好ましくは40μeq/g、特に好ましくは50μeq/gであり、上限は通常160μeq/g、好ましくは140μeq/g、特に好ましくは100μeq/gである。
下記構造式(5)で表される末端基の濃度を制御するには、原料である本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率を制御する他、エステル交換反応時の重合圧力や重合温度、還流冷却器の温度等をモノマーの揮散のし易さに応じて制御する方法が挙げられ、本発明によればモノマーの揮散を抑制することができるので、原料のモル比率での制御が容易になる。
ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
押出機中の、溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常150〜300℃、好ましくは200〜270℃、更に好ましくは230〜260℃である。溶融混練温度が150℃より低いと、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネートの熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や着色、ガスの発生を招く。
更には、押出されたポリカーボネート樹脂を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。
水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10〜0.45μmであることが好ましい。
また、種々の成形を行う前に、必要に応じて、樹脂に熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等の添加剤を、タンブラー、スーパーミキサー、フローター、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、押出機などで混合することもできる。
以下において、ポリカーボネートの物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)酸素濃度の測定
重合反応装置内の酸素濃度を、酸素計(AMI社製:1000RS)を使用し、測定した。
各反応段階で留出した各モノマーおよびフェノールの重量を液体クロマトグラフィーで測定した組成から定量した。
(3)留出したモノマーの合計量の原料モノマーの総量に対する割合(重量%)の算出
上記(2)で定量した、ジフェニルカーボネートを含む全ての留出したモノマーの合計量と、原料として仕込んだ全てのモノマーの総量から、留出したモノマーの合計量の原料モノマーの総量に対する割合を算出した。
ポリカーボネート樹脂のサンプルを、溶媒として塩化メチレンを用いて溶解し、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t0と溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t0
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
比粘度を濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
(5)ポリカーボネート樹脂中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比及び末端フェニル基濃度の測定
ポリカーボネート樹脂中の各ジヒドロキシ化合物構造単位比は、ポリカーボネート樹脂30mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解し、溶液とし、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、日本電子社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)を用いて常温で1H NMRスペクトルを測定した。各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に基づくシグナル強度比より各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比を求めた。
(6)原料として仕込んだ各ジヒドロキシ化合物の組成比と得られたポリカーボネート樹脂中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比のずれ
上記(5)で求めたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位のモル百分率と原料として仕込んだジヒドロキシ化合物のモル百分率の差を、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物のモル百分率で除して求めた値の絶対値から判断した。数値が大きいほど、上記ずれが大きいことを意味する。
パーキンエルマー社製マイクロウェーブ分解容器にポリカーボネート樹脂ペレット約0.5gを精秤し、97%硫酸2mLを加え、密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱した。室温まで冷却後、68%硝酸1.5mLを加えて、密閉状態にして150℃で10分間マイクロウェーブ加熱した後、再度室温まで冷却を行い、68%硝酸2.5mLを加え、再び密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱し、内容物を完全に分解させた。室温まで冷却後、上記で得られた液を純水で希釈し、サーモクエスト社製ICP−MSで定量した。
ポリカーボネート樹脂のペレットを、窒素雰囲気下、110℃で10時間乾燥する。次に、乾燥したポリカーボネート樹脂のペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度220℃、成形サイクル23秒間の条件で、射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)を成形する操作を繰り返し、10ショット目〜20ショット目で得られた射出成形片の厚み方向での透過光におけるイエローインデックス(YI)値とL*値をカラーテスタ(コニカミノルタ社製CM−3700d)を用いて測定し、平均値を算出した。YI値が小さい程、黄色味がなく品質が優れることを示し、L*値が大きいほど明度が高いことを示す。
上記(8)で得られた射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm、10ショット目〜20ショット目)の厚み方向の光線透過率を、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製U2900)を用いて測定し、その平均値を算出し評価した。
(10)メタルハライドランプ照射試験
スガ試験機社製メタリングウェザーメーターM6Tを用いて、63℃、相対湿度50%の条件下、光源として水平式メタリングランプを、インナーフィルターとして石英を、またランプの周囲にアウターフィルターとして♯500のフィルターを取り付け、波長300〜400nmの放射照度が1.5kw/m2になるように設定し、上記(8)で得られた20ショット目の平板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)の正方形の面に対して、100時間照射処理を行った。照射後のYI値を上記(8)と同様に測定した。
ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名POLYSORB)
CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール(新日本理化社製 商品名SKY CHDM)
DEG:ジエチレングリコール(三菱化学社製)
DPC:ジフェニルカーボネート (三菱化学社製)
[実施例1]
(第1段階の反応)
オイルを熱媒体とした熱媒体ジャケットおよび撹拌翼、真空ポンプに連結された留出管を具備した40Lの重合反応器に、ISBを30.44mol、CHDMを13.04mol、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCを43.48mol仕込み、水溶液にした酢酸カルシウム1水和物を、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり1.25×10−6molになるように仕込んだ後、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005vol%〜0.001vol%)。留出管には、冷媒として蒸気(入口温度100℃)を用いた還流冷却器、更に還流冷却器の下流に冷媒として温水(入口温度45℃)を用いた凝縮器を配置した。続いて該反応器に加温した熱媒体を流通させ、反応液(即ち内温)が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温を100℃に保ちながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始して、40分で内温を220℃にし、内温が220℃になった時点で減圧を開始して、90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)になるように制御した。減圧を開始すると、速やかに反応で生成したフェノールの蒸気が留出し始め、内温を220℃に一定に制御するように、熱媒体ジャケットに導入するオイルの温度(熱媒体ジャケット入口温度)を適宜調整した。フェノールの留出量が多くなった時間帯は熱媒体オイルの温度を242℃とし、それ以外の時間帯は242℃未満とした。
重合反応で副生するフェノール及び留出するモノマーは、還流冷却器でその一部を凝縮させて重合反応器に戻し、凝縮しないフェノールおよび還流冷却器で凝縮しなかったモノマーは凝縮器に導いて回収した。この段階で留出したフェノールは、理論留出量の94%であった。
オイルを熱媒とした熱媒体ジャケットおよび撹拌翼、真空ポンプに連結された留出管を具備した重合反応器に、窒素雰囲気下、第1段階で得られたポリカーボネートオリゴマーを移送した。留出管には、冷媒として蒸気(入口温度100℃)を用いた還流冷却器、および還流冷却器の下流に冷媒として温水(入口温度45℃)を用いた凝縮器、更にその下流にドライアイスを冷媒としたコールドトラップを設置した。
各反応段階で、還流冷却器、凝縮器およびコールドトラップで回収された留出分は、それぞれ重量と組成を測定し、留出した副生フェノールとモノマーを定量した。このようにして決定された各段階における留出モノマーの重量を全て合計して、原料として仕込んだモノマーとの比を算出して、表1に示した。
得られたポリカーボネート樹脂の分析結果、および前記方法において評価した結果を表1に示した。モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
ISBとCHDMのモル比率と第1段の反応における熱媒の最高温度を変えた以外は、実施例1と同様に行った。実施例1と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
酢酸カルシウム1水和物を、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、2.50×10−6molになるように仕込み、第1段の反応における熱媒の最高温度を244℃とした以外は実施例1と同様に実施した。実施例1と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
酢酸カルシウム1水和物を、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.90×10−6molになるように仕込み、第1段の反応における熱媒の最高温度を239℃とした以外は実施例1と同様に実施した。実施例1と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さいポリカーボネート樹脂が得られた。また、実施例1より更に黄色度が小さく、明度に優れ、耐光性も良好であった。
酢酸カルシウム1水和物を、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.25×10−6molになるように仕込み、第1段の反応における熱媒の最高温度を233℃とした以外は、実施例1と同様に実施した。実施例1に比べ第2段での重合速度が低下し、モノマーの留出が若干増加したが、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
酢酸カルシウム1水和物の代わりに酢酸マグネシウム4水和物を用い、第1段の反応における熱媒の最高温度を変えた以外は、実施例3と同様に実施した。実施例3と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
酢酸カルシウム1水和物の代わりに酢酸バリウムを用い、第1段の反応における熱媒の最高温度を変えた以外は、実施例3と同様に実施した。実施例3と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
酢酸カルシウム1水和物の代わりに酢酸リチウムを用い、第1段の反応における熱媒の最高温度を変えた以外は、実施例3と同様に実施した。実施例3と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
CHDMの代わりにDEGを用い、第1段の反応における熱媒の最高温度を変えた以外は、実施例3と同様に実施した。実施例3と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
酢酸カルシウム1水和物の代わりに炭酸セシウムを用い、第1段の反応における熱媒の最高温度を変えた以外は、実施例3と同様に実施した。実施例3と比較すると、モノマーの留出が若干増加し、重合時間が増大して、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれも若干大きくなった。
酢酸カルシウム1水和物を、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、5.00×10−6molになるように仕込み、第1段の反応における熱媒の最高温度を248℃に変えた以外は、実施例1と同様に実施した。実施例1と同様、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれは小さかったが、若干着色が見られた。
第1段階、第2段階において、還流冷却器をバイパスさせ、使用しなかった他は、実施例10と同様に実施した。第2段階において1kPa到達時点から180分経過しても所定動力に達しなかったため、そこでポリマーを抜き出した。モノマーの留出量が多く、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが大きいだけでなく、黄色度や耐光性が悪化した。
第1段階において、原料混合物を100℃で均一に融解させた後、60分かけて内温を220℃にし、内温が220℃になった時点で減圧を開始して、120分で13.3kPaになるように制御した以外は、比較例1と同様に実施した。
第2段階において1kPa到達時点から180分経過しても所定動力に達しなかったため、そこでポリマーを抜き出した。モノマーの留出量は比較例1よりも減少したが依然多く、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれも大きかった。
第1段の反応において、原料混合物を100℃で均一に融解させた後、40分かけて内温を250℃にし、内温が250℃になった時点で減圧を開始して、90分で13.3kPaになるように制御し、第1段の反応における熱媒の最高温度を275℃とした以外は、比較例1と同様に実施した。第2段階において1kPa到達時点から180分経過しても所定動力に達しなかったため、そこでポリマーを抜き出した。モノマーの留出量が多く、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが大きかった。また、粘度が低く成形ができなかった。
(第1段階の反応)
撹拌翼、真空ポンプに連結された留出管を具備した内容積0.5Lのガラス製重合反応器にISBを0.530mol、CHDMを0.227mol、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCを0.773mol仕込み、水溶液にした酢酸カルシウム1水和物を、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり1.25×10−6molになるように仕込んだ後、十分に窒素置換した。続いて該反応器をオイルバスに浸漬し、反応液(内温と呼ぶことがある)が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温を100℃に保ちながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始して、40分で内温を220℃にし、内温が220℃℃になった時点で減圧を開始して、90分で13.3kPaになるように制御した。減圧を開始すると、速やかに反応で生成したフェノールの蒸気が留出し始め、内温を220℃に一定に制御するようにオイルバスの温度を適宜調整した。フェノールの留出量が多くなった時間帯はオイルバスの温度を224℃とし、それ以外の時間帯は224未満とした。
重合反応で副生するフェノール及び留出するモノマーは、凝縮器(冷媒の入口温度45℃)に導いて回収した。この段階で留出したフェノールは、理論留出量の90%であった。
続いて、オイルバスを昇温するとともに減圧を開始して、60分で内温220℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて内温230℃、圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で復圧し、内容物をストランドの形態で抜出した。この時、圧力が1kPaに到達した時点から所定撹拌動力に達した時点までの時間を計測した。重合反応で副生するフェノール及び留出するモノマーは、第1段階の反応と同様に凝縮器(冷媒の入口温度45℃)に導いて回収し、凝縮器で凝縮しなかった留出分は、凝縮器の下流に設置したコールドトラップで回収した。
Claims (13)
- 触媒並びに原料モノマーとして炭酸ジエステル及びジヒドロキシ化合物を用いて、複数の反応器で多段階で、エステル交換反応により重縮合させてポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、
炭酸ジエステルが蒸留精製されたものであり、ジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表される化合物を少なくとも含む複数種のジヒドロキシ化合物からなり、該ジヒドロキシ化合物の内の少なくとも1種のジヒドロキシ化合物の大気圧での沸点が300℃以下であり、
ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルのモル比率が0.97〜1.03であり、
反応器の少なくとも1つが、エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上であり、かつ熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段及び還流冷却器を具備した内容積20L以上の反応器であって、該熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上80℃以下であり、
還流冷却器に導入される冷媒の温度が該還流冷却器の入口において80℃〜150℃であり、かつ、
反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率と、得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位のモル百分率との差を、反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率で除した値の絶対値が、少なくとも1種のジヒドロキシ化合物については、0.03以下であり、いずれのジヒドロキシ化合物についても0.05を超えない条件で重縮合させることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して10重量%以下である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 少なくとも3つの反応器を用いる請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して3重量%以下である請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記触媒が、長周期型周期表における第1族の金属化合物及び/又は第2族の金属化合物であって、該第1族の金属化合物の使用量が、ポリカーボネート樹脂中のナトリウム原子、カリウム原子及びセシウム原子の合計量として1ppm以下である請求項1乃至4の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する1つ目の反応器に、触媒として、リチウム及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を、その金属原子の合計量として、原料として用いた全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、20μmol以下用いる請求項1乃至5の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記触媒が、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物である請求項6に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記反応器の少なくとも一つの内温を最高温度140℃〜270℃とし、110kPa〜1kPaの圧力下、0.1時間〜10時間で発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しつつ重縮合を行う請求項1乃至7の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 2段階目以降の反応器の内温を最高温度210℃〜270℃とし、第1段階目の反応器の圧力より低い圧力下、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら重縮合を行う請求項1乃至8の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 全反応段階における反応液の最高温度が250℃未満である請求項1乃至9の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記熱媒体の最高温度が265℃未満である請求項1乃至10の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 炭酸ジエステル中の塩化物イオン濃度が10ppb以下である請求項1乃至12の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
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