JP3742538B2 - 芳香族ポリカーボネートの製造方法及び芳香族ポリカーボネート組成物 - Google Patents
芳香族ポリカーボネートの製造方法及び芳香族ポリカーボネート組成物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エステル交換反応によるポリカーボネートの製造方法に関し、詳しくは、芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルとから、透明で着色のない高品質な芳香族ポリカーボネートを、激しい発泡現象を起こすことなく高い重合速度で得るための製造方法、特に光学用のポリカーボネートを得るための製造方法及び透明で着色のない高品質な芳香族ポリカーボネート組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、芳香族ポリカーボネートは、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、しかも耐熱性、透明性等にも優れたエンジニアリングプラスチックスとして、OA部品、自動車部品、建築材料等に幅広く用いられており、特に耐衝撃性や透明性等の特性を生かして、光学用材料として光学レンズやデイスク、シート等の用途に幅広く使用されている。
この芳香族ポリカーボネートの製造方法としては、ビスフェノール等の芳香族ジオールとホスゲンとを界面重縮合法において反応させる、いわゆるホスゲン法が工業化されている。しかし、このホスゲン法は人体に有害なホスゲンを用いなければならないこと、環境に対する負荷の高いジクロロメタン等の溶剤を必要をすること、また多量に副生する塩化ナトリウムのポリマー中への混入により、これを電子部品に用いたときの腐食等の問題点が指摘されている。
【0003】
一方、芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルとを溶融状態でエステル交換し、副生するフェノール等の低分子量物を系外に取り除きながら芳香族ポリカーボネートを得る方法も、いわゆる溶融法あるいはノンホスゲン法として古くから知られている。ノンホスゲン法は界面重縮合法による上記のような問題点もなくポリカーボネートが製造できるという利点がある一方、ホスゲン法に比べて高温で重合するため、製品のポリカーボネートが着色しやすいという問題がある。また、ノンホスゲン法は、副生するフェノール等の低分子量物を減圧下で系外に取り除きながらポリカーボネートの分子量を上げて行く必要があるため、ポリカーボネートの分子量の上昇とともに系の粘度が上昇し、低分子量物の揮発による発泡現象が激しくなり、飛沫同伴や液面の急上昇を招く。この飛沫同伴や液面の急上昇は、排気系の閉塞を招いたり、重合槽上部に付着した劣化物の製品の混入による色調の悪化をもたらすため製品品質の上から好ましくないが、発泡現象を抑えようとして、排気速度をより小さくすると、十分な重合速度を得ることができず、結果的にポリマーを高温にする時間が長くなり、製品ポリカーボネートの色調の悪化を招くというジレンマがある。また、ポリカーボネートの熱滞留時間を短くするために十分な排気速度を得ようとすれば、重合槽内の液容量よりもはるかに大きい重合槽が必要になり、熱効率や生産性の点で非効率になるという欠点を有している。
この発泡現象を抑えるため、例えば特開平9−286850号公報には、液面を直接攪拌し、機械的に破泡させるいわゆる泡消し翼を装備する方法が開示されているが、機械的破泡は効果が限定される上、設備が過大になる等の問題を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により、ポリカーボネートを製造する方法において、透明で着色のない高品質な芳香族ポリカーボネートを、激しい発泡現象を起こすことなく高い重合速度で得るための製造方法及び透明で着色のない高品質なポリカーボネートを提供することにある。
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を進めた結果、特定の物質を使用することにより、その目的を達成できることを見出し本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルとを、エステル交換反応させる際に、水酸基、カルボキシル基及びこれらの誘導体の基からなる群から選ばれた少なくとも一の官能基を有し、その濃度が50〜3000μeq/gである炭化水素化合物を、原料芳香族ジオール化合物の重量に対して0.01〜5000ppm存在させることを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法及び透明で着色のない高品質な芳香族ポリカーボネートに存する。
【0006】
【発明の実施形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明方法において、芳香族ポリカーボネートの製造原料としては、芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルとが用いられる。本発明で用いられる芳香族ジオール化合物とは、通常下記の一般式(1)で示される化合物である。
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、Aは、単結合、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状炭化水素の2価の残基、及び−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2 −で示される2価の基からなる群から選ばれるものであり、X及びYは、ハロゲン原子又は炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれるものであり、p及びqは、0〜2の整数である。また、XとY及びpとqは、それぞれ、相互に同一又は異なるものである。)
【0009】
芳香族ジオール化合物の具体例を挙げれば、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビスフェノール置換炭化水素、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等である。これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が、好適に用いられる。
これらの化合物は2種以上併用することも可能で、また分岐状芳香族ポリカーボネートを製造しようとする場合は、少量の3価以上の多価フェノールを共重合させることもできる。また、芳香族ポリカーボネートの熱安定性や耐加水分解性を向上させる目的で、p−t−ブチルフェノールやp−クミルフェノール等の1価のフェノール類を水酸基末端の封止剤として用いることができる。
【0010】
本発明に用いられる炭酸ジエステルとは、通常下記の一般式(2)で示される化合物である。
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R1 及びR2 は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基並びに炭素数1〜10のアルキル基及び/又はハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基からなる群から選ばれるものであり、R1 とR2 は、相互に同一又は異なるものである。)
【0013】
炭酸ジエステルの具体例としては、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート等が挙げられ、中でもジフェニルカーボネートが好ましい。これらの化合物は2種以上併用することも可能である。
炭酸ジエステルは、芳香族ジオール化合物1モルに対して若干過剰に用いられることが一般的であり、通常1.01〜1.30モル、好ましくは1.02〜1.20モルの量で用いることが好ましい。
【0014】
芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルとの溶融重縮合反応においては、重合速度を上げるため、通常エステル交換触媒が用いられ、本発明では、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性含窒素化合物、ホスホニウムヒドロキシド化合物が好適に用いられる。
【0015】
アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、水素化ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の無機塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム、等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の有機酸塩、ビスフェノールAのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、セシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、セシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコラート等が挙げられ、中でもアルカリ金属化合物が好ましく、特にはセシウム塩が好ましい。これらの触媒は複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0016】
これらのアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物触媒の添加量に特に制限はないが、少な過ぎると十分な重合速度が得られず、多過ぎると得られるポリカーボネートの色調が悪化するため、通常芳香族ジオール化合物1モルに対して1×10-8〜1×10-1モル、好ましくは1×10-7〜1×10-3モルの範囲で用いる。
【0017】
塩基性含窒素化合物の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、アルアリール基等を有するアンモニウムヒドロキシド類、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類、ジメチルアミン、ジエチルアミン等の2級アミン類、n−ブチルアミン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、ニトリロ三酢酸等のイミノカルボン酸誘導体又はその塩、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド等のアンモニウムボロハイドライド等が挙げられる。
【0018】
また、ホスホニウムヒドロキシド化合物の具体例としては、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド等が挙げられ、中でもテトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシドが好適に用いられる。
【0019】
これらの塩基性含窒素化合物、ホスホニウムヒドロキシド化合物は、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物と併用することが好ましく、中でも高温で易分解性あるいは揮発性で製品のポリカーボネート中に残存しないものが好ましく用いられる。
これらの塩基性含窒素化合物、ホスホニウムヒドロキシド化合物の添加量に特に制限はないが、通常は芳香族ジオール化合物1モルに対し、1×10-8〜1×10-1モル、好ましくは1×10-7〜1×10-2モルの範囲で用られる。
【0020】
本発明で用いられる炭化水素化合物とは、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素骨格及び所定の官能基を有する化合物である。所定の官能基は、水酸基及びそのエステル基、炭酸エステル基、エーテル基等の水酸基の誘導体基、カルボキシル基及びそのエステル基、アミド基、ウレタン基等のカルボキシル基の誘導体基、アミノ基及びそのアミド基、ウレタン基、尿素基等のアミノ基の誘導体基であり、中でも水酸基及び水酸基の誘導体基並びにカルボキシル基及びカルボキシル基の誘導体基が好ましく、特には水酸基及び水酸基の誘導体基が好適である。
【0021】
炭化水素骨格の具体例としては、(1)アルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン、シクロアルケン、アリールアルカン、アリールアルケン、アリールアルキン等の炭化水素類、(2)エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンモノマー、シクロペンテン、シクロヘキセン等の二重結合を有する環状炭化水素モノマー、スチレン、α−メチルスチレン等の二重結合を有する芳香族炭化水素モノマー及びブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン、イソプレン等のジエン化合物モノマーの少なくとも1種を含む重合体又は共重合体が挙げられる。本発明で用いる炭化水素化合物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、炭素、水素、ハロゲン以外の原子を含んでいてもよいし、2種類以上の炭化水素化合物を混合して用いてもよく、中でも炭化水素骨格がジエン化合物の重合体又は共重合体であるものが好ましく、特にはポリブタジエンが好ましい。
【0022】
通常、ブタジエン等の共役二重結合を有するジエン化合物の重合体又は共重合体は、1,2−付加構造及び/又は1,4−付加構造を有するが、好ましくは全共役ジエン化合物モノマー単位の50%以上、より好ましくは70%以上、特には80%以上が1,2付加構造であるものを用いた場合、本発明の効果が顕著である。また、重合中の架橋反応を抑制するためには、ジエン化合物の重合体又は共重合体中の不飽和結合を、遷移金属触媒等を用いて水素添加しておくことが好ましい。
【0023】
ジエン化合物の重合方法としては、ラジカル、カチオン、アニオン、配位アニオン等の方法が用いられいずれの方法を用いてもよいが、1,2−付加構造を全モノマー単位の50%以上含むものを製造するためにはアニオン重合で行うことが好ましい。本発明の目的を達成するためには、炭化水素化合物中の水酸基、カルボキシル基及びこれらの基の誘導体基からなる官能基の濃度〈複数種ある場合はその合計)が、50〜3000μeq/gであることが必要で、好ましくは300〜2000μeq/g、より好ましくは500〜1500μeq/gである。これら官能基の濃度が小さいと得られるボリカーボネートの透明性が悪化し、多いと架橋反応等の副反応による品質劣化が起こる。また、これら官能基の導入は、上記ジエン化合物の重合に際し又は重合後に、慣用の方法に従って行うことができる。すなわち、水酸基又はその誘導体基は、ジエン化合物のリビング重合体にエチレンオキサイド等を反応させたり、過酸化水素等の水酸基含有ラジカル開始剤を用いてラジカル重合させたり、水酸基を有する重合体に酸ハライドや酸無水物を反応させることによって導入される。カルボキシル基又はその誘導体基は、ジエン化合物のリビング重合体に二酸化炭素を反応させたり、4,4’−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)等のカルボキシル基又はその誘導体基を有する開始剤を用いてラジカル重合させたり、カルボキシル基又はその誘導体基を有するモノマーを重合体と反応させることによって導入される。
【0024】
これら炭化水素化合物の分子量は、特に制限はないが、小さすぎると芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルとの重合反応中に揮発して消泡効果がなくなり、大きすぎると消泡効果が小さくなるため、好ましくは蒸気浸透圧法(VPO)で測定した数平均分子量が200〜30000、さらに好ましくは500〜10000、特には1000〜5000であることが望ましい。これら炭化水素化合物の添加量は、少なすぎると消泡効果が現れず、多すぎると製品の透明性等品質の悪化を招くため、原料芳香族ジオール化合物の重量に対して、0.01〜5000ppmが必要であり、好ましくは0.05〜1000ppm、より好ましくは0.1〜100ppm、好適には0.5〜30ppm、最適には0.5〜20ppmであることが望ましい。
【0025】
本発明方法において、溶融法による芳香族ポリカーボネートの製造は、回分式、連続式、これらの組み合わせ等、何れの方法でもよいが、炭酸ジエステルの揮散による芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルのモルバランスのずれを防止するため、比較的低温、低真空からなる予備重縮合工程(オリゴマー化工程)と、比較的高温、高真空からなる後重縮合工程(ポリマー化工程)に分割して行うことが一般的である。オリゴマー化工程の反応温度は、通常100〜300℃、好ましくは180〜280℃の範囲で、反応圧力は大気圧〜1torrまでの範囲である。一方、ポリマー化工程の反応温度は、通常200〜320℃、好ましくは240〜300℃の範囲で、反応圧力は50torr以下、最終的には1torr以下にすることが好ましい。
前記の炭化水素化合物は、原料中もしくはオリゴマー中に、直接又は適当な溶剤で希釈して添加することができ、添加時期には特に制限はなく、重合前の原料に添加する方法、重合反応の任意の段階で添加する方法の何れでもよいが、本発明の効果を最大限に生かすには、発泡が激しくなる前の段階、特に反応圧力が30torr以上の段階で添加することが好ましい。
【0026】
本発明方法に従えば、芳香族ポリカーボネートは、通常、上記炭化水素化合物を、ポリカーボネート中の芳香族ジオール化合物成分の重量に対して0.01〜5000ppm含有する組成物として得られる。しかして、この組成物には、さらに、他の慣用の成分、例えば熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防腐剤、接着促進剤、着色剤、発泡剤、ブロッキング防止剤、滑剤、展着剤、殺菌剤、可塑剤、離型剤、増粘剤、防滴剤、衝撃性改良剤、無機充填剤、有機充填剤などを配合することもできる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例に従って、本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。
【0028】
なお、測定は以下の方法で行った。
(1)粘度平均分子量(Mv)
オリゴマー又はポリカーボネートの濃度(C)0.6g/dlの塩化メチレン溶液を用いて、温度20℃で測定した比粘度(ηsp)から、下記の両式
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
を用いて算出した。
【0029】
(2)ポリカーボネートの透明性
60×60×3.2mmの平板をバレル温度320℃で射出成形し、東京電色(株)製ヘーズメーターを使用して全光線透過率で評価した。
【0030】
(3)ポリカーボネートのYellow Index(YI)
上記平板を使ってミノルタ(株)製分光測色計CM−3700dを用い測定した。
【0031】
(4)炭化水素化合物の数平均分子量(Mn)
日立117型VPOを用いトルエンを溶媒として測定した。
【0032】
(5)水添ポリブタジエンの1,2−付加構造比率及び官能基濃度
重クロロホルム溶液として日本電子製JNM−A400を用い 1H−NMRを測定し、メチル、メチレン、メチン、及び官能基に隣接するメチレン、メチンのピーク強度比から算出した。
【0033】
(6)発泡状況
重合槽内の液面上昇を目視で観察した。
【0034】
(7)ポリカーボネート中の炭化水素化合物含有量
ポリカーボネートを1N−KOH水溶液を加え加熱し加水分解を行った後、クロロホルムで抽出、濃縮し、重クロロホルム溶液として日本電子製JNM−A400を用いて 1H−NMRを測定し定量した。
【0035】
[実施例1]
ジフェニルカーボネート・フレーク(三菱化学(株)製)23.1molに、炭酸セシウム水溶液(炭酸セシウムとして0.5(μmol/ビスフェノールA−mol))と、炭化水素化合物として下記の末端変成水添ポリブタジエン構造を有する化合物(商品名ポリテールH、三菱化学(株)製):
HO−(CH2 −CH2 −CH2 −CH2 )n−OH Mn=2700
0.055g(ビスフェノールAに対し11ppm)をトルエンで希釈したものを、マイクロシリンジで添加しよく混合した。これを100℃にコントロールされた還流冷却器を有する40Lの重合缶に仕込み、次いでビスフェノールA(新日鉄化学(株)製)22.0molを仕込んだ。重合槽内を10torrにして窒素で大気圧にする操作を7回繰り返し、内部を窒素置換した。次に温度230℃の熱媒を通じ昇温、溶解させた後、300rpmで攪拌し、内温を210℃に保ちながら、40分かけて圧力を760torrから100torrにした。続いて、圧力を100torrに保持したまま、フェノールを留去させながら80分オリゴマー化反応を行った。
オリゴマー化終了後、系内を窒素で0.2MPaに復圧し、このオリゴマーを、100℃にコントロールされた還流冷却器を有する40L重合槽(大気圧)に圧送した。続いて該重合槽内を大気圧まで放圧し、38rpmで攪拌しながら、外部ジャケットに300℃の熱媒を通じ、図1のラインAに沿って系内を減圧にし、発泡状況を観察した。0.5torr到達後、この圧力を保持したまま90分間縮合反応を行い、ポリマー化反応を行った。最終的な内部温度は280℃であった。
重合反応終了後、窒素で復圧しポリマーをストランド状で抜き出して回転式カッターでペレット化した。
【0036】
[実施例2]
炭化水素化合物として下記構造を有する化合物(商品名ポリテールHA、三菱化学(株)製)0.054g(ビスフェノールAに対し11ppm)を用いた他は実施例1と同様にして発泡状況を観察し、ポリマーを得た。
【0037】
【化3】
【0038】
[実施例3]
炭化水素化合物として下記構造を有する化合物(商品名ポリテールHAC、三菱化学(株)製)0.059g(ビスフェノールAに対し12ppm)を用いた他は実施例1と同様にして発泡状況を観察し、ポリマーを得た。
【0039】
【化4】
【0040】
[比較例1]
炭化水素化合物の量を30.1g(ビスフエノールAに対し5993ppm)とした以外は実施例1と同様にして発泡状況を観察し、ポリマーを得た。
【0041】
[比較例2]
炭化水素化合物の水素添加物の量を0.04mg(ビスフェノールAに対し0.008ppm)とし、液面の上昇による溜出管の閉塞を回避するために、図1のラインBに沿って系内を減圧にし発泡状況を観察した以外は実施例1と同様にしてポリマーを得た。
【0042】
[比較例3〕
炭化水素化合物を添加しなかった以外は実施例5と同様にして発泡状況を観察し、ポリマーを得た。
【0043】
各実施例、比較例について用いた炭化水素化合物の量及び得られたポリマーの評価をまとめて第1表に示した。また、重合槽内の発泡状況の時間変化を図2(実施例1〜3及び比較例1)と図3(比較例2〜3)に示した。これらの図又は表から、比較例1では、実施例1に比べ、全光線透過率及び製品色調に若干の低下が認められ、比較例2では、実施例1に比べ、消泡効果の低下、製品色調に若干の低下が認められた。また、比較例3では、全ての実施例に比べ、消泡効果及び製品色調が不十分であった。一方、実施例2では、消泡効果、製品色調ともに優れていた。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
本発明に従えば、芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により、透明で着色のない高品質な芳香族ポリカーボネートを、激しい発泡現象を起こすことなく高い重合速度で得ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 重合槽内の減圧プログラムを示す線図。
【図2】 重合槽内の発泡状況の時間変化を示す線図。
【図3】 重合槽内の発泡状況の時間変化を示す線図。
Claims (6)
- 芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステルとを、エステル交換反応させる際に、水酸基、カルボキシル基及びこれらの誘導体の基からなる群から選ばれた少なくとも一の官能基を有し、その濃度が50〜3000μeq/gである炭化水素化合物を、原料芳香族ジオール化合物の重量に対して0.01〜5000ppm存在させることを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法。
- 炭化水素化合物の数平均分子量が500〜20000であることを特徴とする請求項1記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
- 炭化水素化合物が、ジエン化合物の重合体又はその水素添加物であることを特徴とする請求項l又は2に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
- ジエン化合物の重合体は、1,2付加構造が全共役ジエン化合物モノマー単位の50%以上であることを特徴とする請求項3に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
- 請求項l〜4のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた芳香族ポリカーボネートであって、水酸基、カルボキシル基及びこれらの誘導体の基からなる群から選ばれた少なくとも一の官能基を有し、その濃度が50〜3000μeq/gである、数平均分子量500〜20000の炭化水素化合物を、芳香族ジオール化合物成分の重量に対し0.01〜5000ppm含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート。
- YIが2.3以下であることを特徴とする請求項5に記載の芳香族ポリカーボネート。
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