JP4868022B2 - モータ制御システムの異常判定装置 - Google Patents

モータ制御システムの異常判定装置 Download PDF

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Description

本発明は、モータの作動状態を制御するためのモータ制御システムの異常判定装置に関するものである。
近年、モータ制御システムとして、モータの作動状態に応じた信号を出力する状態検出系を備えるとともに同状態検出系の出力信号に基づいて同モータの作動制御を実行するものが多用されている。
そうした状態検出系の出力信号として、電動機としてのモータの出力軸の回転位相に応じた信号(例えばモータ出力軸の回転に伴って周期的に変化するパルス状の信号)を採用したものが知られている。この出力信号を監視することにより、モータの出力軸の回転速度や回転位相を把握することが可能になる。
また上記出力信号として、モータの出力軸の回転方向に応じた信号を採用したものも知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載のシステムでは、そうしたモータ出力軸の回転方向に応じた信号として、同出力軸の回転方向が順回転方向であるときにはLo信号が出力される一方、逆回転方向であるときにはHi信号が出力される。この出力信号を監視することにより、モータ出力軸の回転方向(順方向、あるいは逆方向)を把握することが可能になる。
特開2006−226226号公報
ところで、モータ制御システムに異常が発生した場合には、その発生を速やかに判定するとともに、モータの作動制御を異常発生時に見合う実行態様に変更することが望まれる。モータ制御システムに異常が発生したとき(異常時)には、前記状態検出系の出力信号が異常の発生していないとき(正常時)と異なる態様で推移することが多い。そのため、それら出力信号が正常時と異なる態様で推移したことをもってモータ制御システムに異常が発生したと判定することが可能になる。
ただし、モータ出力軸の回転方向に応じてLo信号およびHi信号のいずれか一方を出力するシステムでは、同回転方向に応じた信号がHi信号(あるいはLo信号)から変化しなくなる異常が発生した場合に、同信号が示すモータ出力軸の回転方向と実際の回転方向とが一致する状況になることがある。そして、このときにはモータ制御システムに異常が発生しているにもかかわらず、前記状態検出系の出力信号が正常時と同一の態様で推移する状態になってしまう。そのため、この場合には、前記状態検出系の出力信号に基づく異常判定を実行したとしても、異常の発生を適正に判定することができない。
なお、電動機の作動制御を実行するモータ制御システムに限らず、例えばプランジャなどの往復移動する可動部材を有するリニアモータの作動制御を実行するモータ制御システムにあっても、前述した異常判定についての不都合は同様に生じる。
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、異常発生を精度良く判定することのできるモータ制御システムの異常判定装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、モータの可動部材の移動位置に応じた位置信号を出力する位置信号出力手段と前記可動部材の移動方向に応じた方向信号を出力する方向信号出力手段とを備えて前記モータの作動制御を実行するモータ制御システムに適用されて、前記位置信号と前記方向信号との関係が前記モータ制御システムに異常の発生していないときの関係と異なることを条件に異常有りと判定する異常判定装置において、前記位置信号出力手段は前記位置信号として、前記可動部材の移動位置の変化に伴って周期的に変化するパルス信号を出力し、前記方向信号出力手段は前記方向信号として、前記可動部材の移動位置の順方向への移動時および逆方向への移動時の一方においては前記位置信号と同一位相の周期的なパルス信号を出力し、前記順方向への移動時および前記逆方向への移動時の他方においては前記位置信号と逆位相の周期的なパルス信号を出力し、前記位置信号と前記方向信号との関係に基づいて前記可動部材の回転方向を検出し、前記位置信号が変化するタイミングのときに前記方向信号が変化しないとき、前記位置信号と前記方向信号との関係が前記モータ制御システムに異常の発生していないときの関係と異なる旨判定することをその要旨とする。
上記構成では、モータの可動部材の移動方向に応じた方向信号が一定値(Hi信号あるいはLo信号)から変化しなくなる異常が生じたとき(異常時)に、同方向信号の変化パターンが異常の発生してないとき(正常時)の変化パターン(具体的には、周期的に変化するパルス状の信号)と明確に異なったものとなる。そのため、このときモータの移動位置に応じた位置信号と上記方向信号との関係も正常時における関係と明確に異なったものとなる。したがって上記構成によれば、上記異常が発生したときに、位置信号と方向信号との関係が正常時における関係と異なる関係になり、そうした関係の相違に基づいて上記異常の発生を精度良く判定することができるようになる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータ制御システムの異常判定装置において、前記移動方向についての制御目標を設定する設定手段を有し、前記位置信号および前記方向信号に基づき把握される前記可動部材の移動方向と前記制御目標とが一致しないことをもって、前記位置信号と前記方向信号との関係が前記異常の発生してないときの関係と異なると判断することをその要旨とする。
上記構成によれば、位置信号と方向信号との関係により定まるモータ可動部材の移動方向が上記制御目標(言い換えれば、正常時における位置信号と方向信号との関係により定まる移動方向)と一致しない状況になっていると判断することができる。そして、その判断をもって、このとき位置信号と方向信号との関係が異常の発生していないときの関係と異なると判断することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のモータ制御システムの異常判定装置において、前記可動部材の移動位置の変化中において所定期間にわたり前記制御目標と前記方向信号とが共に変化しないことをもって、前記把握される前記可動部材の移動方向と前記制御目標とが一致しないと判断することをその要旨とする。
正常時においては、モータ可動部材の移動位置が一方向に変化し続けている限り、途切れることなく周期的に変化するパルス状の信号が方向信号として出力されるようになる。
上記構成によれば、モータ可動部材の移動位置が一方向に変化し続けているにもかかわらず方向信号が変化しない状況になっていると判断することができ、その判断をもって位置信号と方向信号とに基づき把握される可動部材の移動方向と制御目標とが一致していないと判断することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ制御システムの異常判定装置において、前記可動部材の移動速度が所定速度以上であることを条件に、前記異常有りとの判定を行うことをその要旨とする。
モータの可動部材が停止しているときには方向信号や位置信号が変化しない状態になるために、それら信号に基づく異常判定を適切に行うことができない。また、モータの可動部材の移動速度が低いときには、方向信号や位置信号の単位時間当たりの変化回数が少ないために、それら信号に基づく異常判定の実行に際して判定に要する時間が不要に長くなるなど、同判定を適切に行うことができない状況になるおそれがある。さらにモータ可動部材の移動速度がほぼ「0」になると、場合によっては方向信号として順方向への移動に応じた信号が出力される状態と逆方向への移動に応じた信号が出力される状態とが頻繁に切り替わる状況になることがあり、これに起因して異常判定の精度低下を招くおそれもある。
この点、上記構成によれば、可動部材の移動速度が所定速度以上であるとき、すなわち方向信号および位置信号の単位時間当たりの変化回数が多いときであり、且つ、方向信号として一方向(順方向または逆方向)への移動に対応する値が出力され続けるときに限って異常発生を判定することができ、その判定を短い時間で適切に行うことができるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータ制御システムの異常判定装置において、前記モータは電動機であり、前記可動部材は前記モータの出力軸であり、前記移動位置は前記出力軸の回転位相であることをその要旨とする。
上記構成によれば、電動機の出力軸の回転位相に応じた位置信号を出力する位置信号出力手段と同出力軸の回転方向に応じた方向信号を出力する方向信号出力手段とを備えたモータ制御システムにおける異常発生を精度良く判定することができるようになる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のモータ制御システムの異常判定装置において、当該モータ制御システムは、前記出力軸の回転速度のフィードバック制御を通じて同出力軸の回転速度を内燃機関のカムシャフトの回転速度に対して変化させることにより、前記内燃機関のクランクシャフトに対する前記カムシャフトの回転位相を変化させて機関バルブのバルブタイミングを可変とするバルブタイミング変更機構に適用されることをその要旨とする。
機関バルブのバルブタイミングを変更するべく内燃機関のカムシャフトの回転速度に対するモータ出力軸の回転速度を変更するタイプのバルブタイミング変更機構では、モータが順方向(詳しくはカムシャフトの回転方向)に回転することが多く、逆方向に回転する機会はごく少ない。そのため、異常時においてモータが逆回転する状況になる機会についてもごく少ないといえる。したがって、前述した装置のように異常発生後において実際のモータ出力軸の回転方向が逆回転方向になったタイミングで異常発生が判定される状況になることのある装置では、異常が発生してから異常有りと判定されるようになるまでに長い時間が必要になってしまう。
この点、上記構成によれば、実際のモータ出力軸の回転方向が逆回転方向になるのを待つことなく、異常発生を速やかに判定することができるようになる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のモータ制御システムの異常判定装置において、前記モータの可動部材としての出力軸の回転位相に応じた信号を出力する複数のセンサが設けられていること、前記複数のセンサの出力に応じて前記位置信号出力手段から前記位置信号が出力されること、ならびに、前記複数のセンサの出力に応じて前記方向信号出力手段から前記方向信号が出力されることをその要旨とする。
本発明の一実施の形態についてその全体構成を模式的に示す略図。 位置信号および方向信号の変化態様の一例を示すタイムチャート。 異常判定処理の具体的な実行手順を示すフローチャート。 位置信号および方向信号の変化態様の一例を示すタイミングチャート。
以下、本発明を具体化した一実施の形態にかかるモータ制御システムの異常判定装置について説明する。
図1に、本実施の形態にかかる異常判定装置が適用されるモータ制御システムの概略構成を示す。
同図1に示すように、内燃機関1のクランクシャフト10は、タイミングチェーン11(またはタイミングベルト)およびカムスプロケット12を介してカムシャフト13に駆動連結されている。カムシャフト13には機関バルブを開閉駆動するためのカムが設けられている。カムスプロケット12とカムシャフト13との間にはバルブタイミング変更機構14が設けられている。なお、カムシャフト13の近傍には同カムシャフト13の回転位相(カム角)を検出するためのカムセンサ20が設けられ、クランクシャフト10の近傍には同クランクシャフト10の回転位相(クランク角)および回転速度(機関回転速度NE)を検出するためのクランクセンサ21が設けられている。
バルブタイミング変更機構14は、カムシャフト13と同一の回転軸になるように配設された内歯付きのアウタギア15、このアウタギア15の内周に同一の回転軸になるように配設された外歯付きのインナギア16、これらアウタギア15とインナギア16との間に配置されて両者に噛み合う遊星ギア17を備えている。
アウタギア15は、クランクシャフト10と同期して回転する上記カムスプロケット12と一体回転可能に配設される。インナギア16は、カムシャフト13と一体回転可能に配設される。遊星ギア17は、アウタギア15とインナギア16とに噛み合った状態で円軌道を描くようにインナギア16の回りを旋回することにより、アウタギア15の回転力をインナギア16に伝達する。なおアウタギア15、インナギア16、および遊星ギア17の歯数はそれぞれ、カムシャフト13がクランクシャフト10の回転速度(機関回転速度NE)の1/2の回転速度で駆動されるように設定されている。
本実施の形態では、インナギア16の回転速度(=カムシャフト13の回転速度)に対する遊星ギア17の旋回速度(公転速度)を変化させることにより、アウタギア15に対するインナギア16の回転位相を調節するようにしている。
内燃機関1には、遊星ギア17の旋回速度を可変にするための電動機としてのモータ18が設けられている。このモータ18の出力軸19は、カムシャフト13、アウタギア15、およびインナギア16の回転軸と同軸上に配置されるとともに、遊星ギア17の支持軸に一体回転可能に連結されている。このモータ18の出力軸19の回転に伴って、遊星ギア17がその支持軸を中心に回転(自転)しながらインナギア16の外周の円軌道を旋回(公転)するようになっている。
こうしたバルブタイミング変更機構14において、機関バルブのバルブタイミング(開閉時期)を現状で維持する場合には、モータ18の出力軸19の移動速度(本実施の形態では、回転速度「モータ回転速度」)がカムシャフト13の回転速度と一致するように同モータ18が駆動される。これにより、遊星ギア17の公転速度がアウタギア15およびインナギア16の回転速度と一致するようになり、アウタギア15とインナギア16との回転位相差が現状で維持されて、機関バルブのバルブタイミングが現状で維持される。
一方、機関バルブのバルブタイミングを進角させる場合には、モータ回転速度がインナギア16の回転速度より速くなるようにモータ18が駆動される。これにより、遊星ギア17の公転速度がインナギア16の回転速度より速くなってアウタギア15に対するインナギア16の相対回転位相が進角されて、機関バルブのバルブタイミングが進角される。
他方、機関バルブのバルブタイミングを遅角させる場合には、モータ回転速度がインナギア16の回転速度より遅くなるようにモータ18が駆動される。これにより、遊星ギア17の公転速度がインナギア16の回転速度より遅くなってアウタギア15に対するインナギア16の相対回転位相が遅角され、機関バルブのバルブタイミングが遅角される。
カムセンサ20、クランクセンサ21などの各種センサの出力信号は、電子制御ユニット(ECU)22に入力されている。電子制御ユニット22は、マイクロコンピュータを主体に構成され、そのROMに記憶された各種制御用のプログラムを実行することにより、機関運転状態に応じたかたちで燃料噴射量の制御や点火時期の制御などといった機関制御を実行する。
また電子制御ユニット22は、カムセンサ20の検出信号に基づいてカム角を演算し、クランクセンサ21の検出信号に基づいてクランク角および機関回転速度NEを演算し、機関運転条件に応じてカム角についての制御目標値(目標カム角)を演算する。そして電子制御ユニット22は、目標カム角と実際のカム角との偏差、および機関回転速度NEに基づいてモータ回転速度についての制御目標値(目標モータ回転速度Tnm)を演算して、モータ18に一体に設けられたモータ駆動回路(EDU)23に出力する。なお本実施の形態では、目標モータ回転速度Tnmとして、モータ回転速度の絶対値についての制御目標とモータ18の出力軸19の回転方向についての制御目標とを含む値が設定される。詳しくは、モータ回転速度の絶対値の制御目標が高い速度であるときほど目標モータ回転速度Tnmとして絶対値の大きい値が設定される。また目標モータ回転速度Tnmとして、回転方向の制御目標が順方向であるときには正の値が設定される一方、逆方向であるときには負の値が設定される。
モータ18にはその出力軸19の回転位相に応じた信号を出力するセンサ(図示略)が複数取り付けられており、それらセンサの検出信号はモータ駆動回路23に入力されている。モータ駆動回路23は、それらセンサからの入力信号に基づいてモータ18の出力軸19の回転速度(実モータ回転速度NM)を算出しており、その実モータ回転速度NMと上記目標モータ回転速度Tnmとの偏差を小さくするようにモータ18への供給電力(詳しくは、モータ18に印可する電圧のデューティ)をフィードバック制御する。このように実モータ回転速度NMを目標モータ回転速度Tnmにフィードバック制御することにより、カム角が目標カム角にフィードバック制御されるようになる。
またモータ駆動回路23は、上記複数のセンサからの入力信号に基づいてモータ18の出力軸19の回転位相(モータ回転位相)と回転方向(モータ回転方向)とを算出するとともに、モータ回転位相に応じた信号(位置信号)とモータ回転方向に応じた信号(方向信号)とをそれぞれ電子制御ユニット22に出力している。
図2に、モータ18の出力軸19が一定速度で回転しているときの位置信号および方向信号の変化態様の一例を示す。
図2[a]に示すように、位置信号としては、モータ回転位相の変化に伴って周期的に変化するパルス信号が出力される。詳しくは、モータ回転位相が所定位相だけ変化する毎にパルス状の信号が出力される。また図2[b]に示すように、方向信号としては、モータ18の出力軸19が順方向(カムシャフト13の回転方向と同一の方向)に回転するときには上記位置信号と同一位相で変化する周期的なパルス信号が出力される。一方、図2[c]に示すように、モータ18の出力軸19が逆方向に回転するときには、方向信号として、上記位置信号と逆位相の周期的なパルス信号が出力される。なお、上記位置信号に基づいてモータ回転速度を推定することができる。また、位置信号と方向信号とが同一位相であるときにはモータ回転方向が順方向であると判断する一方、位置信号と方向信号と逆位相であるときにはモータ回転方向が逆方向であると判断するといったように、位置信号と方向信号との関係に基づいてモータ回転方向を推定することができる。
ここで、モータ制御システムに異常が発生した場合には、その発生を速やかに判定するとともに、モータ18の作動制御を異常発生時に見合う実行態様に変更することが望まれる。モータ制御システムに異常が発生したとき(異常時)には、モータ駆動回路23の出力信号(詳しくは、位置信号や方向信号)が異常の発生していないとき(正常時)と異なる態様で推移することが多い。そのため本実施の形態では、モータ駆動回路23の出力信号が正常時と異なる態様で推移したこと、具体的には位置信号と方向信号との関係が異常の発生していないときの関係と異なることをもってモータ制御システムに異常有りと判定するようにしている。
以下、そうした異常発生の判定にかかる処理(異常判定処理)について図3を参照しつつ説明する。
なお図3は上記異常判定処理の具体的な実行手順を示すフローチャートであり、このフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の割り込み処理として、電子制御ユニット22により実行される。
同図3に示すように、この処理では先ず、以下の[条件イ]〜[条件ホ]の全てが満たされるか否かが判断される(ステップS101)。
[条件イ]各種電装品に電力を供給するバッテリ(図示略)の電圧が所定電圧(例えば定格電圧が12.0ボルトのバッテリが設けられた装置において11.0ボルト)以上であること。
[条件ロ]モータ駆動回路23の出力信号(位置信号)に基づき推定されるモータ回転速度の絶対値が所定速度(例えば100回転/分)以上であること。
[条件ハ]モータ回転方向の制御目標が所定期間(例えば数百ms)にわたり変化していないこと。なお上記制御目標は、電子制御ユニット22が把握しており、例えば目標モータ回転速度Tnmとして順回転方向に対応する値および逆回転方向に対応する値のいずれの値が設定されているかによって把握される。
[条件ニ]機関回転速度NEが所定速度(例えば100回転/分)以上であること。
[条件ホ]モータ駆動回路23から入力される方向信号が所定期間にわたり変化していないこと。具体的には、モータ駆動回路23から入力される位置信号が立ち下がるタイミング(あるいは立ち上がるタイミング)において方向信号が変化しないこと。
そして、[条件イ]〜[条件ホ]の全てが満たされる場合には(ステップS101:YES)、モータ制御システムに異常有りと判定された後(ステップS102)、本処理は一旦終了される。なお、この場合には、別途実行される処理を通じてインストルメントパネルに設けられた警告灯が点灯される等して運転者に異常発生が報知されて、モータ制御システムの点検修理が促される。
一方、異常判定処理において[条件イ]〜[条件ホ]のいずれか一つでも満たされない場合には(ステップS101:NO)、モータ制御システムに異常有りと判定することなく(ステップS102をジャンプして)、本処理は一旦終了される。
以下、こうした異常判定処理を実行することによる作用について説明する。
本実施の形態では、前述したようにモータ駆動回路23から出力される位置信号および方向信号として、モータ回転方向が順方向のときには同一位相の周期的なパルス信号がそれぞれ出力される一方、モータ回転方向が逆方向のときには互いに逆位相の周期的なパルス信号がそれぞれ出力される(図2参照)。
そして、上記異常判定処理では、[条件イ]が満たされることにより、モータ18や電
子制御ユニット22、モータ駆動回路23、各種センサなどの各種電装品に十分な量の電力が供給されていると判断される。また[条件ロ]および[条件ハ]が満たされることにより、モータ18が一方向に回転し続けていると判断される。さらには[条件ニ]が満たされることにより、内燃機関1が運転されてモータ18も運転される状況になっていると判断される。したがって、それら[条件イ]〜[条件ニ]が満たされることにより、モータ制御システムが正常に作動しているとき(正常時)であれば、モータ駆動回路23から出力されて電子制御ユニット22に入力される位置信号および方向信号が共に途切れることなく周期的にパルス状に変化する状況であると判断することができる。
図4に、[条件イ]〜[条件ニ]の全てが満たされる状況における位置信号および方向信号の変化態様の一例を示す。
同図4に示すように、モータ制御システムの正常時においては(時刻t1以前)、モータ回転位相の変化に伴って、位置信号(同図[a])および方向信号(同図[b])が共に周期的にパルス状に変化する。そのため、このとき異常判定処理において[条件ホ]が満たされず、異常発生と判定されない。
これに対して、モータ制御システムに方向信号が一定値(Hi信号あるいはLo信号)から変化しなくなる異常が生じると(時刻t1)、以後において、方向信号(同図[b]中に実線で示す)が正常時の方向信号(同図[b]中に一点鎖線で示す)と明確に異なる態様で変化するようになる(時刻t2〜t3,t4〜t5,t6〜t7)。そのため、このとき位置信号と方向信号との関係が正常時と異なる関係になり、それら位置信号および方向信号に基づき把握されるモータ回転方向と電子制御ユニット22により把握されているモータ回転方向の制御目標とが一致しなくなる。
そうした異常の発生時においては、モータ18の出力軸19の回転中において所定期間(具体的には、位置信号が立ち下がるタイミングあるいは立ち上がるタイミングを含む期間)にわたりモータ駆動回路23から入力される方向信号と電子制御ユニット22により把握されているモータ回転方向の制御目標とが共に変化しないといった状況になる。そのため、このとき異常判定処理においては[条件ホ]が満たされるようになり(時刻t2)、モータ制御システムに異常有りと判定されるようになる。
このように、本実施の形態の異常判定処理では、[条件イ]〜[条件ホ]の全てが満たされることをもって、位置信号および方向信号に基づき把握されるモータ回転方向とその制御目標とが一致しない状況、換言すれば位置信号と方向信号との関係が正常時と異なる関係になっていると判断されてモータ制御システムに異常有りと判定される。
なお、方向信号が一定値から変化しなくなるとの上述した異常は、例えば電子制御ユニット22とモータ駆動回路23とを接続する配線が断線することや、モータ駆動回路23自体に異常が生じること、モータ18に取り付けられたセンサに異常が生じることなどに起因して生じる。
本実施の形態にかかるモータ制御システムでは、モータ18の出力軸19の回転が停止するとモータ駆動回路23から出力される方向信号や位置信号が変化しない状態になるために、このとき方向信号や位置信号に基づく異常判定を実行したところで、同判定を精度良く実行することができない。また、モータ回転速度が低いときには、方向信号や位置信号の単位時間当たりの変化回数が少ないために、それら信号に基づく異常判定の実行に際して判定に要する時間が不要に長くなるなど、同判定を適切に行うことができない状況になるおそれがある。さらにモータ回転速度がほぼ「0」になると、方向信号として順回転方向に応じた信号が出力される状態と逆回転方向に応じた信号が出力される状態とが頻繁に切り替わる状況になることがあり、これに起因して上記異常判定の精度低下を招くおそれもある。
この点、本実施の形態では、モータ回転速度の絶対値が所定速度以上であることとの[条件ロ]が満たされることを条件に、異常が発生していると判定される。そのため、方向信号および位置信号の単位時間当たりの変化回数が多いときであり、且つ方向信号として一方向(順方向または逆方向)に対応する値が継続的に出力されるときに限って異常発生を判定することができ、その判定を短い時間で適切に行うことができる。
ちなみに、本実施の形態のバルブタイミング変更機構14は機関バルブのバルブタイミングを変更するべくカムシャフト13の回転速度に対するモータ回転速度を変更するタイプのものであるために、モータ18の出力軸19が順方向に回転することが多い。そして、モータ18の出力軸19が逆方向に回転する機会は、例えば機関回転速度NEが低く且つ実際のカム角が目標カム角より進角側になっており且つカム角と目標カム角との偏差が大きいときなど、ごく限られている。そのため、モータ制御システムに上記異常が生じた場合において、モータ18が逆回転する状況になる機会についてもごく少ないといえる。したがって、前述した装置のように異常発生後において実際のモータ回転方向が逆回転方向になったタイミングで異常発生が判定される状況になることのある比較例の装置では(図4[c])、異常が発生してから異常有りと判定されるようになるまでに長い時間(図4の時刻t1〜t8)が必要になってしまう。なお、図4[c]中の二点差線は、比較例の装置が正常であるときにおける方向信号の推移を示している。
この点、本実施の形態にかかるモータ制御システムでは、モータ18の出力軸19が逆方向に回転する機会がごく少ないとはいえ、実際のモータ回転方向が逆回転方向になるのを待つことなく、上述した態様で異常発生を速やかに判定することができる(図4の時刻t2)。
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)位置信号としてモータ18の出力軸19の回転位相の変化に伴って周期的に変化するパルス信号を出力し、方向信号としては、モータ18の出力軸19の順方向への回転時には上記位置信号と同一位相の周期的なパルス信号を出力し、逆方向への回転時においては位置信号と逆位相の周期的なパルス信号を出力するようにした。そのため、モータ制御システムの異常時における方向信号の変化パターンが正常時の変化パターンと明確に異なったものとなる。したがって、このとき位置信号と方向信号との関係も正常時における関係と明確に異なったものとなり、そうした関係の相違に基づいて上記異常の発生を精度良く判定することができるようになる。
(2)位置信号と方向信号との関係により定まるモータ回転方向がその制御目標と一致しない状況になっていることをもって、位置信号と方向信号との関係が異常の発生していないときの関係と異なると判断することができる。
(3)モータ18の出力軸19の回転中において所定期間にわたり制御目標と方向信号とが共に変化しないことをもって、同出力軸19が一方向に回転し続けているにも関わらず方向信号が変化しない状況になっていると判断することができる。そして、その判断をもって位置信号と方向信号とに基づき把握されるモータ回転方向とその制御目標とが一致していないと判断することができる。
(4)モータ回転速度の絶対値が所定速度以上であることとの[条件ロ]が満たされることを条件に、異常有りと判定するようにした。そのため、方向信号および位置信号の単位時間当たりの変化回数が多いときであり、且つ、方向信号として一方向(順方向または逆方向)に対応する値が継続的に出力されるときに限って異常発生を判定することができ、その判定を短い時間で適切に行うことができる。
(5)モータ18の出力軸19が逆方向に回転する機会のごく少ない装置において、実際のモータ回転方向が逆回転方向になるのを待つことなく、異常発生を速やかに判定することができる。
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施の形態では[条件イ]〜[条件ホ]の全てが満たされることをもってモータ制御システムに異常有りと判定するようにしたが、位置信号と方向信号との関係が正常時における関係と異なることを適正に判断できるのであれば、それら[条件イ]〜[条件ホ]は適宜変更することができる。
具体的には、例えばモータ制御システムが安定作動する状況下で異常発生が判定されるのであれば、[条件イ]や[条件ニ]を任意に変更したり省略したりすることができる。また上記異常の発生を精度良く判定することができるのであれば、モータ回転速度によらず、異常有りと判定するようにしてもよい。すなわち[条件ロ]を省略してもよい。その他、位置信号および方向信号に基づき把握されるモータ回転方向とその制御目標とが一致しないこととの[条件ヘ]を新たに設定することも可能である。
・上記実施の形態では、カム角と目標カム角との偏差および機関回転速度NEに基づいて目標モータ回転速度Tnmを演算するとともに、同目標モータ回転速度Tnmと実モータ回転速度NMとの偏差を縮小するべくモータ18への供給電力をフィードバック制御することにより、カム角を目標カム角にフィードバック制御するようにした。なお、カム角のフィードバック制御は、これ以外の態様で行うことも可能であり、そうしたモータ制御システムにも本発明にかかる異常判定装置は適用することができる。
・本発明は、例えば内燃機関のスロットルバルブの開度を変更する変更機構の駆動に用いられるモータや、機関バルブの開弁期間や最大リフト量を変更する変更機構の駆動に用いられるモータなど、バルブタイミング変更機構以外の変更機構に設けられたモータの作動制御を実行するモータ制御システムにも適用することができる。
・本発明は、例えばプランジャなどの往復移動する可動部材を有する電動式のリニアモータの作動制御を実行するシステムや、油圧や空気圧などの流体圧によって作動するタイプのモータの作動制御を実行するシステムなど、電動機以外のモータの作動制御を実行するモータ制御システムにも適用可能することができる。要は、モータの可動部材の移動位置に応じた位置信号と同可動部材の移動方向に応じた方向信号とを出力する装置やセンサを備えてモータの作動制御を実行するモータ制御システムであれば、本発明は適用することができる。
1…内燃機関、10…クランクシャフト、11…タイミングチェーン、12…カムスプロケット、13…カムシャフト、14…バルブタイミング変更機構、15…アウタギア、16…インナギア、17…遊星ギア、18…モータ、19…出力軸(可動部材)、20…カムセンサ、21…クランク角センサ、22…電子制御ユニット(設定手段)、23…モータ駆動回路(位置信号出力手段、方向信号出力手段)。

Claims (7)

  1. モータの可動部材の移動位置に応じた位置信号を出力する位置信号出力手段と前記可動部材の移動方向に応じた方向信号を出力する方向信号出力手段とを備えて前記モータの作動制御を実行するモータ制御システムに適用されて、前記位置信号と前記方向信号との関係が前記モータ制御システムに異常の発生していないときの関係と異なることを条件に異常有りと判定する異常判定装置において、
    前記位置信号出力手段は前記位置信号として、前記可動部材の移動位置の変化に伴って周期的に変化するパルス信号を出力し、
    前記方向信号出力手段は前記方向信号として、前記可動部材の移動位置の順方向への移動時および逆方向への移動時の一方においては前記位置信号と同一位相の周期的なパルス信号を出力し、前記順方向への移動時および前記逆方向への移動時の他方においては前記位置信号と逆位相の周期的なパルス信号を出力し、
    前記位置信号と前記方向信号との関係に基づいて前記可動部材の回転方向を検出し、
    前記位置信号が変化するタイミングのときに前記方向信号が変化しないとき、前記位置信号と前記方向信号との関係が前記モータ制御システムに異常の発生していないときの関係と異なる旨判定する
    ことを特徴とするモータ制御システムの異常判定装置。
  2. 請求項1に記載のモータ制御システムの異常判定装置において、
    前記移動方向についての制御目標を設定する設定手段を有し、
    前記位置信号および前記方向信号に基づき把握される前記可動部材の移動方向と前記制御目標とが一致しないことをもって、前記位置信号と前記方向信号との関係が前記異常の発生してないときの関係と異なると判断する
    ことを特徴とするモータ制御システムの異常判定装置。
  3. 請求項2に記載のモータ制御システムの異常判定装置において、
    前記可動部材の移動位置の変化中において所定期間にわたり前記制御目標と前記方向信号とが共に変化しないことをもって、前記把握される前記可動部材の移動方向と前記制御目標とが一致しないと判断する
    ことを特徴とするモータ制御システムの異常判定装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ制御システムの異常判定装置において、
    前記可動部材の移動速度が所定速度以上であることを条件に、前記異常有りとの判定を行う
    ことを特徴とするモータ制御システムの異常判定装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータ制御システムの異常判定装置において、
    前記モータは電動機であり、前記可動部材は前記モータの出力軸であり、前記移動位置は前記出力軸の回転位相である
    ことを特徴とするモータ制御システムの異常判定装置。
  6. 請求項5に記載のモータ制御システムの異常判定装置において、
    当該モータ制御システムは、前記出力軸の回転速度のフィードバック制御を通じて同出力軸の回転速度を内燃機関のカムシャフトの回転速度に対して変化させることにより、前記内燃機関のクランクシャフトに対する前記カムシャフトの回転位相を変化させて機関バルブのバルブタイミングを可変とするバルブタイミング変更機構に適用される
    ことを特徴とするモータ制御システムの異常判定装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のモータ制御システムの異常判定装置において、
    前記モータの可動部材としての出力軸の回転位相に応じた信号を出力する複数のセンサが設けられていること、
    前記複数のセンサの出力に応じて前記位置信号出力手段から前記位置信号が出力されること、
    ならびに、前記複数のセンサの出力に応じて前記方向信号出力手段から前記方向信号が出力されること
    を特徴とするモータ制御システムの異常判定装置。
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