以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタの要部平面図である。図2は、図1に示すインクジェットプリンタ1の概略側面図である。図3は、図1に示す2つのヘッド組を下方から見たときの図である。図4は、本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタ1に装着されたインクカートリッジ及びその周辺部分を示す部分断面図である。なお、図2においては、トレイ69の内部を分かり易くするために、トレイ69の一側面を省略して描いている。
インクジェットプリンタ(液体吐出装置)1は、図1に示すように、4つのインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)2からそれぞれなる2つのヘッド組3a、3bを有するライン式のカラーインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタ1には、図1及び図2に示すように、給紙トレイ81、用紙搬送機構(記録媒体搬送機構)10、2つのヘッド組3a,3b及び排紙部(不図示)が順に上下に重なり、給紙トレイ81から排紙部に至る用紙搬送経路が形成されている。用紙搬送機構10の鉛直方向下方に給紙トレイ81が、2つのヘッド組3a,3bの鉛直方向上方に排紙部(不図示)がそれぞれ設けられている。
給紙トレイ81から送り出された用紙(記録媒体)は、給紙トレイ81と用紙搬送機構10とを繋ぐ搬送ガイド(不図示)によって案内され、用紙搬送機構10の図1中下端に送られる。そして、用紙搬送機構10によって搬送方向A(図1中下から上に向かう方向)に沿って搬送された用紙は、用紙搬送機構10と排紙部とを繋ぐ搬送ガイド(不図示)によって案内され、排紙部に排出される。
給紙トレイ(記録媒体収納カセット)81は、複数の用紙を積層状態で収納可能な箱形状を有している。また、給紙トレイ81は、図1中上下方向(副走査方向:一方向)に着脱可能にプリンタ1に装着されている。給紙トレイ81内の用紙がなくなったときは、給紙トレイ81が搬送方向Aとは逆方向に引き出されて用紙が補充される。そして、用紙が補充された給紙トレイ81は、搬送方向Aに挿入されてプリンタ1に装着される。
用紙搬送機構10は、8つのインクジェットヘッド2のインク吐出面(液体吐出面)4と対向する位置に配置されている。用紙搬送機構10は、図1に示すように、一対のベルトローラ6,7と、一対のベルトローラ6,7に架け渡された搬送ベルト8とを有している。このうち、ベルトローラ6,7は、図中上下方向に関して、2つのヘッド組3a,3bを挟む位置に配置されている。また、ベルトローラ7には図示しない搬送モータから駆動力が与えられて、所定方向に回転する。このベルトローラ7の所定方向への回転によって、搬送ベルト8が走行して、用紙を搬送方向Aに搬送する。
搬送ベルト8はベース基材とウレタンゴムの2層構造で構成されており、その外周面、すなわち、搬送面9が粘着性を有している。そして、給紙トレイ81から搬送ベルト8の図1中下端に送り出された用紙が、搬送面9の粘着力により保持されながら、搬送方向Aに搬送される。
8つのインクジェットヘッド2は、図2に示すような印刷位置に配置されている。この位置では、インクジェットヘッド2のインク吐出面4が、搬送ベルト8の搬送面9と所定間隙を介して平行に対向している。8つのインクジェットヘッド2が作る2つのヘッド組3a,3bは、副走査方向に端部同士が重なり、主走査方向にはスライドして配置されている。この構成において、搬送ベルト8によって用紙が搬送されると、各インク吐出面4の直下を順に通過する際に、この用紙上にインクが吐出されて所望の画像が形成される。
8つのインクジェットヘッド2は、図1及び図2に示すように、それぞれ主走査方向(搬送方向Aと直交する方向)に長尺な直方体形状を有している。また、インクジェットヘッド2はその下端にヘッド本体5を有している。ヘッド本体5の下面がインク吐出面4である。
ヘッド本体5の上面には、インクを一時的に貯溜するリザーバユニットが固定されている。リザーバユニットは、カバー14によって部分的に覆われ、図1中左方端部にはチューブジョイント11が接続されている。チューブジョイント11は、後述のインクカートリッジ91とチューブなどを介して接続されている。リザーバユニットの内部には、インク溜まりが形成され、チューブジョイント11から供給されたインクが貯溜される。
また、リザーバユニットは、主走査方向(一方向と直交する方向)に関してヘッド本体5よりも長い。この両側に突出した部分12が昇降フレーム(不図示)への固定部となっている。この昇降フレームには、すべてのインクジェットヘッド2が固定部を介して固定されており、図示しない昇降機構によって上下動可能になっている。
インクジェットヘッド2のメンテナンス時は、昇降フレームが昇降機構によって移動し、8つのインクジェットヘッド2が印刷位置よりも上方に離れたヘッドメンテナンス位置(図5(a)参照)に配置される。
インク吐出面4(ヘッド本体5の底面)には、図3に示すように、インクを吐出する複数の微小径のノズル(吐出口)4aと、これらノズル4aが集まって構成されたインク吐出領域4bと、インク吐出領域4bを取り囲む外側領域4cとが形成されている。
また、2つのヘッド組3a,3bは、副走査方向(搬送方向Aと平行な方向:一方向)に千鳥状に配置されている。1つのヘッド組は、4つのインクジェットヘッド2から構成され、図3に示すように、各インク吐出面4が副走査方向に沿って隣接して配列されている。2つのヘッド組3a,3b間では、それぞれの印字領域(インク吐出領域4b)が主走査方向に連続している。つまり、8つのインクジェットヘッド2は、図3に示すように、インク吐出面4が副走査方向に沿って4つずつ2列に並べられ、且つ、互いに異なる列に属するインク吐出面4同士が主走査方向に沿って重ならないように配列されている。
具体的には、2つのヘッド組3a,3bからそれぞれ1つのインクジェットヘッド2を選んだとき、この2つのインクジェットヘッド2に含まれるすべてのノズル4aは、主走査方向に関して、印字解像度に対応した等間隔で配列されている。いずれのインクジェットヘッド2の組合せでも、同様である。例えば、主走査方向に関して1つのインク吐出領域内における隣接するノズル4aのノズル間隔と、主走査方向に関してヘッド組3aに係るインク吐出面4において最も内側(図3中左側)に形成されたノズル4aとヘッド組3bに係るインク吐出面4において最も内側(図3中右側)に形成されたノズル4aとの間隔とが等間隔となっている。副走査方向に関しては、1つのノズル4aを通る仮想直線上に、互いに異なるインクジェットヘッド2に属する4つのノズル4aが配列している。この4つのノズル4aは、インクジェットヘッド2の配列ピッチと同じ等間隔で配列している。
また、各ヘッド組3a,3bに属する4つのインクジェットヘッド2は、互いに異なる4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)を吐出し、異なるヘッド組3a,3bに属する2つのインクジェットヘッド2で1つの色を吐出する長尺な印刷領域を構成している。
インクジェットプリンタ1には、図1及び図2に示すように、4つのインクカートリッジ(液体カートリッジ)91が装着されている。4つのインクカートリッジ91は、給紙トレイ81と同方向に着脱可能である。これにより、両者に対するアクセス面(すなわち、プリンタ1の前面(一面))が共通となるので、インクカートリッジ91の着脱・交換作業や給紙トレイ81への用紙補充がしやすくなる。
4つのインクカートリッジ91は、互いに異なる4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)が貯溜されている。4つのインクカートリッジ91は、後述するキャップ退避位置に配置されたキャップ61,62の下方位置であって、主走査方向に関して用紙搬送機構10及び給紙トレイ81を挟む位置に2つずつ配置されている。すなわち、インクカートリッジ91は、用紙搬送機構10と鉛直方向に重ならず、キャップ退避位置に配置されたキャップ61,62と鉛直方向に重なる位置に配置されており、インクジェットヘッド2のインク吐出面4よりも鉛直方向下方に配置されている。また、主走査方向に関して、最も外側に配置された2つのインクカートリッジ91を除く内側の2つのインクカートリッジ91は、鉛直方向に関して、8つのインクジェットヘッド2と重なっている。なお、インクジェットヘッド2とインクカートリッジ91とには、上述の位置関係(高低差)に基づいて、インクに水頭差が生じ、ヘッド内のインクには水頭差に応じた負圧が常に働く。これによって、ノズル4aには、安定したインクのメニスカスが形成され、インクが漏れ出さない。
インクカートリッジ91は、図1及び図4に示すように、副走査方向に長尺な直方体形状を有している。インクカートリッジ91は、ケース92、インクが充填されたインク貯溜部(液体貯溜部)93及び廃インクを貯溜する廃インク貯溜部(廃液貯溜部)94を有している。インク貯溜部93には、インクジェットヘッド2に供給するインクが貯溜され、廃インク貯溜部94には、パージによってインクジェットヘッド2から排出されたインクが貯溜される。ケース92には、インク貯溜部92のインク流出口を封止するゴム栓95と、廃インク貯溜部94の流入口を封止するゴム栓96とが固定されている。また、ケース92の図4中左側面には、把持部97が取り付けられている。把持部97によって、インクカートリッジ91をプリンタ1のカートリッジ装着部85に着脱しやすくなる。
カートリッジ装着部85は、搬送方向Aとは逆方向に向かって開口した凹形状に形成されている。そのカートリッジ装着部85の底壁(図4中右側壁)86には、2つの中空針87,88がゴム栓95,96に対応して固定されている。インクカートリッジ91がカートリッジ装着部85に完全に装着されると、中空針87がゴム栓95を貫通し、中空針88がゴム栓96を貫通する。2つの中空針87,88のゴム栓95,96側の端部は、先細り形状となっており、当該端部とは反対側の端部には可撓性を有するチューブ15,16が接続されている。
チューブ15は、中空針87とポンプ17とを接続している。ポンプ17は、インクカートリッジ91がカートリッジ装着部85に装着されたときやインクジェットヘッド2からインクを吐出するパージのときに駆動されて、インク貯溜部93内のインクをインクジェットヘッド2に強制的に送るものである。なお、ポンプ17は、印刷時においては駆動されておらず、インク貯溜部93のインクがポンプ内に形成されたインク流路を通ってインクジェットヘッド2側に流通する。
ポンプ17の上端には、ポンプ17からのインクを2系統に分けるY字管18が設けられている。Y字管18には、可撓性のチューブ19,20がそれぞれ接続されている。さらに2つのチューブ19,20は、異なるヘッド組3a,3bに属した2つのインクジェットヘッド2(チューブジョイント11)に接続されている。すなわち、1つのインクカートリッジ91からポンプ17及びチューブ19,20などを介して、異なるヘッド組3a,3bに属する2つのインクジェットヘッド2へインクが供給されている。
チューブ16の中空針88とは反対側の端部に、Y字管21が接続されている。Y字管21にも、可撓性のチューブ22,23がそれぞれ接続されている。この2つのチューブ22,23は、異なるヘッド組3a,3bに属した2つのインクジェットヘッド2に対応する2つのキャップ61,62と接続されている。これにより、チューブ22,23を介してキャップ61,62内にパージされた廃インクを廃インク貯溜部94に貯溜できて、インクカートリッジ91を新しく交換したときには、廃インクも除去することが可能になる。そのため、プリンタ1内に別の大きな廃インク貯溜部を設ける必要がなくなってインクジェットプリンタ1をより一層小型化することができる。
次に、インクジェットヘッド2に対してメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット60について説明する。メンテナンスユニット60は、ヘッド組3aに属する4つのインクジェットヘッド2に対応する4つのキャップ61及びワイパー63と、ヘッド組3bに属する4つのインクジェットヘッド2に対応する4つのキャップ62及びワイパー64と、これら4つのキャップ61及びワイパー63、4つのキャップ62及びワイパー64をそれぞれ主走査方向に沿って互いに反対方向に移動させる移動機構70と、これら8つのキャップ61,62及びワイパー63,64、移動機構70を内包するトレイ69とを有している。
トレイ69には、各ヘッド組3a,3bとそれぞれ対向した貫通部68a,68bが形成されている。貫通部68a,68bは、矩形平面形状を有しており、4つのインク吐出面4全体が搬送面9aと対向可能なサイズに形成されている。
キャップ61,62は、平板状の基材65とその周縁部に立設された環状突起66とからなり、いずれも同じ形状及びサイズを有している。また、キャップ61,62は、図2に示すように、それぞれ2つのバネ67によって下方から支持されている。この構成により、キャップ61,62は、環状突起66が外側領域4c(インク吐出面4)に当接してインク吐出領域4bを覆うことで、ノズル4a内のインクの乾燥を抑制することができる。
また、基材65には、貫通孔65bを有する凹部65aが形成されている。凹部65aは、上方に開口し、パージ動作時の廃インクが集まる。貫通孔65bには、チューブ22(23)が接続されており、廃インクをインクカートリッジ91の廃インク貯溜部94に廃棄できる。
なお、メンテナンスユニット60は、ワイパー63,64でインク吐出面4を払拭するときに、キャップ61,62を下方に移動させるキャップ高さ調整機構(図示せず)を有している。
ワイパー63,64は、図1に示すように、各々、キャップ61,62を支持する支持プレート71,72に立設されている。平面視で、ワイパー63,64は、キャップ61,62とこれに対応するインクジェットヘッド2とに挟まれて配置されている。また、キャップ高さ調整機構によってキャップ61,62が引き下げられていなければ、ワイパー63,64の先端は、キャップ61,62の基材65とほぼ同じ高さに位置している。
1つのヘッド組に対応して、4つのキャップと4つのワイパーとが、副走査方向に沿ってそれぞれ1列に配列し、主走査方向には4つのインクジェットヘッド2と同じ位置に支持されている。4つのワイパーは、副走査方向に関して、互いに離隔して、1列に配列している。配列の全幅は、4つのインク吐出面4の全幅とほぼ同じである。これによって、インクジェットヘッド2が互いに異なる色のインクを吐出しても、ワイピング(ワイパーによる払拭動作)によるインクの混色が生じることがない。なお、ワイパー63,64は、ゴム及び樹脂などの弾性材料からなる。
移動機構70は、図1及び図2に示すように、4つのキャップ61,62をそれぞれ支持する2つの支持プレート71,72と、副走査方向に関して各支持プレート71,72に挟まれて配置された1本のベルト73と、主走査方向に関して各ヘッド組3a,3bよりも外側に配置された一対のベルトローラ74,75とを有している。
ベルトローラ74,75は、トレイ69に回転自在に支持されている。ベルトローラ74,75には、ベルト73が架け渡されている。また、各支持プレート71,72の内側端部が、部分的にベルト73に連結されている。これによって、各支持プレート71,72は、ベルト73の走行に伴って、主走査方向に往復移動することができる。本実施の形態では、支持プレート71はベルト73の上方部分に連結され、支持プレート72はその下方部分に連結されているので、ベルト73が走行すると、2つの支持プレート71,72は互いに反対方向に平行移動することになる。
なお、本実施形態におけるベルト73は、その幅が非常に狭いゴムからなる平ベルトを用いているが、断面が円形などのゴムベルトであってもよいし、金属からなるワイヤであってもよい。要するにベルトの機能を有する部材であればよい。
また、図1に示すように、トレイ69には、副走査方向に関して、貫通部68a,68bをそれぞれ挟む、主走査方向に沿って延在した4本のガイドレール68cが配置されている。図1中上方に位置する2本のガイドレール68cは、支持プレート71の副走査方向の両端部に形成された凹部と摺動可能に嵌合している。残りの2本のガイドレール68cと、支持プレート72も同様の構成を有している。
以上のようなメンテナンスユニット60の構成により、ベルトローラ74を図示しない駆動モータによって図2中反時計回り方向に回転させると、2つの支持プレート71,72は互いに近づき合い、キャップ及びワイパーが対応するインク吐出面4と対向しない退避位置から両者が対向するキャップ位置まで移動する。
一方、ベルトローラ74が図2中時計回り方向に回転すると、2つの支持プレート71,72は互いに離れ合い、キャップ及びワイパーがキャップ位置から退避位置まで移動する。
次に、メンテナンスユニット60のメンテナンス動作について、図5及び図6を参照しつつ以下に説明する。図5は、インクジェットヘッドのパージ動作及びインク吐出面の払拭動作を経時的に示す状況図である。図6は、インク吐出面をキャップで覆うキャップ動作を経時的に示す状況図である。
インクカートリッジ91をプリンタ1に装着したときや吐出不良などに陥っていたときには、インクジェットヘッド2にパージ処理を施す。まず、図5(a)に示すように、2つのヘッド組3a,3bに属するすべてのインクジェットヘッド2を印刷位置からヘッドメンテナンス位置に上昇させる。そして、ベルトローラ74を図5中反時計回り方向に回転させてベルト73を走行させる。
このとき、ヘッド組3aに対応するキャップ61が主走査方向に沿って図1中左方に移動し、ヘッド組3bに対応するキャップ62が図1中右方(図5中右方)に移動する。同じ支持プレート71,72に設けられたワイパー63,64も、各々、キャップ61,62と一緒に移動する。
次に、インクジェットヘッド2のノズル4aからキャップ61,62に向かってインクを吐出するパージ動作を行う。このとき、4つのポンプ17を駆動しインクカートリッジ91のインク貯溜部94内のインクを強制的にインクジェットヘッド2に送液する。そして、キャップ61,62内にインクがパージされた後、ベルトローラ74を図5中時計回り方向に回転させて、すべてのキャップ61,62をキャップ位置から退避位置に戻す。
本実施形態においては、キャップ61,62とインク吐出面4とを当接させずに、キャップ61,62をキャップ位置に配置した状態でパージを行っているが、後述のキャップ動作のようにインクジェットヘッド2を下方に移動させインク吐出面4とキャップ61,62とを当接してからキャップ61,62内にパージしてもよい。こうすれば、パージしたインクがキャップ61,62の周囲に飛散することがなくなる。なお、本実施形態においては、パージ時において、キャップ61,62とインク吐出面4との距離が比較的近いので、パージしたインクはキャップ61,62の周囲にほとんど飛散することはない。また、キャップ61,62にパージされた廃インクは、チューブ22,23を介してインクカートリッジ91の廃インク貯溜部94に流れ、廃棄される。
また、上述のキャップ61,62を退避位置に戻すとき、図5(b)に示すように、すべてのキャップ61,62をキャップ高さ調整機構(不図示)によって下方に下げる。このとき、ワイパー63,64の先端(上端)が、キャップ61,62の上端よりも上方に位置するように、キャップ61,62を下げる。また、このとき、インク吐出面4がワイパー63,64の先端と当接し且つキャップ61,62の上端から離隔する位置まで、すべてのインクジェットヘッド2を下降させる。こうして、支持プレート71,72の移動に伴って、ワイパー63,64がインク吐出面4と撓みながら接触し、パージによってインク吐出面4に付着したインクを拭き取る。
次に、図5(c)に示すように、すべてのワイパー63,64が退避位置に戻ったところで、キャップ高さ調整機構によってキャップ61,62を元の高さまで上昇させる。
こうして、インクカートリッジ91をプリンタ1に装着したときや吐出不良などに陥っていたインクジェットヘッド2を回復させるパージ動作、及び、パージ動作によってインク吐出面4に付着したインクを拭き取る払拭動作を含むメンテナンス動作が終了する。
次に、プリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時に、インク吐出面4をキャップ61,62で覆うキャップ動作について以下に説明する。この場合においても、上述と同様に、2つのヘッド組3a,3bに属するすべてのインクジェットヘッド2を印刷位置からヘッドメンテナンス位置に上昇させる(図6(a)参照)。そして、図6(b)に示すように、すべてのキャップ61,62を退避位置からキャップ位置に移動するように、ベルトローラ74を図6中反時計回り方向に回転させる。
次に、キャップ61,62がキャップ位置に着いたところで、図6(c)に示すように、すべてのインクジェットヘッド2を下降させる。こうして、インク吐出面4とキャップ61,62とで密閉空間を形成し、ノズル4a内のインクの乾燥を防止する。
以上のような本実施形態によるインクジェットプリンタ1によると、8つのインクジェットヘッド2のインク吐出面4を、副走査方向に沿って4つずつ2列に並べ且つ互いに異なる列に属するインク吐出面4同士が主走査方向に沿って重ならないように配列し、8つのインクジェットヘッド2を2つのヘッド組3a,3bに分けることで、ヘッド組3a,3b(インクジェットヘッド2)に隣接する領域に空いた空間が形成されても、これら空間にはヘッド組3a,3bに属するインクジェットヘッド2に対応するキャップ61,62が配置される。そして、退避位置にあるキャップ61,62の下方位置にインクカートリッジ91が配置される。このように空いた空間にキャップ61,62を配置し、そのキャップ61,62の下方位置にインクカートリッジ91を配置することで、8つのキャップ61,62を配置する別の空間を設ける必要がなくなるとともに、8つのキャップの下方位置を有効利用することができ、インクジェットプリンタ1の小型化を図ることができる。
また、4つのインクカートリッジ91が用紙搬送機構10を挟みつつキャップ61,62の下方位置に配置されているので、プリンタ1をより小型化することができる。また、4つのインクカートリッジ91のうち、内側の2つのインクカートリッジ91が8つのインクジェットヘッド2と鉛直方向に関して重なるように配置されているので、インクジェットプリンタ1をより一層小型化することができる。また、用紙搬送機構10の鉛直方向下方であって、4つのインクカートリッジ91に挟まれる位置に給紙トレイ81が配置されているので、インクジェットプリンタ1内の空間を有効利用でき、小型化に寄与する。
続いて、本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタ201について、図7を参照しつつ以下に説明する。図7は、本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタの要部平面図である。
本実施形態におけるインクジェットプリンタ(液体吐出装置)201は、8つのインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)202の配列が第1実施形態の8つのインクジェットヘッド2の配列と異なっており、これに伴って、8つのキャップ261,262及び8つのワイパー263,264の配列も第1実施形態の8つのキャップ61,62及び8つのワイパー63,64の配列と異なり、且つ、移動機構270の構成が第1実施形態の移動機構70の構成と異なったメンテナンスユニット260を有している。これら以外は、第1実施形態と同様である。なお、インクジェットヘッド202、キャップ261,262及びワイパー263,264の構成は、第1実施形態と同様であり、配置形態だけが第1実施形態と異なっている。また、第1実施形態と同様なものについては、同符号で示し説明を省略する。
本実施形態における8つのインクジェットヘッド202は、図7に示すように、2つずつが組となり、4つのヘッド組203a,203b,203c,203dを構成している。1つのヘッド組は、主走査方向にスライドして配置された2つのインクジェットヘッド2によって構成されている。4つのヘッド組203a,203b,203c,203dが副走査方向に沿って並設されて、8つのインクジェットヘッド202が副走査方向に4つずつ2列に並んでいる。本実施の形態では、1つの列中で隣接する2つのインクジェットヘッド202によって、他の列中の1つのインクジェットヘッド202が挟まれて配置され、全体として副走査方向に関して千鳥状に配置されている。
各ヘッド組203a〜203dにそれぞれ属する2つのインクジェットヘッド202は、インク吐出面4が副走査方向に沿って互いにオーバーラップしており、用紙に対する印字領域が主走査方向に連続している。主走査方向に隣接するインク吐出領域同士でのノズル4aの位置関係は、上述の第1実施形態と同様である。1つのヘッド組に属するすべてのノズル4aは、主走査方向に関して、印字解像度に対応した等間隔で配列している。
4つのヘッド組203a〜203dは、互いに異なる色のインクを吐出する。本実施形態においては、マゼンタインクを貯溜したインクカートリッジ91とヘッド組203aに属する2つのインクジェットヘッド202とが接続されており、イエローインクを貯溜したインクカートリッジ91とヘッド組203bに属する2つのインクジェットヘッド202とが接続されている。そして、シアンインクを貯溜したインクカートリッジ91とヘッド組203cに属する2つのインクジェットヘッド202とが接続されており、ブラックインクを貯溜したインクカートリッジ91とヘッド組203dに属する2つのインクジェットヘッド202とが接続されている。
本実施形態においても、4つのインクカートリッジ91が、第1実施形態と同様に、キャップ退避位置に配置されたキャップ261,262の下方位置であって、主走査方向に関して用紙搬送機構10及び給紙トレイ81を挟む位置に2つずつ配置されている。すなわち、インクカートリッジ91は、用紙搬送機構10と鉛直方向に重ならず、キャップ退避位置に配置されたキャップ261,262と鉛直方向に重なる位置に配置されており、インクジェットヘッド202のインク吐出面4よりも鉛直方向下方に配置されている。また、主走査方向に関して、最も外側に配置された2つのインクカートリッジ91を除く内側の2つのインクカートリッジ91は、鉛直方向に関して、8つのインクジェットヘッド202と重なっている。
メンテナンスユニット260は、8つのインクジェットヘッド202にそれぞれ対応する8つのキャップ261,262及び8つのワイパー263,264と、これらキャップ261,262及びワイパー263,264をそれぞれ主走査方向に移動させる移動機構270とを有している。
移動機構270は、14個のローラ275と、これらローラ275よりも一回り大きい径を有する2つのローラ276と、これら16個のローラ275,276に架け渡されたベルト273とを有している。さらに、このベルト273に連結された8つの支持プレート271,272を有している。4つの支持プレート271は、図7中の右方に配列し、左方に並ぶ4つのインクジェットヘッド202にそれぞれ対応している。4つの支持プレート272は、図中の左方に配列し、右方に並ぶ4つのインクジェットヘッド202にそれぞれ対応している。つまり、1つの支持プレートは、1つのインクジェットヘッド202と主走査方向に沿って並び、副走査方向には、最も外側のものを除いて、2つのインクジェットヘッド202によって挟まれている。いずれも、1組のキャップ及びワイパーを支持している。
換言すると、副走査方向に関して、8つのインクジェットヘッド202の千鳥配列とは逆の千鳥配列で、8つの支持プレート271,272が配列されている。このように、支持プレート271,272、キャップ261,262及びワイパー263,264がインクジェットヘッド202の千鳥配列とは逆の千鳥配列で配置されていることで、インクジェットプリンタ201の小型化に寄与する。
14個のローラ275は、図7中最も下方に位置する支持プレート272を除く、7つの支持プレート271,272の主走査方向の外側端部の角部に隣接して配置されている。さらに、これら14個のローラ275に架け渡されたベルト273の主走査方向に延在する部分が互いに平行な状態で隣接するインクジェットヘッド202間に配置されている。
ベルト273は、ループ状の経路に配置されている。ベルト273は、図中下方のローラ276を発した後、主走査方向の両側の2つのローラ275で折り返しながら、副走査方向に隣接するインクジェットヘッド202間を順次縫うように配設されて、図中最も上方にある2つのローラ275に至る。この2つのローラ275は、主走査方向の右側上方角部に配置されている。さらに、この2つのローラ275を発したベルト273は、最上段のインクジェットヘッド202の上辺と平行に図中左側に延び、上方のローラ276で下方に折れ曲がった後、はじめのローラ276に戻る。
8つの支持プレート271,272は、いずれも副走査方向の同じ側を通るベルト273に連結されており、ベルト273を走行させるだけで、すべてのキャップ261,262及びワイパー263,264をインク吐出面4と対向しない退避位置からインク吐出面4と対向するキャップ位置に移動させることができる。
以上のようなメンテナンスユニット260の構成により、1つのローラ(図7中左上に位置するローラ)276を図示しない駆動モータによって図7中反時計回り方向に回転させると、2つの支持プレート271,272は互いに近づき合い、キャップ及びワイパーが対応するインク吐出面4と対向しない退避位置から両者が対向するキャップ位置まで移動する。
一方、1つのローラ276を図7中時計回り方向に回転させると、2つの支持プレート271,272は互いに離れ合い、キャップ及びワイパーがキャップ位置から退避位置まで移動する。
このように本実施形態においては、各ヘッド組203a〜203dに属する2つのインクジェットヘッド202にそれぞれ対応するキャップ261,262及びワイパー263,264が主走査方向に関して互いに反対方向に移動可能となっている。これにより、本実施形態のメンテナンスユニット260によって、第1実施形態と同様なメンテナンス動作を行うことが可能となる。
以上のような本実施形態によるインクジェットプリンタ201によると、主走査方向に関して、各ヘッド組203a〜203dに属するインクジェットヘッド202に隣接する領域にそれぞれ空いた空間が形成されても、これら空間には8つのキャップ261,262及び8つのワイパー263,264が配置される。そして、退避位置にあるキャップ261,262の下方位置にインクカートリッジ91が配置される。このように空いた空間にキャップ261,262を配置し、そのキャップ261,262の下方位置にインクカートリッジ91を配置することで、インクジェットプリンタ201の小型化を図ることができる。また、第1実施形態と同様な構成を有する部分においては、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した各実施形態においては、同じ色のインクを吐出する2つのインクジェットヘッドが、当該2つのインクジェットヘッドからインクを吐出して画像を形成したときに、主走査方向に関して途切れず連続した印刷が可能なように配置されているが、これら2つのインクジェットヘッドが副走査方向に沿って重ならず、画像を形成したときに、主走査方向に関して連続せず途切れた印刷を可能とするように2つのインクジェットヘッドが配置されていてもよい。
また、各実施形態においては、退避位置にあるキャップ61,62,261,262の下方位置に4つのインクカートリッジ91が配置されているが、1つのインクカートリッジ91がキャップ61,62,261,262の下方に配置されておればよい。また、4つのインクカートリッジ91が、主走査方向に関して、用紙搬送機構10及び給紙トレイ81のいずれか一方だけを挟む位置に配置されていてもよい。また、4つのインクカートリッジ91が、用紙搬送機構10及び給紙トレイ81を挟まずに主走査方向の一方に隣接する位置に配置されていてもよい。また、4つのインクカートリッジ91が、用紙搬送機構10及び給紙トレイ81を挟む一方の位置に1つ配置され、他方の位置に3つ配置されていてもよい。また、インクカートリッジは、プリンタにインクジェットヘッドの数と同じ数だけ配置されていてもよい。また、インクカートリッジ91は、1色のインクだけを貯溜しているが、複数色のインクを貯溜していてもよい。この場合、インクカートリッジの数をさらに減少させることが可能になる。
また、第2実施形態におけるヘッド組を構成する2つのインクジェットヘッドは、互いに同じ色のインクを吐出しているが、異なるインクを吐出してもよい。また、各実施形態におけるインクジェットプリンタはワイパーを有していなくてもよい。この場合、移動機構はキャップを副走査方向に沿って移動する構成だけを有しておればよい。また、各実施形態における移動機構は、ワイパー及びキャップをそれぞれ独立して支持する複数の支持部材を有し、ワイパー及びキャップを単独及び/又は一緒に移動させる機構を有していてもよい。
また、上述した各実施形態は、ノズルからインクを吐出する複数のインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタに本発明を適用した一例であるが、本発明を適用可能な対象はこのようなインクジェットヘッドに限られない。例えば、導電ペーストを吐出して基板上に微細な配線パターンを形成したり、あるいは、有機発光体を基板に吐出して高精細ディスプレイを形成したり、さらには、光学樹脂を基板に吐出して光導波路等の微小電子デバイスを形成するための、複数の液体吐出ヘッドを有する、種々の液体吐出装置に適用することができる。