本発明は、自動車の前部構造に関するものであり、特に、自動車外からバンパービームよりも上方に位置するバンパーフェースの外気導入孔を通してバンパービームが見えないように、バンパービームの上面を覆うことができるカバー部材を設けたものに関する。
自動車の前部構造において、一般に、左右1対のフロントサイドフレームの前端側に車幅方向に延びるバンパービームが橋渡し状に結合され、このバンパービームにバンパーフェースが前側から隣接するように配設され、バンパービームの後方にラジエータやコンデンサー等の車両部品が配置されているが、更に、バンパーフェースがバンパービームよりも上方に位置する外気導入孔を有するものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
前記自動車の前部構造では、自動車外(自動車の前方斜め上側)から、バンパービームよりも上方に位置するバンパーフェースの外気導入孔を通して、バンパーフェース、更には、バンパービーム以外のエンジンルーム内の機器等が見えて、外気導入孔の見栄えが悪くなるという課題がある。特許文献1の自動車の前部構造のように、バンパーフェースの外気導入孔にメッシュ構造を有するグリルが装着されていても、特にメッシュ構造が粗い場合やメッシュ構造の前後幅が小さい場合には、前記課題を解消できない場合がある。
ここで、特許文献1の自動車の前部構造では、バンパービームよりも上方に位置する外気導入孔に装着されたグリルの下端壁部が後方へ延びている。しかし、このグリルの下端壁部は、バンパービームのバンパーレインフォースメントの上面側までは張出しておらず、つまり、バンパーレインフォースメントの上面を覆っていないので、更に、グリルの下端壁部は単に水平に延びるものであるため、自動車外から前記外気導入孔(グリルのメッシュ構造の孔)を通して、バンパービーム、更には、バンパービーム以外のエンジンルーム内の機器等が見えてしまう虞がある。
そこで、自動車外から外気導入孔を通してバンパービームが見えないように、グリルの下端壁部をバンパーレインフォースメントの上面側まで張出すようにすると、衝突時、このグリルの下端壁部が後退した場合、バンパービームの後方に配置されたラジエータやコンデンサー等の車両部品に接触するまで容易に後退し、車両部品を損傷させる虞がある。
本発明の目的は、自動車外からバンパービームよりも上方に位置するバンパーフェースの外気導入孔を通して、バンパーフェース、更には、バンパービーム以外のエンジンルーム内の機器等が見えないように、これらを目隠して外気導入孔の見栄えを良くするとともに、その対策を講じたことによる衝突時の車両部品の損傷を抑制することができる、自動車の前部構造を提供することである。
請求項1、2の自動車の前部構造は、左右1対のフロントサイドフレームの前端側に橋渡し状に結合されて車幅方向に延びるバンパービームと、このバンパービームに前側から隣接するように配設され且つバンパービームよりも上方に位置する外気導入孔を有するバンパーフェースと、バンパービームの後方に配置された車両部品とを備えた自動車の前部構造において、前記バンパーフェースの後面に取付けられてバンパーフェースからバンパービームの上面側へ張出すように配設されたカバー部材を備えている。
請求項1の自動車の前部構造では、前記カバー部材は、前記バンパービームの上面を覆う横壁部と、前記バンパービームの前面部とバンパーフェースとの間に配置されて、衝突時にカバー部材が後退した場合にバンパービームの前面部に当接してカバー部材の後退を抑制するストッパー部とを備えている。
つまり、カバー部材の横壁部によりバンパービームの上面が覆われるため、自動車外(自動車の前方斜め上側)から、バンパービームよりも上方に位置するバンパーフェースの外気導入孔を通してバンパービームが見えないように目隠しされて、外気導入孔の見栄えが良くなり、しかも、衝突時にカバー部材が後退した場合には、バンパービームの前面部とバンパーフェースとの間に配置されたカバー部材のストッパー部が、バンパービームの前面部に当接してカバー部材の後退を抑制するので、カバー部材がバンパービームの後方に配置された車両部品に接触して車両部品を損傷させることが抑制される。
請求項2の自動車の前部構造では、前記カバー部材は、前記バンパービームの上面を覆う横壁部と、前記バンパービームの前側においてバンパーフェースに取付けられる取付部と、前記取付部と横壁部とに亙って設けられて後方程上方へ移行する傾斜状の下端部を有し、衝突時にカバー部材が後退した場合にバンパービームの前端側上端部に当接してカバー部材をバンパーフェースから離脱させる傾斜リブとを備えている。
つまり、カバー部材の横壁部が請求項1のカバー部材の横壁部と同機能を有するので、外気導入孔の見栄えが良くなり、しかも、カバー部材の取付部がバンパービームの前側においてバンパーフェースに取付けられ、衝突時にカバー部材が後退した場合には、下端部が後方程上方へ移行する傾斜状のカバー部材の傾斜リブが、バンパービームの前端側上端部に当接してカバー部材をバンパーフェースから離脱させるので、このとき、前記取付部から確実に離脱させて、カバー部材がバンパービームの後方に配置された車両部品に接触して車両部品を損傷させることが抑制される。
ここで、請求項1、2の発明においては、前記カバー部材は、横壁部の車幅方向両端部から立設された左右1対の縦壁部を有する(請求項3)、更に、前記バンパービームの後方に前記車両部品を支持する枠状のシュラウドが配設され、前記カバー部材は、その車幅方向外側の縦壁部がシュラウドの鉛直サイド部に前側から対向するように配設される(請求項4)、等の構成を備えることが好ましい。
請求項1の自動車の前部構造によれば、バンパーフェースの後面に取付けられてバンパーフェースからバンパービームの上面側へ張出すように配設されたカバー部材を備え、このカバー部材が、バンパービームの上面を覆う横壁部と、バンパービームの前面部とバンパーフェースとの間に配置されて、衝突時にカバー部材が後退した場合にバンパービームの前面部に当接してカバー部材の後退を抑制するストッパー部とを備えたので、カバー部材の横壁部により、自動車外(自動車の前方斜め上側)から、バンパービームよりも上方に位置するバンパーフェースの外気導入孔を通してバンパービームが見えないように、バンパービームを目隠して外気導入孔の見栄えを良くすることができ、故に、外気導入孔の見栄えを悪くすることなく、外気導入孔に種々のメッシュ構造(例えば、粗いメッシュ構造)を有するグリルを装着でき、しかも、衝突時にカバー部材が後退した場合には、カバー部材のストッパー部により、そのストッパー部がバンパービームの前面部に当接してカバー部材の後退を抑制するので、カバー部材がバンパービームの後方に配置された車両部品に接触して車両部品を損傷させることを確実に抑制できる。
請求項2の自動車の前部構造によれば、バンパーフェースの後面に取付けられてバンパーフェースからバンパービームの上面側へ張出すように配設されたカバー部材を備え、このカバー部材が、バンパービームの上面を覆う横壁部と、バンパービームの前側においてバンパーフェースに取付けられる取付部と、取付部と横壁部とに亙って設けられて後方程上方へ移行する傾斜状の下端部を有し、衝突時にカバー部材が後退した場合にバンパービームの前端側上端部に当接してカバー部材をバンパーフェースから離脱させる傾斜リブとを備えたので、カバー部材の横壁部が請求項1のカバー部材の横壁部と同機能を有するので、外気導入孔の見栄えを良くすることができ、故に、外気導入孔の見栄えを悪くすることなく、外気導入孔に種々のメッシュ構造(例えば、粗いメッシュ構造)を有するグリルを装着でき、しかも、衝突時にカバー部材が後退した場合には、カバー部材の傾斜リブにより、その傾斜リブがバンパービームの前端側上端部に当接してカバー部材をバンパーフェースから離脱させるので、このとき、前記取付部から確実に離脱させることができるので、カバー部材がバンパービームの後方に配置された車両部品に接触して車両部品を損傷させることを確実に抑制できる。
請求項3の自動車の前部構造によれば、カバー部材は、横壁部の車幅方向両端部から立設された左右1対の縦壁部を有するので、このカバー部材の1対の縦壁部により、自動車外から前記外気導入孔を通して、その外気導入孔よりも車幅方向両側に位置するエンジンルーム内の機器等が見えないように、その機器等を目隠して外気導入孔の見栄えを一層良くすることができる。
請求項4の自動車の前部構造によれば、バンパービームの後方に車両部品を支持する枠状のシュラウドを配設し、カバー部材の車幅方向外側の縦壁部がシュラウドの鉛直サイド部に前側から対向するように、カバー部材を配設したので、衝突時にカバー部材が後退した場合に、請求項1のように、カバー部材のストッパー部がバンパービームの前面部に当接してから、カバー部材が更に後退した場合でも、また、請求項2のように、カバー部材の傾斜リブがバンパービームの前端側上端部に当接したが、カバー部材が予定外にバンパーフェースから離脱しない状態で更に後退した場合でも、シュラウドを有効利用して、カバー部材の車幅方向外側の縦壁部により、その縦壁部がシュラウドの鉛直サイド部に当接してカバー部材の後退を抑制し、カバー部材がバンパービームの後方に配置された車両部品に接触して車両部品を損傷させることを一層確実に抑制できる。
本発明の自動車の前部構造では、車幅方向に延びるバンパービームが左右1対のフロントサイドフレームの前端側に橋渡し状に結合され、バンパーフェースがバンパービームに前側から隣接するように配設され、このバンパーフェースがバンパービームよりも上方に位置する外気導入孔を有し、ラジエータやコンデンサー等の車両部品がバンパービームの後方に配置されている。
図1〜図7に示すように、自動車Cの前部構造1は、左右1対のフロントサイドフレーム2と、1対のフロントサイドフレーム2の前端側に左右1対のクラッシュカン3を介して橋渡し状に結合されて車幅方向に延びるバンパービーム4と、バンパービーム4に前側から隣接するように配設された合成樹脂製のバンパーフェース5と、バンパービーム4の後方に配置されたラジエータやコンデンサー等の車両部品6とを備えている。尚、バンパービーム4は略矩形の閉断面に形成され、バンパービーム4とバンパーフェース5の前面側部分は穏やかに前方凸に湾曲する形状に形成されている。
バンパービーム4の後方にはシュラウド19が配設され、そのシュラウド19は、水平アッパ部19aと水平ロア部19bと左右の鉛直サイド部19cとを有する枠状に形成され、1対のフロントサイドフレーム2とバンパービーム4に連結支持され、このシュラウド19に車両部品6が後側から取付けられ、車両部品6はシュラウド19の枠内から前方へ臨んでいる。
バンパーフェース5には、中央センター口5a、中央センター口5aの上側に位置する上端センター口5b、中央センター口5aの車幅方向両側に位置する左右1対のサイド口5cが形成されている。中央センター口5aはバンパーフェース5の前面側部分に大きく形成され、中央センター口5aの後方にバンパービーム4が位置している。バンパーフェース5は、中央センター口5aと上端センター口5bと1対のサイド口5cに夫々装着された中央センターグリル7と上端センターグリル8と1対のサイドグリル9を有する。
中央センターグリル7は、グリル本体7aと、センターバー7bとを有する。センターバー7bは、グリル本体7aの上下方向中央よりも少し上方位置において、グリル本体7aの車幅方向両端に亙って車幅方向へ延び、断面が前方凸形に形成されて、バンパービーム4の前側に位置して、グリル本体7aの主要部よりも前方へ膨出すように配設されている。グリル本体7aは、中央センター口5aに嵌合される枠部7cと、センターバー7bの上側の車幅方向中央部分に位置するナンバープレート取付部7dと、センターバー7bの上側のナンバープレート取付部7dの車幅方向両側に位置する左右1対の上部メッシュ構造7eと、センターバー7bの下側に位置する下部メッシュ構造7fとを有する。
バンパーフェース5は、バンパービーム4よりも上方に位置して1対の上部メッシュ構造7eから外気を導入する左右1対の外気導入孔5eと、バンパービーム4よりも下方に位置して下部メッシュ構造7fから外気を導入する下部外気導入孔5fとを有する。尚、上部外気導入孔5eが特許請求の範囲に記載の外気導入孔に相当する。尚、上端センターグリル8はメッシュ構造を有し、各サイドグリル9は、上部にメッシュ構造を有し、下部にフォグランプ(図示略)が後側から取付けられている。
尚、中央センターグリル7において、グリル本体7aには、上部メッシュ構造7eと下部メッシュ構造7fとを連結する複数の鉛直片部(図示略)が設けられ、また、上部メッシュ構造7eの下端近傍部と下部メッシュ構造7fの上端近傍部に夫々前方から後方へ凹む凹部(図示略)が形成され、これら凹部に形成された複数のフック穴(図示略)に、センターバー5bの上下両後端部の後方突出状の複数のフック(図示略)が差込まれて、センターバー5bがグリル本体5aに取付けられている。
さて、自動車Cの前部構造1は、バンパーフェース5の後面に中央センターグリル7の1対の上部メッシュ構造7eに対応させて取付けられて、バンパーフェース5から後方へバンパービーム4の上面側へ張出すように配設された左右1対の合成樹脂製のカバー部材10を備えている。
このカバー部材10は、バンパービーム4の上面を覆う横壁部11と、横壁部11の車幅方向両端部から立設された左右1対の縦壁部12と、バンパービーム4の前面部とバンパーフェース5(中央センターグリル7)との間に配置されて、衝突時にカバー部材10が後退した場合にバンパービーム4の前面部に当接してカバー部材10の後退を抑制する複数(3つ)のストッパー部13と、バンパービーム4の前側においてバンパーフェース5に取付けられる下部取付部14と、バンパービーム4の前側の上方においてバンパーフェース5に取付けられる上部取付部15とを備えている。
横壁部11は、車幅方向に細長い水平な矩形板状に形成されて、バンパービーム4の前後幅と略同じ前後幅を有し、後端部がバンパービーム4の後端部と略同じ前後方向位置となり、車幅方向両端部が中央センターグリル7の対応する上部メッシュ構造7eの纏まった所定の複数の孔7eaよりも車幅方向両側に位置するように配置されている。
1対の縦壁部12は、横壁部11と一体成形されて、これらの内側面が対向する鉛直な矩形板状に形成されて、横壁部11の前後幅と略同じ前後幅を有し、前記複数の孔7eaよりも車幅方向両側に位置し、上端部が前記複数の孔7eaよりも上方に位置し、車幅方向外側の縦壁部12がシュラウド19の鉛直サイド部19cに前側から対向するように配置されている。
下部取付部14と上部取付部15は横壁部11及び縦壁部12と一体成形されている。下部取付部14は3つ設けられ、これら下部取付部14には夫々フック穴14aが形成され、3つの下部取付部14は、横壁部11よりも下側且つ前側に配置され、中央センターグリル7の上部メッシュ構造7eの下端部分の後面に当接して、これらのフック穴14aに上部メッシュ構造7eの下端部分の後方突出状の3つのフック14bが差込まれて取付けられている。
また、上部取付部15は2つ設けられ、これら上部取付部15には夫々フック穴15aが形成され、2つの上部取付部15は、1対の縦壁部12よりも上側且つ前側に配置され、中央センターグリル7の上部メッシュ構造7eの上端部分の後面に当接して、これらのフック穴15aに上部メッシュ構造7eの上端部分の後方突出状の2つのフック15bが差込まれて取付けられている。
ここで、カバー部材10には、横壁部11の前端側から下方へ張出す下側張出部20と、1対の縦壁部12の前端側及び下側張出部20の車幅方向両端側から車幅方向両側へ張出す左右1対の側方張出壁部21と、1対の縦壁部12及び1対の側方張出壁部21の上端側且つ前端側から前方へ張出す左右1対の上側張出部22とが一体形成されている。2つの上部取付部15は1対の上側張出部22の前端部分に形成されている。
各縦壁部12の外側面と側方張出壁部21の前面とに亙って複数のリブ23が形成され、1つの下部取付部14は一方の側方張出壁部21の外側面の前端下部から車幅方向へ張出すように形成されている。下側張出部20の下部には、中央センターグリル7の上部メッシュ構造7eの下端部分の後面に近接する2つの下部壁部24が形成されている。2つの下部壁部24は車幅方向に間隔を空けて配置され夫々車幅方向に長く形成されている。
2つの下部取付部14は下部壁部24よりも下方へ突出するように形成され、3つのストッパー部13は、2つの下部壁部24の車幅方向両側と2つの下部壁部24の間に配置されて、夫々下部壁部24に対して後方へ張出す後方凸形に形成されている。各下部壁部24の後面と横壁部11の前端部下面とに亙って複数のリブ25が形成されている。
以上説明した自動車Cの前部構造1によれば次の効果を奏する。
バンパーフェース5の後面に取付けられてバンパーフェース5からバンパービーム4の上面側へ張出すように配設されたカバー部材10を備え、このカバー部材10が、バンパービーム4の上面を覆う横壁部11と、バンパービーム4の前面部とバンパーフェース5との間に配置されて、衝突時にカバー部材10が後退した場合にバンパービーム4の前面部に当接してカバー部材10の後退を抑制するストッパー部13とを備えた。
つまり、先ず、カバー部材10の横壁部11により、自動車外(自動車Cの前方斜め上側)から、バンパービーム4よりも上方に位置するバンパーフェース5の上部外気導入孔5e(中央センターグリル7の上部メッシュ構造7eの孔7ea)を通してバンパービーム4が見えないように、バンパービーム4を目隠して上部外気導入孔5eの見栄えを良くすることができ、故に、上部外気導入孔5eの見栄えを悪くすることなく、上部外気導入孔5eに種々のメッシュ構造(例えば、本実施例のように粗い上部メッシュ構造7e)を有するグリル(中央センターグリル7)を装着できる。
しかも、衝突時に、バンパーフェース5(中央センターグリル7のセンターバー7aや上部メッシュ構造7e)からカバー部材10に後向きの力が入力されて、カバー部材10が後退した場合には、カバー部材10のストッパー部13により、そのストッパー部13がバンパービーム4の前面部に当接してカバー部材10の後退を抑制するので、カバー部材10がバンパービーム4の後方に配置された車両部品6に接触して車両部品6を損傷させることを確実に抑制できる。
カバー部材10は、横壁部11の車幅方向両端部から立設された左右1対の縦壁部12を有するので、このカバー部材10の1対の縦壁部12により、自動車外から上部外気導入孔5eを通して、その上部外気導入孔5eよりも車幅方向両側に位置するエンジンルーム内の機器等が見えないように、その機器等を目隠して上部外気導入孔5eの見栄えを一層良くすることができる。
バンパービーム4の後方に車両部品6を支持する枠状のシュラウド19を配設し、カバー部材10の車幅方向外側の縦壁部12がシュラウド19の鉛直サイド部19cに前側から対向するように、カバー部材10を配設したので、衝突時にカバー部材10が後退した場合に、カバー部材10のストッパー部13がバンパービーム4の前面部に当接してから、カバー部材10が更に後退した場合でも、シュラウド19を有効利用して、カバー部材10の車幅方向外側の縦壁部12により、その縦壁部12がシュラウド19の鉛直サイド部19cに当接してカバー部材10の後退を抑制し、カバー部材10がバンパービーム4の後方に配置された車両部品6に接触して車両部品6を損傷させることを一層確実に抑制できる。
図8〜図10に示すように、実施例2の自動車Cの前部構造1Aは、実施例1のカバー部材10の代わりに、バンパーフェース5の後面に取付けられて、バンパーフェース5から後方へバンパービーム4の上面側へ張出すように配設された合成樹脂製のカバー部材30を備えたものであり、その他の構成については、実施例1と同様であるので同一符号を付して説明を省略する。
このカバー部材30は、バンパービーム4の上面を覆う横壁部31と、横壁部31の車幅方向両端部から立設された左右1対の縦壁部32と、バンパービーム4の前側においてバンパーフェース5に取付けられる下部取付部33と、バンパービーム4の前側の上方においてバンパーフェース5に取付けられる上部取付部34と、下部取付部33と横壁部31とに亙って設けられて後方程上方へ移行する傾斜状の下端部35aを有し、衝突時にカバー部材30が後退した場合にバンパービーム4の前端側上端部に当接してカバー部材40をバンパーフェース5から離脱させる複数(4つ)の傾斜リブ35とを備えている。尚、下部取付部33が特許請求の範囲に記載の取付部に相当する。
横壁部31は、車幅方向に細長い略水平な矩形板状に形成されて、実施例1の横壁部11と同様に、バンパービーム4の前後幅と略同じ前後幅を有し、後端部がバンパービーム4の後端部と略同じ前後方向位置となり、車幅方向両端部が前記複数の孔7eaよりも車幅方向両側に位置するように配置されている。
1対の縦壁部32は、横壁部31と一体成形されて、これらの内側面が対向する略鉛直な矩形板状に形成されて、横壁部31の前後幅と略同じ前後幅を有し、実施例1の1対の縦壁部12と同様に、前記複数の孔7eaよりも車幅方向両側に位置し、上端部が前記複数の孔7eaよりも上方に位置し、車幅方向外側の縦壁部32がシュラウド19の鉛直サイド部19cに前側から対向するように配置されている。
下部取付部33と上部取付部34は横壁部31及び縦壁部32と一体成形されている。下部取付部33は車幅方向に間隔を空けて3つの取付支持部33aを有し、これら取付支持部33aには夫々フック穴33bが形成され、3つの取付支持部33aは、横壁部31よりも下側且つ前側に配置され、中央センターグリル7の上部メッシュ構造7eの下端部分の後面に当接して、これらのフック穴33bに上部メッシュ構造7eの下端部分の後方突出状の3つのフック33cが差込まれて取付けられている。
また、上部取付部34は2つ設けられ、これら上部取付部34には夫々フック穴34aが形成され、これら上部取付部34は、1対の縦壁部32よりも上側且つ前側に配置され、中央センターグリル7の上部メッシュ構造7eの上端部分の後面に当接して、これらのフック穴34aに上部メッシュ構造7eの上端部分の後方突出状の2つのフック34bが差込まれて取付けられている。
ここで、カバー部材30には、横壁部11の前端側から下方へ張出す下側張出部40と、1対の縦壁部32の前端側及び下側張出部40の車幅方向両端側から車幅方向両側へ張出す左右1対の側方張出壁部41と、1対の縦壁部32及び1対の側方張出壁部31の上端側且つ前端側から前方へ張出す左右1対の上側張出部42とが一体形成されている。2つの上部取付部34は1対の上側張出部42の前端部分に形成されている。
各縦壁部32の外側面と側方張出壁部41の前面とに亙って複数のリブ43が形成されている。下側張出部20は横壁部32の前端に連なる鉛直壁部40aと、鉛直壁部40aの下端から下方程前方に位置するように傾斜する傾斜壁部40bとを有し、この傾斜壁部40bの下側に3つの取付支持部33aを有する下部取付部33が形成されている。尚、下部取付部33において、隣合う2つの取付支持部33aの間に後方へ張出すとともに上端が傾斜壁部40bの上部に繋がる張出部33dが形成されている。
4つの傾斜リブ35は車幅方向に略等間隔おきに配設され、下部取付部33と横壁部31と、更に、下側張出部40(鉛直壁部40a、傾斜壁部40b)に亙って形成され、各傾斜リブ35の下端部35aにおいて、その後半部はバンパービーム4と略同じ前後方向位置となり、故に、バンパービーム4と干渉しないように、前方に向かって下方へ穏やかな傾斜となり、また、その前半部は、この傾斜リブ35の機能を確実に発揮させるために、前方に向かって下方へ後半部よりも急な傾斜となるように形成されている。
以上説明した自動車Cの前部構造1Aによれば次の効果を奏する。
バンパーフェース5の後面に取付けられてバンパーフェース5からバンパービーム4の上面側へ張出すように配設されたカバー部材30を備え、このカバー部材30が、バンパービーム4の上面を覆う横壁部31と、バンパービーム4の前側においてバンパーフェース5に取付けられる下部取付部33と、下部取付部33と横壁部31とに亙って設けられて後方程上方へ移行する傾斜状の下端部35aを有し、衝突時にカバー部材30が後退した場合にバンパービーム4の前端側上端部に当接してカバー部材30をバンパーフェース5から離脱させる傾斜リブ35とを備えた。
つまり、カバー部材30の横壁部31が請求項1のカバー部材10の横壁部11と同機能を有するので、上部外気導入孔5eの見栄えを良くすることができ、故に、上部外気導入孔5eの見栄えを悪くすることなく、上部外気導入孔5eに種々のメッシュ構造(例えば、本実施例のように粗い上部メッシュ構造7e)を有するグリル(中央センターグリル7)を装着できる。
しかも、衝突時に、バンパーフェース5(中央センターグリル7のセンターバー7aや上部メッシュ構造7e)からカバー部材30に後向きの力が入力されて、カバー部材30が後退した場合には、カバー部材30の傾斜リブ35により、その傾斜リブ35がバンパービーム4の前端側上端部に当接してカバー部材30をバンパーフェース5から離脱させるので、このとき、下部取付部33から確実に離脱させることができるので、カバー部材30がバンパービーム4の後方に配置された車両部品6に接触して車両部品6を損傷させることを確実に抑制できる。
カバー部材30は、横壁部31の車幅方向両端部から立設された左右1対の縦壁部32を有するので、このカバー部材30の1対の縦壁部32により、自動車外から上部外気導入孔5eを通して、その上部外気導入孔5eよりも車幅方向両側に位置するエンジンルーム内の機器等が見えないように、その機器等を目隠して上部外気導入孔5eの見栄えを一層良くすることができる。
カバー部材30の車幅方向外側の縦壁部32がシュラウド19の鉛直サイド部19cに前側から対向するように、カバー部材30を配設したので、衝突時にカバー部材30が後退した場合に、カバー部材30の傾斜リブ35がバンパービーム4の前端側上端部に当接したが、カバー部材30が予定外にバンパーフェース5から離脱しない状態で更に後退した場合でも、シュラウド19を有効利用して、カバー部材30の車幅方向外側の縦壁部32により、その縦壁部32がシュラウド19の鉛直サイド部19cに当接してカバー部材30の後退を抑制し、カバー部材30がバンパービーム4の後方に配置された車両部品6に接触して車両部品6を損傷させることを一層確実に抑制できる。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を付加して実施可能である。例えば、カバー部材の形状やサイズ、実施例1ではストッパー部、実施例2では傾斜リブ、の数や形状やサイズ等は適宜変更可能である。
実施例1の自動車の前部構造の要部正面図である。
実施例1の自動車の前部構造の前側からの要部斜視図である。
実施例1の自動車の前部構造の後側からの要部斜視図である。
図3のカバー部材を含む要部拡大図である。
実施例1のカバー部材の斜視図である。
実施例1のカバー部材の斜視図である。
実施例1の自動車の前部構造のカバー部材を含む要部断面図である。
実施例2のカバー部材の斜視図である。
実施例2のカバー部材の斜視図である。
実施例2の自動車の前部構造のカバー部材を含む要部断面図である。
符号の説明
C 自動車
1,1A 前部構造
2 フロントサイドフレーム
4 バンパービーム
5 バンパーフェース
5e 上部外気導入孔
6 車両部品
10 カバー部材
11 横壁部
12 縦壁部
13 ストッパー部
19 シュラウド
19c 鉛直サイド部
30 カバー部材
31 横壁部
32 縦壁部
33 下部取付部
35 傾斜リブ