JP4866410B2 - リン酸含有水の処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体製造工場や液晶パネル工場等で排出されるリン酸含有水の処理装置に関する。
従来、半導体製造工場や液晶パネル工場等で排出されるリン酸含有水を消石灰や塩化カルシウム等のカルシウム剤と反応させて、リン酸カルシウムを生成し、生成したリン酸カルシウムを鉄塩(塩化鉄、硫酸鉄)やアルミニウム塩(硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム)などの無機凝集剤及び高分子凝集剤を用いて、凝集沈殿させて処理する方法がある。上記方法では、リン酸含有水とカルシウム剤とをpH=9〜11程度で反応させるため、下式のごとく、生成するリン酸カルシウムは、Ca(PO、Ca10(PO(OH)等の形態となる。このようにCa(PO、Ca10(PO(OH)を生成させることで、処理水中のリン酸イオン濃度は低くなるが、脱水後のケーキ(Ca(PO、Ca10(PO(OH))の含水率は高くなることが知られている。特に、Ca(POの含水率が高い。
3Ca2+ + 2PO 3− → Ca(PO
10Ca2+ + 6PO 3− + 2OH → Ca10(PO(OH)
また、リン酸含有水と塩化カルシウムとをpH4.5〜7で反応させ、下式のごとく、リン酸カルシウムを結晶状のCaHPOとして生成させる処理方法もある(例えば、特許文献1参照)。このようにCaHPOを生成させることで、脱水後のケーキ(CaHPO)の含水率は低くなるが、処理水中のリン酸イオン濃度は比較的高くなることが知られている。
Ca2+ + HPO 2− → CaHPO
また、生成するCaHPO、Ca(PO等のリン酸カルシウムは比較的微細な粒子であり、沈殿性が良くないため、実用的には無機凝集剤や高分子凝集剤を併用することで、粒子を粗大化させ、沈殿性を改善して処理水と分離する。この場合、スラリが無機凝集剤(鉄塩、アルミニウム塩)由来の金属や高分子凝集剤由来の有機物等多くの不純物を含むため、高純度なリン酸の製造用として回収再利用することが困難となる。
また、例えば、特許文献2には、濃厚リン酸含有処理排水を、pH5〜7の条件で水酸化カルシウムと反応させてCaHPOを生成し、これを不溶性物として分離する第1の工程と、この第1の工程の一次処理液をpH9〜11の条件で水酸化カルシウムと反応させて生成した不溶性物を分離する第2の工程と、この第2の工程で分離した不溶性物を前記第1の工程で処理する前記濃厚リン酸含有排水に溶解させる第3の工程とを有する濃厚リン酸含有水処理方法が提案されている。特許文献2の方法により、回収再利用可能なCaHPOを含むスラリが得られる。
特開昭53−107151号公報 特開平9−253658号公報
しかし、上記これらの方法では、被処理水中のリン酸の回収率、脱水後のリン酸カルシウムケーキの含水率の点で十分ではなく、改善する必要がある。
そこで、本発明の目的は、被処理水中のリン酸の回収率を向上させると共に、脱水後のリン酸カルシウムケーキの含水率を低下させることができるリン酸含有水の処理装置及び処理方法を提供することにある。
本発明のリン酸含有水の処理装置は、リン酸を含有する被処理水とカルシウム剤とを反応させて、リン酸カルシウムを生成させると共に、前記リン酸カルシウムを沈降分離させる沈殿槽と、前記沈殿槽で分離したリン酸カルシウムの少なくとも一部をpH3〜4.5の条件で処理する酸処理槽と、前記酸処理槽で処理したリン酸カルシウムを前記沈殿槽に移送する移送部と、を備える。
また、前記リン酸含有水の処理装置において、前記沈殿槽は、スラリブランケット層を形成して被処理水を清澄化するスラリブランケット型沈殿槽であることが好ましい。
また、前記リン酸含有水の処理装置において、前記沈殿槽にアルカリ剤を添加し、前記沈殿槽内のpHをアルカリ条件下に調整するアルカリ剤添加手段を備えることが好ましい。
また、前記リン酸含有水の処理装置において、前記リン酸を含有する被処理水を前記沈殿槽に供給する前に、前記酸処理槽に流入させる被処理水流入部を備えることが好ましい。
また、本発明のリン酸含有水の処理装置は、リン酸を含有する被処理水とカルシウム剤とを反応させて、リン酸カルシウムを生成させる反応槽と、前記反応槽で生成したリン酸カルシウムを沈降分離させ、スラリブランケット層を形成して被処理水を清澄化するスラリブランケット型沈殿槽と、前記スラリブランケット型沈殿槽で分離したリン酸カルシウムの少なくとも一部をpH3〜4.5の条件で処理する酸処理槽と、前記酸処理槽で処理したリン酸カルシウムを前記反応槽に移送する移送部と、を備える。
また、本発明のリン酸含有水の処理装置は、リン酸を含有する被処理水とカルシウム剤とをpH5〜7の条件で反応させて、リン酸カルシウムを生成させる反応槽と、前記リン酸カルシウムを沈降分離させる沈殿槽と、前記沈殿槽で分離したリン酸カルシウムの少なくとも一部をpH3〜4.5の条件で処理する酸処理槽と、前記酸処理槽で処理したリン酸カルシウムを前記反応槽に移送する移送部と、前記沈殿槽にアルカリ剤を添加し、前記沈殿槽内のpHをアルカリ条件下に調整するアルカリ剤添加手段と、を備える。
また、前記リン酸含有水の処理装置において、前記沈殿槽は、スラリブランケット層を形成して被処理水を清澄化するスラリブランケット型沈殿槽であることが好ましい。
また、前記リン酸含有水の処理装置において、前記リン酸を含有する被処理水を前記反応槽に供給する前に、前記酸処理槽に流入させる被処理水流入部を備えることが好ましい。
本発明によれば、被処理水中のリン酸の回収率を向上させると共に、脱水後のリン酸カルシウムケーキの含水率を低下させることができる。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係るリン酸含有水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示すように、リン酸含有水の処理装置1は、スラリブランケット型沈殿槽10と、撹拌装置12が設けられた酸処理槽14と、配管とを備える。
スラリブランケット型沈殿槽10内には、チャンバ16が設けられている。チャンバ16は、円筒体であって、沈殿槽の中心部に配置される。チャンバ16の下端には、チャンバ16内を挿通するシャフト24に固定されたディストリビュータ18が設けられている。ディストリビュータ18は、複数の吹出管から構成されており、各吹出管には、複数の吹出孔22が形成されている。また、ディストリビュータ18は、スラリブランケット型沈殿槽10の運転時に、モータ26の駆動により回転される。そして、チャンバ16内の被処理水は、各吹出孔22から沈殿槽内に吐出される。
また、スラリブランケット型沈殿槽10の底部には、沈殿槽の底部に沈殿したリン酸カルシウムスラリを掻き寄せる掻き寄せ機28が設けられている。掻き寄せ機28もシャフト24に固定されており、ディストリビュータ18と共に回転する。
スラリブランケット型沈殿槽10には、槽内のpHを検出するpHメータ30が設けられている。また、スラリブランケット型沈殿槽10のチャンバ16には、カルシウム剤流入ライン34が接続された被処理水流入ライン32が接続され、アルカリ剤添加手段としてのポンプ36を介してアルカリ剤添加ライン38が接続されている。そして、ポンプ36とpHメータ30とは電気的に接続されている。スラリブランケット型沈殿槽10の上部に設けられる処理水排出口(不図示)には、処理水排出ライン40が接続されている。スラリブランケット型沈殿槽10の底部に設けられる汚泥排出口(不図示)には、汚泥排出ライン42が接続されている。また、汚泥排出ライン42は分岐して、酸処理槽14の汚泥排出口(不図示)に接続されている。ここで、汚泥排出ライン42と酸処理槽14とを接続するラインを汚泥返送ライン44とする。酸処理槽14のpH調整剤流入口(不図示)には、pH調整剤流入ライン46が接続されている。酸処理槽14の汚泥排出口(不図示)とスラリブランケット型沈殿槽10のチャンバ16とは、移送ライン48(移送部)により接続されている。
次に、本実施形態に係るリン酸を含有する被処理水の処理方法及び処理装置の動作について説明する。ここで、リン酸含有水は、例えば、半導体製造工場や液晶パネル工場等の産業排水として排出されるものである。まず、被処理水流入ライン32及びカルシウム剤流入ライン34からスラリブランケット型沈殿槽10のチャンバ16内に被処理水及びカルシウム剤を供給する。
そして、チャンバ16内のリン酸含有水とカルシウム剤とを回転するディストリビュータ18の吹出孔22から吐出させ、被処理水の上昇流を発生させると共に、リン酸含有水とカルシウム剤とを反応させ、リン酸カルシウムを生成させる。被処理水の上昇流において、粗大なリン酸カルシウムは重力により沈降分離して、スラリブランケット型沈殿槽10の底部に堆積し、リン酸カルシウムスラリを形成する。また、スラリブランケット型沈殿槽10の中間部に、リン酸カルシウムからなる懸濁・流動状態のスラリブランケット層Aを形成する。スラリブランケット層Aにより、上昇流に含まれる微細なリン酸カルシウムが捕捉されるため、スラリブランケット層Aを通過した被処理水は、リン酸が取り除かれた清澄な上澄水となる。そして、スラリブランケット型沈殿槽10の上部の上澄水Bを処理水排出ライン40から取り出す。
また、本実施形態では、スラリブランケット型沈殿槽10にアルカリ剤を添加して、沈殿槽内のpHをアルカリ条件下に調整することが好ましい。これにより、沈殿槽内(主にスラリブランケット層内)で効率的にリン酸含有水とカルシウム剤とを反応させることができ、被処理水中のリン酸を高い回収率で回収することができる。また、スラリブランケット型沈殿槽10内にリン酸カルシウムスラリが長時間堆積していると、リン酸カルシウムが改質し、沈殿槽内のpHが降下して、被処理水中にリン酸が再溶解して、処理水中のリン酸濃度が上昇する場合がある。しかし、本実施形態のように、アルカリ剤を添加し、スラリブランケット型沈殿槽10内のpHをアルカリ条件下に調整することにより、沈殿槽内にリン酸カルシウムスラリが長時間堆積していても、リン酸カルシウムが改質し、沈殿槽内のpHが降下して、被処理水中にリン酸が再溶解することを抑制することができる。その結果、リン酸が除去された処理水を安定し得ることが可能となる。
スラリブランケット型沈殿槽10内のpHをアルカリ条件下に調整する方法としては、例えば、pHメータ30により計測される沈殿槽内のpH値に基づいて、ポンプ36を稼働させ、沈殿槽内のpHがアルカリ条件となるように、アルカリ剤添加ライン38からアルカリ剤をチャンバ16に供給することにより、行われる。
一方では、スラリブランケット型沈殿槽10の底部に堆積したリン酸カルシウムスラリを掻き寄せ機28で掻き寄せて、汚泥排出ライン42から取り出し、リン酸カルシウムスラリの少なくとも一部を汚泥返送ライン44から酸処理槽14へ供給する。酸処理槽14へのリン酸カルシウムスラリ供給方法は、例えば、汚泥排出ライン42の分岐点に三方弁を設置し、汚泥返送ライン44にポンプを設置し、三方弁の開閉度、ポンプの稼働量を調節して、酸処理槽14へリン酸カルシウムスラリを供給する方法等が挙げられる。
また、汚泥返送ライン44にスラリ濃縮槽を設け、スラリブランケット型沈殿槽10から引き抜いたリン酸カルシウムスラリを一旦、スラリ濃縮槽に流入させて、濃縮してから酸処理槽14に供給してもよい(これにより、より濃厚なスラリを酸処理槽14に返送できるため、より高い効果が得られる。また、スラリの返送流量を小さくできる等のメリットもある。)。
次に、pH調整剤流入ライン46から酸処理槽14へ、pH調整剤として塩酸、硫酸、硝酸等の酸剤を供給する。そして、酸処理槽14で、リン酸カルシウムスラリをpH3〜4.5の条件で酸処理する。そうすると、酸処理槽14内のリン酸カルシウムは、一部は溶解するものの、未溶解のものは、酸処理槽14に供給する前のリン酸カルシウムより結晶性が高く、含水率の低い、例えば、CaHPO、Ca(HPO等のリン酸カルシウムとなる。ここで、上記スラリをpH3未満の条件で酸処理すると、リン酸カルシウムは大半が溶解してしまうため、後段のスラリブランケット型沈殿槽10内では、溶解したリン酸とカルシウムとの反応になる。その結果、結晶性が高く、含水率の低いリン酸カルシウムを得ることが困難となる。また、上記スラリをpH4.5超の条件で酸処理すると、CaHPO、Ca(HPO等のリン酸カルシウムに改質させること自体が困難となる。なお、酸処理槽14にpHメータを設置して、酸処理槽14内のスラリのpHを管理しながら、pH調整剤の供給量を調節することが好ましい。
次に、移送ライン48からスラリブランケット型沈殿槽10のチャンバ16内へ、酸処理槽14でCaHPO、Ca(HPO等に改質されたリン酸カルシウムスラリを供給する。そして、スラリブランケット型沈殿槽10内でリン酸カルシウムスラリを混合しながら、被処理水とカルシウム剤とを反応させる。これにより、粒径が大きく、沈殿性、ろ過性の良いリン酸カルシウムを生成させることができる。スラリブランケット型沈殿槽10において生成するリン酸カルシウムは、酸処理槽14で改質したCaHPO、Ca(HPO等のリン酸カルシウムが核となっているため、スラリの沈降濃縮性は高く、脱水後のケーキ含水率は低くなる。
また、本実施形態のように、リン酸カルシウムの生成、沈降分離を一つの槽で行うことにより、リン酸カルシウムの生成、沈降分離をそれぞれ別々の槽で行うより、省スペース化を図ることができ、また、建設コスト、エネルギーコスト等を低減することも可能となる。リン酸カルシウムの生成及び沈降分離を一つの槽で行い、且つリン酸を高い回収率で回収することができる沈殿槽としては、スラリブランケット型沈殿槽を用いることが好ましいが、リン酸カルシウムの生成及び沈降分離を行うことができれば、スラリブランケット層を形成しない一般的な沈殿槽(例えば、上向流式円形沈殿槽等)であってもよい。
本実施形態で用いられるカルシウム剤としては、水酸化カルシウム(消石灰)、塩化カルシウム、その他カルシウム剤として従来公知のものが適用される。また、本実施形態で用いられるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、水酸化カルシウム等のアルカリ剤が適用される。
図2は、本発明の他の実施形態に係るリン酸含有水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示すリン酸含有水の処理装置1では、塩酸等の酸剤(pH調整剤)を酸処理槽14に供給して、リン酸カルシウムの酸処理を行っている。しかし、酸処理槽14で、リン酸カルシウムのpHを3〜4.5に調整するには、多量の酸剤が必要となる。そこで、強酸性であるリン酸含有水(被処理水)を利用することが好ましい。すなわち、図2に示すリン酸含有水の処理装置2のように、被処理水流入ライン32を酸処理槽14に接続し、被処理水流入ライン32から酸処理槽14へリン酸含有水を供給して、リン酸カルシウムの汚泥の酸処理を行うことが好ましい。これにより、pH調整に必要な酸剤の使用量を削減することができる。なお、図での説明は省略するが、被処理水流入ライン32を分岐させて、酸処理槽14及びスラリブランケット型沈殿槽10のチャンバ16にそれぞれ接続させてもよい。
図3は、本発明の他の実施形態に係るリン酸含有水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。図3に示すように、リン酸含有水の処理装置3は、撹拌装置12aが設けられた反応槽50と、スラリブランケット型沈殿槽10と、撹拌装置12bが設けられた酸処理槽14と、配管と、を備える。
反応槽50の被処理水流入口(不図示)には、第1流入ライン(被処理水流入部)52が接続されており、反応槽50のカルシウム剤流入口(不図示)には、カルシウム剤流入ライン34が接続されている。反応槽50の被処理水排出口(不図示)とスラリブランケット型沈殿槽10のチャンバ16とは、第2流入ライン54により接続されている。第2流入ライン54には、アルカリ剤添加ライン38がアルカリ剤添加手段としてのポンプ36を介して接続されている。また、スラリブランケット型沈殿槽10には、槽内のpHを検出するpHメータ30が設けられている。そして、ポンプ36とpHメータ30とは電気的に接続されている。
スラリブランケット型沈殿槽10の上部に設けられる処理水排出口(不図示)には、処理水排出ライン40が接続されている。スラリブランケット型沈殿槽10の底部に設けられる汚泥排出口(不図示)には、汚泥排出ライン42が接続されている。また、汚泥排出ライン42から分岐した汚泥返送ライン44が、酸処理槽14の汚泥排出口(不図示)に接続されている。酸処理槽14のpH調整剤流入口(不図示)には、pH調整剤流入ライン46が接続されている。酸処理槽14の汚泥排出口(不図示)と反応槽50の汚泥流入口(不図示)とは、移送ライン48(移送部)により接続されている。
図4は、本発明の他の実施形態に係るリン酸含有水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。上記でも説明したように、酸処理槽14でのpH調整に必要な酸剤の使用量を削減することができる点で、図4に示すリン酸含有水の処理装置4のように、第1流入ライン52を酸処理槽14に接続し、第1流入ライン52から酸処理槽14へリン酸含有水を供給して、リン酸カルシウムの酸処理を行うことが好ましい。なお、図での説明は省略するが、被処理水流入ライン32を分岐させて、酸処理槽14及び反応槽50にそれぞれ接続させてもよい。以下に、図4のリン酸含有水の処理装置を例に、本実施形態に係るリン酸含有水の処理方法及び処理装置の動作について説明する。
まず、第1流入ライン52から酸処理槽14を介して、反応槽50へリン酸含有水を供給すると共に、カルシウム剤流入ライン34から反応槽50へカルシウム剤を供給する。ここで、反応槽50では、リン酸含有水をpH5〜7の条件下でカルシウム剤と反応させて、リン酸カルシウムを生成させることが好ましい。リン酸含有水とカルシウム剤とをpH5〜7の条件下で反応させると、CaHPOを主成分とするリン酸カルシウムが生成する。リン酸含有水をpH5未満の条件下で反応させると、生成するリン酸カルシウム(主にCaHPO)の水に対する溶解度が高くなり、被処理水中へのリン酸イオン濃度が増加するため、被処理水中のリン酸の回収率が低下する場合がある。また、リン酸含有水をpH7超の条件下で反応させると、CaHPOを生成させることが困難となる。CaHPOを生成させることにより、後段の沈殿槽で得られるリン酸カルシウムの沈降濃縮性を高め、純度の高いリン酸カルシウムスラリを得ることが可能となり、また、脱水後のケーキ含水率を低下させることも可能となる。
反応槽50内のpHを5〜7に調整するために、反応槽50にpH調整剤を添加するpH調整剤添加ラインを設置することが好ましい。しかし、反応槽50に供給するリン酸含有水は、主に強酸性であるため、例えば、反応槽50内のpHを5〜7に調整するためには、pH調整剤としてアルカリ剤を使用する必要がある。しかし、反応槽50に供給するカルシウム剤として水酸化カルシウムを使用すれば、pH調整のためのアルカリ剤としても機能するため、別途pH調整剤を供給する必要はない(なお、別途pH調整剤を供給してもよい)。また、塩化カルシウムをカルシウム剤として使用する場合等は、カルシウム剤とともにpH調整剤を反応槽50に供給する必要がある。
次に、反応槽50で生成したリン酸カルシウムを含む被処理水を第2流入ライン54からスラリブランケット型沈殿槽10のチャンバ16に供給する。チャンバ16内のリン酸カルシウムを含む被処理水をディストリビュータ18の吹出孔22から吐出させ、被処理水の上昇流を発生させる。被処理水の上昇流において、粗大なリン酸カルシウムは重力により沈降分離して、スラリブランケット型沈殿槽10の底部に堆積し、リン酸カルシウムスラリを形成する。また、スラリブランケット型沈殿槽10の中間部に、リン酸カルシウムからなる懸濁・流動状態のスラリブランケット層Aを形成する。スラリブランケット層Aにより、上昇流に含まれる微細なリン酸カルシウムが捕捉されるため、スラリブランケット層Aを通過した被処理水は、リン酸が取り除かれた清澄な上澄水となる。そして、沈殿槽の上部の上澄水Bを処理水排出ライン40から取り出す。
また、本実施形態では、スラリブランケット型沈殿槽10にアルカリ剤を添加して、沈殿槽内のpHをアルカリ条件下に調整することが好ましい。スラリブランケット型沈殿槽10の前段の反応槽50において、リン酸含有水とカルシウム剤とをpH5〜7の条件下で反応させた場合、生成するリン酸カルシウムは、比較的、水に対する溶解度が高くなる。しかし、アルカリ剤を添加して、スラリブランケット型沈殿槽10内のpHをアルカリ条件下に調整することにより、反応槽50で生成したリン酸カルシウムの水に対する溶解度を低下させることができ、スラリブランケット層A内で、効率的にリン酸カルシウムを捕捉し、被処理水中のリン酸を高い回収率で回収することができる。また、スラリブランケット型沈殿槽10内にリン酸カルシウムスラリが長時間堆積していると、リン酸カルシウムが改質し、沈殿槽内のpHが降下して、被処理水中にリン酸が再溶解して、処理水中のリン酸濃度が上昇する場合がある。しかし、本実施形態のように、アルカリ剤を添加し、スラリブランケット型沈殿槽10内のpHをアルカリ条件下に調整することにより、沈殿槽内にリン酸カルシウムスラリが長時間堆積していても、リン酸カルシウムの改質、pHが降下して、被処理水中にリン酸が再溶解することを抑制することができる。その結果、リン酸が除去された処理水を安定し得ることが可能となる。
スラリブランケット型沈殿槽10内のpHをアルカリ条件下に調整する方法としては、例えば、pHメータ30により計測されるスラリブランケット型沈殿槽10内のpH値に基づいて、ポンプ36を稼働させ、沈殿槽内のpHがアルカリ条件となるように、アルカリ剤添加ライン38から第2流入ライン54を介してチャンバ16にアルカリ剤を供給することにより行われる。なお、アルカリ剤添加ライン38をチャンバ16に直接接続して、アルカリ剤添加ライン38からチャンバ16内にアルカリ剤を供給してもよい。
一方で、スラリブランケット型沈殿槽10の底部に堆積したリン酸カルシウムスラリを汚泥排出ライン42から取り出し、リン酸カルシウムスラリの少なくとも一部を汚泥返送ライン44から酸処理槽14へ供給する。次に、pH調整剤流入ライン46から酸処理槽14へ、pH調整剤を供給し、リン酸カルシウムスラリをpH3〜4.5の条件で酸処理する。そして、酸処理槽14内のリン酸カルシウムを酸処理槽14に供給する前のリン酸カルシウムより結晶性が高く、含水率の低い、例えば、CaHPO、Ca(HPO等のリン酸カルシウムに改質する。そして、移送ライン48から反応槽50へ、CaHPO、Ca(HPO等に改質されたリン酸カルシウムスラリを供給し、反応槽50内の被処理水及びカルシウム剤と混合させる。反応槽50へのリン酸カルシウムスラリの供給点は、水面、水中、撹拌装置12aの攪拌翼の近傍等、どの地点でもよいが、リン酸カルシウムスラリの拡散が促進される点で、攪拌翼の近傍にリン酸カルシウムスラリを供給することが好ましい。
このように、リン酸カルシウムスラリを混合しながら、被処理水とカルシウム剤とを反応させることにより、粒径が大きく、沈殿性、ろ過性の良いリン酸カルシウムを生成させることができる。沈殿槽において生成するリン酸カルシウムは、酸処理槽14で改質したCaHPO、Ca(HPO等のリン酸カルシウムが核となっているため、スラリの沈降濃縮性は高く、脱水後のケーキ含水率は低くなる。
また、本実施形態のように、反応槽50で生成したリン酸カルシウムの改質及び沈降分離をスラリブランケット型沈殿槽10で行うことにより、リン酸カルシウムの改質及び沈降分離をそれぞれ別々の槽で行うより、省スペース化を図ることができ、また、建設コスト、エネルギーコスト等を低減することも可能となる。沈殿槽は、上記でも説明したように、例えば、上向流式円形沈殿槽のような一般的な沈殿槽であってもよいが、反応槽50で生成したリン酸カルシウムの改質及び沈降分離を行い、且つリン酸を高い回収率で回収することができるものとして、スラリブランケット型沈殿槽を用いることが好ましい。
本実施形態では、反応槽50の被処理水の滞留時間、酸処理槽14のリン酸カルシウムスラリの滞留時間は、特に制限されるものではないが、例えば5分〜60分が好ましく、10分〜30分がより好ましい。また、沈殿槽の被処理水の滞留時間は、特に制限されるものではないが、例えば、10分以上が好ましい。また、沈殿槽の水面積負荷(線速度:LV)としては、特に制限されるものではないが、0.5〜5m/hの範囲であることが好ましい。
以上のような処理により、リン酸の回収率を低下させることなく、リン酸カルシウムの沈降濃縮性を高くし、脱水後のケーキ含水率を低下させることができる。なお、脱水後のケーキ含水率が75%から66%になると、乾燥に必要な蒸気、ガス、電気等のエネルギは75%含水率の乾燥に必要なエネルギの2/3でよく、脱水後のケーキ含水率が75%から60%になると、乾燥に必要なエネルギは75%含水率の乾燥に必要なエネルギの1/2でよく、脱水後のケーキ含水率が75%から50%になると、乾燥に必要なエネルギは75%含水率の乾燥に必要なエネルギの1/3でよい。
以下、実施例および参考例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
実施例においては、図4に示したものと同様の装置を用い、反応槽ではpHを5、沈殿槽ではpHを8、酸処理槽ではpHを3にして処理することにより、試験を行った。反応槽に添加するカルシウム剤は、消石灰(添加量:12000mg/L)を用いた。沈殿槽に添加するアルカリ剤は、5%水酸化酸ナトリウムを用い、酸処理槽で使用する酸剤は、5%塩酸を用いた。なお、その他の試験条件は、下記に示した。試験後の処理水のpH、SS、リン酸濃度、沈殿槽から引き抜いたスラリ中のリン酸カルシウム固形物濃度、リーフテスター(小型フィルタープレス脱水機)で脱水した後のリン酸カルシウムケーキ含水率を表1にまとめた。
<被処理水>
被処理水流量:100L/hr
被処理水中のリン酸濃度:10000mg−PO/L
被処理水:pH2(NaOHで調整)
<試験装置>
反応槽サイズ:20L
酸処理槽サイズ:20L
沈殿槽サイズ:360mmφ×1000mm (LV=1m/h)
<リン酸カルシウム移送量>
沈殿槽から引き抜いたリン酸カルシウムスラリを30L/hrの流量で、酸処理槽に移送した。
(参考例)
図5は、参考例で用いたリン酸含有水の処理装置の構成を示す模式図である。図5に示すように、参考例で用いたリン酸含有水の処理装置5は、第1反応部56及び第2反応部58を有する反応槽と、スラリブランケット層を形成しない一般的な上向流式沈殿槽60と、酸処理槽62と、配管と、を備える。第1反応部56、第2反応部58及び酸処理槽62には、撹拌装置64a,64b,64cが設けられている。また、上向流式沈殿槽60には、沈殿槽60内のリン酸カルシウムスラリを掻き寄せる掻き寄せ機66が設けられている。掻き寄せ機66は、シャフト68に固定されており、モータ70の稼働により回転するようになっている。
以下に、参考例のリン酸含有水の処理装置の動作について説明する。まず、第1流入ライン72から酸処理槽62を介して第1反応部56(サイズ:20L)へ、実施例と同様の被処理水を供給すると共に、カルシウム剤流入ライン74から第1反応部56へ消石灰(添加量:12000mg/L)を供給した。第1反応部56では、被処理水とカルシウム剤とをpH5の条件下で反応させて、リン酸カルシウムを生成させた。次に、第1反応部56で生成したリン酸カルシウムを含む被処理水を第2流入ライン76から第2反応部58(サイズ:20L)へ供給すると共に、5%水酸化ナトリウムをpH調整剤流入ライン78から第2反応部58へ供給し、pHを8に調整した。そして、第2反応部58内のリン酸カルシウムを含む被処理水を第3流入ライン80から沈殿槽60(サイズ:360mmφ×1000mm、LV:1m/h)のチャンバ61へ供給し、沈降分離を行った。なお、参考例では、上記実施例のように沈殿槽60のpHをアルカリ条件下に調整するような操作は行っていない。
次に、沈殿槽60で分離したリン酸カルシウムスラリの少なくとも一部を汚泥返送ライン82から酸処理槽62(サイズ:20L)へ供給すると共に、5%塩酸をpH調整剤流入ライン84から酸処理槽62へ供給し、該リン酸カルシウムスラリをpH3で酸処理した。そして、移送ライン86から第1反応部56へリン酸カルシウムスラリを供給し、第1反応部56で被処理水及びカルシウム剤と混合させながら、被処理水とカルシウム剤とを反応させた。このように、リン酸カルシウムスラリを循環させて、処理を行った。そして、処理水を処理水排出ライン88から、リン酸カルシウムスラリを汚泥排出ライン90から取り出した。
参考例においては、第2反応部の被処理水のリン酸濃度、最終的に得られる処理水のpH、SS、リン酸濃度、沈殿槽から引き抜いたスラリ中のリン酸カルシウム固形物濃度、リーフテスタで脱水した後のリン酸カルシウムケーキ含水率を表1にまとめた。
Figure 0004866410
表1に示したように、処理水のSS、沈殿槽から引き抜いたスラリ中のリン酸カルシウム固形物濃度、脱水後のケーキ含水率は、実施例及び参考例共に、ほぼ同等の良好な値が得られた。
また、参考例では、処理水中のリン酸濃度が10mg/Lであったのに対し、実施例では、処理水中のリン酸濃度が1mg/L未満であった。参考例では、沈殿槽底部にリン酸カルシウムスラリが長時間滞留した際に、スラリの形態が変化すると共にpHが8から6.2に降下し、リン酸が再溶出したものと考えられる。これに対し、実施例では、沈殿槽内のpHをアルカリ条件下に調整しているため、沈殿槽底部にリン酸カルシウムスラリが長時間滞留しても、リン酸カルシウムスラリの形態変化及びpH降下が防止され、リン酸が再溶解し難い状態となっているため、処理水中のリン酸濃度が1mg/L未満に抑えられたものと考えられる。
また、実施例では、参考例のように反応槽が1槽少なくても、同等以上の処理水質が得られ、リン酸カルシウムケーキの含水率も同等に低くなることが示された。すなわち、その分、装置の製作費、反応槽攪拌に要するエネルギーコストを削減しうることが示された。
本実施形態に係るリン酸含有水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。 本発明の他の実施形態に係るリン酸含有水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。 本発明の他の実施形態に係るリン酸含有水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。 本発明の他の実施形態に係るリン酸含有水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。 参考例で用いたリン酸含有水の処理装置の構成を示す模式図である。
符号の説明
1〜5 リン酸含有水の処理装置、10 スラリブランケット型沈殿槽、12,12a,12b,64a,64b,64c 撹拌装置、14,62 酸処理槽、16,61 チャンバ、18 ディストリビュータ、22 吹出孔、24,68 シャフト、26,70 モータ、28,66 掻き寄せ機、30 pHメータ、32 被処理水流入ライン、34,74 カルシウム剤流入ライン、36 ポンプ、38 アルカリ剤添加ライン、40,88 処理水排出ライン、42,90 汚泥排出ライン、44,82 汚泥返送ライン、46,78,84 pH調整剤流入ライン、48,86 移送ライン、50 反応槽、52,72 第1流入ライン、54,76 第2流入ライン、56 第1反応部、58 第2反応部、60 沈殿槽、76 第2流入ライン、80 第3流入ライン、90 汚泥排出ライン。

Claims (8)

  1. リン酸を含有する被処理水とカルシウム剤とを反応させて、リン酸カルシウムを生成させると共に、前記リン酸カルシウムを沈降分離させる沈殿槽と、
    前記沈殿槽で分離したリン酸カルシウムの少なくとも一部をpH3〜4.5の条件で処理する酸処理槽と、
    前記酸処理槽で処理したリン酸カルシウムを前記沈殿槽に移送する移送部と、を備えることを特徴とするリン酸含有水の処理装置。
  2. 請求項1記載のリン酸含有水の処理装置であって、前記沈殿槽は、スラリブランケット層を形成して被処理水を清澄化するスラリブランケット型沈殿槽であることを特徴とするリン酸含有水の処理装置。
  3. 請求項1又は2記載のリン酸含有水の処理装置であって、前記沈殿槽にアルカリ剤を添加し、前記沈殿槽内のpHをアルカリ条件下に調整するアルカリ剤添加手段を備えることを特徴とするリン酸含有水の処理装置。
  4. 請求項1記載のリン酸含有水の処理装置であって、前記リン酸を含有する被処理水を前記沈殿槽に供給する前に、前記酸処理槽に流入させる被処理水流入部を備えることを特徴とするリン酸含有水の処理装置。
  5. リン酸を含有する被処理水とカルシウム剤とを反応させて、リン酸カルシウムを生成させる反応槽と、
    前記反応槽で生成したリン酸カルシウムを沈降分離させ、スラリブランケット層を形成して被処理水を清澄化するスラリブランケット型沈殿槽と、
    前記スラリブランケット型沈殿槽で分離したリン酸カルシウムの少なくとも一部をpH3〜4.5の条件で処理する酸処理槽と、
    前記酸処理槽で処理したリン酸カルシウムを前記反応槽に移送する移送部と、を備えることを特徴とするリン酸含有水の処理装置。
  6. リン酸を含有する被処理水とカルシウム剤とをpH5〜7の条件で反応させて、リン酸カルシウムを生成する反応槽と、
    前記リン酸カルシウムを沈降分離させる沈殿槽と、
    前記沈殿槽で分離したリン酸カルシウムの少なくとも一部をpH3〜4.5の条件で処理する酸処理槽と、
    前記酸処理槽で処理したリン酸カルシウムを前記反応槽に移送する移送部と、
    前記沈殿槽にアルカリ剤を添加し、前記沈殿槽内のpHをアルカリ条件下に調整するアルカリ剤添加手段と、を備えることを特徴とするリン酸含有水の処理装置。
  7. 請求項6記載のリン酸含有水の処理装置であって、前記沈殿槽は、スラリブランケット層を形成して被処理水を清澄化するスラリブランケット型沈殿槽であることを特徴とするリン酸含有水の処理装置。
  8. 請求項5又は6記載のリン酸含有水の処理装置であって、前記リン酸を含有する被処理水を前記反応槽に供給する前に、前記酸処理槽に流入させる被処理水流入部を備えることを特徴とするリン酸含有水の処理装置。
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