JP6723058B2 - 水処理方法及び水処理システム - Google Patents

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Description

本発明は、フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水に対する水処理方法及び水処理システムに関する。
石炭火力発電所やコークス工場で実施されている排煙脱硫法としては、湿式石灰−石膏法が主流であるが、この方法では、多量に生成する石膏の処分が必要となることから小規模設備向きでないといった問題がある。このような問題に対し、石灰に代えて水酸化マグネシウムを使用して排ガスを処理する方法が実施されている。この方法は、排ガス中の硫黄分を、石膏のような固形物としてではなく、水への溶解度が大きい硫酸マグネシウムとして捕捉するものであり、生成される硫酸マグネシウムは、溶解した状態のため廃水と共に放流することが可能である。
その一方で、上記に挙げたような排煙脱硫装置からの廃水中にはフッ化物イオンが含まれているため、放流するにあたっては、その処理が問題となる。廃水中のフッ化物イオンを除去する方法としては、pH中性域の廃水中にカルシウムイオンを添加して、フッ化物イオンをフッ化カルシウムとして沈殿除去する方法が一般的である(特許文献1)。
しかし、この方法では、上記した水酸化マグネシウムを使用する排煙脱硫装置からの廃水のように、廃水中にマグネシウムイオンや硫酸イオンが存在していると、カルシウム法でのフッ化物イオンの除去率が低下するという問題があった。これは、このような廃水の場合、pH中性域では、多量のマグネシウムイオンとフッ化物イオンが錯体として溶解し、このことが原因してフッ化カルシウムが生成しなくなるためと考えられる。
この問題に対し、フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する排水にカルシウムイオンを添加してフッ化物イオンを沈殿物として除去する際に、特許文献2では前記排水のpHを9.4〜9.8に調整すること、特許文献3では前記排水のpHを8〜10に調整することがそれぞれ提案されている。
特公昭58−013230号公報 特開平08−057486号公報 特開2000−301165号公報
特許文献2及び3に開示されたような従来の方法では、廃水にカルシウムイオンを添加した際にフッ化カルシウムの沈殿とならずに、廃水のpHを9.4〜9.8又は8〜10などの範囲に調整することで、廃水中に錯体として溶解していたマグネシウムイオンが水酸化マグネシウムとして析出して沈殿すると考えられる。そして、廃水中に錯体として溶解していたフッ化物イオンは、水酸化マグネシウムの沈殿に取り込まれて沈殿し、さらに、存在しているカルシウムイオンとフリーのフッ化物イオンとが反応してフッ化カルシウムとして沈殿すると考えられる。このようにして、廃水中からのフッ化物イオンの除去率を向上させることができるものと考えられる。
上述の従来の方法では、廃水へのカルシウムイオンの添加により生じたフッ化カルシウムの沈殿に加え、廃水のpHを高めることで、マグネシウムイオンを水酸化マグネシウムとして析出させている。そのため、スラッジの発生量が増加する傾向にあり、最終的なスラッジが大量となれば、スラッジの処理コストの増大を招く可能性がある。特に、廃水中のフッ化物イオンの除去率を向上させるべく、廃水に1度に多量のカルシウムイオンを添加すると、スラッジがさらに多量に発生することとなり、また、廃水が多量の硫酸イオンを含有する場合にはスラッジとして多量の石膏が発生することとなる。その結果、汚泥処分費が増大し、水処理に係わる総合的なランニングコストの増大を招く。こうしたスラッジの発生量の増加に伴う処理コストの増大を考慮して、実際の現場では、1段目の処理で廃水中のフッ素濃度をある程度低下させた後、2段目の処理でフッ素濃度を排出基準程度まで低下させるという2段処理で行うことが通常と考えられていた。
しかし、上述のように、フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水に対して、被処理水中のフッ化物イオンの除去処理を2段処理で行うと、1段処理で行う場合に比べて、設備の数が増えることから、設備費及び設備の設置スペースは増大する。設備費及び設備の設置スペースの観点からは、1段処理の方が2段処理に比べて利点があるが、上述の通り、1段処理ではスラッジの発生量の増大に伴い、2段処理に比べて総合的なランニングコストが高くなる結果、2段処理を行うことが技術常識であった。
したがって、本発明は、フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水中のフッ化物イオンの除去処理を1段処理で行う場合にも、フッ化物イオンを有効に除去し得ると共に、最終的なスラッジの量を低減可能な水処理技術を提供しようとするものである。
本発明は、フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水に、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ剤を添加するアルカリ添加工程と、前記アルカリ添加工程により生成される、前記フッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を固液分離する固液分離工程と、固液分離された前記懸濁物質由来のスラッジに酸を添加する酸添加工程と、を含み、前記アルカリ添加工程における前記被処理水への前記アルカリ剤のOHとしての添加量(mg−OH/L)が、前記被処理水中のフッ素濃度(mg−F/L)に対する質量比率(OH量/F量)で1.0以上である、水処理方法を提供する。
本発明によれば、フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水中のフッ化物イオンの除去処理を1段処理で行う場合にも、フッ化物イオンを有効に除去し得ると共に、最終的なスラッジの量を低減可能な水処理技術を提供することができる。
本発明の一実施形態の水処理方法を表す概略フロー図である。 本発明の別の一実施形態の水処理方法を表す概略フロー図である。 本発明のさらに別の一実施形態の水処理方法を表す概略フロー図である。 比較例1で実行した水処理方法を表す概略フロー図である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
本発明の一実施形態の水処理方法は、フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水に、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ剤を添加する工程(アルカリ添加工程)を含む。このアルカリ添加工程により、被処理水中にフッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を生成させる。そして、本実施形態の水処理方法は、アルカリ添加工程により生成される、フッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を固液分離する工程(固液分離工程)と、固液分離された懸濁物質由来のスラッジに酸を添加する工程(酸添加工程)とを含む。固液分離工程によって、被処理水から、懸濁物質に取り込まれたフッ化物イオンを除去する。
ここで、被処理水中のフッ化物イオンを1段処理で有効に除去し得るように、アルカリ添加工程では、被処理水に対して、上記特定のアルカリ剤を多量に添加し、被処理水中にフッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を多量に生成させるようにする。具体的には、被処理水に上記特定のアルカリ剤を、被処理水へのアルカリ剤のOHとしての添加量(mg−OH/L)が被処理水中のフッ素濃度(mg−F/L)に対する質量比率(OH量/F量)で1.0以上の量で添加する。このアルカリ添加工程によって、固液分離工程で固液分離された懸濁物質由来のスラッジが多量に発生することで、このスラッジに被処理水中のフッ化物イオンがより多く取り込まれるため、1段処理でも被処理水中のフッ化物イオンを有効に除去し得る。この際、多量のスラッジが発生するが、本実施形態の水処理方法では、固液分離されたスラッジに酸を添加することで、スラッジの一部を溶解し、最終処分が必要になるスラッジ(以下、本明細書において、「最終的なスラッジ」と称することがある。)の量を低減させることが可能となる。そのため、本実施形態の水処理方法は、汚泥処分費を少なくできると共に、水処理に係わる総合的なランニングコストを少なくすることに寄与することができる。
上述の通り、本実施形態の水処理方法では、被処理水中のフッ化物イオンの除去処理を1段処理で行う場合にも、フッ化物イオンを有効に除去し得ると共に、最終的なスラッジの量を低減することが可能となる。したがって、本実施形態の水処理方法によって、F-及びMg2+を含有する被処理水に対し、被処理水中のF-の除去処理の1段処理での実用化が期待できる。被処理水中のF-を1段処理で有効に除去可能となれば、2段処理で行う場合に比べて設備の数が少なく済むため、設備費を少なくできると共に設備を狭隘な場所にも設置でき、設備費及び設備の設置スペースの観点からも実用上有用である。
上述のような実用上の利点を有する本実施形態の水処理方法は、例えば、本発明の一実施形態の水処理システムによって実行することができる。その水処理システムは、フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水にアルカリ剤を添加する反応槽と、被処理水へのアルカリ剤の添加により生成される、フッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を固液分離する固液分離槽と、固液分離槽で分離された懸濁物質由来のスラッジに酸を添加する酸添加槽と、を備える。本実施形態の水処理システムでは、アルカリ剤として、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いる。そして、反応槽における被処理水へのアルカリ剤のOHとしての添加量(mg−OH/L)を、被処理水中のフッ素濃度(mg−F/L)に対する質量比率(OH量/F量)で1.0以上とする。
以下、本発明の一実施形態の水処理方法における各工程について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、図面において、各図で共通する部分については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。図1は、本発明の一実施形態の水処理方法を表す概略フロー図である。
図1に示すように、本実施形態の水処理方法では、フッ化物イオン(F-)及びマグネシウムイオン(Mg2+)を含有する被処理水(原水)にアルカリ剤を添加する工程(アルカリ添加工程)S11を行う。アルカリ剤には、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いる。このアルカリ添加工程S11によって、被処理水中にF-が取り込まれた懸濁物質(好ましくは沈殿物)を積極的に生成させる。
被処理水中にF-が取り込まれた懸濁物質を生成させる観点から、アルカリ添加工程S11では、アルカリ剤の添加により、被処理水のpHを、8.5〜10.5の範囲内に調整することが好ましく、9.0〜10.0の範囲内に調整することがより好ましい。そのようなアルカリ添加工程S11によって、被処理水中のMg2+を水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)として析出させ、析出したMg(OH)2にF-が取り込まれた懸濁物質(好ましくは沈殿物)をより積極的に生成させることが可能である。こうして、後述する固液分離によって懸濁物質を除去することで、被処理水中からフッ化物イオンを除去することができる。
本明細書において、被処理水や後述するスラッジなどのpHは、25℃での値又は25℃での換算値である。例えば、被処理水の温度が25℃よりも高い場合には、アルカリ添加工程における被処理水のpH8.5〜10.5は、実際の測定値ではその範囲よりも低い範囲の値にシフトする。より具体的には、例えば被処理水の温度が50℃の場合には、アルカリ添加工程において被処理水のpHを8.5〜10.5に調整することは、被処理水の50℃でのpH値でおよそ8.0〜10.0に調整する程度となる。また、被処理水やスラッジなどのpHを調整する際には、水処理の分野で一般的に使用されているアルカリ及び酸などの公知のpH調整剤を用いてもよい。
アルカリ添加工程S11では、アルカリ金属の水酸化物として、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、及び水酸化カリウム(苛性カリ)を好適に用いることができる。また、アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化カルシウム(消石灰)、及び水酸化バリウムを好適に用いることができる。これらのアルカリ剤の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物以外のアルカリ剤が併用されてもよい。被処理水中のマグネシウムイオンを水酸化マグネシウムとして十分に析出させやすい観点から、アルカリ剤として、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、及び水酸化カルシウム(Ca(OH)2)がより好ましく、Ca(OH)2がさらに好ましい。被処理水がF-及びMg2+の他、硫酸イオン(SO4 2-)を含有する場合に、アルカリ剤としてCa(OH)2を用いれば、上述の水酸化マグネシウムの析出に加え、被処理水中の硫酸イオンを石膏(硫酸カルシウム)として析出させることもできる。
本実施形態の水処理方法では、設備費を少なくすると共に設備の設置スペースを小さくする観点から、被処理水中のフッ化物イオンの除去処理を1段処理で行うことが好ましい。その1段処理で、被処理水中のフッ素濃度が排出基準を満足し得る程度にフッ化物イオンを除去するべく、被処理水にアルカリ剤を特定量添加する。すなわち、本実施形態の水処理方法では、被処理水へのアルカリ剤のOHとしての添加量(mg−OH/L)を、被処理水中のフッ素濃度(mg−F/L)に対する質量比率(OH量/F量)で1.0以上とする。これによって、被処理水中にフッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質をより多く生成させ、その懸濁物質を固液分離することで、被処理水中のフッ化物イオンをより低減させることができる。
処理対象となる被処理水(原水)には、フッ素の除去に対する阻害物質が含有されている可能性もあるため、実際の現場での運用時には、対象となる原水ごとに適したOH量/F量の条件を事前に調査することが望ましい。そのため、上述の被処理水中のフッ素濃度に対するアルカリ剤のOHとしての添加量(OH添加量)の質量比率(OH量/F量)が1.0以上である範囲において、被処理水について予め求めた関係から、アルカリ剤のOHとしての添加量を決定することが好ましい。すなわち、処理対象となる被処理水について、予備試験によって、被処理水中のフッ素濃度に対するアルカリ剤のOH添加量の質量比率(OH量/F量)と、固液分離工程でスラッジとは分離された上澄水中のフッ素濃度(mg−F/L)との関係を求めておく。そして、その予め求められた関係に基づいて、被処理水中のフッ素濃度に対するアルカリ添加工程における被処理水へのアルカリ剤のOHとしての添加量を決定することが好ましい。具体的には、上述の関係に基づいて、固液分離工程でスラッジとは分離された上澄水中のフッ素濃度が有意に低減するOH量/F量となるように、アルカリ剤のOHとしての添加量を決定することができる。また、上述の関係に基づいて、固液分離工程でスラッジとは分離された上澄水中のフッ素濃度が所定値以下となるのに必要なOH量/F量となるように、アルカリ剤のOHとしての添加量を決定することができる。上澄水中のフッ素濃度の所定値としては、任意の値を選択でき、例えば、水質汚濁防止法における海域に排出される際の規制値である15mg−F/L、さらには同法における公共用水域に排出される際の規制値である8mg−F/Lを採用することができる。なお、上述の予備試験としては、例えば被処理水をビーカーなどに入れてアルカリ添加工程及び固液分離工程を行う小規模での回分式試験にて行うことができる。また、後述するが、酸添加工程後、酸が添加された後の最終的なスラッジとは固液分離された上澄液にはフッ素が含有されているため、その上澄液をアルカリ添加工程に返送して被処理水(原水)と共に処理することが好ましい。この場合、上澄液を返送した後の被処理水中のフッ素濃度は、通常、初期の被処理水(原水)のフッ素濃度よりも(例えば15%程度)高くなる傾向にある。その場合の被処理水中のフッ素濃度の上昇を考慮して、上述の関係に基づいて必要とされるOH量/F量よりも(例えば1.15倍程度)高くなるように、アルカリ剤のOHとしての添加量を決定することがより好ましい。
アルカリ添加工程S11における被処理水へのアルカリ剤のOHとしての添加量(mg−OH/L)を、被処理水中のフッ素濃度(mg−F/L)に対する質量比率(OH量/F量)で1.0以上とすると、上述の通り、懸濁物質がより多く生成される。そのため、スラッジの量も多くなるが、後述する酸添加工程S32によって、スラッジの量を低減することができる。被処理水へのアルカリ剤のOHとしての添加量が、上記の質量比率(OH量/F量)で25.0以上となる場合では、被処理水中のフッ化物イオンの除去処理能がほとんど変わらない程度になる。よって、アルカリ剤の使用量に伴う費用を抑える観点から、上記の質量比率(OH量/F量)は、25.0以下であることが好ましく、より好ましくは20.0以下、さらに好ましくは16.0以下である。また、酸を添加した後のスラッジに対して、濃縮処理を行わずにそのまま脱水処理が可能となれば、水処理に係わる総合的なランニングコストのさらなる軽減に寄与することができる。その観点から、上記の質量比率(OH量/F量)は3.0以上であることが好ましく、より好ましくは4.0以上、さらに好ましくは5.0以上である。アルカリ剤の使用量に伴う費用、及び酸添加後のスラッジの脱水容易性の両観点から、上記の質量比率(OH量/F量)は3.0以上25.0以下であることがより好ましい。
アルカリ添加工程S11では、被処理水中のフッ化物イオンがスラッジにより多く取り込まれるように、被処理水にアルカリ剤を添加することが好ましい。例えば、SS(当初から原水中に含有されていたSSも含む)の滞留時間などと共にアルカリ剤の添加量を調節することで、後述する固液分離工程S22で固液分離されるスラッジの濃度CS1が10000mg/L以上となるように、被処理水にアルカリ剤を添加することができる。
アルカリ添加工程S11は、後述する固液分離工程S22などとは別個の槽としての反応槽11で行うことが好ましい。また、図示しないが、反応槽11には、被処理水(原水)を反応槽に供給するための原水供給部と、アルカリ剤を添加するためのアルカリ剤供給部とが設けられていることがより好ましい。原水供給部は、例えば、原水の貯留槽から原水を反応槽11に送る供給管、及びポンプなどで構成することができる。アルカリ剤供給部は、例えば、アルカリ剤の貯留槽からアルカリ剤を反応槽11に送るアルカリ剤供給管、及びポンプなどで構成することができる。
図1に示すように、本実施形態の水処理方法では、アルカリ添加工程S11で生成された懸濁物質(被処理水中のフッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質)を固液分離する工程(固液分離工程)S22を行う。この固液分離工程S22は、被処理水にアルカリ剤を添加する槽(前述の反応槽)11とは別個の槽(固液分離槽)22で行うことが好ましい。固液分離の処理としては、凝集・沈殿処理、膜分離・ろ過処理、浮上処理のいずれも用いることができる。これらのうち、フッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を沈殿物として固液分離可能である点から、凝集・沈殿処理を採用することが好ましく、この場合、シックナーなどの沈殿槽を用いて、固液分離工程S22を行うことが好ましい。
また、懸濁物質の凝集・沈殿処理を行う際には、懸濁物質の凝集・沈殿を促進させるために、凝集剤を用いてもよい。この場合、図1に示すように、アルカリ添加工程S11と固液分離工程S22との間に、アルカリ剤が添加された被処理水に凝集剤を添加する工程S21を行うことが好ましい。また、この凝集剤を添加する工程S21は、前述の反応槽11や固液分離槽22とは別個の槽(凝集剤添加槽)21で行うことが好ましい。凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、及び鉄塩系凝集剤などの公知の無機凝集剤、並びにポリアクリル酸エステル系凝集剤、ポリメタクリル酸エステル系凝集剤、及びポリアクリルアミド系凝集剤などの公知の高分子凝集剤を用いることができる。
固液分離工程S22によって、懸濁物質に由来するスラッジが得られる。この際、本実施形態における好適な水処理方法では、懸濁物質を固液分離して得られるスラッジとして、水酸化マグネシウムを主成分とする鉱物相で構成されていると共に、フッ素含有率が2〜10質量%程度のスラッジを得ることができる。
固液分離工程S22で固液分離されるスラッジの濃度CS1を10000mg/L以上に調整することが好ましい。固液分離工程S22で固液分離されるスラッジの濃度CS1は、被処理水(原水)中に含有されるSS濃度、固液分離槽22での汚泥滞留時間(固液分離槽22から汚泥を引き抜く時間)、及びアルカリ剤の添加量などから調整することができる。固液分離工程S22で固液分離されるスラッジの濃度CS1を20000mg/L以上に調整することがより好ましく、CS1を30000mg/L以上に調整することがさらに好ましい。一方、固液分離されるスラッジの濃度CS1があまりに高過ぎるとスラッジを移送し難くなることから、スラッジの濃度CS1を100000mg/L以下(より好ましくは90000mg/L以下)に調整することが好ましい。なお、本明細書において、スラッジ(汚泥)の濃度をSS濃度ということもある。
固液分離工程S22によって、懸濁物質由来のスラッジと上澄水とに分離されるが、まず、スラッジの処理方法について、次に述べる。
図1に示すように、本実施形態の水処理方法では、固液分離された懸濁物質由来のスラッジに酸を添加する工程(酸添加工程)S32を行う。この酸添加工程S32によって、スラッジを構成する主成分である水酸化マグネシウムが溶解し、その結果、最終的なスラッジの量を低減することができる。また、スラッジ中に取り込まれていたフッ素分は、フッ化マグネシウム(MgF2)として析出し、フッ素分を減量されたスラッジ中に高濃度で残存させることができる。析出したフッ化マグネシウムは、最終的なスラッジから分離することができ、分離したフッ化マグネシウムは、工業原料としての再利用が期待できるものであるので、本実施形態の水処理方法は、資源の有効利用の観点からも有用である。
最終的なスラッジの量を低減させる観点及びそのスラッジ中にフッ素分を残存させる観点から、酸添加工程S32では、スラッジに酸を添加することで、スラッジのpHを3.0〜8.5の範囲内に調整することが好ましい。スラッジ中の水酸化マグネシウムを十分に溶解し、最終的なスラッジの量をより低減させる観点から、酸添加工程S32では、スラッジを、pH8.5以下に調整することが好ましく、pH8.0以下に調整することがより好ましく、pH7.0以下に調整することさらに好ましい。一方、スラッジ中のフッ素分が高い濃度で溶解しないようにしてスラッジ中に残存するフッ素量を高める観点から、酸添加工程S32では、スラッジをpH3.0以上に調整することが好ましく、pH4.0以上に調整することがより好ましい。
酸添加工程S32において、スラッジのpHを調整した際に、スラッジのF-濃度が、フッ化マグネシウムの被処理水に対する溶解度よりも高ければ、その溶解度を超えるフッ素はフッ化マグネシウムとして析出し、溶解度以下のフッ素は水中に存在することになる。溶解度について、本発明者らが検討実験を行ったところ、被処理水として好適な排煙脱硫装置から排出された廃水のように、F-の他、Mg2+及び硫酸イオン(SO4 2-)を高濃度に含有する被処理水を用いた場合、スラッジのpH3.0〜8.5の範囲では、およそ200〜600mg/L程度の範囲でフッ素分が液中に溶解することが分かった。このことから、酸添加工程S32によって、スラッジの主成分である水酸化マグネシウムと共に200〜600mg/Lの範囲内でフッ素分が液中に溶解し、これによってスラッジの量を減少でき、その一方で、減量されたスラッジ中にフッ素分がフッ化マグネシウムとして析出し、これによってフッ素分を高濃度で残存させることが可能になると考えられる。
また、固液分離されたスラッジは、主成分の水酸化マグネシウムの他、析出した水酸化マグネシウムにフッ化物イオンが取り込まれたフッ化マグネシウム(MgF2)や水酸化フッ化マグネシウム(MgFOH)などを含むフッ素化合物を含有し得る。スラッジ中に含まれるフッ素分の大半は、MgF2やMgFOHである。しかし、上述のフッ化マグネシウムの溶解度の観点から、酸添加工程S32でスラッジのpHを3.0〜8.5の範囲内のいずれかのpH値に調整した場合、このpH値に対応する溶解度の分だけMgFOHからフッ素分が溶解し、その他の大部分のフッ素分は、フッ化マグネシウムとして析出すると考えられる。この結果、酸添加工程S32で酸を添加した後のスラッジを固液分離して得られる最終的なスラッジ中には、フッ化マグネシウムが高濃度で残存することとなると考えられる。
酸添加工程S32で使用する酸としては、スラッジの一部を溶解し、最終的なスラッジの量を低減させることが可能であれば、特に限定されない。好適な酸としては、例えば、塩酸、硫酸、及び硝酸などを挙げることができる。スラッジに対する酸の添加量は、SS濃度に応じて、適宜調整することができる。
酸の種類としては、塩酸よりも硫酸の方が好ましい。硫酸を用いてスラッジのpHを調整した場合は、塩酸を用いてスラッジのpHを調整した場合よりも、最終的なスラッジの濃度(量)を低減でき、かつ、最終的なスラッジ中に残存するフッ素量を高めることができる。特に、スラッジに硫酸を添加して、スラッジのpHを4.0〜7.5、より好ましくはpHを4.0〜6.5程度に調整することで、より顕著な効果を安定して得ることができる。
酸添加工程S32では、酸が添加された後のスラッジの濃度CS2が、前述の固液分離工程S22で固液分離された際のスラッジの濃度CS1よりも低くなるように、固液分離されたスラッジに酸を添加する。酸添加工程S32で、酸が添加された後のスラッジの濃度CS2を固液分離された際のスラッジの濃度CS1よりも低く、かつ、5000mg/L以上50000mg/L以下の範囲に調整することが好ましい。酸が添加された後のスラッジを濃縮処理することなく、そのまま脱水処理可能となることから、酸添加工程S32は、酸が添加された後のスラッジの濃度CS2が10000mg/L以上(より好ましくは15000mg/L以上、さらに好ましくは20000mg/L以上)となるように行うことが好ましい。ただし、この範囲においても、酸が添加された後のスラッジの濃度CS2を固液分離された際のスラッジの濃度CS1よりも低くする。特に、被処理水が硫酸イオンを含有する場合で、アルカリ剤として水酸化カルシウムを用いる場合、酸が添加された後のスラッジの主成分が石膏及びMgF2となることから、酸添加後のスラッジの濃縮処理を省略することができる。
図1に示すように、酸添加工程S32は、固液分離工程S22で分離されたスラッジが移送される酸添加槽32で行うことが好ましい。この際、本実施形態の水処理方法を連続プロセスで実行しやすいように、酸添加槽32の前には、固液分離工程S22で分離されたスラッジが移送され、貯留される汚泥貯留槽31を設けることがより好ましい。したがって、酸添加工程S32は、汚泥貯留槽31から酸添加槽32に移送されたスラッジに、酸添加槽32にて酸を添加する工程であることがさらに好ましい。図示しないが、酸添加槽32には、スラッジを酸添加槽32に供給するためのスラッジ供給部と、酸を添加するための酸供給部とが設けられていることが好ましい。スラッジ供給部は、例えば、スラッジが通る管、及びポンプなどで構成することがえきる。酸供給部は、例えば、酸の貯留槽から酸を酸添加槽32に送る供給管、及びポンプなどで構成することができる。
図1に示すように、本実施形態の水処理方法は、連続プロセスで実行しやすいように、酸添加工程S32の後(スラッジに酸を添加した後)、酸が添加された後のスラッジを所定時間撹拌する工程(熟成工程)S41をさらに含むことが好ましい。撹拌には、機械式撹拌装置やブロワーなどを用いることができ、撹拌羽根を備える機械式撹拌装置を用いることが好ましい。熟成工程S41では、スラッジへの酸の添加が解除された状態で、酸が添加された後のスラッジを所定時間撹拌する。この熟成工程S41によって、その工程S41の後、最終的なスラッジとは分離された上澄液中のフッ素濃度を低下させることができる。酸が添加されていない状態でフッ素化合物における結晶の成長が進み、上澄液中のフッ素濃度が低下するものと考えられる。なお、熟成工程S41では、スラッジを所定時間撹拌するが、前述のアルカリ添加工程S11、固液分離工程S22、及び酸添加工程S32などにおいても撹拌操作が行われてもよい。
本実施形態の水処理方法は、処理効率が良い観点から、実際の現場での工業的使用に沿った連続プロセスによって行われることが好適である。連続プロセスでは、通常、酸が連続的に供給される酸添加槽32にて前述の酸添加工程S32が行われることから、熟成工程S41を、前述の酸添加工程S32とは別個の槽(熟成槽)41で行うことが好ましい。酸を添加した後のスラッジ(減量化されたスラッジ)を酸添加槽32から熟成槽41に移送して、熟成工程S41を行うことで、その後、最終的なスラッジとは分離された上澄液中のフッ素濃度をより低下させることが可能であると共に、固液分離工程S22の後のスラッジの合計の滞留時間を短縮することができる。熟成工程S41では、スラッジを撹拌することから、撹拌機能を有する熟成槽41を用いることが好ましい。なお、前述の反応槽11、凝集剤添加槽21、固液分離槽22、汚泥貯留槽31、及び酸添加槽32などにも撹拌機能が具備されていてもよい。
熟成工程S41の時間(撹拌時間)は、その後の最終的なスラッジとは分離された上澄液中のフッ素濃度を有効に低下させる観点及び設備費削減の観点から、30〜180分間であることが好ましく、60〜150分間であることがより好ましく、90〜120分間であることがさらに好ましい。また、上澄液中のフッ素濃度をより有効に低下させるべく、酸を添加した後のスラッジを撹拌する熟成槽41を複数用い、熟成槽41ごとに連続して熟成工程S41を行ってもよい。熟成工程S41によって、その後、最終的なスラッジとは分離された上澄液中のフッ素濃度を低下させることが可能となる結果、上澄液を前述のアルカリ添加工程S11に戻して処理する場合に、アルカリ剤の添加量の少量化につながり、ランニングコストの低減に寄与することができる。
図1に示すように、本実施形態の水処理方法は、酸添加工程S32の後、酸が添加されたスラッジを脱水処理する工程(脱水工程)S51をさらに含むことが好ましい。前述の熟成工程S41を行う場合には、熟成工程S41の後に、脱水工程S51を行うことができる。脱水工程S51により、最終的なスラッジを脱水ケーキとして回収することができる。また、脱水工程S51で生じた脱水ろ液は、アルカリ添加工程S11に戻し、被処理水と共に再度処理することが好ましい。脱水処理に用いる脱水機51は、ろ過式及び遠心分離式のいずれでもよいが、ろ過式が好ましい。好適な脱水機51としては、フィルタープレス型脱水機、及び真空脱水機を挙げることができ、フィルタープレス型脱水機を用いることがさらに好ましい。
本発明者らの検討によれば、アルカリ添加工程S11におけるアルカリ剤として水酸化カルシウムなどのカルシウム塩を用いた場合、最終的なスラッジの脱水性が向上することが分かった。すなわち、この場合、最終的なスラッジの含水率が減少するため、脱水ケーキ量が少なくなり、脱水機51のコンパクト化や、脱水機51の稼働時間の短縮化に寄与することができる。なお、脱水処理の際には、スラッジ(汚泥)に含まれる水を分離しやすい状態にする、調質処理や濃縮処理などの前処理を行ってもよい。
本実施形態の水処理方法は、酸添加工程の後、酸が添加されたスラッジを脱水処理する前に、酸が添加された後のスラッジを濃縮処理し、固液分離する工程(濃縮工程)を含んでいてもよい。前述の通り、本実施形態の水処理方法は、濃縮工程を省略することも可能であるが、酸が添加された後のスラッジの濃度が、脱水機(例えば好適なフィルタープレス型脱水機)を用いて脱水し難いほど低い場合には、濃縮工程を行うことが好ましい。濃縮処理の方法は、重力濃縮、機械濃縮、及び浮上濃縮のいずれを用いてもよい。
図2は、図1で表す実施形態とは別の本発明の一実施形態の水処理方法を表す概略フロー図である。図2に示すように、本発明の一実施形態の水処理方法では、前述の酸添加工程S32の後、酸が添加された後のスラッジ(減量化されたスラッジ)に凝集剤を添加し、そのスラッジを濃縮処理して固液分離する工程(濃縮工程)S61を行うことができる。この濃縮工程S61の前に、前述の熟成工程S41を含んでいてもよい。濃縮工程S61では、酸が添加された後のスラッジが凝集槽62に移送され、その凝集槽62にて凝集剤の添加が行われることが好ましく、凝集剤添加後のスラッジが凝集槽62から濃縮槽63に移送されて、その濃縮槽63にてスラッジが濃縮されることが好ましい。
濃縮工程S61により、最終的なスラッジと、そのスラッジとは分離された上澄液とを得ることができる。最終的なスラッジは前述の脱水工程S51により、脱水ケーキとして回収されることが好ましい。また、この場合にも、前述の通り、脱水工程S51で生じた脱水ろ液をアルカリ添加工程S11に戻し、被処理水と共に再度処理することが好ましい。また、スラッジの濃縮工程S61(濃縮槽63)で得られた最終的なスラッジ(汚泥)の一部を熟成工程S41(熟成槽41)に返送してもよい。スラッジの濃縮工程S61で生じた汚泥を熟成工程S41に返送することによって、汚泥に含まれるフッ化マグネシウムなどの熟成を促進させることにより、上澄液中のフッ素濃度を低下させることができる場合がある。
濃縮工程S61における上澄液には、溶解した水酸化マグネシウムと共に、酸添加工程S32で調整されたpH値に対応する溶解度で溶解した水酸化フッ化マグネシウムに由来するフッ素が含有されている。そのため、上澄液を、前述のアルカリ添加工程S11を行うために戻し、被処理水と共に再度の処理を行うことが好ましい(図2中の破線参照)。この場合、上澄液を返送した後の被処理水中のフッ素濃度は、通常、初期の被処理水(原水)のフッ素濃度よりも高くなる傾向にあるため、その場合、被処理水中のフッ素濃度の上昇に応じて、前述のアルカリ添加工程における被処理水へのアルカリ剤の添加量を高くすることが好ましい。
これまで、前述の固液分離工程S22で分離された懸濁物質由来のスラッジの処理を述べてきたが、次に、その固液分離工程S22で分離された上澄水の処理について述べる。
懸濁物質の固液分離工程S22で得られた上澄水中のフッ素濃度が排出基準を満足する場合、その上澄水を、必要に応じてpH調整して処理水として放流することができる(図1及び図2参照)。また、上澄水を別の排水で希釈した際に希釈後の上澄水中のフッ素濃度が排出基準を満足する場合には、その希釈後の上澄水を、必要に応じてpH調整して処理水として放流することができる。上述の通り、本実施形態の水処理方法におけるアルカリ添加工程S11では、被処理水に特定のアルカリ剤を特定量添加するため、被処理水中のフッ化物イオンの除去処理を1段処理で行う場合にも、フッ化物イオンを有効に除去し得る。そのため、本実施形態の水処理方法では、固液分離工程S22で得られた上澄水中のフッ素濃度を排出基準(例えば8mg/L)以下にすることも大いに期待できる。
本実施形態の水処理方法においては、前述したように、被処理水へのアルカリ剤の添加などの被処理水中のフッ化物イオンの除去処理を1段処理で行うことが望ましい。しかし、被処理水中のフッ素濃度が高い場合など、固液分離工程S22の後のスラッジとは分離された上澄水中のフッ素濃度が十分に低減されていない場合には、上澄水に対して、再度アルカリ剤を添加する工程を行ってもよく、上澄水をアルカリ添加工程S11に返送してもよい。上澄水に対して、再度アルカリ剤を添加する工程を行う場合(2段処理の場合)、その工程は、前述のアルカリ添加工程S11と同様に行うことができ、その工程以降の固液分離工程なども前述の同様に行うことができる。2段で処理する場合の本発明のさらに別の一実施形態の水処理方法を表す概略フロー図を図3に示す。
図3で表す水処理方法は、前述のアルカリ添加工程(1段目)S11で生成された懸濁物質の固液分離工程(1段目)S22で懸濁物質とは分離された上澄水に前述の特定のアルカリ剤を添加する工程(2段目のアルカリ添加工程)S12をさらに含む。また、この水処理方法は、2段目のアルカリ添加工程S12により、上澄水中のフッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を固液分離する工程(2段目の固液分離工程)S24をさらに含む。2段目のアルカリ添加工程S12は、第2の反応槽12で行われることが好ましく、2段目の固液分離工程S24は、第2の固液分離槽24で行われることが好ましい。また、この場合にも、2段目のアルカリ添加工程S12と2段目の固液分離工程S24との間に、凝集剤添加槽23にて凝集剤を添加する工程S23を行うことが好ましい。
被処理水中のフッ化物イオンの除去を2段処理で行う場合、各段の固液分離工程S22、S24で得られたスラッジに対するその後の処理は、図3に示すように一緒に前述の酸添加工程S32を行うことが好ましいが、それぞれ別々に酸添加工程を行ってもよい。
以上詳述した本実施形態の水処理方法は、フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水として、排煙脱硫装置から排出された廃水に好適であり、水酸化マグネシウムを用いて排ガス中の硫黄を除去処理する方式の排煙脱硫装置から排出された廃水にさらに好適である。また、本実施形態の水処理方法は、フッ化物イオン及びマグネシウムイオンの他、硫酸イオンを含有する被処理水に対する処理として、より好適である。このような被処理水としては、例えば、石炭火力発電所又はコークス工場で実施されている排煙脱硫法による排煙脱硫装置から排出された廃水を挙げることができる。石炭火力発電所やコークス工場からの排煙脱硫後の廃水は大量に排出されるため、本実施形態の水処理方法によって、脱水処理などが必要になる最終的なスラッジの減量化、さらにはその最終的なスラッジ中に、従来技術では達成できなかった高濃度でフッ素分を含有させることは、実用上、大きな効果をもたらす。
本実施形態の水処理方法は、被処理水にアルカリ金属の水酸化物及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物を、そのOHとしての添加量(mg−OH/L)が被処理水中のフッ素濃度(mg−F/L)に対する質量比率(OH量/F量)で1.0以上の量で添加するため、被処理水中にフッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を多量に生成させることが可能である。この懸濁物質を固液分離することで、懸濁物質由来のスラッジに取り込まれたフッ化物イオンをより多く除去することが可能となる。そして、本実施形態の水処理方法では、固液分離されたスラッジに酸を添加することで、最終的なスラッジの量を低減することができる。よって、本実施形態の水処理方法によって、フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水中のフッ化物イオンの除去処理を1段処理で行う場合にも、フッ化物イオンを有効に除去し得ると共に、最終的なスラッジの量を低減することが可能となる。
したがって、本実施形態の水処理方法によれば、汚泥処分費を少なくできると共に、水処理に係わる総合的なランニングコストを少なくすることに寄与することができる。また、本実施形態の水処理方法によって、フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水に対し、被処理水中のフッ化物イオンの除去処理の1段処理での実用化が期待できる。被処理水中のフッ化物イオンを1段処理で有効に除去可能となれば、2段処理で行う場合に比べて設備の数が少なく済むため、設備費を少なくできると共に設備を狭隘な場所にも設置でき、設備費及び設備の設置スペースの観点からも実用上有用である。
上述の通り、本実施形態の水処理方法は、次の構成をとることが可能である。
[1]フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水に、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ剤を添加するアルカリ添加工程と、前記アルカリ添加工程により生成される、前記フッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を固液分離する固液分離工程と、固液分離された前記懸濁物質由来のスラッジに酸を添加する酸添加工程と、を含み、前記アルカリ添加工程における前記被処理水への前記アルカリ剤のOHとしての添加量(mg−OH/L)が、前記被処理水中のフッ素濃度(mg−F/L)に対する質量比率(OH量/F量)で1.0以上である、水処理方法。
[2]前記アルカリ添加工程において、前記被処理水に前記アルカリ剤を添加することで、前記被処理水のpHを8.5〜10.5の範囲内に調整する前記[1]に記載の水処理方法。
[3]前記被処理水中のフッ素濃度に対する前記アルカリ添加工程における前記被処理水への前記アルカリ剤のOHとしての添加量を、予め求められた、前記質量比率(OH量/F量)と前記固液分離工程で前記スラッジとは分離された上澄水中のフッ素濃度との関係に基づいて決定する前記[1]又は[2]に記載の水処理方法。
[4]前記アルカリ添加工程における前記被処理水への前記アルカリ剤のOHとしての添加量(mg−OH/L)が、前記被処理水中のフッ素濃度(mg−F/L)に対する質量比率(OH量/F量)で、3.0以上である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の水処理方法。
[5]前記固液分離工程で固液分離される前記スラッジの濃度CS1を10000mg/L以上に調整し、前記酸添加工程で、前記酸が添加された後の前記スラッジの濃度CS2を前記CS1よりも低く、かつ、5000mg/L以上50000mg/L以下の範囲に調整する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の水処理方法。
[6]前記酸添加工程において、前記スラッジに前記酸を添加することで、前記スラッジのpHを3.0〜8.5の範囲内に調整する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の水処理方法。
[7]前記酸添加工程の後、前記酸が添加された前記スラッジを所定時間撹拌する工程をさらに含む前記[1]〜[6]のいずれかに記載の水処理方法。
[8]前記酸添加工程の後、前記酸が添加された前記スラッジを脱水処理する工程をさらに含む前記[1]〜[7]のいずれかに記載の水処理方法。
[9]前記アルカリ剤として少なくとも水酸化カルシウムを用いる前記[1]〜[8]のいずれかに記載の水処理方法。
[10]前記被処理水が、排煙脱硫装置から排出された廃水である前記[1]〜[9]のいずれかに記載の水処理方法。
上記[1]〜[10]のいずれかに記載の水処理方法は、例えば、次の水処理システムによって実行することも可能である。
[11]フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水に、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ剤を添加する反応槽と、前記被処理水への前記アルカリ剤の添加により生成される、前記フッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を固液分離する固液分離槽と、前記固液分離槽で分離された前記懸濁物質由来のスラッジに酸を添加する酸添加槽と、を備え、前記反応槽における前記被処理水への前記アルカリ剤のOHとしての添加量(mg−OH/L)が、前記被処理水中のフッ素濃度(mg−F/L)に対する質量比率(OH量/F量)で1.0以上である、水処理システム。
上記水処理システムでは、前述の水処理方法における各工程(手順)を、例えば被処理水のpH及びフッ素濃度などの水質を管理するための装置(例えばパーソナルコンピュータなど)のCPUなどを含む制御部によって実現させることも可能である。また、上記水処理システムでは、前述の水処理方法における各工程(手順)を実行可能なプログラムを各種記憶媒体又はネットワーク上などに格納し、前記制御部がプログラムを読み出して実行することで、前述の水処理方法を実現させることも可能である。なお、上述の制御部を含む装置に、被処理水へのアルカリ剤の添加量や、固液分離されたスラッジへの酸の添加量などを管理させることも可能である。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(被処理水)
以下の試験例では、処理対象となる被処理水(原水)として、石炭火力発電所において、水酸化マグネシウム法により硫黄酸化物(SOx)の処理を行なう脱硫設備から排出された廃水(以下、「脱硫廃水」と記載することがある。)を用いた。この脱硫廃水のpHは8.0であった。脱硫廃水の主成分を表1に示す。
Figure 0006723058
また、本試験例では、上記脱硫廃水に対して、1/1000スケールの試験装置を使用して連続プロセスでの処理を実行した。その試験装置は、フッ素除去用試験装置と、スラッジ処理用試験装置とを備え、それらに分けられるものである。なお、国や地域ごとに処理後(処理水)のフッ素濃度の規制値が異なるため、本試験例では、処理後の全フッ素濃度が15mg/L以下となるように水酸化カルシウムを添加して評価を行った。
(実施例1)
実施例1では、上記脱硫廃水に対して、図2に示す工程を実行可能な1/1000スケールの試験装置を使用して連続プロセスでの処理を実行した。実施例1で使用した試験装置は、反応槽(11)、凝集剤添加槽(21)、及び固液分離槽(22)を備えるフッ素除去用試験装置と、汚泥貯留槽(31)、酸添加槽(32)、熟成槽(41)、凝集槽(62)、及び濃縮槽(63)を備えるスラッジ処理用試験装置を備えるものである(図2参照)。以下、フッ素除去用試験装置にて行われる処理を「F除去プロセス」と称し、スラッジ処理用試験装置にて行われる処理を「汚泥減容化プロセス」と称する。
まず、上記脱硫廃水をF除去プロセスに供した。具体的には、脱硫廃水を反応槽(11)に供給し、反応槽(11)において脱硫廃水に、10質量%水酸化カルシウム水溶液をCa(OH)2として4000mg/L(OHとして約1840mg/L)の量で添加した(OH量/F量≒13.1)。この際、水酸化カルシウムの添加後の脱硫廃水のpHは10.0であった。水酸化カルシウムを添加した後の脱硫廃水を、凝集剤添加槽(21)に送り、凝集剤(日鉄住金環境社製の商品名「ケーイーフロックKEA−776」。以下の凝集剤も同じ。)を添加した後、固液分離槽としての沈殿槽(22)に送った。そして、脱硫廃水への水酸化カルシウムの添加により生成された浮遊物質(懸濁物質)を沈殿槽(22)にて15倍に濃縮して、脱硫廃水中のフッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を固液分離し、汚泥(スラッジ)として回収した。
次に、沈殿槽(22)で回収した汚泥を、一旦、汚泥貯留槽(31)に受けた後、汚泥減容化プロセスに供し、汚泥の減容化を図った。汚泥減容化プロセスでは、まず、汚泥を汚泥貯留槽(31)から酸添加槽(32)に移送し、酸添加槽(32)において汚泥(91500mg/L)に対して、75質量%硫酸水溶液を、H2SO4として57600mg/Lの量で添加し、汚泥のpHを7.0に調整した後、汚泥を熟成槽(41)に移送し、その熟成槽(41)で汚泥を撹拌した。その後、汚泥を凝集槽(62)に移送してアニオン性高分子凝集剤を添加し、濃縮槽(63)に移送して固液分離し、改質後の汚泥を回収した。濃縮槽(63)で汚泥とは分離された上澄液は、F除去プロセスの反応槽(11)に返送した。表2にF除去プロセス及び汚泥減容化プロセスの各槽の滞留時間を示した。また、表3に、沈殿槽(22)におけるF濃度と、反応槽(11)、汚泥貯留槽(31)及び熟成槽(41)のそれぞれのSS濃度を示した。
Figure 0006723058
Figure 0006723058
(比較例1)
比較例1では、実施例1で使用したフッ素除去用試験装置に、さらに反応槽、凝集槽及び沈殿槽を1槽ずつ追加した試験装置を用い、2段階で水酸化カルシウムを添加するF除去プロセスとした。また、比較例1では、実施例1で使用したスラッジ処理用試験装置から、酸添加槽を取り除いた試験装置を用いた。比較例1で実行した水処理方法を表す概略フロー図を図4に示す。
比較例1では、上記脱硫廃水に対して、図4に示す工程を実行可能な1/1000スケールの試験装置を使用して連続プロセスでの処理を実行した。比較例1で使用した試験装置は、図4に示すように、反応槽(11、12)、凝集剤添加槽(21、23)、及び固液分離槽(22、24)をそれぞれ2つずつ備えるフッ素除去用試験装置と、汚泥貯留槽(31)、熟成槽(41)、凝集槽(62)、及び濃縮槽(63)を備えるスラッジ処理用試験装置を備えるものである。以下、比較例1で行った手順を図4中の符号を用いて具体的に説明する。
上記脱硫廃水を反応槽(11)に供給し、反応槽(11)において脱硫廃水に、10質量%水酸化カルシウム水溶液をCa(OH)2として1200mg/L(OHとして約550mg/L)の量で添加した(OH量/F量≒3.9)。この際、水酸化カルシウムの添加後の脱硫廃水のpHは9.5であった。水酸化カルシウムを添加した後の脱硫廃水を、凝集剤添加槽(21)に送り、凝集剤を添加した後、固液分離槽としての沈殿槽(22)に送った。そして、脱硫廃水への水酸化カルシウムの添加により生成された浮遊物質(懸濁物質)を沈殿槽(22)にて15倍に濃縮して、脱硫廃水中のフッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を固液分離し、汚泥(スラッジ)として回収した。また、沈殿槽(22)で汚泥とは分離された上澄水(F濃度:30mg/L)を反応槽(12)に送り、反応槽(12)にて上澄水に10質量%水酸化カルシウム水溶液をCa(OH)2として300mg/L(OHとして約140mg/L)の量で添加した(OH量/F量≒4.7)。この際、水酸化カルシウムの添加後の上澄水のpHは9.6であった。水酸化カルシウムを添加した後の上澄水を、凝集剤添加槽(23)に送り、凝集剤を添加した後、沈殿槽(24)に送った。そして、上澄水への水酸化カルシウムの添加により生成された浮遊物質(懸濁物質)を沈殿槽(22)にて15倍に濃縮して、フッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を固液分離し、汚泥(スラッジ)として回収した。
次に、沈殿槽(22、24)で回収したそれぞれの汚泥を、一旦、汚泥貯留槽(31)に受けて一緒にした。その汚泥を汚泥貯留槽(31)から熟成槽(41)に移送し、その熟成槽(41)で汚泥を撹拌した。そして、汚泥を凝集槽(62)に移送して凝集剤を添加した後、汚泥を濃縮槽(63)にて固液分離して回収した。濃縮槽(63)で汚泥とは分離された上澄液は、F除去プロセスの反応槽(11)に返送した。表4に比較例1で使用した試験装置における各槽(図4参照)の滞留時間を示した。また、表5に、沈殿槽(24)におけるF濃度と、1段目及び2段目の反応槽(11、12)、汚泥貯留槽(31)及び熟成槽(41)のそれぞれのSS濃度を示した。
Figure 0006723058
Figure 0006723058
実施例1の結果から、脱硫廃水に対し、水酸化カルシウムのOHとしての添加量が脱硫廃水中のフッ素濃度に対する質量比率(OH量/F量)で約13.1と多量に水酸化カルシウムを添加することで、1段処理でも、F濃度を15mg/L以下にすることができ、脱硫廃水中のフッ化物イオンを有効に除去できることが確認された。したがって、実施例1の水処理方法は、比較例1に比べて、2段目のF除去プロセスにおける設備を省略できるため、設備費が安価になり、また、設備の設置スペースを小さくすることができる。
また、実施例1では、比較例1に比べて、浮遊物質(SS)がより多く発生することから、脱硫廃水中のフッ化物イオンがSSに取り込まれることで、フッ化物イオンをより多く除去し得ることが確認された。
さらに、実施例1における濃縮槽(63)から回収した改質後の汚泥、及び比較例1における濃縮槽(63)から回収した汚泥のそれぞれに対して、脱水試験を行い、得られた脱水ケーキの量及び含水率を測定した。脱水試験は、圧力0.4MPaにて、通気量15cm3/cm2/secのろ布を用いた条件で行った。その結果、脱水ケーキの量は、実施例1で被処理水1L当たり5.08g、比較例1で被処理水1L当たり6.72gであり、脱水ケーキの含水率は、実施例1で40%、比較例1で65%であった。この脱水試験を含めた結果から、実施例1では、SS濃度が高くなるが、固液分離されたSS(スラッジ)に酸を添加することで、SS濃度及びスラッジの含水率を低下することができ、比較例1に比べて最終的なスラッジの量を低減できることが確認された。そのため、実施例1の水処理方法は、汚泥処分費を少なくできると共に、水処理に係わる総合的なランニングコストを少なくすることに寄与することができる。
なお、脱硫汚泥の脱水処理に使用する脱水機はフィルタープレス型の脱水機が適しているとされているが、SS濃度が少なくとも20000mg/L以上であることが推奨されている。実施例1では、熟成槽(41)におけるSS濃度が20000mg/L以上であったため、熟成工程後の汚泥をそのまま脱水処理することが可能であり、汚泥減容化プロセスにおける凝集槽(62)及び濃縮槽(63)を省略できることが分かった。
さらに本発明者らは、実施例1及び比較例1の各プロセスを実機に適用した場合の設備費、ランニングコスト、及び設備の設置面積を試算したところ、比較例1は、実施例1に対して、設備費が1.09倍、ランニングコストが1.31倍、及び設備の設置面積が1.19倍となった。したがって、実施例1のプロセスは、処理コストや設備の設置面積の点から優れていることが確認された。
(実施例2〜7)
実施例2〜7では、実施例1における脱硫廃水に対する水酸化カルシウムの添加量を表6に示す量に変更し、また、汚泥減容化プロセスにおける汚泥に対する75質量%硫酸水溶液の添加量を適宜変更した以外は、実施例1と同様にして試験を行った。汚泥に対する75質量%硫酸水溶液の添加量は、汚泥のpHが7.0となるように適宜調整した。表6に、脱硫廃水に対する水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の添加量、脱硫廃水中のフッ素濃度に対する水酸化カルシウムのOHとしての添加量の質量比率(OH量/F量)、固液分離された際の(汚泥貯留槽(31)における)汚泥濃度、及び酸が添加された後の(熟成槽(41)における)汚泥濃度をあわせて示した。
Figure 0006723058
上述の通り、脱硫汚泥の脱水処理に好適なフィルタープレス型の脱水機で脱水可能な汚泥濃度は20000mg/L以上である。そのため、実施例1〜7の結果、汚泥の脱水容易性の観点から、被処理水へのアルカリ剤のOHとしての添加量は、被処理水中のフッ素濃度に対する質量比率(OH量/F量)で4.0以上が好ましく、5.0以上がより好ましく、6.0以上がさらに好ましいことが分かった。また、実際の現場での連続プロセスでの実機におけるポンプによる汚泥の輸送のし易さを考慮すると、汚泥の濃度は100000mg以下であることが望ましい。そのため、実施例1〜7の結果、汚泥の移送容易性の観点からは、被処理水へのアルカリ剤のOHとしての添加量は、被処理水中のフッ素濃度に対する質量比率(OH量/F量)で16.0以下が好ましく、15.0以下がより好ましく、14.0以下がさらに好ましいことが分かった。
(実施例8〜13)
実施例8〜13では、実施例2〜7における脱硫廃水に対する水酸化カルシウムを水酸化ナトリウムに変更し、また、汚泥減容化プロセスにおける汚泥に対する75質量%硫酸水溶液の添加量を適宜変更した以外は、実施例2〜7と同様にして試験を行った。汚泥に対する75質量%硫酸水溶液の添加量は、汚泥のpHが7.0となるように適宜調整した。脱硫廃水に対する水酸化ナトリウムの添加量については、OH換算したときに実施例2〜7における水酸化カルシウムの添加量と等量となるように表7に示す量とした。表7に、脱硫廃水に対する水酸化ナトリウム(NaOH)の添加量、脱硫廃水中のフッ素濃度に対する水酸化ナトリウムのOHとしての添加量の質量比率(OH量/F量)、固液分離された際の(汚泥貯留槽(31)における)汚泥濃度、及び酸が添加された後の(熟成槽(41)における)汚泥濃度をあわせて示した。
Figure 0006723058
上述の通り、脱硫汚泥の脱水処理に好適なフィルタープレス型の脱水機で脱水可能な汚泥濃度は20000mg/L以上である。そのため、実施例8〜13の結果、汚泥の脱水容易性の観点からは、アルカリ剤として水酸化ナトリウムを用いた場合、被処理水へのOHとしての添加量は、被処理水中のフッ素濃度に対する質量比率(OH量/F量)で16以上にしても20,000mg/L以下であることが分かった。また、実際の現場での連続プロセスでの実機における上澄水のフッ素の濃度の観点からは、前記OH量/F量が16以上で十分と想定される。そのため、実施例8〜13の結果、アルカリ剤として水酸化ナトリウムを用いた場合、フィルタープレス型の脱水機で脱水可能な20,000mg/L以上のSS濃度にするために、減容化した汚泥を濃縮する工程を行うことが望ましい。
(実施例14〜29)
実施例14〜29では、小規模での回分式試験にて、被処理水に、OH量/F量を変化させてアルカリ剤を添加したときの、処理後(固液分離工程後)の上澄水(処理水)のフッ素濃度の挙動を確認する試験を行った。本試験では、被処理水として、水酸化マグネシウムを用いて排ガス中の硫黄を除去処理する方式の排煙脱硫装置からのフッ素含有廃水を想定して調製したpH7.5の人工廃水を用いた。人工廃水にはフッ素濃度の異なる2種類(人工廃水1及び2)を用意し、実施例14〜21では人工廃水1を用い、実施例22〜29では人工廃水2を用いた。人工廃水1及び2の組成を表8に示す。
Figure 0006723058
人工廃水1及び2のそれぞれについて、次のように試験を行った。人工廃水を200mLビーカーに入れ、10質量%水酸化カルシウム水溶液を表9に示すOH量/F量になるように添加して15分間撹拌した後、発生した浮遊物を沈殿させ、人工廃水中のフッ化物イオンが取り込まれた浮遊物を固液分離した。そして、固液分離された上澄水(処理水)を採取してフッ素濃度を測定した。その測定結果を表9に示した。なお、固液分離された浮遊物由来のスラッジについては、詳細な説明を省略するが、実施例1と同様の汚泥減容化プロセスに供し(ただし、汚泥に対する硫酸の添加量は汚泥のpHが7.0となるように適宜調整した。)、最終的なスラッジの量を低減することができた。
Figure 0006723058
人工廃水の初期のフッ素濃度に関わらず、OH量/F量が6.0以上になると、処理後(上澄水中)のフッ素濃度を有意に低減できることが確認された。また、上澄水中のフッ素濃度を、水質汚濁防止法における海域に排出される際の規制値である15mg−F/Lまで低減するためには、OH量/F量を10.0以上にする必要があった。ただし、フッ素の除去に対する阻害物質が処理対象となる脱硫廃水に含有されている可能性もあるため、実際の運用時には、廃水ごとに最適なOH量/F量の条件を事前に調査することが望ましい。
S11 アルカリ添加工程
S22 固液分離工程
S32 酸添加工程
S41 熟成工程
11 反応槽
22 固液分離槽
32 酸添加槽
41 熟成槽

Claims (11)

  1. フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水に、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ剤を添加して、前記被処理水のpHを8.5〜10.5の範囲内に調整するアルカリ添加工程と、
    前記アルカリ添加工程により生成される、前記フッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を固液分離し、前記懸濁物質由来のスラッジと上澄水とを得る第1の固液分離工程と、
    前記第1の固液分離工程で固液分離された後の前記懸濁物質由来のスラッジに酸を添加し、前記スラッジのpHを3.0〜8.5の範囲内に調整して、酸添加後のスラッジを得る酸添加工程と、
    前記酸添加工程の後、前記酸添加後のスラッジを固液分離し、最終的なスラッジを得る第2の固液分離工程と、を含み、
    前記アルカリ添加工程における前記被処理水への前記アルカリ剤のOHとしての添加量(mg−OH/L)が、前記被処理水中のフッ素濃度(mg−F/L)に対する質量比率(OH量/F量)で1.0以上であ
    前記質量比率(OH量/F量)で1.0以上である範囲において、前記被処理水中のフッ素濃度に対する前記アルカリ添加工程における前記被処理水への前記アルカリ剤のOHとしての添加量を、予め求められた、前記質量比率(OH量/F量)と前記第1の固液分離工程で得られた前記上澄水中のフッ素濃度との関係に基づいて、前記上澄水中のフッ素濃度が所定値以下となるのに必要なOH量/F量となるように、決定する、水処理方法。
  2. 前記所定値以下が、15mg−F/L以下である請求項1に記載の水処理方法。
  3. 前記アルカリ添加工程における前記被処理水への前記アルカリ剤のOHとしての添加量(mg−OH/L)が、前記被処理水中のフッ素濃度(mg−F/L)に対する質量比率(OH量/F量)で、3.0以上である請求項1又は2に記載の水処理方法。
  4. 前記アルカリ添加工程における前記被処理水への前記アルカリ剤のOHとしての添加量(mg−OH/L)が、前記被処理水中のフッ素濃度(mg−F/L)に対する質量比率(OH量/F量)で、25.0以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水処理方法。
  5. 前記第1の固液分離工程で固液分離された後の前記懸濁物質由来のスラッジのSS濃度CS1を10000mg/L以上に調整し、
    前記酸添加工程で、前記酸添加後のスラッジのSS濃度CS2を前記CS1よりも低く、かつ、5000mg/L以上50000mg/L以下の範囲に調整する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水処理方法。
  6. 前記第2の固液分離工程は、前記酸添加後のスラッジを脱水処理する脱水工程を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の水処理方法。
  7. 前記脱水工程で生じた脱水ろ液を、前記アルカリ添加工程に戻し、前記被処理水と共に再度処理する請求項6に記載の水処理方法。
  8. 前記酸添加工程の後、前記第2の固液分離工程の前に、前記酸添加後のスラッジを所定時間撹拌する熟成工程をさらに含む請求項1〜のいずれか1項に記載の水処理方法。
  9. 前記アルカリ剤として少なくとも水酸化カルシウムを用いる請求項1〜8のいずれか1項に記載の水処理方法。
  10. 前記被処理水が、排煙脱硫装置から排出された廃水である請求項1〜9のいずれか1項に記載の水処理方法。
  11. フッ化物イオン及びマグネシウムイオンを含有する被処理水に、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ剤を添加して、前記被処理水のpHを8.5〜10.5の範囲内に調整する反応槽と、
    前記被処理水への前記アルカリ剤の添加により生成される、前記フッ化物イオンが取り込まれた懸濁物質を固液分離し、懸濁物質由来のスラッジと上澄水とを得る第1の固液分離槽と、
    前記第1の固液分離槽で分離された後の前記懸濁物質由来のスラッジに酸を添加し、前記スラッジのpHを3.0〜8.5の範囲内に調整して、酸添加後のスラッジを得る酸添加槽と、
    前記酸添加槽で得られた前記酸添加後のスラッジを固液分離し、最終的なスラッジを得る第2の固液分離槽と、を備え、
    前記反応槽における前記被処理水への前記アルカリ剤のOHとしての添加量(mg−OH/L)が、前記被処理水中のフッ素濃度(mg−F/L)に対する質量比率(OH量/F量)で1.0以上であり、かつ、前記質量比率(OH量/F量)で1.0以上である範囲において、予め求められた、前記質量比率(OH量/F量)と前記第1の固液分離槽で得られた前記上澄水中のフッ素濃度との関係に基づいて、前記上澄水中のフッ素濃度が所定値以下となるのに必要なOH量/F量となるように決定された量である、水処理システム。
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